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東郷政明 論文内容の要旨 主

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Academic year: 2022

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東郷政明 論文内容の要旨

主 論 文

Comprehensive Prospective Analysis of the Factors Contributing
to Aspiration Pneumonia Following Endoscopic Submucosal Dissection in Patients with Early

Gastric Neoplasms

早期胃癌患者の内視鏡的粘膜下層剥離術後の誤嚥性肺炎の要因に関する 包括的前向き分析

東郷政明、赤澤祐子、赤司太郎、山下利佳、吉富泉、大場一生、橋本さつき、

岩下ひろ子、黒木唯文、長田侑子、和田典子、今村圭文、橋口慶一、山口直之 近藤久義、中尾一彦

Acta Medica Okayama, Vol. 74, No. 5, pp. 407-413,2020

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻

(主任指導教員:中尾一彦教授)

緒 言

内視鏡的粘膜切開術(ESD)は早期胃癌に対する第一の治療法となっているが、その 合併症として最も多いものの一つが誤嚥性肺炎である。ESD 後の誤嚥性肺炎は出血や 穿孔よりも好発する可能性があるが、その予防については注目されていない。既報で は全身麻酔下の手術前に専門的な口腔ケアを行うことにより術後肺炎の発生率を低 下させると報告されている。本研究では早期胃新生物における静脈麻酔下 ESD 後の誤 嚥性肺炎の要因を包括的かつ前向きに分析し、特に治療前の口腔ケアが誤嚥性肺炎を 予防できるかどうかに注目して検討した。

対象と方法

2016 年 12 月~2019 年 12 月に長崎大学病院および諫早総合病院で胃 ESD を行った患 者(61 人)を対象とし、封筒法にて口腔ケア群(32 人)および対照群(28 人)に無作為に 振り分けた。口腔ケア群に割り当てられた1名は ESD を完遂できなかったため除外し た。口腔ケア群の患者は,ESD 前に専門家による口腔ケアを行った。統一された口腔 ケアプロトコルを作成し、2 施設で共有することで、統一性を確保した。ESD 前後に、

画像検査にて肺炎の有無を評価した。口腔ケアの有無、口腔内細菌数、年齢、性別、

基礎疾患、喫煙、手技時間、鎮静剤の種類や使用量などの項目と ESD 後の肺炎の関連 性を検討した。

結 果

登録された患者の平均年齢は 73.5±7.9 歳であった。口腔ケア群と対照群の間には、

年齢、性別、基礎疾患に有意差はなかった。ESD 前の口腔ケアは有意に口腔内細菌数 を減少させた(p<0.05)。ESD 翌日に SPO2<95%または 3%以上低下した症例は 16.7%に

(2)

見られ、肺炎の発症率は 8.3%であった。口腔ケア群の患者では 4 名(12.5%)が肺炎 を発症したのに対し、対照群では 1 名(3.6%)が肺炎を発症し、両群間に統計的な 差は認めなかった。しかし、肺炎発症患者では肺炎を発症しなかった群と比較して、

口腔ケア後の口腔内細菌数が有意に高値であった(p<0.05)。肺炎発症率は年齢、性 別、喫煙歴、肺の基礎疾患の有無における差はなかったが、脳血管疾患を有する患者 では有意に肺炎発症率が高かった(p<0.05)。手技時間は肺炎群で長い傾向にあったが 統計学的有意差には達しなかった。また ESD 施行中に使用する鎮静剤のうちメペリジ ン投与量の増加に伴って肺炎発症率は有意に増加した(p<0.05)。

考 察

今回の検討で、ESD 翌日の肺炎の発症率は 8.3%、画像的な肺炎には至らないものの、

血中酸素飽和度が低下した患者は 16.7%と、誤嚥は比較的高頻度に発生していると考 えられた。その原因として、静脈麻酔による嚥下反射低下およびスコープの挿入によ る唾液の誤嚥が考えられる。特に脳血管疾患患者に肺炎発症率が高く、嚥下機能低下 によるものと考えられた。よって、口腔ケアによって処置前の口腔内細菌数低下させ ることができれば、ESD 後の肺炎を抑制できる可能性があることが示唆される。今回 の検討で口腔ケアによって誤嚥性肺炎を予防できるかどうかを判定できる症例数を 獲得できなかったが、サブ解析における肺炎リスク、口腔ケア後の細菌数が、肺炎発 症群で多いことが判明した。これらの症例では、口腔ケアによる細菌数の減少が十分 ではなかった可能性もあり、ESD 前後の追加ケアなどにより口腔内細菌をさらに減少 させることができれば、ESD 後肺炎を減少させる可能性があると考えられた。

本研究で当初計画(302 人)より少ない症例数となった理由として胃 ESD が減少傾向に あったことと、多くの患者が口腔ケアのために複数回病院を訪れることに対する同意 率が低かったことであり、当初の計画ではその割合が過小評価されていた。大規模病 院を訪れる患者は遠隔地から来る方も多く、地域に密着した歯科医院と協力して包括 的な口腔ケアを提供する必要があると考えられた。

また本研究ではメペリジンの投与量に比例して肺炎の発生率が増加することが示さ れた。注目すべきは、肺炎群の大半が 105mg 以上のメペリジンを投与されていたこと である。さらに、140mg 以上のメペリジンを投与された患者の 25%が肺炎を発症して いた。メペリジンは咽頭反射を比較的強く抑制することが知られており、誤嚥のリス クを高める可能性がある。内視鏡医はオピオイド、特にメペリジン使用量には注意す べきであることが示唆された。

結論として深い鎮静下での ESD 関連肺炎の予防に口腔ケアが有効であることを証明す るものではなかった。しかし、脳血管障害の基礎疾患がある患者や高用量の鎮静剤を 必要とする患者は、呼吸器系の合併症の発生に注意する必要があると考えられた。

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