• 検索結果がありません。

日本再興戦略とコーポレート・ガバナンス

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本再興戦略とコーポレート・ガバナンス"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

参考文献

小島大徳[2014a]「経営者の辞任とコーポレー ト・ガバナンス」『国際経営論集』第47号,

神奈川大学経営学部,35−44ページ.

小島大徳[2014b]「あれは十七世紀、株式会 社の風景。」『麒麟』23号,神奈川大学経 営学部17世紀文学研究会,64−46ページ.

小島大徳[2013a]「アジアにおけるコーポレー ト・ガバナンス統一」『国際経営フォーラ ム』第24号,神奈川大学国際経営研究所,

31-38ページ.

小島大徳[2013b]「株式会社の『崩壊』と新 会社制度の『創造』」『月刊金融ジャーナル』

2014年1月号,金融ジャーナル社,38-39 ページ.

小島大徳[2010]『株式会社の崩壊—資本市場 を幻惑する5つの嘘—』創成社.

小島大徳[2009]『企業経営原論』税務経理協会.

小島大徳[2007]『市民社会とコーポレート・

ガバナンス』文眞堂.

小島大徳[2004]『世界のコーポレート・ガバ ナンス原則−原則の体系化と企業の実践−』

文眞堂.

KOJIMA, Hirotoku, 2007, Principle o f C o r p o r a t e G o v e r n a n c e ,

KokusaiKeieiRonshu, No33, Kanagawa U n i v e r s i t y F a c u l t y o f B u s i n e s s Administration, pp. 11-31.

資料

日 本 政 府[2014a]『「 日 本 再 興 戦 略 」 改 訂 2014-未来への挑戦-』

日本政府[2014b]『「日本再興戦略」の改訂~

改革に向けての10の挑戦~』

日本版スチュワードシップ・コードに関する有 識者検討会[2014]『「責任ある機関投資家」

の諸原則《日本版スチュワードシップ・コー ド》~投資と対話を通じて企業の持続的成 長を促すために~(スチュワードシップ・

コード)』

コーポレート・ガバナンス原則

Cadbury Report, 1992, Report of the Committee on the Financial Aspects of Corporate Governance.

OECD, 1999, OECD Principles of Corporate Governance.

OECD, 2004, OECD Principles of Corporate Governance 2004.

研究論文

日本再興戦略とコーポレート・ガバナンス

小島大徳

1 コーポレート・ガバナンスと日本再興 戦略

 日本政府が策定した『「日本再興戦略」改訂 2014-未来への挑戦-(日本再興戦略−2014−)』

(2014年6月24日)で、大きくコーポレート・

ガバナンスを取り上げ、今まで以上にコーポ レート・ガバナンス政策を重視し展開していく 姿勢を明確にした。その上で、すみやかに実施 するべき施策を明示して、コーポレート・ガバ ナンスを経済政策の中心に据えて実行していく ことにしたのである1。これをまずみてみよう。

 コーポレートガバナンスは、企業が、株主を はじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏ま えた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決 定を行うための仕組みである。コーポレートガ バナンスに関する基本的な考え方を諸原則の形 で取りまとめることは、持続的な企業価値向上 のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、

投資家、ひいては経済全体にも寄与するものと 考えられる。

 こうした観点から、上場企業のコーポレー トガバナンス上の諸原則を記載した「コーポ レートガバナンス・コード」を策定する。コー ドの策定に当たっては、東京証券取引所のコー ポレートガバナンスに関する既存のルール・ガ イダンス等や「OECDコーポレートガバナンス 原則」を踏まえ、我が国企業の実情等にも沿い、

国際的にも評価が得られるものとする。このた

め、東京証券取引所と金融庁を共同事務局とす る有識者会議において、秋頃までを目途に基本 的な考え方を取りまとめ、東京証券取引所が、

来年の株主総会のシーズンに間に合うよう新た に「コーポレートガバナンス・コード」を策定 することを支援する。新コードについては、東 京証券取引所の上場規則により、上場企業に対 して“Comply or Explain”(原則を実施するか、

実施しない場合にはその理由を説明するか)を 求めるものとする。

 また、持ち合い株式の議決権行使の在り方に ついての検討を行うとともに、政策保有株式の 保有目的の具体的な記載・説明が確保されるよ う取組を進める。さらに、上場銀行、上場銀行 持株会社について少なくとも1名以上、できう る限り複数の独立社外取締役導入を促す。また、

上場銀行持株会社の100%出資銀行子会社に関 しても、独立社外取締役の導入について検討す るよう促す2

2 日本再興戦略とコーポレート・ガバナ ンス

2.1 産業競争力会議の議論とコーポレート・

ガバナンス

 2014年6月16日に産業競争力会議が示した 成長戦略最終案は、企業関連の施策で企業統治

(コーポレートガバナンス−原文ママ)の強化を 示し、上場企業に対して経営の透明化を促すた めに、「コーポレートガバナンス・コード」を キーワード:コーポレート・ガバナンス、日本再興戦略、OECDコーポレート・ガバナ ンス原則、日本版スチュワードシップ・コード

(2)

2015年半ばまでにまとめるとした。長年の懸 案事項であった企業の社外取締役の選任や役員 報酬の決め方などを規定するとされ、企業が行 動基準を満たせない場合は、その理由を投資家 に説明しなければならないようにするという3。  成長戦略案(詳報)によると、「第2 三つ のアクション 一 日本産業再興プラン 1  緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促 進) (3)具体的施策」のなかで、「①コーポレー トガバナンスの強化、リスクマネーの供給促進、

インベストメント・チェーンの高度化 東京証 券取引所が来年半ばまでに新たに「コーポレー トガバナンス・コード」を策定することを支援。

持ち合い株式の議決権行使のあり方を検討。上 場銀行、上場銀行持ち株会社に1人以上の独立 取締役の導入を促す。(原文ママ)」と報道され た4

 政府の説明する日本再生の三本の矢のうち、

最後の矢の中心にコーポレート・ガバナンスが 組み入れられたことは、大いに評価できる。政 府最終案にいたるまでも、こうした姿勢が貫か れたことも、コーポレート・ガバナンスが企業 経営および企業経営が及ぼす周辺環境に正の影 響を与えていることが広く浸透したからである。

そしてなによりも、コーポレート・ガバナンス を実現するために、私が主張するところのコー ポレート・ガバナンス原則であるコーポレート・

ガバナンス・コードを策定し、コードを用いて 企業改革を実行しようとする姿勢は、実に賢明 な判断である。

2.2 キャドバリー委員会報告書とOECDコー ポレート・ガバナンス原則

 今までは、会社法等の会社関連法規によって コーポレート・ガバナンスが規則化されてき た。このような流れは、企業経営が本来自由な 風土と緩やかな制度の上にあるべきだという理 想から、若干逸れていた。2014年度の政府の 方針は、今までの規則化から一線を画している。

その現れが、「遵守か説明か」というキャドバ リー委員会報告書を源流とする説明責任に言及

したことである。これによって、守らないなら ばその説明をしなさいという基本合意を明示し た。ただ、守る物が何であるのかがなければ守 りようもないので、コーポレート・ガバナンス・

コードの策定を支持するとともに、政府が策定 してたら完全に規則化することと同義であるか ら、より中立的な立場での原則策定をするため に、東京証券取引所の原則策定を後押しすると いうことであろう。

 そうはいっても、東京証券取引所は、既にコー ポレート・ガバナンス・コードを策定し保有し ている。そして、当然、これを用いて上場企業 に対して遵守することを要求している。ここで、

再度、東京証券取引所に策定を依頼するのでは なく、政府がイギリスのキャドバリー委員会の ように、第三者機関を設置し、そこで議論を深 めた方がよりよい策であったことを言及してお かなければならない。

2.3 日本再興戦略−改訂2014−とコーポレー ト・ガバナンス

 さて、日本政府は、上記のような近時の経緯 から『日本再興戦略−2014−』を策定し公表し、

これ以降は、この方針にそって企業経営を取り 巻く環境を改革していくとしている。今後は、

この計画にそって、企業制度が整えられて行く であろう。ここでは、『日本再興戦略−2014−』

のうち、コーポレート・ガバナンスに関する事 項について評価をおこなう。その前に、『日本 再興戦略-2014-』は、なぜコーポレート・ガバ ナンスが成長戦略の中心に置かれたかについて 言及している全文を理解しておく必要があろう。

(コーポレートガバナンスの強化)

 日本企業の「稼ぐ力」、すなわち中長期的な 収益性・生産性を高め、その果実を広く国民(家 計)に均てんさせるには何が必要か。まずは、

コーポレートガバナンスの強化により、経営者 のマインドを変革し、グローバル水準のROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打 ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強

(3)

2015年半ばまでにまとめるとした。長年の懸 案事項であった企業の社外取締役の選任や役員 報酬の決め方などを規定するとされ、企業が行 動基準を満たせない場合は、その理由を投資家 に説明しなければならないようにするという3。  成長戦略案(詳報)によると、「第2 三つ のアクション 一 日本産業再興プラン 1  緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促 進) (3)具体的施策」のなかで、「①コーポレー トガバナンスの強化、リスクマネーの供給促進、

インベストメント・チェーンの高度化 東京証 券取引所が来年半ばまでに新たに「コーポレー トガバナンス・コード」を策定することを支援。

持ち合い株式の議決権行使のあり方を検討。上 場銀行、上場銀行持ち株会社に1人以上の独立 取締役の導入を促す。(原文ママ)」と報道され た4

 政府の説明する日本再生の三本の矢のうち、

最後の矢の中心にコーポレート・ガバナンスが 組み入れられたことは、大いに評価できる。政 府最終案にいたるまでも、こうした姿勢が貫か れたことも、コーポレート・ガバナンスが企業 経営および企業経営が及ぼす周辺環境に正の影 響を与えていることが広く浸透したからである。

そしてなによりも、コーポレート・ガバナンス を実現するために、私が主張するところのコー ポレート・ガバナンス原則であるコーポレート・

ガバナンス・コードを策定し、コードを用いて 企業改革を実行しようとする姿勢は、実に賢明 な判断である。

2.2 キャドバリー委員会報告書とOECDコー ポレート・ガバナンス原則

 今までは、会社法等の会社関連法規によって コーポレート・ガバナンスが規則化されてき た。このような流れは、企業経営が本来自由な 風土と緩やかな制度の上にあるべきだという理 想から、若干逸れていた。2014年度の政府の 方針は、今までの規則化から一線を画している。

その現れが、「遵守か説明か」というキャドバ リー委員会報告書を源流とする説明責任に言及

したことである。これによって、守らないなら ばその説明をしなさいという基本合意を明示し た。ただ、守る物が何であるのかがなければ守 りようもないので、コーポレート・ガバナンス・

コードの策定を支持するとともに、政府が策定 してたら完全に規則化することと同義であるか ら、より中立的な立場での原則策定をするため に、東京証券取引所の原則策定を後押しすると いうことであろう。

 そうはいっても、東京証券取引所は、既にコー ポレート・ガバナンス・コードを策定し保有し ている。そして、当然、これを用いて上場企業 に対して遵守することを要求している。ここで、

再度、東京証券取引所に策定を依頼するのでは なく、政府がイギリスのキャドバリー委員会の ように、第三者機関を設置し、そこで議論を深 めた方がよりよい策であったことを言及してお かなければならない。

2.3 日本再興戦略−改訂2014−とコーポレー ト・ガバナンス

 さて、日本政府は、上記のような近時の経緯 から『日本再興戦略−2014−』を策定し公表し、

これ以降は、この方針にそって企業経営を取り 巻く環境を改革していくとしている。今後は、

この計画にそって、企業制度が整えられて行く であろう。ここでは、『日本再興戦略−2014−』

のうち、コーポレート・ガバナンスに関する事 項について評価をおこなう。その前に、『日本 再興戦略-2014-』は、なぜコーポレート・ガバ ナンスが成長戦略の中心に置かれたかについて 言及している全文を理解しておく必要があろう。

(コーポレートガバナンスの強化)

 日本企業の「稼ぐ力」、すなわち中長期的な 収益性・生産性を高め、その果実を広く国民(家 計)に均てんさせるには何が必要か。まずは、

コーポレートガバナンスの強化により、経営者 のマインドを変革し、グローバル水準のROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打 ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強

化していくことが重要である。特に、数年ぶり の好決算を実現した企業については、内部留保 を貯め込むのではなく、新規の設備投資や、大 胆な事業再編、M&Aなどに積極的に活用して いくことが期待される。

 昨年の成長戦略を受けて、これまでに日本版 スチュワードシップコードの策定、社外取締役 を選任しない企業に説明責任を課す会社法改正、

さらには公的・準公的資金の運用の在り方の検 討を通じて、投資家と企業の間で持続的な収益 力・資本効率向上やガバナンス強化に向けた対 話を深めるための取組等が緒についたところで ある。こうした中で、スチュワードシップコー ドへの参加を表明する機関投資家や社外取締役 の導入を進める企業が続々と現れているうえ、

本年の年初には、収益力が高く投資家にとって 魅力の高い会社で構成される新しい株価指数で ある「JPX日経インデックス400」の算出が開 始されるなど、「稼ぐ力」向上に向けた気運が高 まりつつある。

 今後は、企業に対するコーポレートガバナン スを発揮させる環境を更に前進させ、企業の「稼 ぐ力」の向上を具体的に進める段階に来た。こ れまでの取組を踏まえて、各企業が、社外取締 役の積極的な活用を具体的に経営戦略の進化に 結びつけていくとともに、長期的にどのような 価値創造を行い、どのようにして「稼ぐ力」を 強化してグローバル競争に打ち勝とうとしてい るのか、その方針を明確に指し示し、投資家と の対話を積極化していく必要がある。

 同時に、銀行、機関投資家等の我が国の金融 を担う各プレーヤーが、長期的な価値創造と「稼 ぐ力」の向上という大きな方向に向けて、それ ぞれが企業とよい意味での緊張関係を保ち、積 極的な役割を果たしていく必要がある。そのう ち、銀行・商社等については、企業の新陳代謝 を支援する観点から、ファンド等を通じた民間 ベースでのエクイティ、メザニン・ファイナン ス投資等への貢献も含む収益性を意識したリス クマネー供給の促進、目利き・助言機能を発揮 することが求められる。また、公的・準公的資

金の運用機関を含む機関投資家についても、適 切なポートフォリオ管理と株主としてのガバナ ンス機能をより積極的に果たしていくことが期 待される。

 こうした一連の取組を実行していくことで、

企業収益の更なる拡大が実現し、雇用機会の拡 大、賃金の上昇、配当の増加という様々なチャ ネルを通じて、脱デフレの果実が最終的に国民 に還元される、真の好循環が実現することとな る。

3 コーポレート・ガバナンスの定義と効 果

3.1 日本再興戦略−改訂2014−

 コーポレートガバナンスは、企業が、株主を はじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏ま えた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決 定を行うための仕組みである。コーポレートガ バナンスに関する基本的な考え方を諸原則の形 で取りまとめることは、持続的な企業価値向上 のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、

投資家、ひいては経済全体にも寄与するものと 考えられる。

3.2 コーポレート・ガバナンスの定義  コーポレート・ガバナンスは、企業競争力を 向上させる効果と、企業不祥事を減少させる効 果がある。政府が策定した日本再興戦略は、企 業競争力の向上に重点をおいているといえる。

ただ、企業が深く考慮すべき者として、地域社 会などをあげて広範な思慮を経営者に求めてい る点で、企業不祥事の防止を含めているのであ ろう。

 コーポレート・ガバナンスには、3つの大き な要素がある。それは、企業経営機構に関する こと、利害関係者に関すること、そして情報開 示と透明性に関すること、の3つである。これ らの3者について、はっきりと場合分けしてい るわけではないが、しっかりと認識して、各部 の役割と期待される効果を認識したうえで定義 していると評価できる。また、このコーポレー

(4)

ト・ガバナンスの最終目的を、「企業、投資家、

ひいては経済全体にも寄与するもの」であると していることは、日本におけるコーポレート・

ガバナンスの浸透と、各所にわたる拡大に寄与 するであろう。

3.3 コーポレート・ガバナンス原則の体系化 と企業の実践

 ひるがえって、コーポレート・ガバナンスの 内容は多岐にわたれど、唯一、同じ価値観があ る。それは、対象が企業であり、そのために実 践化されなければならないということである。

企業に対して実践を強制するだけであれば、企 業法制度を改正すれば事足りる。しかし、企業 はこの世の中でも実に奇妙な疑似生物である。

人のような人でないような、権利義務がないよ うなあるような。こうした企業という疑似生物 ではあるが、一つわかっているのは、市民が社 会的権利や自己の幸福追求を最大化するために 政府をつくったのであり、市民は経済的享受を 最大化するために企業をつくったのである。そ のため、企業に対しては、安易に自由を制限し てはならない。企業に対して経営の自由を侵害 することは、市民に対しての自由を侵害するこ とに限りなく近いからである。

 そう考えると、企業に対して、なんの規制も かけずに、最低限のルールだけをきめて、その うえで自由にさせることが最善のように思われ るが、ただ、今日、大きくなりすぎた企業は、

時として市民に対して諸刃の剣のように牙を向 けることがある。向けられた刃は、財産を奪う だけならばまだよいのだが、身体を傷つけ、そ して時として命までをも奪うことがあるのだか ら、早急に対応策を練らなければならない。そ うした議論が、幾度もなく繰り返された企業を 取り巻く法制度改革の中心的議論である。生命 や財産を侵害された場合、企業法制度を改正し て、より企業に対して規制をかけるべきであ るとの議論が、過去何度もなされてきた。だが、

今回の日本再興戦略-2014-では、企業の経営の 自由を柱に据えた計画となっており、評価でき るのである。

 それでは、コーポレート・ガバナンス原則は、

如何にして企業に浸透させるべきかについて話 を進めなければならない。原則は、その時代の 企業に対する評価を反映して策定される。そし て経営の自由が中心におかれた原則であれば、

必然的に企業独自コーポレート・ガバナンス原 則の策定を促す流れになる。だが、日本再興戦 略-2014-では、そこまでの内容にはなっていな い。策定した原則を、遵守するのか、説明する のかという1992年のキャドバリー委員会報告 書の域を全く出ておらず、ただこれを日本風に 書き換えただけの感がどうしても拭えないので ある。そうはいっても、諸原則の形で取りまと めるということが必要であると明言したことは、

原則によるコーポレート・ガバナンス政策の実 施という方向性を決定づけた。そして、その名 称を原則と呼んだことも、政府の強い意思が感 じられるのである。

3.4 コーポレート・ガバナンス政策

 このような政府のコーポレート・ガバナンス に対する姿勢は、コーポレート・ガバナンスと は、極めて政策的に論じられるべきであると の、従来から私が主張してきた内容と、ほぼ合 致するものであり歓迎すべきものである5。コー ポレート・ガバナンスは、最終的に企業に対し て実践をもとめ、そして企業がそれを実践して 初めて完成する。だが、そのプロセスにおいて は、企業の実践のみならず、企業の枠組みを形 作る企業法制度や各種法令、諸外国との条約な ど国の政策や根本原則に関わることがとても多 い。そのため、極めて政策的に語り、そして各 種機関が実行していかなければコーポレート・

ガバナンスが完成することはないのである。

 最近は少なくなってきたのだが、コーポレー ト・ガバナンスは、「企業は誰のものか」など の企業の本質論に行き着くことが多かった。だ が、このような議論は必要のないものである。

そのことを、今回の日本再興戦略によって裏付 けされたともいえよう。ただもちろん、諸手を 挙げて賛成というわけにはいかない。もちろん、

(5)

ト・ガバナンスの最終目的を、「企業、投資家、

ひいては経済全体にも寄与するもの」であると していることは、日本におけるコーポレート・

ガバナンスの浸透と、各所にわたる拡大に寄与 するであろう。

3.3 コーポレート・ガバナンス原則の体系化 と企業の実践

 ひるがえって、コーポレート・ガバナンスの 内容は多岐にわたれど、唯一、同じ価値観があ る。それは、対象が企業であり、そのために実 践化されなければならないということである。

企業に対して実践を強制するだけであれば、企 業法制度を改正すれば事足りる。しかし、企業 はこの世の中でも実に奇妙な疑似生物である。

人のような人でないような、権利義務がないよ うなあるような。こうした企業という疑似生物 ではあるが、一つわかっているのは、市民が社 会的権利や自己の幸福追求を最大化するために 政府をつくったのであり、市民は経済的享受を 最大化するために企業をつくったのである。そ のため、企業に対しては、安易に自由を制限し てはならない。企業に対して経営の自由を侵害 することは、市民に対しての自由を侵害するこ とに限りなく近いからである。

 そう考えると、企業に対して、なんの規制も かけずに、最低限のルールだけをきめて、その うえで自由にさせることが最善のように思われ るが、ただ、今日、大きくなりすぎた企業は、

時として市民に対して諸刃の剣のように牙を向 けることがある。向けられた刃は、財産を奪う だけならばまだよいのだが、身体を傷つけ、そ して時として命までをも奪うことがあるのだか ら、早急に対応策を練らなければならない。そ うした議論が、幾度もなく繰り返された企業を 取り巻く法制度改革の中心的議論である。生命 や財産を侵害された場合、企業法制度を改正し て、より企業に対して規制をかけるべきであ るとの議論が、過去何度もなされてきた。だが、

今回の日本再興戦略-2014-では、企業の経営の 自由を柱に据えた計画となっており、評価でき るのである。

 それでは、コーポレート・ガバナンス原則は、

如何にして企業に浸透させるべきかについて話 を進めなければならない。原則は、その時代の 企業に対する評価を反映して策定される。そし て経営の自由が中心におかれた原則であれば、

必然的に企業独自コーポレート・ガバナンス原 則の策定を促す流れになる。だが、日本再興戦 略-2014-では、そこまでの内容にはなっていな い。策定した原則を、遵守するのか、説明する のかという1992年のキャドバリー委員会報告 書の域を全く出ておらず、ただこれを日本風に 書き換えただけの感がどうしても拭えないので ある。そうはいっても、諸原則の形で取りまと めるということが必要であると明言したことは、

原則によるコーポレート・ガバナンス政策の実 施という方向性を決定づけた。そして、その名 称を原則と呼んだことも、政府の強い意思が感 じられるのである。

3.4 コーポレート・ガバナンス政策

 このような政府のコーポレート・ガバナンス に対する姿勢は、コーポレート・ガバナンスと は、極めて政策的に論じられるべきであると の、従来から私が主張してきた内容と、ほぼ合 致するものであり歓迎すべきものである5。コー ポレート・ガバナンスは、最終的に企業に対し て実践をもとめ、そして企業がそれを実践して 初めて完成する。だが、そのプロセスにおいて は、企業の実践のみならず、企業の枠組みを形 作る企業法制度や各種法令、諸外国との条約な ど国の政策や根本原則に関わることがとても多 い。そのため、極めて政策的に語り、そして各 種機関が実行していかなければコーポレート・

ガバナンスが完成することはないのである。

 最近は少なくなってきたのだが、コーポレー ト・ガバナンスは、「企業は誰のものか」など の企業の本質論に行き着くことが多かった。だ が、このような議論は必要のないものである。

そのことを、今回の日本再興戦略によって裏付 けされたともいえよう。ただもちろん、諸手を 挙げて賛成というわけにはいかない。もちろん、

かずかずの問題や矛盾を抱えており、それをこ れからブラッシュアップしていく作業が必要な のである。

4 コーポレート・ガバナンス原則の基本 的な機能

4.1 コーポレート・ガバナンス原則と行動規 範

 こうした観点から、上場企業のコーポレー トガバナンス上の諸原則を記載した「コーポ レートガバナンス・コード」を策定する。コー ドの策定に当たっては、東京証券取引所のコー ポレートガバナンスに関する既存のルール・ガ イダンス等や「OECDコーポレートガバナンス 原則」を踏まえ、我が国企業の実情等にも沿い、

国際的にも評価が得られるものとする。このた め、東京証券取引所と金融庁を共同事務局とす る有識者会議において、秋頃までを目途に基本 的な考え方を取りまとめ、東京証券取引所が、

来年の株主総会のシーズンに間に合うよう新た に「コーポレートガバナンス・コード」を策定 することを支援する。新コードについては、東 京証券取引所の上場規則により、上場企業に対 して“Comply or Explain”(原則を実施するか、

実施しない場合にはその理由を説明するか)を 求めるものとする。

4.2 キャドバリー委員会報告書からOECD原 則までの経緯と日本再興戦略-2014-  1999年に最初に策定し、2004年に改訂され たOECD原則は、それまでの混在したコーポ レート・ガバナンスの考え方に筋道をつけ、ど の国にも対応可能にまとめ上げた優れた原則で ある。もちろん内容も秀でているのであるが、

それ以上に、世界中にコーポレート・ガバナン スの重要性を広めた功績に注目しなければなら ない。そのOECD原則を基にして、実務規範で あるコーポレート・ガバナンス原則を策定する としている。

 原則の性質は参照可能性と非拘束性であり、

企業に対する強制力を有しない。強制力を有し ないとするとどの企業経営者も遵守しないの ではないかという点を補うために、「遵守か説 明か」の考え方を補足的に取り入れると解釈す るのがよい。なぜならば、企業には、高度な経 営の自由があり、それを縛る法令や原則は極力 避けなければならないのである。行動規範には、

「遵守か説明か」に加えて、企業よる自主性を 促す施策を取り入れるとなおコーポレート・ガ バナンス施策の実行力を確実なものとすること ができるであろう。

4.3 コーポレート・ガバナンス原則の基本原 理と企業

 「遵守か説明か」という路線を強力に推し進 めることには反対である。この「遵守か説明か」

は法令によって規制をかけず自由な企業経営活 動を行う中で、コーポレート・ガバナンスを考 慮していくようにとの気持ちが込められている。

この気持ちの方が重要である。時として、説明 責任は限度を超えて責任追及されると悪魔の証 明となり、法令で定められた規則よりも強い強 制力を結果的に発揮してしまうことがある。そ の作用を考慮しなければならない。

 そもそも、「遵守か説明か」は、1990年代初 頭に提唱された概念である。それを数十年後に 取り入れたのだが、遅きに失した感があるし、

今やコーポレート・ガバナンスの議論は、それ を遙かに超えた領域に入ろうとしている。それ は、企業が自主的かつ積極的にコーポレート・

ガバナンス活動を実施する局面である。いまだ に、上意下達的な思考で企業あるいは企業経営 を捉えていては、いつまでたっても実効性のあ るコーポレート・ガバナンスを発揮することは できない。このいかに企業経営にコミットして いくかという段階で誤りをおかしてしまってい るのである。その最たるものが、次に取り上げ る機関投資家のコーポレート・ガバナンス原則 である。

(6)

5 機関投資家コーポレート・ガバナンス 原則

5.1 機関投資家コーポレート・ガバナンス原 則

 また、持ち合い株式の議決権行使の在り方に ついての検討を行うとともに、政策保有株式の 保有目的の具体的な記載・説明が確保されるよ う取組を進める。さらに、上場銀行、上場銀行 持株会社について少なくとも1名以上、できう る限り複数の独立社外取締役導入を促す。また、

上場銀行持株会社の100%出資銀行子会社に関 しても、独立社外取締役の導入について検討す るよう促す。

5.2 コーポレート・ガバナンス機能を発揮す る主体

 健全なガバナンスを保つには、常時、外部か らのチェックにさらされているという緊張感が 必要である。経営者をとりまく関係者は多くあ れど、経営者の経営方針などを変更させること ができる力を持った者は、株主以外にいない。

株主の中でも、個人株主は総じてキャピタルゲ インや利益配当、株主優待などの個人的利益に 興味を持ち、経営者の経営理念や目指している 企業運営、そこまででなくとも次期経営者の指 名にすら関心を持たないことが多い。

 これは、資本経済の発展がもたらした産物で あり、健全な資本経済の進んでいる過渡的状態 である。ただ、そのような状況が高度に進んで いくと、経営者に対して、唯一力を発揮するこ とのできる株主の存在が希薄になり、経営者支 配状態がさらに進み、チェック機能が軒並み崩 壊することになる。これを危惧する企業関係者 は、コーポレート・ガバナンス構造をできるだ け機能的なものにしようと努力するのである。

5.3 コーポレート・ガバナンスへの機関投資 家の活用

 1980年代に世界的に機関投資家(投資機関)

などが株主の運用比率が高まり、そして運用量 が莫大になるにつれ、株式取得によってえられ る議決権に注目が集まることになる。それまで は、現在の個人投資家のように、配当などの短 期的利益か、売却益などのキャピタルゲインに よって、機関投資家は運用を行っていた。ただ、

運用規模が多大な額になると、自らの売買に よって市場価格が左右され、結果的に自らの損 益に直結してしまうことや、単なる売買よりも 企業経営に深く関与することで経営改善を行い、

最終的に株価や経営成績の向上に繋がるとの姿 勢が固まりつつあった。それとともに、忘れて ならないのが、機関投資家による企業経営研究 である。それまでは、機関投資家の内部に、膨 大な企業情報を分析し、適切に判断する者が少 なかったのであるが、徐々に専門家を育て、投 資判断とともに、改善経営政策を提案できるま での幅広い人材を手に入れることに成功したこ とも大きな意味を持つ。

 さらに、機関投資家が企業経営に関与せざる を得ないともいえる決定的な問題が、機関投資 家も利害関係者をもち、企業経営を行っている 組織であるということである。つまり、機関投 資家も法人であるから、経営者をもち、その経 営者をチェックする者が存在すると言うことで ある。企業経営者は、あげられるべき利益を逃 したときも、あげられなくてよい損失を得てし まったときも、責任を負わなければならない。

常に、営利法人も機関投資家も、常に緊張感を 持って経営をしなければならない。そうなると、

機関投資家が単なる株式の運用よりも、株式を 保有した会社の経営に積極的に関与することで、

より機関投資家自身の利益が上がるのであれば、

そうするべきであるとの要求が機関投資家の利 害関係者から出たのも必然であった。この要求 が決定的となり、機関投資家は積極的に株式を 保有している企業経営に関与していくことにな るのである。

5.4 機関投資家のコーポレート・ガバナンス

(7)

5 機関投資家コーポレート・ガバナンス 原則

5.1 機関投資家コーポレート・ガバナンス原 則

 また、持ち合い株式の議決権行使の在り方に ついての検討を行うとともに、政策保有株式の 保有目的の具体的な記載・説明が確保されるよ う取組を進める。さらに、上場銀行、上場銀行 持株会社について少なくとも1名以上、できう る限り複数の独立社外取締役導入を促す。また、

上場銀行持株会社の100%出資銀行子会社に関 しても、独立社外取締役の導入について検討す るよう促す。

5.2 コーポレート・ガバナンス機能を発揮す る主体

 健全なガバナンスを保つには、常時、外部か らのチェックにさらされているという緊張感が 必要である。経営者をとりまく関係者は多くあ れど、経営者の経営方針などを変更させること ができる力を持った者は、株主以外にいない。

株主の中でも、個人株主は総じてキャピタルゲ インや利益配当、株主優待などの個人的利益に 興味を持ち、経営者の経営理念や目指している 企業運営、そこまででなくとも次期経営者の指 名にすら関心を持たないことが多い。

 これは、資本経済の発展がもたらした産物で あり、健全な資本経済の進んでいる過渡的状態 である。ただ、そのような状況が高度に進んで いくと、経営者に対して、唯一力を発揮するこ とのできる株主の存在が希薄になり、経営者支 配状態がさらに進み、チェック機能が軒並み崩 壊することになる。これを危惧する企業関係者 は、コーポレート・ガバナンス構造をできるだ け機能的なものにしようと努力するのである。

5.3 コーポレート・ガバナンスへの機関投資 家の活用

 1980年代に世界的に機関投資家(投資機関)

などが株主の運用比率が高まり、そして運用量 が莫大になるにつれ、株式取得によってえられ る議決権に注目が集まることになる。それまで は、現在の個人投資家のように、配当などの短 期的利益か、売却益などのキャピタルゲインに よって、機関投資家は運用を行っていた。ただ、

運用規模が多大な額になると、自らの売買に よって市場価格が左右され、結果的に自らの損 益に直結してしまうことや、単なる売買よりも 企業経営に深く関与することで経営改善を行い、

最終的に株価や経営成績の向上に繋がるとの姿 勢が固まりつつあった。それとともに、忘れて ならないのが、機関投資家による企業経営研究 である。それまでは、機関投資家の内部に、膨 大な企業情報を分析し、適切に判断する者が少 なかったのであるが、徐々に専門家を育て、投 資判断とともに、改善経営政策を提案できるま での幅広い人材を手に入れることに成功したこ とも大きな意味を持つ。

 さらに、機関投資家が企業経営に関与せざる を得ないともいえる決定的な問題が、機関投資 家も利害関係者をもち、企業経営を行っている 組織であるということである。つまり、機関投 資家も法人であるから、経営者をもち、その経 営者をチェックする者が存在すると言うことで ある。企業経営者は、あげられるべき利益を逃 したときも、あげられなくてよい損失を得てし まったときも、責任を負わなければならない。

常に、営利法人も機関投資家も、常に緊張感を 持って経営をしなければならない。そうなると、

機関投資家が単なる株式の運用よりも、株式を 保有した会社の経営に積極的に関与することで、

より機関投資家自身の利益が上がるのであれば、

そうするべきであるとの要求が機関投資家の利 害関係者から出たのも必然であった。この要求 が決定的となり、機関投資家は積極的に株式を 保有している企業経営に関与していくことにな るのである。

5.4 機関投資家のコーポレート・ガバナンス

政策の土台

 企業経営に関与する方法は、情報開示と透明 性を確保するシステムを確立させたうえで対話 と議決権行使を行うことである。いくら企業の 経営に関与しようとしても、開示された情報が 事実と乖離していたり、量が足りないもので あったりしたら、適切な判断を下すことができ ない。つまり、経営者の積極的な情報開示姿勢 が重要なのである。また、透明性が確保されて いなければ、真実の情報なのかわからない。情 報開示方法などに透明性がなければ、その情報 は何の意味もなさないものになってしまうので ある。

 このような機関投資家の姿勢は、1980年代 のように、そのつど株主総会や経営者との対話 などを通じておこなっていたのでは、効率的で はない。それに、経営者も機関投資家の考えが あらかじめ分かっていれば、機関投資家からの 投資をうむ要因になる可能性がある。このよう に、この両者の合致した意思は、機関投資家の 考え方をあらかじめ経営者に示しておく方が、

効率性も機能性も良いという方向へと導くこと になった。

 その内容を示したものが、機関投資家のコー ポレート・ガバナンスである。今回の日本政 府による『日本再興戦略−改訂2014−』の前に 公表された『「責任ある機関投資家」の諸原則

≪日本版スチュワードシップ・コード≫~投資と 対話を通じて企業の持続的成長を促すために

~』は、こうした機関投資家の重要性に着眼し て、あらかじめ別に策定し公表されたのである。

そして、日本再興戦略-2014-のコーポレート・

ガバナンスに関する記載と機関投資家に対する 日本版スチュワードシップ・コードは、両輪の 関係にあるというが、そこには大きな落とし穴 がひそんでいるのである。

6 日本におけるコーポレート・ガバナン スの進捗状況

 日本におけるコーポレート・ガバナンスは、

会社法を中心にした会社法制度を改正すること によって実施されてきた。この会社法制度を改 正することによるコーポレート・ガバナンス改 革は、強制力を持ち、本来自由であるはずの企 業経営を縛ることに直結していた。生命や財産 を奪う企業不祥事の発生は見過ごすことができ ず、強制力をもってして取り組むのも理解でき る。しかし多くの場合、企業からみると毒薬で しかない。たとえば、委員会設置会社の導入な どは安易すぎた。

 このよう法令による強制という流れに若干の 変化がおこりはじめたのは必然であった。たと えば、会社法によって内部統制体制の開示など について漠然的な記載になるなり、企業の自主 性にまかせるようになるなどである。

 もう一つの要因が、1990年代から2000年代 にかけての景気後退・停滞局面による企業不祥 事の多発である。日本のみならず、企業不祥事 は景気の後退・停滞局面で発生し露呈する。そ のため、この期間の議論は、コーポレート・ガ バナンスの2つの目的のうち企業不祥事の防止 に力が注がれることになった。企業に対しては、

直接的に身体刑などをかすことができないため、

刑罰に似た形で会社法によりチェック体制の強 化をふくむ多くの企業を縛る強制力のある法令 が次々とできたのである。

 だが、2010年代に入ると、景気も停滞局面 から抜け出し明るさが見え始めた。そうなると、

この勢いを維持、あるいは向上させるための施 策が次々と発せられることになる。その一つが、

今回取り上げた『日本再興戦略−改訂2014−』

である。そして、コーポレート・ガバナンスの 目的である企業競争力の向上に焦点が当てられ ることになった。ここでは、経営の自由を尊重 し、経済に寄与させるために、資本経済の中で 自主的に活動しつつ、健全に企業運営をしても らうという方針を前面に打ち出したのである。

 今後は、コーポレート・ガバナンスを促進さ せつつ、経済にも寄与させつために、企業が独 自にコーポレート・ガバナンス活動を積極的に 行える体制作りを整えるべきである。そこで鍵

(8)

となるのが、企業独自コーポレート・ガバナン ス原則である。企業独自原則を企業に求めれば よい。そして、今まで1990年代から2000年代 までに課してきた数々の企業に対する規制を取 り除く作業をせねばならない。

1 コーポレート・ガバナンスとは、企業競争力を高 め、企業不祥事を無くすという目的を持つ。そして、

この2つの目的を達成するために、主に、企業経 営システム改革、利害関係者によるモニタリング とチェック体制、情報開示と透明性を高める制度、

の3つを高度に追求するのである。

2 これ以降、特に断りのない場合は、『日本再興戦略

−改訂 2014−』からの引用である。

3 讀賣新聞 6 月 17 日付朝刊 11 面(東京発行版).

4 毎日新聞 6 月 17 日付朝刊 6 面(東京発行版).

5 小島大徳[2007b]

参考文献

小島大徳[2014a]「経営者の辞任とコーポレー ト・ガバナンス」『国際経営論集』第47号,

神奈川大学経営学部,35-44ページ.

小島大徳[2014b]「あれは十七世紀、株式会 社の風景。」『麒麟』神奈川大学経営学部 17世紀文学研究会,64-46ページ.

小島大徳[2013a]「アジアにおけるコーポレー ト・ガバナンス統一」『国際経営フォーラ ム』第24号,神奈川大学国際経営研究所,

31-38ページ.

小島大徳[2013b]「株式会社の『崩壊』と新 会社制度の『創造』」『月刊金融ジャーナル』

2014年1月号,金融ジャーナル社,38-39 ページ.

小島大徳[2010]『株式会社の崩壊—資本市を 幻惑する5つの嘘—』創成社.

小島大徳[2009]『企業経営原論』税務経理協会.

小島大徳[2007a]『市民社会とコーポレート・

ガバナンス』文眞堂.

小島大徳[2007b]「コーポレート・ガバナン ス政策論の基礎的研究-市民社会を基にし たコーポレート・ガバナンス原則論の進展

-」『国際経営論集』第34号,神奈川大学 経営学部,15-27ページ.

小島大徳[2004]『世界のコーポレート・ガバ ナンス原則−原則の体系化と企業の実践−』

文眞堂.

KOJIMA, Hirotoku, 2007, Principle of Corporate Governance, Kokusai Keiei Ronshu, No33, Kanagawa University Faculty of Business Administration, pp.

11-31.

資料

日 本 政 府[2014a]『「 日 本 再 興 戦 略 」 改 訂 2014-未来への挑戦-』

日本政府[2014b]『「日本再興戦略」の改訂~

改革に向けての10の挑戦~』

日本政府[2014c]『これまでの改革の主な成 果と新たな取組』

日本版スチュワードシップ・コードに関する 有識者検討会[2014]『「責任ある機関投 資家」の諸原則≪日本版スチュワードシッ プ・コード≫~投資と対話を通じて企業の 持続的成長を促すために~(スチュワード シップ・コード)』

コーポレート・ガバナンス原則

Cadbury Report, 1992, Report of the Committeeon the Financial Aspects of Corporate Governance.

OECD, 1999, OECD Principles of Corporate Governance.

OECD, 2004, OECD Principles of Corporate Governance 2004.

参照

関連したドキュメント

は合理的に行動するよう求められることになり︑これは憲法上保障された自分の身体について何がなされるべきか

論に対する批判的なまなざしに因るものであると考えられるのである︒

Appendix B-3:コーポレート・ガバナンス評価システムの指標データ基本統計量 [2011 年] 基本 項 目 資本効率 資本効率 資本効率 資本効率 資本効率 資本効率 安定性

する。逆に・唯・ト業ならば為替レー/は上昇することがわか洲

るにもかかわらず、行政立法のレベルで同一の行為をその適用対象とする

コーポレート・ガバナンスや企業ディスク そして,この頃からエンロンは徐々に業務形態

政策上の原理を法的世界へ移入することによって新しい現実に対応しようとする︒またプラグマティズム法学の流れ

1.はじめに