農学研究 59: 25‑36 (1981)
S a c c h a r o m y c e s f r a g i l i s の多型のエンド ポリガ ラク チ ュ ロナ ーゼ
林
栽 允・山 崎 良 樹・鈴 木 幸 雄 味 野 愛 子 ・小 沢 潤 二 郎澱粉および澱粉系多糖の化学構造の解明にαーアミラーゼ, βーアミラーゼ, イソアミラ {ゼなどの酵素の利用が欠かせないように,植物細胞の一次壁やベクチン質の化学構造の 研究においても,酵素の利用が有効な解析手段として期待される.この際,基質特異性が 明らかで,しかも他酵素が混在してない純粋な酵素を用いる必要がある.本研究では,ま ずベクチン酸の内部鎖の
α ‑ 1
,4
ーガラクチュロユド結合を無作為に加水分解する酵素ェγドポリガラクチュロナーゼ [poly(αー1,4
‑ a ‑ o ‑
galacturonide)glycanohydrolase, EC3 . 2 .
1. 15)を,他のベクチγ質分解酵素,アラバナーゼおよびガラクタナーゼをほとんど含まないと考えられている酵母
S a c c h a r o m y c e sf r a g i l i s
の培養ろ液を出発材料として 精製した.S.f r a g i l i s
からは従来1種類のェγ ドボリガラクチュロナーゼしか単離され てなかったが (Phaffand Demain 1956,小沢ら 1959),本研究では,分子量や等電点が 互いに相違するが,酵素化学的性質はほとんど差異がない3
つのェγドポリガラクチュロ ナーゼを,それぞれディスク電気泳動的,ゲル等電点電気泳動的に単一な標品として単離 することができたので報告する.実 験 方 法 1.供絞首株とその培養
S a c c h a r o m y c e s f r a g i l i s
を2 %スクロースを含むジャガイモ汁斜面寒天培地に3カ月 毎に植え継ぎし, 270Cで2日間培養後,低温室 (40C)に保存して使用した.この保存菌 株をまず同じ培地に接種して2日間270Cで培養後, 1%酵母エキス, 0.2%リン酸ーア ンモニウム, 0.2%リγ酸二水素カリウム, 0.1%硫酸マグネシウムおよび5 %グルコー スからなる液体培地 (pH5.0...5.2) 2 mlを含む試験管に接種して, 270Cで2日間静置 精華した. これを1.5l
の液体培地を含む2.5l
容三角フラスコへ移植して4日間静置培 養をおこなった.2 . I
式 薬ベクチン酸の調製は市販のかんきつベクチシを水酸化ナトリウムの濃度0.1N, 0ρC, 90分間の条件でけん化しておこなった.酸不溶性ベクチシ酸(平均重合度43)は既報(小沢 1955)の方法により,ジガラクチュロγ酸は Nageland Wilson (1969)の方法によりそ れぞれ調製した. トリおよびテトラガラクチュロン酸はベクチン酸を S.
f r a g i l i s
のェγ昭和55年12月25日受理
25
ドポリガラクチュロナーゼ部分精製酵素液(酵素標品, No.3)で3日;水分解後,分解液か らペーパークロマトグラフィーの切り抜き法により調製した.ガラクチュロン酸は市原品 (半井化学薬品株式会社の特級製品)である.その他の試薬は市販の特級試薬あるいはそ れに準ずる試薬である.
3 .
分 析 方 法エンドポリガラクチュロナーゼ活性の測定 酵素液0.1m!. 1 %ベクチン酸0.5m!, 0.1 M酢酸緩衝液 (pH5.0) 0.4 m!からなる反応液(全量1.0mめ を370Cで30分間 反応させた.反応後沸騰水浴中に反応液を10分間漫潰して反応を停止させ,生成還元糖 をSomogyi働Nelson法(福井 1969)によりガラクチュロン酸として定量した. 1分間に ベクチン酸から 1μmoleのガラクチュロン酸を遊離させる酵素量を1単位とした.
マセレーション活性の測定 ジャガイモ塊茎およびニγジン根部からコルクポーラ(直 径8mm)で円柱をくりぬき,それを厚さ約2mmの円板に薄切りした.その円板を試験 管に入れ,円板が浸る程度に酵素液 (4m!)を加えて370Cで4時間保持した.ついで試 験管を1分間振温後円板を取り出し,マセレーショ γ作用の活性を反応液の濁度(660nm における吸光度〕を測定して算出した.
蛋白質量の測定 Warburg and Christian (1942)の方法により 260nmおよび280nm における吸光度を測定して算出した.
ディスク電気泳動 Reisfeld et al. (1962)の方法により,ポリアクリルアミドゲルを入 れたガラス管 (5φx70mm)に酵素を加え, βーアラニγ・酢酸緩衝液 (pH4.5)中で5 mAjゲルカラムの電流を通じ,低温室(40C)で3時間泳動をおこなった.泳動後ゲルを,
アミドブラック 10B1 gを7%酢酸水溶液100m!に溶解した染色用色素液に1時間浸漬 して染色した.ついで染色したゲルを7%酢酸水溶液を用いる電気泳動で、脱染色した.
ゲル等電点電気泳動 Wrigley (1969)の方法により, carrier ampholyte (pH範囲 5... 8)を含む7.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてゲル等電点電気泳動をおこなった.
すなわち,酵素を2本のゲルに加え, 80V, 40Cで12時間泳動した.その後.1本のゲルを プロムフエノール0.2gをエタノール・水・酢酸 (50:45 : 5. v/v)混液 100m!に溶解 した染色用色素液に1時間漫潰して染色し,ついでエタノール・水・酢酸 (30:65 : 5. vjv)混液に漫潰して脱染色した.他のl本のゲル(未染色ゲル)では酵素査白質のパン ドにあたる区分を 2mmの等間隔に切断し,純水2m!を加えて磨砕,懸濁,抽出した のち,酵素活性のある区分の pHを目立・堀場M‑5形pHメーターで測定した.
分子量の測定 酵素の分子量を0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含むポリアクリルアミ ドゲルを用いて Weberand Osborn (1969)のディスク電気泳動法により測定した.分 子量既知の標黄島蛋白質として牛血清アルプミ Y (mw 67.∞0), キモトリプシノーゲンA (mw 25,∞0), ミオグロプリ γ(mw17,800), りゾチーム (mw14,307), チトクロー ムC (mw 12,400)を用いて,供試酵素と同時に泳動をおこなった.泳動,染色,脱染色 後,各蛋白質の分子量と移動度の関係を片対数グラフにプロットし,得られた図から供試 酵素の分子量を求めた.
液体クロマトグラフによる糠分析 酵素の糖組成を日本電子株式会社製 JLC‑6AUH全 自動液体クロマトグラフにより分析した.すなわち,酵素と1N塩酸を封管中1000C,6
26
時間加熱したのち,分解液を4N水酸化ナトリウムで中和し,中和液を日本電子製強塩 基性陰イオン交換樹脂LC‑R‑3を充てんしたカラム (0.8世x13 cm)に加え, 500Cでホウ 酸緩衝液を1分間当り0.51mtの流速で流した. カラム溶出液中の分別された糖をオル シノール,硫酸法により定量した.
1.培養経過とエンドポリガラクチコロナーゼ活性 実 験 結 果
体 酵 菌
・
ω
た凡 ベ
P調
の を 間 化 の 変 そ 経 時 耐 バの 性 己 活
版 ゼ
を 一 養 ナ 培 ロ
聾 晶 ユ
静 チ
i 3 3 4 3 間 ク 'hrlu卜
l l 日 ラ 日 目
︒
6
ガ ( 泊 番 ) 組 M提 li
干且 時事 柄 小︑
﹃‑
裕LλH
Wか 味
=
国τ
l ' + h
ドス
γ り つ 一 エ な か コ び と な ル よ 高 じ 〆 お 最 少
WA
喧 ほ 減
F b h u u h
ノ
を 対 叩 喰 仇 一 養 抗 . P コ 培 目
︑ ム
m
ル は 読 図
f
グ 性 後
1
ε'
活 の 第 量 素 そ (
2 .
エンドポリガラクチコロナー ゼの精製静置培養4日後,培養液60
t
を11, 800xgで 遠 心 分 離 し , 得 ら れ た 上 澄液に窒化ナトリウムを防腐剤とし て0.02%(終末濃度)加えた.これ を流水に対して100Cで2昼夜透析 し,さらに純水に対して4
0C
で一夜 透析した(酵素標品No.1).以下のす べての操作を40C以下でおこなった.(a) アンバーライトIRC‑50力
置
s
0.5製
唱4
、 、 、
同ー .・、、、
・ ‑
ーー・
' ~ o
z 3 4 5 6
ま 音 菱 自 数
第1図熔養過程におけるエンドポリガラクチュロ ナーゼ活性,菌体量, pHおよびグルコー ス量の変化
0‑0 .x.γドポリガラクチュロナーゼ活性,
0・・opH,・‑・菌体量 (660nmにおける 吸光度), ・‑・ グルコース量.
ラムクロマトグラフィー アンパー
ライト IRC‑50を2本のカラム (4Ox50cm)につめ, 0.05M酢酸緩衝液 (pH5.0)で平 衡化した. 上で得られた透析内液(酵素標品No.1)を2分し, 2本のカラムに別々に加 えた.各カラムを0.05M酢酸緩衝液 (pH5.0)でよく洗浄したのち, 0.5M酢酸緩衝液 (pH 5.0)で溶出した.溶出液をダイヤフJルターG10T(直径76mm,バイオエンジ ニアリング株式会社製)を用いて限外濃縮し,濃縮液をO.lM酢酸緩衝液(pH5.0)に対 して一夜透析した(酵素標品No.2).
(b) CMーセフアデ・7クスC‑50カラムクロマトグラフィー 酵素標品No.2を,あら かじめO.lM酢酸緩衝液(pH5. 0)で平衡化したCM‑セフアデックス C‑50(5世x60cm) カラムに加えた. カラムをO.lM酢酸緩衝液(pH5.0)でよく洗浄したのち, 0‑0.3M 塩化ナトリウムの直線的濃度勾配による溶出をおこなった(第2図).エンドボリガラク チュロナーゼ活性画分を集めて限外濃縮し,濃縮液をさらにコロジオンパックで濃縮後,
O.OlM酢融緩衝液 (pH5.0)に対して一夜透析した(酵素標品No.3).
(c) 第
1
回調製用ディスク電気泳動 酵素標品No.3を調製用ディスク電気泳動装置 くパイオプレパレーターSJ‑15ooBP.ミッミ科学工業株式会社製)によりさらに精製した.59巻(1981) z7
10
官¥
迫骨
)刻
印碍
νl
・辛
口刊
十
Am
仇p
bp
hh
拘Lλ‑H
F︑u
nH
V
(E
4h
KL
・
2 ‑
羽0.3 0.2 0.1
‑ A
H 川
市 川 科
J
1.0
E a
s
e喝恒 0.5
梨
苦手
2
∞
l
∞
ヲラクション数
酵素標品 NO.2のCM‑セファデックスC‑5Qカラムクロマトグラム 負荷蛋白質量2.お4mg,流速印mU時,フラクション量15mi!.
. . . . . . ・
280nmにおける吸光度,。一0エンドポリガラクチュロ ナーゼ活性,一・ー・一塩化ナトリウム濃度.第2図
濃縮用ゲル (100ml)と分離用ゲル (600ml)からなる泳動カラムを用いた.アグリルア ミド濃度は前者ゲルで2.5%. 後者ゲルで7.5%とした. 上下の両電極槽にはそれぞれ βーアラニン・酢酸緩衝液(pH4. 5) 5lを加えた. 酵素標品No.3を4等分したのも,各 区分にそれぞれスクロースを20g/1
∞
mlの割合で添加し,各混液を濃縮用ゲルの上へ静 かに加えた. 電気泳動を下部の電極槽を(一〉極として,lA
の定電流で48時間通電して 行なった.第3図に示すように,酵素活性のあるピークが3つ認められた.各ピークをそ れぞれ酵素1, IIおよびEと呼称する.活性画分を5画分に分けて,それぞれをコロ ジオンバックを用いて濃縮した.各濃縮液 の純度を分析用ディスク電気泳動で 調べた.
画 分No.1(フラクショ γNo.241‑270, 酵素1)は単一の蛋白質バンドを与えたが,
画分2(フラクショ γNo.271‑282), 画 分3(フラクションNo.283‑306),画分4 (フラクション No.307‑330)お よ び 画 分
5 (フラクショγNo.331‑365)にはいず れも他の2つのピーク(酵素Eおよび酵素 ill)が混在していた.他のピークの混在が 少ない画分No.3およびNo.5をそれぞれ ピークEおよびEとしてさらに精製した.
(d) 第2回調製用デ4スク電気泳動 上記の各画分 (No.3および5)をさらに
日)()
フラクシ,ン歓
酵素標品No.3の調製用ディスク電 気泳動による分別
負荷蛋白質量, 45 mg, 0‑0ェγド ポリガラタチュロナーゼ活性.
3
∞
l
∞
笈泊第3図 10
。
5
(盲
¥組
岨茸
)組
曲
Z
l i
干E
dp
平h
hp bp Mh Lλ H
第1表 酵 素 の 収 率 と 比 活 性
精 製 段 階 液 量 全 蛋 白 質 量 (me) (mg)
率 性一一(収 % ) 一BE
︐
︐ ︐
d‑作邑O
停 ヨ
4︑活一弛川副 一同 位蛋 素一 上洋
t
酵一 弛山 町 長 単 全 (
透析した培養ろ液(酵素標品 No.1) 60,∞
o
64,500 38, 280 O. 54 1∞ アン."ーライト IRC‑50カラムクロマトグラフィーによる分別(酵素標品 No.2) 10,000 2,553 25,お8 9.89 65.9 CM‑セファデックスC‑50カラムクロマト
グラフィーによる分別(酵素標品 No.3) 1,000 178 22,283 141.0 58.2 第1回調製用ディスク電気泳動による分別
画分 NO.1(酵素1) 50 47.8 6,938 145.0 18.1 画分 No.3 20 38.8 5,440 140.0 14.2 画分 No.5 10 13.7 1,856 135.0 4.8 第2回調製用ディスク電気泳動による分別
酵 素 II 2 3.2 416 130.0 1.0 酵 素
m
3 4.6 618 134.3 1.6調製用ディスク電気泳動により精製した.泳動装置として泳動カラム(2.8O x 10 cm)と上 下電極槽を用いた.各画分の濃縮液にスクロースを20gj100 mlの割合で添加したのち,
濃縮用ゲルの上へ静かに加えた.電気泳動を下部の電極糟を(ー)極として 60mAの定 電流で 12 時間通電して行なった.泳動後ゲルを 3~5mm 毎に切断し, 各切断ゲル画分 を ガ ラ ス 俸 で 磨 砕 し て0.2M酢酸緩衝液
(pH 5.0)約20mlに懸濁した. 1時間放 置後,酵素活性のあるゲル懸濁液画分をろ 過してゲルを除去した.酵素Eあるいは酵 素直のみを含む画分のろ液をコロジオンバ ックを用いて濃縮し, 各濃縮液をO.OlM 酢酸緩衝液(pH5.0)に対して一夜透析し た.第l表に各精製段階における酵素の比 活性と収率を示す.
3 .
酵 素 の 純 度上で 得られた各酵素蛋白質の純度をディ ス ク 電 気 泳 動 法 で 調 べ た . 第4図 に 示 す ように,各酵素からは1本の蛋白質バンド が,酵素標品No.3からは3本のバンドが 認められた.したがって酵素I.
n
および Eはし、ずれもディスク電気泳動的に単一で あると考えられる.4.エンドポリガラクチコロナーゼの諸 性 質
(a) 等電点 ゲル等電点電気泳動法に より測定した酵素Iおよび酵素Eの等電点
59巻 (1981)
九 百 四 I I
第4図 エンドポリガラクチュロナーゼ1,
EおよびEのディスク電気泳動図 1 :酔素1, 70μg (負荷蛋白質量); II:酵素II.65μg;
m :
酵素m
,50μg; A:酵素標品 No.3.293 ,pg・
29
はいずれも pH6.10で あ り , 酵 素Eのそ れはpH5.80で あ っ た . 第5図 に 示 す よ
うに,各酵素からはそれぞれ1本の蛋白質 パンドが認められた.したがって各酵素は ゲル等電点電気泳動的にも単一であった.
(b)分子量 ド デ、ンル硫酸ナトリウム ディスク電気泳動法により求めた酵素I,
EおよびEの分子量は, それぞれ46,000, 50,000および30,000であった(第6図).
(c) 醇素濃度と酵素活性の関係 各酵 素の濃度と還元糖生成量(ガラクチュロン 酸として算出)の関係を第7図に示した.
ガラクチュロン酸を1.5μmole生成するま では,両者の聞に比例関係が認められた.
(d) 醇棄活性に及liすpHの影響 0.2M McIlvaine緩 衝 液0.4mtおよび
1%ベクチン酸0.5mtを試験管にとり,
さらに酵素液0.1ml (酵 素L0.025単位;
酵素IT,0.022単位;酵素
m
,0,020単位)含加え, 370Cで30分間反応させて活性を測定し,活性に及ぼすpHの影響を調べた. 3 つの酵素の最適pHはいずれも pH4.0‑5.0にあった(第2表).
(e) 醇素の安定性に及{ますpHの影響 各種pHの緩衝液0.2ml (0.05M Mcllvaine 緩衝液, pH2.6‑7.0; 0.05Mベロナール緩衝液, pH7.0‑9.0; 0.05Mグリシン・水
9
伊 ︑ ω
{ ・
0HX
制 ト
← 2
~ 1
第5図 エンドポリガラタチュロナーゼI.
Eおよび買のゲノレ等電点電気泳動図 1 :酵素I, 1印μ.g(負荷蛋白質量);
n :
酵素
n .
240μg;m :
酵素直.150μg.3
内
︐
︑
︐
a・
2
︒
Eミ)割程ν 1
キロ
ペ
J干
h hド hyp裕L入吋
。 。
0.2 0.6 1.0 移 動 度第6図 エンドポリガラクチュロナーゼ,I
n
および頂の 分子量1.牛血精アルブミン.2.キモトリプシノー ゲンA,3.ミオグロプリ γ.4.リゾチーム, 5.チトクロームC.
0.16 032 0.48 蛋 白 質 (岨) 第7図エンドポリガラクチ
ュロナーゼI.
n
お よび班の蛋白質量と 活性・‑・:酵素1;0・..0:酵素E
Aーム:酵素
m
,30 農 学 研 究
第2表 最 適pH,pH安定性,最適温度および熱安定性 エンドポリガラクチュロナーゼ
E E
最 適 pH 4.0~5.0 4.0~5.0 4.0~5.0
pH安 定 性 3.5~6.0 3.5~6.0 3.5~6.0
最 適 温 度 500C 500C 500C 熱 安 定 性 500Cまで 500Cまで 500Cまで
酸化ナトリウム緩衝液, pH9.0‑10.0)と酵素液0.1ml (各酵素の使用単位は第2表と同 じ)を試験管にとり.300
C
で20時間保持したのち.0.2M酢酸緩衝液(pH5.0) 0.2 ml お よ び1%ベクチン酸0.5mlを加え.370C
で30分間反応、させて残存酵素活性を調べた (第2表).3つの酵素はいずれも pH3.5‑6.0の範囲内で安定であった.(f) 酵素活性に及ぼす温度の影響 1%ベクチン酸0.5mlお よ びO.lM酢酸緩衝液 (pH5.0) 0.4mlを試験管にとり, さらに酵素液0.1ml (各酵素の使用単位は第2表と 同じ〉を加えて,各種の温度で30分間反応させて活性を測定し,酵素活性に及ぼす温度 の影響を調べた(第 2表). 3つの酵素の最適温度は500C付近であった.
(g) 酵素の熱安定性 酵 素 液0.1ml(各酵素の使用単位は第2表と同じ〉およびO.1M 酢酸緩衝液 (pH5.0) 0.4 mlを試験管にとり,各種の温度にそれぞれ15分間加温したの ち. 1 %ペ ク チ ン 酸0.5mlを加え. 370Cで30分 間 反 応 さ せ て 残 存 酵 素 活 性 を 調 べ た (第2表). 3つの酵素はし、ずれも 500
C
まで安定であったが.700C
ではいずれの酵素も その活性をほとんど失った.(h) ベクチン酸に対する作用型式 1 %ベクチン酸0.5mlお よ びO.lM酢酸緩衝液 (pH 5.0) 0.4mlを試験管にとり,酵素液0.1ml (酵素I.0.25単位;酵素
n .
0.22単 位;酵素m .
0.20単位〉を加えて(全量1.0ml) 370Cで 反 応 さ せ た . 経 時 的 に 反 応 液 0.1 mlを 東 洋 海 紙No.50にスポットした. そ の ろ 紙 を 展 開 溶 媒n‑プタノール・酢 酸・ガラタチムロン酸ーー ジガラタチュロン酸『・ー トリガラクチュロン酸ーー テトラガラタチュロン酸ーー
司・
‑a
』?・ ・ a
.
, . . 5
傾 準 10 30 120 240 10 30 120 240 10 お 120240 物質』ー一一ー一一ー
. . 1
』ーーーー一一ー.嚢E
』ーー‑ー一ー醇 禽 阻反 応 時 間 { 分 )
第8図 エンドポリガラクチュロナーゼ1, IIおよびEによるベクチ ン酸の分解物のペーパークロマトグラム
59巻 (1981) 31
水 (5:2 : 3, vjv)を用いて上昇法で48時 間3回繰り返し展開した. 風乾後,ろ紙上の 糖 を ア ル カ リ 性 硝 酸 銀 浸 潰 法 (Welkerand Campbell 1963)に よ り 発 色 さ せ て 調 べ た
〈第8図). 3つ の 酵 素 は い ず れ も ベ ク チ ン 酸 に 無 作 為 に 作 用 し て オ リ ゴ ガ ラ ク チ ュ ロ ン 酸およびガラクチュロン酸を生成した.
( i ) 酵 素 活 性 に 及
1 I
す 阻 害~Jの影響 0.1 M酢 酸 緩 衝 液 (pH 5.0) 0.3 ml. 5 x 10‑2M の 各 種 阻 害 剤 溶 液0.1mlお よ び 酵 素 液0.1ml (各酵素の使用 単 位 は 第
2
表 と 同 じ ) を 試 験 管にとり, 30分間, 300Cに 保 持したのち, 1%ベ ク チ ン 酸 0.5mlを加え, 370Cで30分 間反応させて残存酵素活性を調 べたく第3表).3つ の 酵 素 の 活 性はいずれも塩化第二水銀によ って完全に阻害された.塩化マ ンガン,P
ータロロ安息香酸第二 水銀,およびトリス(ヒドロキ シメチル〕アミノメタンによる 阻害も認められた.(j) ベ ク チ ン 酸 お よ び 酸 不
ベ ク チ ン骨量
75
回
{草
) 回
官盤令梧居
第3表 酵 素 活 性 に 及ぼす金属イオンおよび阻害剤の影響 金属イオン
および 阻 害 剤
海 度rnM
残 存 活 性
C%
)酵素I 酵素E 酵素班 None
AICls BaCI2
CoCI2
FeSO 5
HgCI2 5
KCI 5
MgCI2 5 MnCI2 5 NaCI 5
ZnCI2
EDTA
NiCI2 5 Pb CCHaCOO)z 5
PCMB Tris
戸 ︑ u F︑ 一 切 戸 ︑
u
F︑
l
∞
113 68 74 74
。
C 9 5 7 7 0 5 0
口
7 7 8 8 8 8 5 o
nund氏
u
n︐
s n i
︒
︒ 氏u n 4
巧 ︐
s a u q u a u a u
つdRυー nu
つ ゐ
Q O E u
az
n U 0 3 q d n u q d
にdyAqLnwdyA
AH
VP
︑uam宅
aa
‑a
m宅
nu
dA
Ud
nn''nwdp内uny
' e
nk
u'
EA
1
10 20 30 40
p︑uphdp︑
u F︑d
債 不 溶 性 ベ タ チン働
勾ran
苛
q J
nt
nm
vn
d
唱I 7 ' n v F b oon''n4nocUPDnrnin4Fb
日
。
10 20 30 40 50庖 応 時 間I(時 間} 反 応 時 間 (時 間)
第9図 エンドポリガラクチュロナーゼI, IIおよびEによるベクチン酸および 酸不溶性ベタチン酸の分解経過
追加酵素量:酵素1(. . 2.).5単位;酵素ll(o・0).2.2単位;
酵素直仏ーω.2.0単位.
32 農学 研 究
溶性ベクチン酸の加水分解限度 1 %ベクチン酸0.5mlあるいは1 %酸不溶性ベクチγ 酸0.5ml
,
およびO.lM酢酸緩衝液 (pH5.0) 0.4 mlを試験管にとり,酵素液0.1ml〈各酵素の使用単位は第 8図と同じ〉を加え370Cで反応させた. 矢印の時期に各酵素液 を追加して両基質の分解限度を調べた.第9図に示すように, 3つの酵素による加水分解 限度はベクチン酸では55%,酸不溶性ベクチン
酸では70%であった
(k) K m値 酵素液0.1ml (各酵素の使用 単位は第2表と同じ〉を, O.lM酢酸緩衝液(pH 5.0) 0.4 ml,各種濃度のベクチン酸,および純 水の混液に加えてく全量1.0ml) 370Cで30分 間保持したのち,生じた還元糖を比色定量した.
この結果, Lineweaver‑Burkのプロットより求 めた酵素l,
n
およびEのK m値 は そ れ ぞ れ 3.13x 10・1,2.27 X 10‑1, 5.0 X 10‑1 mg/mlであ った(第10図). 反応速度 (V)は反応液当りの 520nmにおける吸光度で,基質濃度(S)は反応、液1ml当りの mg数で表示した.
( I ) マセレーション (離解)作用 マセレー ション活性をジャガイモおよびユシジンの組織を 用いて調べた(第4表).酵素l,
n
およびEで15
ミ10
圃
5 10 1/8 (・"",r'
15
第10図エンドポリガラクチュロナーゼ I.
n
およびEのLineweaver‑ Burkプロット・‑・酵素1, 0・・0酵素
n .
A‑A酵素
m .
は対照の純水に比べて反応、液の濁度が増加した. 3つの酵素にはいずれもジャガイモおよ びニンジンの組織に対するマセレーション活性があることが認められた.
(m) 粘度およびグリコシド結合の分解 1 %ベクチン酸1mlおよびO.lM酢酸緩衝 液(pH5.0) 0.8 mlを試験管にとり,酵素液0.2ml (酵素l, 0.050単位;酵素
n .
0.044 単位;酵素m
,0.040単位〉を加えて370C 100で反応させた.粘度はオストワルド粘度計 により,グリコシド結合の分解率は還元糖 生成量(ガヲクチュロン酸として算出)よ 渓
りそれぞれ調べた(第11図). 3つの酵素 制
はいずれもベクチン酸溶液の比粘度を急激 語 50
第4表 ェγドポリガラクチュロナーゼ1,
EおよびEのマセレーション作用 目摩 索
伺 。
nm淘 度における.光度〉酵 素 I 酵 素 E 酵 素 直 酵素無添加
59巻 (1981)
ニγジン ジャガイモ 0.1
∞
0.095 0.105 0.035
0.220 0.190 0.2
∞
0.120
。 。
10 初 ~ー ‑ ・
40加水分解率(,,)
第11図 ェγドポリガラクチュロナーゼ1,
n
および直によるベクチン酸の分解と 粘度の減少
・‑・:酵素1.0・・‑O!酵素
n .
A‑A:酵素m .
33
に下げた.また比粘度が50%
低下した時の還元力より算出 したベクチン酸の加水分解率 は,
3
つの酵素聞に差異がなく,約6 %であった.
(n) 中 性 緒 組 成 Till‑ man反応 (Surgenor
e t a l .
1949)により求めた各酵素の 中性糖は,マγノースとして 酵素Iでは0.8%,酵素Eで は0.9%,酵素E
では3.7%であった.また糖組成を液体 クロマトグラフにより調べた 結果,第12図に示すように,
酵素標品No.3の主な中性糖 はマンノースであった.
""'ウ・量ー水峻11:ナトリウム緩衝液 O
Jlと担当
UI鎚.,oup.2
事
組 制0.1 g
10 12 1書 出 時 間 { 時 間 )
第12図酵素標品 No.3の中性糖の液体クロ!マトグラム 1.リポース. 2.マγノース. 3.アラピノース.
4.カ'ラクトース. 5.キシロース. 6.グルコース 一一:標準糖混液. …・・・:酵素標品 No.3の酸分 解物中の中性情.
考 察
14
S . f r a g i l i s
からは従来1
種類のエシドポりガラクチュロナーゼしか単離されていなか ったが,本研究ではS.f r a g i l i s
の培養ろ液からアンバーライト 1RC‑50およびCMーセフ ァデックスC‑50カラムクロマトグラフィー,および調製用ディスク電気泳動 (2回繰り 返す〉をおこなって,3
つのエンドポリガラクチュロナーゼ1, IIおよびEをそれぞれディスク電気泳動的,およびゲル等電点電気泳動的に単一な標品として単離することができ た.
糸状菌のエンドポリガラクチュロナーゼによるベクチン酸の分解の場合,ベクチγ酸 溶 液の比粘度が50%低下したときのベクチン酸の分解率(還元力より測定〉は酵素の起源 によって相違している.例えば
C o n i o t h y r i u md i p l o d i e l l a
(Endo 1964)の培養ろ液から 得られた3つ の ェγドポリガラクチュロナーゼでは3,4および10%であり,Fusariumoxysporum
(Strande t a l . 1 9 7 6 )
の2つのアイソザイムではいずれも5 %であると報告されている .
S . f r a g i l i s
の3つの酵素では,比粘度の低下が50%のときの分解率は6%であった.
植物病原菌が生産するペクチン質分解酵素は,等電点がアルカリ側にあるものが細胞侵 害作用を示すという説がある (Ruesink and Thimann 1965). しかし Garibaldi and Bateman (1~71) によれば ,
S c l e r o t i u m r o l f s i i
のェγドポリガラクチュロナーゼは酸 性側の等電点 (pI5.2)をもつにもかかわらず,植物組織の細胞に対して致死作用を示し,pI値と致死作用の聞には相関関係はないようである .
R h i z o c t o n i a f r a g a r i a e
(Cervonee t a l . 1 9 7 7 )
の2つのエシドポリカ'ラクチュロナーゼは互いに相違した等電点 (pI6.76 およば7.08)を有することが報告されている. 腐生菌である S.f r a g i l i s
の3つの酵素 の等電点、はpH6. 10. 6. 10および5.80で,いずれも酸性側にあった.34
植物病原菌および腐生菌が生産する大部分のェγドボリガラクチュロナーゼには,植物 柔組織に対するマセレーション作用があることが知られている (Yamasakiet al. 1964, 1967).しかし2,3のベクチン質分解酵素には,植物組織の種類によってマセレーション 作用に差が認められることが報告されている (Taniand Nanba 1969). Garibaldi and Bateman (1971)は
,
Erwinia chrysanthemiのベクチン酸トランスエリミナーゼにニン ジン,ジャガイモ,キウリの組織を容易にマセレートするもの,ニンジシに対するマセレ ーションの作用が弱いがジャガイモとキウりに対するそれが強いもの, 3つの組織に作用 のないものの3種類があることを報告している.梶(958)はClostridiumfelsineum var. sikokianumの培養液から, ポリガラクチュロナーゼ作用に比べてマセレーショ γ作用が 著しく強いマセレート酵素を得ている.本報では, S. fragilisから得たディスク電気泳 動的,ゲル等電点電気泳動的に単一な3つのエシドポリガラクチュロナーゼには,いずれ もジャガイモおよびュγジγの組織に対するマセレーショ γの作用があることを見い出L t::..3つの酵素は分子量が互いに異なるが,ベクチン酸に対する作用型式ではよく類似して いた.また3つの酵素はいずれも糖蛋白質であり,主な中性精はし、ずれもマンノースであ
った.
摘 要
Saccharomyces fragilisの第養ろ液からアンバーライト IRC‑50およびCM‑セファデ ックス C‑50カラムクロマトグラフィー, および調製用ディスク電気泳動によって, 3 つのエンドポリガラクチュロナーゼをそれぞれディスク電気泳動的,および ゲル等電点電 気泳動的に単一な標品にまで精製した. 3つの酵素は最適 pH,pH安定性,最適温度,
耐熱性,およびベクチン酸に対する作用型式で互いに類似していたが,等電点,分子量お よび糖含量では相違していた.また3つの酵素にはいずれもマセレーショγ作用が認めら れた.
文 献
Cervone, F., Sca1a, A., Foresti, M., Cacace, M. G. and Noviello, C. 1977. Endo・
po1yga1acturonase from Rhizoctoπia fragariae. Purifiロtionand characterization of two isoenzymes. Biochim. Biophys. Acta 482: 379‑385.
Endo, A. 1964. Studies on pecto1ytic enzymes of molds. Part VIII. Purification and properties of endo‑po1yga1acturonase 1. Agric. Biol. Chem. 28 : 535‑558.
福井作蔵.1969.還元僚の定量法. 生物化学実験法, A 一般分析法.1: 10‑12,東京大学出版 会,東京.
Gariba1di, A. and Bateman, D. F. 1971. Pectic enzymes produced by E:問liniachγ'Ysan・
themi and their effects on plant tissue. Physiol. Plant Path. 1 : 25‑40.
Kaji. A. 1958. Studies of macerating enzyme acting on middle lamella pectin. III. Separation of the macerating enzyme by Duolite CS‑I0l. Tech. Bull. Fac. Agr. Kagawa Univ. 9: 141‑145.
Nage1, C. W. and Wilson, T. M. 1969. Iso1ation of oligoga1acturonic acids by co1umn chromatography. J. Chromatog. 41 : 410‑416.
59巻 (1981) 35
小沢潤二郎.1955. ポリガラクチュロナーゼの特異性について.農学研究 42:157‑195. 小沢潤二郎.岡本質一,林哲否.1959. Saccharomyces
f :
γagilisのベクチンーポリガラクトウロナーゼについて.農学研究 47: 105‑110.
Pha庄.H. J. and Demain. A. L. 1956. The unienzymatic nature of yeast po1yga1actu‑ ronase. J. Bio1. Chem. 218: 875‑884.
Reisfe1d. R. A.. Lewis. U. J. and Williams D. E. 1962. Disc e1ectrophoresis of basic proteins and peptides on po1yacry1amide ge1s. Nature 195:お1‑283.
Ruesink. A. W. and Thimann. K. V. 1965. Protop1asts from the Avena co1eoptile. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 54: 56‑64.
Strand. L. L.. Corden. M. E. and MacDona1d. D. L. 1976. Characterization of two endo‑ po1yga1acturonase isoenzymes produced by Fusaγium oxysporum f. sp. lycopersici. Biochim. Biophys. Acta 429 : 870‑883.
Surgenor. D. M.. Strong. L. E.. Tay1or. H. L.. Gordon. R. S. Jr. and Gibson. D. M. 1949. The separation of choline esterase. mucoprotein. and meta1‑combining protein into subfractions of human p1asma. J. Am. Chem. Soc. 71 : 1223‑1229.
Tani. T. and Nanba. H. 1969. Qualitative nature of macerating activities in the culture filtrates of Botrytis cinerea. Ann. Phytopath. Soc. Japan 35: 1‑9.
Warburg. O. and Christian. W. 1942. Iso1ation and crystal1ization of eno1ase. Biochem. Z. 310: 384‑421.
Weber. K. and Osborn. M. 1969. The reliability of mo1ecu1ar weight determinations by dodecy1 sulfate‑po1yacry1amide ge1 e1ectrophoresis. J. Biol. Chem. 244: 4406‑ 4412.
We1ker. N. E. and Campbell. L. L. 1963. Effect of carbon sources on formation of α‑amy1ase by Bacillus stearothermophilus. J. Bacteriol. 86 : 681‑686.
Wrig1ey. C. W. 1968. Ge1 e1ectrofocusing a technique for ana1yzing mu1tip1e protein samp1e by isoe1ectric focusing. Sci. Too1s 15 : 17‑23.
Yamasaki. M.. Yasui. T. and Arima. K. 1964. Pectic enzyme in the clarification of app1e juice. Part 1. Study on the clarification reaction in a simplified mode1. Agric. Biol. Chem. 28 : 779‑787.
Yamasaki. M.. Kato. A.. Chu. S. Y. and Arima. K. 1967. Pectic enzymes in the c1arification of app1e juice. Part II. The mechanisms of clarification. Agric. Bio1. Chem. 31 : 552‑5ω.