管 理 職 員 の 労 働 組 合 に つ い て
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(2) 論. 説︵中山︶. 一六二・. まで各種の論議をよび起してきた︒とりわけ︑それが︑昭和二四年の労働組合法改正にあたって︑資本の側の︑いわ. ば失地回復としての︑手兵の労働組合からのとりあげを︑立法によって援助することを実質的目的としていたもので ※ あることについては︑すでに多くの論者の一致して指摘するところであるということができよう︒. しかし︑この規定は︑使用者の手兵のとりあげというその歴史的使命を︑すでに固定的事実と化した﹁非組合員の. 範囲﹂にかんする労働協約の規定や︑労働組合規約の規定の中で実現しおえ︑今日では︑公共企業体等労働関係法. の中で︑あらたな問題をひき起す原因となっているように思われる︒もちろん︑そういったのは︑. ︵以下﹁公労法﹂︶︑地方公営企業労働関係法︵以下﹁地公労法﹂︶︑および国家公務員法︵以下﹁国公法﹂︶と地方公務員法. ︵以下﹁地公法﹂︶. 現時点において︑労働組合法の適用をうける労働組合と使用者のあいだで︑互いに手兵をとりあう傾向が消滅したと. いうのでもなければ︑また︑この規定が既成事実と化して問題性をその面で喪失したという意味でもない︒現時点に. おける問題の主要な側面が︑右にあげた四つの制定法の領域でのあらたなそれに移行している︑というに止まる︒. ところで︑右の四つの制定法の領域での問題は︑二つに分けることができる︒第一は公労法・地公労法上のそれで. あり︑第二は国公法︑地公法上のそれである︒問題点をあきらかにするために︑まず︑それぞれの法規の定める制度 とその意義を概観しておくことにしよう︒. 公労法・地公労法には︑一九六五年六月までの間︑﹁職員は︑組合を結成し︑若しくは結成せず︑又はこれに加入. し︑若しくは加入しないことができる︒但し︑管理又は監督の地位にある者及び機密の事務を取扱う者は︑組合を結. 成し︑又はこれに加入することができない﹂旨の規定があった︵旧公労法四条一項︑旧地公労法五条一項︶︒そして︑こ.
(3) れら団結を禁止される管理・監督職員の範囲は︑公労法上の公共企業体等労働委員会の決議に基づき︑労働大臣がこ. れを告示する︵旧公労法四条二項︶方式と︑地公労法上の︑政令で定める基準に従い︑条例で定める︵旧地公労法五条二項︶. 方式とが存在していた︒. これら旧公労法・地公労法上の制度は︑使用者の手兵をとかこむという意図を︑それら手兵となるべき者の団結を. 禁止する︑もっとも徹底した態容で貫徹したものであり︑かつ︑その手兵の範囲を︑中立性について疑いをもたれて. いた公労委や︑公労法上の使用者の立場にある政府が定める政令による方式によって︑労働組合対策がそれを必要と. するたびに︑拡大しつづけてきたという経過も作用して︑公労法・地公労法上の団結権侵害規定の一つだとする批判. にさらされてきた︒そして︑すべての労働者が﹁いかなる差別もなしに﹂団結権をもつというILOの第八七号条約. ︵結社の自由.団結権条約︑一九四八年︶の批准が目程にのぼるとともに︑その団結権侵害立法であることは︑より明白. になり︑終に廃止のみちをたどることとなった︒管理・監督者も︑使用者の指揮命令のもとにおかれているかぎり︑. 同条約にいう労働者たるの性質をもつこと︑疑う余地がないからに他ならない︒一九六五年六月︑ILO八七号条約. の批准承認にともない︑公労法・地公労法の右規定は削除されて︑労働組合法の原則に復することとなった︒ただ︑. なおちがうのは︑労働組合法上の資格審査制度︵五条一項︶にかえて︑公労委が︑使用者の利益代表者の範囲を認定. して告示するという方式をとった点︵公労法四条二項︶にある︵地公労法五条二項では︑労働委員会が認定して告示する︶︒. それは認定のしかたによっては︑労組法の資格審査︵組合から申請のあった都度︑具体的に認定される︶とちがって︑硬直. 一六三. した︑団結権制約機能を果しうるものと考えられている︵この点は本稿の直接の対象ではないので省略する︶︒ 管理職員の労働組合について.
(4) 論. 説︵中山︶. 一六四. つぎに国公法︑地公法上の制度を概観しよう︒国公法は旧公労法制定︵一九四八年︶と同法に︑同一の原理︵一九四. 八・七二三マッカーーサ書簡︑政令二〇一号︶にしたがって全面的に改正されたものであったかにもかかわらず︑公労. 法のような︑管理・監督職員の団結を禁止する規定もおかなければ︑労組法の使用者の利益代表者にかんする規定も. おかなかった︒したがって︑理論上︑国家公務員は管理職︑一般職の区別なく︑国公法上の一般職であるかぎりすべ. て﹁職員﹂として︑﹁職員団体﹂を結成することができることとなっていた︒使用者の手兵を︑すでに存在していた. 公務員の労働組合からとり上げる必要がなかつたわけではなく︑また労組法の制度のおもてむきのたてまえである︑. 労働組合の︵使用者からの︶自主性の確保という原則が︑公務員の団結についてのみ必要がないとは到底いえなかっ たのだから︑国公法上の右の制度は︑特殊︑例外的なものとしての性質をもっていた︒. そして︑その特殊︑例外的な性質は︑公務員の国公法上の団結である﹁職員団体﹂が︑労働組合とは性質が異なる. ものだという以外には説明がつかなかった︒つまり︑全体の奉仕者論︵憲法一五条二項を根拠とするVを活用して︑. 公務員の使用者は国民であるから︑公務員については労使の対抗関係は存在しない︒したがって︑労組法が︑労使の. 対抗関係の存在を前提として労働組合の︵使用者からの︶自主性を確保するために︑使用者の利益代表者にかんする. 規定をおくことが必要であったのと異なり︑国公法上はその制度の必要がない︑とする以外には説明のしようがなか. った︒しかし︑その説明を︑おもてむきに使うことには︑さしさわりがあった︒なぜなら︑もし右の説明が貫徹され. ることになれば︑﹁職員団体﹂は労働組合ではないことになり︑公務員が職員団体をしか結成できないとすれば︑団. 結権そのものを否定されていることとなってしまう︒また︑団結権は否定されていないという理屈をたてようとすれ.
(5) ば︑国公法上の﹁職員団体﹂と異なる労働組合︵憲法二八条を根拠法規とする︶の結成を認めるの他ないことになっ. てしまう︒そして︑そうなった場合︑団体交渉や争議行為の法的評価をめぐって︑問題は尽きることを知らない︒し. たがって︑公務員は団結権を否定されている︑といえない以上︑職員団体は労働組合でもあり︑労働組合でもないよ. うな不徹底な説明付けしかできないことになって︑使用者の利益代表者の問題についても︑単に︑制定法上︑労組法. および公労法に類似する制度がないから︑職員団体にはすべての職員が加入できる︑と説明するの他なくなってしま. う︒政府が公式に︑職員団体は労働組合でないという考え方が労組法︑公労法上の制度を欠いていた理由のようだ︑. と説明したのは︑八七号条約の批准にともなう国公法︑地公法の改正法案︵最初のそれは一九六〇年四月に国会に提. 出された︶において︑管理職等についての新しい制度を採用することを決意した後の時点であった︑といわれるのは︑ 右の事情を反映しているように思われる︒. 改正国公法・地公法は︑管理職員等について︑労組法のそれと︑旧公労法のそれとも異なる︑新しい制度を創設し た︒それは︑. ﹁職員は︑職員団体を結成し︑若しくは︑結成せず︑又はこれに加入し︑若しくは加入しないことができる︒ただ. し︑管理若しくは監督の地位にある職員又は機密の事務を取り扱う職員︵以下﹃管理職員等﹄という﹀と管理職員等. 以外の職員とは︑同〜の職員団体を組織することができず︑管理職員等と管理職員等以外の職員とが組織する団体は︑. この法律にいう﹃職員団体﹄ではない﹂ ︵国公法一〇八条の二︑三項︑地公法五二条三項︶と規定する︒. 一六五. そして︑右の管理職等の範囲は︑国公法上は人事院規則︵前出同条四項︶︑地公法上は人事委員会規則又は公平委員 管理職員の 労 働 組 合 に つ い て.
(6) 払調. 説 ︵中山︶. 会規則で定めることとされている︵前出同条四項︶︒. 一六六. 国公法・地公法上の右に概観した制度は︑いわば︑管理職組合制度の内在する問題点をもっとも集約的に表現して. いる︑ということができるように思われるので︑次に項を分けて︑この制度の問題点を検討してみることとする︒. ※ この問題については︑私自身︑一九六五年に﹁管理職の範囲覚え書き﹂︵季刊労働法五六号︑三〇頁以下︶ を書いた︒本稿. 国公法・地公法における管理職組合. は︑いわばその続編にあたるものであって︑参照文献等についてはそれを見ていただきたいと考える︒. 二. この制度が︑現行法のような形態で定着するまでの聞︑つまり︑一九六〇年四月国会提出の岸内閣案から︑一九六. 五年五月に無修正で︵一部施行延期となったものの︶国会を通過した佐藤内閣案までの間︑政府︑自民党と労働組合︑. 社会党等との間に︑この制度のあり方をめぐって︑いくつかの曲折があったことは周知の通りである︒労働組合︑社. 会党などは︑この制度が︑労働組合からの使用者の手兵のとりあげのために作用すること︑ならびに︑創設される管. 理職等の職員団体なるものが︑反労働組合的な︑使用者の手先きとしての役割りを果す︑第二組合的なものとなるこ. とをみこして構想されており︑この制度が︑労働者団結にたいする分割統治的機能を果すものだとして︑原則的に反 対する態度をとっていた︒. しかし︑政府側の強固な方針とその変動に対応して︑右の原則的反対の態度もその時々の時点で︑具体的な対応の.
(7) しかたを示した︒. その一つは︑一九六一年の池田内閣案の中で︑管理職団体と一般の職員団体とを戴然と区別する岸内閣案を修正し︑. 一般の職員団体に管理職等が加入した場合は登録をうけられないが︑管理職等の団体に一般職員が加入した場合は登. 録できる︵管理職等の職員団体として︶という制度に変更したことを契機としていた︒労働組合等は︑この変更が︑. さきにあげた︑第二組合育成というかくれた目的をもっとも露骨に示すものだとして︑はげしく反対した︒. たしかに︑池田内閣案における右の変更は︑法理的に説明のつかない︑都合にあわせた立法であるという批判をま. ねかれ得なかった︒管理職等を一般職員の団体から切りはなすのは︑自主性の確保をたてまえとしていた︒つまり︑. 管理職等が加入すると︑その一般職員の団体は︑使用者に対抗する自主的な団結であることが困難となる︑というこ. とを理由にして︑一般の職員の団結権が侵されないように配慮したという口実を設けていた︒それを池田内閣案のよ. うに︑管理職等は一般の職員団体に加入できないが︑管理職等の団体は︑一般の職員をもふくむことができるとした. のでは︑管理職等の職員団体の中での一般職員等の団結権が侵されるのは放置する︑ということになる︒それは︑当. 時︵一九六一年︶の労働組合の分裂が︑下級職制によって指導され︑その管理下にある従業員をひきつれて分裂組合を. 結成し︑もしくは分裂組合に参加する︑という形態をとることがすくなくなかったことに対応しており︑分裂促進立. ↓般職員の団体の中へ管理. 法であるということは︑理論の上でも︑また事実の上でも否定できなかった︒︵なお︑管理職等の職員団体は︑その構成. 員の過半数が管理職等であればその旨の取扱いをうけられるが︑管理職員の数が過半数を下まわると︑. 一六七. 職等が加入したものとして︑登録をうけられなくなる︑といった教義学的解説がおこなわれたのは︑この期のことである︶︒. 管理職員の労働組合について.
(8) 論. 説︵中山︶. 一六八. この︑あまりにも露骨な変更は︑最終政府案の中では旧に復することとなり︑現在の制度におちついた︒したがっ. て︑今日の時点で︑池田内閣時代におこったこの変動について︑論ずることは意味がないと思われるかもしれない︒. しかし︑その変動は︑この制度を立案した真の意図を︑もっとも端的に示したものとして︑今日の制度を考える上で 無視し得ない意義をもっていると考える︒. その二は︑管理職等の範囲の認定のしかたを通じておこった︒もともと管理職等を一般の職員団体から切りはなす. のは︑一般の職員団体の自主性を確保する目的に出るというのであるから︑どのような管理職が加入すれば自主性が. そこなわれるかはそれぞれの一般の職員団体の規模︑方針︑とりわけそれぞれのもつ歴史によって個別的であること. になる︒つまり︑だれを加入させると自主性が阻害されるかを判断するのは︑一般の職員団体それ自身だということ. になる︒もっとも単純な例をあげれば︑職制上の地位はきわめて低いにもかかわらず︑出世主義その他から︑使用者. 側に労働者団結の内情を通報することを常とし︑また︑使用者側の意図を労働者団結の中に導入することをその任務. としている職員を︑加入せしめるかどうかという場合と︑職制上の地位は相当に高いけれども労働者団結に理解があ. り︑労働者団結の行動に連帯できる者の加入を認めるかどうかを考えた場合︑単に︑地位の上下のみから形式的に判 断できないことは明らかであろう︒. このことは一般の労働組合法のばあいも同様であって︑使用者の利益代表者の範囲は︑それこそ労働組合の自主的. に決定すべき問題であって︑使用者と協議決定することの否なるはいうまでもなく︑第三者機関としての労働委員会. がそれを認定することについても︑理論上問題がのこされている︒そこで︑いわゆるア・プリオリ論が展開されるこ.
(9) とになる︒つまり︑﹁本来法の予定する使用者の利益代表者の範囲は︑客観的に定まっているべきものであって︑理. 論的には︑労使当事者の協定によってこれを左右することはできないものである⁝⁝当事者のこれに対する意見は︑. ︵労働省労働法規課編著﹁改訂版労働組合法・労働関係調整法﹂二二頁︶︒. ここでは. 労働委員会の決定に対する参考資料であるに止まり︑事実上当事者の合意は尊重されるであろうけれども︑法律上労 働委員会を拘束するものでない⁝⁝﹂. 労使の協定との関係が述べられているけれども︑﹁客観的に定まっているべきものであって﹂という考え方でいけば︑. 労働組合自身の決定も︑客観的に定まっている事実の認識である︵と称する︶労働委員会の決定を動かすわけではな. いことになる︒こうして︑労働委員会の認定の自由は︑理論的に確保されている︒しかし︑明らかに使用者側の陣営. に属するものと︑そうでないものとの区別は︑客観的に明らかだとしても︑それを加入させることが︑明らかにその. 労働組合の自主性をそこなう︑ということにはならない︒自主性擁護という観点からいえば︑その境界は客観的に定. まっているといえない︑個別的︑具体的な問題である︒まして︑明らかに使用者側の陣営に属しているとまではいえ. ない下級職制等について︑客観的に定まっているなどとは到底いえないことになる︒その意味でア・プリオリ論は︑. 制度の本来の趣旨からはなれた︑労働委員会の権限を確保するための立論にすぎないとの批判をまぬかれ得ない︒と. りわけ︑職務内容に変更がなかったにもかかわらず︑管理者等の範囲︵旧公労法上の︒たてまえとしては労組法の場. 合と同じとされた︶を拡大した公労委の判断は︑その具体的な例証であるということができよう ︵前掲︑﹁管理職の範 囲覚え書き﹂︑参照︶︒. 一六九. 公務員のばあいその管理職の範囲の認定機関が人事院︵国公法︶︑人事委員会︑公平委員会︵地公法︶となっていて︑ 管理職員の労働組合について.
(10) 論. 説︵中山︶. 一七〇. 労働委員会とは根本的に性格を異にする機関である乙とから︑これら管理者等の範囲の決定のしかたに影響を及ぼす. ものであることが当然予想された︒つまり︑三者構成機関であって︑その中の公益委員の選定にあたって労働者側の. 意向が十分に反映しており︑かつ︑労使関係を専門的にとりあつかう行政委員会としての労働委員会と︑いわば公益. 委員のみによって構成され︑その選定が議会にゆだねられている︑かつ︑労使関係の専門機関とはいえない人事院等. とでは︑労働組合の自主性についての認識の度合いが異なることが予想された︒とりわけ︑地方公務員についての人. 事委員会︑公平委員会については︑その不安が一層強度であるような経緯があった︒そこで︑とりわけ組合に加入し. ている校長︑教頭をうばい去るための立法だと考えていた︑教育地方公務員の全国団体としての側面をもつ日本教職. 員組合は︑地公法上の人事委︑公平委員会方式に強く反対した︒そして︑この点と︑いわゆる中央交渉権の問題とが︑. 八七号条約の批准︑関連国内法改正問題のいわば焦点の一つを形成していたということができる︒. しかし︑政府は校長︑教頭に管理職手当を支給させるなど︑実質的に管理者等の範囲にふくまれるとみなされるた. めの措置をとり︑現行制度を貫徹しようとした︒日本教職員組合等の抵抗は︑いくつかの管理職の範囲を定める規則. 中で︑教頭をふくませないことに成功するなど︑若干の成果を生み出すことができた︒また︑これにともない︑国立. 学校のうち大学の教官中︑教授が管理職等に含まれるか否かについての議論をみちびき出したことも︑これら抗争の 反映の一つといえよう︒. そして︑現行制度の結果は︑労働省のおこなっている調査報告自身︑つぎのように述べた数字となってあらわれて. いる︒すなわち昭和四二年の国家公務員法適用労働組合員数は二七九︑六四六人で︑昭和四一年の二八七︑四四九人.
(11) ︵労働大臣官房. にくらべて二・七%の減少を示し︑地公法適用労働組合員数についても︑昭和四二年の一︑四八八︑二二八人は︑昭 和四一年の一︑五三一︑二四六人にくらべて二・八%の減少を示した︒. この減少は︑﹁I﹂0八七号条約の批准にともなう国内法の影響もあって﹂と説明されているように. 労働統計調査部︑昭和四二年労働組合基本調査結果速報︑昭和四二年二百︑二頁︑二責参照︶︑管理職員等が一般職員団体. から切りはなされてのち︑自からの団結を結成するよりも︑不団結の方向をえらぶものが多かったことを間接的に示. している︒このことは︑管理職等の職員団体の制度を創設するという立法が︑管理職等をして︑あらたな団結を結成. させる方向に機能したというよりは︑不団結︑つまり︑すでに加入していた一般の職員団体からの離脱をひきおこす. 方向に機能した︑ということである︒労働組合から︑使用者の手兵をとり去るというこの制度の本来の目的からいえ ば︑予想され︑起るべくして起った結果であるということができるように思われる︒. 三 管理職組合の自主性について. 国公法・地公法上の管理職等の職員団体にかんする制度は︑真の立法目的が使用者の手兵のとりあげにあり︑その. 通りに機能したという右の考察をうらづける︑他の一つの制度的問題点を包含しているように思われる︒それは︑管. 理職等の職員団体の︑法律上の位置づけをめぐる問題である︒管理職等の職員団体と一般の職員団体とは︑連合体を. 結成できるか︑という問題について︑政府側はできる︑と考えていた︒ただし︑一般職員団体の自主性を阻害しない. 一七一. 限度であり︑その限度は︑団体構成員の数的比率で判定できるとしていた︵前掲︑覚え書き参照︶︒この論法自体︑労 管理職員の労働組合について.
(12) 論. 説︵中山︶. 一七二. 働組合の自主性確保という見地からいえば︑ナンセンスといえる形式論理であった︒直に自主性を確保するという見. 地にたてば︑判定すべきなのは単なる数的比率の問題ではなくて︑連合のしかたそれ自身にあるといわなければなら. ない︒単一組織体に近い強い結合をもつ連合体の場合と︑連絡協議に近い弱い結合をもつ連合体の場合とを考えてみ. ればわかるように︑連合のしかた自体多種多様であって︑その中で一般職員団体の自主性の確保をいうのであるなら. ば︑連合体の中の一般職員団体が意思決定ならびに行動を自由にできる範囲が問題とならなければならないからであ る︒. しかし︑問題はそのもう一つ先にあって︑管理職等の職員団体は︑使用者に対する関係で如何なる自主性をもつか︑. という点にある︒国公法・地公法上は︑管理職等の職員団体も︑一般の職員団体も︑ひとしく﹁職員団体﹂としての. とりあつかいをうける︒つまり︑何れも勤務条件の維持向上を目的として︑使用者と交渉することができ︑在籍専従. 役員を認められ︑組合活動を理由とする不利益取扱いの救済をうけられる︒それらの側面において︑法律上︑右の二 種の職員団体は差別されることがないのである︒. そうだとすれば︑管理職等の職員団体の︑使用者に対する関係での自主性が︑一般の職員団体のそれと同様に︑法. の視野に入ってこなければならない︒一般の職員団体について法律が配慮したのと同等の︑もしくはそれに近い︑自. 主性確保のための措置がなければならない︑ということになってくる︒しかし︑国公法も地公法も︑その点について. は一切ふれることがない︒それは︑立法の真の意図が一般の職員団体からの使用者の手兵のとりあげにあった以上︑. 管理職等の団結について︑その自主性について立法上の細工をこらす必要がなかったからではないだろうか︒.
(13) もちろん︑労働関係にかんする立法は単純であるべきであって︑労使の自治にゆだねられるべき領域が多く存する. 以上︑右の点についても︑立法上︑細かな細工をこらすことがのぞましいというのではない︒むしろ管理職等につい. ての規定自体︑労働組合の自治にゆだねられるべき間題であって︑立法による干渉はひかえるべき性質のものであっ. たと考える︒しかし︑それにもかかわれず右のようにいうのは︑管理職制度についての立法自体︑問わるべき基本的 な欠陥を内包していることを指摘するために他ならない︒. しかしながら︑管理職等の職員団体の労働組合としての性格について︑立法上欠陥があるのは︑その根源を昭和二. 四年改正によって成立した︑現行労組法上の使用者の利益代表者にかんする制度においている︑ということができる. ように思われる︒すでに概観したように︑労働組合法は︑使用者の利益代表者の加入をゆるす組合が︑法律上の﹁労. 働組合﹂でないとする規定をおいている︒そこから︑使用者の利益代表者の加入をゆるす組合は︑労働組合としての. 諸機能のうち︑どれだけを認められるかという問題がいわゆる刑事免責︵労組法︻条二項︶︑民事免責︵同八条︶︑協約. 締結能力および締結した労働協約の効力︵同一四条以下︶︑不当労働行為︵同七条︶などをめぐって︑理論的にも︑具体的. にも発生し︑それぞれ一応の解決をみてきた︒しかし︑使用者の利益代表者の結成する労働組合の法律上の地位につ. かかる団結︵ここでは管理職組合といゑ豆茱を用いて︑労組法︑公労法・地公労法︑国公法.地公法の適用. いては︑稀に︑抽象的に論ぜられることがあるに止まっていた︒それは︑使用者の手兵のとりあげという本来の立法 目的からすれば︑. をうける類似の団体のすべてを指すこととする︶について︑立法上︑こまかな細工をこらす必要もなければ︑また現実に︑. 一七三. 労組法二条および五条の果した機能も︑かかる団結の結成をもたらすようなものでなかったことにも対応していると 管理職員の労働組合について.
(14) 論. 説︵中山︶. いえるように思う ︒. 一七四. もっとも︑労働組合法昭和二四年改正において︑管理職組合の問題が論点にのぼらなかったわけではない︒労働省. が作成した改正試案の第二条は︑現行法二条但書一号にほぼ等しい規定を二項一号におき︑あわせて第三項で使用者. の利益代表者の四つの類型を規定するとともに︵この四つの類型は表現をあらためて現行法二条但書一号にふくめてある︶︑. 第四項として︑次のように規定していた︒. ﹁前二項の規定は︑使用者の利益を代表すると認められる労働者が︑その加入することができない労働組合︵⁝⁝. ﹁一般労働組合﹂⁝⁝︶と別に一般労働組合の組合員である労働者の加入を許さない労働組合︵⁝⁝﹁幹部労働組. 合﹂⁝⁝︶を組織し︑又はこれに加入することを妨げるものではない︒但し︑幹部労働組合は︑一般労働組合ととも. に労働組合を組織し︑一般労働組合が加入する労働組合に加入し︑又は第二五条の規定による団体交渉をするための 適当な単位であって一般労働組合が含まれているものに含まれることができない﹂︒. このまわりくどい規定は︑管理職組合を結成することができ︑それは労組法上の労働組合であること︑但し︑一般. 労働組合と連合体を結成することはできない旨を定めようとするものであった︒制度自体︑現行国公法・地公法に類. 似すること︑ただし︑現行法はさきにふれたように︑管理職組合と一般組合の連合体結成を禁止しない︵八七号条約. の保障する﹁結社の自由﹂中に︑連合体結成の自由がふくまれていることと対応︶のにたいして︑この試案では連合 体結成を禁止しようとしていた点が注目される︒. ところで︑右の試案は労働組合側からも使用者側からも反対され︑国会提出の政府案の中からは削除された︒反対.
(15) の理由が︑組合側にとっては︑国公法・地公法の場合と同じく︑労働組合の分裂︑第二組合育成ということであり︑. 使用者側にとっては︑切角組合の手からとりかえす手兵が︑また団結を結成したのではやり切れないという点にあっ. たことについては︑詳論しない︒注意すべき問題点は︑この試案もまた︑現行の国公法・地公法上の制度と同じく︑ 幹部組合の自主性については︑なんら考慮していなかったという点である︒. 労働組合の使用者に対する関係での自主性確保という観点で︑一般労働組合にたいし︑管理職等の区別が必要であ. るというのなら︑管理職等の団結についても︑その使用者に対する関係での自主性︑したがって右の論法を用いれば︑. 管理職組合と︑それら管理職員等を管理監督する地位にある職員との区別が問題とならなければならなくなる︒係長 の組合からは課長以上が︑課長の組合からは部長以上が︑といったようにである︒. 事実︑労組法昭和二四年改正当時の労働省の考え方は︑それに近いものであったようである︒すなわち︑労組法二. 条但書一号の使用者の利益代表者について︑当時の労政局長名による解説書は︑次のようにいっていた︒. ﹁本号の規定によって労働組合に加入することができない労働者が︑その労働組合と別個の労働組合を結成するこ. とのさしつかえのないことは従来と同様であって︑憲法二八条の規定からいっても当然のことである︒但し︑かかる. 部課長組合の組合のうち組合員である部課長相互の関係において︑使用者の利益を代表する者を含んではならないこ. とはいうまでもない︒蓋し︑本号の規定は︑組合員に対して会社の利益を代表する者が同じ組合の中にいることが組. 合の自主性を阻害するのでこれを排除する趣旨のものであり︑たとえば課長というような同一の階層の人々のみが集. 一七五. って労働組合を作ることは︑何等他の労働組合の自主性を阻害せず︑又之に工場長等の如き監督者がはいらなければ︑ 管理職員の労働組合について.
(16) 論. 説︵中山︶. 一七六. その組合は課長階級の利益を代表する限りにおいて完全に自主性を保ち得るからである﹂と︵賀来才二郎﹁改正労働組 合法の詳解﹂中央労働学園︑昭二四︑九八頁︶︒. ヤ. ヤ. 労組法二条但書一号と五条一項の制度を︑それとして肯定する立場において考えれば︑管理職組合について右の結. 論に到達するのは︑論理的に必然である︑ということができよう︒現行労組法の解釈として︑右の結論が維持されて. いるのは︑その意味で妥当性をもっている︒しかし︑そうだとすれば改正試案が︑幹部労働組合自身の自主性につい. て︑何等の規定をおいていなかったことが問題とされなければならないし︑また︑右のように階層的に考慮するよう. 立法で規定することができず︑もしくは妥当でないと考えられたとするならば︵それに賛同するが︶ひるがえって︑. 一般労働者と管理職との関係について規定することの妥当性が問われなければならないことになる︒つまり︑労組法. 二条但書一号や五条一項の規定は︑立法によって規制するに適当な間題ではなくて︑労働組合の自治にゆだねられる. べき︵許されるとしても︑旧労組法のように︑御用組合であることが顕著なもののみを排除するよう弾力的に運営で. 実態と問題. きる制度としての︶性質の問題なのだ︑ということである︒. 四. 管理職組合は︑労働組合運動が発展すればそれだけ︑それぞれの国における客観的諸条件にしたがって︑自然発生. 的に︑つまり︑立法による干渉を媒介することなしに︑結成されるものである︒たとえばイギリスにおけるぎω窪宰. 鉱o昌9帽38霧ごβ巴Ω<出ωR<薗⇔毎や︑フランスにおけるOo鼠8曾碧δβO伽欝曾巴oα窃O餌身⑦ω︵PO●ρ︶は︑.
(17) その典型的な事例だということができるし︑同様な管理職組合が電気通信関係職員に視点をかぎってみても︑オース. トラリアにも存在することが知られている︵PTTIの調査による︒四二・九・二五︑日特定資料︑謄写印刷︶︒これらの組. 合の生成の背景をなす諸要因について︑本稿で論じ及ぶことは不可能であるが︑管理職等を使用者からも︑一般労働. 者からも区別する︑経済的︑社会的な諸要因が︑歴史的な背景となっていること︑それらの諸要因はそれぞれの国で 異なっていることを想像するに難くない︒. 日本では︑戦後の労働組合運動の昂揚期において︑生産管理戦術をも採用させた経済的社会的な要因から︵そして. おそらくは思想的にも︶︑管理職等を一般労働組合の中にとりこむことが当然とされ︑逆に︑昭和二四年改正労組法. による新制度は︑管理職等を使用者の側にうばいかえし︑それを使用者の手兵とする機能をになうものであったから︑ 管理職等の独自の団結を見出す余地はほとんどなかったといえよう︒. しかし︑技術革新︑合理化によって生み出されたあたらしい管理者層は︑従来の年功序列的に形成された管理者層. とは異なり︑きびしい管理責任を要求される︒そのことの結果は管理者層を︑一般労働者よりもより不安定な地位に. すらおくことになる︒したがって︑今後︑日本において管理職等の︑職業的利益を擁護することを目的とする団結の. 形成が︑予測されないではない︵もちろんそ分場合︑現在の目本の労働組合の︑企業別労働組合性が大きな役割りを 果す︶︒しかし︑現時点では︑未だ︑特殊な管理職組合を見出しうるに止まる︒. 一七七. 一九六五年八月目本政府によって批准され. それは︑郵政省職員の中の︑特定局長における日本特定局長連盟である︒一九六六年一〇月二六目に結成大会をも ったごの連盟は︑その宣言の中で︑﹁われわれ全国特定郵便局長有志は︑ 管理職員の労働組合について.
(18) 論. 説︵中山︶. 一七八. たILO第入七号条約にもとづき︑みずからの社会的︑経済的地位の向上を図らんがため︑今目ここに管理者労働組 合を結成し発足する﹂と述べて︑自からが管理職組合であることを宣言している︒. この連盟は︑﹁規約綱領に賛同する特定郵便局長をもって組織する﹂︵規約五条︶ものであって︑目的には左の四項 をかかげている︒. 一︑会員の労働条件の改善維持 二︑会員の社会的経済的地位の向上. 三︑郵政事業の合理的改善の促進 四︑会員の協同福利の増進︵規約三条︶︒. これらの規約等から見るかぎり︑この連盟が管理職等の﹁労働組合﹂であると認めて差支えないように思われる︒. つまり︑使用者にたいする対抗関係およびその中での自主性という面からみれば︑特定局長という一定階層の管理職. 員等を組織の対象としていること︑﹁われわれは今まで︑政府たる経営者と︑従業員たる労働組合との間に位置し︑. 常に激しい労働攻勢の矢面に立たせ乍ら︑一方﹃公労法第四条一項但し書き﹄に阻まれ団結権もなく︑従って政府側. から不当に抑圧され従業員以下の待遇に甘んずる外なかったが︑今日からは︑郵政事業の最先端にある管理者兼労働. 者として⁝⁝﹂と続く結成大会宣言の文言は︑使用者としての郵政省との対抗関係にあることを十分に示していると いうことができる︒. また︑目的面からみても︑労働条件の維持改善を主たる目的とする労働組合法二条本文の規定にてらしてみて︑労.
(19) 働組合性を否定する余地はない︒. そうしてみればこの連盟︵日特連と略称しているVは︑労働組合法二条但書一号の︑さきにみた労働省による解釈に. したがえば︑労働組合法上の労働組合といって差支えないことになる︒したがってまた︑この組合が︑労働組合法五. この. ︵その点︑この組合から法人登記のためとして申請された資格審査につ. 条一項にしたがって資格認定を得︑労働組合法の規定する﹁手続に参与する資格﹂と﹁救済を与えられる﹂資格とを 有することもまた︑理論的に確認できることである. き︑公共企業体等労働委員会が未だ認定をおこなっていないと伝えられるのは︑理解できないことである︶︒したがって︑. 管理職組合︵未だ組織率は小さなものであるが︶を相手方とする団体交渉︑労働協約の締結︑不当労働行為等をめぐる 使用者の措置は︑労働組合法の規定によって規制されるということになる︒. こうして特定局長において︑はじめての管理職労働組合が生まれたことは︑もちろん特定局長という管理職を使用. 者からも︑一般労働者からも区別する諸要因が作用している︒わけても﹁特定局﹂制度の前近代性︑非合理性が一般. 職員の労働組合からはげしく追及され︑かつ特定局長自身︑郵政省の職制の中では特別の︵それも劣位の︶取扱いを うけてきたという事情が強く作用したとみることができよう︒. したがって︑この例は︑直ちに他の公共企業体等︑あるいは国家公務員︑地方公務員の管理者層について類推する. ことのできない︑特殊な要因をふくむものではあるけれども︑さきにふれた技術革新︑合理化下のあたらしい管理者. 層の中に︑連鎖作用を生じないともいい切れない性質のものだということができよう︒そして︑このような例に当面. 一七九. することによって︑より一層労組法二条但書一号および五条一項︑ならびに国公法・地公法の管理職等の職員団体に 管理職員の労働組合について.
(20) 論. 説︵中山︶. 一八○. かんする制度が︑立法による規制には不適当な団結自治の領域への介入として︑ 立法の不備を明らかにしつつあると いうことができるように思われる︒.
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