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平成 20 年度 PTFE 膜 MBR による下水の再生処理技術の開発 報告書

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(1)

平成 20 年度

PTFE 膜 MBR による下水の再生処理技術の開発 報告書

2009 年 3 月

財団法人  造水促進センター

(2)

PTFE 膜 MBR による下水の再生処理技術の開発

       

目  次

1.緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.1  目的  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.2  内容  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  1.3  スケジュール  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  1.4  期待される成果  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  1.5  委員会  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2. 下水のMBR処理の概要  ・・・・・・・・・・・・・・・・・

  2.1  MBRの概要  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  2.2  MBRのモジュール構造と膜・・・・・・・・・・・・・・・・

  2.3  ファウリングの現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・

3.  実験結果  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  3.1  平膜によるファウリングの挙動解析実験・・・・・・・・・・・

3.1.1  実験に用いた膜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.1.2  分析手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.1.3  実験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.1.4  まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  3.2  PTFE膜モジュールによる下水処理実験・・・・・・・・・・・・

    3.2.1  創成川下水再生プラザの概要・・・・・・・・・・・・・・・・・

    3.2.2  MBR実験場と装置の改造・・・・・・・・・・・・・・・・・

    3.2.3  実験結果と考察  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    3.2.4  まとめ  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4.  まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    4.1  本年度の結果  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    4.2  来年度の計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.  結言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6.  参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

7.添付資料(1)  委員会資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

頁 1 1 1 2 2 2

4 4 5 11

15 15 15 20 23 45

46 46 50 64 70

71

71

71

72

73

75

(3)

1.緒言

1.1  目的

  生活廃水や有機系産業廃水の処理には、これまで活性汚泥法が主に採用されてきた。し かしこの処理法は広い敷地面積を必要とし、余剰汚泥発生量が多いことによりコストが高 いことや運転管理が難しいことなどの問題があった。本事業ではこれらの課題を一挙に解 決できる技術として、新しい膜素材のPTFE膜を使用したMBR(メンブレンバイオリアク ター)を実際の下水に適用する実証試験を行い、新しいシステムの実用化を促進することを 目的とする。

1.2  内容

生物処理と膜分離を組み合わせたMBRは、廃水の再生利用に非常に有効であり、最近 世界的にも非常に注目されているシステムである。MBRは生物処理槽の中に膜を浸漬し、

間欠的に吸引して処理水を得る排水処理方法である。したがって、生物反応に由来する膜 の汚染(ファウリング)が必ず発生する。

  MBRにおける膜ファウリングに影響する因子として、膜透過水量、膜材質などの運転、

設計条件や微生物などが放出する溶解性代謝物(Soluble Microbial Product, SMP)など がある。そこで、MBRにおける膜ファウリングの機構の解明を行い、ファウリングの制 御を効率的かつ合理的に行うことによりMBRの適用可能性は拡大されると考えられる。

  本事業では、新しい膜素材であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜によるMBR のファウリング特性の解析を行い、さらに親水性膜、疎水性膜、膜孔径などを変化させて フォウリングの挙動解析を行う。これらのデータをもとにMBRに最適な空気量、洗浄条 件、運転条件に関する検討を行い、下水の再生利用技術を開発する。

平成20年度は、既存の装置を本実験用に一部改造し、次のテーマに基づき実証実験を 実施する。

①浸漬膜のファウリングのメカニズムの解析

新規なPTFE膜に関して、SMPのファウリング物質特性の変化の挙動を測定し、膜に 付着する。SMP を定量的に把握して、可逆的、不可逆的な膜ファウリングの寄与に関し て解析を行う。

②親水性膜の孔径を変化させた場合のファウリングの挙動比較

  膜表面が親水性により膜ファウリングの挙動がどのように変化するか、また汚泥濃度を 通常より高くして、そのときの不可逆的ファリングの挙動、特性について検討を行う。

③上記実証研究の成果をもとにしてMBRに最適な運転条件及び洗浄条件の検討  

(4)

1.3  スケジュール

  本研究は、平成20年度と21年度の 2力年間で実施する予定であるが、予算の確定が単 年度ごとであるため、各年度で研究結果の結論を得る必要がある。

  スケジュールおよび実施状況は以下に示すとおりである。

PTFE膜MBRによる下水の再生利用技術開発         期・月

項目

上 半 期 下 半 期

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3

・委員会審議

・装置改造

・運転実験・デ ータ解析

・報告書作成

・委員会

1.4 期待される効果  

本技術開発により以下のような成果が期待される。

1)MBR膜の汚れが挙動が明らかになれば、これに対応する新規な膜構造の開発が可能とな

る。

2)ファウリングの挙動が解明されれば、この汚染防止に関する対策として洗浄方法(例え ば、透過水による洗浄方法など)が開発され、ランニングコストダウンにつながる。

3)膜ファウリング防止に関する挙動が明確になれば、MBRの最適な運転条件(生物反応槽

の曝気量、洗浄条件など)が明確にできる可能性がある。これにより膜寿命が長くなる 可能性がある。

4)汚れ物質に関するファウリングの挙動が明らかになれば、MBRの運転条件がさらに明ら

かにすることができ省エネルギー型のMBR開発のめどがつく可能性が得られる。

1.5  委員会

本研究の実施に当たっては・学識経験者・水処理メーカ―などからなる委員会を(財)造 水促進センター内に設置し、委員各位のご指導をいただきながら進めた。委員会の構成は 以下のとおりである。

(5)

  「PTFE膜MBRによる下水の再生処理技術開発」委員会  委員名簿 構成員 氏 名 所  属

委員長 長岡  裕 武蔵工業大学工学部都市基盤工学科教授

委  員 渡辺 義公 北海道大学環境ナノ・バイオ工学研究センター長 委  員 木村 克輝 北海道大学大学院工学研究科環境創生工学専攻准教授 委  員 澤田 繁樹 栗田工業㈱ 開発本部先進技術第 1Gr.研究主幹

委  員 池辺 弘昭 東洋エンジニアリング㈱エンジニアリングセンター 施設エンジニアリング部シニアプロセスエンジニア オブザー

バー

森田  徹

住友電工ファインポリマー㈱ モジュールプロジェクト統轄

事務局:(財)造水促進センター

委員会は以下に示す2回開催した。

  第1回委員会    平成20年9月4日

  第2回委員会    平成21年3月24日、3月25日

各委員会の議事録は、添付資料(1)「委員会議事録」参照のこと。

(6)

2.  下水のMBR処理の概要 2.1  MBRの概要

(1)排水再利用に用いられるMBR

  各種の排水を処理する方法としては、大きく分けて物理的方法(膜処理技術を含む)、化学的方 法、生物的方法、MBR(生物処理+膜法)があり、これらを要求される目的水質に応じて単独もしく は組み合わせて用いる。

これを行うには膜処理法単独では負荷がかかり過ぎるのでなんらかの前処理(例:砂ろ過など)を する。これを簡単に満足するシステムとしてはMBRが最も確実であり汎用的である。

MBRは微生物を応用した生物処理と膜処理技術とが合体した複合処理システムである。したが って、この両者のプロセスが同時に行われるのでそれぞれの技術の特徴を活かした相乗効果が得 られる。また、MBRは多くの排水処理分野に適用できる広い処理方法であるといえる。

(2)MBRの普及状況

  膜協会では、世界の大型膜処理プラント・排水再利用(下水再利用)に用いられている MBR の 供給国及び設置国についての調査を行った1)。このデータは、造水量が1万m3/日以上のMBR プラント(2006年、60カ所)を対象としている。

    図2.1.1に世界の大型 MBRを用いた排水再利用の造水量を示す。この結果、世界の大型プ ラント設置数60 カ所のうち日本の膜メーカーの設置は37%を占めている。また世界のMBR造水

量は1,419,376m3/日であり、日本の膜メーカーが占める造水量は452,376m3/d(24%)である。

 

(3)MBRの原理と特徴2)

生物反応槽の中にMF/UF膜を浸漬する膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bio Rector) は、一般の活性汚泥法と違って次のような特徴を有している。

a)完全な固液分離が可能であり、処理水質が汚泥の沈降性に左右されない。

b)微生物の高濃度保持と分散状態の高活性維持により高度な有機物分解性が期待できる。

24%

76%

日本 海外

図2.1.1  世界の大型MBRを用いた排水再利用の造水量

(造水量 1万m3/日以上は60カ所、2006年)

(7)

c)消化細菌の高濃度・高活性保持,高濃度活性汚泥による内生脱窒で窒素除去が容易である。

d)汚泥滞留時間を極めて大きく取ることが可能で、余剰汚泥発生量を非常に少なくできる。

一般の活性汚泥法とMBRの標準フローを図 2.1.2に示す。MBRに用いられる膜には中空糸 膜と平膜がある。

2.2  MBRのモジュール構造と膜3)

(1)MBRのモジュール構造

図2.1.5に現在市販されているMBRモジュール構造の分類を示す。MBRモジュールには、大

きくわけて活性汚泥槽の中に膜を浸漬する浸漬型 MBR(図 2.1.4参照)と活性汚泥、沈殿槽から の排水を膜に通水する槽外設置型MBR(図 2.1.5参照)がある。

図2.1.2  標準活性汚泥法と MBR

MBR

槽 外 設 置 浸漬型

その他(回転平膜,セラミック) 中空糸膜

平膜

円筒状 すだれ状

管状膜 平膜

図2.1.3  MBRモジュール構造の分類 

(8)

1)浸漬型MBR

  表2.1.1には、浸漬型MBRに用いられている膜形状と会社名を示す。表2.1.3にMBRに用い

られている膜材質、会社名と膜孔径の種類を示す。これによるとPVDF膜のMBRが最も多く販売 されている。

       

表2.1.1  浸漬型MBRに用いられている膜形状と会社名 

膜形状 日本 海外

A.平膜 クボタ、東レ、ユアサ Segheres、Keppel 日立プラントテクノロジー その他

B.中空糸膜 Bl.円筒状 旭化成ケミカルズ 旧USフィルター

B2.すだれ状 三菱レイヨン.エンジニアリング 旧ゼノン、KMS

C.その他(回転平膜,セラミック) クボタ、日立プラントテクノロジー   HUBER

図2.1.5  浸漬型 MBRのフロー図

図2.1.4  槽外設置型MBRのフロー図

(9)

  図2.1.6から図2.1.12にそれぞれのMBR構造の写真を示す。なお、これらの膜モジュールの写 真は各社のカタログから引用した。

表2.1.2  MBRに用いられている膜材質、会社名と膜孔径の種類 

図2.1.6  平膜型 Type A(クボタ、東レ) 

図2.1.7 中空糸膜すだれ型 Type B1(三菱レイヨン・エンジニアリング) 

住友電工ファインポリマー 

(10)

図2.1.9  中空糸膜円筒状型 Type B2(左側は旭化成ケミカルズ、右側はメムコア) 

図2.1.8  中空糸膜すだれ型Type B1(ゼノン、Korea Membrane Separation) 

図2.1.10 中空糸膜型その3(左側はユニット構造、右側はモジュール構造図、膜は親水性PTFE       

      、孔径=0.3μm、住友電工ファインポリマー㈱製4) 

(11)

2)槽外設置型MBR

表2.1.3には槽外設置型 MBRの形状と会社名を示す。

表2.1.3  槽外設置型MBRの形状と会社名

平膜 Dorr Oliver,ローンプーラン

管状膜 ダイセン・メンブレンシステムズ(1/2in)、Norit(小口径膜) メタ・ウオーター(旧日本ガイシ)他

図2.1.11 その他  Type C(左側はセラミック膜、右側は回転平膜) 

図2.1.12  HUBER Vacuum Rotation Membrane(VRM Bioreactor) 

(12)

表2.1.4に浸漬型MBRと内圧型セラミック膜の槽外設置型MBRとの比較例を示す5)

表2.1.4  浸漬型 MBRと槽外設置型MBR(内圧型セラミック膜)との比較

図2.1.13にNoritの槽外型MBRの実用例を示す。

(2)膜表面の構造

  MBR用の膜を製造する方法には延伸法と相分離法がある。図 2.1.14 に延伸法の膜表面の写

真を、図2.1.15に相分離法の膜表面の写真をそれぞれ示す。

浸漬型MBR 槽外設置型MBR 膜 外圧型高分子膜(平膜、中空糸膜) 内圧型セラミック膜

膜設置箇所 生物反応槽内(好気槽内)に浸漬 生物反応槽外に設置(ケーシング に収納設置)

膜洗浄 膜ろ過時 曝気による洗浄 クロスフロー流(気 液混 相流 )によ り洗浄

逆洗 一部可 可能

薬洗 槽内または薬液浸漬槽にて実施 ケーシング内で実施 維持管理

膜面保護に留意要(スクリーン設置等)、場 合によっては、反応槽からの膜引き上げ要

バルブ操作による膜と生物反応 槽 の 隔 離 が 可 能 で あ り 、 膜 の 薬液洗浄が容易

生  物 反応槽

処理フロー 硝化液循環の際、持込みDOに留意要 不問

形状・容量 ユニットを考慮要 不問

曝気量 生物反応用+膜面洗浄用 生物反応用のみ 膜ろ過流束 ≒0.8〜1.2m/日 ≒3m/日

図2.1.13  Noritの槽外型MBRの実用例(AL Palm Jumeria、17,000m3/day)

(13)

2.3  ファウリングの現状と課題 (1)ファウリングの概要9)10)11)

MBR における膜ファウリングはこれまでにも大きな関心を集めており、非常に多くの 研究論文を容易に見つけることができる。 MBRにおける膜ファウリングに影響を及ぼす 因子として膜透過水フラックス、材質などの運転・設計条件や、微生物が放出する溶解性 代謝産物(Soluble Microbial Product, SMP) 、MBR内に保持する汚泥の特性などさまざ まなものが指摘されている(図2.1.18参照)。

非常に多くの研究例があるにも関わらず、 MBRにおける膜ファウリング機構の解明が 急速に進行しているとはいい難い状況にある。逆のいい方をすれば、MBR のファウリン グの制御は現時点では効率的かつ合理的に行われてはおらず、MBR の運転コスト削減に

三菱レイヨン・エンジニアリング(PVDF膜、0.4μm) 7)

東レ(PVDF平膜、0.08μm)6)

旭化成ケミカルズ(中空糸膜、PVDF、0.1μm、MUNC-620A) 8) 図2.1.14  延伸法の膜表面の写真(左側:三菱レイヨン・エンジニアリング、親水化PE膜、0.4μm、

右側:クボタ(塩素化ポリエチレン、0.4μm、MBR平膜、各社のカタログ引用 )

図2.1.15  相分離法のMF膜表面の写真

(14)

は大きな余地が残されている、ということでもある。効率的かつ合理的な膜ファウリング 制御方法を確立することで、MBRの適用可能性はまだまだ大きく拡大する可能性がある。

既存の研究でMBRの膜ファウリングに関する理解が進まなかった理由の一つは、ファ ウリング形態を分類せずに検討・考察を行っている研究例が大半であったことにある。膜 ファウリングは以下に示すような直列抵抗モデルで考察することができる。

J=ΔP/μRt=ΔP/{μ(Rm+Rr+Rirr)}

ここで, J:膜透過水フラックス(m3m2/d), ΔP:膜間差圧(Pa)、μ:粘性係数(Pa・s)Rt::

全膜過抵抗(m-1)、 Rm:膜自体のろ過抵抗(m-1)、R::物理的な洗浄により解消可能な可 逆的膜ろ過抵抗(m-1)、 Rirr:物理的洗浄によって解消できない不可逆的膜ろ過抵抗(m-1) である。

既往の研究の大半で、膜ファウリングを可逆的なものと不可逆的なものに分けて検討を していない。実際のMBRはエアレーションや逆洗などの物理的な洗浄を定期的に実行し ながら運転を行っており、これらの物理洗浄が十分な効率で行われることを前提にすれば、

可逆的な膜ファウリングについて考える必要性は小さいはずである(図2.1.17参照)。

 

現在、多くの研究者間で微生物の放出するSMPがMBRの膜ファウリングに大きな影 響を及ぼしている点に関しては概ねコンセンサスが得られている。

膜特性

孔径、細孔径分布 膜材質

膜構造・形状 多孔性

親水性/ 疎水性

汚泥性状

MLSS 粘度 DO

粒径分布

疎水性 / 表面電荷 EPS / SMP

運転条件

flux

ばっ気流量 SRT、HRT

図2.1.16  膜ファウリング影響因子の関係図

MLSS(汚泥混合液浮遊物質濃度)、DO(溶存酸素)

EPS/SMP(細胞外代謝物)、flux(透過水量)

SRT(汚泥滞留時間)、HRT(水理的滞留時間)

(15)

  (2)ファウリングの課題10)

MBRの汚泥ろ過性を適正かつ迅速に評価できる方法を確立できるならば、MBRの運転 管理の効率化に資するところは大であると考えられる。汚泥ろ過性の評価手法確立は、EU のMBR標準化プロジェクトの中でも重要な検討課題のひとつなっている。

MBRの運転において有機物負荷が異なる場合、ファウリング物質の特性が変化するこ と、汚泥質の変化に伴う汚泥ろ過性の変化を把捉する試みについて上述したが、現実の MBR運転においては有機物負荷および汚泥質の変動は不可避であり、ある程度は許容し てゆかねばならない。

一方、MBRの設計・運転においては明確な方針のもとに設定可能な事項が数多く存在 する。ここではこのような事項の例として、膜材質・膜透過水フラックスを変化させた場 合に不可逆的ファウリングを引き起こす物質の特性がどのように変化するのかについて紹 介したい。

ファウリング原因物質の主な構成成分である多糖類やタンパク質中の構成モノマー比が 膜材質の違いに伴って変化していたことが分かる。このことは、両膜(PE膜、PVDF 膜)

モジュール間で異なるタイプの多糖類、タンパク質がそれぞれの膜ファウリングに寄与し ていたことを示唆するものである。多糖類およびタンパク質がMBRの膜ファウリングに 関与しているという情報にとどまっていては、ファウリング機構の理解に大きな進展は見 込めない。今後、「どのような」多糖類およびタンパク質がMBRの膜ファウリンダに関与 しているのか、という点に関する情報・知見の集積が重要であると思われる。

MBR膜への不可逆的ファウリングを引き起こす成分についての確度の高い情報を蓄積 し、このようなプァウリング成分の由来およびMBR運転中における挙動を把握すること で、MBRにおける膜ファウウリングを効率的かつ合理的に制御できる技術の開発、ファ ウリングが起こりにくい新規膜の設計・製作が視野に入ってくるのではないかと考えられ る。

処理水質 敷地面積 余剰汚泥発生量 処理水質 敷地面積

余剰汚泥発生量   

高 少

膜ファウリング 物理洗浄

薬品洗浄

利点 欠点

膜洗浄 (膜の閉塞)

可逆的ファウリング

(物理洗浄によって回復可能)

不可逆的ファウリング

(物理洗浄によって回復不可能)

図2.1.17  膜分離活性汚泥法(MBR)と膜ファウリングの関係図

(16)

今回の実下水でのPTFE膜によるMBR実験の課題としては、具体的に下記項目が挙げ られる。

1)膜特性とMBRにおける膜ファウリングの関連性の検討

2)膜特性が可逆的な膜ファウリングの進行に及ぼす影響 

3)膜特性の中でラフネスが可逆的な膜ファウリングの進行に影響 4)膜特性が不可逆的な膜ファウリングの進行に及ぼす影響

(17)

3.  実験結果と考察

3.1  平膜によるファウリングの挙動解析実験 3.1.1  実験に用いた膜

  (1)PTFEのMF膜4)

  Polytetrafluoroethylene(4 フッ化エチレン、ポリエチレンの水素原子が全てフッ素原

子になっている構造である)を素材とした中空糸型 MF膜を用いた(これは住友電工ファ インポリマー(株)製作)。この膜の原材料樹脂の一般的特性は、耐アルカリ性においては、

PTFE>PVDF、耐酸化物性においては、PTFE>PVDF>PP,PEであり非常に優れている。

図3.1.1に PTFE膜の断面構造を示す。表 3.1.1に PTFE膜の汚染物質と洗浄条件の例

を示す。

この膜は以下の特徴を有している。

    ・高気孔率(70~85%)であるので膜は高流量である。

    ・高強度であり膜は切れにくい。

    ・耐薬品性がありほぼ全ての薬品に安定である。

    ・耐熱性を有しており連続260℃も可能である。

    ・親水処理をしているので水処理用膜としても使用可能である。

      表3.1.1  PTFE膜の汚染物質と洗浄条件の例

膜面の汚染物質 洗浄条件

金属、無機物等  酸(H2SO4,2-4%)

バイオファウリング 酸化剤(NaClO,500-5,000mg/L) 有機物・油分  強アルカリ(NaOH;2~4%(pH14)) シリカ、珪素ポリマー フッ化アンモニウム

  水処理用のPTFE膜モジュールには、加圧型と内圧型があり孔径はそれぞれ0.1から1.0 μmの製品がある。図 3.1.1にPTFEの膜表面の電子顕微鏡写真を示す。

(a)膜断面写真

(18)

(2)実験に用いた膜

実験に用いた膜は 6 種類であり平膜タイプである。表 3.1.2 に実験に用いた膜と膜特性 を示す。ここで、PTFE膜について詳しく説明する。

表3.1.2  実験に用いた膜の種類と膜特性

図3.1.1  PTFE膜の断面構造及び膜表面写真

図3.1.2  PTFE膜の親水化処理の概念図

膜タイプ A B C D E F

UF

PVDF PVDF PVDF PP PTFE PES

接触角(°) 106 83 71 98 85 69

ラフネス(nm) 30 155 209 98 66 22

純水透過性能 52

(lm-2h-1kPa-1) 24 47 54 37 11

0.4

材質 MF

公称孔径(μm) 0.1 0.1 0.22 0.08 20kDa

(95%) (b)膜表面写真

(19)

ここで、PVDF=ポリフッ化ビニリデン、PP=ポリプロピレン、PTFE= ポリテトラフルオ ロエチレン、PES=ポリエーテルスルホン、膜タイプFの20KDa(95%)は、分画分子量が 2万であり(阻止率が 90%の時の値である)を示す。

表3.1.3  PTFE疎水性平膜の流量特性

<*IPA-BP:IPAによるバブルポイントを示す>

表3.1.4  PTFE親水高分子架橋固定膜の流量特性

項目 単位 数値

公称孔径 μm 0.3 0.1 0.08(仮称) 0.03

IPA-BP* kPa 126 257 430 ―

IPA流量 ml/cm2 min

at100kPa 13

2.4

1.4 ―

純水流量 ml/cm2 min at30kPa 9.3 2.1 1.3 ―

膜厚 μm 15 15 9 ―

<*IPA-BP:IPAによるバブルポイントを示す>

項目 単位 数値

公称孔径 μm 0.3 0.1 0.08(仮称) 0.03

IPA-BP* kPa 118 240 355 540

IPA流量 ml/cm2 min at100kPa 18 3.4 3.0 0.40

純水流量 ml/cm2 min at30kPa − − − −

膜厚 μm 17 18 9 85

図3.1.3  PTFE疎水性平膜の流量特性

(20)

         

図3.1.4  PTFE親水高分子架橋固定膜の流量特性

図3.1.6  PTFE親の表面SEM写真(倍率:1万倍)

図3.1.5  PTFE親の表面SEM 写真(倍率:5,000倍)

(21)

図3.1.7  PTFE親の表面SEM写真(倍率:5万倍)

(22)

3.1.2  分析手法

本章では、この後の 3.1.3 の実験結果と考察において行った実験に関する測定・分析手 法について記述する。

測定試料は、平膜のファウリングにおけるモデル下水、膜透過水(処理水)などであり、

それらの試料について全成分、溶解性成分(遠心分離上澄み液をフィルターでろ過したろ 液)などの測定を行った。遠心分離の条件は、3000rpm、5 分である。遠心分離の上澄み のサンプルについては、槽内水の状態によっては沈降しにくい泡や懸濁物質などが混入し てしまうことがあるため、遠心分離した後に孔径100μmのネットフィルタに通したもの を測定に供した。

本研究では溶解性成分を、3000 rpm・5分で遠心分離した後孔径0.5 μmのPTFE製メ ンブレンフィルタ(ADVANTEC、H050A047A)でろ過し通過する成分として定義した。

一般的な分析項目については、以下に示す手順で測定を行った。

(1) MLSS

MBR反応槽内のMLSS(Mixed Liquor Suspended Solid; 活性汚泥浮遊物質)濃度は 下水試験方法 1)に従って測定した。具体的な手順としては、活性汚泥試料 40 mL を遠心 分離機(日立工機、高速冷却遠心機himac CR 21E)にて 5000 rpm・10分で遠心分離し、

上澄み液を捨て、超純水を元の体積となるように添加しよく混合した後、再び同条件で遠 心分離し上澄みを捨てる。得られた汚泥ペレットをあらかじめ重量を測定しておいた磁皿 に取り出し、110℃で 6 時間以上乾燥させ乾燥後の重量を測定した。乾燥後の重量から磁 皿の重量を引き、濃度換算を行うことでMLSS濃度を算出した12)

(2)  pH及び水温

pH計(東亜電波工業、pH METER HM-12P、電極:GST-2419C)を用いて測定した。

(3) 全有機炭素(TOC)濃度・溶解性有機炭素(DOC)濃度

TOC 計(島津製作所、TOC-V)を用いて測定した。測定はサンプルに酸を添加し、ス パージすることで無機炭素を除去し有機炭素のみの測定を行う NPOC として行った。SS を含む試料の TOC に関しては、試料を希釈して濃度調製した後、超音波破砕機(日本精 機製作所、MODEL US-300T)にて3分間破砕処理を行った試料について測定を行った。

DOCに関しては前述のとおり、試料を0.5 μm、PTFE製のメンブレンフィルタでろ過 してから測定した。

(4) 糖

グルコースを標準物質としたフェノール硫酸法2)により測定した。具体的な測定手順を 以下に示す。

1)試料1 mLを試験管に取り、超純水を 2 mL加える(同一試料について、試験管を3本

ずつ用意する)。

(23)

2)5%フェノールを1 mL加える。

3)硫酸(95%濃硫酸)をオートビュレットで 5 mL加え、すぐに強撹拌する。

4)全ての試験管に硫酸を加えたら、100℃の熱湯に試験管ごと浸し、5分間加熱する。

5)熱湯から取り出して約30分経過した後、吸光度(490 nm)を測定する。

6)同一試料の試験管 3本の測定結果のうち、異常値があれば除外して平均値を求め、検量

線から糖濃度を算出する。

*検量線

グルコースを用いた標準溶液を段階的に作成し、その標準液について上記の手順で測定 を行う。標準液についても試験管を3本ずつ用意する。

(5)  タンパク質

アルブミン(ウシ血清製)を標準物質とした Lowry 法 3)により測定した。具体的な測 定手順を以下に示す。

1)試料0.6 mLを試験管に取り、試薬C を3 mL加えた後、10分間以上放置する(同一試

料について、試験管を3本ずつ用意する)。

2)フェノール試薬(フォーリン-チオカルト試薬)を超純水で2倍に希釈したものを0.3 mL

加えすぐに強攪拌する。

3)2時間以上静置し、吸光度(750nm)を測定する。

4)同一試料の試験管 3本の測定結果のうち、異常値があれば除外して平均値を求め、検量

線からタンパク質濃度を算出する。

*検量線

アルブミンを用いた標準溶液を段階的に作成し、その標準液について上記の手順で測定 を行う。標準液についても試験管を3本ずつ用意する。

*試薬の調製

・ A試薬:水酸化ナトリウム2.0 gを500 mLメスフラスコに入れ、超純水を400 mL程 度加え溶解させる。溶解後、炭酸ナトリウム10 gを加え溶解させた後、500 mLまで メスアップする。

・ B試薬:酒石酸ナトリウム0.250 gを25 mLメスフラスコに入れ、超純水を約20 mL 加え溶解させる。溶解後、硫酸銅5水和物0.125 gを加え溶解させた後、25 mLまで メスアップする。

・ C試薬:A試薬と B試薬を体積比で 50:1となるように混合する。

(6) 単糖構成

試料中の有機物を硫酸によって加水分解した後、HPLC(Dionex、DX-500、カラム:

CarboPacPA1)を用いて各単糖の濃度を測定し 4)構成比を算出した。溶離液として0.018

Mの水酸化ナトリウム水溶液を用い、流速 1.0 mL/minでカラムに通液した。カラム温度

は30℃とした。試料の前処理手順(加水分解処理)を以下に示す。

1)試料5 mLをキャップ付き試験管に取る。

(24)

2)2 M H2SO4溶液を1.5(or 1.0) mL加え、キャップを閉め混合する。

※試料のTOC 濃度が5〜15 mg/L程度であれば1.5 mL添加する。TOC濃度が 15 mg/L

以上であれば、5〜15 mg/L程度になるように希釈する。またTOC濃度が 5 mg/L以下 であれば、2 M H2SO4 を1.0 mL 添加する。

3)アルミヒータに試験管を乗せ、100℃で5時間加熱する。

4)加熱後、アルミヒータから試験管を取り出し室温まで放冷し、炭酸バリウムを 1.0 g ず

つ加え硫酸を中和させる。

5)試験管撹拌器を用いて撹拌しながら、2 時間以上反応させる。炭酸バリウムを添加した

後約2時間経過したら、15〜30分静置して沈殿を沈める。

6)試 験 管 内 の 上 澄 み 液 を シ リ ン ジ に 取 り 、0.45 μm PTFE 製 メ ン ブ レ ン フ ィ ル タ

(ADVANTEC、13HP045AN)でろ過する。初めの2 mL程度は捨て、その後のろ液を  HPLCバイアルに取る。

単糖の標準物質として、フコース・ラムノース・アラビノース・ガラクトース・グルコー ス・マンノースの 6 単糖を使用し、各単糖の濃度が1.0 mg/L になるような混合液を調製 し標準溶液とした。この6種類の単糖について、加水分解を行った試料中の濃度を測定し、

試料の単糖構成比を算出した。

(7) フーリエ変換赤外吸光度(Fourier transform infrared; FTIR)スペクトル

液体試料に対してイオン交換膜(AGC エンジニアリング製)による電気透析脱塩を施し た後、凍結乾燥機(東京理化器械、FDU-2100)を用いて粉末化した。

粉末試料を0.25%含むKBrペレットを用意し、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光、

島津製作所を用いて、解像度4 cm-1、積算回数360回測定した。

(8) 13C核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance; NMR)スペクトル

液体試料に対してイオン交換膜(AGC エンジニアリング製)による電気透析脱塩を施し た後、凍結乾燥機(東京理化器械、FDU-2100)を用いて粉末化した。

粉末化した試料について、Brucker MSL300分光計を用いて、周波数75.47 MHz、スピ

ン速度8 kHzにおいて測定した。90°パルスのパルス幅は4.5 μsに設定し、接触時間は 1

msとした。補足時間及び反復間隔はそれぞれ30 ms、4 sとした。

(9) 膜面の FTIRスペクトル

凍結乾燥機(東京理化器械、FDU-2100)で十分に乾燥させた膜試料について、赤外顕微 鏡(日本分光、IRT-3000)を付属したフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光、FT/IR-6100)

による顕微赤外測定を行い、膜面のFTIRスペクトルを得た。対物レンズは×16カセグレ インを使用し、バックグラウンド測定には金メッキ板を使用した。測定条件は解像度:4

cm-1、積算回数:360回、測定範囲(アパーチャ):500 μm×500 μmとした。

(25)

3.1.3  実験結果と考察

(1)実験装置と実験条件 1)テスト装置のフロー

人工下水を用いた平膜によるファウリング実験装置の概略を図 3.1.8 に示す。このなか の散気装置は市販の金魚鉢の送気ポンプの大きさである。実験に用いた平膜は6枚セット されており、1 枚の平膜の膜面積は 0.02m2である。これを 6 枚セットして(総膜面積は

0.12m2になる)、反応槽に入れてある。MBRの有効容積は6.2Lである。吸引ポンプは6

台セットされている。図3.1.9(a)、(b)に実験装置の水槽の寸法(数字の単位は mm)を示 す。

 

図3.1.8  実験装置のフロー

MBR の 有 効 容 積は6.2L

平膜が 6 枚セットさ れている。膜の総面積 は0.12m2

440

310

5

147 135

300

395

最高水位

図3.1.9(a)  実験装置の水槽の寸法(数字の単位はmm)

(26)

0.1 0.13

0.17

0.17

0.1 0.24

0.31 0.44

P

P P P P P P 透過水 原水

希釈水

ばっ気 P

水位計

0.7 引抜管 0.7

0.1

現リアクター

平 膜(6 枚 セ ッ ト さ れ て い る。

図3.1.9(b)  実験装置の各部寸法と水槽の寸法(数字の単位は m)

(27)

装置の概要を写真3.1.1に示す。生物反応槽にセットする平膜は写真3.1.3に示すように 長方形である。人工下水は、CH3COONaが80mg-C/L、Peptoneが15mg-C/L、5mg-N/L、

(NH4)2SO4が15mg-N/L、KH2PO4が4mg-P/Lから構成されている。

写真3.1.1  人工下水を用いた平膜によるファウリング実験装置

写真3.1.2  生物反応槽

圧力計

(NAGANO KEIKI GC61)

吸引ポンプ

(チューブポンプMP1000) 生物反応槽

人口下水

写真3.1.3  平膜テストセル(写真の白い

部分が平膜であり、膜面積は0.02m2/1枚 である)

(28)

2)運転条件

  運転条件は表3.1.5に示すように透過水量を0.4と0.5(m3/m2・d)に変えて膜差圧の変化 を観察した。運転は12分ろ過して、1分停止する間欠運転であり定流量ろ過方式を採用し た。なお、HRTは3.1時間、SRTは36日とRun1、Run2とも同じである。

表3.1.5  運転条件

Run 透過水量(m3/m2・d) HRT(hr.) SRT(day)

Run 1 0.4 3.1 36

Run 2 0.5

HRT(Hydraulic Residence Time)水理学的滞留時間 SRT(Sludge Retention Time)汚泥滞留時間

膜 フ ァ ウ リ ン グ の 進 行 は 膜 間 差 圧 の 経 時 変 化 か ら 評 価 し た 。Run1 で は 膜 間 差 圧 が

35kPaに達した時点で運転を終了し、可逆的・不可逆的膜ファウリングの進行度は、運転

終了後、スポンジの拭き取りによる物理洗浄の前後での純水による膜透過水 Flux を測定 し、それぞれのろ過抵抗を算出後、物理洗浄による膜透過性能の回復率で評価した。

Run2では不可逆的膜ファウリングの進行をみるため、運転期間を500 時間に設定して、

運転期間内に膜間差圧が35kPaに達した膜を膜モジュールから引き上げ、スポンジの拭き 取りによる膜の物理洗浄を繰り返す運転を行った。物理洗浄後の膜間差圧が20kPaに達し た膜は不可逆的膜ファウリングが進行したと考え、運転を終了した。Run2 では不可逆的 膜ファウリングの程度を SEM 観察によって行い、また、膜閉塞物質の差異について検討 するため、閉塞膜をアルカリ(pH=12)に24時間浸漬させて、抽出した成分を膜閉塞物質 として以後の分析を行った。

図3.1.10にPTFE膜の表面ラフネスの写真を示す。

平膜のラフネスの計算は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて表面積を平均高さで割った ものとして計算した(図 3.1.10 参照)。平膜の接触角は接触角測定装置を用いて、純水水 滴を膜表面に滴下し、水滴の接触角を目視により測定する。平膜の純水透過水量はクロス フローろ過装置を用い、段階的に操作圧を上昇させて純水透過水量を測定した。

(29)

写真2.4  膜の表面ラフネスの写真

442.04 [nm]

5.00 µm 10.00 x 10.00 µm 0.00  住友親水008

[nm]

442.04

0.00

5.00 µm 10.00 x 10.00 µm

 住友親水008 全体

 長さX 10.000[µm]

 長さY 10.000[µm]

面積 100.000[µm²]

Ra 61.535[nm]

Rz 651.463[nm]

Rzjis 294.047[nm]

Rq 78.472[nm]

Rp 210.874[nm]

Rv 440.589[nm]

A  長さX  長さY 面積 Ra Rz Rzjis Rq Rp Rv

B  長さX  長さY 面積 Ra Rz Rzjis Rq Rp Rv

図3.1.10  PTFE膜の表面ラフネスの写真

(30)

(2)平膜のファウリング実験(Run1:Flux=0.4m/day))

1)Run1の膜間差圧変化

  図3.1.12にRun1 の4つの膜によるTMPの経時変化を示す。その結果、膜によって明

らかな膜ファウリングの進行の違いを確認した。膜差圧が35kPaになった時点でスポンジ による物理洗浄を行った。各膜のファウリングの進行度から膜A,E,F は高い膜透過性能を 示した。一方で膜B,Cは急激な膜間差圧の上昇が発生した。UF膜のFに関しては高い膜 透過性能を示したMF膜(A,E)と変わらない性能を示した。

  参考データ例として、図 3.1.12に Run1での 4種類の膜(Fのみ UF膜である)TMP 経日変化を示す。膜F以外の UF膜では膜間差圧が急激に上昇する。

0 10 20 30 40 50

0 50 100 150 200 250 300

運転時間(h)

膜 間 差 圧 ( kP a)

35kPa

B A

C D E F

図3.1.11  Run1 TMPの経時変化(Flux=0.4m3/d、膜は A、B、C、D、E)

98% 85% 92% 98% 99%

97%

膜透過性能 

回復率 

0 10 20 30 40

0 50 100 150 200 250 300

運転時間(h)

膜 間 差 圧 (k P a ) F G H I J

図3.1.12  Run1 TMP経日変化( Flux=0.4m/d)

 

(31)

2)Run 1:各種の膜による処理水質(TOC)の違い

  図3.1.13にRun1における9種類(MF.UF)による処理水質(TOC)の違いを示す。そ

の結果、MF膜(A,B,D,D,E)よりもUF膜(F,G,H,I)処理水のほうがTOCは低い。

図3.1.14にRun1における6種類の膜による処理水質(TOC)の違いを示す。

3)可逆ファウリングの進行度(物理洗浄の効果)

  図3.1.15に可逆的膜ファウリング進行度(物理洗浄の効果)を示す。その結果、全ての

膜ともファウリングによりろ過抵抗が大きくなったが、スポンジによる物理洗浄により汚 れが除去されて透過性能が90%回復した。

0 1 2 3 4 5

(mg/L)

図3.1.13  Run1 膜による処理水質(TOC)の違い(9種類の膜)

 

  A    B    C  D    E      F G H I

MF膜 UF膜

0 1 2 3 4 5

(mg/L)

  A        B        C    D        E        F

図3.1.14  Run1  膜による処理水質(TOC)の違い(AからF膜、6種類)

MF膜 UF膜

(32)

4)Run1:6種類の膜のATR-FTIRのスペクトル解析 

ATR:Attenuated Total Reflection( 全 反 射 )、FTIR:Fourier Transform Infrared

Spectroscopy(フーリエ変換赤外分光法)の測定装置は、島津の IR-7500S を使用した。

横軸は波数(波長の逆数)、縦軸は吸光度ですが、標準化している(それぞれの試料におけ る最高値を1としています)。

  図 3.1.16 から図 3.1.21 に Run1 における膜 A、B,C,D,E,F 膜の新膜と物理洗浄後の

ATR-FTIRスペクトルをそれぞれ示す。

0 1 2 3 4 5 6 7

ろ過抵抗(1013 m-1

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

回復率

運転後 物理洗浄後

図3.1.15  可逆的膜ファウリング進行度(6種類の膜)

  A        B      C        D        E        F       MF膜   UF膜

500 1000

1500 2000

図3.1.16  Run1:膜A の新膜と物理的洗浄後のATR-FTIRスペクトル

物 理 洗 浄

新膜 A

波数(cm-1) C

(33)

500 700

900 1100

1300 1500

1700 1900

図3.1.17  Run1:膜Bの新膜と物理的洗浄後の ATR-FTIRスペクトル

新膜 B

物 理 洗 浄

500 1000

1500 2000

図3.1.18  Run1:膜Cの新膜と物理的洗浄後の ATR-FTIRスペクトル

新膜 C

物 理 洗 浄

波数(cm-1)

波数(cm-1)

(34)

500 1000

1500 2000

500 1000

1500 2000

図3.1.19  Run1:膜Dの新膜と物理的洗浄後のATR-FTIRスペクトル

図3.1.20  Run1:膜Eの新膜と物理的洗浄後の ATR-FTIRスペクトル

新膜 E

物 理 洗 浄 物 理 洗 浄

新膜 D

波数(cm-1)

波数(cm-1)

(35)

図3.1.22に膜特性がファウリングに及ぼす影響を示す。

(a)膜の膜表面粗さ(ラフネス)と膜フ

ァウリング速度の関係 R2 = 0.9761

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 100 200 300

ラフネス(nm)

dTMP/dt(kPa/h)

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

50 60 70 80 90 100 110 120

接触角(°)

dTMP/dt(kPa/h)

(b)膜の接触角と膜ファウリング速度 の関係

500 1000

1500 2000

図3.1.21  Run1:膜Fの新膜と物理的洗浄後のATR-FTIRスペクトル

新膜 F

物 理 洗 浄

波数(cm-1)

(36)

Run1 における膜ファウリングは運転終了後 、物理洗浄前後で膜透 過性能の回復率が 90%以上得られたことから可逆的膜ファウリングの進行によるものであることが明らか となった。図3.1.11に示した膜間差圧の経時変化における膜ファウリング速度(dTMP/dt)

と膜表面粗さ(ラフネス)の関係を図3.1.12の(b)に示す。膜ファウリング速度とラフネスの 間には相関があり、可逆的膜ファウリングにはラフネスのような膜表面の構造に関わる膜 特性が影響することが示された。

  しかし、膜の接触角や純水透過性能と膜ファウリング速度(dTMP/dt)には、相関関係 が見られなかった。

(3)平膜のファウリング実験(Run2:Flux=0.5m/day)) 1)ファウリングによる膜間差圧実験

図 3.1.23 から図 3.1.26 には、Run 2 の条件での各種膜(A,D,E,F)の膜間差圧の経時

変化を示す。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 20 40 60

純水透過性能(lm-2h-1kPa-1)

dTMP/dt(kPa/h)

0 10 20 30 40 50

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

膜間差圧(kPa)

図3.1.22  膜特性がファウリングに及ぼす影響

(c)膜の純水透過性能と膜ファウリン グ速度の関係

膜A

運転時間(hr.)

図3.1.23

 

Run 2 (Flux=0.5m3/d)における膜Aの膜間差圧の経時変化

(37)

0 10 20 30 40 50

0 100 200 300 400 500

膜間差圧(kPa)

0 10 20 30 40 50

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

膜間差圧(kPa)

0 10 20 30 40 50

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

膜間差圧(kPa)

図3.1.26

 

Run 2(Flux=0.5m3/d)における膜Fの膜間差圧の経時変化 膜D

膜E

膜F 運転時間(hr.)

運転時間(hr.)

20kPa

運転時間(hr.)

図3.1.24  Run 2(Flux=0.5m3/d)における膜Dの膜間差圧の経時変化

図3.1.25

 

Run 2(Flux=0.5m3/d)における膜Eの膜間差圧の経時変化

(38)

Run2では、Run1で膜ファウリングの進行が軽微であった 4種類の膜(A,D,E,F)を使用 して各膜の不可逆的膜ファウリングの進行影響について検討を行った。各膜の不可逆的膜 ファウリングの進行度(膜間差圧)は、物理洗浄後に残存するろ過抵抗の値からD>F>E>A となった。すなわち、膜Dが膜間差圧の上昇が早い結果となった。

2)Run 2:不可逆的ファウリングの進行度

  図 3.1.27 に膜 A,D,E,F における不可逆的ファウリング進行度を示す。その結果、不可

逆的な膜ファウリングの進行度の順番は、D>F>E>Aであった。すなわち、Dの膜が膜 間差圧の上昇が一番早い結果となった。

図3.1.28にRun2における膜A,D,E,Fによる処理水質(TOC)の違いを示す。その結果、

Run1に比べてRun2の方が水質がよい結果となった。

図3.1.27  膜A,D,E,Fにおける不可逆的ファウリング進行度

0 10 20 30 40

ろ 過 抵 抗 ( 1 0

11

m

-1

      A        D        E        F

0 1 2 3 4 5

(mg/L)

Run1 flux=0.4m/d Run2 flux=0.5m/d

  A      D        E        F 図3.1.28  Run2  膜A,D,E,Fによる処理水質(TOC)の違い

MF膜 UF膜

(39)

4)Run2:4種類の膜のATR-FTIRスペクトル解析

  図 3.1.29 か ら 図 3.1.32 に 、Run2 に お け る 膜 A,D,E,F の 新 膜 と 物 理 的 洗 浄 後 の

ATR-FTIRスペクトル解析を示す。

C

500 1000

1500 2000

500 2000 1500 1000 500

500 1000

1500 2000

図3.1.29  Run2:膜Aの新膜と物理的洗浄後の ATR-FTIRスペクトル

図3.1.30  Run2:膜Dの新膜と物理的洗浄後のATR-FTIRスペクトル

図3.1.31  Run2:膜Eの新膜と物理的洗浄後の ATR-FTIRスペクトル

波数(cm-1)

波数(cm-1) 物 理 洗 浄

物 理 洗 浄

物 理 洗 浄 新膜A

新膜D

新膜E

波数(cm-1)

(40)

図3.1.33にRun2における膜特性と不可逆的ろ過抵抗の関係を示す。

0 10 20 30 40 50

50 60 70 80 90 100 110 120

接触角(°)

ろ過抵抗(10 m-1

0 10 20 30 40 50

0 100 200 300

ラフネス(nm) ろ過抵抗(1011 m-1

0 10 20 30 40 50

0 20 40 60

純水透過性能(lm- 2h-1kPa- 1) ろ過抵抗(1011 m-1

図3.1.33  Run2:膜特性と不可逆的ろ過抵抗の関係

(b)膜の接触角と膜ファウリング速度 の関係

(a)膜のラフネスとファウリング速度 の関係

(c)膜の純水透過性能と膜ファウリング 速度の関係

500 1000

1500 2000

図3.1.32  Run2:膜Fの新膜と物理的洗浄後のATR-FTIRスペクトル

波数(cm-1) 物 理 洗 浄

新膜F

(41)

Run1 においては膜表面の粗さを示すラフネスと可逆的膜ファウリングとの間で相関が 見られた。しかし、Run2 において進行する不可逆的膜ファウリングはラフネスなどの膜 特性と明確な関連性は得られなかった。また、Run2 において、各膜から抽出した物質の 単糖構成に違いがみられたことから、膜によって不可逆的膜ファウリングを引き起こして いた物質が異なっていたことが明らかとなった。

膜表面の粗さ(ラフネス)と膜ファウリング膜表面が粗い(ラフネスが大きい)と優先的 にコロイド状物質が表面の粗い部分に堆積、または吸着(NF、ROにおいて)(Elimelech et al.,1997)するといわれている。

MBR の場合、エアレーションによる物理洗浄効果によって一度堆積、吸着したものが 剥離される可能性も考えられるが、膜表面が滑らか、すなわち平滑な膜表面(ラフネスが小 さい)では上記よりもエアレーションによる物理洗浄効果が大きいと考えられる。

このため一度堆積、吸着しても膜表面が平滑な分、粗い膜表面よりも膜表面での閉塞(膜 ファウリング)が起こりにくい。このことからラフネスが可逆的な膜ファウリングに影響 すると考えられる。

6)生物反応槽内で発生するSMP量

図3.1.34に反応槽内で発生するSMP量を示す。SMPとは、微生物が放出する溶解性代

謝産物(Soluble Microbial Product, SMP)を表す。この結果、DOC、糖、タンパクの順で あった。

  槽内の汚泥性状は安定状態である。

7)膜閉塞物質の物性<有機物濃度>

図3.1.35に膜閉塞物質の特性<有機物濃度>の構成比を示す。

0 20 40 60 80 100 120 140

DOC 糖 タンパク

濃度(mg/L)

図3.1.34  反応槽内で発生するSMP 量

(42)

8)膜閉塞物質の特性

図3.1.36 に膜(D,F,E,A)の閉塞物質の特性を調べた結果を示す。膜閉塞物質の抽出を

行った結果、各膜(D,F,E,A)の単糖構成比が異なることから、膜によって不可逆的膜フ ァウリングを引き起こした物質が異なっていたことが明らかとなった。

  特に、住友電工ファインポリマーのPTFE膜は、マンノース、グルコース、ラムノース 成分が多い。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

構成比(%)

キシロース マンノース グルコース ガラクトース グルコサミン アラビノース ガラクトサミン ラムノース フコース

図3.1.35  膜閉塞物質の特性ー有機物濃度

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

TOC 糖 タンパク

抽出量(ppm/cm2 )

A D E F

図3.1.36  膜(D,F,E,A)の閉塞物質の構成比特性

1

2

4 3

1キシロース

2マンノース

4ガラクトース 3グルコース

5グルコサミン 6アラビノース 7 ガ ラ ク ト サ ミ 8ラムノース 9フコース 6

8

9

1 1

1

2

2 2

3 3

3

4

4 4

5 5

6 8 9

7

9 6

8

8 6

9

7

D     F E A

(43)

9)物理洗浄後の膜表面観察

また、物理洗浄後の膜表面をSEM (Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡) で観察をした。写真 3.1.37 に示すように D は新膜と比較してわずかしか膜細孔径を確認 できなかったことからも不可逆的膜ファウリングの進行が顕著であったことがわかる。一 方、F,E,Aの膜は物理洗浄後の膜は新膜とほとんど変わらない。

しかし、不可逆的膜ファウリングの進行とラフネスなどの膜特性との間で明確な関連性 は得られなかった。

写真3.1.37 Run2 平膜の表面のSEM(上は新膜、下はスポンジ洗浄を行った写真)

(44)

10)物理洗浄後の膜表面観察

図3.1.38にRun2のファウリング進行度を示す。図3.1.39にRun2のファウリング進行 度を示す。

0 5 10 15 20 25 30

ろ過抵抗(1012 m-1

運転後 物理洗浄後 新膜 酸洗浄後 アルカリ洗浄後

0 1 2 3 4 5 6 7

ろ 過 抵 抗 (1 0

13

m

-1

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

回 復 率

運転後 物理洗浄後

図3.1.38  Run2のファウリング進行度

  A        D      E        F   A    B    C  D    E    F G H I

図3.1.39  Run2のファウリング進行度

(45)

(4)孔径の異なるPTFE膜のファウリング(中間経過報告)

三つの孔径の異なる PTFE膜をMBRで運転し、可逆ファウリング進行速度の比較を行 った。実験はまだ途中経過であるが以下に報告する。

1)実験方法

  表3.1.6に平膜によるファウリング実験装置の概要を示す。また、この実験に用いたPTFE

平膜の種類を表 3.1.7 に示す。この表で不織布ありとは、膜の透過水側に数 mm の孔を有 する不織布を支持体としていることを意味する。

表3.1.6  平膜によるファウリング実験の概要(孔径0.08 µm, 0.1 µm, 0.3 µm)

項目 数値

有効容積 6.2 L

HRT 3時間

SRT 30日

膜透過水フラックス 0.4 m3/m2/d(=0.4m/day)

膜面積 0.02 m2×6枚

流入水 酢酸ナトリウムを炭素源とする人工下水

表3.1.7  ファウリング実験に用いたPTFE平膜の種類

No 孔径 膜の支持体に不織布

1 0.08 µm あり

2 0.3 µm あり

3 0.1 µm なし

4 0.08μm なし

フウリング実験は、ぺリスタポンプによる吸引ろ過(12分運転、1分停止) を行い、デー タロガーにより30分毎の膜間差圧(kPa)を測定、差圧が -35kPa 程度に達したら運転を修 了する。そして、3回程度運転を繰り返し、再現性を確認する。

図3.1.40に4種類のPTFE膜による膜間差圧の経時変化(Flux=0.4m/day)を示す。

(46)

図3.1.40  4種類のPTFE膜による膜間差圧の経時変化(Flux=0.4m/day) 運転時間(hr.)

膜間差圧(kPa)

(47)

2)実験結果と考察

  実験はまだ途中であるが(10日間経過)、現在のデータより以下のことが明らかになった。

1)現在、膜間差圧は10kPaであるが(ファウリングの実験は差圧が35kPaになるまで行う)、

  4種類の膜の中で、0.08μmの膜が膜間差圧の上昇が一番は早い傾向にある。

2)一方、膜の支持体として不織布をセットしているが、これに関しては膜間差圧に不織布の有り、

なしは関係ない。

3)膜孔径が0.1μmの不織布ありの実験が、膜間差圧の上昇は小さい傾向を示している。

今後は、現在の実験を継続して行く予定である。膜の孔径の違いがファウリングにどのように 影響を及ぼすのか、粒子の粒径なども絡めて検討していく予定である。

3.1.4  まとめ

  本研究では人工下水を使用し、ベンチスケールMBR装置の連続運転を行い、膜特性の差異が MBRにおける膜ファウリングの進行に及ぼす影響について検討した。モデル下水による各種(6 種類、膜材質、孔径がことなる)の平膜(親水性PTFE膜(ポリテトラフルオロエチレン)を含 む)による実験から以下のことが明らかになった。

(1)Run1(膜透過水量=0.4m/day)における膜ファウリングは運転終了後、物理洗浄前後で膜透 過性能の回復率が90%以上得られたことから膜の汚れは、可逆的膜ファウリングの進行による ものであることが明らかとなった。

(2)6種類の膜で膜差圧が最もゆるやかな膜は、UF膜(分画分子量2万)であった。一方、膜材 質的には、PPの膜が一番汚泥が詰まりやすいという結果である。

(3)PTFE膜の膜間差圧の上昇変化は他の膜に比べて比較的ゆるやかな上昇であった。また、膜を

物理洗浄した結果、膜汚染物がよく落ちることが観察された。これはPTFE膜が汚染に対して 強いためと考えられる。

(4)膜間差圧の経時変化における膜ファウリング速度(dTMP/dt)と膜表面粗さ(ラフネス)の間に は相関があり、可逆的膜ファウリングにはラフネスのような膜表面の構造に関わる膜特性が影 響することが明らかになった。

(5)しかし、膜の接触角や純水透過性能と膜ファウリング速度には、相関関係が見られなかった。

(6)Run2(膜透過水量=0.4m/day)の膜間差圧の経時変化は、Run1 で膜ファウリングの進行が

軽微であった4種類の膜(A,D,E(PTFE膜),F)を使用して各膜の不可逆的膜ファウリングの進行 影響について検討を行った。各膜の不可逆的膜ファウリングの進行度は、物理洗浄後に残存す るろ過抵抗の値からD>F>E>Aとなった。

(7)人工下水の実験では、汚れ物質中にタンパク成分はあるが糖類はない。しかし、膜への付着物 質の分析には検出されている。これは、生物反応により発生する代謝物ではないかと考えられ

る。

(48)

3.2  PTFE膜モジュールによる下水処理実験

3.2.1  創生川下水再生プラザの概要

  創成川(そうせいがわ)は、北海道札幌市の中心を流れる石狩川水系伏籠川支流の一級河川で ある。札幌市を東西に画する起点となっている。江戸時代に「大友堀」として作られ、明治時代 に「創成川」と改名された。長さ14.2km、流域面積は19.0km²ある。

創生川の下水処理区域は、都心部の一部、南北は JR 札幌駅から北 46 条付近まで、東西は東 16丁目からJR学園都市線(北大は除く)までを受け持っており、ビル排水等の流入が多い区域 である。

  創成川水再生プラザは札幌で初めての大規模水再生プラザとして昭和42年4月に運転を始め、

寒冷地対策として処理施設のすべてに上屋がかけられた。流入量の増加に伴い、昭和56年4月 から運転を開始した第 2 処理施設は麻生球場の地下に池槽を設け土地の有効利用を図っている。

平成2年には雨水ポンプ施設、平成3年秋には高度処理施設が運転を開始している。この高度処 理水は安春川などに導水し、せせらぎの回復に利用している。図 3.2.1 に創成川近辺の河川及び 高度処理水の送水図を示す。創生川下水再生プラザの住所は北海道札幌市北区麻生町8丁目1−

15である。

  また、平成9年には合流式下水道の雨水汚濁負荷の軽減と融雪を兼ねた貯留管施設の運転を開 始している。札幌市下水道事業の概要(H17年度末)は 処理場数が10箇所であり、下水道普及

率99.5 % (処理人口/総人口)、下水処理量は約100万m3/日、1日半で札幌ドームが満杯の規模

である。

図 3.2.1  創成川近辺の河川及び高度処理水の

送水

(49)

図3.2.2に創成川水再生プラザの平面図を示す。図3.2.3に創成川水再生プラザの上空写真(点 線部分が創成川の下水処理場であり下水処理場の全体が地下に埋設されている)を示す。

図3.2.2  創成川水再生プラザの平面図

図3.2.3  創成川水再生プラザの上空写真(点線部分が創成川の下水処理場であり下水処

理場の全体が地下に埋設されている)

創成川水再生プラザ

(50)

表3.2.1に創成川下水処理施設の概要を示す。図3.2.4に創生川下水処理場のフローを示す。本実

験は、図3.2.4の左側の下水道管からのバイパスを取水して実験を行った。

       

図3.2.4  創生川下水処理場のフロー

表3.2.1  創成川下水処理施設の概要

(51)

図3.2.5に創生川下水再生プラザにおける下水再利用の実験の概略フローを示す。

       

初沈槽

自動除塵機

計量装置

MBR

下水再利用のMBR実験フロー

図3.2.5  創生川下水再生プラザにおける下水再利用の実験フロー

下水

共用設備

専用設備

(52)

3.2.2  MBR実験場と装置の改造       

  写真3.2.1から写真3.2.4に、創生川下水再生プラサのMBR実験場設備を示す。   

写真3.2.1  創生川の下水再生プラザの一部(この建屋の2階にMBRの実験場がある)

写真3.2.2  下水の取水部分の一部(スクリーン)

(53)

図3.2.6にMBRの水槽図面を示す。このMBR水槽は4つから構成されており、それぞれの 水槽に膜を入れて各種の条件(空気量、運転時間の停止・連続、吸引圧力など)にて実験ができ るようになっている。写真3.2.5から写真3.2.8にそれぞれ水槽、制御盤、MBR処理水出口の写 真を示す。

写真3.2.3  下水処理の取水部分(この写真の正面から下水を取水して配管にてMBR装置に送

る)

写真3.2.4  下水取水部の拡大写真(この下水をMBRに入れる)

下水 このポンプにて下水を MBR

装置に送水している。

(54)

図3.2.6 MBRの水槽図面

(55)

写真3.2.6  MBR実験装置を上部からみた写真

写真3.2.5  MBR装置の全体写真(MBR装置は4つの水槽から構成されている)

電気制御盤

水槽のこの中に膜がある

図 2.1.8  中空糸膜すだれ型 Type B1(ゼノン、Korea Membrane Separation) 
図 2.1.12  HUBER Vacuum Rotation Membrane(VRM Bioreactor) 
図 2.1.13  Norit の槽外型 MBR の実用例(AL Palm Jumeria、17,000m3/day)
図 3.1.3  PTFE 疎水性平膜の流量特性
+7

参照

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