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奥山廃寺(奥山久米寺)の 調査

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Academic year: 2021

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奈文研紀要 2016

1 はじめに

 本調査は、奥山廃寺における個人住宅の建て替えにと もなう発掘調査である。発掘調査期間は2015年12月14日 から18日まで、発掘調査面積は8㎡である。

 周辺の既往の調査から、調査地は奥山廃寺の中心伽藍 にあたる。そこで、東面回廊の検出が予想される位置に 南北1m×東西8mの調査区を設定した。

2 調査の概要と成果

 基本層序は、①表土、②明褐色砂・赤褐色土・白色 土(近現代盛土)、③黄灰色砂、④暗褐色土、⑤黄褐色砂、

⑥黒褐色砂・砂礫層で、⑤の上面が遺構面である。

 ③の黄灰色砂は標高95.7m付近で検出し、瓦と土器片、

礫を多く含む中世包含層である。その下層では調査区全 体にわたって黄褐色砂を検出した。調査区東側では黄褐 色砂上に暗褐色土が堆積する。暗褐色土および黄褐色砂 上面は標高95.6~95.7mである。暗褐色土の性格は不明 であるが、土器細片を含むことから少なくとも中世以前 の包含層とみられる。

 黄褐色砂は角礫を少量含んでおり、山土に由来すると 考えられる。比較的均質な土層で、層中にラミナを観察

奥山廃寺(奥山久米寺)の 調査

-第185-10次

図₉₆ 第₁₈₅︲₁₀次調査区遺構図・南壁土層図 1:₆₀

Y‑16,415 Y‑16,410

Y‑16,415 Y‑16,410

X‑167,966

H=95.60m W

E

0 2m

SX390 SX390

地山 整地土

図₉₅ 第₁₈₅︲₁₀次調査区位置図 1:₁₀₀₀

101.8 98.2

93.5

95.6 95.8

97.7

99.0 94.1

95.1

99.8

100

98 92

96

97

97

96 96

95

96

105 95

95

100 101

98

93

93

明 日 香 村

宮    川

奥山集会所 奥山久米寺

 天理教飛鳥川分教会

奥山久米寺1972 奥山久米寺   1972

奥山久米寺1972

奥山久米寺1972 奥山久米寺1972

奥山久米寺1973  塔の東方

奥山久米寺1973中門南側 奥山久米寺 1974‑A 奥山久米寺

1975‑C

奥山久米寺 1976‑A

奥山久米寺 1976‑D

奥山久米寺 1977‑D

奥山久米寺1978‑B

奥山久米寺 1978‑B

奥山久米寺 1980‑A

奥山久米寺 1982‑B 奥山久米寺 1985‑1次 奥山久米寺1987‑1次

奥山久米寺1987‑2次

奥山久米寺1989‑1次 奥山久米寺1992‑1

奥山久米寺1995‑1次 奥山久米寺

1995‑1次

奥山久米寺 1995‑1次 奥山久米寺

1995‑1次

奥山久米寺1995‑1次 114‑8次

185‑10次

185‑16次

0 30m

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Ⅱ-3 飛鳥地域等の調査

できないことから、人為的な整地土であると判断される。

 黄褐色砂の下層では、調査区西半で黒褐色砂層が堆積 し、さらにその下は地山の砂礫層となる。黒褐色砂につ いては、砂礫層に応じて上面に起伏がみられることから 自然堆積とみてよい。以上の砂礫層および黒褐色砂から なる地山面は、調査区東半で深さ0.4mほどの窪地状を 呈する。前述の整地土はこの窪地を埋めるように施され ている。

SX₃₉₀

  断面が緩やかな円弧を描く素掘り溝状の遺構 である(図97・98)。調査区北壁際で幅約30㎝、同じく南 壁際で約50㎝であり、検出面からの深さは約0.2mであ る。黄橙色を呈するしまりの強い土を埋土としており、

人為的に埋められたものと考えられる。埋土上層から比 較的まとまって古代の瓦片が出土した(図97)。

3 遺 物

瓦 類

  表土と黄灰色砂および溝状遺構を中心に、丸 瓦30点(2.9㎏)、平瓦183点(15.1㎏)が出土した。黄灰色 砂出土のものには中世の丸平瓦が含まれるが、SX390か らは格子タタキなど古代の特徴をもつ瓦片のみが出土し ている。

土 器

  整理用木箱で1箱分の土器が出土した。いず れも細片であり、図化に堪えるものはない。主に黄灰色 砂から時期不明の土師器・須恵器のほか、中世の瓦器椀 片が出土している。

4 ま と め

 小規模な調査であり、検出遺構は溝状遺構SX390のみ

であった。しかし、SX390は推定東面回廊の西端にあた る位置での検出であり、埋土に古代の瓦のみを含むこと から、少なくとも奥山廃寺存続時か廃絶から間もない時 期の遺構と考えられる。東面回廊内側の雨落溝、もし くは基壇外装の抜き取りである可能性がある。ただし、

SX390は平面形が不整形で、既往の調査では、西面回廊 外側で素掘りの雨落溝が検出されているが、内側では雨 落溝は未検出であり(『藤原概報 3』)、その性格の決定は 今後の調査の進展を待ちたい。

 一方、西面回廊の調査では黄褐色山土層を寺域内の整 地土と認識しており(『藤原概報 18』、『同 24』)、本調査区 で検出した黄褐色砂による整地と同様と考えられる。た だし本調査区内では、SX390を境として東西に土質の差 がみられ、金堂や塔のような版築は用いられないもの の、回廊下の整地をより入念におこなった状況がみられ る。

 また西面回廊では掘込地業の存在が指摘されている が、今回検出した地山の窪みは幅が4.5m程度と狭いこ ともあり、人為的な掘り込みとはみられない。ただし山 土由来とみられる黄褐色砂により地山の起伏を埋め立て る状況は、「掘り込みを黄褐色山土で地業した」とする 西面回廊の状況と共通する(『藤原概報 24』)。東西回廊で 地業の方法が異なるか、西面回廊も掘込地業によらない 可能性があり、今後検証する必要があるだろう。

 以上、今回の調査では、奥山廃寺の東面回廊の位置お よび造営時の基礎造成のあり方を理解する上で、重要な 所見を得ることができた。

(山本 亮)

図₉₇ SX₃₉₀検出状況(南から) 図₉₈ SX₃₉₀完掘状況(南から)

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