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温泉の消毒と快適性

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(1)

ニュウヨク ニ オケル アンゼン エイセイ ノ カク ホ ト カイテキセイ ノ コウジョウ ニ カンスル ケ ンキュウ : トク ニ レジオネラ ショウ ニ ツイテ

赤井, 仁志

Yurtec

https://doi.org/10.15017/13531

出版情報:Kyushu University, 2008, 博士(芸術工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第 5 章

温泉の消毒と快適性

本章は、温泉の消毒に関わる実験と解析のほか、快適性と温泉文化との関わ りについて考察した。

まず「1. 温泉消毒の課題」では、浴槽水の消毒に最も一般的に用いられている 次亜塩素酸ナトリウム、温泉の消毒に適合性が高い二酸化塩素、その他の消毒 方法の概要と動向、課題を基礎事項として述べた。

つぎに「2. 温泉の違いによる消毒剤消費特性」で、温泉泉質と消毒剤の組合せ の違いによる残留消毒剤濃度の実験結果と解析について述べた。また消毒剤の 添加に伴うpHやORPの変化についても記した。

「3. 温泉の違いによるレジオネラ属菌の不活化」では、温泉泉質と消毒剤の組 合せの違いによる

Legionella pneumophila

の不活化実験の結果と解析につい て述べた。

「4. 温泉消毒と快適性、温泉文化との関わり」では、「2. 温泉の違いによる消 毒剤消費特性」と「3. 温泉の違いによるレジオネラ属菌の不活化」での実験結果 を踏まえつつ、快適性と温泉文化、今後の温泉水の消毒の有るべき方向性を述 べた。これは温泉の掛け流し式浴槽が衛生的という間違った認識から、イメー ジと実際は異なることなどからのアプローチも試みた。

なお「2. 温泉の違いによる消毒剤消費特性」と「3. 温泉の違いによるレジオ ネラ属菌の不活化」は、空気調和・衛生工学会論文集№139(2008年10月)「温 泉水中のレジオネラ属菌に対する消毒剤の有効性についての実験的検討」(赤井 仁志、野知啓子、津田宏之、大塚雅之、森林博之、門脇正史、千葉隆史、小室 信一)6を参考にした。

(3)

1. 温泉消毒の課題

1.1 はじめに

温泉には様々な泉質があり、飲料水の消毒で最も一般的な塩素による消毒が 必ずしも効果的でないこともある。そこで、様々なレジオネラ症対策機器や薬 剤等が市販されている。中には、効果が疑わしい物もある。

本章は、塩素系の消毒効果について、実験結果と考察を行った結果を主に記 述した。塩素系薬剤の一般に知られている事柄は、本章の「1.2 塩素系薬剤に よる消毒」に記載した。温泉水には、様々な物質が含まれているために、一様 に消毒効果を判断しにくい面がある。

本章は、(社)空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集『温泉水質に適応可能

な消毒剤についての検討』12、(社)日本水環境学会年次大会講演要旨集『浴場 施設におけるレジオネラ汚染防止に関する検討』34と(社)空気調和・衛生工学 会 浴場施設におけるレジオネラ対策小委員会の『浴場施設におけるレジオネラ 対策指針のための調査・研究』5、またこれらで得た実験結果をまとめ直して 投稿した(社)空気調和・衛生工学会論文集№139(2008年10月)掲載の『温泉 水中のレジオネラ属菌に対する消毒剤の有効性についての実験的検討』(赤井仁 志、野知啓子、津田宏之、大塚雅之、森林博之、門脇正史、千葉隆史、小室信 一)6を基にしている。また NPO 給排水設備研究会誌の『温泉や鉱泉等の定 義と分類』8からも引用した。

1.2 塩素系薬剤による消毒

塩素と一言で言っても、普段耳にすることの多い次亜塩素酸ナトリウムや次 亜塩素酸カルシウム(高度サラシ粉)の他、電解次亜塩素酸、トリクロロイソ シアヌル酸錠剤、ジクロロイソシア ヌル酸ナトリウム顆粒や臭素酸系の BCDMH(3-bromo-1-chloro-5,5-dimethylhydantoin:ブロモクロロジメチル ヒダントイン)等があり、pH 等により次亜塩素酸ナトリウムと消毒効果が異 なる。

かつて、学校用プール等では次亜塩素酸カルシウムが広く用いられていた。

最近は、次亜塩素酸ナトリウムが汎用されている。次亜塩素酸ナトリウムは製

(4)

品の区分(医療用、食品添加物用や工業用など)、規格品(JWWA:(社)日本水 道協会)や純度、保管方法や保管場所によって、短期間に薬品濃度が低下する ことがある。

トリクロロイソシアヌル酸錠剤やジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒は 長期間保存しても、塩素濃度が低下しないメリットがある。しかし有機塩素で、

熱分解性があり、NOx等の有毒ガスを発生させる危険を孕んでいる。

水道水とは異なり温泉水の塩素による消毒では、下記のように適応しにくい。

① 硫化物イオンを含む場合は残留塩素が出ない

② 有機物や鉄、マンガンを含む場合は塩素剤を消費し、沈殿を生じる

③ アンモニウムイオンを含む場合は結合型塩素になる

④ pHが高い場合は殺菌効果が弱まる

⑤ 酸性泉では塩素ガスを発生する、

pH が高いと塩素消毒がしくにい理由は、水中での遊離残留塩素の形態が異 なるためである。遊離塩素は、水中で次亜塩素酸(HOCl)と次亜塩素酸イオン (OCl)で存在する。次亜塩素

酸の消毒力は、次亜塩素酸イ オンの消毒力の数十~数百倍 強いとされている。次亜塩素 酸、次亜塩素酸イオン濃度と pHの関係は図-5.1.1 となる。

つまりアルカリ性の中だと消 毒効果が下がる。遊離塩素を 主体とする消毒には、全塩素 濃度だけではなく、どのよう な型の塩素がどれだけ存在す るかが重要となる。

塩素系薬剤として、二酸化 塩素も挙げられる。塩素系で あっても、塩素そのものでは ない。

図-5.1.1 水中のpHと温度による遊離塩素の 形態との関係

(5)

二酸化塩素は、全物質中、オゾンに次ぐ酸化力を持つため、酸素原子の酸化 力により、タンパク質が主成分の病原菌を殺菌消毒するとともに、腐敗を防い で防腐の働きをする。また塩素で問題となる発がん性物質のトリハロメタンを 生成しない。次亜塩素酸ナトリウムのようにpH が上昇しても殺菌力の低下が 少なく、広範囲のpH 領域で安定した殺菌効果を発揮するとされている。二酸 化塩素の持つ化学的特性は、塩素消毒が必ずしも妥当とは言えない温泉泉質等 に適している。近年 1,000mとか 1,500mも掘った温泉はアルカリ性を示すも のが多いために、適応する範囲が拡がりつつある。水道浄水での除鉄・除マン ガン処理では、塩素に比べて約3倍の反応速度がある。

しかし二酸化塩素は、反応効率が低い場合、反応で残った亜塩素酸濃度が高 くなるとチアノーゼ、ヘモグロビン障害や貧血等人体に悪影響を与えると考え られている。

二酸化塩素は貯蔵しにくく、原則として利用箇所で生成しなければならず、

薬液販売には適さない。亜塩素酸の薬液を安定化二酸化塩素と詐称して販売し ている例もあるが、二酸化塩素の原料であっても、二酸化塩素とは別物である し、チアノーゼ等の血流傷害の原因物質でもある。

欧米では 20 年以上前から 5,000 箇所を超える浄水場で、飲料水の殺菌に用 いられている。アメリカ合衆国では広範囲に使用されており、FDA(米国食品 医療品省)で食品添加物に、医療用消毒、医療機器消毒に、EPA(米国環境保 健局)で飲料水、工場廃棄物処理、環境浄化用に、USDA、FSIS(米国農務局、

食品安全検査局)で食品、食肉消毒に使用許可されている。NASA(米国航空 宇宙局)でスペースシャトル内や宇宙食の完全殺菌に、HACCP(米国食中毒 予防計画)で食中毒発生危険度の高い食肉消毒に公式採用されている。アメリ カ合衆国以外では、JECFA(国連食品添加物専門委員会)でADI(人体摂取許 容基準)のA1クラスに認定されている。

1.3 塩素系薬剤以外の消毒

塩素系薬剤以外の殺菌方法には、紫外線、金属イオンやオゾン、光触媒等が ある。

紫外線殺菌効果は、紫外線の照射量(エネルギー量)×時間との相関がみら

(6)

れる。だがストロボのような感じで、紫外線をフリッカー照射したほうが、殺 菌効果がみられるという報告もある。紫外線でも適応しない泉質があり、硝酸 イオンが含まれる場合、254nmの紫外線域の光を吸収するために殺菌効果が薄 い。紫外線には残留性がないため、他の方式との併用が必要となる。

銀イオンは濃度が重要で、試験管試験では 50ppb~100ppb でレジオネラ属 菌が殺菌されるようである。実用で、温泉の塩化物や消毒用の塩素と反応して 塩化銀化合物が形成された場合、沈殿するために殺菌効果を得られにくいよう だ。高濃度の銀は、ヒト繊維芽細胞に弱い染色異常誘起性を生じさせる危険も 孕んでいる。人体に蓄積されると、容易に排出されにくいとされている。

オゾンは直接の殺菌効果のほかに、結合塩素を分解し、塩素の殺菌力を向上 させる補助的な役割も担う。だが浴室中に噴出し、微量でも吸い込むと気管支 や肺細胞の炎症を起こす危険性が指摘されている。もし殺菌効果を有する濃度 で浴槽水に溶存した場合、粘膜細胞がやられると指摘する研究者もおり、取り 扱いやシステムには注意が必要である。

オゾンによる浴槽水の消毒は、「公衆浴場における衛生等管理要領」(平成18

年8月24日 健衛発第0824001号 厚生労働省健康局生活衛生課長)に危険性

や適応について触れている。

1.4 まとめ

温泉水は、飲料水と異なり様々な物質が溶存している。溶存物質は、酸化に よる消毒の場合、還元物質となり消毒の妨げとなる。

浴槽水の消毒で最も一般に用いられている次亜塩素酸ナトリウムは、浴槽水 のpH の影響を受けたり、硫化物イオンを含む温泉では残留しにくかったりす る。

しかし非塩素系の消毒方法を用いるのは、それぞれ方式に課題があることを 認識する必要がある。

(7)

2. 温泉の違いによる消毒剤消費特性

2.1 はじめに

循環式浴槽の浴槽水は、消毒剤によって、安全性を担保されていると言って も過言でない。温泉水は、上水とは異なり多くの成分を含有していることから、

消毒剤と反応して、消失することが多い。

しかし、消失の割合は、温泉泉質と消毒剤の種類のよって異なる。これを解 明するために実験を行った。消費の少ない消毒剤の選択により、効率的な消毒 が可能となるために薬剤購入経費の削減にもつながる。また消毒剤の消費が少 なくて、温泉水の pH や ORP の変化が少ない消毒剤は、ある面から見ると温 泉泉質を変化させない消毒剤ということもできる。本研究では、プールや浴場 用として市販されている消毒剤を対象に実験を行った。

なお本項は、空気調和・衛生工学会論文集№139(2008年10月)「温泉水中 のレジオネラ属菌に対する消毒剤の有効性についての実験的検討」(赤井仁志、

野知啓子、津田宏之、大塚雅之、森林博之、門脇正史、千葉隆史、小室信一)6 等を参考にした。

2.2 対象とした温泉

対象とした温泉は、繰り返し試験した温泉水も含めて延べで18試料あった。

うちpHやORPまで実験をした温泉は8~9試料で、この他、対照試料として 水道水も使用した。時代の趨勢に合わせて集中混合泉も対象とした。

実験に使用した温泉の化学的成分は、表-5.2.1である。試料とした温泉の泉 質は、季節により変動するために、必ずしも温泉法や鉱泉分析指針に合致して いるとは言えない。

各温泉水のpH値が7.3~7.5付近にある試料は、塩化物泉、混合泉(A)、(B)、

(C)、(D)で、アルカリ性泉(pH:8.5 以上)は、炭酸水素塩泉(8.6)が挙げられた。

硫黄泉のpH値はやや酸性側にあり6.2を示した。また、含鉄泉はpH値が2.6 の強酸性となっている。

次に含有する無機物が予測できる電気伝導率(Cond.)および塩素イオン(Cℓ-) について、両者を対比させながら評価した。

(8)

まず、水道水の Cond.は 15[mS/m]前後となり、Cℓ-は 10[mg]前後で示され る。一方、 対象温泉水のなかでCond.およびCℓ-濃度が最も高いのは、塩化物 泉であり Cond.は 1300[mS/m]を示し、Cℓ-濃度は 4500[mg/L]と高い値が得ら れている。さらに、炭酸水素塩泉(Cℓ-:210[mg/L])、含鉄泉(Cℓ-:2[mg/L])、混合 泉(B)、混合泉(C)(Cℓ-:170[mg/L])、混合泉(A)(Cℓ-:120[mg/L])のCond.は120~

200[mS/m]とほぼ同等な値を示した。

次に混合泉(D)のCond.は82[mS/m]となり、Cℓ-は71[mg/L]と比較的低い値 で示された。また、硫黄泉のCond.は13[mS/m]と水道水と同程度であり、Cℓ-

(25℃)

8.6 <0.5 7.4 <0.5 2.6 <0.5

6.2 3.6

7.5 <0.5 7.9 <0.5 7.8 <0.5 7.3 <0.5

全硬度 Ca硬度 Mg硬度

(CaCO3) (CaCO3) (CaCO3)

ms/m mg/L mg/L mg/L mg/L

200 26 14 12 <0.05

1,300 3,012 3,000 12 0.46

190 280 150 130 30.0

13 26 19 7 0.81

120 288 280 8 <0.05

150 130 130 <1 0.08

150 131 130 1 0.13

82 79 63 16 <0.05

炭酸水素塩泉〔重曹泉〕

塩化物泉〔含塩化土類- 食塩泉〕

含鉄泉〔緑礬泉〕

硫黄泉〔狭義の硫黄泉〕

電気

伝導率

泉質名

集中混合等(1)

集中混合等(2)

集中混合等(3)

集中混合等(4)

pH 濁度

泉質名 所在地

福島市土湯温泉町 仙台市泉区泉ヶ岳温泉

含鉄泉〔緑礬泉〕 福島市土湯温泉町

硫黄泉〔狭義の硫黄泉〕 福島市土湯温泉町

炭酸水素塩泉〔重曹泉〕

塩化物泉〔含塩化土類- 食塩泉〕

集中混合等(3)

集中混合等(4)

花巻市湯口 福島市土湯温泉町

集中混合等(1) 青森市浅虫温泉

集中混合等(2) 花巻市湯口

表-5.2.1a 試料とした温泉水の成分(1)

(9)

も2[mg/L]と対象温泉水のなかで最も低い値を示す泉質となってい。

温泉水の性状を ORP(Eh,[mV])で表すと、高い酸化性を示す泉質は含鉄泉 (+1006[mV])のみであり、その他の泉質は+445~+648[mV]の範囲にあった。

各温泉水における全硬度は79~288[mg/L]の範囲を示した。その他の含有成分 としては鉄(<0.05~30[mg/L])。マンガン(<0.05~1.4[mg/L])、シリカ(37~

230[mg/L])が含有していた。

各泉質のなかで過マンガン酸消費量が 31[mg/L]および 15[mg/L]と高いのは 酸消費量

pH4.8

(CaCO3)

mg/L mg/L mg/L mg/L mg/L

<0.05 540 210 160 <0.1 0.12 34 4,500 420 <0.1

1.4 <1 2 790 <0.1

0.07 1 2 37 <0.1

<0.05 26 120 370 <0.1

<0.05 48 170 370 0.11

<0.05 49 170 370 <0.1

0.14 180 71 110 0.3

mg/L mg/L mg/L mg/L

<0.1 130 5 2 6.4

1.9 74 31 3 0.4

1.7 230 <1 8 13.0

<0.1 37 15 6 4.5

2 46 <1 1 <0.1

<0.1 74 <1 1 <0.1

<0.1 75 <1 2 <0.1

2.1 89 3 1 1.3

塩化物 イオン

過マンガン 酸カリウム消

費量 硝酸

イオン シリカ 色度

アンモニウ イオン

マンガン 硫酸

イオン

亜硝酸 イオン

集中混合等(3)

集中混合等(4)

炭酸水素塩泉〔重曹泉〕

塩化物泉〔含塩化土類- 食塩泉〕

含鉄泉〔緑礬泉〕

硫黄泉〔狭義の硫黄泉〕

集中混合等(1)

集中混合等(2)

泉質名 泉質名

集中混合等(1)

集中混合等(2)

集中混合等(3)

集中混合等(4)

炭酸水素塩泉〔重曹泉〕

塩化物泉〔含塩化土類- 食塩泉〕

含鉄泉〔緑礬泉〕

硫黄泉〔狭義の硫黄泉〕

表-5.2.1b 試料とした温泉水の成分(2)

(10)

塩化物泉、硫黄泉であり、有機物以外の存在が考えられた。一般的には、過マ ンガン酸消費量は有機物質による汚濁の程度を評価する指標として用いられる が、試料中に塩素イオン等が含有していると、過マンガン酸を消費するため高 い値で検出される。本実験値は、無機性還元物質〔塩素イオン、硫化物イオン 等〕による消費量であると推察された。

以上のとおり、対象とした温泉水の液性および含有成分は、多様であること が示された。

2.3 消毒剤の違いによる消費特性 2.3.1 試験方法

500[mL]のメスフラスコに各温泉水を加え、消毒剤濃度を 3、6、9[mg/L]と

なるように濃度段階に添加して、マグネテックスターラで 15[min]間反応させ る。反応後にpH、ORPと消毒剤残留濃度を測定した。

塩素濃度および二酸化塩素濃度の定量は、DR/4000分光光度計(HACH社製) を用い、塩素濃度の定量はDPD法に基づいた。

2.3.2 残留消毒剤濃度係数(k

1

値)の算出方法

温泉水と消毒剤が反応して、消毒剤の残留濃度は低下する。これら残留濃度 が各泉質によりどのように相異するのかを評価するために、消毒剤残留濃度係 数(k1)を、下式と定義して求めた。

C=k1C

ここに、

C : 消毒剤残留濃度 [mg/L]

k1 : 消毒剤残留濃度係数 [-] C : 消毒剤添加濃度 [mg/L]

2.3.3 試験結果

対象温泉水中における各消毒剤の残留性を評価するために,消毒剤添加濃度 と消毒剤残留濃度の関係から消毒剤残留濃度係数(k1値)を算出した。これを一 覧表にしたものが、表-5.2.2である。消毒剤添加濃度と消毒剤残留濃度の関係

(11)

の一例を図-5.2.1と図-5.2.2に示す.図-5.2.1と図-5.2.2は、表-5.2.2の上 表-5.2.2 温泉水の違いによる消毒剤残留濃度係数

次亜塩素 酸ナトリウ

二酸化塩

ジクロロイ ソシアヌル

トリクロロイ ソシアヌル

アルカリ性単純温泉 福島市土湯温泉町 0.15

単純温泉 福島市土湯温泉町 0.15

炭酸水素塩泉〔重曹泉〕※1 福島市土湯温泉町 0.11

塩化物泉(1) 飽海郡遊佐町吹浦 0.50

塩化物泉(2) 古河市 0.50

硫酸塩泉(1) 八束郡玉湯町玉造 0.86

硫酸塩泉(2) 鶴岡市由良 0.56

含鉄泉(1)〔鉄泉〕 福島市土湯温泉町 1.02

含鉄泉(2)〔緑礬泉〕※2 福島市土湯温泉町 0.36 硫黄泉(1)〔硫化水素泉〕 米沢市小野川町 0.22 炭酸水素塩泉〔重曹泉〕※1 福島市土湯温泉町 0.08 0.58 0.10 0.08 塩化物泉(3)〔含塩化土類-

食塩泉〕 仙台市泉区福岡 0.14 0.32 0.04 0.10 含鉄泉(2)〔緑礬泉〕※2 福島市土湯温泉町 0.19 0.68 0.07 0.35 硫黄泉(3)〔狭義の硫黄泉〕 福島市土湯温泉町 0.02 0.94 0.02 0.31 集中混合等(1) 青森市浅虫温泉 0.95 0.84 0.95 0.44 集中混合等(2) 花巻市湯口字志戸平 0.94 0.75 0.96 1.00 集中混合等(3) 花巻市湯口字志戸平 0.93 0.90 0.92 0.64 集中混合等(4) 福島市土湯温泉町 0.36 0.78 0.28 0.89

水道水 横浜市金沢区六浦東 0.85

※1と※2は、各々同じ温泉水だが、採水時期(年)が異なる

  野知・縣・赤井ほか:浴場施設におけるレジオネラ対策に関する研究(7),

空気調和・衛生工学会大会学術講演会集 2005   赤井・野知ほか:温泉水質に適応可能な消毒剤についての検討(1),

空気調和・衛生工学会大会学術講演会集 2007   赤井・野知ほか:浴場施設におけるレジオネラ汚染防止に関する検討(1),

日本水環境学会講演集 2007 泉  質  名 採  水  地

残留率

(残留した殺菌剤の量÷添加した殺菌剤の量)

(12)

から1つ目2つ目のデータである。

最終的な実験では、5 種の消毒剤を 8 種の温泉水に作用させ、式より k1 値 CF= 0.15CA

R2= 0.99

0 2 4 6 8

0 3 6 9

遊離残留塩素CF[mg/L]

添加濃度CA[mg/L]

図-5.2.2 塩素添加濃度と残留濃度(単純温泉) CF= 0.15CA

R2= 0.97

0 2 4 6 8

0 3 6 9

遊離残留塩素CF[mg/L]

添加濃度CA[mg/L]

図-5.2.1 塩素添加濃度と残留濃度(アルカリ性単純温泉)

(13)

求めた。消毒剤の消毒剤残留濃度係数(k1)を 表-5.2.3 に、泉質別にみた k1値 を図-5.2.3 に示しした。なお本実験では、水道水(対照)と泉質のk1値を対比さ せながら評価した。温泉水における消毒剤の残留特性は次のとおりである。

(1) 次亜塩素酸ナトリウム

本消毒剤を水道水に作用させた結果、k1値は0.8以上が得られた。この値よ り高い値を示した温泉水は混合泉(A)、(B)、(C)の 3 種の泉質であり、 0.93~ 0.95 が得られた。一方、k1値が 0.19~0.02 の範囲にあり本消毒剤を消費しや すい温泉水としては、含鉄泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉および硫黄泉が挙げら れた。各泉質中(pH:2.6~8.6)における本消毒剤は、次亜塩素酸(HOCℓ)あるい は次亜塩素酸イオン(OCℓ-)で存在している。 pH が 2~7 では次亜塩素酸

(HOCℓ)が優占し、pH7.4でおよそ半分の存在割合であり、これより高くなると

急速にOCℓ-の割合が高くなる。一方、炭酸水素塩泉、塩化物泉、含鉄泉、硫黄 泉には、K+、Na+、Ca+、Mg+、Fe2+、Al3+の陽イオンが主な含有成分として存 在するため、これら陽イオンとの反応が本消毒剤を消費する要因になっている と考えられる。

本消毒剤のk1値が0.3以下を示す残留性の低い温泉水は、対象とした試料の うち63[%](5/8)でみられた。

(2) 二酸化塩素

k1 泉質名 k1 泉質名 k1 泉質名 k1 泉質名 k1 泉質名 0.95 集中混合泉(1) 0.99 水道水 0.96 集中混合泉(2) 0.97 集中混合泉(2) 1.00 含鉄泉 0.94 集中混合泉(2) 0.94 硫黄泉 0.95 集中混合泉(1) 0.89 集中混合泉(4) 1.00 集中混合泉(2) 0.93 集中混合泉(3) 0.90 集中混合泉(3) 0.92 集中混合泉(3) 0.80 水道水 1.00 集中混合泉(4) 0.82 水道水 0.84 集中混合泉(1) 0.84 水道水 0.64 集中混合泉(3) 1.00 水道水 0.36 集中混合泉(4) 0.78 集中混合泉(4) 0.28 集中混合泉(4) 0.44 集中混合泉(1) 0.99 集中混合泉(3) 0.19 含鉄泉 0.75 集中混合泉(2) 0.10 炭酸水素塩泉 0.35 含鉄泉 0.95 集中混合泉(1) 0.14 塩化物泉 0.68 含鉄泉 0.07 含鉄泉 0.31 硫黄泉 0.83 硫黄泉 0.09 炭酸水素塩泉 0.58 炭酸水素塩泉 0.04 塩化物泉 0.10 塩化物泉 0.49 塩化物泉 0.02 硫黄泉 0.32 塩化物泉 0.02 硫黄泉 0.08 炭酸水素塩泉 0.48 炭酸水素塩泉

塩素臭素製剤 次亜塩素酸ナトリウム

溶液

ジクロロイソシアヌル 酸ナトリウム製剤

トリクロロイソシアヌル 酸ナトリウム製剤 二酸化塩素

表-5.2.3 消毒剤ごとに残留濃度係数の高い順に並べた

(14)

二酸化塩素の大きな特性の一つとして,水によく溶けることであり、常温で

2.9[mg/L]、冷温では 10[mg/L]以上が溶解する。水との反応は、塩素とは異な

り反応しないため、揮発性の高い薬剤である。これらの特性を持つ本消毒剤を 各温泉水に作用させた結果、水道水(対照)とほぼ同等のk1値(0.9前後)を示す温 泉水は硫黄泉、混合泉(C)であり、k1値が 0.7~0.8 を示す温泉水は混合泉(A)、 (D)、(B)および含鉄泉であった。

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩素 ジクロロイソシアヌ ルNa トリクロロイソシア ヌル酸 塩素臭素製剤

炭酸水素塩泉

K1

塩化物泉

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロイソ アヌルNa トリクロロイ ソシアヌル酸 塩素臭素製剤

K1

集中混合泉(A)

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロイソ シアヌルNa トリクロロイ ソシアヌル酸 塩素臭素製剤

集中混合泉(B) 0.00

0.20 0.400.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 酸化塩 ロロイ ルNa クロソシ ヌル 塩素臭素製

集中混合泉(C)

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロイソ シアヌルNa トリクロロイ ソシアヌル酸 塩素臭素製剤

集中混合泉(D)

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロソシ アヌルNa トリクロイソ シアヌル酸 塩素臭素製

含鉄泉

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸N a

二酸化塩素

ジクロロイソシアヌルN a

トリク ロロ

イソシ アヌル

塩素臭素製剤

K1

硫黄泉

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロイ シアヌルNa トリクロロ ソシアヌル 塩素臭素製

k1

水道水

0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00

次亜塩素酸Na 二酸化塩 ジクロロイソ シアヌルNa トリクロロイ ソシアヌル酸 塩素臭素製剤

k1

図-5.2.3 各温泉水のk1

(15)

炭酸水素塩泉および塩化物泉の k1値は 0.6、0.3 と低い値で示された。低い 理由として、本泉質に含有する塩素イオン、 鉄、マンガン、硫化物等との反応 によると考えられる。

(3) ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム製剤

イソシアヌル酸を骨格とし水素部分が2個の塩素に置換された有機系塩素化 合物である。本実験では、この塩素成分を測定し、k1値を算出した。水道水(k1

値:0.84)より高い値(k1値:0.9以上)を示した泉質は、混合泉(B)、(A)、(C)であり、

その他の泉質は0.28~0.02と低いk1値を示した。

以上の結果より、最も k1値の低い硫黄泉(0.02)に本消毒剤を 0.4[mg/L]残留 させると仮定すると、20[mg/L]の消毒剤濃度が必要となる。本消毒剤も塩素系 であることから、消毒剤の消費は次亜塩素酸ナトリウムと類似の傾向にあり、

本消毒剤の残留性は対象温泉水の63[%](6/8)で低い結果となった。

(4) トリクロロイソシアヌル酸製剤

本消毒剤もジクロロイソシアヌル酸ナトリウム製剤と同様に塩素成分を測定 し評価した。

水道水(k1値:0.80)より高いk1値を示す温泉水は混合泉(B)、(D)であった。一 方、k1値が0.6以下を示す泉質は混合泉(C)、含鉄泉、硫黄泉、塩化物泉および 炭酸水素塩泉であり、対象温泉水の 63[%]は本消毒剤を消費しやすい泉質であ ることが示された。すなわち、本消毒剤の残留性も次亜塩素酸ナトリウムと同 様の反応系で塩素成分が消費されると考えられる。

(5) 塩素臭素製剤

本消毒薬剤は、ハロゲン同士の結合であり、BCDMH(ブロモクロロジメチ ルヒダントイン)と呼ばれ、塩化臭素(BrCℓ)としては、ハロゲン分子よりは結 合エネルギーが小さい分だけ消毒力を高めるといわれる。

本消毒剤を水道水に作用させた結果、k1値は1.0となり、水道水中での残留 性は高いことがわかる。各泉質のk1値を対比すると、含鉄泉、混合泉(B)、(D)、 (C)、(A)、硫黄泉は0.8~1.0となり、残留性の高いことが示された。一方、塩

(16)

化物泉、炭酸水素塩泉の k1値は 0.5 前後であり、同等の残留効果を得るには、

消毒剤濃度を2倍量程度高めて添加することが必要となる。

(6) 各温泉水における消毒剤の残留特性

消毒剤の残留性を同軸で評価するためにk1値を指標とした。二酸化塩素およ び塩素臭素剤は塩化物泉、炭酸水素塩泉を除き高い残留性を示した。

次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系消毒剤が、水道水(k1値:0.8)と同等の残留性 を示す泉質は、 集中混合泉(B)、(C)であり、k1値は0.9前後の高い値で示され た。その他の温泉水は塩素系消毒剤との反応性が高く、k1値は0.6~0.02とな るため、消毒剤量を高める必要性が示された。

以上の結果より、温泉水に対して消毒剤を作用させる場合は、必要とする消 毒剤濃度をk1値から予測することの妥当性を示すことができた。

2.4 消毒剤が温泉水の ORP 等に及ぼす影響

対象温泉水に消毒剤を作用させることを想定して、各温泉水の ORP が消毒 剤を作用させることにより、どの程度酸化性側へ移動するのかを測定した。各 温泉水に対象消毒剤を添加して、ORP移動係数を下式の通り定義して、算出し た。

ORPm = kmC+ ORP0

ここに、

ORPm : 消毒剤作用後のORP、Eh [mV]

CA : 消毒剤添加濃度 [mg/L]

km : ORP移動係数 [-] ORP0 : 温泉水のORP、 Eh [mV]

その他、pH、遊離残留塩素濃度と総残留塩素濃度の変化をまとめたのが、表 -5.2.4 と表-5.2.5 である。表-5.2.4 は消毒剤が、次亜塩素酸ナトリウムの場 合で、表-5.2.5は二酸化塩素の場合である。

次亜塩素酸ナトリウムと二酸化塩素を較べると、ORPの上昇は緑礬泉を除い て二酸化塩素が高い。これは残留濃度係数で二酸化塩素の方が高いことの影響 もあると考えられる。

(17)

添加濃度(mg/L) 0.00 3.00 6.00 9.00 回帰式 ※1 R2 遊離塩素(mg/L) 0.00 0.31 0.49 0.85 CF=0.08CA 0.86 総残留塩素(mg/L) 0.02 3.60 7.20 10.50 CT=1.18CA 1.00

pH 8.61 8.60 8.60 8.61

ORP,Eh(mV) 460 551 580 611 ORP=16.1CA+478 0.91 遊離塩素(mg/L) 0.00 1.08 1.12 0.86 CF=0.14CA 0.18 総残留塩素(mg/L) 0.00 1.26 1.16 0.86 CT=0.15CA 0.02 pH 7.23 7.28 7.21 7.16 pH=-0.009CA+7.262 0.53 ORP,Eh(mV) 623 729 706 700 ORP=6.9CA+658 0.34 遊離塩素(mg/L) 0.00 0.80 1.27 1.60 CF=0.19CA 0.94 総残留塩素(mg/L) 0.00 1.70 3.60 5.10 CT=0.58CA 1.00 pH 2.61 2.63 2.63 2.63 pH=0.002CA+2.616 0.60 ORP,Eh(mV) 1,006 1,207 1,274 1,298 ORP=31.4CA+1055 0.84 遊離塩素(mg/L) 0.00 0.01 0.12 0.21 CF=0.02CA 0.89 総残留塩素(mg/L) 0.00 0.39 3.40 5.50 CT=0.56CA 0.91 pH 6.15 6.27 6.34 6.31 pH=0.018CA+6.185 0.72 ORP,Eh(mV) 517 678 767 791 ORP=30.3CA+552 0.90 遊離塩素(mg/L) 0.06 2.70 5.00 9.00 CF=0.95CA 0.98 総残留塩素(mg/L) 0.13 4.00 6.60 11.20 CT=1.21CA 0.99 pH 7.54 8.00 8.15 8.29 pH=0.080CA+7.635 0.91 ORP,Eh(mV) 564 935 963 965 ORP=41.0CF+672 0.66 遊離塩素(mg/L) 0.01 1.60 5.50 8.90 CF=0.94CA 0.96 総残留塩素(mg/L) 0.02 3.40 6.80 10.30 CT=1.14CA 1.00 pH 8.03 8.18 8.23 8.28 pH=0.027CA+8.060 0.91 ORP,Eh(mV) 546 844 877 857 ORP=32.2CA+636 0.63 遊離塩素(mg/L) 0.00 2.50 6.00 8.20 CF=0.93CA 0.99 総残留塩素(mg/L) 0.00 2.70 6.90 9.40 CT=1.06CA 0.99 pH 7.54 7.98 8.05 8.10 pH=0.058CA+7.655 0.78 ORP,Eh(mV) 445 863 896 921 ORP=48.6CA+562 0.70 遊離塩素(mg/L) 0.00 0.03 0.85 4.40 CF=0.36CA 0.68 総残留塩素(mg/L) 0.02 0.05 1.01 5.10 CT=0.41CA 0.69

pH 7.11 7.02 7.10 7.11

ORP,Eh(mV) 648 625 705 837 ORP=21.6CA+607 0.77   ※1 回帰式とR2は、R2が0.1未満のものは表示を省略

集中混合等(1)

炭酸水素塩泉

〔重曹泉〕

塩化物泉

〔含塩化土類 -食塩泉〕

含鉄泉

〔緑礬泉〕

硫黄泉

〔狭義の硫黄 泉〕

次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)

泉質名

集中混合等(2)

集中混合等(3)

集中混合等(4)

表-5.2.4 次亜塩素酸ナトリウムの添加がORP等に及ぼす影響

(18)

ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム顆粒とトリクロロイソシアヌル酸錠剤は 省略するが、硫黄泉(狭義の硫黄泉)に各種消毒剤を添加した例が、表-5.2..6 である。

pH で見ると次亜塩素酸ナトリウムを添加すると、やや上昇した。しかし、

二酸化塩素とトリクロロイソシアヌル酸では、極端に下がった。トリクロロイ ソシアヌル酸の場合、遊離残留塩素濃度の上限値である 1.0mg/L より低い

0.9mg/L で、pH が 3.6 であった。ややもするとトリクロロイソシアヌル酸の

添加濃度(mg/L) 0.00 3.00 6.00 9.00 回帰式 ※1 R2 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.51 6.74 11.17 CT=1.20CA 0.99

pH 8.61 8.64 8.61 8.59 pH=-0.003CA+8.626 0.32 ORP,Eh(mV) 460 919 948 966 ORP=51.6CA+591 0.68 二酸化塩素(mg/L) 0.00 0.98 3.02 5.85 CT=0.59CA 0.94 pH 7.23 7.24 7.00 6.81 pH=-0.050CA+7.295 0.89 ORP,Eh(mV) 623 880 933 951 ORP=34.6CA+690 0.77 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.38 5.27 7.79 CT=0.89CA 0.98 pH 2.61 2.60 2.60 2.60 pH=-0.001CA+2.607 0.60 ORP,Eh(mV) 1,006 1,028 1,045 1,057 ORP=5.7CA+1,009 0.99 二酸化塩素(mg/L) 0.00 2.96 5.85 9.04 CT=0.99CA 1.00 pH 6.15 3.62 3.57 3.52 pH=-0.265CA+5.406 0.63 ORP,Eh(mV) 517 999 1,004 1,026 ORP=51.0CA+657 0.64 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.68 6.97 10.40 CT=1.16CA 1.00 pH 7.54 7.07 6.86 6.68 pH=-0.093CA+7.456 0.94 ORP,Eh(mV) 564 992 1,020 1,031 ORP=47.6CA+688 0.67 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.66 6.95 10.32 CT=1.16CA 1.00 pH 8.03 7.40 7.21 7.03 pH=-0.106CA+7.896 0.89 ORP,Eh(mV) 546 975 1,002 1,007 ORP=47.1CA+671 0.66 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.64 6.78 9.88 CT=1.12CA 1.00 pH 7.54 7.45 7.23 7.06 pH=-0.055CA+7.569 0.98 ORP,Eh(mV) 445 939 965 984 ORP=54.7CA+587 0.67 二酸化塩素(mg/L) 0.00 3.59 7.26 10.39 CT=1.17CA 1.00 pH 7.11 7.94 7.84 7.77 pH=0.063CA+7.383 0.42 ORP,Eh(mV) 648 973 990 1,009 ORP=36.7CA+740 0.68   ※1 回帰式とR2は、R2が0.1未満のものは表示を省略

泉質名 二酸化塩素(ClO2

含鉄泉

〔緑礬泉〕

硫黄泉

〔狭義の硫黄 泉〕

炭酸水素塩泉

〔重曹泉〕

塩化物泉

〔含塩化土類 -食塩泉〕

集中混合等(3)

集中混合等(4)

集中混合等(1)

集中混合等(2)

表-5.2.5 二酸化塩素の添加がORP等に及ぼす影響

(19)

添加により、塩素ガスが発生する危険も否定できない。

2.5 まとめ

温泉の泉質と消毒剤の組合せにより、pH(水素イオン濃度)や ORP(酸化 還元電位)の変化の傾向や度合いが異なる。同様に残留消毒剤濃度係数も大き く違う。

このように温泉泉質によって、消毒剤の違いが性状に影響を与えることから、

消毒剤の選択は化学的な手法を用いる必要がある。

本章の「3. 温泉の違いによるレジオネラ属菌の不活化」のデータも鑑みて、温 泉泉質にあった消毒剤を選択すべきである。

表-5.2.6 各種消毒剤がOPR等に及ぼす影響(硫黄泉)

消毒剤 添加濃度(mg/L) 0.00 3.00 6.00 9.00 回帰式 ※1 R2 遊離残留塩素(mg/L) 0.00 0.01 0.12 0.21 CF=0.02CA 0.89

総残留塩素(mg/L) 0.00 0.39 3.40 5.50 CT=0.56CA 0.91 pH 6.15 6.27 6.34 6.31 pH=0.018CA+6.185 0.72 ORP,Eh(mV) 517 678 767 791 ORP=30.3CA+552 0.90 遊離残留塩素(mg/L) 0.00 0.00 0.00 0.03 CF=0.00CA 0.60 pH 6.14 6.30 6.40 6.26 pH=0.015CA+6.206 0.30 ORP,Eh(mV) 100 535 510 730 ORP=62.2CA+189 0.83 二酸化塩素(mg/L) 0.00 2.96 5.85 9.04 CT=0.99CA 1.00 pH 6.15 3.62 3.57 3.52 pH=-0.265CA+5.406 0.63 ORP,Eh(mV) 517 999 1,004 1,026 ORP=51.0CA+657 0.64 遊離残留塩素(mg/L) 0.00 0.04 0.11 0.13 CF=0.02CA 0.96 総残留塩素(mg/L) 0.00 2.50 5.80 8.80 CT=0.96CA 1.00 イソシアヌル酸(mg/L) 0.0 3.0 7.0 13.0 IT=0.80IA 0.97 pH 6.15 5.97 5.88 5.83 pH=-0.035CA+6.115 0.93 ORP,Eh(mV) 517 772 784 787 ORP=27.3CA+591 0.64 遊離残留塩素(mg/L) 0.00 0.90 2.10 2.60 CF=0.31CA 0.98 総残留塩素(mg/L) 0.00 5.40 10.20 15.90 CT=1.75CA 1.00

イソシアヌル酸(mg/L)

pH 6.15 3.63 3.58 3.54 pH=-0.263CA+5.407 0.63 ORP,Eh(mV) 517 1,186 1,199 1,199 ORP=68.6CA+717 0.62   ※1 回帰式とR2は、R2が±0.1未満のものは表示を省略

次亜塩素酸 ナトリウム

(03年度分)

次亜塩素酸 ナトリウム

(04年度分)

二酸化塩素

ジクロロ イソシアヌル酸

トリクロロ イソシアヌル酸

(20)

3. 温泉の違いによるレジオネラ属菌の不活化

3.1 はじめに

本章の「3. 温泉の違いによる消毒剤消費特性」で、消毒剤の残留濃度係数に 触れた。本来は、残留濃度も含めたレジオネラ属菌の不活化の把握が大切であ る。

なお本項は、空気調和・衛生工学会論文集№139(2008年10月)「温泉水中 のレジオネラ属菌に対する消毒剤の有効性についての実験的検討」(赤井仁志、

野知啓子、津田宏之、大塚雅之、森林博之、門脇正史、千葉隆史、小室信一)6 等を参考にした。

3.2 各消毒剤によるレジオネラ属菌の不活化試験

継代培養した

Legionella pneumophila

のコロニーを2白金耳とり、10[mL]

に調製する(調製液とする)。

Legionella pneumophila

以外の細菌を除去する

ために、0.22[μm]のメンブレンフィルタ(ミリポアフィルタ社製)でろ過滅菌し

た温泉水に、調製液を105[CFU/mL]程度になるように加えて、このなかに各消 毒剤を何種類かの試験設定濃度になるように添加して、マグネテックスターラ で撹拌した。なお、水道水は加熱により残留塩素を消失させてから、同様の操 作を行った。

Legionella pneumophila

と各消毒剤の作用時間は0、15、30[min]として、

各作用時間での

Legionella pneumophila

数の計測を行った。なお消毒剤残留 濃度の測定は 30[min]値とした。消毒剤作用時間と

Legionella pneumophila

の生残率の関係を下式より求めた。

Nt/N0 = e-kA t ここに、

Nt : t時間後の

Legionella pneumophila

菌数 [CFU/mL]

N0 : 初期(t=0)の

Legionella pneumophila

菌数 [CFU/mL]

kA : 速度定数 [1/min]

t : 作用時間 [min]

一般に消毒剤による細菌の消毒効果を評価するのには、不活化に必要な消毒

(21)

残留濃度時間積 Ct 値〔C:消毒剤残留濃度[mg/L]、t:作用時間[min]が用いられ る。しかし、試料を温泉水とした場合は、添加した消毒剤が温泉水により消費 されてしまい、残留する消毒剤濃度が低い値となるために、Ct値は低い値で算 出される。

水道水であれば、どこの給水栓から採取した水質であっても、消毒剤を作用 させた場合の残留塩素濃度は、ほぼ同等の値が得られる。しかし、温泉水では、

源泉数分の泉質があるため、同じ消毒剤でも、泉質ごとに残留消毒剤濃度は異 なることが考えられる。

つまり Ct値により必要消毒剤量を算出した場合には、温泉水との反応分が 加味されないために、実際に必要な消毒剤濃度が添加されないために、適正な 消毒管理が行われないことが懸念される。

そこで本実験では添加する消毒剤濃度を採用して、消毒剤添加濃度時間積 Cat値〔Ca:消毒剤添加濃度[mg/L]、t:作用時間[min]〕として評価すること を試みて、関係式を下式とした。

Cat=Ca×t ここに,

Cat : 消毒剤添加濃度時間積 [(mg・min)/L]

Ca : 消毒剤添加濃度 [mg/L]

t : 作用時間 [min]

Legionella pneumophila

99.9[%]不活化するのに必要な消毒剤濃度時間

消毒剤名 泉質名

Nt/N0=e-kAt kA 99.9%

Cat値 kA 99.9%

Cat値 kA 99.9%

Cat値 kA 99.9%

Cat値 kA 99.9%

Cat値 炭酸水素塩泉 0.06 29.9 0.06 6.9 0.04 32.8 0.19 5.8 0.28 17.3 混合泉(A) 0.18 7.3 0.05 4.1 0.15 6.9 0.17 3.7 0.12 12.1 混合泉(B) 0.08 16.4 0.14 1.5 0.09 13.0 0.12 2.9 0.07 24.6 混合泉(C) 0.16 8.6 0.13 1.6 0.14 6.4 0.11 1.3 0.06 28.8 混合泉(D) 0.15 8.7 0.04 8.6 0.08 12.1 0.16 1.3 0.02 82.8 水道水 0.14 5.4 0.18 0.4 0.13 4.2 0.11 0.2 0.18 1.9

次亜塩素酸ナ トリウム

ジクロロイソシ アヌル酸ナトリ

ウム顆粒

トリクロロイソシ

アヌル酸錠剤 塩素臭素製剤

二酸化塩素

表-5.3.1 各消毒剤による温泉水中

Legionella pneumophila

99.9[%]Cat

(22)

積・Cat値[(mg・min)/L]は、表-5.3.1である。

消毒剤添加濃度時間積Cat値を見ると、トリクロロイソシアヌル酸と二酸化 塩素が小さい値が多く見られて、塩素臭素製剤に大きい値が出る傾向があった。

温泉泉質によっても違いがあるが、対象とした温泉水ではトリクロロイソシア ヌル酸と二酸化塩素は少ない添加量で

Legionella pneumophila

を不活化しや すく、塩素臭素製剤は

Legionella pneumophila

を不活化しにくい傾向が見ら れた。

消毒剤濃度時間積・Cat値の元になる

Legionella pneumophila

の不活化試 験の採取データとこの解説する。対象とする温泉水は、流れが理解しやすいよ うに、本章の「2. 温泉の違いによる消毒剤消費特性」の図-5.2.1 と図-5.2.2 に示した温泉水とする。図-5.3.1は、図-5.2.1で用いた試料温泉水・アルカリ 性単純温泉での塩素によるレジオネラ属菌不活化試験結果である。99.9%不活 化するためには、2.0mg/Lの添加濃度が必要である。

同じ温泉水を二酸化塩素で不活化試験をしたのが、図-5.3.2である。添加濃

度0.1mg/Lで99.9%不活化し、塩素の5%の添加で同等の不活化がはかれるこ

とがわかった。

同様に図-5.3.3と図-5.3.4が、図-5.2.2の単純温泉での99.99%不活化試験 結果である。単純温泉では、塩素の37%の二酸化塩素添加量で、同等の不活化 ができる結果を得た。

3.3 まとめ

温泉泉質によって違いはあるものの、トリクロロイソシアヌル酸と二酸化塩 素が、

Legionella pneumophila

を不活化しやすい傾向が見られた。

実際の浴槽では、温泉泉質、原湯のままか加水するのか、源泉槽の有無や浴 槽への差し湯量など使われ方やシステムによって、対策や効果の可否が異なる。

同じ施設でも源泉が違えば異なった対応策を講じなければならないこともある し、たとえ同じ源泉の浴槽でも加水率やろ過システムの差異により、対策がそ ぐわないことも生じる。

このようなデータを現場に活かすために、工学から、技術への移転方法を今 後考える必要がある。

(23)

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05

0 10 20 30 40 50 60

レジオネラ属菌数[CFU/mL]

接触時間[min]

塩素濃度 0.3mg/ℓ 添加濃度 2.0mg/ℓ

図-5.3.1 アルカリ性単純温泉での次亜塩素酸ナトリウムとの接触時間と

Legionella pneumophila

の菌数の推移

1.E+00 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06

0 10 20 30 40 50 60

レジオネラ属菌数[CFU/mL]

接触時間[min]

添加濃度 0.1mg/ℓ

図-5.3.2 アルカリ性単純温泉での二酸化塩素との接触時間と

Legionella

pneumophila

の菌数の推移

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