第3章 粒界偏析元素によるr値の面内異方性向上
3-1 緒言
Nb系極低炭素鋼において、Bの添加により固溶NをBNとして析出させることによ りNbCが単独で析出し、連続焼鈍時にこの炭化物が溶解し易くなり固溶C化することで BH性向上に効果があることが第2章で明確になった。これはB添加による析出挙動の制 御による効果である。
一方、深絞り用鋼板としては高r値を有するだけでなく、r 値の面内異方性が小さいこ とが望ましい。特に円筒深絞り成形では、r 値の面内異方性が成形後のイヤリングの発生 に大きな影響を与えることが知られており1)、r値の面内異方性を低減することが必要で ある。
従来、極低炭素IF 鋼は、深絞り性に優れることから自動車用鋼板として多用されてい る2-3)が、一方で、粒界強度の低下から脆化現象が発生し易くなる4-6)。脆性破壊抑制のた めIF鋼に微量Bの添加が有効であることが知られているが、r値の面内異方性に及ぼす Bの影響についてはこれまでに研究報告はない。
以上の観点から、Ti、Nbを複合添加した極低炭素IF鋼についてB添加量を0〜18ppm と変化させ、冷延焼鈍板でのr値の面内異方性に及ぼすB量について研究を行った。
その結果、冷延焼鈍板のr値の面内異方性とB量には強い相関があること、およびその特 性が熱延時の変態集合組織形成に強く影響されているという知見が得られた。
3-2 実験方法
Ti-Nb 添加極低炭素 IF 鋼を真空溶解により溶製した。供試鋼の化学成分を Table 3-1 に示す。化学量論上Cを固定するのに有効なTi量をCとの原子比で3〜4(Ti=0.04%)と したIF 鋼を基本組成として、B 量を 0、6ppm、18ppm に変化させた鋼塊を真空溶解に より作製した。
熱間圧延、冷間圧延、再結晶処理条件をFig.3-1に示す。鋼塊は1250℃で1時間加熱保 持後、30mm厚とした後、再度 1250℃で30分加熱保持後3パス圧延により仕上げ温
度 920℃で 3.5mm厚とした。ついで、巻取り処理として一旦室温まで冷却した後、再度
680℃で1時間加熱保持した。酸洗後冷間圧下率80%で0.7mm厚の冷延板とし、流動槽
式の熱処理炉で800℃あるいは850℃の再結晶焼鈍を実施した。焼鈍後の試料には圧下率
0.7%の調質圧延を施した。なお、熱膨張率計で測定した Ar3変態温度(20℃/sで 1000℃
に加熱後、30℃/sで冷却)は、B無添加鋼で910℃、B=6ppm添加鋼で890℃、B=18ppm
添加鋼で870℃であった。
Table 3-1 供試鋼の化学成分/mass%
Ti*=Total Ti-1.5*S-3.43*N Ti*/C=原子比
C Mn P S Al N Ti Nb B
0.0016 0.0020 0.0014
0.10 0.11 0.08
0.012 0.010 0.011
0.008 0.006 0.006
0.041 0.044 0.046
0.0017 0.0020 0.0018
0.004 0.004 0.004
0 0.0006 0.0018 0.039
0.041 0.038
Ti*/C 3.3 3.1 4.1
Table 3-1 供試鋼の化学成分/mass%
Ti*=Total Ti-1.5*S-3.43*N Ti*/C=原子比
C Mn P S Al N Ti Nb B
0.0016 0.0020 0.0014
0.10 0.11 0.08
0.012 0.010 0.011
0.008 0.006 0.006
0.041 0.044 0.046
0.0017 0.0020 0.0018
0.004 0.004 0.004
0 0.0006 0.0018 0.039
0.041 0.038
Ti*/C 3.3 3.1 4.1
加熱温度 1250℃-30分
FT=920℃
真空 溶解鋼
巻取処理=680℃
3.5mm→0.7mm (冷間圧下率=80%)
800、850℃-20秒
20℃/s
15℃/s 空冷 20℃/hr 炉冷
30mm→3.5mm 再結晶焼鈍
Fig.3-1 実験方法 加熱温度
1250℃-30分
FT=920℃
真空 溶解鋼
巻取処理=680℃
3.5mm→0.7mm (冷間圧下率=80%)
800、850℃-20秒
20℃/s
15℃/s 空冷 20℃/hr 炉冷
30mm→3.5mm 再結晶焼鈍
Fig.3-1 実験方法
r値はJIS5号試験片により以下のように測定した。試験片に15%の歪みを付与し、試 験片の変形前後の板幅をW0およびW、板厚をT0およびT、長さをL0およびLとすると r=ln(W/W0)/ln(T/T0)=ln(W/W0)/ln(W0L0/WL)
平均r値=(rL+2rD+rC)/4
r値の面内異方性=Δr=(rL-2rD+rC)/2
但し、圧延方向に対して0°、45°、90°方向を各々rL、rD、rCで表示した。
集合組織は X 線による(200)極 点図、電子線 回折による EBSD(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)、三次元結晶方位解析法により計算した結晶方位分布関 数 ODF(Orientation Distribution Function)により評価した。なお、測定は全て板厚 1/4面で実施した。
鋼中析出 B 量は 10%アセチルアセトン系電解液で抽出した残渣を灰化、溶融後、ICP 発光分光分析で分析した。その結果、析出B量は0mass%であったため、添加したBは 全て固溶Bであることを確認した。
3-3 実験結果
3-3-1 冷延焼鈍板のr値およびΔr値に及ぼすBの影響
800℃で再結晶焼鈍後のr値およびΔrに及ぼす鋼中B量の影響をFig.3-2に示す。B 添加によりr値は単調に低下し、これは従来報告されている研究結果7-11)を支持するもの である。一方、各方向でのr値についてみると、rDはB量によらずほとんど変化しない が、rLとrCはB 量の増加に従い低下する。その結果、ΔrはB添加により大きく低減 し、Δrが0に近づく。
850℃で再結晶焼鈍後の r 値およびΔrに及ぼす鋼中 B 量の影響を Fig.3-3 に示す。
800℃焼鈍材と同様に、B添加によりr値は単調に低下し、またΔrはB添加により大き
く低減し、Δrが0に近づく。
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Δ r
0 5 10 15 20
B 量 /ppm 1.0
1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
r値 L
C
D 平均r値
Fig.3-2 r 値およびr値の面内異方性に及ぼすB添加量の影響(800℃焼鈍)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
Δ r
0 5 10 15 20
B 量 /ppm 1.0
1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
r値 L
C
D 平均r値
Fig.3-2 r 値およびr値の面内異方性に及ぼすB添加量の影響(800℃焼鈍)
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
r値
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
L C
D 平均r値
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
Δ r
Fig.3-3 r 値の面内異方性に及ぼすB添加の影響(850℃焼鈍)
1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0
r値
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
L C
D 平均r値
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
0 5 10 15 20
B 量 /ppm
Δ r
Fig.3-3 r 値の面内異方性に及ぼすB添加の影響(850℃焼鈍)
このようなr値の面内異方性の異なる冷延鋼板を打ち抜き径60mmφ、絞り径32mm φ、絞り比1.8でコニカルカップに成形した外観をFig.3-4に示す。B無添加鋼ではΔr が大きいため、45°方向の耳部は凹となり、0°、90°方向の耳部は凸を示し、イヤリ ングが大きい。B=18ppm添加鋼ではΔrを0.1以下と小さくすることにより、方向によ る凹凸は非常に小さくなり、イヤリングが極めて小さくなることが明らかとなった。
3-3-2 冷延焼鈍板の集合組織に及ぼすBの影響
B 添加鋼と無添加鋼の 800℃焼鈍材の(200)極点図を Fig.3-5 に示す。B 添加により
<111>//ND 集合組織、特に{111}<112>への集積が強くなり、また{001}<110>への集積も 若干増加する傾向を示す。{111}<112>集合組織の発達については、谷川ら10)の研究におい て、熱延仕上げ温度を低温化(885℃以下)とすると B 無添加鋼に比べ、B 添加材では
{111}<112>への集積が強くなるとの報告がある。但しr値の異方性については調べられて
いない。
Fig.3-4 カップ成形後の形状に及ぼすB添加量の影響
ブランク径60mmφ、パンチ径32mmφ、絞り比1.8
B=0% B=0.0006% B=0.0018%
ブランク径60mmφ、パンチ径32mmφ、絞り比1.8
B=0% B=0.0006% B=0.0018%
3-3-3 熱延板の結晶粒径の影響
焼鈍板のr値を向上させるためには、熱延板の結晶粒径を小さくすることが望ましい ことが知られている12)。熱延板の結晶粒径は小さいほど、冷延-再結晶時に粒界から(111) が生成し易く、その結果として異方性が小さくなるが、一方、結晶粒が粗大であると、
冷延等の加工を加えた際に粒内からの変形の寄与が大きくなり、不均一変形帯が形成さ れやすい。このような不均一変形帯は、再結晶により Goss 方位({110}<001>)を形成し やすくなる。この方位は 90°方向に高いr値を、45°方向に低いr値を与えるので、
面内異方性が大きくなる。
本実験において、熱間圧延後680℃の高温巻取り相当の熱処理を行った後の熱延板の
組織をFig.3-6に示す。B添加量の増加に従い、結晶粒度番号は7.8(26μm)、8.0(25μ
m)、8.5(21μm)と変化し、若干微細化の傾向を示す。谷川ら10)が、Ti添加IF鋼におい
て仕上げ圧延温度を 885℃〜870℃とした場合、B 添加により熱延板の結晶粒微細化が 認められるとの結果と傾向は一致する。また細谷ら13)は、熱間加工後のフェライト組織 に及ぼす熱延仕上温度の影響について検討した結果、B添加の有無により結晶粒度番号 が8から9へ変化し、微細化することを述べている。
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
RD
TD B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
TD RD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
1.0 0.5 1.5 2.03.0
Fig.3-5 冷延焼鈍板の(200)極点図(800℃焼鈍材)
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
RD
TD B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
RD
TD B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
TD RD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
TD RD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
△ △
△ △
1.0 0.5 1.5 2.03.0 1.0 0.5 1.5 2.03.0
Fig.3-5 冷延焼鈍板の(200)極点図(800℃焼鈍材)
瀬沼ら14)は、極低炭素鋼を用い、仕上げ圧延後の冷却開始時間を変化させることで、熱 延板の結晶粒径を28μmと54μmに調整し、また冷延圧下率を80%と90%と変化 させることにより、熱延板の結晶粒微細化と冷延圧下率の増加によりΔrが小さくなる ことを報告している。
本実験の場合、熱延板の結晶粒径はFig.3-6に示す様にB添加により微細化している が、B無添加鋼で28μm、B=6ppm鋼で25μmであり、瀬沼らの実験に比較すると結 晶粒径の差は非常に小さく、Fig.3-2 に示すΔrの変化に及ぼす結晶粒径の影響はあま り大きくないと考えられる。また瀬沼らの実験鋼はTi、Nbを含まない単純な極低炭素 鋼であるのに対し、本実験の供試鋼は B を添加した IF鋼である。そこで、B 添加 IF 鋼では、熱延板の結晶方位の発達を介してB量が冷延鋼板のr値の異方性に影響を及ぼ すものと考えられる。
以上のように、本実験ではB添加により焼鈍板のr値は単調に低下し、r値の面内異方 性は非常に小さくなることがわかった。また B 添加により焼鈍板では{001}<110>や粒 界および粒内の変形帯から核生成しやすい{111}<112>方位が認められ、Bの有無により 焼鈍板の集合組織が異なることが明らかとなった。以上の結果からΔrに及ぼす影響と しては熱延板の結晶粒径以外に、集合組織が影響を及ぼしていることが考えられる。
Fig.3-6 熱延板の結晶粒径に及ぼすB添加量の影響
B=0% B=0.0006% B=0.0018%
B=0% B=0.0006% B=0.0018%
3-3-4 熱延板の集合組織に及ぼすBの影響
熱延板のr値とr値の面内異方性をFig.3-7に示す。熱延板のr値はB添加によらず ほぼ同じ値(0.9)を示すが、r値の面内異方性はB添加によりL、C方向のr値(rL、 rC)が大きく低下し、D方向(rD)が上昇して、Bの添加により面内異方性は非常に 大きくなっている。
この時の熱延板の(200)極点図をFig.3-8に示す。B無添加ではいずれの方位にも特に強 い集積は認められず、ほぼランダムである。一方、B=6ppm添加鋼においてα-fiberと γ-fiberに集積が認められるようになり、B量をさらに増加させたB=18ppm添加鋼で はα-fiber、γ-fiber とも発達する。このように B 添加により熱延板の集合組織は大き く異なることが明らかとなった。
Fig.3-7 熱延板のr値の面内異方性 D
L C r
0 10 20
0.5 0.7 0.9 1.1 1.3
r値
B 量 /ppm D
L C rr
0 10 20
0.5 0.7 0.9 1.1 1.3
r値
B 量 /ppm
Fig.3-8 熱延板の(200)極点図
RD
TD
B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
RD
TD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
RD
TD
B=0.0006%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
1.0 0.5 1.5 2.0
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
RD
TD
B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
RD
TD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
RD
TD
B=0.0006%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
RD
TD
B=0.0018%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
RD
TD
B=0%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
RD
TD
B=0.0006%
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲
1.0 0.5 1.5 2.0 1.0 0.5 1.5 2.0
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
3-3-5 r値の異方性に及ぼす熱延板の集合組織の影響
Fig.3-7およびFig.3-8に示したように、熱延板ではB添加によりα-fiber、γ-fiber が発達し、r 値の面内異方性が大きく異なる。このように集合組織の発達した材料にお いても、何らかの方法で特定の結晶方位の発達を抑制することで、焼鈍板のr値の異方 性が変わると推定し、以下の実験を行った。
熱延板を、再度 950℃のγ域に加熱し、1min 保持した後、直ちに水冷した。実験 方法をFig.3-9に示す。
950℃で再加熱後の熱延板の集合組織をFig.3-10に示す。上述のFig.3-8の熱延板の集
合組織に比較すると、特にB添加材の集合組織に見られた特定方位への集積は小さくなっ ている。B添加量による再加熱処理に伴う集積の違いはほとんど認められず、いずれの試 料も熱延板の集合組織はほぼ同程度で弱い集積となった。
加熱温度 1250℃-30分
FT=920℃ 巻取処理=680℃
空冷 20℃/hr
空冷
950℃-1分
3.5mm→0.7mm
850℃-20秒
20℃/s
15℃/s 30mm→3.5mm
加熱温度 1250℃-30分
FT=920℃ 巻取処理=680℃
空冷 20℃/hr
空冷
950℃-1分
3.5mm→0.7mm
850℃-20秒
20℃/s
15℃/s 30mm→3.5mm
Fig.3-9 熱延板結晶方位ランダム化熱処理法
このときの熱延板の組織はいったんγ域で加熱保持したため比較的粗大化している が、B 添加による差はあまり認められず、いずれもほぼ100μm 程度の粒径であった。
これらの熱延板を冷延-焼鈍した際のr 値およびr値の異方性をFig.3-11 に示す。B 添加 量によらずr値はほぼ同じ値を示すが、Δrはいずれも1.1と大きい値を示した。Fig.3-2 に示した結果と比較すると、B添加材でr値の面内異方性が大きくなり、変化しているこ とがわかる。
2.5 2.0 1.5 1.0 0.5
0 0 5 10 15 20
L C
D r
r値
B 量 / ppm
Δr=1.12 Δr=1.10 Δr=1.07 2.5
2.0 1.5 1.0 0.5
0 0 5 10 15 20
L C
D rr
r値
B 量 / ppm
Δr=1.12 Δr=1.10 Δr=1.07
Fig.3-11 ランダム化処理材の冷延焼鈍後のr値及び面内異方性 (焼鈍温度850℃-20秒)
Fig.3-10 ランダム化処理後の熱延板の集合組織 B=0.0018%
B=0.0006%
B=0%
TD RD
TD RD
TD RD
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
1.0 0.5 1.5 2.0
Fig.3-10 ランダム化処理後の熱延板の集合組織 B=0.0018%
B=0.0006%
B=0%
TD RD
TD RD
TD RD
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
▲:{111}<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110>
1.0 0.5 1.5 2.0 1.0 0.5 1.5 2.0
L,C,D方向のr値の変化はB添加の有無に関わらず同じ傾向を示し、L,C方向のr 値(rL、rC)が高く、D方向のr値(rD)が低い型を示す。
このようにB添加鋼でr値の異方性が高くなった理由は、熱延板の再加熱処理により 熱延板の集合組織がいずれの方位にもとくに大きな集積を示さない、比較的ランダム な弱い集積に変化したためであり、熱延板の集合組織が冷延-焼鈍後のr値の面内異方 性に大きな影響を与えると結論される。
3-4 考察
3-4-1 EBSDによる熱延板の方位解析
3-3-5の結果から熱延板の集合組織はΔrに影響を与えることが明らかとなった。
そこで、B添加の有無による熱延板の集合組織を詳細に研究するためEBSDによる測 定を行った。
B無添加鋼とB=18ppm添加鋼の熱延板の圧延断面、板厚1/4付近をEBSDで測定 した結果から算出した熱延板のODFをFig.3-12に示す。表示はBunge法ψ2=45°
である。B 無添加鋼はγ-fiber に若干の集積が見られるが、その集積度は小さい。ま た{001}<110>にも集積がみられるものの非常に弱い。
B=0.0018%
B=0%
Φ
0 30 60 90
0
Ψ1
90 60 30
γ-fiber (113)
(332) (221)
(112) (001)
{001}<110>
{113}<110>
{332}<113>
{221}<013>
{332}<023>
{111}<112>
0 30Ψ1 60 90 0
90 60 30
Φ
(001)
γ-fiber {111}<121>
{001}<110>
{111}<110>
0.5 9
0.5 1
32
{111}<110>
{111}<112>
9 0.5
(332)
{332}<113>
0.5 0.5 2
1
1 0.5
2 {111}<110> 3
{111}<110>
{111}<112>
{113}<110>
(113)
0.5 1.0 2.0 3.0 5.0 9.0
B=0.0018%
B=0%
Φ
0 30 60 90
0
Ψ1
90 60 30
γ-fiber (113)
(332) (221)
(112) (001)
{001}<110>
{113}<110>
{332}<113>
{221}<013>
{332}<023>
{111}<112>
0 30Ψ1 60 90 0
90 60 30
Φ
(001)
γ-fiber {111}<121>
{001}<110>
{111}<110>
0.5 9
0.5 1
32
{111}<110>
{111}<112>
9 0.5
(332)
{332}<113>
0.5 0.5 2
1
1 0.5
2 {111}<110> 3
{111}<110>
{111}<112>
{113}<110>
(113)
B=0.0018%
B=0%
Φ
0 30 60 90
0
Ψ1
90 60 30
γ-fiber (113)
(332) (221)
(112) (001)
{001}<110>
{113}<110>
{332}<113>
{221}<013>
{332}<023>
{111}<112>
0 30Ψ1 60 90 0
90 60 30
Φ
(001)
γ-fiber {111}<121>
{001}<110>
{111}<110>
0.5 9
0.5 1
32
{111}<110>
{111}<112>
9 0.5
(332)
{332}<113>
0.5 0.5 2
1
1 0.5
2 {111}<110> 3
{111}<110>
{111}<112>
{113}<110>
(113)
0.5 1.0 2.0 3.0 5.0 9.0 0.5 1.0 2.0 3.0 5.0 9.0
一方B=18ppm添加鋼のODFは{001}<110>にもっとも強い集積が見られ、さらにα -fiberの{113}<110>、{332}<113>に強い集積が見られる。またγ-fiberにもB無添加鋼 とほぼ同程度の集積が見られる。
EBSDによる熱延板の結晶方位解析結果をFig.3-13に示す。B無添加鋼とB=18ppm添 加鋼で、{211}、{110}の存在比は同じであるが、{111}、{100}方位はB添加鋼で増加して いる。
このような熱延板で観察された方位が、α域での冷間加工により回転して安定となる 方位を調べるため、単結晶を用いてJonas15)らが計算した結果を用いて考察する。Jonas らによれば{001}<110>は冷延安定方位であり、冷間加工後も{001}<110>として残存する。
100μm
B=0% B=0.0018%
{111}:0.015 {100}:0.006
{111}:0.035 {100}:0.048
存在比 存在比 {211}:0.041
{110}:0.009 {211}:0.039
{110}:0.011
{111}
{100}
{211}
{110}
Fig.3-13 EBSDによる熱延板結晶方位解析結果 (L断面 板面平行方位)
100μm
B=0% B=0.0018%
{111}:0.015 {100}:0.006
{111}:0.035 {100}:0.048
存在比 存在比 {211}:0.041
{110}:0.009 {211}:0.039
{110}:0.011
{111}
{100}
{211}
{110}
Fig.3-13 EBSDによる熱延板結晶方位解析結果 (L断面 板面平行方位)
{113}<110>はα域での加工により{112}<110>を安定方位とし、{332}<113>は{554}<225>
からさらに{111}<112>への回転を生じる。
これらの方位を有する場合の圧延方向に対する角度とr値の関係(板面内異方性)は、
Danielらの方法により求めた結果16)によれば、Fig.3-14に示す様に、{111}<112>はいず れの方向もr値は高く2〜3となるが、{001}<110>はいずれの方向もr値は低く、とく に0°、90°方向、すなわち L 方向(rL)と C 方向(rC)のr値は0である。また、
{112}<110>は45°方向のr値(rD)は3以上と高いが、比較して0°(rL)、90°
(rC)のr値は1以下と低い。
本実験による冷延板の(200)極点図をFig.3-15に示す。B添加鋼はB 無添加鋼に比べ て、{112}<110>、{001}<110>に強い集積が見られ、本実験でも上述の Daniel らの結果 が確認された。これらの結果からB添加による冷延-焼鈍板のr値の面内異方性の変化は 熱間圧延集合組織に起因したものと結論される。すなわち、B 添加により熱延板では {001}<110>、{113}<110>、{332}<113>に強い集積を有する集合組織を形成する。これら の方位が冷間圧延により冷延安定方位に回転し、{112}<110>、{001}<110>への集積が強
Fig.3-14 Danielらによる圧延方向とr値の関係 {112}<110>
0 1 2 3 4 5
0 30 60 90
圧延方向 {100}<011>
0 30 60 90
0 1 2 3
r- va lu e
L D C L D C
圧延方向
{111}<112>
0 30 60 90
1 2 3 4 5
L D C
圧延方向 Fig.3-14 Danielらによる圧延方向とr値の関係
{112}<110>
0 1 2 3 4 5
0 30 60 90
0 1 2 3 4 5
0 30 60 90
圧延方向 {100}<011>
0 30 60 90
0 1 2 3
0 30 60 90
0 1 2 3
r- va lu e
L D C L D C
圧延方向
{111}<112>
0 30 60 90
1 2 3 4 5
L D C
圧延方向 {111}<112>
0 30 60 90
1 2 3 4 5
L D C
圧延方向
一方、B 添加鋼であっても、熱延板にいずれの方位にも大きな集積を示さないような処 理をした場合は、B添加の有無に関わらず冷延-焼鈍板のr値の面内異方性は非常に大き くなる。以上の結果から、熱延板の変態集合組織が焼鈍板のr値の面内異方性に影響を 及ぼし、B無添加鋼に比べてr値の面内異方性が小さくなったものと結論つけられる。
3-5 小括
Ti添加IF鋼にB添加することで冷延-焼鈍板のr値の面内異方性が小さくなり、イヤリ ングの発生が極めて抑制される要因について、熱延板の集合組織を詳細に調べ、以下の結 論を得た。
(1) B 無添加IF鋼は熱間圧延において、特定方位に集積のほとんどない弱い集積を
冷延まま 800℃焼鈍材
B=0%B=0.0018%
RD
TD
◇ ◇
◇ ◇
RD
TD
RD
TD
RD
TD
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
△ △
△ △
△ △
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
◇
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
冷延まま 800℃焼鈍材
B=0%B=0.0018%
RD
TD RD
TD
◇ ◇
◇ ◇
RD
TD
RD
TD
RD
TD RD
TD
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
△ △
◇ ◇
◇ ◇
◇
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
△ △
△ △
△ △
△ △
△ △
△ △
▲
▲
▲ ▲
▲ ▲
▲
▲
△ △
◇
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
○ ○
○
▲:{111{<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110> ○:{112}<110>
▲:{111{<112> △:{111}<110> ◇:{001}<110> ○:{112}<110>
Fig.3-15 冷延板および冷延-焼鈍板の(200)極点図に及ぼすB添加有無の影響
1.0
0.5
1.5
2.0
3.0
1.0
0.5
1.5
2.0
3.0
持つ集合組織であるのに対し、Bを添加することにより、γ-fiber、α-fiberとくに {001}<110>、{113}<110>、{332}<113>に集積の強い集合組織を生じる。
(2) このような集合組織を有する熱延板のr値はrL、rCの値が小さく、rDの値 が大きくなり、面内異方性は大きくなる。
(3) Bを添加した熱延板に認められる集合組織は冷延後、{001}<110>→{001}<110>、
{113}<110>→{112}<110>、{332}<113>→{111}<112>が安定方位となる。{001}<110>、
{112}<110>は L方向、C 方向のr 値を低下させる方位であるため、B 添加鋼は B 無添加鋼に比べてr値の面内異方性が相対的に低くなる。
(4) 以上の結果から、B添加による冷延焼鈍板のr値の面内異方性に対して、熱延板 の変態集合組織が大きな影響を与えることが明らかとなった。
3-6 参考文献
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