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会に 女性の活躍推進に向けた国 地方自治体 企業の責務を定める 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案 ( 以下 女性活躍推進法案 と呼ぶ ) を提出した 同法案は2014 年 11 月の衆議院解散により一旦廃案となったものの 政府は同一の法案を2015 年通常国会に提出し (2015 年

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女性活躍推進法案の課題

韓国・ドイツの制度との比較を踏まえた検討

○ 政府は2月に女性活躍推進法案を国会に再提出した。同法案が成立した場合、常時雇用する労働者 が301人以上の企業は、女性活躍に関する行動計画の策定等が義務付けられる ○ 女性活躍推進法案に盛り込まれた制度では、女性活躍に関して最低限目指すべき水準(産業・規模 別)が明確にされないため、女性の活躍が特に遅れる企業を後押しする力が弱い可能性がある ○ こうした弱点を克服するためには、女性活躍に関して企業が最低限目標とすることが望まれるライ ンを国が示し、同ラインの達成を目指す企業を強力にサポートしていくことが必要である

1.早期成立が目指される女性活躍推進法案

わが国では、「働くこと」に関して女性が意欲や能力を十分発揮できていない現状がある。例えば、 女性の就業率は上昇しているものの、2013年時点で女性雇用者の6割は非正規雇用であり、多くの女性 が安定した雇用やキャリア形成の機会を十分確保できていない。正社員として働く場合も、長時間労 働や育児休業の取得しにくさ等から仕事と育児の両立の見通しが立たず、第1子を出産した女性の5割 が離職している。こうした結果、常用雇用者が 30人以上の民間企業では係長相当職以上(役員 を含む、以下同じ)に占める女性の割合は9.0%、 課長相当職以上に占める女性の割合は6.6%に 止まっている(厚生労働省「雇用均等基本調査」 (2013年度))。また、管理的職業に就く人(こ こでは公務員を含む)のうち女性の割合を国際 比較で見ると、日本は11%と、3~4割が標準の 他の先進国に大きく遅れを取っている(図表1)。 こうしたなか、安倍政権は成長戦略の柱の一 つとして女性の活躍推進を位置づけており、 2020 年 に 指 導 的 地 位 に 占 め る 女 性 の 割 合 を 30%まで引き上げる目標を掲げている。その取 り組みの一環として、政府は2014年秋の臨時国 政策調査部主任研究員 大嶋寧子 03-3591-1328 yasuko.oshima@mizuho-ri.co.jp

政 策

2015 年 3 月 11 日

みずほインサイト

図表 1 管理的職業に占める女性割合の国際比較 (資料) 労働政策研究・研修機構『データブック国際労働比較 2014』 より、みずほ総合研究所作成 43.7 39.4 35.5 34.2 28.6 11.1 0 20 40 60 米国 フランス スウェーデン 英国 ドイツ 日本 (%)

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2 会に、女性の活躍推進に向けた国、地方自治体、企業の責務を定める「女性の職業生活における活躍 の推進に関する法律案」(以下、「女性活躍推進法案」と呼ぶ)を提出した。同法案は2014年11月の 衆議院解散により一旦廃案となったものの、政府は同一の法案を2015年通常国会に提出し(2015年2 月20日)、その早期成立を目指している。そこで本稿では、女性活躍推進法が成立した際に導入され る制度の効果と制度の弱点、そうした弱点を克服するための国の課題を考える。

2.女性活躍推進法案の枠組み

女性活躍推進法案が成立した場合、女性の活躍に向けた企業の取り組みを促す法的枠組み(以下、 「女性活躍推進措置」と呼ぶ)が導入される(図表 2)。なお、制度の中身は法案審議の過程で見直 される可能性があるため、以下で示すものは、本稿執筆時点の制度案である。 (1)301人以上の企業に女性の活躍に関わる状況把握と行動計画の策定を義務付け 女性活躍推進法案が成立した場合、常時雇用する労働者が301人以上の民間企業(以下、301人以上 の企業)は、自社の女性の活躍に関わる状況把握と改善すべき事情の分析(以下、「状況把握・分析」) と呼ぶ)を行った上で、女性の活躍を推進するための行動計画(以下、「女性活躍行動計画」と呼ぶ) を策定しなければならない(300人以下の企業は努力義務)。女性活躍推進法は10年間の時限立法であ り、施行期日は公布日であるが、女性活躍行動計画の策定に関わる規定の施行は2016年4月1日とされ ている。 状況把握・分析や女性活躍行動計画の大枠は、厚生労働省令や国が策定する事業主行動計画策定指 針で定められる予定である。まず状況把握・分析については、同省令で定める「4つの必須項目」(① 採用者に占める女性比率、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率)と 図表 2 女性活躍推進法案で示されている民間企業の女性活躍推進措置 (資料)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」、労働政策審議会「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築につい て(建議)」(2014 年 9 月 30 日)より、みずほ総合研究所作成 [状況把握・分析] [女性活躍行動計画] ●計画期間 ●数値目標 ・必須4項目 ・任意項目 ●取り組みと実施時期 ●状況把握 ・必須4項目 ・任意項目 ●改善すべき事情の分析 [情報公表] ・必須4項目 ・任意項目 計画期間終了 [認定制度] ●女性の活躍状況の水準 ●取り組みによる改善度合い 一体的閲覧

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3 事業主が選択できる「任意項目」について行わなければならない。次に女性活躍行動計画には、指針 に従って「計画期間」「数値目標」「取り組み内容」「取り組みの実施時期」を盛り込むことが求め られ、特に数値目標は、状況把握・分析と同じ「4つの必須項目」と事業主が選択する「任意項目」に ついて設定する必要がある(ただし達成すべき目標の水準は各社が実情に応じて設定できる)。企業 は女性活躍行動計画を厚生労働大臣に届け出た上で、労働者への周知と一般への公表を行うことが求 められる。この行動計画の期間終了後は、企業は新たな女性活躍行動計画を策定することになるが、 計画の変更には、改めて状況把握・分析を行わなければならない。 (2)女性の活躍状況に関する情報の定期的な公表も義務化 また、女性の育成・登用に積極的な企業を求職者が選択できるよう、301人以上の企業には女性の活 躍状況に関する情報の定期的な公表も義務付けられる(300人以下の企業は努力義務)。労働政策審議 会が2014年9月30日に行った建議「女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について(建議)」 では、情報公表の対象となる項目は、状況把握・分析の対象となる「4つの必須項目」のほか、厚生労 働省令で列挙する項目から企業が選択した「任意項目」とすべきとされている。同建議は、情報公表 は女性活躍行動計画とセットで閲覧できる形式とすべきとしているため、情報公表は同行動計画の達 成状況の報告書に近い役割を果たすと考えられる。 (3)優良な取り組みを行う企業の認定制度 このほか、行動計画を策定した企業からの申請に基づいて、優良な取り組みを行う企業の認定制度 が創設される。労政審建議に基づけば、認定においては女性活躍の「現在の状況」だけでなく、取り 組みによる「改善の幅」も考慮される。また、認定基準は業界別平均や企業規模別平均に基づいて算 定した具体的で分かりやすいものとなる方向だ。認定を受けた企業(以下、認定企業)は、広告や商 品・サービス、取引書類、ウェブサイト等に認定マークを表示できるほか、国や地方自治体は政府調 達等で認定企業を優遇することとされている。

3.女性活躍に課題を抱える韓国・ドイツの取り組み

女性活躍推進措置にはどの程度の効果が期待でき、どのような限界が想定できるだろうか。こうし た問題を考える際の参考とするため、本節ではわが国同様に女性の活躍に課題を抱え、女性の活躍に 向けた企業の取り組みを促す制度を導入・検討している国(韓国、ドイツ)の事例を取り上げる1 (1)女性活躍に課題を抱える国の取り組み①:韓国2 韓国では日本同様に、出産・育児期に女性の労働力率が低下する傾向があり、15~64歳の女性の労 働力率は2013年に56%とOECD平均(63%)を下回っている3。こうしたなか同国では、2005年12月の男 女雇用平等法改正により、2006年3月1日以降、企業等に女性の活躍に向けた積極的措置を義務付ける 制度(以下、積極的雇用改善措置)が導入されている(図表3)。この制度により、常用雇用する労働 者が500人以上4の民間企業や政府系機関は、例年3月に職種別(専門職、事務職等の10区分)・職階別 (役員以上、課長級以上役員未満、管理職以外の3区分)の男女労働者の数について現状報告を行政機 関に提出することが求められる(ステップ1)。さらに、女性雇用者比率と女性管理職比率のいずれか

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4 が「女性雇用基準」(産業別・企業規模別平均の60%)未満の場合は国から通知が送付され、翌年3 月末を期限とする「積極的雇用改善措置実施計画書」(以下、計画書と呼ぶ)の提出(ステップ2)と、 計画期間終了後の「積極的雇用改善措置実施実績報告書」(以下、報告書と呼ぶ)の提出(ステップ3) が求められる。国は計画書の内容を審査し、必要に応じて補足対応を要求するほか、報告書の内容に 対して「適性」「普通」「履行催促」のいずれかの評価を通知する。このサイクルは企業の実績が女 性雇用基準を上回るまで続けられる。なお、現況報告や計画書・報告書の提出義務を履行しない場合 は罰則が科せられるが、実績が基準に達しないことに対する罰則はない5。最後に、報告書の評価に基 づいて優秀企業が選定され、選定された企業は認証マークの利用が認められるほか、労働法違反に対 する随時点検の免除、政府の入札時の優遇等のインセンティブが付与される(ステップ4)。 積極的雇用改善措置が導入された2006年から2013年にかけて、韓国の管理職(部署単位の責任者で 業務指揮及び監督権、人事考課権、決裁権を持っている者)に占める女性の割合は10.2%から17.0% まで着実に上昇しており、同措置は一定の効果があったと評価されている6。なお、2015年3月提出の 報告書以降は、女性雇用基準が現行の産業・規模別平均の60%から70%へと引き上げられた。 図表 3 女性活躍推進に関わる日本・韓国・ドイツの制度の比較(国会審議中の制度を含む) 日本 (女性活躍推進措置) 韓国 (積極的雇用改善措置) ドイツ (クオータ制導入等) 状況 法案審議中 2006年3月より実施 2015年3月6日に連邦議会通過 対象 企業 常用雇用する労働者が 301人以上の企業 (300人以下は努力義務) 常時雇用する労働者が 500人以上の企業 a.従業員2,000人以上の上場企業 b.従業員500人以上の企業又は上場企業 施行 期日 2016年4月1日(予定) 2006年3月(2008年2月までは 1,000人以上の企業) a.2016年1月1日 b.2015年9月30日 義務 義務1 - 女性の活躍に関する状況 把握・分析 義務2 - 女性活躍行動計画の策定 (計画期限、数値目標、取 り組み内容及び実施時期) 義務3 - 女性の活躍状況に関する 情報の定期的な公表 ステップ1 - 職種別・職階別男女労働者現 状報告の提出(例年3月) ステップ2(基準値未達の場合) - 積極的雇用改善措置実施計 画書の提出(翌年3月まで) ステップ3(基準値未達の場合) - 計画期間終了後の積極的雇 用改善措置実施実績報告書 の提出(翌々年3月まで) a. 監査役会に占める男女双方の割合を 30%以上とすることを義務付け b. 監査役会、取締役会、中・上級管理職 における女性比率の自主基準設定等 ① 監査役会、取締役会、中・上級管理 職に占める女性比率の自主基準と 基準達成期限(初回は最長で2017年 6月30日まで)の設定 ② 基準達成の状況や達成できなかっ た場合はその理由・達成のための 具体的措置の公表 (注)ドイツの制度は2015年3月9日時点の状況による。 (資料)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」、本文注2及び注7で示した参考文献により、みずほ総合研究所作成

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5 (2)女性活躍に課題を抱える国の取り組み②:ドイツ7 ドイツでは根強い性別役割分業意識や三歳児神話(子どもが三歳になるまでは女性が家で子どもの 世話をするべきという考え方)の存在、保育所の不足、全日制の学校の普及の遅れ等から女性の活躍 が遅れてきたものの、2005年11月に誕生した第1次メルケル政権以降、保育所の拡充や男性の育児休業 取得を促す施策が進められてきたこともあり、女性の労働力率は2000年の63%から2013年の72%まで 上昇している。一方、女性で低賃金労働や短時間労働が多い結果、男女の賃金格差が大きいこと、管 理職に占める女性の割合が欧米主要国の中では低いことなど、女性の本格的な活躍という点で課題を 抱えている。ドイツでは2001年に政府と経営者団体が、指導的立場における女性比率の引き上げ、男 女の機会均等、従業員のワークライフバランス支援策への自主的な取り組みについて協定を結んだも のの、女性管理職比率は停滞し、協定の効果は小さかったと評価されている8 こうしたなか、2013年12月に誕生した第3次メルケル政権は、政権発足に伴う連立協定9に基づいて、 民間企業の経営層において一定割合以上を女性とすることを義務付けるクオータ制の導入について議 論してきた。2014年11月に連立政権を構成するキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD) がクオータ制の導入で合意し、同年12月に「指導的立場における男女の平等な参加に関する法10」の 法案が閣議決定された。同法案は一部修正を経て2015年3月6日に連邦議会を通過した(2015年3月9日 時点)。 同法案が成立した場合、2016年1月1日より、従業員が2,000人以上の上場企業に監査役会11の構成員 のうち男女双方の割合を30%以上とすることが義務付けられる(前掲図表3)。2016年1月1日以降の監 査役の選任12においてこの割り当て基準を満たさない選任が行われた場合、その選任は無効となり、 選任の対象となった席は空席となる。ただし、この理由による空席があっても、監査役会の決定は有 効とされる。 このほか、従業員500人以上の企業又は上場企業は、2015年9月30日までに監査役会、取締役会、中・ 上級管理職に占める女性の比率について自主基準と基準達成までの期限を設定の上、行政に届け出る ことが義務付けられる。最初の基準設定では達成期限を2017年6月30日までにする必要があり、企業は 自主基準の達成状況、達成できなかった場合はその理由や達成に向けた具体的措置について公表する ことが求められる(2回目以降の基準設定では達成までの期限を最長5年とすることが可能)。監査役 会、取締役会、中・上級管理職に占める女性の比率が30%未満の場合は、現状を上回る自主基準を設 定しなければならないものの、自主基準自体は企業が自由に設定できる。一方、既に女性比率が30% 以上の場合は、十分な女性比率を実現しており監査役会がこれ以上の基準設定は不要と判断していれ ば、必ずしも現状を上回る自主基準を設定する必要はない。ドイツ政府はこの義務の対象となる企業 を約3,500社と推計している。

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4.韓国・ドイツの制度も踏まえた女性活躍推進措置の効果と弱点

(1)わが国の女性活躍措置で期待できる効果 わが国で女性活躍推進法案が成立した場合、301人以上の企業について少なくとも「4つの必須項目」 (①採用者に占める女性比率、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率) の数値目標と実績データの公表が義務付けられる。上記の中でも①、②、③のデータ公表は、企業に おける女性の活躍を阻む要因(総合職採用における女性の少なさ、出産前後での離職の多さ、長時間 労働の問題)について情報公開を求めるものである。このような情報公表のあり方は、女性の活躍に 向けた企業の取り組みの焦点を、採用機会の均等化や出産前後の離職の防止、長時間労働の是正に向 けるという点で有効と考えられる。 さらに、労働政策審議会の建議では、優良な取り組みを行う企業に対する認定制度の基準は産業別・ 企業規模別平均に基づいた分かりやすいものであるべきとされている。これを踏まえるならば、女性 活躍推進措置の導入によって、「業界・規模を考慮した平均的な水準」や「優良な取り組みと認められる基準」 が定量的に示されることになる。こうした水準や基準が明確になることは、業界平均や優良企業の基準に「あと 一歩で届く」企業を中心に、業界平均や優良企業の認定を達成するための取り組みを活発化させる効果が期 待できる。 (2)女性活躍推進措置の弱点 一方で、日本の女性活躍推進措置は、女性の活躍が特に遅れる企業の背中を押し、女性活躍に関わ る状況を底上げするメカニズムが弱いことが懸念される。例えば、韓国の制度では、産業別・企業規 模別平均に基づいて企業が最低限達成すべき水準が明確にされ、基準を下回る企業に計画書や報告書 の提出義務が課せられる。また、ドイツの制度では、監査役会、取締役会、中・上級管理職に占める 女性の比率が30%未満である限り、500人以上の企業又は上場企業は現状を上回る水準での自主基準の 設定や事後的な達成状況等の公表が求められるため、この比率が中長期的に達成すべき基準として示 されていると言える。加えてドイツの場合は、最大手の108社に対し、監査役会に占める男女双方の割 合を30%以上とするよう義務付けるなど、対象を絞り込んだ上で、拘束力のある性別割り当て基準も 設ける方向である。 ひるがえって日本の女性活躍推進措置では、女性の活躍に関して優良企業の認定基準や産業・規模 別の平均的な水準が明確にされる方向であるものの、全ての企業において最低限目標とすべき水準は 示されない。こうした水準や基準のないまま企業に行動計画と情報公表を求めれば、「達成が望まし い数値目標」よりも「達成しやすい数値目標」が設定される可能性がある。その場合、女性活躍が遅 れる企業での集中的な取り組みを促す効果は、最低限目指すべき水準を明確にした場合より小さなも のに止まることが懸念される。

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5.女性活躍推進法案の弱点克服に向けて

女性活躍推進法案に盛り込まれている女性活躍推進措置には、第 4 節で述べたような弱点がある。性別を 問わず優秀な人材が活躍できる環境を作ることが、労働力の急速な減少が見込まれる日本経済にとって死活 問題であることを踏まえれば、そうした弱点を克服する方策を検討する必要がある。 そのために、女性活躍推進措置の下で企業が現状を公表する「4 つの必須項目」(①採用者に占める女性 比率、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率)のデータを活用しつつ、 女性の活躍が特に遅れる企業をサポートしていくことが考えられる。具体的には、①~④について産 業別・企業規模別平均を算出し、その一定割合を「女性活躍基礎水準」(最低限目標とすることが望まれるラ イン)として明確にする(図表 4)。その上で、国がその水準を求職者向けに参考情報として提供することや、 同水準達成に取り組む企業への支援(女性向け管理職研修費用の助成、働き方の見直し等についての コンサルタント派遣、政府調達における優遇等)を充実することが重要である。 さらに中期的には、女性活躍推進措置を見直し、企業の数値目標を女性活躍基礎水準以上とするよ う義務付けることも検討すべきである。同水準に満たない企業に対しては、履行報告書の提出を求め るほか、第三者機関による行動計画と履行報告書の評価、必要に応じた勧告を行う等、女性の活躍に 向けた環境整備をより強力にサポートしていくことも課題となるだろう。 図表 4 女性活躍推進措置における「女性活躍基礎水準」の追加(案) (注)女性活躍基礎基準の算出方法は一例。 (資料)みずほ総合研究所作成 [優れた取り組みを行う企業の認定基準] ・産業別平均や企業規模別平均 に基づき算定される方向 [産業別・企業規模別平均] ・認定基準算定の基礎として算出 される方向 (追加)[女性活躍基礎水準] ・産業別平均や企業規模別平均 の一定割合(例:60%)として算出 ・女性活躍が特に遅れる企業への 支援等に活用 女 性 の 活 躍 状 況 に 関 わ る 指 標

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8 1 内閣府男女共同参画局『共同参画』(2012 年 4・5 月号)によれば、スウェーデン、英国、カナダ等では、一定の要件を満たす 企業に男女の雇用機会均等やダイバーシティ推進(人材と働き方の多様性の確保とこれを通じた組織の活性化)のための行動 計画・プログラムの策定を義務付けているほか、オーストリアでは一定の要件を満たす企業に男女別の平均賃金・労働時間の 情報公開を義務付けている。また、イタリア、オランダ、スペイン、ノルウェー、フランス等では、上場企業や一定規模以上 の企業等に取締役の一定割合を女性とすることを法律上義務付けるクオータ制度を導入している。こうした様々な先行的取り 組みがあるものの、本稿では、根強い性別役割分業意識や保育所の不足、これらによる出産前後の女性の離職等、日本と近い 課題を抱えており、同時に比較的新しい取り組みを行っている例として韓国とドイツを取り上げた。 2 韓国の積極的雇用改善措置の内容は、厚生労働省(2014)「前回の指摘事項について」(第 146 回労働政策審議会雇用均等分科 会(2014 年 8 月 26 日)資料 7)、高安雄一(2014)「女性の管理職の増加を促す韓国 8 年前から『積極的雇用改善措置』で推進」 (日経ビジネス ONLINE 2014 年 9 月 14 日)、大沢真知子・金明中(2014)「韓国の積極的雇用改善措置の導入とその効果および 日本へのインプリケーション」(経済産業研究所 RIETI Discussion Paper Series 14-J-030)に基づいている。

3 OECD, OECD Statistics による。

4 対象企業の範囲は、2008 年 3 月にそれまでの常用雇用する労働者 1,000 人以上から 500 人以上へ拡大された(高安(2014) 5 大沢・金(2014)によれば、韓国政府は女性雇用者比率と女性管理職比率が産業別・業界別平均の 70%に達せず、政府の是正

勧告に従わない場合の企業・機関名の公表、国の事業への参加制限を行うほか、育児と仕事の両立支援に取り組む企業への税 制優遇や金融支援、社会保険料の軽減等を段階的に行うことも予定している。

6 出典は注 2 の厚生労働省(2014)

7 ドイツ連邦議会で審議されている新たな制度及び導入に向けた検討の経緯は、Bundesministerium für Familie, Senioren,

Frauen und Jugend(ドイツ連邦家庭・高齢者・女性・青少年省)“Gesetz für die gleichberechtigte Teilhabe von Frauen und Männern an Führungspositionen”(2015 年 3 月 6 日)、労働政策研究・研修機構「国別労働トピック ドイツ 企業の監査 役会、女性クオータ制義務づけへ」(2014 年 6 月)、Cleary Gottlieb “Alert Memorandum Gender-quotas in German Companies: Federal Cabinet Adopts Draft Legislation”(2014 年 12 月 15 日)、 Handelsblatt(ドイツ経済紙) “Koalition will versehentliche Männerquote vermeiden”(2015 年 3 月 2 日)等を参考にした。

8 出典は注 7 の労働政策研究・研修機構(2014)。なお、Deutsche Presse-Agentur(ドイツ通信社) “Long tug-of-war over quotas

for women on corporate boards”(2015 年 3 月 6 日)によれば、2011 年 10 月にドイツ・フランクフルト証券取引所に上場し ている企業が当時 4%であった経営層に占める女性割合を 35%まで引き上げる目標について合意しているが、その目標達成の 目途は立っていない。

9 ドイツでは 2013 年 9 月 22 日の連邦議会選挙を経て、同年 12 月 17 日に中道右派政党のキリスト教民主/社会同盟(CDU/CSU)

と中道左派政党の社会民主党(SPD)の大連立による第 3 次メルケル政権が発足した。

10 法律のドイツ語名称は Gesetz für die gleichberechtigte Teilhabe von Frauen und Männern an Führungspositionen。 11 ドイツでは労働者が経営に参画する共同決定制度があり、従業員 500 人以上の株式会社等には、経営への監視・監督(取締役 の任免や取締役会への助言、経営計画の承認等)を行う監査役会の設置が義務付けられる。このうち、常時雇用する労働者が 2,000 人以上の企業では監査役会のメンバーのうち株主代表と労働者代表を同数とすること、それ以外の企業では監査役会の 3 分の1を労働者代表とすることとされている。 12 監査役会のうち株主代表と労働者代表は選任プロセスが異なる。21 世紀政策研究所『会社法制のあり方に関する研究報告』 (2011 年 3 月)によれば、株主代表については株主代表の監査役のみで構成される指名委員会が選任議案を策定の上、株主総 会で選任される。一方、労働者代表は管理職代表と産業別組合代表、事業所の従業員代表の 3 つのカテゴリー別に立候補と選 挙を経て選任される。監査役会の株主代表と労働者代表が合意しない場合、株主代表と従業員代表の双方について男女それぞ れ 3 割以上の構成とすることが必要となる。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。

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