7月9日から15日の一週間、ロンドンの南西 約55㎞にあるファンボロー飛行場で、西暦偶 数年恒例の航空界の大イベント、ファンボ ロー・インターナショナル・エアショー2012 が開催された。ただ今年のファンボローは、 異例ずくめでもあった。まず7月27日からロ ンドン・オリンピックが開催されるため、通 常の7月後半の開催が前倒しされた。さらに イギリスでは6月下旬から大雨が続き7月に 入っても治まらず、イングランドのほぼ全土 に洪水警報または注意報が出され続けてい た。ファンボロー飛行場周辺には大きな被害 はなかったようだが、飛行場のあるハンプ シャーでも洪水の被害はあり、またショーの 会期中も天候には恵まれず、一時的だったも のも含めれば、雨の降らない日のなかった一 週間でもあった。 それでもショーの規模自体は前回よりもさ らに大きくなり、出展した企業・団体等の数 は39ヵ国から1,506社で、前回の1,450社を約 4%上回った。また展示場全体の面積は、前 回よりも18%増やされて、126,933㎡になって いた。 しかし入場者数は、9日から13日までのト レード・デーは約107,000人で、前回の120,461 人を下回った。また14日と15日の一般公開日 も、12万人程度の来場を見込んでいたが約10 万人に止まり、前回の108,000人とほぼ同数で あった。この結果総来場者数は約207,000人と、 前回の約228,000人を大きく下回ることとなっ たが、これは前記した悪天候が大きく影響し たものと捉えて良いだろう。 その一方で商談規模は大きく、会期中に発 表された航空機の発注(確定契約だけでなく コミットメントも含む)は758機で、その総 額は約720億ドル(約5兆4,000億円)に達した。 これは前回の約53%増とのことで、最高を記 録した2008年のショー(約880億ドル=約6兆 6,000億円)には及ばないものの、史上二番目 の商談額であった。 こうした商談額をリードするのはもちろ ん、アメリカのボーイング社とヨーロッパの エアバス社の受注発表であり、この両社が ショー会期中に発表したものは次の通りであ る(用語は両社発表のものを使うが、コミッ トメントと購入合意は同義である)。 [ボーイング社] ●ヴァージン・オーストラリアが737 MAX 23
ファンボローエアショー報告
航空ジャーナリスト 青木 謙知 ファンボロー・インターナショナル・エア ショー2012の会場風景。A380が飛行展示の ため飛び立とうとしている。機を確定発注。 ●エア・リース・インターナショナルが737 MAX-8 60機と737 MAX-9 15機を確定発注、 ほかに737 MAX 25機の購入権を再確認。 ●GECASが737 MAX-8 75機と737-800 25機に ついてコミットメント。 ●ALAFCOが737 MAX-8について20機のコ ミットメント。 ●アボロンが737 MAX-8 10機と737 MAX-9 5 機、737-800 10機の計25機のコミットメン ト。 ●ユナイテッド航空が737 MAX-9 100機と 737-900ER 50機を確定発注。 ●社名未公表で737-800 3機を確定受注。 [エアバス社] ●アルキア・イスラエル航空がA321neo 4機の 購入に合意。 ●ドルクエアがシャークレット付きA319 1機 を確定発注。 ●キャセイ・パシフィックがA350-1000を10 機確定発注、加えて発注済みのA350-900 36 機のうち16機をA350-1000に変更。これに よりキャセイ・パシフィックのA350XWB の確定受注機数はA350-900が20機とA350-1000が26機になった。またキャセイ・パシ フィックは、別に2機のA350XWBのリース 契約を交わしているので、導入総数は48機 になる。 ●チャイナ・エアクラフト・リーシングがエ アバスA320ファミリー36機(うち8機は A321)の購入に合意。 ●CITがA330ファミリー10機を確定発注(う ち5機は2011年のオプション契約を正式発 注に切り替えたもの)。 ●ミドル・イースト航空がA320neoとA321neo を各5機確定発注。ほかに8機をオプション 契約。 ●UITがA321 20機を確定発注。 ●シナジー・エアロスペースがA330-200 6機 とA330-200F 3機を確定発注。 ●アボロンがA320neo 15機のコミットメン ト。 またこの2社以外にも、ボンバルディア社 はQ400 NextGen 21機の確定受注と、開発中の Cシリーズについてエア・バルティックとの 間にCS300 10機の購入とほかに10機の購入権 取得について覚書を交わしたことを発表し た。さらにショー後半の7月11日には、三菱 航空機がアメリカのスカイウエストとの間 で、MRJ 100機の購入について基本合意に達 したことを明らかにした。三菱航空機が、こ の種の航空ショーで受注に関する発表を行っ たのは、これが初めてである。この時点では まだ最終契約には至っていなかったが、契約 が交わされれば単一航空会社からの最大確定 受注となる。 またMRJはこれまでに、全日本空輸から25 機(確定15機、オプション10機)、トランス・ ステーツ・ホールディングスから100機(確 定50機、オプション50機)、ANIグループ・ホー ルディングスから5機(確定)を受注しており、 オプションも含めた受注総数は230機(確定 は170機)となって、YS-11の量産型受注機数 (180機。試作機を含めた総製造機数は182機) を越えたことになる。なおスカイウエストの 発注は、基本的にはMRJ90であるが、将来的 にMRJ70にきりかえることができるオプショ ンが設けられることになっている。 この受注予定の発表の後三菱航空機は、 MRJの新しいキャビン・モックアップを報道 関係者に公開した。三菱航空機はMRJの計画 発表後から比較的短期間で、胴体の細かな設 計変更を二度行っていて、2008年のファンボ ロー航空ショーから設計変更後の客室モック アップを展示してきた。この旧モックアップ は全長が約2.5mで、普通席2列が並んでいた
だけであったが、今回の新モックアップは全 長が約8mもあり、前方に上級クラス座席が横 1席+2席の3席配置で2列、その後方に普通席 がこれまでと同様の2席+2席の横4席配置で3 列並ぶというものであった。初公開のモック アップなので、もう少し細かなことを記して おく。 三菱MRJの新しい客室モックアップ。上級ク ラスと普通席の両座席が取り付けられ、また 最後部にはギャレーとトイレ・ユニットもある。 まず上級クラス座席だが、革張りのシート で座席ピッチは38inである。普通席は各種の ピッチを体感できるように、右列は1列目と2 列目の間が32in、2列目と3列目の間が29inで、 左列はそれぞれが31in、32inと、計4種類の間 隔で取り付けられている。また右列2列目の 座席だけ、リクライニングが可能である。こ のリクライニングは、背もたれ部が倒れるの ではなく、座面が前方に5㎝スライドするこ とで座面と背もたれの構成角度を大きくする もの。従ってリクライニングしても、後ろの 席には背もたれが倒れてこないので、後列を 圧迫することはない。 モックアップ最後部は、右側にギャレー、 左側にトイレ・ユニットが付けられている。 ギャレーはカートを3台収納できるスペース がありストッカーも大型である。トイレは、 機内で使用する標準車椅子(40㎝×65㎝)で そのままは入れるようスペースと扉が工夫さ れている。MRJの客室は元々、段差を一切な くしたバリアフリー設計になっており、さら に車椅子ではいることのできるトイレを備え るといった、日本人の設計らしい細やかな気 配りが盛り込まれているのである。大型の オ ー バ ー ヘ ッ ド・ビ ン や 発 光 ダ イ オ ー ド (LED)を使った客室照明などは、これまで のモックアップのものを踏襲しているが、上 級クラスでは座席配置が1席と2席なので、1 席側は張り出しを小さくしたものになった。 MRJは客室の照明に発光ダイオードを使用し、 またオーバーヘッド・ビンも大きい。上級席 と普通席では右列のビンの大きさが異なる。 MRJはご存じのように、今年4月25日にス ケジュールの見直しを発表した。その主な理 由として三菱航空機の江川社長は会場で行っ た記者会見で、製造を委託している三菱重工 業における製造上の問題があったことと、 MRJ自体が最新技術を多用して作ることに なっておりその技術の熟成に時間を要してい ることを挙げた。そしてこれらはすでに対策 を進めているところにあり、2015年度半ばか らの引き渡し開始という新しいスケジュール は守ることができるとした。 新規開発の旅客機としては、MRJよりも大 きなクラスで、カナダのボンバルディア社が
開発しているCシリーズもまた注目を集めて いる。これまで100席以上のジェット旅客機 は、基本的にはボーイング社とエアバス社が 市場を分け合ってきた。しかしCシリーズは、 標準客席数110席のCS100と130席のCS300の2 タイプでその市場に乗り込んだのである。現 在はロシアのイルクートがMS-21で、中国の COMACがC919で単通路機市場に参入しよう としているが、最も計画が進んでいるのがこ のCシリーズで、ボンバルディア社は計画し ている2012年内の初飛行は実現できるとし た。またボーイング社、エアバス社ともにもっ と小型の機種である737-600とA318について は、新世代化(neoおよびMAX)を行わない ことにしており、製造がそれらに完全に切り 替われば両社の製品群は130席級が最も小型 の機種となる。これはCシリーズにとっては、 市場を確保する上で明るい話題である。 ボンバルディア社はCシリーズの優位性に ついて、既存機の改良などでは不可能な新し い設計技術や製造技術を導入でき、経済性な どあらゆる面で差を付けることができるとし ている。また装備エンジンは、MRJやA320neo ファミリーなどでも使われる、プラット&ホ イットニー社の旧称ギアード・ターボファン (GTF)のピュアパワーPW1000Gシリーズ(具 体的にはCS100がPW1519GまたはPW1521Gま た は PW1524G、CS3000 が PW1521G ま た は 1524G)で、このシリーズのエンジンを実用 装備する最初の機種ともなる。 Cシリーズについては、カナダ大使館商務 部の手配で、日本人メディアと産業界関係者 単独で、客室モックアップを訪問する機会が 用意され、合わせて説明を聞くことができた。 Cシリーズは細身の胴体を使用しており、こ のため客室最大幅は3.28mと、ボーイング737 の3.53mやエアバスA320の3.68mよりは狭い。 このため普通席は、2席+3席の横5席配置と なっている。しかし1席減らすほどのキャビ ン幅の差はないので、座席の幅は737が17in (43.2㎝)、A320が18in(45.7㎝)であるのに 対し18.5in(47.0㎝)となり、また3席側の中 央座席には19in(48.3㎝)幅の座席を使用し、 居住性が高まっているとボンバルディア社で は説明している。またそれぞれの機種が上記 の幅の座席を使用した場合、通路幅は737と A320が19in(48.3㎝)だがCシリーズは20in (50.8㎝)になるともした。 ボンバルディア社が開発しているC-シリーズ の客室モックアップ。エアバス社やボーイン グ社の単通路期よりも幅は狭いが、それを上 回る快適性を提供することを目指して設計し ている。 客室の設計にも、各種の新技術が採り入れ られている。まず内壁は、新しい素材と製造 技術を用いて、そのラインを極力真っ直ぐに 近づけたことで、窓側席の窮屈間をなくして いる。同様に、窓の周辺のえぐり取りを大き くし、この部分でも圧迫感を減らした。また 窓自体も大型で、ボーイング777とほぼ同じ 大きさになっているという。オーバーヘッド・ ビンはピボット式の大容積タイプで、また空 けたときにより低い位置まで下がるようにし て、背の低い人でもビンへの手荷物の出し入 れを容易にした。機内照明はLEDで、色を変 えてのムード照明とすることが可能であり、
また非常口などには万国共通のイラストを 使ったピクトグラムが用いられている。客室 以外の機体各部にも最新の技術が用いられて いて、全く新しい時代の単通路旅客機になる、 とボンバルディア社は説明した。 新型の旅客機としては、エアバス社はA330 の重量増加型の開発を明らかにした。これは A330各タイプの最大離陸重量を揃って240ト ンにするというもので、まずは現在230トン のA330-300に適用する。A330ファミリーは、 胴体の短いA330-200や純貨物型のA330Fも最 大離陸重量は同じで、これらもA330-300に続 いて240トン型を可能にする。A330-300は240 トン型にすることで、乗客300人を乗せた状 態で航続距離を400nm延ばすことが可能と なって標準航続距離は5,950nmとなる。また A330-200にこの重量を適用すると、航続距離 の270nmの延伸とペイロードの2.5トンの増加 を同時に行える。その結果乗客246人を乗せ ての航続距離は7,050nmになり東京∼ロンド ン、ロサンゼルス∼ダブリンなどの路線に使 用できるようになる。エアバス社ではこの 240トン型のA330を、2015年に就航させると している。 ボーイング社では、昨年開発を決定した次 世代737の新世代型である737 MAXシリーズ について、運航自重を引き下げる一方で最大 離陸重量を現在のタイプより増加し、これに より航続距離を延伸させる計画であることを 明らかにした。各タイプの、次世代737と737 MAXの比較は次の通り。 ●737 MAX-7: 最大離陸重量159,400lb(72,304 ㎏)で 航 続 距 離 は 3,800nm。 737-700は154,400lb(70,036㎏) で3,400nm。 ●737 MAX-8: 最大離陸重量181,200lb(82,192 ㎏)で 航 続 距 離 は 3,620nm。 737-800は174,200lb(79,017㎏) で3,080nm。 ●737 MAX-9: 最大離陸重量194,700lb(88,316 ㎏)で3,595nm。737-900ERは 187,700lb(85,141㎏)で3,055nm。 こうした737 MAXは、ファンボロー開催前 の時点で451機を確定受注しており、さらに ショーの期間中に前記の受注を得ている。 ボーイング社では2012年末までに確定受注機 数を1,000機にすることを目指しており、また 2017年の就航開始を目指して作業を進めてい る。 実機展示では、地上展示と飛行展示をあわ せた総出品機数は153機と、ここ数回のショー と大きくは変わっていない。しかし今回は、 主要な機種で航空ショー初出品というものが 少なく、目新しさという点では少々寂しかっ たのは事実だ。またヨーロッパ全体の景気後 退の影響を受けてか、トレード・デーの飛行 展示は機数が少なかった。例えば従来は複数 機種を飛行させるエアバス社も、シャーク レット付きのA320や軍用輸送機A400Mなどを 出品したものの、飛行展示を行ったのはA380 だけであった。このA380は、会期前半はマレー シア航空に引き渡す、同航空向け二番機が展 示されたが、水曜日のショーが終わった後に、 社有のA380の飛行試験機に入れ替えられた。 飛行展示を行う、マレーシア航空向け引き渡 し二番機のA380。会期途中でエアバス社の 社有機で試験用の機体と入れ替わった。
ボーイング社は、前回のファンボローに続 いて787-8を出品し、この種の航空ショーでは 初めて飛行展示を行った。フライトではタッ チ・アンド・ゴーや追い風での着陸を披露し トリを務めていたが、この展示機もカタール 航空向けの引き渡し機で、飛行展示は水曜日 までの3日間のみで、木曜日の朝にシアトル に向け離陸していった。このため一般公開日 には、787の姿はなかった。 前回のファンボローに続く出品となったボー イング787-8。カタール航空向けの機体が持 ち込まれて、機内の公開と飛行展示を行った。 軍用機では、ユーロファイター・タイフー ン、サ ー ブ JAS39 グ リ ペ ン、ボ ー イ ン グ F/ A-18Fスーパー・ホーネットといった戦闘機 群が飛行展示を行い、それぞれが特徴を生か したフライトを披露したが、戦闘機全体の話 題は少なかった。その理由の一つとしては、 大きな商戦であったインドと日本が新戦闘機 の機種を決定し、また近く決定するとみられ ているブラジルもダッソー・ラファールが優 位で、喫緊の大きなプロジェクトがないこと が挙げられよう。このためスーパー・ホーネッ トとロッキード・マーチンF-35は、記者会見 ではパイロットがその操縦などについて語っ ただけで、ユーロファイターは記者会見も開 催しなかった。 AIM-9XサイドワインダーAIM-120 AMRAAM 各1発という軽装備で飛行展示を行ったボー イングF/A-18Fスーパー・ホーネット。 ほぼクリーン形態で飛行展示を行ったユーロ ファイター・タイフーン。イギリス空軍第6(F) 飛行隊の所属機である。 一方で、リードイン・ファイター練習機と 呼ばれる、戦闘機前段階練習機は今後多くの 国で需要があると考えられており、ロシアの ヤコブレフYak-130と韓国のコリア・エアロ スペース・インダストリーズ(KAI)T-50の2 機種が飛行展示を行った。また、開発・販売 で 先 行 し て い る ア レ ニ ア・ア エ ル マ ッ キ M-346も、フィンメカニカの専用展示ブース で地上展示され、見ている限りでは多くの国 の空軍関係者が機体を訪れていた。これらの 中でも注目されたのがT-50で、韓国がこうし た航空ショーに実機を持ち込んで飛行展示を 行ったのは、史上これが初めてである。 因みにファンボローに飛来したT-50は、い ずれも韓国空軍の曲技チーム『ブラック・イー
グルス』の使用機で、3機が到着し、1機が地 上展示、1機が飛行展示、もう1機が予備機と して使われた。T-50は超音速ジェット練習機 で、航続距離は長くはなくまた空中給油もで きないので、これらの機体は船でイギリスに 運ばれ、陸揚げ後飛行を行って会場に到着し た。 韓国KAIがロッキード・マーチン社の協力を 得て開発したT-50練習機。国際的な販売も目 論んでいる。 軍用機の中で注目を集めていたのは、ベル/ ボーイングV-22オスプレイである。オスプレ イはアメリカ海兵隊のVMM-264“ブラックナ イツ”に所属する4機のMV-22Bがイギリス訪 問ツアーを行い、ファンボローの前に開催さ れたロイヤル・インターナショナル・エア・ タトゥにも参加した。ファンボローへのオス プレイの出品は2008年以来二度目であるが、 2013年には空軍のCV-22BがRAFミルデンホー ルの第352特殊戦航空軍への配備が予定され ており、今回のツアーはそれに先駆けてのお 披露目の意味もあった。 オスプレイは日本でも配備が計画されてい たから、特に日本のメディアにとってはより 注目度の高い出品機であった。ショー初日に 行われた記者会見でも、沖縄配備に関する質 問が出たが、回答した海兵隊の担当者は『予 定通り配備を進める』と述べただけであった。 またショーの直前の時点で、アメリカ海兵隊 には360機の装備計画に対して152機を、空軍 には50機の装備計画に対して26機が引き渡し 済みで、配備計画がほぼ半分の位置にさしか かっていることを説明、また現在は月産3機 のペースで製造が行われていることも示し た。また2012年12月締結予定の第Ⅱ期多年度 調達契約(MYPⅡ、5年間)では、174機の製 造契約が予定されているともした。 ファンボローに飛来した4機のMV-22Bのう ち1機は、メディアや産業関係者などの試乗 会に使われ、筆者も会期2日目の火曜日の午 前中に試乗することができた。この日はあい にくの悪天候で、予定されていた飛行パター ンの一部は中止となり、極めて短い滑走での 離陸から、機体モードをヘリコプターから固 定翼機に変えて毎分3,000ft(914m)の高上昇 率による急上昇の後は、固定翼機モードで飛 行を続けた。その間には加速と減速や、60度 バンクでの急旋回などを行い、最後は固定翼 機モードからヘリコプター・モードに転換し つつ高度と速度を下げて、短いホバリングの 後着陸した。試乗中の感覚は、基本的には C-130などの軍用輸送機に乗っているのとお なじであったが、聞こえてくるエンジン音や 4機がイギリス訪問ツアーの一環として飛来 し、連日飛行展示を行ったアメリカ海兵隊所 属のベル/ボーイングMV-22Bオスプレイ。
感じられる振動はむしろヘリコプターにかな り近いものだった。音については、エンジン がターボシャフトであるからだと思うし、振 動についてはプロップローターが、プロペラ よりはヘリコプターの主ローターに近いため であろう。 試乗の最後に会場上空に到着し、ヘリコプ ター・モードに切り替えて着陸段階に入った MV-22B。 ヘリコプターの飛行展示では、アグスタウ エストランド社の3機種のファミリーによる 飛 行 展 示 が 目 を 引 い た。こ の 3 機 種 と は、 AW139、AW169、AW189である。 AW139は、アグスタ(当時)とアメリカの ベルが共同開発し、2001年2月3日に初飛行し た6.5トン級の双発人員輸送用ヘリコプター AB139をベースにしており、ベルが製造・販 売から手を引いたことでアグスタウエストラ ンド社の単独製品AW139となったものだ。そ してアグスタウエストランド社では、この AW139の基本設計と技術を活用して派生型を 開発することとしたのである。 その一つが小型化して4トン級の双発機と したAW169で、キャビンの乗客数もAW139の 15人が8∼10人に減っている。もう一つは AW139を大型化した軍用型AW149(2009年11 月13日に初飛行)を民間型にしたAW189で、 最大離陸重量が軍用型の8.5トンよりも軽い8 トン級だが、キャビンには16∼18名の乗客を 乗せることができる。初飛行は、AW189の方 が先で2011年12月21日、AW169は2012年5月 10日であるが、もちろんこの両機種ともにこ の種の航空ショー初出品である。共通性の高 い3機種を揃えて、顧客の細かな要望に対応 していこうというアグスタウエストランド社 の姿勢が強く現れた3機種でもある。 アグスタウエストランド社のAW139から発 展した8トン級の双発ヘリコプターAW189。 AW139、AW169との3機種でファミリーを 構成している。 実機ではなく実物大の模型展示ではあった が、注目を集めていたのが民間の宇宙旅行企 業ヴァージン・ギャラクティックの宇宙機、 『スペースシップ・ツー』であった。『スペー スシップ・ツー』は、航空機2機を主翼で結 合した母機『ホワイトナイト・ツー』の中央 部に吊り下げられて離陸し、高度約14,000m で切り離されると内蔵するロケットモーター で上昇、高度約110,000mに到達し降下を開始 する。この間約6分にわたって、乗客は無重 力状態を体験でき、宇宙旅行をすることにな る。大気圏内に戻ると滑空により着陸すると
いう方式で、『スペースシップ・ツー』はショー の会期前の時点で18回の滑空飛行試験を消化 していた。因みに1回の宇宙旅行の費用は、 20万米ドル(約1,500万円)である。 ヴ ァ ー ジ ン・グ ル ー プ の 会 長 で あ る リ チャード・ブランソンは会期中に会場を訪れ、 有人宇宙旅行を成功させるとともに、今後は 衛星打ち上げビジネスにも事業を拡大してい くことを考えていることを明らかにした。『ホ ワイトナイト・ツー』と『スペースシップ・ ツー』による実際の宇宙旅行の開始は、2013 年末が予定されている。 天候には恵まれなかった今回のファンボ ロー航空ショーであったが、主催者は次回も 2014年に開催することを発表している。開催 期日は、7月14日から20日の一週間とされて いる。 ヴァージン・ギャラクティカが計画している 宇宙旅行用の宇宙機『スペースシップ・ツー』 の実物大モックアップ。