九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
TRPC3-Nox2複合体のドキソルビシン心筋症における 役割
島内, 司
https://doi.org/10.15017/1931757
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(医学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(別紙様式2)
氏 名 島内 司 論 文 名
TRPC3-Nox2 complex mediates doxorubicin-induced myocardial atrophy
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 筒井 裕之 副 査 九州大学 教授 塩瀬 明 副 査 九州大学 教授 今井 猛
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
心臓への血行力学的負荷が持続的に低下すると,心筋は衰弱し萎縮する.ドキソルビシ ン(Doxorubicin: DOX)は様々な悪性腫瘍に有効な抗腫瘍薬であるが,累積投与により心 筋萎縮を伴った心機能低下(心不全)を起こすことが問題視されている.DOXによる心毒 性の主たる原因として、過剰な活性酸素種 (Reactive oxygen species: ROS)の生成による 酸化ストレスが指摘されていたが、ROS生成の詳細な機構は不明であった。本研究におい て,申請者は非選択的陽イオンチャネルであるTransient receptor potential canonical 3 (TRPC3)を抑制することでDOX誘発性のROS生成および心筋萎縮が抑えられるかどうか を検討した。DOXは心筋細胞において低酸素ストレス依存的にNADPH oxidase 2 (Nox2) とTRPC3タンパク質の発現を上昇させ,TRPC3-Nox2複合体依存的にNox2由来のROS の産生を増大させた.TRPC3のNox2相互作用部位であるTRPC3-C末端ペプチドを心筋 細胞特異的に発現させ、TRPC3-Nox2 相互作用を阻害したところ,DOX による心筋萎縮 および左室機能低下が抑制された。一方,DOX誘発性のマウス心毒性は自由運動負荷によ っても軽減される。自由運動負荷を与えたマウスでは心臓のTRPC3-Nox2発現量が低下し 左室コンプライアンスが上昇していた。TRPC3欠損マウスにおいても自由運動負荷を与え たマウスと同様に左室コンプライアンスの上昇が認められた。以上の結果は,TRPC3が容 量負荷に対して心筋が伸展しすぎないよう負の制御因子として働くことを示唆するととも に,病的なTRPC3-Nox2複合体形成がDOX心筋症の新たな治療標的となりうることを示 唆している。
以上の成績はこの方面の研究に知見を加えた意義あるものと考えられる。本論文につい ての試験はまず論文の研究目的、方法、実験成績などについて説明を求め、各調査委員よ り専門的な観点から論文内容及びこれに関連した事項について種々質問を行ったがいずれ についても適切な回答を得た。
よって調査委員合議の結果、試験は合格と判定した。
なお本論文は共著者13名であるが、予備調査の結果、本人が主導的役割を果たしてい ることを確認した。