(東女医大誌 第40巻 第6号頁388〜401昭和45年6月)
〔症例検討会〕
解離性動脈瘤症例
日 時 昭和45年1月23日(金)
場所東京女子医科大学本部講堂
(発言者)司会心 研:榊 原 任教
看護短大 =石 原 昭教
心 研:初音嘉一郎助
小坂内科 =久 保 島 和 子助 小坂内科
小坂内科 第二病理 受持ならびに文責
黒川きみえ講
小 坂 樹 徳教
梶 田 昭教 西 田 宏助
授 授 手 手 師 授 盛 手
(受季」 f[/{禾045壬卜4∫ヨ 1 日)
榊原:今日は解離性大動脈瘤ということがわか っている症例につきましてのディスカッションで す.それをどういうふうに治療したかというとこ ろに問題がある話です.
まず,この患者は内科の方に入っていて,それ から外科にわたってまいりまして,ついには病理 学へわたった症例でありますので,その経過に従 って教えて頂こうと思います.まず内科の先生ど
うぞ.
久保島:患者は56才の主婦で主訴は胸痛です.
アナムネーゼは,昭和13年心臓脚気といわれた が,その時Tachycardiaがあった.昭和25年出 産後浮腫,タンパク尿があり腎炎といわれた.昭 和37年,血圧180/100㎜正㎏,タンパク尿,浮腫,全 身倦怠感あり,腎性高血圧,心不全といわれた.
昭和39年にも浮腫が出て,昭和40年にも腎性高.[(tl.
圧症,心不全で治療を受けた.昭禾1:142年5月血圧 220/110mm]一ig,心電図で洞性頻脈 心不全,心
内膜炎を起こし,昭和43年3月,高血圧,心不全 で降圧剤を使用した.同時;期に右眼底出血右網 膜中心静脈血栓症,黄斑部変性が認められた,
昭和41年5月,感冒後胸部圧迫感食べた物が 胸につかえると時々言っていた.同年11月には左 側胸痛があった.
昭和44年12月,咳徽,喀疾があったが,胸部痛 はなかった.12月18日午前2時,突然前胸壁が つかえたような痛みがあり背中に響いた.3時半 すぎに往診してもらい,飲み薬を貰って少し治っ た.午前7時野見山先生往診その時血圧測定不 能であり,ビタカンファー,ネオフnリンなどを 注射し,救急車で救急室を受診した.現症は顔貌 苦悶状,目の周囲にPigmentation,頬部にTelea−
ngiektasieを認め,左手のPulsは触れなかった.
Puls 80/m不整,頚部にOliver−Cardarelli sy−
mptom(+),心臓油音界右1横指,左2横指拡 大,肝2横指腫大であった.
Clinico−Pathological Conference (70) Dissecting aneurysin.
一388一
写真1
灘、
鷺謹
写真2
胸部レ離離(写真1)で,大動脈陰影の拡大を 認あるが,心電図(写真2)は心房性期外収縮を 認める他に,冠不全の所見はなかった.以上の所 見より大動脈瘤を疑って心研にお願いしました.
榊原:何か今まで言われたことで会員の方で質 問はありませんか.そういう診断を下された根拠 について今話をされたのです.心電図上に著変が なくて冠不全,心筋硬塞の徴候があり,胸内痛を 訴えるし,レントゲンの所見がああで,このよう な診断をつけたということですが,それでよろし うございますか.その時外科で診断された石原先 生御意見をひとつ.
石原:心研の石原でございます.内科から連絡
を受けて患者さんを拝見致しましたが,history からみても急にその時にdissectingを起こして大 きくなったのか,あるいはもともと以前にあった ものが再び今度ひどく進んだのか,という事の区 別はつきませんでしたけれど,レントゲン写真の 型と患者のhistoryからやはり解離性大動脈瘤と 考えました.
榊原:解離性動脈瘤がどの時点で起こったかと いうことが問題ですね.はい,どうぞ内科の方.
黒川:言われたことの繰返しになるかも知れま せんが非常に特有な胸痛発作があって,重症な訴
えで参られた患者さんで,その時点の胸内苦悶と いうのが,解離性かどうかわからないんですけれ
ど,Aortenaneurysmaかも知れないと,それか ら非常な胸痛に比べて,先程おっしゃいましたよ うに心電図が所見がcoronalの徴候が出ていな い.X線写真もAortaの周辺がぼけたようなは っきりしない影がある.またPulsが触れないと いうことが非常に気になって,今度実際に解離性 大動脈孕みたいなもので閉塞が起こって触れなく なったのか,アナムネーゼでは本人は若い時から 触れなかったというんですが,大動脈弓症候群や 膠原病の問題もありますが,一方はつきりしない ので,まあ一番重症な疾患をまず考えてお願いし た訳です.
榊原:どなたかAneurysmaだけを考えなくて もいいんじゃないか,あるいはAneurysmaであ ってもまあこんなことも考えられると,何か他の 意見をお持ちの方おりませんか.
小坂:内科の小坂でございます.只今の榊原先 生の御質問に直接答えるのではないのでございま すが,学内の委員会に出席の時間がまいっており
ますので,外科へ送るようになった事情だけ発言 させて頂きます.内科の立場は受持と黒川講師の 話の通りでありまして,多少の問題点は残りまし ても,この際やはり外科にお願いすべきと判断し ました.内科の側から言いますと,内科医は全然 メスを取れませんから,しっかりした外科医者が 近くにいて下さるので非常にありがたいことであ
ります.特にこの状態で再び起きるかもしれない ような危険をはらんでいる場合,私達がいたずら
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に時を過ごすということは極めて愚かなことでご ざいましよう.
そういうことは従来から言われている訳でござ いまして,この症例が手術に耐え得るかどうかと いう点はもちろんございましたけれども,今申し 上げたように。次の危険性ということを一つは考 えましたことと,もう一つには幸いなことに,一 寸その榊原先生の前でおかしい訳ですけれど,日 本一の心臓外科がある,これなら安心して送って 後顧の憂いなしという心算でお送りしたものでご
ざいます.
榊原:どうもありがとうございました.今,私 の伺いたかったのはそういうことでなくて,こう いう診断を考えていく筋道と致しまして,途中で 誰かがそれはおかしいという御意見があったら,
それを論じて頂きたいと思ったのです.
では小坂先生のご要望に応えまして,今度は外 科の先生一つどういうふうにその後をされたかと
いうことを.
西田=患者は12月20日心研3階に転科入院.
肥満体,顔貌やや苦悶状であった.血圧130/90 nraiHg,脈拍90,呼吸数24,呼吸困難はなかったの で酸素吸入は行なわなかった.心音は肥満体のた め聴取し難かったが,心雑音は認めなかった.肝 は2横指腫大していたが浮腫はなかった.時々咳 漱があり,軽度の背部痛を訴えたが,一般状態は 比較的落着いてたので,血管造影可能と判断し直 ちに行なった.
カテーテルは右心室に挿入し,造影剤注入後6 秒後より撮影するという方法で行なった.造影
(写真3)は胸部および腹部と二度施行したが,
その間患者の状態に変化はなかった.しかし検査 終了後病室に帰って嘔気および胸背部痛の訴えが あったが,間もなく軽快した.スライドはその血 管造影像で,正面像で左鎖骨下動脈部以下の下 行大動脈に解離したと思われる陰影を認めるので DeBakeyの分類による皿型に属する解離性大動
脈瘤と診断した.
なお,腹部大動脈の造影像は不鮮明であるがS 字状に湾曲し,拡大像を示し内壁は不規則性を示
していた.
写真3
12月22日午前10時,GOF全身麻酔下に手術を 開始,熟睡5肋骨を剥離離解して開胸すると,
胸腔内に約200CCの暗赤色の古い.血液貯溜を認め たが,出血点は不明であった.
大動脈瘤は非常に大きく,左鎖骨下動脈付近よ りスライドに示すごとく左肺上葉に陥入してお り,その付近の胸膜は薄く剥離することができず,
また一部は左側胸壁に達し開胸創を背部に延長す ることが不可能であった.そこでまず人工血管の 吻合を行なうことにして,左鎖骨下動脈分岐部直 下および下行大動脈の横隔膜上の部を剥離し,テ ープをそれぞれ通した.その時点で血圧180であ ったので,arfonad 250㎎の点滴使用により,20 分後血圧が80となった.そこで直腸温30℃の下に 中枢側に鉗子をかけ,徐・eeこ血流を遮断して大動 脈を切断し,ダクロン径25㎜の人工血管と端々吻 合を開始した.血流遮断後5分で血圧は一時190 まで上昇したが,25分後80,30分後70,さらに10 分後すなわち血行遮断1時間後には心停止した.
血圧が70を割る頃漸次徐脈を来たしたので,吻合 操作を一時中止して心マッサージを行なったが,
一旦は完全に心停止の状態となった.なおも心マ ッサージを続けながら末梢側の吻合も同様に端々 吻合を行ない,直ちに血流遮断を解除したが,そ の頃より心拍再開し.心マッサージを加えなくて
も血圧測定ができるようになった.このような状 態であったためと,前述のように大動脈瘤を剥離 が困難であったため,大動脈瘤の切除を断念して,
その中枢側および末梢側の断端を縫合閉鎖して,
そのまま暖干することにした.吻合部などの止血 を確認した後,胸腔内に二本のドレーンを挿入し て丁丁し,午後4時20分手術を終了した.手術終 了時血圧180,出血総量6,600ccであった.
手術後意識の覚醒がなく,気管チPt・一ブ挿管の まま回復室に入り,バードレスピレーターで呼吸 管理を行ない,再び血圧低下を見たのでイソプロ
テレノール,カルニゲン,エホチールなどの点滴 で血圧を100前後に維持した.
一方,心電図のモニターで心室性期外収縮が 時折出現するのを認めた.意識は術後約6時間 頃明瞭となった.血液ガス分析は術当日は,Po2 78.5,Pco234.2, Base Excess−9.9であった..
メイロン110ccで補正し,翌23日はPH 7.393,
Base Excess±0とになっている.尿量は術中よ り総量約80ccで,手術前日は380ccであり乏尿で あった.そして24日午前1時頃意識が二二し,血 圧が下降しはじめ,遂に3時30分死亡した.出血 総量は2,500ccであった.
榊原:問題がいくつかあると思うのですが,ま ず診断の手段としてAngiocardiogramが行なわ れて,それぞれ手術をされておりますが,手術の 方法をどんな方法をとったか,その手術の二死亡 しましたが,それはどういう原因で死んだか,ま た防ぐことができなかったかなど,いくつかの二 二がありますが,それらについて論じていただき たいと思います.まず,ショックの状態にある患 者に対して血管造影法を行なう,あるいは行なわ なけれぽならない,そういうことの可否について 初音先生.
初音:心研の初音でございます.現在の症例を 伺っておりましたけれど,この場合の血管造影の
リスクと必要性でございまずけれど,現在の症例 に対してこれは仕方がなかったと思います.確か にリスク云々されていますが,私達の経験してお ります30例の中にも,2例程解離腔の中にカテー テルの先端が入って,プレッシユアインジエク斗
ヨシを致しますと,その時に破裂する危険性がな いかとよく言われますけど,入れるとそういうふ
うにカテーテルが解離腔に入って造影を行なって おりますが,異常ございません.一血管造影は死亡
という事故なく行なわれております.必要性でご.
ざいますが,確かにプレーンの写真だけでも大体 解離二大動脈瘤という診断がほぼつきまずけれど も,治療という面から考えますと,解離の部位を 決定しませんと手術方法その他で治療が異なって
まいりますので,どうしてもこの場合は血管造影 が必要となって来ます.
榊原:今お話がありましたように,血管造影法 も危いような状態でした.かつてはこういうよう なショック状態にあるものは,できるだけアンギ オをやらない.また単純なレ線写真で見当がつく ものもアンギオをやらないで手術場に連れていっ て,・そこでアンギオをやった方がよろしい.とい
うのはアンギオによって死亡することもあります ので,手術場であるならぽ危険が起こっても何と かできますから,手術のできる所へつれていって しまうということが言われていた時代がありま す.しかし今,初音先生も言われたように,アソ ギオの技術が進みましたので,このようなショッ ク状態のものも検査されます.この症例では逆行 性のアンギオが行なわれたのだと思います.施設 の整ってる所では,レントゲンではっきりした写 真を写して,それから手術が必要なら手術をする 事になる.この患者は非常な重症ながらはっきり・
した写真がとられ,診断がついている.アンギオ をやりますのに静脈から入れたil ,あるいは逆行 性,すなわち動脈の方からカテーテルを入れて,
そこから造影剤を送ってレントゲン写真をとる,
あるいは後の方から大動脈に二って直接針を刺 し,直接動脈を写すというような方法があります が,こうした重症例ではどの方法を選ぶのが良い
ですか.
初音=確かに一型の非常に重症なショックの様 な状態の時には,逆行性は危険が全然ないとは申 せませんが,静脈性で一度肺を通して写した写真 ですと,解離腔と本管との区別が非常につき難い ので,現在行なっているのは殆んど逆行性を行な、
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つております.
榊原:動脈瘤のあるような患者には末梢の動脈 がポロポロになっているというような例が多いの ですが……,
初音:そういうことも確かにあります.先程出 ましたスライドのように,腸管動脈から腹動脈に
:まで解離があります場合セこは,確かに解離腔の中 に最初から入ってしまうということがございまず けれども,セルジンガー法という経皮的にやるん ではなくて,実際にイングイナルバンドの下で開 けて目で見てやるから危険はないと思います.
石原:この症例の場合,一般にはもちろん逆行 性のAortographyが一番鮮明に写ってよいので すが,この人はもともと左手の動脈はPulsがな
く,また左大腿動脈は脈拍が非常に弱いものです から,血圧を測定するのに右手を使うとすれば,
右大腿動脈を使う事:になります.しかし手術のた めに右大腿動脈に人工心肺をつなぐとすれば,こ の動脈を残しておきたいという考えで,仕方な く,静脈性にカテーテルを入れて,Aortogrophy を行ないました関係上,写りは少し不鮮明になっ て終いました.
榊原:一般の人には判り難いと思いますが,外 1科の人は動脈をつぶすということを非常に気にし
ます.一つには人工心肺の時に動脈が要るからで す.また動脈瘤のある場合,動脈が閉塞していた り,解離性の動脈瘤の病変で末櫓動脈が閉塞して おることがある.そういうような所へ管を入れる のは無理になりますから,右室に造影剤を入れた ということです.そうすると,一寸診断の点で困 ってくるんじゃないかということを今石原先生が 言おうとしておられるんではないかと思います.
石原:スライドのaortographyで御覧になり ますように,ここがascending aorta・ここに aortic archがあって,その先の左のsubclavian arteryの出る所にaneurysmaがあります.その 外側にもう一つ暗い所があって,大動脈が二重に なっておるように見えます.ここに偽管腔があろ
うと判断した訳であります.これが逆行性に行な われていたらもっとはっきりすると思います.例
.えば次のスライドのように,これは別の症例で逆
写真4
行性(写真4)に行なったものですが,このよう にはっきりしております.
榊原:解離した所の場所がわかることと,造影 剤が入っておりますと,どういう形でどこに流れ ておるということが判るということなどあります から,もし動脈から造影剤が入れられるような状 況だと非常に工合がいい訳です.しかしこの例で は,先程言ったように,静脈系に造影剤が注入さ れている訳ですが,これが解離性であることに多 少問題があるのではないでしょうか.
石原:単純な撮影でも下行大動脈は幅広くなっ ているのです.aortographyでこの幅広くなって いる所は造影剤が入らずとも当然写ったものか,
あるいは造影剤が入ってここの像が濃くなって写 ったのか,残念ながら区別がつきませんでした.
榊原:区別がつかない.解離性だから解離腔の 中にどこからか孔があいて造影剤が入って行くと 都合が良いのだけれど,今の石原先生の考えでは
ああいうふうな二重に写っているが,造影剤が入 って写ったのか,あるいは初めからあったのか区 別がつかないのは残念であったというお話です.
孔があいてそこらから解離腔に造影剤が入るのが 写っていれば,一見して解離性と分るのですが,こ
ういう二重織が見えたりする時には直接の証明は ないのです.しかし大体解離性の動脈瘤と普通は
一 392 一
写真5
灘
難
写真7
写真6
考えられる.それからレントゲンでどこかの分枝 がつまっているというようなことから,これは解 離性大動脈瘤と想像することがあり,また大動脈 弁の閉鎖不全などが起こりますと,やはり想像致 します.さて,患者ではじめ左手がPulsが触れ なかったという話,あるいはものを飲みこむこと がむつかしかったという話ですけれども,アソギ オなんかでその理由が見当がついたでしょうか.
石原:大動脈が下行するあたりに円型の真性動 脈瘤を思わせる所がありますし,また左のsubcl・
avian arteryが造影されていない事から,以前 に胸痛があったり,また嚥下障害のあった事は説 明されるかも知れません.
榊原:途中でもう1例を供覧しましよう.やは りこれは心筋硬塞という診断で心門に入って来た
症例(写真5)でございますが,この例はひどい 心筋硬塞様の胸痛を訴えている.しかし,心電図
(写真6)で先程おっしゃったよう1こ心筋硬塞を 考えられる所見がみられないということから,あ るいは解離性動脈瘤じゃないかと申しました.も
うひとっこれを解離性動脈瘤じゃないかと申した 理由は,心臓のBasisに雑音が聞こえる点です.
systolic, diastolicの雑音が聴診されました.レ ントゲン(写真7)を撮ってみましたところ,ご 覧になりますような所見を得まして,やはり解離 性の大動脈瘤とわかりました.これはわかった直 後死んでしまった.急性期に死んでしまったよう な症例でございます.ですから,こういうような 例ではゆっくり考えている暇がない.さて,一応 は手術の適応であろうということを考えて手術に ふみきられたのでしょうが,その手術の方法は,
その前tc DeBakeyの1型,2型,3型というよ うな話が簡単に言われておりましたけれども,学 生さんのために誰かひとつスライドで1型,2型 の差をよく教えてあげて下さい.
初音先生どうですか.
初音言ここに出ましたスライドが解離性大動脈 瘤を大きく分けましたので,細かく分けます人は
これを6型,7型に分けておりまずけれども,
外科的な治療上で最も適当な分け方ということで
一 393 一
丁欄
瀞
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糊→. , 孝
多
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TYPE皿
勢:
60%
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A
MORTALI丁Y 67% MORTALITY 25% MORTALITY 25% MORTAL[丁Y lg%
図1 Types of dissecting aneurysm of the thoracic aorta (by DeBakey)
DeBakeyが分けましたのがこの3つの型です(図 1.).スライドの一番左にございますのがいわゆる 1型で,この場合は解離が上行大動脈から起きて 来るのが普通です。解離の程度は胸部まで及ぶも
の,および腎動脈のレベルまで及ぶもの,さら に左のは腸骨動脈分岐部から股動脈まで,これは DeBakeyの手術例171例の分類で,こういうもの が大体全体の12%でございます.この分類スライ ドに出しましたのは,手術の適応となった171例 のMortalityが67%です.その次にございますの が2型と言われるもので,これはよくマルファン 症候群などに遭遇する形で,同じように解離の起
きますのは,上行大動脈から恥部にかけてのもの です.最も慢性に移行する可能性のある生存率の 一番良いのはここに出ております3型,右の2つ のものでございますが,胸腔内に解離の範囲が広 くな:り,とどまるものが大体22%.腸骨動脈まで 至りますものが40%.Mortalityは25%〜19%.
他のものに比べてよくなっておりますが,といい ますのは,この例はしぼしば亜急性から慢性に移 行し得るし,また外科適応になるということから こういうことです,で,どうしてこういう部分が多 いかということは後程お話を致します.解離性大 動脈瘤の本態そのものをいろいろ言われておりま して,どういうことか問題がありますが,後程病 理の先生から話があると思いますけれども,要す
るに解離の起こる場所は中膜の外ヲ3程度,内膜か ら中膜のi/3程度の部分に脆弱の部分が生じて,こ こへ壁の非常に薄い,いわゆる栄養血管の破裂
が起きるのではないかということが言われており ますが,解剖的に血流の力のかかる部分と言いま すと,どうしても上が鎖骨下動脈と無名動脈で固 定されている関係上,縦の力が拡張期に横に伸び る場合に力のかかる部分と申しますと,一番free な上行大動脈の部分と鎖骨下動脈の分岐部のすぐ 下,そのために解離が起きる場所は1型の場合と 3型の場合が非常に多いわけです.解離の起きる 場所としては,上行大動脈と左の鎖骨下動脈のす
ぐ下の末梢ということが多いわけです.これは外 傷の動脈瘤の場合と全く同じで,力のかかり易い
ということです.そういう部分から生じていま す.一旦生じてしまいますと末梢側にも中枢側に
も伸びますものですから,このような解離の範囲 に及ぶものでございます.
榊原:手術の適応あるいは手術の時期に関して は,病理の方のお話を伺ってから,後程またご意 見を伺いたいと思います.その前に如何なる外科 処置をされたかということを石原先生,
石原:左の第5肋骨を切除しまして開胸しまし た.ちよつとカラーの術中写真を.あまり写真が
よくありませんが,開けてみますと,ここの左の subclavian arteryの出るあたりから,非常に大 きな,拍動のある動脈瘤がみとめられました.動 脈瘤そのものが左方の開胸創からはみ出す程で,
開胸器で創を拡げると破れる恐れがある程でし た.左めsubclavian arteryより先は大動脈瘤が 肺の上・中葉に非常にかたく癒着しておりまし て,剥離は不可能と判断しました.肺に出血して いるようで色は変っておりましたが,肺実質は正 常の所が多く,肺全捌するのは侵襲を大きくする し,肺機能から考えて,この大動脈瘤は膿解する 方針で手術を行ないました.動脈瘤の中枢側と末 梢側の大動脈を最小限に剥離しまして,遮断糸を 通し,鉗子がかかるようにしました.直腸温30℃
で遮断して中枢側を切断して,直径25㎜のダク、ロ ンの人工血管を吻合しました.中枢側を縫合中,
心停止を来しましたので,心マッサージを行ない ながら吻合を終りましたが,縫合を終った頃より 心拍動も再開して,血圧も上って来ました.次い で末梢側を吻合しました.本来ならば,aneury一
磨
盃
峯
蔑
図2
1険
smaをこれから切除して,人工血管を短縮すれぽ よいのですが,先にのべました理由で中止し,動 脈瘤の前後を縫合閉鎖して手術を終りました.
榊原:手術は,動脈瘤のある場所を上下で切断 して,その問に人工血管でバイパスをしておい て,まず血流を再開しておいた.本当はそれでは 長すぎるので,短くしなければならないのです が,そういうことをする余裕がなく,両端を閉鎖 したものをそのまま置いてあると,こういうお話 です.ここで動脈瘤の手術の一般論の話をちよつ
と伺うことにしましよう.
石原:dissecting aneurysmaまたはaneurysma の手術法は色々とあるわけですが,このスライド はdissecting aneurysmaの1型,先程初音先生か ら話のあったものの一種です.Fenesterationと いう方法で,図2のようにreentryがあるなしに かかわらず,左のsubclavian arteryのすぐ末梢 側で大動脈を切断しまして,中枢側の内筒の方を
クサビ型に切除して,解離腔と本来の大動脈の 管との間に交通を作ります.次に,末梢側の解離 腔を閉鎖する目的で内議と外筒をかがって終りま す.そして中枢側の外筒と末梢側の今かがった所
とを吻合すると,図のここの所にreentryができ ます.こういう方法が従来行なわれましたが,現 在はあまり行なわれておりません,今は大体人工 血管で大動脈を再建する方法(図3)がとられて おります.すなわち,低体温が,または人工血管 等によって血流と確保しながら,または人工心肺 の体外循環によって血流を確保しながら手術を行
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図3
論議
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図4
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ないます,このスライド(図4)は人工血管で脳 へ,また手の方への血流を確保しながら,大動脈 弓の置換をする方法です.またこのスライドは人 工心肺による体外循環を用いて行なう方法であり
ます.またこれは(図5)左心房から腹部の方へ 人工心臓のみにて一血液を流しながら下行大動脈瘤 を切除して,人工血管で大動脈を再建している図 です.症例によってこのような方法を選んで手術
しております.
榊原:昔は,代用血管を使いますとヘパリンが 使ってありますから,代用血管から血液が漏れて 困ったのです.ですからヘパリンをできるだけ使 いたくない.そうしますと,今,石原先生が言つ
一 395 一
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図5
たようないろいろな方法を用いて,できるだけ人 工心肺を使わないで,しかも脳の血管や心臓に対 する冠動脈の血流は保っていて治療しようと,い うことであった訳です.しかし.ヘパリンを使用 している時でも,漏らない人工血管が出来たとい うことと,その他人工心肺の技術の進歩なんかに よりまして,今は簡単に病変部を切り取ってしま って,冠動脈のところには冠動脈に管を入れ,脳 へ行く動脈には脳へ行く動脈に管を入れて,血液 を別々に送るようになりました.だから手術の時 間は昔と比べてよほど短縮されるようになった.
また手術がよりやり易くなったということになり ます.ところが,この患者は手術をして死亡した
.のですが,その死因は先程言われていたところに
「よりますと,脳がおかされたのでしたね..
石原:先程西田先生から話がありましたよう に,術後6時間ぐらいで意識は明瞭となっており ますので,脳障害の方は考えないでよいのではな いかと思います.それよりも,術後無尿となりま したことの方が重要と思います.大動脈遮断時に 直腸温30℃でした.この温度であれぽ,30分まで は一般に遮断可能と言われていますが,この場 合,心停止を来たしたりしたために,約1時間遮 断してしまったために急性腎不全を来たしたのだ
と思います.
榊原:こういうような非常に重症な状態ですか ら,いろいろなそれに対する処置をする前に神経 異常をきたしている.そのために,ある一定の時
間以上血液がまわらなかったために,脳の方はう まくいったらしくて意識が出たのですが,腎の血 行がうまく保たれなかったらしく,それで死亡し たのです.死にました後の状態についてお話を伺 った上で,また治療法というものに戻って,皆さ んと一緒に考えてみたいと思います.どうぞ病理 の話をお願い致します.
梶田=これが大動脈弓で,枝が3本出ておりま す.無名動脈がかなり拡張して,これが左の頚動 脈,これが左鎖骨下動脈です.拡張して,中が完 全に,血栓および凝血によって詰まっております.
こういうStenoseがあります.そのSubclaviaの すぐ下から,こういう代用血管がつないでありま す(写真8).
写真8
これが本来の胸部大動脈のあるところで,まわ りは血腫状になっておりまずけれど,よく限局し た,こういう組織であります.左の肺と一塊にな っておりまして,一緒に取り出したものでありま す.重さが1,2009程ありました.前額断で切り ますと,これがAortaの断面で,ここからこう いうふうに拡張しております.つまり,こういう 非常に高度の拡張,それから壁がうすくなってお
ります.中には血栓がつまっている.それからそ の外側へ出血しまして,肺組織を圧迫している.
こういう状態であります.もう少し前の方で切り
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写真9 胸部大動脈および肺を含む水平断(1)
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写真10 胸部大動脈および肺を含む水平断(2)
ますと,これは左側の主気管支であります.そし てここはHamatomです.これは肺の中へは出 血しておらない.その証拠には,この気管支ある いは肺動脈の走行を調べますと,全部血腫を迂回 して,こういうふうに迂回しております.今度は これを水平断に切りますと,こういう大動脈の断 面が出ます(写真9).全体としては,こういう Aortaの一様な拡張がありまして,部分的にDis・
section解離が起こっております.で,この辺はや や古い血栓で,ここには非常に新しい凝血があり
ます。そしてここに食道が見えております.食道 に対する圧迫性の効果も明らかであります.これ はもう少し下の方でありまして(写真10),そうし
ますと,やはりこういうAorta,血栓はかなり固 くなっておりますが,器質化はあまり起こってお りません.この辺は肺の下葉の一部,ここはやは1 り食道が出ております.ここの所は新しい凝血で あります.
これは最後の死因と関係して非常に重要な,腎 臓であります.ごらんのように,表面が非常にデ
コボコでありまして,解剖の時に,私は硬塞癩痕 と診断したのでありますが,実はここに,非常に 高度のショック性の変化が起こっております.
ご覧のように,急性の細尿管壊死acute tubular necrosis,こういう像であります.この方は妊娠 後に腎炎があったそうでありますが,かなり長く 続いた腎炎がありまして,そういう基盤の上に,
非常に新しく起こった激しいショック腎でありま す.この辺は少し古い変化であります.これは糸 球体の毛細管につまった線維素血栓,いわゆる Intravascular disseminated coagulationの像で』
あります.末期に無尿があったということも当然 と思われる組織像でありす.
なおこの例には,脾臓,肝臓,肺,リンパ節に ザルコイドージスの変化がありました.こういう いうようなGranulomであります.巨細胞を伴う 肉芽腫で,壊死が全然ない.周囲にリンパ球の浸:.
潤もない。巨細胞にはasteroid bodyがありまし て,ザルコイドージスと思われます.
榊原:ザルコイドージスについては,いろんな ところに出来ていたわけですか.
梶田:肺とか肝臓,脾臓,それから腸粘膜にも ありました.ザルコイドージスは全体のプロセス
とは関係のない,偶発的にみつかったものだと思 います.なおNiereの変化は,やはりHypertension
と関係がある,そういうことでAlleurysmaとあ る程度genetischにも結びついている.つまり,
腎炎がありまして,腎臓の反応性も非常に充まっ ている.そこにショック性の事態が起こりました ので,非常に激しいショック腎が起こったという ふうに考えたいと思います.
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榊原:今の話によれば,解離性の変化も起こっ ているのですね.
梶田:解離性の変化も起こっていますけれど も,全体の像としましては,どちらかというと真 性の大動脈瘤ですね.
榊原:その他に部分的には…….
梶田:部分的には中膜を分けて,出血がintra−
muralに起こっているという意味ではDissection といってよろしいかと思いますけれども,支配的 なBildはむしろ真性大動脈瘤と思います.
榊原:そうすると,そこに破裂した出血は新鮮 なもののようでございますか.
梶田:それはごく新しい…….
榊原:出血だということですね.
梶田:はい.
榊原:この症例はAneurysmaでありまして,
真性なAneurysmaであって,その一部分には intramularのBlutungがあるけれども,大部分 外側に向って出血していた.その出血は新しいと いうお話でございますから,こちらの外来にやっ て来ました時に,出血がはじまったものと思まい す.そういう事態がわかってしまってから前の状 態を考えてみて,なるほどそうだったという意見 がございましようか.内科の先生,あるいは石原 先生,そういうふうに言われてみるとなるほど,
こういうところがおかしかったというような……
石原:先程問題にしました.aortogrophyで,
二重になっている外側の解離腔と思われる所が,
非常に薄くて造影剤がはたして流れ込んで作った 影であろうかという懸念がありました.というの は,動脈瘤が前後を遮断して切断した時に,非常 に動脈瘤に近い所で切断しましたから,解離腔が 動脈側に見えてもよいと思ったのですが,二重に
なっている所は見られませんでした.
榊原:普通ちよつと考えますと,動脈瘤の破裂 というと,ぽあっと出血して直ちにショック死す るように考えまずけれども,そうではない.だん だんAneurysmaが大きくなってまいりますと,
その周囲に炎症性の変化が起こって癒着を起こし ております.したがって出血を起こしましても,
堤防を切ったようにいきなりザーッと出て死ぬと
いうのはかえってめずらしいことです.
じわじわ出血を起こし,その出血が周囲のBi・
ndegewebeでかこまれたところ,あるいは癒着 でかこんでいるところをおしのけて大きくなり,
ついVこは一部分が破れて,また出血を起こすこと が多いのでありますから,今のような症状が起こ っても不思議ではないのであります.動脈瘤の破 裂の頻度を調べたのがありまずけれども,頭蓋内 の動脈瘤の88%が破裂し,胸部の大動脈瘤の場合 には61%が破裂し,解離性の大動脈瘤の場合には それが後になって80%が破裂し,腹部大動脈瘤の 時には38%が破裂する.これはSektionの例での 検査ですが,これで見ますと,腹部の大動脈瘤な んかは比較的破裂率が少ないということが言える
と思います.さて今のような状態を考えてみます と,この症例をもう一度検討致しますと,解離性 の大動脈瘤を含めまして,手術および手術の時期 適応ということについて,どなたかご意見はあり
ませんか。例えば初音先生にひとつ意見を述べて いただき度いと思います,
初音:今の石原先生のスライドを見せて頂いて 写真を見ますと,解離性の場合に二重に見える像
とはちよつと違うように思いますが,これ二重に 見えたはっきりしたのはありますか.和久井さん のです.それから加藤さんのスライドを出して頂
写真11
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表1 大動脈瘤症例(手術例)の予後
胸部
上行大動脈 大動脈朔月 下行大動脈 胸腹部大動脈 腹部大動脈 解離性
1型
皿型 皿型
1
5 2 11 3
3 25
6 2 5
5
1 4 23
7 2 10 2 16 3 1 7 ng
写真11
けますか.ちよつとスライドにしますと,ここを ご覧になるとわかりますが(写真11),これ全体こ う幅広く見えておりまずけれども,ここからここ までが本管でございます.ここからここまでが耳 管がずっと来ておりまして,下の方のちよつと判 りにくいかと思いますけれども,ここからここま でが本管,ここからここまでが副管でございます.
これは手術時にも同じように確かめられておりま して,結局この例は鎖骨下動脈のすぐ下からはじ まっていたものですから,グラフトを使いまして 置換いたしまして,1年8ヵ月の現在も健康でご ざいます.同じようにはっきりしまして,ダブル バレルのチ=・ 一ブにみえておりますのが加藤さん ので(写真12)ここのところに二重にはつきり見 えているこの像と,今の写真とはちよつと違うの です.私はあとからこの写真を見せていただいた のですが,そういう面から見ますと,確かに解離 性の動脈瘤にはちよつと疑いがございまして,真 性大動脈瘤でやはり血栓,先程石原先生がおっし ゃったように血栓がつまったり,あるいは肺の中 に浸潤があった場合にも,同じようにレントゲン の写真の上ではDensityが濃くなっているもの ですから,二重管のように見える場合がございま す.その例じゃないかと思いますけれども,手術 そのもの,不幸な転帰をとりましたけれども,手
術をするかしないかということでございます.こ れはそこにございます手術例と,手術例の予後で す(表1).
先ほど真性大動脈瘤の破裂の程度については榊 原先生からお話しがありましたように,胸部の場 合は腹部の38%に比して非常に高い.また解離性 の場合につきましても,いわゆる1型のものは24 時間以内に死亡するのが21%,それから3日から 数週間に死亡いたしますのが大体19%,ところが
3ヵ月以内に90%が死亡致します.で,このほと んどの半数以上が破裂によるもの,その他は破裂 に解離性大動脈に二次的に起こる心筋硬塞ある いは大動脈弁の閉鎖不全,そういうもので死んで おりまずけれども,1/2〜2/3程度のものが破裂によ って死んでおります,こういうことからこのよう な症状が出て来た場合は,いずれにせよ真性の大 動脈にせよ,あるいは解離性の大動脈にせよ,破 裂寸前の状態と言って良いのではないかと思いま す.お腹の場合の普通の大動脈瘤を見ました場合 でも,同様にある時期が来て前から大動脈瘤が判 っておりました場合でも,このように急激の症状 の進行がありました場合は,破裂寸前の状態と判 断致しまして,そのような場合はやはり手術にふ み切りませんと,一旦破裂したものを手術致しま すと,この例のように非常に難かしく,操作上も 非常に難かしくなりまして,死亡率も非常に高く なります.症状が出ましたならば,この場合は何 日の間かわかりませんが,即刻手術というのが一 番良いのじやないかと思います.
榊原:どうもありがとうございました.今のお
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話でも判りますように,大動脈瘤の破裂というも のは即刻手術した方がよろしい.解離性の大動脈 瘤には,それが起こりましてからごく短時間の間 に死んでしまう例と,それからしばらくの間,時 間の余裕がある亜急性の例と,それから慢性に経 過する例とがあります.で,慢性に経過し得るだ
ろうというものに対する手術の適応については,
いろいろな意見があるのでございます.特に血圧 を下降させる薬を使っていれば,この場合血圧が 下降することじやなくて,心筋の収縮力を低下さ せるという意味だと言っておりますけども,急性 期の亜急性の経過を取りそうなものでも慢性化さ せることができるから,一応それを試みた方がよ ろしいということを主張している人があります.
しかしそういう人でさえも破裂,あるいは破裂を 思わせるような徴候が出て来た場合,あるいは今 まで紡錘型であったものが嚢状な動脈瘤の形を取 って来た時には手術せよといいます.また血圧下 降剤を与えてもどうしても進行が止ならいような 時には,手術すべきであるということを申してお ります.本日の例は,急性な,しかもショヅクの 状態を呈して来たものであります.しかも手術を 行ないましたけれども不幸にし死亡致しました が,診断も確定し,しかも手術に移行するまでは うまくコントn 一一ルされていたというような例で ありますが,ただ残念ながらこの例では,心停止 というようなことが起こっていたり,病理の方が おっしゃいましたように,腎そのものにいろいろ な変化が起こっていたというようなことで,不幸 にして失いました.患者が早く入院するようにな りますと,外科医はこの例でとられたように早急 に診断を確定して,最も適当と思われる処置をす るというようなふうにやるのが正いしかと思いま す.その意味でこの症例は正しく治療されたのだ けれども,患者の状態があまりにも悪く,助ける ことができなかった残念な例であります.これか ら一生懸命治療されて成績を上げていただき度い と思います.どうもありがとうございました.
黒川:その前にちよつとふり返ってというよ うな話が出ましたので,内科の血管造影する前の
時点で,症状の個々と成書にのっていることを比 べてみて,Oliver−Cardarelli症候のあることや,
左背下部の強い油音からAneurysmaのRuPtur の疑がありますが,dissecansも否定できないとい う時点で迷って,あの場合は決めることが難しい というようなことを思いました.それから小坂先 生が伺っていただきたいとのおことづけで,平た
く言えば,こういった症例の心門での手術の危険 率というか,今後このような患者をお願いするの に参考にさせて頂き労い,どういう症例が有効で,
どういう症例が無効かというようなことです.今 ちよつとスライドを見せて頂いたのですけれど も,年令その他の点も.
石原:今まで心研で手術されたdissecting ane,
urysmaは11例で,3例が長;期生存をしています.
いずれも3型のものです.
榊原:長期生存例は3型に属していて,しかも 11例のうち3例長期生存例がいただけであるとい
う話でございまして,これはDe Bakeyあるいは クロイなんかによっております.でも急性期に手 術します手術の危険率は,約40%と半数助けられ たら良い方だというような状態でございます.逆 に申しますと,先程申しましたように,ほっとけ ば24時間以内で死ぬのが大部分というのが手術の 対象となります.遠隔成績でみまして,これはよ その報告でございますが,たとえぽ5年生存例は,
胸部アノイリスマでは87.5%であるけれども,こ ういうような症例は動脈硬化カミあるのと高血圧が あるので自然の予後が悪い,したがって長期の 生存ということが非常に難かしくなるということ
も考えられます.それと同時に,どうしてもまだ 日本ではこういう方面の診断が進んでおりません ので,手に入る時期がおそい.例えばこの患者さ んも,初めはおそらくお腹が痛いがどうしょうか
というようなことを言っていたのだろうと思いま すが,とにかく入院がおそい.そういう状態であ
りますから,どうしても予後が悪いと思います,
今後良くしようと思います.今までの成績が悪か ったから送らんとおつしゃらずに,どうぞできる だけ早く送られるように.
ショックの状態でも,ショックの治療でやりま
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すと回復できます.この例なんかもその例でござ いまして,心停止が起こらなけれぽ助かっていた だろうと思われます.小坂先生に申し上げたいこ とはお懲りにならずに一つまた送っていただきた いということで,それが患者のためになると思い ます.できれぽそれより以前,すなわち大動脈瘤
がみつかっていたらそのとき手術しておくべきだ:
つたと思います.特に胸部のアノイリスマの予後二 が大変悪うございますので.
それではどうもありがとうございました,これ.
で症例検討会を終ります.
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