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イギリス農業環境政策の展開に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イギリス農業環境政策の展開に関する研究

田代, 正一

https://doi.org/10.11501/3100012

出版情報:Kyushu University, 1994, 博士(農学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第2章 イギリス農業環境政策ESA計画の展開

近年, 欧米諸国では, 農業活動による環境破壊が声高に11'1-ば、れるようになっ た。 農業活動による環境の改変が行きすぎ, 非人間的な自然が生み出されたた めである。 たとえば景観の破壊, 野生生物の絶滅, 7.1<.や空気の汚染などは非人 間的な自然といっても差し支えあるまい。

農業活動の行きすぎに伴う環境破I裂が深刻化し, そのことが大きな社会問題 にまで発展した最初の国はおそらくイギリスである。 そのためイギリスでは早 くから環境保全のための対策が採られてきた。 1987年に開始されたESA計画

( Environmentally Sensitive Area Scheme )がその代表的な例である。 ESA計画 とは, 農業活動の変化や集約化によりその存在を脅かされている自然景観, 野 生生物, 歴史的遺跡などを保全あるいは保護しようとする事業であり, イギリ ス農漁業食糧省(MAFF)による最初の本格的な環境保全政策であった。

ESAとして指定された地域では, 農業者は環境保全に配慮、した農業活動を 行う見返りとして政府から交付金を受け取る。 そして, これに要する資金の

部はEC財政によって負担される。 すなわち, この計画はCAPの一環として ECで公式に認められた政策であり, E C農業環境政策のlつである。 しかも,

それは先駆的かっ成功的事例である。

本章の課題は, イギリスで ESA計画が登場してきた背景, その概袈と実胞 状況, 計画の評úlliと問題点などを明らかにすることである。

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第1的j イギリスE S 1�計画の背景と概要

イギリスESA計画の背景

1980年代に人るとイギリスでは, 従米の農業政策の在りノJに対して依々な批 判が加えられるようになった。 その背景には先進諸国における農産物の過剰問 題があり, またEC農業予算の膨張に伴う財政の悪化があった。 さらにイギリ スでは, 市場メカニズムを重視し, 農業に対する財政支出削減を指向するサッ チャ一政権の誕生があった。 さらに欧州諸国における環境保護団体の返却Jの高 まりも見逃すことはできない。

1980年代の初めにイギリスで農業と環境の問題をいち早く取り上げ, 社会に

ι鐙をl鳴らしたのは環境学者のM ・ ショード(Shoard, 1980)であった。 集約 的農業は農村環境を破地し「凹園地域をl略奪」しているという彼女の報告は,

大きな社会的反響を呼んだ。 彼女の登場は, 1962年にアメリカで『沈黙の存J を著したレイチェル ・ カーソン( Rachel CarsoIl)のrf}来を忠わせるものがあっ た。

さらに英国議会の保守党議員リチヤード・ ボディ(Body, 1982)や経済学者 のJ ・ ボアーズおよびP・ チェイシャー(Bowers & Cheshire, 1983)らがこれ に続き, 農産物過剰や環境破域の原因はl雨水準の農業保護政策にあり, その解 決にはCAPの 改革が不可欠であると主仮した。 新聞やテレビなどの マ ス コミ も農村の環境問題に関する特集を組み, この問題に対する人々の関心を高めた (Blunden & Curry, 1り88)。 その結巣, かつては|打園地域の環境の守護身とし て人々に尊敬されてきた農業者が, いまではその破峻者の役割lを泌じていると 批判されるようになった(じ)weet al., 1986 )。

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こうした事情を背景として, 1986年に農業法の改正が行われs イギリス股業 政策の目標そのものが見直されることになった1)。 すなわち, 同法の第17条に おいて, (1)安定的かつ効率的な 農業の振興と維持, (2)農村地域の経済的, 社 会的利益, (3)自然景観, 田園地域の快適さ, および考古学的諸特徴の保全お よび改善, (4)公衆が田園地域の楽しみを享受することの促進, これら4つの 事項の間に合理的な均衡を保つことが農漁業食糧大臣の職務tの義務とされた (福士, 1988a)。 これまでのように農業の安定と効率のみを追求するのでは なく, 新たに環境保全や農村のアメニティなども視野に入れた政策が求められ るようになったのである。 イギリス農業環境政策ESA計画は, このような社

会的背景のもとで登場してくる。

ところで, 1985年のEC農業構造政策の改革はイギリスESA計画の展開に とって重要な意味をもっている。 農業構造政策に|刻するEC規則lにこのとき初 めてESAに関する規定が導入されたからである。 すなわち, r農業構造の効 率の改善に関するEC理事会規則(797/85)Jの第19条に, 加盟国は生態学上 および景観上の観点から重要性を認められる地域をESAに指定し, そこで環 境を保護あるいは改善する方法で農業を営む農業者に特別の援助を与えること ができる, という規定が導入された(CEC, 1985)。 これはイギリス政府の熱 心な働きかけによるものであると伝えられている(Smith. 1989 )。

この理事会規則は, 1987年の「農業情造, 農業の新たなdï場条件への適応,

およびm園地域の保全に関するEC理卓会規則(1760/87)Jによって一部改正 されたが, この改正によって加盟国がESA計画に支出した経費の25%を欧州 農業指導保証基金(PEOGA)から払い戻すことが決定されたと)。 それと同 時にESA計画に新たな政策目的が十I与された。 それは農業生産を市場のニー

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ズに適応したものに変えていくことであり, 具体的には過剰農産物の削減に寄 与することであった(CEC 1987 )。

このようにEC農業構造政策の1っとして認められたESA計画を, イギリ ス国内で実施に移すための法律が1986年農業法の第18条である。 それによると,

イギリスの 農漁業食糧大臣は, (1) ある地域の自然景観を保全および改善する こと, (2)ある地域の動他物群, ならびに地質学的 ・ 地形学的諸特徴を保全す ること, (3)ある地域の考古学的, 建築学的 あるいは歴史的価値の ある建築物 を保護することがとくに望ましいと判断され, かつ特定の営農方法の維持また は採用がそうした保全, 改善 あるいは保護を促すと判断される場合, 当該地域 をESAに指定することができるとされた3〕0

ところで, MA f Fは, 1986年農業法の成立に先立ち, すでに1985年には田 園地域委員会( c c )や自然保護協議会(N C C )などの関係諸凶体と協議を 行い, E S A候補地の選定基準を定めている。 それは, (1)地域の場境が国民 的意義を認められること, (2)地域の環境保全が特定の農業活動の継続に依仔 していること, (3)農業活動の変化により地域の環境が脅か されていること,

(4)環境上の観点から地域が明確に区分でき線引できること, 以上の4つの基 準である( MAFF, 1989 )。

旧悶地域委員会はこれらの基準をもとにESAの候補地を選定し, そのff主的 リストをMAffに提出している(CC, 1986) 0 M A r Fはこれらの候補地 の中から, とくに緊急を要する19地域を1987年と88年にそれぞれ第l次および 第2次のESAとして指定した。 全国19地域の内訳は, イングランド10, ウエ ールズ2, スコットランド5, 北アイルランド2であり(図rr -1参照), 指 定面積の合計は約79TJha(総農用地而積の4.3% )に及んだ。

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凶11- 1 イギリスのESA地域(第1次および第2次指定)

United Kingdom

Environmentally Sensitive Areas

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PENNINE DALES W'4t山々、、aω4hOJH

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出所: Smith (1989)_

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2. E S A計画の概要と実績

1986年農業法は, その第18条第(8)項において, 農漁業食糧大臣にESA計 画の笑施状況とその成果を適宜調査し報告するよう義務づけている。 MAFF (1989)はその最初の報告書である。 それによると, E S八計画の目的は地域の 自然景観, 野生生物, 歴史的遺跡などを農業活動の変化から保全あるいは保護 することである。 そのためには, E S A計画地域における農法の転換, すなわ ち集約的で収益性は高いが, しかし環境には悪影響を及ぼす農法への転換を抑 える必要がある。 そこでMAFFは農業者に交付金を支給して, 環境にやさし い農業活動を経済的に支援する。 ただし, このような計画に参加するか否かは 農業者の任意である。

また, この計画はESAの環境を, あたかも博物館の111に隔離するような方 法によってではなく, あくまでも刻笑の農業活動と密接に関述させっつ保全す ることをめざしている。 したがって, 農業者の所得を補償し環境保全型炭業の 担い手を確保することも, この 計画のIつの目的である。 また, 農業集約化へ の正力を緩和し, 低投入 ・ 低産tU型農業への動きを助長することによって, 過

剰農産物の削減をはかるJlLし、もあるo

ESA計画に参加する農業者はMAFFと向こう5年間の農業活動に|対する 指針, 支払われる交付金の額などについて協議し, 合志に達すれば協定を結ぶo j実業活動の指針については, rl常的あるいは季節(1なな農業方法や農作業に閲す る要求事項のほか, いく つかの制限事項や禁止事項, および杭極的な奨励字引 が協定書に明記される。 制限または禁 止される事項には, JJI�;J<.事業の尖胞, )農 薬や化学肥料の利)1], 家畜の過政牧などがあり, d三垣, 納屋, 池などの維持 ・ 保全は奨励される。 このような農業活動指針は, 同-ESAでは原HIJとしてす

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べての農業者に対して共通であるが, 各巳SA間ではlLl \にJ�ーなり, 地域のj足 業や環境条件の速いを反映したものとなっている。 ただし, 草地の耕地への転 換については明示的あるいは暗黙但に, すべてのESAにおいて禁じられてい る。

交付金の率すなわち年/ ha当たり支給制はMAFFによって決定され, 農業 者はそれぞれの参加1[面積に比例して交付金を受け取る。 交付金の率の決定に当 たっては, 農業者がこの計画に参加し農業活動指針を遵守することによって失

う現実の, あるいは潜在的な利益が長初に考慮、される。 また, 日SA協定が経 営に与える経済的安定性, 当該地域で!14型的な農場の面積や作目などの要因も 加味される。 それらを総合的に評価して支給率が決定され農業者に提示される。

交付金の率も同-ESA内ではすべての農業者に対して同じである。 ただし,

ほとんどのESAでは, 農業活動指針が標準的なものと, それよりきびしい内 容のものとの2ないし3段階で設定されており, 交付ー金の率も段階ごとに巣な ってくる。 活動指針の内容は, 標準的な第i 段階よりも第H段階, さらに 第III 段階の方が農業者にとってきびしく(したがって環境にはよりやさしく) , 父

付金の率もそれにしたがって高くなる。

ちなみに, 表n - 1は, イングランドの各ES八における交付金の率を示し

ている。 それによると, Pennine Oales, Wcs t Pcmvith, Test Valleyの3つのE SAでは支給率がl段階に統一されているが, BrecklandとSu[folk Rivcr Vallじり では3段階, 残る5つのESAでは文給率が2段階に分かれている。 これらの qlで, 支給率が肢も低いのはNorth Peakの第 I段階で10ポンド(1992年12刈現 住, 1ポンド-約200Iリ) , 肢も高いのはBrecklandの第nr 段階で300ポンドで ある。 North Peak E S Aはイングランドで肢も標高の高い場所に位世し, 午の

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表II - 2 イングランドにおけるESA計画の参加実績

(単位: ha, %)

参加実績2)

l件当たり 計 画 ESA 指定面積 適桁面積1) 面積 件数 参加l面積 参加l率

① ② ③ ④ ③/④ ③/②

Broads 29,980 13,780 12, 305 712 17.9 89. 3

Pennine Dales 15,974 13,260 9,656 290 33. 3 72. 8 Somerset Levels & Moors 27, 170 23,470 9, 576 745 12.9 40. 8 South DownsCEast)3) 26, 738 22, 766 6, 048 135 44. 8 26. 7

West Penwith 7, 176 6, 920 5.846 159 36. 8 84.4

Breckland 94. 030 51, 600 3. 645 93 39.2 7. 0

North Pcak 49, 607 45.692 39.130 75 521. 7 85. 6

Shropshire Borders 21. 358 18.858 16.526 241 68.6 87. 6 Suffolk River Valleys 32, 150 22.690 8.335 445 18.7 36. 7

Tes L Valley 2.631 1. 413 383 22 17.4 27. 1

合 計 306.814 220, 449 111. 450 2917 38. 2 50.6

注1 )指定面積のうち実際にESA計四への参加|が可能な土地而航。

2) 1991年末までの累計。

3) 1988年に追加指定された部分CSouLh Downs West)を除く。

出所: MAFF (1991d-1991h ; 1992a)

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政牧をrl:1 心とする*11 政な農業が営まれている地域であり, そこでの経営lúi杭は 概して大きい。 他ノ'i, ßreckland E S八における第li[段階の農業活動指針は耕 地の周問6メートル幅の土地を休耕し, 野草地に転換することであり, そこで は肥料や農薬の使用が一切禁止される。

次に, イングランドのESAについて, 1991 年末までの参加l笑績を示すと,

表口- 2の通りである。 同表によると, イングランドにおけるESA指定面積 は約307,OOOhaであり, そこから計画対象外の農地, 林地, 道路, 河川などを 差し引いた面積, すなわち実質的にESA計画の対象となりうる土地(適絡[市 街)は約220,000haであった。 さらに, この適絡面伎のうち1991年末までに実 際に計画に参加した面積は約111,000haで、あり, 適格面積に対する参加I r面積の 割合(計画参加率〉は50.6%であった(ただし, ここにあげた数値には, 1988 年に追加指定された South Downs (West) E S Aの実績が含まれていない。

その指定面積は約26,600haで-ある〉。

そこで, 各ESAごとに計画参加率をみてみると, Pennine DaJes (72. 8 % )

Broads (89.3%) West Penwith (84.4%) , North Peak (85.6%) , Shropshire ßorders (87. 6 % )の各地域で参加率が高く, それ以外のESAでは低い。 ま た, 1件当たりの平均参加面積が辰も大きいESAはNorth Peakの522ha, 最 も小さいのはSomじrset LcveJs & Monrsの12.9haで-あった。 仮にこの平均1m杭で 第!段階のESAに参加!すれば, 交付金の年支給制はNorth Peakで約5, 220ポ ンド, Somersct Levels & Moorsではキ句1, 060ポンドとなる。

このようにESA計回は農業者の参加l実績という点では比較的好調なスター 卜を切ることができたが, しかし重要なことは計画が当初の政策日(1なをどれだ け達成できたかである。 はたしてESA計画は農業環境政策として有効な政策

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表II-2 イングランドにおけるESA計画の参加l実績

(単位: ha, %) 参加実績2)

l件当たり 計 画 ESA 指定面積 適格面積1) 面積 件数 参加|市i積 参加l率

① ② ③ ④ ③/④ ③/②

Broads 29,980 13,780 12.305 712 17.9 89. 3

Pennine Dales 15,974 13,260 9,656 290 33.3 72. 8 Somerset Levels & Moors 27,170 23,470 9,576 745 12.9 40.8 South DownsCEast)3) 26, 738 22, 766 6, 048 135 44. 8 26. 7

West Penwith 7, 176 6,920 5, 846 159 36.8 84.4

Breckland 94, 030 51, 600 3, 645 93 39.2 7. 0

orLh Peak 49,607 45,692 39, 130 75 521. 7 85.6

Shropshirc Borders 21, 358 18,858 16,526 241 68. 6 87.6 Su[folk River Valleys 32, 150 22,690 8, 335 445 18.7 36. 7

'1、est Valley 2,631 1, 413 383 22 17.4 27. 1

合 計 306,814 220,449 111,450 2917 38. 2 50.6

i 1: 1 ) 指定[面積のう ち実際にE S A計画への参加|が可能な土地而航。

2) 1991年末までの累計。

3) 1988年に追加指定された部分(South Downs West)を除く。

山所: MAFF (1991d-1991h ; 1992a)

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といえるのだろうか。

ESA計画の最初Jの5年間はいわば試行JUJ問であり, その聞にMAFFは計 画 のモニタリングを 行うことになっていた。 計画は環境および社会経済のi河川 から評価され, その結果が1991年から92年にかけてESAモニタリング ・ レポ ートとして刊行された(MAFF, 1991d-1991h ; 1992a)。 以下, このレポートを 月]し、てイギリスESA計画のこれまでの成果を分析してみたい。

第2針]

E S

A計画の評佃i:環境モニタリング

Broads地域におけるE S A計画の概要

ESA計画の成果を分析するに当たって, ここで はBroads地域を事例とし て取り上げてみたい。 Broads地域の計画はES A計画のおI�型を提供した最も 先駆的なものである。 Broads計画の槻要を述べると次の通りである。

Broadsはイングランド東部のノーフォーク州( Nor[olk )およびサフォーク 汁I(Su[[olk)に広がる湿地帯である。 河川流域, 平担地, ièl地, 湿地j草地な どが相互依存的な関係を保ちながら1つの湿地帯を形成しているこの地域は,

その生態系と景観の両国で欧州においてユニークな存花である。 そこはまたイ ングランド束部最大の低地放牧混地待としても女!!られる。

ところで, 1970年代から80年代初1)J切にかけ, それまで伝統的な方法で管型さ れてきたBroads地域の草地は, 農業の集約化とくに耕地化によっ てその存在 を脅かされるようになった。 幹線排水路とそれを利川した随|場排J.Kの笑胞によ って, 農業者は地域内に制の自のように走っていた水路を埋め戻し, それまで きわめて水捌けの恐かった草地 を耕地として利用できるようになったからであ

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る4)0

料i 1二質の戸l'積七壊から成るBrnaùsの湿潤草地は, 排水さえ十分に行えばき わめて生産ブJが高く, とくに冬穀物に過している。 しかもこの地域の出産は粗 政でその収益性は穀物生産に遠く及ば、ない。 そのため多くの草地が耕地に転換 され, これまで 保持されてきた湿地帯の諸特徴が失われてしまう危険性が高ま った。

こうした事態に対処するため, 1985年4月, MA F Pと旧陸|地域委員会は共 同でBroads放牧湿地保全計画(BGMCS)を開始した。 それは, 農地を草 地のまま維持し伝統的方法で管理する農業者に年/ha当たり124ポンドの交付 金を支給するという計画であり, これに参加するか否かは農業者の任意とされ た(ちなみに, 平均的な冬小麦作経営の粗収益は, 単収が7.5トン/haの場合 に506ポンド/haであった)。 このBGMCSはおおむね成功を収めたと評価 され, E S A計画の原型となった。 1987年のESA計阿発足とともに, B G M C SはBroadsE S A計画によって引き継がれ, その際に対象地域も大I�,�\に拡 大された(Colman, 1988 )。

Broaùs E S八計画の主な目的は, (1)水年草地を利川]した伝統的な家畜j農業 を維持すること, (2)伝統的方法で管即される政牧湿地や1�� W�採草地の|目的を

拡大する こと, (3)この地域を特徴づけている草地の景観, 出fとt生物, 1佐)l.!_ (I�J 泣跡などを保全すること, 以上の3つに要約される。

これらの円(1なを達成するため, 農業活動の指針となる炭l山竹山規叫が2段附 に分けて設定された。 表口-3に示すように, 農地管理規科の第I段階はねl放 な草地管埋を奨励するものであり, 家畜飼養密度や, 1!1�機質肥料, 殺虫剤, 除 王立剤などの不IJJ日を*'l限した。 第日段階では, 標準(I�な第I 段階の規松に)JIIえて,

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表n - 3 Broads E S Aにおける農地管理規定 第I 段階(年/ha当たり125ポンド支給〉

( 1 )牧草地について

①牧草地を現状維持し, 型起しゃ地ならし, 再婚種を行わない。 チェーン ・ ハローま たはローラ一以外では耕転しない。

②年/ha当たり平均1.9家畜単位以下の密度で, 牛, 羊または馬を 政牧する。 ただし,

いかなる場合も, ぬかるみを作ったり, 過少放牧や過剰j政牧をしない。

③下草またはサイレージ則の牧草の刈取りは年l回に限る。

④干草またはサイレージ用に牧草を刈取る場合, 刈跡に家畜を放牧する。

(⑤無機質肥料の使川量を現状より増やさない。 ただし, 室ポの{史川量は年/ha当たり 125kg, 1回の胞)J巴についてha当たり95kgを超えてはならない。 カリおよびリン酸の 使用量はそれぞれ年/ha当たり75kgを超えではならない。

⑤殺虫剤を使用しない。

⑦イラクサ, アザミ, ギシギシ, サワギクに対する以外は, 除草剤を使用しない。

これらに除草剤を使用する場合, 雑草ワイパーを用い, 地点処理を行う。

@本契約開始後2年以内に, 農業者は大臣の指名する者またはl州本から, 低木の管.illI について書面による助言を得る。

( 2 )林地について

本契約開始後2年以内に, 農業者は大臣の指名する者または団体から, 林地の管理に ついて書面による助言を得る。

( 3 )すべての土地について:

①生坦を維持する。

②池や葦の茂みを維持する。

③心土プラウを使用しない。 暗渠排水やトンネル排水の施工を行わない。 既存の排水 施設の実質的改変を行わない。

①化学薬剤を使用せずに既存の水路を維持する。 農業者がJ.K位を剥節で‘きる場合は,

a)政牧される家畜のために, 水路のノk位を適度な水準に維持する。

b)毎年9月30日から翌年4月1日までは, ノk路の水深を30センチ以仁に保つ。

⑤土地を耕作するにあたり, いかなる史跡も損傷, 破地しない。

⑤農業者は, 法令で認められた建物や道路の建設およびその仙の設備工事を行う場合 には, 予めそれらの場所と材料について大臣に書面による助言を求める。

第H段階(年/ha当たり200ポンド支給) 牧草地について

①毎年3月31日から7月16日までは耕転しない。

②毎年10月31日から翌年4月1日までは家畜を放牧しない。

③毎年7月16日以前は, 干草またはサイレージ用の牧草の刈取りは行わない。

④毎年7n 16円以前は, 芝生の刈込みを行わない。

@農業者は, a)カリおよびリン酸を使用しない。

b)無機質肥料の使用量を現状より増やさなし'10 c)年/ha当たり45kg以上の窒素を使用しない。

⑤スラリーを使用しない。

①土壌の酸性度を下げるための石灰や岩津の使用は行わない。

③水路の浄化をローテーションで行う。

③末端の排水路や小滑を維持し, 掘り起こさない。

IDlJ農業者が水路の水位を制節で‘きる場合, 毎年3月31日から10凡1 nまでは, ノ州立を 欣牧地の地表面下45センチ以内に保つ。

11',所 MAFF, The Environmcntally Sensitive Areas (The Broacls) 0ωignati<】n Orcler.

Slalulory 1llslrulI1ellls, 1986 No.2254, HMSO.

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冬J�J放牧, $)1:起, I二草刈取りなどの1I寺JVJ, スラリーを合む肥料の利川などがき びしく制限され, 夏期に水路の水位を高く維持することも条件とされている。

こうした草地管型に関するもの以外にも, 農業者は, (1)生担, 池, 葦のj支 みを維持すること, (2)林地の管理や建物, 道路, その他のインフラストラク チャーの建設についてMAFFに助言を求めること, (3)歴史的遺跡の破域を 避けること, などを要求された。 そして, その見返りとして農業者は第I段階 で年/ha当たり12 5ポン ド, 第 H段階で同200ポンドの交付金を支給されたo Broads E S A計画は, このような条件に同意する自発的な農業者とMArrと の5年間の協定という形で進められた。 そして, 計画それ自体の進行と同時に,

計画の影響を調査し評価するモニタリングの作業が行われた。

2. Broads E S Aの環境;モニタリング

ESA計四のモニタリングは環境および社会経済のl,fÕ 1(ljーから行われたが, こ こではまず環境而における計画の影響について分析してみたい5) 。 環境モニタ リングの目的は, いうまでもなくES八計画が地域の景観, 生態系, 歴史的遺 跡などの保護あるいは改善にどの程度貢献したかを見極めることにある。 そこ で, 政府系の環境保護団体である旧園地域委員会, 自然保護協議会および失国 文化財協会(English Hcritage)とMAFFとの密政な協議にもとづき, モニタ リングのための基本長制が策定された。 さらに, 各ESAごとの詐先111なモニタ リング手法がMArr 農業振興助言局(ADAS)の地ノjワーキング ・ グノレー フによって開発された。 その際に, E S Aの笑状に詳しい上記の政府系環境保 設[1"1体の地方スタッフ, 地方自治体, 農業と野生生物に関する顧問団(rW A

G) G), 地元の環境保護|寸|体などの意見が 参考とされた。 そして, 実際のモニ

「huFhd

(16)

タリング作業はADA S に所属する航空写点, 生 態学, 民主Ji設計, 1-.1也不u川な どの専門家によって行われた。

Broadsにおける環境モニタリングは, 仙のESAの場合と同様, 1987年から 1990年までの3年間を対象として, (1)上地利用, (2 )生物学的特徴, (3)暦史 的遺跡, (4)景観の質という4つの要素に分けて実施された。

モニタリングでは, まず航空写真を利用して, また必要な場合には標本地域 の実地調査を行って, 基準となる1987年時点の土地利用および景観上の諸特徴 が記録された。 湿潤草地および水路は野生生物の生息地として重要であるが,

これらについては標本地点を選んで詳釧なモニタリングが行われた。 また, E SA 域内にある歴史的遺跡について一覧表が作成され, そのうちの重要なもの についてはモニタリングが行われた。 さらに将来における景観の変化の評価作 業に備えて, E S A全域の景観評価も笑純された。 これらの情報は将来行われ る予定のあらゆるモニタリング作業の基礎となるものである。 それぞれの要素 について 環境モ ニタリングの結果を要約す ると以下の通りで ある( MAFF,

1991d )。

( 1 )土地利10: 基準年である1987年の土地利用調査と1990年の再調査の結果 から, 短!別問とはいえ土地利用に重要な変化が確認された。 E S A計画の導入 によって, 伝統的に管血されてきた草地を耕起して耕荷作物を作付けするとい う長WJ的な傾向が逆転しつつあることがわかる。 表n -4は, E S A指定地域 における耕地および草地面積の変化をみたものであるが, 3年間で耕地が820h

a減少する一方, 草地が770hö1白川|している。

また, E S A指定而般の20%に相当する6,050höを対象としたより詳細!な標 本調査の結果によれば, III放に管QUされた草地(多様で恐が豊富な〉 のl';�')JII半

56

(17)

表日- 4 Broads E S Aにおける耕地 および草地面積の変化

(単位: ha, %) 年次/変化 耕地 草地

1987年 6, 620 13,780 1990年 5, 800 14,550

純増 -820 十770

変化率 -12.4 十5.6

111所: MAFF (1991d)

司t'「片υ

(18)

が25.6%であるのに対して, 集約的に管型された草地(一様で種に乏しい)の それは4.6%と, 環境的に価値の高い草地が相対的により多く拡大している。

すなわち, 草地の量的拡大のみならず質的向上が起こっているわけである。 そ のほか土地利用に関しては, E S A計画の導人以降, 水路の消失率が著しく低

下したことも報告されている。

(2)生物学的特徴: 3年という短期間に生物学的環境の変化について卜分な 分析を行うことはきわめて困難である。 しかもßroads 地域が1988年, 89年と 2年続けて異常な乾燥状態に見舞われたことも分析結巣を読み取りにくくして いる。 とはいえ, およそ次のような結果が明らかにされている。

生物学的に種の豊富な草地が小面積ながら増大したことはすでに述べたが,

いくつかの地点における詳細な調査によれば, 草地の植物学的な価値も低下を 免れており, 場合によっては向上していることがわかった。 しかし, 粘土質土 壊の草地では他物学的価値に悪化の徴候がみられる。 これは近年の高温で乾燥 した夏の気象が影響したものと考えられる。

Broads E S Aではノk路中の水生植物も他物学ílなに重要であるが, これらも質 的に忠化しつつある。 異常気象による早魁や水路への海水の侵入といったE S A 計凶とは無関係の要因による影響!とはいえ, この水 生他物の質的な悪化につ いてはさらに検討が必要である。

(3) J世史的追跡:農業者は歴史的泣跡の保護にはあまり街極的ではない。 し たがって彼らに求められるのは, 遺跡を保護するための何らかの積極的な活動 よりも, 遺跡の�皮lj,ïにつながるような農業活動を避けることである。 歴史的追 跡は, 土地が草地としてよりむしろ耕地として利用されるときに破接されやす く, 草地にするにしても政牧密度が 高 い 場合の方がより被守を受けやすい。

58

(19)

表1I - 5に示すようにt Broadsには数多くの歴史的遺跡が存化するが, こ のうち約4分のlは計画による保護のもとにある。 ESAの導入による伝統的 な草地農業の奨励は歴史的遺跡の保護に役立っている。

(4)景観の質:ESA計画によって草地の耕地化 傾向に歯止めがかけられ,

尽在日の質の向上につながったことは否定できないが, いくつかの大規模な耕極 農場の耕地が計画に参加しておらず, そこでは否定的な変化もみられる。

水路はこの地域の草地体系にとって必須のものであるばかりでなく, 景観に とっても重要な要素である。 計画によって水路の消失率が低下したことは評価 できるが, しかし水路の生態学的な価値とそれに特有の景観の質は低下してい る。 とくに水路や比較的乾燥した草地におけるアザミ( thist1es )の過剰繁勉 には注意を要する。

水路の水位引き上げに関する管理規程が湿潤草地の景観の質の向上に寄与し たことは惟かである。 しかし, 今後のESA計画においてはt 7.K生他物の質I'I�

悪化に歯止めをかけるため水位調節の規程を見直すことが必要になってくるか もしれない。

景観ヒの重要な要素である葦の茂み, 生担, 林地などについては, これまで のところESA計画の効巣が認められないので, それらに関する管理規程の彫

鍛について今後さらに評価の作業が必要である。

Broads E S Aの環境モニタリングの結果を要約すると以上の通りである。 他 物学的な価値の側而で -部に質的悪化の徴候がみられるもののt E S A言|・|国は

環境に対し総じてプラスに作用したものと評価されている7}0

59

(20)

表II - 5 ßroads E S Aの歴史的遺跡

遺跡の種類 個数

風車/風力ポンプ 8 1

その他の建築物 89

クロッフ0・ マーク 15

その他の遺跡1) 59

その他の場所 34

合 計 278

注1 )歴史的に価値のある堀, 養魚池,

工場跡地, 軍事胞設, 交通施設,

城壁, 調理場など。

出所: MAFF (1991d)

60

(21)

1f� 3節

E S

ARI・l面の社会経済的モニタリング

モニタリングの視点、と方法

ESA計画に参加することによって, 農業者は作目や管.illl方法など経営的側 面で農業活動の変化を迫られる。 こうした変化が農業者の所得や態度にどのよ うな影響を及ぼすかは, 計画を評価する際に考慮、すべき重妥事項である。 そこ で, E S A計画の社会経済的モニタリングが次のような3つの視点から行われ た。 第1に, 計画が農場における投入, 産出および所得に及ぼした影響を推計 する。 その際, 参加者が保有する計画不参加地で生じた変化も考慮する。 第2 に, 言|ー|固により削減された生産量を推計し, 期待される財政貸別の節約を計算 する。 第3に, 計画参加者および不参加者の環境保全に対する態度を調べる。

以上の3つである。

社会経済的モニタリングの実際の作業は, この分肝で�jprJ (I�な調査能力をも っ機関に委託された。 イングランドでは, とくに立ち入った分析が計画された

3つのESAについて, ニューキャッスル大学(Pennine Dales)とマンチェス ター大学(North Peak, Suffolk River Valleys)が委託先に選ばれ, それ以外の ESAについては, Robertson Gouldコンサルタン卜社に委託された。 ウエール ズでは, ウエールズ大学Aberystwyth 校がモニタリングを引き受けた。 したが って, ここで利川したBroadsE S Aのモニタリング ・ レポートはR ・ C ・コ ンサルタント社による簡略モニタリングの結巣である。

Broads E S Aの社会経済的モニタリングは他のESAの場合と同僚に, J.造業 者に対する詳細|な1m 接調査をもとに行われた。 調査の対象となる棋本農業者は,

)国別無作為抗11 山によって, E S Aの各段階から選ばれた。 農業者への訪問調査

61

(22)

は1989年12月に実施されたが, その時点でßroadsでは約12.OOOha (通俗面積 の88%)の土地が計幽に参加していた。

調査は79の農場に対して行われ, それらのESA参加而績は合計2.866haで­

あった。 このほかに標本農業者はESA 域内に901haの計画不参加地とl.544ha の参加l不可能な土地を保有しており , さらにESA 域外にも8631haの土地を保 有している。 したがって, モニタリングが及んだ土地而績の合計は13.942haで・

あった。

2. 標本農場の性格

Broads計画に参加した農業者の保有地の多くは耕穂生産に利用されており,

それらはESA域外の比較的標高の高い場所に位置している。 ESA域内の土 地はそれらの主経営地に隣接するものであったり, あるいはそこか ら離れたJI�

び地であったりする。 また, 計画に参加している土地は農業に無関心な不在地 主の所有地であることが多く, その多くは地元の農業者に1 i-j:.契約の放牧利用 権として貸し出されたものである。

ここで, モニタリングの対象となった標本農場をさらに詳しく分析してみよ う。 まずI 79の標本農場を仁地保有形態yJIJに分類すると表口- f)の通りである。

同表によると, 自作農場が47 ( 59%)で最も多く. 1 J足場主Iíたり平均保有I(tï的

〈若干の短期借地を含む〉 は161haで・ある。 一方, 借地農場は9 (11 %)と数 は少ないが, その平均保有面積は215haで・肢も大きし'10 残る23 (29%)は11作 地と借地を合わせもつ混合保有形態の農場であり, その平均保有面積は192ha である。

砂くに, 表日一7は, 標本農場のES 八 参加l状況を管理規程の段階別に示して

62

(23)

表II-6 標本農場の土地保有状況(1988/89年〉

(単位: ha)

保有形態 l農場

保有地 当たり

農場数 総面積 自 作地 長}切{昔I也 短期借地1) 保有面積

自作農 47 7, 586 7, 523 63 161

借地農 1. 935 1,930 215

小作農 23 4,421 2, 053 2, 101 267 192

合計 79 13,942 9, 576 4,031 335 176

注1 )家畜放牧利用権, その他2年未満の借地。

出所: MAFF (1991d)

63

(24)

表II-7 標本農場のESA参加1状況(1988/89年)

(単位: ha)

ESA参加面積 l農場

保有地 当たり

農場数 総面積 合計 第I段階 第E段階 参加面積

第I段階のみ参加 43 7, 355 1. 228 1. 228 28.6 第E段階のみ参加 13 988 254 254 19. 5 雨段階とも参加 23 5, 599 1, 384 947 437 60. 0

合計 79 13,942 2,866 2, 175 691 36.3

出所: MAFF (1991d)

64

(25)

いる。 それによると, 管理別利の第I 段階にのみ参加したのは43農場(54%) で, 1農場当たり平均参加l面舶は28.6haである。 同じく第u段階にのみ参加し たのは13農場(16 % )で, 平均参加l面積は19. 5haで-ある。 残る23農場(29%) は第1 , 第Hの両段階とも参加しており, それらの平均参加l而積は60haと最も

大きい。

さらに, 表]] - 8は標本農場の経営形態別分布を示している。|司表によると,

標本農場の多くは耕極作物経営(60%)であり, それ以外に酪農専門経営(14

%) , 耕種作物と牛, 羊飼養を組合せた複合経営(11%) , 穀作専門経営(8

%)などもみられる。

巌後に, 標本農場の経営規模別分布が表II - 9に示されている。 ここでは経 営規模の単位としてBSUが用いられているが, これはいわば経営の収益力を 不す指標である。 すなわち, 各作物や家畜ごとにがとめられている単位面積ある いは単位頭数当たり標準粗収益(SG M)をもとに, それぞれの経営の作什|面 積や飼養頭数に応じて経営全体の潜在的収益力を削IJる尺度である8 )。 同表によ ると, 標本農場全体の42%は4 8 S U未満の兼業農場によって占められ, 小規 模(4'""16BSU)および11'規模(16'""408 S U)の専業農場はそれぞれ30%,

21 %と比較的少ない。 また, E S A参)]11 )農場の111で40B S U以l二の大別模専業 農場が占める剖合はほとんどゼロに近い。

3. E S A計画が農業経営に与えた影響

( 1 )農場における投入量の変化

ここで, E S ^計画が農業経営にどのような影 響を及ぼしたのか分析してみ よう。表口一10は, 言1-凶の導入により棋本農場の作物作付がどのように変化し

65

(26)

表II-8 Broads E S A参加農場の経営 形態別分布(l988/89年〉

(単位: %)

標 本 ESA 経営形態 農 家 全 体

酪農専門経営 14 8 耕種作物, 牛, 羊経営 11 13 穀作専門経営 8 11 耕種作物経営 60 57 養!琢, 家禽専門経営

果樹/園芸専門経営

無家畜経営 7 5

合 計 100 100 出所: MAFF (1991d)

66

(27)

表II - 9 Broads E S A参加l農場の経営 規撲別分布(1988/89年)

経営規模(BSU) 1)

兼業 (4 B S U未満) 小規模専業(4'""16BSU) 中規模専業06'""40BS U) 大規模専業(40B S U以上〉

不明

合 計

(単位: %)

標 本 ESA 農 場 全 体

42 51

30 35

21 8

7

100 100

注1) lBSUは2. 000 E C U (1978 '""80年平均 のfdlÎ絡で〉の農業粗収入に相当する。

出所: MAFF (1991d)

67

(28)

表IJ -10 ßroads E S A計画に伴う 標本農場の作物構成の変化

(単位: %) 作

穀 類 飼料作物 根菜類 その他 林地など

1986/87年 1988/89年

円,lFhJnぺU円tenkun4dn〈.u'li

nHunノ臼aH1nhunHU4斗AnぺU21A

合 計 ----A nHU nHU -aEaA ハHunuu

出所: MAFF (1991d)

6 8

(29)

たかを示している。 1986/87年度と1988/89年度の作付IÎIÎ磁の桃成比をみると,

小麦, 大麦などの穀類は作付比率が低下しているのに対して飼料作物の比半は 高まっている。 これは, E S A計画に参加するために草地に向転換された耕地 が188haあり, また飼料作用に新たに借入された土地も187haあったためである。

後者はES^の管理規程すなわち家畜飼養密度や肥料使川量の制限に伴う飼料 生産力の低下を補うためのものである。

次に, 家畜飼養密度の変化をみると, 調査期間中の政牧家畜単位数(G L U) は主として羊飼養頭数の増加により, 標本農場全体で約2%地力LIした。 それに

もかかわらず, ha当たりの家畜飼養密度は1. 84 G L Uから1. 82 G L Uにわずか ながら低下した9 )。 これは農業者がESA 域内において187haの土地を短JVJ借 地の形で追加したためである。

一五地に対する肥料, 農薬の投入量をみると, E S A参加に伴う窒素肥料{吏川 量の変化が表口-11に示されている。 管.0l規松の第l段階と第II段附で窒素使 用量はそれそれ35%, 50%減少している。 また, 表には示されていないが, 除 草剤lの使用量もESA計画以前に比べると第I , 第日の各段階でそれぞれ75%,

66%の減少がみられたと報告されている。 その反而, 計画に参加してない草地 では窒素肥料の使用量がha当たり平均222kgから245kgに地力11している。 これは 少数の集約的大規侠農場が管理規程の影響を軽減するため, E S A 域内および 域外のー11寺(I�J草地に肥料を地投したためである。 したがって, 相対的に小さな 範凶内ではあるが, E S A域内および域外において計画の悪影響が確認される。

(2)農業生産と費用の変化

ESA計画の導入に伴う農業生産の変化については, 穀類作物の生産減少が

表rr -12に示されている。 ESA計画の紡呆, 耕地が草地へ再転換され, 泊�n目

69

(30)

表II -11 Broads E S A計画に伴う標本 農場の窒素肥料使用量の変化

第I段階 第H段階

(単位: kg/ha)

計画前 計画後

156 69

101 35 出所: MAFF (1991d)

70

(31)

表II -12 ßroads E S A計画に伴う標本農場の 穀類作物の生産の減少(1988/89年〉

(単位 ha, トン)

生産が減少した理由 生産量

/穀類 面積 単収 の減少 耕地の草地への転換

小麦 124 6. 2 769

冬/春大麦 10 5.3 53 冬/春作豆類 30 3. 9 117

冬作菜種 24 3. 1 74

湿潤放牧地の不耕作

冬小麦 35 7. 8 273

計画不参加の耕地を 草地として利用

冬大麦 13 6. 2 81

朱作菜種 12 3. 0 36

合計(平均) 248 (5.7) 1.403 Iil所: MAFF (1991 d)

7 1

(32)

草地の耕地化に歯止めがかかり, また, 本米の耕地が草地として利川されたり したため, 桜本農場全体で年間約1.400トンの穀類作物の生産が減少した。 他 ノJ, 家畜飼養頭数は1988/89年度の1年間に, 肥育LIこでは30fiß, 度乳ι|二(sucler

CO\V )では33頭, 雌羊では413頑が増加した反田, 搾乳牛と乳用育成牛ではそ

れぞれ12頭, 7頭の減少をみている。

次に, 費用の変化をみると, E S Aの管理規程に従うことで合計20,100ポン

ドの飼料費が削減された。 その上, 予定されていた家畜生産の拡大が中止され,

さもなければ増加したであろう飼料費も約8,000ポンド節約された。 それゆえ,

合計28.100ポンドの飼料費が節約されたことになる。 しかし, その反面, 管理 規程にもとづく生産粗放化の影響を相殺するため短期の借地が行われ, それに 年間16.700ポンドの地代が支払われた。 これは節約された飼料費総額の60%に 相当する。 結果として• 1988/89年度における飼料費の節約分は標本農場全体 で11, 400ポンド. 1農場当たり平均144ポンドであった。

(3)農業所得の増加1

それでは. E S A計画は標本農 場の農業所得に どのような影響を及ぼしたの であろうか。 表1I -13によると, 1988/89年度において, E S A訂.[11Jjへの参加|

は桜本農場全体で年間約274,400ポンドの所得(税込)のNl )Jllをもたらした。

これは, 1農場当たり3.475ポンド, ha当たりでは96ポンドのNl )JIIであり, 第 I段階のha当たり交付金125ポンドの77%に相当する。

4. 標本調査にもとづく全体の推計

標本調査の結果をもとに, Droads E S A計画全体について彫響を位計する と, 1988/89年度において. E S A計画に参加した農業者の所得(税込)は全

72

(33)

表II -13 Broads E S A計画に伴う標本農場 の農業所得の地加(1988/89年)

(単位:ポンド〉

収入/支出の地加 金額

ESA交付金収入 +410,100 家畜および作物部門 -113,500

の粗収入の減少

家畜飼料費の節約 +28,100 借地料の増加l -26,800 その他の貨川の増加| -23,500 農業所得のJ削111) -j 274,400

l農場当たり所得の塙1JII -j 3,475

1 ha当たり所得の増加 十96

注1 ) 標本農場全体の所得(税込) の噌加0 /J\所: MAFF (1991d)

73

(34)

体で約117万ポンド、Il刊11したものと推計される。 1農場当たり平均1,751ポンド の地)JIIであり, これはさきにみた1標本農場当たりの地}JII傾よりもし724ポン ド少ない。 このことは, 標本農場のESA参加1面積の平均値が全体の平均値を 上回っていたことを反映している。

一方, 農業生産の変化をみると, E S A全体で耕種生産が年間5, 875トン減

少し, 家畜は皮乳牛が138頭, 雌羊が1,700頭以上, それぞれ増加したものと推 計される。

さらに, E S A計画に要した財政費用の推計が表II -14に示されている。 そ

れによると, 1989年度において, Broadsの農業者が受け取ったES八交付金 の総額は約174万ポンドであった。 一方, E S A計画に伴う生産の転換や粗放 化の結果, 農業生産が減少したため, 支出されなかった何lî絡支持費, いわば節 約額は147,800ポンドであった。 また, 計画に�した経貨の-m� (57,400ポン ド)がE C規則lに従ってFEOGAから払い反された。 これらを合計ーすると,

Broads計画全体の財政費用は約153万ポンドであったと批計される。 ただし,

これにはモニタリングのための貸用やその他のESA行政に必裂な管出貨は含 まれていない。

5. E S A計画に対する農業者の態度

「なぜ計画に参加したのか」という質問に対して, 桜本農業者の58%は金銭 的収入のI自力11をその理由として挙げている。 それ以外に16%の炭業者が環境保 会を参加理LÍJとしてあげ, 残る28%の農業者は「分からない」と答えるか, あ るいは無回答であった。 しかし計画が更新され, 交付金その他の条件がこれま でと同等のものなら再び参加したいと答えた農業者は全体の93%に上った。 た

74

(35)

表日-14 Broads E S A計画の財政費用 (1988/89年度)

(単位: 1, 000ポンド) 支出/節約 第I段階 第H段階

農業者への交付金 1, 133.8 606. 7

生産粗放化に伴う -138.4 -9.4 価格支持費の節約

EC 財政からの ナムし、戻し金 財政上の純費用1)

注1) E S A行政の管理費を|徐く。

出所: MAFF (1991d)

75

合 計 1, 740. 5

-147.8

-57.4

1. 535. 3

(36)

だし, 若干の農業者は, 除草剤の使用を制限することに疑問を呈した。

農業者が計画に参加しない最大の理由は, 交付金の率の低さにあるというの が計画参加者の考えである。 副次的に, 計画への参加は自由な農業活動の制限 を意味するという理由, あるいは収益性の低下がその理由として挙げられてい る。

標本農業者のうち85%の農業者は, E S A指定以前から環境問題に対して非 常に, あるいは, ある程度関心を抱いてきたと述べており, 同じく55%の農業 者は値樹や池, 生垣の管理など, 農場の環境保全に役立つ作業をこれまでも円 常的に行ってきたと答えている。

6 社会経済的モニタリングの要約

Broads E S A計画の社会経済的モニタリングの結果を要約すると次の通りで

ある。 第1に, 計画参加者の半数以上は農業手II収益基準でみて兼業農業者に分 類され, 3分のlは小規模専業農業者に分刻される。 また参加者の大半は穀物

生産を経営の主な柱としているという特徴がみられる。

第2に, 計画が農業活動に及ぼした最大の効呆は耕地の草地への再転換であ った。 これによって財政費用がかなり節約された。 また, 草地では肥料や除草 剤の使用量がかなり削減されている。 しかしながら, E S A 域内あるいは域外 における計画不参加地では, それを相殺する形で肥料や除草剤の使Jl]がより)jllし た所も見受けられる。 つまり, 一方における粗放化を他方における集約化で相 殺しようとする動きがみられるのである。

第3に, 放牧家畜単位の総数は主に羊の頭数増加により増大したが, 計画に 参加した草地の生産性低下を補うべく農業者が新たに土地を借り入れたため,

76

(37)

計画i参加農場の草地而積当たり飼養家畜ìïjj数はわずかながら低下した。

第4に, 計画に参加した農業者の所得はI皆川1したが, 規模の大きい農業者ほ ど, より多く恩恵を受けた。 一般に, 第I段階の管理協定に参加した農業者よ り第H段階のそれに参加した農業者の方がより多くのESA交付金を手にして いる。 農業者の大半は経済的な理由から計画に参加した。 そして, 彼らのほと んどは交付金, その他の条件に変更がなければ, 引き続きそれに参加したいと 考えている。

第4節 ESA計画の展開と課題

第1次E S A計画の改善

第1次ESA計画の最後の年にあたる1991年の6月に, M A F Fはこの計画 の見直し作業を開始した。 その際, これまで分析してきたESAモニタリング

・ レポートが利用されたことはいうまでもない。 また, モニタリングとは別に ESAに関する世論調査も行われた。 それらを踏まえて, E S A計画は, 1992 年以降, 次のように改善されることになった。

第lに, 計画期間が5年から10年に延長された。 これは, 計画の長JVJ化によ って政策に安定j惑を与え, 農業者の参加率を高めることを1llったものである。

計画期間が長いほど参加者は将来の見通しをたてやすくなるからである。 しか し, その反面, 長期化にはリスクも伴う。 一定の条件のもとに長く縛りつけら れるからである。 そこで, 期間10年を基本としながらも, 5年経過したH寺点で 協定を終了させることもできるオプションが与えられている。 MAFFはその

時点でESA協定の条件を見直すとしている。

勺ーワi

(38)

第2に, E S A交付-金の支給率は2年ごとに見凶され, そのときどきの農業 経済の状況に応じて増減されることになった。 この点については, これまで明 確な取り決めがなかった。 ただし, それはインフレ率に応じて自動的にスライ

ドさせられるものではないとされている。

第3に, 新たに保全計画というオプションが導入された。 これはESA計画 に参加した農業者ならだれでも巾請できる計画である。 その犯いは農場の環境 保全につながる投資を促進することである。 たとえば, 生垣や池の新設, 農場 の納屋の改修などがこれに含まれ, 農業者はそれらの作業に要した費用の一部 を補助される。 保全計画の対象となる作業項目は各ESAごとにメニュー形式 で示される。 保全計画はESA協定に参加するとき, あるいは協定の途中でも 申請することができる。 保全計画の期間は最低2年間で, 補助金支給額につい ては作業種目ごとに, また協定1件ごとに上限が設けられている。 農業者は作 業種目ごとに定められている標準的経費率か, あるいは証拠書類があれば, 実

際の経費をもとに補助金を請求できる1 0)。

第4に, 計画参加者は義務として1991年に定められた「水質保護のための適 正営農準tliJJ (MAFF, 1 99 1a) , および今後定められる予定の「大気保護およ び土境保護のための適正営農準則」を遵守することを求められている(MAFF

] 992b )。

以上の4点はすべてのESAに共通する制度上の改善である。 砂くに各E S八 に固有の改善策についてみると, たとえばßroadsでは, 第lにESA指定地

域が拡大され, 計画がWaveney川上流およびWensom川流域にまで及ぶことに なった。

第2に, 農地管理規程が改善され, 第I段階では, lHf機質肥料のみならず有

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(39)

機質の自給肥料についても使用量に制限が加えられることになった。 その一方 で, これまであった家畜飼養密度の制限条項(年/ha当たり卜9家畜単位以ド) が削除され, 飼養密度の適正な水準は農業者の判断に委ねられることになった。

また, 第日段階の管理規程では, 水路の水位に|刻する規程を強化するとともに,

サイレージ作りを全而禁止とし, 有機質肥料および化学肥料(窒素を除く)の 使用の禁止, 計画参加後2年以内に水路の管理計画を提出すること, などの規 桂が新たに設けられた。

第3に, 第皿段階として, 越冬する鳥類を保護するために特別の草地管理規

程が新設された。 さらに, 第W段階として, 耕地を草地に転換したり(オプシ ョン1 ) , 耕地の周囲6メートル|隔の土地を休耕すること(オプション2)を 奨励する管理規程が新設された。 これは, 耕地の草地への転換によって景観の 質が改善されたという過去5年間の経験にもとづき新設された規程である。 こ の場合, 転換後の草地は第 I 段階の管理規程に従うことになる。

Broads E S Aにおける主な改善事項は以上の:ìillりであるが, Broads以外のE SAについてもほぼ同様の改善がなされた。 ちなみに表IJ - 15は, 1992年から の新計画で録用されたESA交付金の率と保全計画に対する補助金の限度制を 示したものである。 同表から新計画では炭I血管理刻程の先111分化が進み, 交付金 の 率も引き上げられていることがわかる。

2. E S A計画の課題と展望

最後に, E S A計画についていくつか問題点を指摘しておきたい。 第lは,

予算が限られている点である。 たしかにESA計画の発足により, 農業予算の 苦ßが環境保全の目的に支出できるようになった。 しかしながら, この計画に

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表rr -15 新ESA計画のもとでの交付金の率と 保全計画への支給限度傾(1992年度)

(単位:年/ha当たり, ポンド)

農地管理規程の各段階1) 保全計画2) ESA

E 皿 W A B

Broads 125 220 250 200 280 75 3. 000

Pennine Dales 90 125 210 25 100 3. 000

Somerset L & M 120 180 70 350 75 3. 000

South Downs 40 200 240 60 75 3.000

West Penwith 65 100 4. 000

注1 )段階Iは標準的な管理規程, 段階rr. III. IVはオプションO なお. Broadsの第IV 段階とPennine Dalesの第I段階はそれぞれ2つのオプションに分かれている。

2 )保全計画のAはha当たり. Bは協定l件当たりの支給限度額。

IHJ川: MAFF (1992d)

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対する政府の財政文出は, イギリス農業予算全体の規模からみるとがとして多く はない。 表H一16によると, 農業予算の8割以上は仙i格支持や市場介入などの 価絡政策に費やされ, 残りが農業構造 ・ 環境政策, その他の特別対策に充てら れている。 E SA計画に支出された予算は, 計画l 年目の290万ポンド(19871 88年度)から6年目の1. 390万ポンド(1992/93年度)まで年々地11 }JfIしてきてい るl l)0 にもかかわらず E SA予算が農業予算全体に占める割合はきわめて小

さく, 1992193年度でわずか0.7%にしかすぎない。 環境保護団体などが最も不

満とするのはまさにこの点である。 生産過剰のもとでなお農産物の生産奨励に 使われている資金をもっと環境保全のために回すべきである, というのが彼ら の主張である(Jenkins, 1990 )。

第2に, 同様のことがESA指定面積についてもいえる。 すなわち, この計 画に指定された而積はイギリス国土のわずか3%程度であり, 環境保全の立場 からすれば, とても卜分なものとはいえないln。 また, 集約的で収疏性のl克 い農業がすでに広く展開している本絡的な炭業地域が, 初めからESA計画の 持外に置かれているのも気になる。 しかし, これはある意味で当然のことであ る。 そのような地域では, 農業活動によって環境全体が改変されてしまって,

保全すべき景観も保護すべき野生生物も, もはや何程も残っていなし1からであ る。 そこでは, E S A計画に代わる別の農業環境政策が求められているといえ

ょう13)0

第3に, E S Aの制度自体にも問題がある。 すなわち, この政策に貨同して 計画に参加するか否かは農業者の任意とされている。 したがって初めから全く

参加しない者や, 農場の一郎 の上地での み計画に参加し, それでi:}た交付金を 残りの土地の集約的経営に注ぎ込む農業者が/1\てくることは十分ありうること

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表II-16 イギリス農業に対する財政支出

(単位: 100万ポンド) 1987/88 88/89 89/90 90/91 91/92 92/93

I価格・市場政策 1393.6 1159. 1 1015.4 1641. 1 1664.7 1726. 1 (86.2) H農業構造・環境政策 72. 4 65.6 72. 9 83. 1 77.6 76. 9 (3.8) ESA計画(内数) 2.9 6. 8 8. 6 9.4 11. 0 13.9 [0.7]

田条件不利地域(L F A)対策 145.9 137. 1 150.6 159. 1 184.2 161. 7 (9.0) W その他 18. 1 18.2 19. 1 26.4 32. 0 38.3 ( 1. 9)

合計( 1 +日十回+IV) 1630. 0 1380. 1 1258.0 1909.7 1958.5 2003.0 (100.0) IU所: MAFF (1990 ; 1994)

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である(Ba1dock el al.) 1990)。 そうした場合に地域の環境が保全できるかど うか疑問である。 だからといって, この計画を強制参加lにすることには農業者 側に強い抵抗がある。 また, 仮に強制的なfHlj度に変えたところで, 政策効果が 上がるという保証はない。 環境保全ということがらの性質上, 農業者の自発性 という要因が大きくものをいうからである。 それゆえ法的強tlJlJではなく, むし ろ経済的誘因によって農業者の自発性を尊重しつつ環境保全をはかる, という のがESAの哲学である。 しかし, その場合にも経済的誘因はどの程度である べきかという問題が残る。 それは農業者を満足させると同H寺に納税者を納得さ せるものでなければならない。

このように, E S A計画はいくつかの問題点を抱えている。 とはいえ, この 計画はイギリスのみならずECにおける農業環境政策の先駆的存花であり, 実 際, この計画は, 農業と環境を調整する政策として農業関係者のみならず一部 の環境保護団体からも好意的に迎えられたのである( Pntter. 1988 )。

イギリスのガマ- (101m Gummer)農相(当時〉は, 1991 年11月20日の議会 答弁で, r E S Aは1987年に最初に導入されて以降, 著しい成功を収めてきた」

と評価した上で, 計画を大|隔に拡大する方針を打ち/J\した。 それによると, M Arrは1992年と93年の2年間にイングランドで新たに12のES八を指定する とともに14), E S A予算もこれまでの約1, 300万ポンドから1994年には6,500 万ポンドにまで増額する予定である。 既存のESAの拡張と合わせると, E S A指定面積はこれで3倍以上に膨らむことになる(MAFF, 1991b )。

このように, イギリスのESA計画は5年間の試行期間をほぼ成功担に終え,

新たな制度として再出発することになった。 ところで, さきに:ìZßべたように,

ESA計画はE C規則にもと づく農 業 環 境政策であり, イギリス以 外のE C加

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�MI国においても実胞されている。 E C委員会の報告によればI 1990il�までにE SA計画を実施したのは, イギリス, ドイツ, オランダおよびデンマークの4 カ国でありI 1991年からはフランス, イタリア, アイルランドが導入を予定し ている( CEC, 1992a )。

ESA計画は, このようにECの北部の国々で笑施されているが, ギリシア,

スペイン, ポルトガルなどの南部では, いまのところ導入の予定はない。 これ らの国々では農林業の衰退や過疎化に伴う土壌流出, 山火事の頻発などが問題 となっているが, E S A計画はそうした問題に十分対処することができ ない。

なぜなら, E S Aの目的が自然、の生態系や景観の保全にあり, 地域指定の要件 も厳しく制限されているからである。 しかし, こうした問題はI 1992年のCA P改革によって導入された農業環境行動計画のもとで対処されることになろう。

同計画には土壌流出, 洪水, 山火事などの自然、災害をも視野に入れた環境対策 が盛り込まれているからである。 この点については次章で改めて言及すること にしfこし'0

、王

1 )イギリスでは, 農業と環境の対立を調笠するため , すでに1981 年に「野生 生物および田園地域法J (Wildlife and Countryside Act )が制定されていた。 し かし , この法律は農業と環境をめぐる社会的対立をかえって大きくするような 弱点を含んでいた。 Adams (1986) I 後藤(1986)および和泉(1989)は同法制 定をめぐる動きを興味深く分析している。

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2)川Illil凶がfEOGAから払い戻しを受けることのできる最高額は, 普通の 地域で年/ha当たり100ECU, 条件不利地域( Less Favoured Area)で同60 E

CUまでとされた(是永, 1989)。 この最l臼-制は, その後, 1991 年に150.5 E CUに引き上げられた(合田 ・ 西岸, 1992)。 なお, FEOGAは農業指導保 証基金のフランス語の名林Fonds Europeen d'Orientation et de Garantie Agricoleのイ ニシャルである。

3)ただし, 農漁業食糧大臣はESAを指定する際には, 大蔵省の承認を得る とともに, 指定すべき地域と, 保全, 改善あるいは保護すべき内容とについて,

環境大臣, 田園地域委員会( Countryside Commission )および自然保護協議会 ( Nature Conservancy Council)に諮問しなければ‘ならない(福士, 1988a)。 田

園地域委員会および自然保護協議会はともに環境省の外郭凶体であり, 景観の 保全や野生生物の保護のための活動を行っている。 なお, 自然保設協議会は混 在, 英国の自然( English Nature )に改組されている。

4) Nor[olkの州都NorwichのMAff地方事務所で実際にESA行政を担当し ているADASの峨員によると, Broadsの水路は草地の所有権を|天分する境

界線でもある。

5) Broaùs E S Aの環境モニタリングについては, すでに桁他(1992)が「ブ ローズの環境影響中間報告書」を用いて分析を行っている。 この頃の記述は桁 他氏の研究に負うところが大きい。

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参照

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