アメリカ投資論の特徴 : 分析論型投資論と管理論 型投資論 (I)
その他のタイトル Two Types of "Investment"
著者 松谷 勉
雑誌名 關西大學商學論集
巻 22
号 1
ページ 51‑68
発行年 1977‑04‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/00021022
(研究ノート)
アメリカ投資論の特徴
ー一分析論型投資論と管理論型投資論
(I)
一松 谷 勉
I
(1)
Smith
とEiteman
は,Essentialsof Investing(
〔I
])で,投資とは,投 資 ボ ー ト フ ォ リ オ の た め の 投 資 資 産 の 購 入 , 保 有 ・ 売 却 に つ い て の 投 資 決 定 を 行 な う た め に , 色 々 な 投 資 機 会 に つ い て の 情 報 を 集 め , そ し て 分 析 す る 過 程 で あ り , 投 資 決 定 は 金 融 媒 介 機 関 , 金 融 市 場 お よ び 政 府 の 規 制 と い う 全 体 的な投資環境の中で, あ る 規 定 し た 手 続 き に 従 っ て 実 行 す べ き も の で あ る (〔
I J p . i x )
と述べている。そして, まず第1
部第2
章で5 3
頁に示したよう な投資過程の略図を描き, そ の 全 体 的 な 概 略 に つ い て 説 明 し て い る( C I
〕p p . 1113)
。す な わ ち , 投 資 過 程 は , 投 資 政 策 , 投 資 分 析 , 投 資 評 価 , ボ ー ト フ ォ リ オ
(1)
本書の章別編成は下記の通りである。第
I
部 序 論1
.投資装置2
.投資過程3
.ポートフォリオの概観第江部 投資評価
4
.評価のフレーム・ワーク5
.債券の特長と評価6
.株式の 特長と評価7
.租税回避型投資の特長と評価第皿部 証券分析
8
.証券分析入門9
.財務諸表分析1 0
.会計調整1 1
.将来の利益の予測
第I
V
部 非 工 業 証 券1 2
.公共事業への投資1 3
.運送会社への投資1 4
.金融機 関への投資1 5
.投資会社への投資1 6
.サーヴィス機関への投資 第V部 投 資 家 活 動1 7
.市場の働き1 8
.投資手続き1 9
.情報源2 0
.投資タイミ ン グ
2 1
.業績の評価本書は,大学院あるいは学部上級課程での「投資論」の初級コースのための入
門書として書かれたものであり (CIJP.ix) ,事実, Smith•Eiteman 両教授の所
属する
U n i v e r s i t i yo f C a l i f o r n i a , L o s A n g e l e s ( U . C . L . A.)
の大学院で「投5 2 ( 5 2 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)の作成,という四つの主要な活動から成る絶えず進行中の継続的な過程であ り
( C 1 J p . l )
, それは投資政策に 始まり そしてポートフォリオの作成 で 終る というものではなく,それらの各々の活動とその詳細な手続きは 反復して行なわれる継続的・連続的な過程とみるべきであり,さらに,それ 以降の諸活動は論理的には,それ以前の投資政策,分析,評価,およびボー トフォリオの作成の結果を基になすべきものであるc c 1 J p.13)との基本的
な考え方に立ち, これらの諸活動のフィードバックの重要性を強調してい
る。 Smith
とEiteman
は,このような連続的な動態的な投資過程を研究対
象・研究領域とするのが投資論であると考え,このような考え方を端的に表
わすために, その書物の表題にわざと Investing
という動名詞を用い, さ
らに,その構成においても伝統的な投資論テキストにおける順序とは逆に,
まず, ボートフォリオの作成から始め, 次いで投資評価へ, そして最後に 詳細な投資分析へと説明を進めている
( C IJp. X)
。 このようなSmith・
Eiteman
の投資論は,彼ら自身も述べているように(CIJp.11)
,伝統的な 投資論の殆んどすべての表題がInvestment
と名詞を用い, しかも,それ らは,投資家達にとって利用可能な投資機会についての分析方法の記述,ぃ わゆる投資分析と投資評価=証券分析論に終始しているといえるのとは対照 的である。周知のように,アメリカにおける伝統的な投資論においては,一般に,投 資とは,十分な分析のもとに,最小限の危険負担によつて元本の安全性と満 資分析論」
I n v e s t m e n t A n a l y s i s "
のテキストとして使用されていたものであ る。なお,U.C.L.A
では,投資論関係の講座としてI n v e s t m e n tA n a l y s i s "
の他に,
I n v e s t m e n tP o r t f o l i o s
とInvestmentTheory"
とが置かれており,これら後者の二科目のいずれを履修する場合にも,
I n v e s t m e n tA n a l y s i s "
を修 得済みであることを条件としており,また,I n v e s t m e n tA n a l y s i s "
の履修には," B u s i n e s s F i n a n c e "
を修得済みであることを条件としている。1 9 7 4
年F a l lS e m e s t e r (1012
月),1 9 7 5
年W i n t e rS e m . ( 1
3月).1 9 7 5
年S p r i n g S e m . (4 6
月)では, これら 3科目はS m i t h , E i t e m a n , S h e l t o n ,
J.P~ May; M.M.
の4
人が交替で担当されていた。なお, これらのテキストとしては,
I n v e s t m e n t P o r t f o l i o s "
はS m i t h
のP o r t f o l i oManagement(2 J ,
が,I n v e s t m e n tTheory"
では,L o r i e
とB r e a l e y
のModernD e v e l o p m e n t s i n
I n v e s t m e n t Management(3 J
が使用されていた。アメリカ投資論の特徴(松谷)
(図 I‑1)投 資 過 程 投 資 政 築
投 資 分 析
投資可能資金の決定 ポートフォリオ諸目的の決定 可能的投資資産の確認
投資資産の諸特質についての考察 資産目録への資金の配分
二 経 済 ? 分 析
普 通 株 分 析 債 券 分 析 その他の資産の分析 産業の選択 利回り構成の分析 質的分析 産業の分析 債券格付けについての考察 量的分析 株式の質的分析 債券の質的分析
株式の量的分析 債券の量的分析
投 資 評 価
株式の評価 債券の評価 その他の資産の評価
分散化水準の決定
投資タイミングについての考察 投資資産の選択
投資可能資金の投資資産への配分 ポートフォリオの評価のフィードバック
5 4 ( 5 4 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)足な報醜をもたらす証券を購入し,かなり長期間に亘って保有する行為を意 味するものである(〔
4Jp . 7 )
との,いわゆる狭義の投資概念を明確にか,あるいは暗黙の内にか,とにかくいずれにしてもこのような投資概念を伝統 的に堅持され,したがって,投資成功の鍵は,利用可能な投資機会について の注意深い選択とその評価にあり(〔
5 J p . 2 )
, ある投資家にとっての良い 投資( g o o di n v e s t m e n t )
は,他のすべての投資家達にとっても良い投資と なり,また,銀行•生命保険会社のような機関投資家達にとっての良い投資 政策は, 個人投資家達にとっても良い投資となるに進いなく, 良い投資に は,なんらの管理も注意も不必要である(〔6 J p . 5 0 8 )
との基本的な投資思 考から特に投資客体(対象)分析,いわゆる証券分析論を中心とする投資論 を展開されてきたといえるであろう。もちろん,一般論的に,投資過程にお ける最も重要な投資決定は,投資銘柄の選択とその売買タイミングについて であるといえることからも証券分析=投資分析は,投資•投資行動にとって 不可欠的なものであるこというまでもないが,しかし,証券分析はあくまで も狭義の投資分析であるにすぎなく,それが投資そのものの研究,つまり投 資論本来の独自的研究となるものでないこというまでもない。しかも,そこ にはまだ,投資分析として投資主休分析,投資環境分析,投資市場分析,投 資行動分析を挙げることが出来る。これらの狭義の投資分析もいずれも一様 に,投資にとって不可欠的なものであること,これまたいうまでもないこと である。したがって伝統的な投資論においても投資対象分析としての証券分 析を基礎としながらもこれらの狭義の投資分析のいずれかが研究対象として とりあげられていた。 なお, この点については後章で考察することにしよ う。それはともかく, このような伝統的な投資論に対して,
Smith • Eiteman
は,冒頭に記述したように投資概念をむしろ動態的に投資=投資行動と解し,それらの全休的な投資活動を対象とするのが投資論であると考え,投資 行動分析あるいは投資管理的思考を基礎とする,いわば管理論的アプローチ からの投資論の形成を意図するものであるといえるであろう。このような思
考は,投資家目的を達成せんがための証券ポートフォリオの選択と,その訂 正に関する意思決定過程であり,常に進行中の動態的な過程であり,また,
新しい情報に対する適合過程でもあるとする,
S m i t h
の投資管理あるいは ポートフォリオ管理の考えc c 2) p . 4 1 )を端的に表わしたものであること
いうまでもない。 ちなみに, S m i t h
のポートフォリオ管理過程の全体的な
モデルを示せば次の通りである(〔2
〕p . 4 2 )
。
(図
I‑2)
ポートフォリオ管理過程の全体的モデル ポートフォリオの計画投資家の条件 管理者の条件 投資基準
投 資 分 析
経済分析 産業分析 最初の選別 予想的分析
ポートフォリオの訂正
主要なミックスの決定 証券選択の決定
タイミングの決定
ポートフォリオの評価
成績の測定 成績の比較
ポートフォリオの選択
主要なミックスの決定 証券選択の決定
なお,この図で,ボートフォリオ管理過程の動態的な特長は,そのボート フォリオの訂正段階で明確に駆識することが出来,これに対して,その適合 過程であるという特長は,色々なフィードパックの矢印でもって表わされて いる。
ところで,このような管理論型投資論=投資管理論といえば,われわれは 直ちに投資にとって最も重要なのは証券分析よりもむしろ投資主体のもつ
56 ( 5 6 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)投資目的に適合する投資政策・方針を樹立することにあるとして,投資管理 論を展開した
S a u v a i n
のI n v e s t m e n tManagemnt(
〔7
〕)を想起する。したがって,このことからもアメリカ投資論は,大雑把に,証券分析論を中 心とする投資論,つまり分析論的アプローチによる投資論=分析論型投資論 と,管理論的アプローチによる投資論=管理論型投資論という二つのアプロ ーチによって今日迄展開されて来たともいえるであろう。もちろん,前者,
つまり分析論型投資論がその支配的なアプローチであったこと前述した通り であり,これは,アメリカ投資論がもともとその研究の出発点から投資対象 分析論として誕生したことに帰因するものであるといえる。なお,この点に ついては,後章でのアメリカ投資論研究の歴史的展開過程の所で考察するこ とにしよう。
われわれは, まず,管理論型投資論を意図する
S m i t h • Eiteman
のいう 投資過程における主要な活動について,その概略的説明をみてみることによ って,投資過程における具体的な諸活動,諸手続き(彼らのいう諸段階),そこでの諸問題を確認し,次に,これらの諸活動・諸問題がこれまでの伝統 的な投資論においてどのように取り上げられ,また,どのようにアプローチ されてきたのか,についてみてみることにしよう。つまり,アメリカ投資論 研究の史的展開過程を概略的に考察し,アメリカ投資論の特長とそれらの類 型化を試みようとするものである。これは投資論の研究対象,その領域,研 究課題,アプローチの仕方,投資論関連領域・分野,などについて整理し,
かつ,投資論の体系化をめざすわれわれの試みにとっての一つの手がかりに なるものであるからである。
では, 次節で
S m i t h • Eiteman
の投資過程についての説明をみてみるこ とにしよう。] I ( 1 )
投資政策c c 1 J p p . 14 15)
投資過程にとっての論理的出発点は,
p e r s p e c t i v e
を作成するという決定をなすことであり,投資政策とは,なすべき決定の範囲,それをなす理由,
投資家の目的にどのような諸特質
( a t t r i b u t e s )
が最も適合するか,などに ついて焦点をおきながらそのようなp e r s p e c t i v e
を準備することである。そこには五つの段階が必要である。 まず, 投資可能資金量を決定するこ とである。第二は,ボートフォリオの目的あるいは目標を決定することであ る。第三は,これらの特定の目的に合致すると思えるところの可能的な投資 資産の目録を確認することである。例えば,次の分類表の中から選択される であろう。
I
直接投資対象A
確定元本投資1
.現金2 .
預金勘定3 .
市場性のある預金証書4 .
政府債券5 .
社 債B
変動型元本証券1.優先株
2 .
普通株3 .
転換証券4 .
ワ ラ ン ト5 .
オ プ シ ョ ンC 非証券投資
1
.不動産2 .
抵 当 権3 .
商品4 .
事業投資5 .
美術品・骨董品 およぴその他の貴重品I l
間接的投資対象
A
年金華金B
保険会社ボートフォリオc
投資会社D
信託基金 〔(I
〕p . 5 )
第四は, 投資資産のどの特質を考えるべきであるかであり, 諸特質の系 統的リストは,投資資産,個人の感情と選好についての情報を集め評価する ための手段となる。特質とは,将来の消費のために用意するその資産の能力 をいろいろと関連づけたところの,ある投資資産の特長である。投資資産の 報酬に襲する特質としては,定期的所得と資本騰貴がある。報酬の確実性を 表わす特質は安全性であり,その反対に,その報酬の不確実性を表わすもの
5 8 ( 5 8 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)は危険である。報酬と危険は多くの投資家達にとって最も重要な特質であ り,したがって,投資分析およびボートフォリオ分析についての多くの議論 はまさにこの二つの特質ー一報酬と危険に限定されている。他の特質として は投資資産の流動性,取扱いやすさ (manageability)-—これは長期に亘っ てその資産を監視し,そして管理しなければならない度合である一一,さら に課税性
( t a x a b i l i t y )
がある。危険特質は,購買力危険,利子率危険,事業危険,財務危険へと分けられ る
( p p .7 8)
。投資目的, 特質およぴ資産の目録についての詳細は,なさ ねばならない投資決定をめぐる囲い( af e n c e )
となり,頭の中で考えるだけ でも多くの場合においては十分ではあるが,明細書を書くことはヨリ有益で ある。全体的なボートフォリオにとっての一般的目的と各々の投資決定のた めの特定の目的とを書きとめておくという仕事は,投資過程における重要な そして港在的にむくわれる手続きであると考えられる。このようなプロセス は,連続性をもたらし,そして感情的反応によって引き起こされる目的の動 揺を少なくするものである。第五のそして投資政策の最終段階は,投資可能資金を資産目録へ配分する 段階である。これは, 特定の投資資産の最終的選択ではなくて, むしろ預 金,債券,株式などへの予備的配分であるにすぎない。それは,色々な投資資 産の市場に対するポートフォリオの長期的心がまえを確立することにある。
投資過程の中でのそれ以降の多くの段階をたとえどんなに上手に管理した としても,もし投資可能資金を資産目録に適当に配分しなかったとしたら,
全体的な結果は損傷をきたすであろう。これはいわゆる主要なミックスの決 定といわれているものである。
(2) 投資分析
(pp.1517)
投資過程の中心は投資分析であり,この重要な活動は,ポートフォリオの ために考えられるところの特定の資産についての情報の蒐集と加工から成 る。投資分析は,すべて論理的には全般的な経済についての評価から始める べきである。これは,色々と遮った投資資産にとっての可能的な市場につい
ての追加的な見通しを準備することにあるからである。事実,経済分析は,
投資政策の一部分としての資金の投資資産への配分を含む投資過程における 多くの段階にとっての必須条件である。長期に亘る経済の変動的特長を理解 し,そして,経済部門の見通しの変化が債券,株式,不動産,およびその他 の投資資産の市場にどのように影響するかについて理解しておくことは必要 である。これには,現在の経済についての評価と将来における経済について の予測との両者が含まれる。経済予測には,しばしば
GNP,
工業生産高,消費者物価指数,利子率,住宅着工高,自動車販売高,などの経済活動の諸 指数が用いられる。
伝統的な証券分析のアプローチは,まず,経済に焦点をおき,産業に,そ して,最後に個々の証券についてである。普通株について見てみると,現在 の経済状態についての評価と,可能的な経済の展開を予測した後に,浦在的 投資家達は,今後数年間魅力的な投資であると思われるところのものを検証 するために,すべての産業について調査する。魅力的であると思われる各々 の産業については,需給状態についてのヨリ詳細な分析が行なわれるであろ
う。
次の段階は個々の証券を分析することである。普通株については図 (I‑
1) にあるように,質的側面と量的側面についての分析がなされる。質的諸 要因には,技術,経営者,競争,そして消費者嗜好の変化が含まれる。量的 諸要因には,これらの若干のものの外に,とにかく測定可能なあるいは数字 で表わすことの出来る他のものを加えたものが含まれる。量的分析の中心は 会社の発表する財務諸表についての分析である。質的およぴ量的分析の両者 におけるすべての諸要因と密接な関係にあるところの共通した筋書は,それ らを収益,配当および普通株価格へと投影するということである。収益は,
長期に亘る企業の発展を評価する公分母として,また,同一業種内での企業 間比較をなすための公分母として役立つものであるから重要である。 さら に,収益は,債権者への利子支払,および所有者への配当支払いの手段を備 えるものであることからも重要な要因である。過去の収益は,将来の収益の
6 0 ( 6 0 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)投影のための基礎となるものでもある。
(3) 投資評価
(pp.1718)
投資過程における最も重要な活動であるのに時々見過ごされる活動は投資 評価である。価値については色々な考え方があるが,われわれは,投資価値
( i n v e s t m e n t v a l u e )
とは, ある投資からその所有者にもたらされるところ の将来利益の現在価値であると規定する。普通株の場合には,これらの将来 利益は,現金配当プラス実現した株価騰貴分である。債権の場合には,利子 支払額と債券の満期価値,もしくは,所有者がその債券を満期以前に売却す ると決めた時には, その債券の現在市場価格である。証券からの将来利益 は,その発行企業の生み出した収益と密接な関係があり,したがって,これ が質的・量的投資分析を投資価値の決定に先立って必らず行なわなければな らない理由である。ところで,投資資産の 価値 の決定には,重要な諸問 題がある。当面の一つの問題は, 投資資産の所有にもたらされると期待さ れる将来利益の予測である。まず,選択した期間の各年度毎に期待される一 株当りの収益の予想であり,次に,これをもとにしてその期間の終りにおい て期待されるその最終的価格と共に,ー株当りの配当について各年度毎に予 想することである。投資関係では,期間( h o r i z o n )
とは,ある資産の行動を 評価しようとする時間の長さを表わしている。第二の問題は,投資の将来利 益に適用する適当なウェートの配置を決めることである。一つの論理的な可 能性としては, かかるウェートを将来利益のそれぞれの時期に関連づける ことであり,そして,それらの利益を生み出すところの投資資産の固有の危 険に関連づけることである。将来利益の予測は,色々な方法でなすことが出 来るが,これに反して,相対的加重の確立は高度に主観的な問題である。更 にその加重は,投資家が考えるであろう広範な投資資産の間では,多分,極 めて多様なものとなるであろう。予測した利益と相対的加重のセットによって投資資産の 価値 を評価す ることが出来る。すなわち,
T
V
=投資価値V=Ea 、 B 、 B ,
=利益,~1
a、=各期の利益に対する相対的加重 で投資価値の一般式を表わすことが出来る。
例えば,もし
T=3
の利益を確謁するとすれば,この式はV=a1B
叶a 2 B 2
+凶氏と簡単になる
((lJpp.56)
。この一般式をもとに,色々な投資資産のユニークな特長を考慮して各資産 に最適の評価のための算式については第
4
章から第7
章迄の四章でかなり詳 細に説明されている。このように評価された価値とその資産の現行市場価格との比較によって問 題とする資産の相対的魅力が決定される。ある資産の魅力はこの意味におい て過少評価であるが,それとも過大評価であるかという型をとることも出来.
るし,また,その報酬と危険とによって直接評価することも出来る。どの資 産の評価にも共通した型を用いることは出来るが,しかし,図 CI‑1)に 描いた投資評価への同一方向の矢印は,各資産項目にとってユニークな特殊 な配慮をなすことを示している。
(4) ボートフォリオの作成
( c o n s t r u c t i o n ) ( p p . 1 82 0 )
価値と価格との比較だけでは,最終的投資決定をなすために十分なものと はいえない。その困難さは,もし選択したとしても,その問題とする資産は 投資資産の全休的なポートフォリオの中の一つのメンパーとなるにすぎない ということにある。したがって,ボートフォリオの全休に対してヨリ大なる 注意を払わなければならない。
ポートフォリオの作成には, 適当な分散化水準を決定しなければならな い。分散化
( d i v e r s i f i c a t i o n )
とは, ポートフォリオ全体の危険を低減させ るために,ポートフォリオの中に色々遮った特質をもつ投資資産を組み合わ せるという,そのプロセスである。個々の資産にとってユニークであるとこ ろの全休の危険の構成要素は,分散化によって低減させることは出来るが,これに対して全体の危険にとっての第二の構成要素たる全体的市場に関する
6 2 ( 6 2 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)危険は減らすことは出来ない。もし,ある産業の証券が高い相関関係にある 場合には特にこのことが当てはまる。それ故,分散化の決定には如何なる資 産が相互に密接な関係にあるか,特に達成出来ると期待されるところの可能 的報酬に関して密接な関係にあるかを明確にしておくことが必らず必要であ る。そこにはまた,分散化に関する法的・制度的拘束もあり,これらは投資 決定をなす以前に考慮しておくべきである。
投資クイミングは二つの次元で考えられる。投資政策の最終段階は資産目 録への資金の配分であるが,その決定は,明らかに長期間に亘る各資産項目 の相対的魅力によるものであるということにある。クイミングの第二の次元 は,ポ.,...トフォリオ選択の決定を実行する場合に関するものである。現在の 市場価格に大きな影響を与えないように売買予定量をコントロールしなが ら,投資決定を実行することが必要である。もちろん,投資資金量が僅かな 場合,あるいは債券の場合にはこのようなタイミングの考慮は余り問題とは ならないであろう。
次は,ボートフォリオの選択である。これには,どの資産をそのボートフ ォリオに追加すべきであるか2 どの資産を手離すべきか,そしてどの資産を ボートフォリオに留めておくべきか,などについて決定するという連続的な 過程が含まれる。また,そこにはなすべき各々の取引金額についての決定も 含まれる。株式数・債券数あるいは不動産の区画数の外に,各取引の取引コ ストも考慮しなければならない。取引コストには仲介人手数料, 税金,ま た,もしその取引が大である場合には市場への可能的な影響についても含ま れる。ボートフォリオ選択の決定は,報醗と危険というような投資資産の色
々な特質をその全休のポートフォリオにとっての特質の大きさにどのように 組み合わせるかに基礎をおくべきものである。
投資過程の最終段階は,評価のフィードバックである。投資政策,投資分 析,投資評価およびポートフォリオの作成は,その投資期間中における継続 的活動である。しかし,継続的決定は,何か明確なものを基礎にして行なわ なければならない。そして,論理的にはそれはボートフォリオそれ自体であ
るべきである。ボートフォリオの評価一各資産による,資産目録による,
そして全体のボートフォリオにる一は,継続的な投資決定を行なうために 必要なものである。ボートフォリオの評価には,適当な比較基準はもちろん のこと,報酬・危険,分散化についての適当な尺度が必要である。評価はま た投資家に帰属しているところの投資期間の長さにもよるものである。
以上,投資過程における四つの主要な活動と,それらの各々の詳細な手続 きについての
Smith • E i t e m a n
の説明から,(1
)投資政策は,いわゆる投資 主体分析とそれを基礎にする投資資産の主要なミックスを決定することにつ いての領域に関する問題であり,(2)投資分析と (3)投資評価は,一般に,証券 分析として呼ばれている領域に関する問題であるといえるが,しかし,彼ら においても,投資過程における最も重要な中心的な活動とされている。これ は,われわれが冒頭にも引用したように,投資とは,ポートフォリオのため の資産の購入・保有・売却に関する投資決定を行なうために,色々な投資機 会について情報を集め,そして分析する過程である,との規定から来る当然 の帰結であるといえるであろう。 (4)ポートフォリオの作成は,ポートフォリ オ全体の報酬と危険の効率的組み合わせによる最適ボートフォリオ選択に関 する問題であるといえる。なお,この領域に関する研究は,周知のように,M a r k o w i t z
のP o r t f o l i oS e l e c t i o n C C 8]
)以降今日迄,確率論的・数学的 アプローチによる新しい現代ボートフォリオ理論・ポートフォリオ分析論と して活発な議論と最も研究のおし進められている分野である,といえるであ ろう。以上のことからも,S m i t h • E i t e m a n
の投資論はこれまでの多くの伝 統的な投資論とは異なり,硯代ボートフォリオ理論・分析論にもとづく新し い証券評価論•投資論を形成しようとしていることがわかるであろう。投資 過程における諸問題についての本格的な検討は後章で試みることにして,ここでは以上のような問題を指摘することだけにとどめておこう。
われわれの次の課題は,投資過程におけるこのような諸問題について,こ れまでの伝統的な投資論においてどのようにアプローチされてきたか,つま
り,アメリカ投資論の史的展開についての概略的考察である。
6 4 ( 6 4 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)皿
アメリカにおける証券投資についての科学的研究の始まりは,つまり,ァ メリカ投資論の出発点は,
1 9 1 1
年のC h a m b e r l a i n
によるTheP r i n c i p i e s of Bond Investment(
〔9)
)であるといえる。それは,この書では,まず 理想的投資( i d e a li n v e s t m e n t )
の諸要件を列挙し,この諸要件を満たすも のは貸付金( l o a n )
だけであると結論して,次に,色々なクイプの貸付金証 書を,この理想的投資の諸要件を基礎にして分類し,それらについての詳細 な分析,とくに債券発行者と購入者との間における契約条項についての分析 にその重点をおきながら,各債券の理想的投資の諸要件の充足度を検討する という方法での債券分析を展開しているからである。このことは,1 9 0 8
に出 版されたLownhaupt
のI n v e s t m e n tBonds ( ( 1 0 )
)が,投資手段としての 債券についての法律的見地からその契約条項をもとにして,債券の特長とそ の種類についての考察に終始していたのとは対照的であり,したがって,当 然のこととして,われわれは, アメリカ投資論の出発点としてLownhaupt
のそれでなく,C h a m b e r l a i n
の 債券投資の諸原理 を挙げるのである。ところで
C h a m b e r l a i n
のいう理想的投資の諸要件c c 9) p p . 1 32 8 )と
は,
1. 元本の保証
2 .
所得の安定性3 .
順当な所得報酬4 .
市場性5 .
担保としての価値6 .
免税(特別税からの免除)7 .
監視の不必要8 .
適当な満期期間9 .
適当な券面額1 0 .
値上りの可能性である。このような諸要件を満たすものは貸付金
( l o a n )
だけとなり, 結 局,完全な投資( p e r f e c ti n v e s t m e n t )
とは,支払いの約束であり,それは 常に貸付金であるc c 9 J p . 1 4 )ということになる。企業の持分証券たる株
式は, 本来的に典型的な投機的証券 ( s p e c u l a t i v ep a p e r )
, 投機対象であ
り,これに対して,債券は典型的な投資証券( i n v e s t m e n ts e c u r i t y )
である
(
〔
9 J p . 2 9 )
というのである。 このことは, 投資と投機はその対象それ自 体によって厳格に区別され,債券の購入は投資であり,株式の購入は投機で あるとする当時における一般的な思考をそのまま反映したものであるともい えるであろう。これは,また当時までの約1 0 0
年の間におけるアメリカ株式 市場は,Drew, D , V a n d e r b i l t , C . , G o u l d , J a y
などによって代表される 大相場師達や,M o r g a n , , . J . P . , H a r r i m a n , C . ,
などの大鉄道王,銀行家,実業家などによる相場操縦,大投機,会社支配権の取得・合併などのための 市場であった
(C11]pp.100105)
ことから来る当然の帰結でもある。それはともかく,
C h a m b e r l a i n
は,安全ではあるが,しかし,その品質 において他の債券—国債,州債,地方自治債,など—に比べて,若干劣 るものとしていまだ一般的にすぐれた投資対象として広範に承認されていな いところの社債について (1)発行会社の特長 (2)社債の安全性 (3)社債の発 行目的あるいは機能( 4 )
社債の元本と利子の支払いに廃する条件,などによって, ヨリ詳細な社債の分類を展開している。さらに,第JI'JI[部では公債 と社債とについてのそれぞれの特長,安全性,資産評価などによる詳細ない わゆる債券分析を行なっている。社債については貸借対照表分析だけではな く,その発行会社の収益力をも評価するために損益計算書分析もなしてい る。しかし,社債の安全性テストの中心はあくまでもその債権契約条項の分 析におかれている。そして,さらに債券の価値評価についてもとり上げ,債 券の現在価値式
P= N+C(I +N)•-C
N(1+N)
を示している(〔9Jp.417)
。 以上,C h a m b e r l a i n
の投資論は,当時,つまり第一次大戦以前のアメリ 力における一般的,支配的な投資思想と投資手段について集大成され,成文 化されたものであり,しかも,その構成と分析論的アプローチは,それ以降 とくに1 9 2 0
年代に著わされた大部分の投資論テキストの原型となったといえ るであろう。したがって,このことからアメリカ投資論は,もともとその出 発点からして投資分析論として誕生したものであるということになる。いな 投資分析論から投資論へと,つまり,投資対象種類論•投資対象適格性分析 論を出発点・基礎として,その研究領域・研究対象を他の狭義の投資分析ヘ6 6 ( 6 6 )
アメリカ投資論の特徴(松谷)と拡げられ,次第に,投資論としての本来的なあり方・休系が確立されて来 たものであり,しかも,これらの投資手段としての証券にかかわるすべての 研究の代名詞として「投資論」なる名称が使用されて来た,というのがヨリ 正確であろう。これは,あたかもわが国における証券に関するあらゆる商学
・経済学的研究の代名詞として「証券市場論」なる名称が,これ迄多用され て来たのと類似している。この意味では投資論の真の出発点は
1 9 1 9
年のJordanの Investments ( ( 1 2 ]
)であるということになるかもしれない。 な(I)
ぉ,
Chamberlaimの投資論の章別絹成を示せば下記の通りである。
Part I
The C h a n n e l s o f I n v e s t m e n t I. I n t r o d u c t i o n
:
rr.
G a m b l i . n g , S p e c u l a t i o n , and I n v e s t m e n t
皿TheE l e m e n t s o f an I d e a l I n v e s t m e n t N. S t o c k s V e r s u s Bonds
V, The C h a n n e l s o f I n v e s t m e n t V I , Bond V e r s u s Mortgages
w.
L i s t e d V e r s u s U n l i s t e d Bonds
渭.
TheC l a s s i f i c a t i o n and D e s c r i p t i o n o f B o n d s : A c c o r d i n g t o t h e C h a r a c t e r o f t h e O b l i g o r
I X . The C l a s s i f i c a t i o n and D e s c r i p t i o n o f B o n d s : According t o t h e S e c u r i t y f o r t h e Bonds
x . The C l a s s i f i c a t i o n and D e s c r i p t i o n o f Bonds : A c c o r d i n g t o t h e P u r p o s e o r F u n c t i o n o f t h e I s s u e
X I , The C l a s s i f i c a t i o n and D e s c r i p t i o n o f Bonds : A c c o r d i n g t o C o n d i t i o n s A t t e n d i n g Payment o f I n t e r e s t o r P r i n c i p a l
(1) 本書は,全頁
550
頁にもおよぶまさに大書である。なお,附言すれば,本書は投資大衆と債券商会
( B o n dH o u s e s )に,投資手段
としての債券についての系統的・総合的知識を与えるという目的のために書かれ たものであり,債券投資についての科学的研究の必要性を強調されている。Part I I C i v i l L o a n s
: x r r . U n i t e d S t a t e s Bonds
X I I I . S t a t e B o n d s : The H i s t o r y o f S t a t e Debt X I V . S t a t e B o n d s : The E l e m e n t s o f S e c u r i t y
XV. County Bonds
X V I . C i t y and Town B o n d s : Munidpal A s s e t s X V I I . C i t y and Town Bonds: M u n i c i p a l L i a b i l i t i e s X V I I I . C i t y andTown B o n d s : V a l i d i t y and Good F a i t h
X I X . The Bonds o f Tax D i s t r i c t s
Part I I I C o r p o r a t i o n L o a n s
XX. R a i l r o a d B o n d s : P r o p r i e t o r s h i p , Management, and P l a n t X X I . R a i l r o a d B o n d s : E a r n i n g Power and the Income Account X X I I . R a i l r o a d B o n d s : V a l u a t i o n and t h e C a p i t a l Account X X I I I . Equipment T r u s t O b l i g a t i o n s
XXIV. S t e a m s h i p Bonds XXV. S t r e e t R a i l w a y Bonds XXVI. Gas Company Bonds XXVII. Water Company Bonds X X V I I I . Water‑Power Company Bonds
XXIX. R e a l E s t a t e Bonds XXX. Timber Bonds
XXXI. R e c l a m a t i o n I s s u e s ‑ : I r r i g a t i o n D i s t r i c t Bonds
X X X I I . R e c l a m a t i o n I s s u e s : P r i v a t e P r o j e c t and Carey Act Bonds X X X I I I . R e c l a m a t i o n I s s u e s : D r a i n a g e and Levee Bonds
Part'IV
The M a t h e m a t i c s and Movement o f Bond P r i c e s XXXIV. The Mathematics o f Bond V a l u e s
XXXV. The Use o f t h e B o n d ・ T a b l e s
XXXVI. The Keeping o f I n v e s t m e n t A c c o u n t s
XXXVII. The F i f t y ‑ Y e a r C o u r s e o f Bond P r i c e s
6 8 ( 6 8 ) アメリカ投資論の特徴(松谷)
XXXVIII. Bond P r i c e s i n R e l a t i o n t o t h e Trade C y c l e s XXXIX. The F u t u r e o f Bond P r i c e s
X L . The Bond H o u s e s
A p p e n d i x . The Gamble i n " G o v e r n m e n t s " by N a t i o n a l B a n k s . By W. H . Lyon I n d e x .
引 用 文 献