地域における児童養護施設の分解
著者 岩間 麻優
出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科
雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編
巻 9
ページ 1‑4
発行年 2020‑03‑02
URL http://doi.org/10.15002/00023489
法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol.9(2020 年 3 月) 法政大学
地域における児童養護施設の分解
DISASSEMBLY OF ORPHANAGES IN THE COMMUNITY
岩間麻優
Mayu IWAMA
主査 赤松佳珠子 副査 北山恒・下吹越武人
法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程A house where children with various backgrounds are separated from their homes and live, child welfare facilities.What space should children spend before they enter the society, and who should be involved?Therefore I proposed a new one called "KARAMA-break space".I consider redefining orphanages with the keyword "KARAMA"and expanding the possibilities of children by reviewing the architecture from the child's perspective.
Key Words : defaciliation of orphanage, spread of fosterparents, chiidren's selectivity
1.はじめに
様々な背景を抱えた子どもたちが家庭を離れて集めら れ、暮らす家、児童福祉施設。世間の ‘ 施設 ’ に対するイ メージや認識の薄さから、施設を出た大半の子どもたち はその過去を隠し、限られた社会の中で暮らしているの が現状である。
図 1 は私が児童養護施設、自立援助ホーム、少年院で 直接見聞きした子どもたちの様子である。大きな音が聞 こえると怯えて隠れる子、廊下で座り込んで泣いている 子、トイレに行くのを我慢してしまう子、庭陰で一人植 物の手入れをする子、周りに人がいなくなると甘えてく る子、職員に隠れて悪さをしようとする子いつも裏口か ら入ってくる子 ...。同じ年頃の子供には見られない行動 が数多く見られた。周囲の目を気にする行動が印象的だっ た一方、里子となり施設を出た子どもからの感謝の手紙 からは里親の大切さを感じた。
今後施設に預けられる子どもが増加するという予測が 立っている今、子どもたちのために、一度児童福祉施設 の在り方を見直すべきなのではないだろうか。殻にこもっ た子どもたちが社会に出るまでに過ごすべき空間とは、
関わるべき人たちとは何か。児童養護施設を再定義して 家庭に恵まれず家族を離れた子どもたちに見られる特有 の行動を研究し、子どもの目線から建築を見直すことに よって子どもたちの可能性を広げることを考える。そし て血縁関係にこだわらず、支え合いながら育てていく地 域のあり方を考える。
図 1 児童福祉施設で見られた子供たちの様子
2.日本の児童福祉
(1)養育制度と現状
社会的児童養護とは、虐待や経済的理由などの家庭的 な理由で保護者のもとで暮らせなくなった子どもたちを、
公的な責任として社会的に養育するこという。の 2 種類 がある。
日本にいる約 45,000 人の社会的養育の子どもたちの
3.児童養護施設と暮らす子供たち
(1)子どもの居場所の変化
施設で暮らす子どもの居場所や行動は、年齢や施設年 数によって変化するものなのか。既往研究から、子ども の行動はこれらの要素に比例した傾向が見られないとう ことが明らかにされている。それぞれの子どもは、自分 の速度で他者に、そして社会に馴染もうとしている。大 人が決めるのではなく、子どもが自分に合わせて選択し うち、約 39,000 人が児童養護施設や乳児院で暮らして おり、里親家庭で暮らしている子どもたちは約 6,000 人 にしか満たない。主流となっている施設養育には年齢を はじめ入所制限があり、突然社会に放される子どもたち は社会に溶け込めず、責任者である施設に連絡が入るこ とが多くなっている現状である。
児童虐待件数はここ 10 年で 9.8 倍になっている今、
入所理由の約 6 割が児童虐待である児童養護施設のカ タチ、機能、そして社会への受け入れ態勢を見直すこと が重要となってくる。
図 2 児童虐待相談件 図 3 被虐待経験割合
(2)日本人の意識
里親の受け入れが圧倒的に少ない日本。東京都は里親 制度に関する都民の意識調査から、里親普及率の低さの 原因として以下の 3 点が挙げられた。
・情報が少なく身近に感じていない
・周りの目を気にしながら育てることへの重荷を感じて いる
・不調 ( 里親と子どもが適合しないこと ) が生じてしまう 身の回りに里親登録している人がおらず、メディアで の取り上げも少ないことが、里親の馴染みのなさにつな がり、馴染みがないから里親登録が増えず…という悪循 環の構図になっている。
図 4 里親委託率国際比較 図 5 里親制度意識
て過ごしていく。子どもに選択性を与えながら見守るこ とが、子どもに社会性を持たせることにつながるのでは ないだろうか。
(2)子どもの行動研究
児童養護施設、自立援助ホーム、少年院の研究・見学・
体験から、施設で過ごす子どもに見られた少し違和感の ある行動を記録した。年齢や入所年数から大人が決めた 場所で過ごす子どもたちが、自分なりに居場所を見つけ ようとしている行動のあらあれにも見える。
一見バラバラに見える子どもたちの行動を分析するこ とが、子どもたちの求めている居場所を考える重要な要 素だと考え、子どもたちに見られた行動を他者との関わ り方で分解し、傾向や特徴を分析を行った。
1. いつも裏口から 入ってくる
目につかないところから 隠れて自室へ
声をかけられたくない
必要な時しか接したくない
長く居たくない 見られたくない
一人にして 欲しくて隠れる みんなが集っているのを 見たくない
見られたくない 見たくない
音から離れる 隠れて怯える
接したくない 存在は感じてほしい
見られてもいい
見られたくない 接したくない 一人になりたくて 隠れる
接したくない 自分が居心地のいいように 手を加える
一人で静かになる
外の気配を感じられる 接したくない
居心地のいい 場所に居たい
知らないものに 接したくない
他の人に 関わりたい
誰かを見てあげたい
隠れられる 自分だけの居場所
見られたくない
対象を決める
見られたくない 隠れられる 自分たちだけの居場所 他者がいないと入る
見られたくない
見られたくない
隠れられる 自分だけの居場所 聞かれたくない
隠れられる 自分だけの居場所
一人になりたい 他の人に 関わりたい
声をかけられ たくない
直接会いたくはない 自分のことを 知ってほしい
2. 食事の時だけ顔を
あわせる 3. 泣く時には廊下で 4. 窓に背を向けた席
で食べる 5. 音がすると隠れる 6. ドアを開けて寝る
7. 自室で読書に没頭 8. 部屋を自分で飾る 9. ベランダに座る 10. 知らない場所には
行かない 11. 乳児室に通う 12. こそこそ話をする 時は階段の踊り場
13. 庭陰で植物の手入
れをする 14. 周りの人がいない
時に甘える 15. 廊下で座り込み
会話する 16. 二人部屋の境界
領域 17. お使いに進んで
行く 18. 手紙で連絡が来る
親の便りを待っている ポストが 外との接点
見られたくない 接したくない 一人になりたくて 隠れる
見られたくない 見たくない
他に居場所を求めている 家では殻を かぶっている
接したくなくて 出ることができない 一人になりたくて 隠れる
関わりたくない
見たくない 見られたくない
接したくない 隠れて怯える
他の人に関わりたい
必要な時しか 接したくない
他者がいないと入る
見られたくない
見られたくない 接したくない 一人になりたくて 隠れる
見たい 見られたくない
接したくない 見られたくない
見たくない 知らないものに
接したくない
見られたくない
隠れられる 自分だけの居場所
聞かれたくない 存在を感じて
ほしい 見られてもいい 一人になりたくない
見られたくない 大人に対して 殻をかぶっている
他者がいないと入る
知らないものが怖い
自分のことを隠している 見られたくない
他の人に 関わりたい
誰かを見てあげたい
19. 毎朝ポストを覗く 20. 布団を頭まで被っ
て寝る 21. カーテンを開けな
い 22. 学校では明るく過
ごす 23. トイレに行くのを
我慢する 24. 前髪を目の下まで 伸ばす
25. インターホンがな ると部屋に走る
26. 門限まで中庭で 遊ぶ
27. すぐに手をつない でくる
28. トイレからなかな か出てこない
29. 中庭で遊ぶみんな をにこにこ眺める
30. 玄関を出る前に音 がしたらためらう
31. 階段で電話をする 32. ドアを開けてト イレをする
33. 職員に隠れて叩く 34. 大人と二人になり たがらない
35. 年下の子に世話を 焼く
36. 友達に家を教えな い
図 6 行動分析
行動の分解から、他者に対する動作に 5 つの特徴があ るとわかった。
・接しない ( 関わらない )- 接したい / 接したくない
・見ない ( 情報を入れない )- 見たい / 見たくない
・入らない ( 身を置かない ) - 入りたい / 入りたくない
・去る ( 場を離れる )- 居たい / 居たくない
・隠れる ( 見られない )- 見られていい / 見られたくない これらを子どもたちの自己防衛行為と考え、他者に対 するフィルターと呼ぶことにする。表にすると子どもの 行動から、他者への距離感を読み取ることができる。
ⅰ 見ない ⅱ
入らないⅲ 去る ⅳ
隠れる ⅴ 接しない いつも裏口から入ってくる
食事の時だけ顔をあわせる
窓に背を向けた席で食べる
ドアを開けて寝る
乳児室に通う ベランダに座る 部屋を自分で飾る
知らない場所には行かない 泣く時には廊下で
こそこそ話する時は階段の踊り場
庭陰で植物の手入れをする
手紙で連絡が来る 周りに人がいない時に甘える
廊下で座り込み会話する
自室で読書に没頭
お使いに進んでいく 二人部屋の境界領域
音がすると隠れる
ⅰ 見ない ⅱ
入らないⅲ 去る ⅳ
隠れる ⅴ 接しない
トイレに行くのを我慢する カーテンを開けない 布団を頭までかぶって寝る
学校では明るく過ごす
前髪を目の下まで伸ばす 毎朝ポストを覗く
ⅰ 見ない ⅱ
入らないⅲ 去る ⅳ
隠れる ⅴ 接しない インターホンがなると部屋に走る
門限まで中庭で遊ぶ
トイレからなかなか出てこない
玄関を出る前に音がしたらためらう
年下の子に世話を焼く 職員に隠れて叩く ドアを開けてトイレをする
大人と二人になりたがらない すぐに手をつないでくる
友達に家を教えない 階段で電話をする 中庭で遊ぶみんなをにこにこ眺める
図 8 行動フィルター表
(2)児童養護施設の建築
大規模養護施設と小規模養護施設を、動線・配置で比 較分析する。
児童養護施設等における家庭的養護の推進にあたり、
平成 27 年度から「都道府県推進計画」を策定して、生 活単位の小規模化が進められ、7 割以上の施設が小規模 化を実施しているが、どちらの施設も類似したものとい うことがわかる。
自室を出ると共有空間、玄関から自室までの決められ た動線、開放的な空間は、他者との距離を徐々に縮めて いきたい子どもたちにとって居場所に選択性のない建築 ではないだろうか。これでは自己防衛をしようと思うと 自室にこもることが多くなるのも仕方がない。
施設の小規模化は子ども一人一人に目が届くようにはな る効果がある一方で、人数で小規模化する -‘ 分割 ’ され ているだけでは殻にこもる子どもの居場所に対して根本 的には変化を与えられていないのではないだろうか。
(3)考察
フィルターの枚数が他者との距離と捉えると、フィル ターが 1 枚の子どもから 5 枚の子どもまで、施設には様々 な距離感の子どもたちが共存していることがわかる。こ のフィルターを社会に出るまでに子どものスピードに合 わせて - 【子どもに選択性を与えて】少しずつ減らしてあ げるのが、施設の役割と考える。
また、現在の児童養護施設は、家庭的環境を目指して、
子どもの個人差には関係なく年齢と人数による小規模化 -
【分割】を進めている。年齢・施設年齢に比例しないフィ ルターを段階的に外してあげるには、子どもに合わせて 小規模化 - 【分解】をすることが有効なのではないだ ろうか。
ⅰ 接しない
- 関わりを持たない -
ⅱ 見ない
- 情報を入れない -
ⅲ 入らない
- 身を置かない -
ⅳ 去る
- 場から離れる -
ⅴ 隠れる
- 見られない -
見たい 見たくない
入りたい 入りたくない
居たい 居たくない
見られていい 見られたくない 接したい
接したくない
図 7 自己防衛行為
大分県別府市荘園町 ( 定員:45 人 ) 木造・S 造 / 地上 2 階建て 敷地面積:5280 ㎡ 延床面積:2411 ㎡
・ダイニングとキッチンの関係性が家庭 の中で最も重要。施設では給食型になっ てしまう。コミュニケーションの生まれ る対面型キッチン。
・リビングは「社会性を教える窓口」。必 ずリビングを通る動線計画。床暖房とシー リングファンを活用し、座れる床と冷た くない床に。
・触覚は人間の発達においては特に有効 な機能を果たす。テクスチャーにこだわ り、ツルツル・ピカピカではなく、ゴツ ゴツ・ザラザラに。
laza Puer 光の園 / やまぼうし、しらぎく
横浜市旭区上白根町 ( 定員:8 人 +α/ 全体:40 人 +4 人 ) C 造 / 地上 2 階建て 敷地面積:694 ㎡ 延床面積:555 ㎡
・分園型で 8 棟、近隣地域に配置。
・庭を通し、他の部分を上手く見せ、見 えすぎず、向こうの部屋の気配を感じら れる。
・回遊性によって視線の多様さを作り、
行き止まりがなく無駄な廊下は作らない。
・家の中から自分たちの家が見えるよう にする。家を L 字にしたり、小さな中庭 越しに他の部分を見せる。
・間仕切りは少なく、ドアは引き戸でク ロープン。
・斜面壁は床面積以上に空間を広く見せ る工夫。
大分県中津市永添 ( 定員:35 人 女子:15 人 / 男子:20 人 ) C 造 / 地上 2 階建て 敷地面積:101085 ㎡ 延床面積:1303 ㎡
・異年齢を縦割りし、生活空間単位とした。
・約半数を個室、残りを 2,3 人部屋とし、
幼児室は和室 8 畳。
・児童居室には地場産の杉材を中心とし た木質系の内装仕上げと造作・家具でで きた木の家の「木の部屋」。
・子供にも一人になれる部屋は必要であ り、建築各部の多様なスペースに加え、
芝生の中庭と離れの多目的室での賑わい、
小チャペルでの静かな祈りが、日常生活 にリズムと変化、刺激と潤いを与える。
・ディテールは生活環境の室から決定付 けたことが特徴。
1000 東京都世田谷区上馬
( 定員:6 人 ) C 造 / 地上 2 階建て 敷地面積:170 ㎡ 延床面積:154 ㎡
・住宅街にひっそり埋もれるような片流 れ屋根の木造の「家」をイメージし、子 供たちが自然に帰属意識を持てるような
「風景」と「場」を創造する。
・建物の中心に、トップライトやハイサ イドライトからの十分な光がみちる吹き 抜け空間をデザインし、上下階の人々の 気配や動きが自然に感じられるような「家 の中心」を創造する。
・2 階の子供部屋から直接吹き抜け空間を 見ることができるような窓をつくること で、上下階の子供たちのコミュニケーショ ンが十分取れるように配慮する。
児童養護施設旭児童ホーム
児童養護施設聖ヨゼフ寮 地域小規模児童養護施設東京育成園ヒソップホーム
1 階平面図 1/400 2 階平面図 1/400
南北断面図 1/400 東西断面図 1/400
1 階平面図 1/400 2 階平面図 1/400
南北断面図 1/400 東西断面図 1/400
1 階平面図 1/1000
A 棟断面図 1/600
2 階平面図 1/1000
1 階平面図 1/400 2 階平面図 1/400
南北断面図 1/400 東西断面図 1/400
図 9 児童養護施設事例研究
4.計画概要 -
子どもに合わせる児童養育
(1)児童養護施設の分解
児童養護施設を身寄りのない 2-18 歳の子どもを職員 が育てる施設ではなく、“ 家庭から離れた子どもが 2-18 歳まで暮らす場 ” と再定義し、里親と暮らし自立するま でを一つとして考える。そして、ユニットをつくり人数 で小規模化 -【分割】するのではなく、他者への関わり方 で段階分け -【分解】し、段階に応じて他者、里親との接 点を持つような暮らしの場を提案する。
2 歳 X 歳 18 歳
小規模 ユニット 小規模
ユニット 小規模 ユニット
大規模施設
人 建築
子ども
職員
分割
2 歳 18 歳
職員 里親候補 里親 地域
里親
Phase1 Phase2 Phase3
分解
社会へ 社会へ
図 10 分割から分解
(2)空間提案 -『からま』
殻のような隙間空間 - 分解した児童養育住宅 - 暮しの 場において、自分のスピードで自ら選択しながら徐々に 他者と接していくために、自己防衛行為を手助けする空 間を提案する。
からまは、他者のいる空間と自分の空間を緩やかにつ なぐ。自室にこもる ( 殻の中 ) ことと共有空間で過ごす ( 殻の外 ) ことの中間帯を設けることで、子どもに選択性 を与えることとなり少しずつ他者との距離感を縮めてい くことを促す。
図 11 からま
空家の中でもネットワーク内に位置している 2 軒の敷地 に Phase1 を配置する。Phase3 には、地域と方々が定期 的に足を運ぶきっかけとして、1 福祉学生による交流会、
2 高齢者向け配食ボランティア「若竹の会」、3「親子サ ロン」団体に活動場所を提供する。
【謝辞】
この度修士設計を行うにあたり、ご指導ご鞭撻いただ いた赤松佳珠子教授に深く御礼申し上げます。また、副 査の北山恒教授、下吹越武人教授、デザインスタジオ 11でお世話になりました大野秀敏先生はじめ、ご指導 いただきました坂牛卓様、憩いの家、愛光女子学園の方々、
すべての方々に感謝申し上げます。また、お手伝いをし てくれた後輩の皆、共に修士設計を頑張った同期達にも 感謝を申し上げたいと思います。
【参考文献】
・杉本範子 / 大原一興 / 藤岡泰寛 『グルーピングが養護 児童の「居場所」に与える影響』
・二井るり子 / 今井範子 / 牧野唯 『児童養護施設におけ る幼児の生活行動の個別性と空間構成』
・青木一郎 / 松本直司 / 櫻木耕史 『児童養護施設と一般 家庭の児童生徒からみた自室イメージの比較』
・伊藤嘉余子 『児童養護施設入所移動が語る施設生活』
・舟橋國男 ( 著 ) 『建築計画読本』
・広岡知彦 ( 著 ) 『静かなたたかい』
6.おわりに
児童養護施設を地域に分解し、からまによってつなぐ ことで自ら選択しながら、信頼できる大人と暮らす場を 子どもに与える。大人が与えるのではなく、徐々に成長 していく子どもに合わせて変わる暮らしの場は、子ども たちを殻から少しずつ出し、子どもの可能性を広げるこ とができる。
施設で育つ子どもが増えていく今日、子どもに向き合っ て建築を考えることが、建築に携わる者が児童福祉に起 こすことのできる重要なアクションとなるだろう。
(3)設計手法
からまでの過ごし方 -【居方】は子どもによって、そし て時間が経つにつれ変化していく。からまの【空間】か ら【居方】までを、子どもに見られた 5 つの防衛行為を モデル化したものから設計する。
ⅰ 接しない - 関わりを持たない -
ⅱ 見ない - 情報を入れない -
ⅲ 入らない - 身を置かない -
ⅳ 去る - 場から離れる -
ⅴ 隠れる - 見られない -
ずらす
感じられる
複数動線
共有
逃げ場
付け足す
死角 レベル差
境界
h 複数の出入り口
i ひとりポケット
j 棚かべ a 行き来できない
b 影ガラス
f 逃げ道
g 突き抜け家具
e ジグザグつくえ
k セットオフ
l ドア
m ルーバーかべ c 見とおさない
d 上下まど
図 12 設計モデル 5.設計
(1)敷地 - 横浜市旭区希望が丘東地区
旭区は横浜市の区の中で、78.9% ともっとも自治体町 内加入率が高い中でも、希望が丘東地区は住民が立ち上 げた団体数が 22 と最多に活動し、地区センター利用率 ももっとも高く、住民の地域貢献意識が高い。
地区の福祉課題として、
・高齢者が増える中、住民同士が位置でも助け合える仕 組みづくり
・高齢者から幼い子どもまで見守りネットワークの地区 内全域の推進
が挙げられている。
本計画が新たな福祉ネットワークとして地域に根付く ことで、これらの課題解決につながるきっかけにもなれ るのではないだろうか。地域住民の自発的な養育協力を 得られる可能性のある希望が丘東地区を対象地区とする。
(2)配置計画
① 2-18 歳の人口に対する家庭に恵まれていない子ど もの比率、②全世帯数に対する、潜在的里親候補世帯数 の比率から、希望が丘東地区にはおおよそ① 15 人の子 どもが施設に預けられ、② 50 世帯の里親候補 がいる と換算する。
希望が丘東地区には 2 つ以上の Phase1- 小規模住宅と、
Phase2+3 合わせて 6 人の子どもと 6 組の里親が暮らす 共同住宅を計画する。既存の福祉ネットワークの拠点で ある 6 つの自治会館の中で中央に位置しながら、2 団体 にしか使用されていない四月会館の敷地に Phase2+3 を、
旭つくの会館
今宿つくし会館
中尾町会館
四月会館
親睦会館 春陽会館
県立よこはま 看護福祉学校
中尾小学校 県立公文書館
チャイルドクラブ 希望が丘
ヨコハマ旭 チャイルドステーション つぼみ保育園
中銀ライフケア 横浜希望が丘
中銀ケアホテル 横浜希望が丘
東希望が丘 小学校
希望が丘 中学校 夢のつぼみ保育園
あすなろ 学童保育
ライフコミューン 希望が丘 中尾保育園
希望が丘 幼稚園 つくの幼稚園
Phase1- 小規模住宅
四月会館 Phase2+3 共同住宅
図 13 設計プロット図