翻刻『会稽多賀誉』(上)
著者 翻刻の会
雑誌名 同志社国文学
号 74
ページ 96‑132
発行年 2011‑03‑20
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012695
翻刻
『 会 稽 多 賀 誉
﹄ ︵ 上 ︶
翻 刻 の 会
一︑ 底本 には 刷り が比 較的 よい と思 われ る︑ 大阪 府立 中之 島図 書館 の七 行九 十七 丁本 を用 いた
︒ 二︑ 底本 を忠 実に 翻刻 する こと を原 則と した が︑ 次の よう な校 訂方 針に 拠っ た︒ 本文 は文 字譜 を手 掛か りに して
︑適 宜改 行を 施し た︒ ただ し︑ 道行
・景 事の 類︑ 会話 の途 中等 では 改行 しな かっ た︒ 各丁 の表
・裏 の終 わり は︑ 丁数 の数 字と オ・ ウの 略号 を︵
︶で 示し た︒ 仮名 は現 行の 字体 に統 一し た︒ ただ し︑ 感動 詞︑ 送り 仮名
︑捨 て仮 名の 類以 外の
︑本 文中 の﹁ ニ﹂
﹁ハ
﹂﹁ ミ﹂ は
﹁に
﹂﹁ は﹂
﹁み
﹂と した
︒ 漢字 は︑ 一部 の異 体字 を除 いて は︑ 原則 とし て通 行の 字体 に統 一し た︒ 漢字
・仮 名と もに
︑誤 字︑ 脱字
︑当 て字
︑仮 名遣 い︑ 清濁 は底 本の 通り とし た︒ 特殊 な略 体︑ 草体
︑合 字等 は現 行の 表記 に改 めた
︒ 畳字 は︑ 平仮 名は
﹁ゝ
﹂︑ 片仮 名は
﹁ヽ
﹂︑ 漢字 は﹁ 々﹂ に統 一し た︒ ただ し︑
﹁〳 〵﹂ はそ のま ま残 した
︒ 文字 譜の 類は すべ て採 用し
︑本 文の 右傍 の適 切と 思わ れる 位置 に翻 字し た︒ 三︑ 本文 の翻 刻は
︑次 に掲 げる 翻刻 の会
︵学 部学 生の 研究 会︶ の会 員に よっ てな され た︒ 樋口 孝栄
︑前 泉有 里︑ 内川 澄恵
︒ 文字 譜︑ 改行 及び 本文 の最 終確 認は 山田 和人 が担 当し た︒
(山 田和 人)
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
九六
浅沢 の杜 若 吉原 の庭 桜
会
稽 多 賀 誉
座本
竹本 金蔵 後見
竹本 政太 夫 元げん地
弘こうウ
建けん
武ふ の大 乱ン
も切 鎮しつめ たる 足あし
利かゞ
の︒ 数ハル
代重 るナ
家の 風︒ 靡なひ
き ウ
随ふ 其中 中に
︒南ウ 朝ン
の余よ 類るい
迚及 ばぬ 譬たとへ 蟷とう
螂らう
が︒ 己ハル
をレ
知ラ
ぬ 工ミ
にて
︒屢しば 〴〵 ウ
四海 を騒中 がせ ば︒ 今ウ もや 戸ざ す清きよ
見が 関︒ 固かた
め ウ
の役 の足 利武 士兵 具に ひし と身ハル
をか ため
︒眼 を 配くばり し有フシ
様マ
は 事中 厳︒ 重に 見へ にけ り︒
⃞
関文地ウ
のこ なた の門 外ン
に差 扣へ たる 諸家 の武 士︒ 関ハル
所に 向イ
声色 高く
︵一 オ︶ 某詞 事は 仁につ
木き 弾たん
正せう
が家 中筆 森甚 右衛 門︒
⃞
拙出
者は 細 川頼より
之ゆき
が家 来黒くろ
崎さき
文太
︒⃞加
石堂 右う 馬ま ノ頭かみ
が家 臣刎はね
川金 兵衛
︒其 外西 国方 の家 中の 者共
︒一 ツ昨 日よ り御 頼申 せし 通り
︒何 卒 此関 所を
︒御 通し くだ さる ゝ様 偏ひとへ に頼 み存 ると 詞フシ
を揃 へ申 にぞ
︒⃞出
関地ハ
守ル
こな たに 打色 向ひ
︒再さい詞
度ど の御 頼み 御尤 もな れ共 先達 て申 渡せ し通 り︒ 此度 鎌倉 に謀む 叛ほん
の 族やから 有て 事を なさ んと 計る 故︒ 俄にはか に固かた
むる 此関 所︒ 徃来 をと ゞむ るも 武将
︵一 ウ︶ 家の 下知 とし て我 々が 計ら ひな らず
︒ナ フ刑 部殿
︒⃞和
成程 数馬 之助 殿申 さる ゝ通
︒リ
かく 騒さう
動どう
の時 節な れば 武家 公家 の御 内は 申 に及 ばず
︒町 人百 性に 至る 5堅 く徃 来は 叶ひ ませ ぬと
︒尖する ど 地ウ
き詞 に諸色 家中 は︒
⃞文
詞ス リヤ いか 様に 申て もお 通し 下さ るゝ 事 は叶 ひま せぬ かナ
︒⃞出
ハテ 厳げん
命めい
なれ は是 非に 及ば ぬ︒ 今暫 く御 逗留 有て 開イ
門の 時節 を相 待れ てよ から ふと
︒⃞文
聞地ハ イル
て皆 々投なけ
首し しフシ
ばし 詞も なか りし が︒ い詞 づれ もお 聞な さる ゝ通
︒リ
厳重 たる 御両 人の お詞
︒⃞加
ハテ 扨︵ 二オ
︶難 義な 事で ござ る︒ 此 上は 是非 に及 ばぬ
︒又 々旅りよ
宿しゆく へ立 帰り
︒開 門イ
のン
時節 を待 て通 りま せふ
︒⃞文
い地ハ
かル
様マ
左様 と打 連て 迷めい
惑わく
なが ら諸 家中
︒は
︒
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
九七
旅フシ
宿を さし て立 帰る
︒
⃞和
跡地ハ
にル
佐さ 山が 数色 馬に 向ひ
︒ナ詞 ニ坂 本殿
︒此 頃鎌 倉の 騒動 慥たしか な様 子フ
お聞 なさ れた かと
︒⃞出
い地ハ
へル
ば数 馬は 小色 声に 成︒ な詞 る程 佐 山殿 にお 咄申 さん と存 る折 から
︒先 刻ン
鎌倉 より 密ひそか の注ちう
進しん
︒彼 宇ノ
治の 常しやう 悦ゑつ
が隠ゐん
謀ぼう
顕ハ
れ切 腹致 し相 果る
︒鞠まり
ヶか 瀬せ が一いつ
統とう
も 過くは
半召 捕リ
しと いへ 共︒ いま だ爰 かし こに 隠れ 忍ぶ との 義で ござ る︒
⃞和
ムヽ いか 様マ
左様 でも ご︵ 二ウ
︶さ らふ
︒然 らは 徃来 の人 留メ
も今 暫く と相 見へ ます る︒ ヤイ 者共 此上 共に 油ゆ 断だん
なく ソレ 心を 付よ と︒ 両人 が猶 厳おこそ
にか
守ウフ
りシ
居る
︒⃞加
清地ハ
見ル
が関 に影色 見 ゆる
︒其 ハル
望もちフ
月 シ
のか中 ゞみ 山︒ 早さウ 枝へた
の家 の譜ふ 代の 臣︒ 唐からハ
橋はしル
作十 郎は 鎌倉 の︒ 騒ウ にキ
いと ゞ急 がる ゝ旅たび
の道 さへ 侭な中 らで 閉小ヲ
クリ
る︒ 心 も板いた
庇ひさし 関の こフシ
なた に立 寄て
︒ハ詞 ツア
︒昨 日御 届ケ
申せ し多 賀の 家中
︒唐 橋作 十郎 でご ざる
︒御 両所 へ直 談の 義も ござ れば
︒ 開イ
門の 義を 頼ミ
存る
︒此 旨取 次呉くれ
られ よと
︒⃞文
聞地ハ
てル
下部 が二 人色 に向 ひ︒ 昨詞 日至たう
着ちやく 致さ れし 多賀 の家 中唐 橋作 十郎 殿︒ 御両 所様 へ御 直談 の旨 有レ
ば︒ 開門 のお 頼み
︒い かゞ
︵三 オ︶ 計ひ 申さ んや と伺 へば
︒⃞和
刑地ウ
部 頭かしら を打色 振︒ 我詞 々に 直談 とは やは り 関所 を通 して 呉くれ
よと の事 所しよ
詮せん
叶は ぬぼ つ返 せと
︒⃞出
い地ハ
ふル
に数 馬か 暫し とと色 ゞめ
︒ナ詞 ニ佐 山殿
︒当 時武 将の 御覚 よき 多賀 の家 中︒ 直ぢき
談だん
と有 に様 子も 聞ず 其侭 には 帰さ れま い︒ 一ト
通リ
承は つた 上の 事と
︒⃞和
いへ ば刑 部は 不興けう
げに
︒ア ヽ無 益の 事に 隙取 は面めん
倒どう
なれ 共︒ 相役 の其 元の お詞 無下 にも 致さ れま い︒ 去リ
なが ら家 来の 分は 相叶 はぬ
︒作 十郎 一人 門を 開い て是 へ通 せ
⃞文
ハ地ハ
ツル
と下 部が 門色 外へ
︒御 直詞 談と 有ル
故御 一人 はお 通し 申︒ 御家 来衆 は相 叶ひ ませ ぬと
︒云地ハ
つル
ゝ開 く門フシ
の外
︒⃞加
作地色
十ウ
郎は 家来 を招 き︒ ヤ詞 イ其 方は なと 耳地中
︵三 ウ︶ に口
︒ナ詞 合点 か︒
⃞文
ハア 畏かしこ
つま
てご ざり ます
︒⃞加
早行
︒〳 〵と か地色
しウ
こに 追や り︒ しフシ
づ〳 〵 と打 通リ
︒両地ハ
人ル
に黙もく色
礼し
︒御詞 両所 共に
︒御 勤きん
番ばん
御苦 労に 存ス
ると
︒⃞出
挨地ハ
拶ル
有レ
は数色 馬之 介︒ 役詞 義な れば さの み苦 労に も存 ぜぬ
︒
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
九八
シテ 我々 に御 直談 とは いか 様フ
の義 でご ざる な︒
⃞
ア加
イヤ 余の 義で もご ざら ぬ︒ 昨日 より 再さい
度ど も申 上る 通リ
と︒
⃞
聞和
て刑 部か
︒ イヤ 此関 所徃 来の 義で ござ らふ なら ば叶 まイ
せぬ 罷成 ませ ぬと
︒⃞加
に地ウ
べな き詞 に猶 も手 を色 さげ
︒成詞 程お 役目 を大 切に 思し 召 ての 義︒ 御尤 に存 る拙 者が 主人 多賀 の大 領︒ 在鎌 倉と 申︒ 又常 々家 中の 者へ 申渡 さる ゝに は︒ 鎌倉 の大 変イへん
と承 らば 一時 も 早く かけ 付︒ 武︵ 四オ
︶将 の御 所を 相守 るが 肝要 と︒ 急て 申付 ござ れば
︒ケ 様フ
の時 節に 遅ち 参さん
致す は不 忠の 至いた
り切 腹に も及 ぶべ き事
︒斯 申せ ば︒ 武士 たる 者の 一命 を惜 むに 似た れ共
︒何 の益ゑき
なき 犬死 を致 さば
︒唐 橋の 苗めう
字じ の穢けが
れ二 つに は主 人の 名 5汚よご
す道 理︒ そこ が武 士は 相互
︒御 両人 のお 心入 を以 て︒ 拙者 が家 来計 御通 し下 され ふな らば 千万 忝ふ 存る と︒
⃞和
頼地ハ
めル
とさ らに 聞色 入ず
︒コ詞 レサ 作十 郎殿
︒ソ リヤ 昨日 より 申さ るゝ と同 事シ
︒其 方が 遅参 して 不忠 にな らば 此方 も通 して は役 目の 無念 越おち
度ど に成 ます
︒⃞加
スリ ヤい か様 にお 頼申 ても
︒⃞和
くど い事 成ま せぬ と︒
⃞加
す地ウ
るど き詞 に思 案中
︵四 ウ︶ を極 め︒ 然詞 らば 後日 に御 両所 の越 度に なら ざる 様︒ 質しち
物もつ
を差 置ま せふ
︒が いか ゞで ござ る︒
⃞出
フウ シテ 又拙 者共 か申 訳に 成べ きと 有質 物は いか 様の 品で ござ る︒
⃞
ソ加
リヤ 外で もご ざら ぬ︒ 拙者 が片かた
腕うで
︒⃞出
スリ ヤ其 馬手 の片かた
腕を
︒質 物と な︒
⃞
成加
程︒ 御先 祖八 幡殿
︒近 くは 楠 正成 是等 の名 将は
︒計けい
略りやく を以 て諸しよ
軍ぐん
をつ かふ
︒我 々ご とき の侍 は戦せん
場せう
に 臨のぞみ 分ぶん
捕とり
高かう
名めう
が第 一︒ 其高 名致 す此 片腕
︒夫 をレ
当 所に 残し 置が
︒拙 者が 質物 でご ざる と︒
⃞出
聞地ハ
てル
数馬 は打色 点キ
︒御詞 尤の お詞 我々 が役 目を 思し 召て
︒ま さか の時 の御 用に 立る 片腕 の質 物︒
⃞
ス加
リヤ 御承 知で ござ るか な︒
⃞
い和
かに も承 知︵ 五オ
︶致 した 上は 約やく
束そく
の其 片腕 と︒ 刀地ウ
に手 をか け立 寄刑 部⃞出
数 馬色 押留
︒コ詞 リヤ いか ゞな さる ゝぞ
︒⃞和
イヤ 作十 郎か 広言 の片 腕イ サ請 取ふ と詰 かく る︒
⃞加
イヤ 騒が れな 刑部 殿︒ 拙者 が片 腕 をお 渡シ
申に
︒其 元の お刀 は汚 さぬ
︒只 今お 目に かけ ませ ふと
︒か地ウ
しこ に向 ひ︒ ヤ詞 ア〳 〵家 来共
︒申 付し 一品 を是 へ持
︒
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
九九
⃞文
ハ地ハ
ツル
と答 へて 持出 る此 場の 首尾 も納 れる
︒印ウ は丸 に一 文字 直ク
成武 士の 身の かた め︒ 具足 の櫃 を直 し置
︒⃞加
作地ウ
十郎 詞を 改色 め︒ 戦詞 場に て命 を忘 るゝ は武 士の 常と は申 なが ら︒ まさ かの 時君 の御 用に 立5 は︒ 全ふ する が身 の肝 要︒ 其命 を保たも
つ随すい
一チ
の此 具足
︒作 十郎 が片 腕共
︒又 両腕 共︵ 五ウ
︶存 るか ら︒ 此関 所に 残し 置片 腕の 身が はり 何と 御承 知下 され ふか な︒
⃞出
ホヽ ウ遖 の頓 智遉 は多 賀の お家 柄ヤ モ驚 入キ
た御 計ラ
ひ︒ 此上 は其 元の 片腕 を清 見が 関所 相守 る︒ 坂本 数馬 之介 がし つか りと 預リ
申た
︒ 勝ツ
手次 第に 通り 召れ いと
︒⃞和
いふ を傍 から 支さゝ
へる 刑部
︒イ ヽヤ そり や成 ぬ︒ 譬貴 殿が 承知 さつ しや つて も︒ 拙者 も関 所の 横目 の役
︒⃞出
サヽ 其御 承知 ない を某 が我 侭の 計ひ も︒ やは り武 将の お為 でご ざる
︒⃞和
そり や又 どふ して
︒⃞出
ホウ 南朝 の残さん
党とう
謀 叛の 萌きさし 顕ハ
れ︒ 或イ
は亡 び︒ 又は 召捕とら
るゝ とい へど いま だ隠 忍レ
ぶ 族やから も有
︒か ゝる 時節 に武 将の 膝元
︒役 に立 べき 武士 を
︵六 オ︶ 都へ 通す が我 侭か な︒
⃞和
サア 夫は
︒⃞出
ホウ 常しやう 悦ゑつ
秋夜 が荷か 膽たん
の武 士数あま
多た 有と 承つ たが
︒君 の守しゆ
護ご する 侍を 妨さまた
召げ
るゝ 貴殿 の心 底︒ 扨は 謀反 に同 心か
︒⃞和
イヤ 全く 以て
︒⃞出
ハテ 左様 なら ば身 共が 計ひ
︒横 目の 貴殿 のお とゞ めは 御無 用〳 〵︒
⃞和
然 らば いか 様フ
共致 さふ 併後 日に お咎 有メ
ば︒
⃞出
ヲヽ 其時 は身 共が 切腹
︒貴 殿の お腹 は借 ませ ぬと
︒⃞和
やフシ
り込 られ てむ つと 顔︒
⃞加
作地ハ
十ル
郎は 数馬色 に向
︒イ
段詞 々の 御懇 情礼 は重 て申 上ん
︒⃞出
イヤ 〳〵 是迚 も武 将の 御為
︒二 つに は多 賀殿 の忠ちう
勤きん
を感かん
ぜし 故︒ お 礼に 及ば ぬ急 のキ
道中
︒⃞加
然ら ばお 暇仕 らふ
︒⃞出
シテ 同勢 の御 人数 は︒
⃞加
以上 三百 七十 五人 と︒
⃞和
聞て 佐山 が 仰ぎやう 天し
︒ 纔わづか 五 百石 の︵ 六ウ
︶作 十郎 か同 勢三 百七 十五 人と な︒ 合点 の行 ぬと 咎る 詞︒
⃞出
数馬 引取
︒俄 に多 賀は 大大 名︒
⃞和
シテ 又御 辺の 合 印は
︒⃞加
丸の 内に 一文 字︒
⃞和
とく と改 通し てく れふ
︒ヤ ア〳 〵者 共東 西の 門を 開ケ
︒⃞文
ハフシ
ツと 答へ て押 開く
︒
⃞出
坂地色 ハル
本数 馬声 高く
︒江詞 州か ゞみ 山の 城主 多賀 殿の 家中
︒唐 橋作 十郎
︒同 勢三 百七 十五 人通 まリ
せい
︒三
ハ人地ハ
ツル
と答 へて 門外 に︒
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇
〇
此ウ 頃と ゞま る旅中 人共
︒仁ウ 木細 川吉き 良ら 石いし
堂どう
︒西江戸 キン
国か ため の諸 家の 臣︒ 我ウ も〳 〵と 押合 へし 合︒ 皆唐 橋が 合色 印︒ 扨ハル
もツ
丸い 関守 と︒ 真ハル
一文 字に 打通 れば
︒⃞文
ひウ つし と立 切西フシ
の木 戸︒
⃞加
跡地ウ
は唐 橋両 人に
︒式しき
礼目もく
礼立 出る
︒︵ 七オ
︶三
外人そとハ
面もル
に待 たる 諸士 の色 面々
︒作詞 十郎 殿︒ 合印 のお かげ で︒ 首尾 能︒
⃞加
シイ 声が 高い
︒と 押地ウ
ゆる 唐橋
︒⃞和
内ウ にも 扨は と気 の付 佐山 立ウ 寄東 の門 の戸 に︒
⃞
止出
るム
坂本
︒⃞文
立フシ
切下 部︒
⃞
イ加詞
サ参 らふ と夕地ハ
告ル
の︒ 鳥の 音な らぬ 弁べん
舌ぜつ
にて
︒関ウ を遁 しレ
計けい
略りやく を︒ 日ウ 本に 伝ふ 唐橋 が︒ 才色 智の
︒ 程こ そ三
〽重上
名に 高き 第二 東地ハ
路ル
に中
︒北ウキ
国ン
とよ ぶ︒ 吉ハル
原の
︒名 にし 桜ウ の中 の町
︒みウ んな 見に くる 色く中 らべ 老ウ 木︒ 若木ハル
のわ かち中 なく
︒花ウ の王わう
位ゐ へ参さん
内たい
の沓くつ
音おと
︒なフシ
らぬ 駒下 駄や
︒衣地ハ ルキ
紋ン
はい かな 大中 名も
︒及ウヲ クリ
ばぬ 位松 田屋 の三ハル
国と いへ る全半 盛の
︒外ウ 八文 字の 道中中 に︒ おハル
キン
先︵ 七ウ
︶手 を ふる 振ウ 袖中 の︒ 禿かぶろ か対つい
のき んし 紋︒ 帯ウ の厚あつ
房ふさ
挟はさみ 箱ゆハル
たん に包ウ 爪つま
琴こと中
も︒ 弓ゆみフ
六 シ
張の
︒た めし かや
︒ 跡地色
トウ
備そな
への 大尽しん
はか ゞみ 山の 分ン
地︒ 大ハル
道寺 学太中 郎︒ 己おのウ
が威ゐ 勢せい
を花 の本
︒ト
町ハル
幅はゞ
狭せま
しと 立中 留り
︒ナ詞 ント 軍蔵
︒一いつ
双そう
玉ぎよく 臂ひ 千人 の枕
︒半はん
点てん
の朱しゆ
唇しん
万はん
客かく
掌なむ
と云 しに 違は ぬ︒ 三国 一ク
の三 国ニ
色香
︒揚やう
貴き 妃ひ 勝まさ
りの 俤おもか
はげ
︒江 口の 君に 由縁
ゆ か
有り
普ふ 賢げん
像ぞう
より 糸桜
︒ 少地ウ
しは 風に なび けよ と︒ 戯たま
ふ フシ
れか ゝれ ば︒ 三地色
ハル
国は 浮ぬ 物思中 ひ︒ 罪詞 なふ して 配はい
所の 月と
︒梅 や桜 も春 風の
︒障 りが 有て は中 々 に︒ 目に 付物 じや ござ んせ ぬと
︒す地ハ ルウ
んと
︒背 ける
︒顔ウ にさ へ︒ 花キン
と争 ふ品中 形チ
︒実ウキ
手ン
折た き︒ 心フシ
地せ り︒ 傍地ハ
かル
ら差 出る 松まつ
浦軍ぐん色
蔵︵ 八オ
︶コ詞 レサ 太夫 殿そ りや どふ でご さる
︒御 主人 学かく
太郎 様は 大道 寺の 若殿
︒こ なた に迷 ふて 此程 の 廓通 ひ︒ 金銀 にお 厭いと
ひな く中 の町 を一 面めん
に桜 の林 も︒ こな たの 心を 慰ん 為︒ お心 にさ へ随 へば
︒直 に根 引の 玉の 輿︒ 何ン
と
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇 一
乗ル
気は ござ らぬ か︒ ヲヽ アノ 軍蔵 様の いは しや んす 事は いな
︒う はの 空そら
吹ふく
恋風 にも
︒な びけ ばな びく 客有 ど︒ 世地中
に憂 ふし の傾ハル
城を
︒国長地
傾く ると 諷は るゝ も契ウ る情 とケ
読マ
る中 ゝも
︒其ウ 源は 誠に て︒ 操みさ
ほ ハル
立る が廓 の教おし
へ︒ 野や色 暮ぼ な事 を云 しや んす なと
︒ やウ り込 られ て頬 ふく らし
︒せウ ふ事 なし に懐 中よ り︒ 筆ウ 取出 しさハル
ら〳 〵と
︒書フシ
認る も負 おし み︒ 学地色
ハル
太郎 手に 取中 上︒ ム詞 ヽナ ニ︒ 多賀 染の
︒采 女
う ね
はめ
強い 様な れど
︵八 ウ︶ 金の 切レ
たは 地が 弱よは
いか ら︒ 読ミ
人松 浦軍 蔵︒ こり や 中々 出か しお つた と褒地ウ
美の 詞に 出ハル
かし 顔︒ 辺フシ
りの 桜に 結付 れば
︒三地色 ハル
国は くは つと せき 上中 て︒ お詞 心に 随は ぬ迚 当り 眼に 采女 様︒ 恥を かゝ せる 其短たん
冊ざく
︒そ ふさ しや んす りや 猶の 事︒ 逢通 すの が廓さと
の張
︒身 共の 金こん
輪りん
梛な 落らく
5く どき 落す が武 士の 意地
︒ヲ ヽし つこ ふ云 てフ
見る 気な ら勤 すメ
る身 の耳 の役
︒ハ テモ 聞て 居ま すで ござ んせ ふ其地ウ
頤おとが
をい
と学 太郎 仡ウ 相か はれ ば付 々の 禿ハル
中居 が取 ま中 いて せハル
いて は行 ぬ恋 の中 道︒ 色ハル
よい 返事 松田 屋で
︒晩 はお 寝間 の中 直り と︒ 機ウ 嫌取 々仇 口も 其ハル
場︒ 粉キ
らし 騒キ
立︒ 江フシ
戸町 さし て伴 ひ行
︒ 大地色
道ウ
寺︵ 九オ
︶美 作ノ
守義中 国︒ けウ ふ遠とう
乗の 出立 もチ
胸ウ に逸いち
物もつ
︒深ウ 編あみ
笠かさ
︒出ウ 合頭 に軍 蔵が
︒夫ハル
と見 るよ り両 手を つ中 き︒ 是詞 は〳 〵 大殿 には 軽々 敷キ
御通つう
行げう
と︒ 土地ハ
にル
頭を ひ色 れ伏 は︒ い詞 かに 軍蔵
︒本 家た る早 枝の 家か 系けい
︒再さい
興こう
せし は我 家の 高ウ
名︒ 夫レ
に何 ぞや 今百 万石 を領 する 内︒ 纔わづか 分地 七万 石︒ 多賀 の大 領れう
か旗き 下か にく ゞま る︒ 其無 念さ 止やむ
事な し︒ 然る に此 度︒ 室町 殿の 厳命 によ つて
︒早 枝家 の重てう
宝ほう
献けん
上の 三品
︒ 術てたて を以 てツ
奪うば
ひ取 ば︒ 家押おう
領れう
のよ い手 がゝ り︒ 成程 イヤ モ遖 の御 計けい
略りやく
︒則 紅チこう
梅ばい
の御 旗はた
の義 は︒ 先キ
達て 奪ひ 置ク
︒此 上は 菅かん
家け の一 軸ぢく
︒柴しば
船ふね
の花 生︒ ヲヽ サ其 術は ナコ リヤ かう
︒〳 〵
地ウ
と 点うなづ きU く相 口同ど 士し
︒人ハル
喰 馬の 両人 はしフシ
めし 合し て別 れけ る︒
︵九 ウ︶
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇 二
雪地ウ
と見 る︒ 花ハル
フシ
の雪 吹
ふ ゞ
をき
踏中 分ケ
て︒ こウ がれ 廓の 其主 に契ウ もリ
深き 中ハル
の町
︒采フシ
女之 介は 立留 り︒ コ詞 リヤ 定平 太夫 が急 にフ
逢ね ばな らぬ
︒中 の町 に待 て居 ると
︒文 おこ せし には 様子 が有
︒ロ
心地色
なウ
らず と立 つ居 つ︒ 花ウ の香 した ふ蝶 々の 春風 いフシ
とふ 風情 也︒ い詞 か様 御近きん
習じゆ
も召 連つれ
られ ず︒ どれ へお 越と 思ふ たに
︒夫 でレ
様子 がさ らり と知 たレ
︒先地ウ
暫ク
と定 平が
︒有ウ 合床せう
几き 花の かげ
︒腰ハル
打 かけ て采 女
う ね め 色
之助
︒ナ詞 ント 見事 でな いか
︒吉よし
野の 初はつ
瀬せ も及 ぬハ
と︒ 詠地ウ
る枝えだ
に以 前ン
の短 冊︒ 何ウ 心な く手 に取色 て︒ 多詞 賀染 の采 女は 強つよ
い様 なれ ど︒ 金の 切レ
たは 地が 弱よは
いか ら︒ 読人 松浦 軍蔵
︒ム ヽ扨 は三 国か 恋の 意趣
︒学 太郎 が計 ひに て︒
︵十 オ︶ 我に 恥 辱を あた ふる 所存
︒う ぬ軍 蔵め 一討 と欠地ウ
出す を定 平が 留ウ ても まと まら ぬ若ハル
気の 逸徼
︒ヤ レ暫 くと 声を かけ 立ウ 出る 唐橋 瀬左 衛 門︒ 聞ハル
捨て 欠行 袖︒ しつ かと 留め て︒ チ詞 ヱヽ 情な や浅 まし や︒ 百万 石の 領主 たる かゞ み山 の御 舎弟
︒御 部屋 住と は申 なが ら 御大 切な る御 身に て︒ 傾城 遊女 に 魂たまし
奪いうば
はれ
︒昼 夜を 分た ぬ御 遊興
︒殊 に倍ばい
臣しん
の軍 蔵づ れ︒ 取に 足ラ
ざる 意趣 を以 てツ
︒場 所を きら はず 御手 討に なさ れん とは
︒ヱ ヽ是 非も なき
︒御 所存 じや よな
︒殊 更ラ
御分 地大 道寺 美作 御親 子ン
︒夫 にレ
付添
︒佞ねい
人じん
原︒ 事が なあ らば 家国 をも 奪ハ
ん企
︒此 頃は 学太 郎廓 へ入 込︒ 若殿 御寵てう
愛あい
︵十 ウ︶ の三 国を くと くと 承ハ
り︒ 合点 行す と 窺うかゞ
しひ
に︒ 案に 違は ずま つ其 ごと く御 身を 怒いか
らせ 過あやま
さち
せ︒ 夫レ
を云 立イ
追イ
退しりぞ
んけ
との 工み
︒そ この 所へ 御心 の付 ざる か︒ 一人 たん れい なれ ば一 国ツ
乱ン
の 基もとい
︒御 身を 忘れ 此行ふる
跡まい
︒向けう
後こう
ふつ 〳〵
︒思 し切 此義 とゞ まり 給は らば
︒兄地中
君は 申に 及ハ
ず︒ 一ウ 家ツ
中の 悦び
︒御ハル
聞キ
届下 され と 怒いかり つ宥なため
つ唐 橋が
︒誠せい
心しん
尽ク
す諫かん
言げん
は人 の中 なる
︒人フシ
也け り︒ 采地色
ハル
女之 介理中 にふ くし
︒あ詞 やま つて 改ム
るに 憚り なき 聖せい
賢けん
の教おし
へ︒ 先ン
刻よ り諫 言采 女之 介聞 届た
︒今 こそ 誠に 心を 改メ
︒三 国 が事 は思 ひ切
︒ル
武士 の詞 に二 言な し︒ 安堵 せよ 唐橋
︒ハ アヽ 有が たし 忝し
︒拙 者ご とき の御 諫言 御聞 入下 され しは
︒︵ 十
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇 三
一オ
︶冥地ハ
加ル
に余 る仕 合せ と土スヱ
に頭 を摺 付中 れば
︒ヲ詞 ヽ其 方か 志こゝろさ 過し
分ン
なぞ や唐 橋︒ 定平 供せ よいフシ
ざ帰 らん と立 給ふ を︒ 暫 しと と色 ゞめ
︒其詞 御一 言ン
に相 違も あら じ︒ イヤ ナニ 定平
︒若 殿様 にも 今宵 は 廓くるは の御 名な 残ごり
︒其 方付 添イ
御大 切に 心を 付︒ 茶屋 方に て御 酒一 献︒ ハア 委細 畏かしこ
りま
まし てご ざり ます
︒若 殿様
︒返 す〳 〵も 御短 慮な く︒ 御帰 館願 ひ奉 ると
︒い地ハ
ふル
も心 に一 思 案忠 義に かた き︒ 唐ウ 橋が 引わハル
かれ てぞ
三重
〽行 も又
︒ 爰地ニ
上リ
は歌
吉哥ハ
原ル
中の 町の 夜︒ 桜花 にう かれ て曲ハル
輪へ 通ひ
︒格かうウ
子し 覗のぞ
けば 嬉し やし んぞ
︒招ウ く禿 が相 図の 手管くだ
︒忍上 び逢 夜の 其ウ 楽し み は千 代も かは らじ かは らじ な︒ 諷ナヲ
ス地 ハル フシ
ふ唱 哥中 に︒ 間押 へさトル
へつ
︒さ ゝ︵ 十一 ウ︶ れつ 盃の
︒さハル
ゆる 座フシ
敷も 浮立 ぬ︒ 采地ウ
女か 済すま
ぬ 顔色 を︒ いハル
さめ る亭てい
主しゆ
又色 六か
︒コ詞 レハ 又ど ふで ござ りま す︒ やま たの 大蛇
お ろ
にち
取巻 れた
︒稲 田姫 見る 様に
︒去 迚リ
はめ いり ま す︒ マア 〳〵 一つ お上 りな され ませ
︒イ ヤ〳 〵酒 は呑のま
ぬ︒ 置て たも 〳〵
︒ハ ヽア 扨は お気 の浮 ぬカ
のは
︒お いら んの お出 が ない 故︒ 併シ
三国 様も 此間 は︒ 学太 郎様 の揚あけ
詰つめ
︒殊 にア ノ学 太郎 様は 大の 悋りん
気き じや の大 やき 餅︒ 揚の 内は 女房 じや と︒ 三国 様の 傍そば
一寸 も放はな
れず でご ざり ます
︒ヲ ヽソ レ〳 〵あ んな お客 を勤 るも
︒い やな 事で はな いか いな と︒ 口地ハ
々ル
譏そし
る其フシ
中へ
︒出地ハ
るル
軍蔵 千鳥 足︒ 亭詞 主〳 〵︒ 又六 〳〵
︒女 夫な がら 爰へ 来て
︒身 共は 構は ず何
︵十 二オ
︶か こり や︒ 采女 殿計 が客 で︒ 身共 は客 でな いか
︒屋 敷で こそ 倍はい
臣しん
の本 家の と別 れて も有 ふず れ︒ 廓て は一 蓮詫 生︒ それ に何 ぞや
︒い けも せぬ 若殿 風︒ うぬ がWあい
方 の女 郎を 人に 取ラ
れ︒ せふ 事な しの 一人 酒︒ 金の ない のは 不便 な物 だ︒ ヱヽ まじ 〳〵 とし たし やつ つら だと
︒い地色
ふウ
に采 女は せき 立顔 色︒ 定ウ 平透すか
さず 立寄 て︒ 軍ウ 蔵を 投なけ
付れ ば︒ 髻ハル
を取 てぐ色 つと 引よ せ︒ 某詞 をさ みし たる 落らく
首しゆ
の短 冊︒ 殊更 今の 悪口 雑言
︒ 今一 度云 て見 よと
︒に地ハ
じル
り付 られ 手を 合せ
︒ア詞 申〳 〵マ ア〳 〵待 て下 さり ませ
︒其 短冊 は学 太郎 様や 官兵 衛め が︒ 徃生 つく
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇 四
めに 筆取 たは
︒私 は誤 り︒ 命計 はお 助ケ
︵十 二ウ
︶と
︒あ地ハ
らル
れの 様な 涙を 流し
︒^フシ
廻る こそ 見苦 しき
︒ヱ詞 ヽ娑しや
婆ば ふさ げの 畜 生め
︒手 討に する も刀 のナ
穢けが
れ︒ 犬侍 の成 敗は まつ かう と︒ 眉地ハ
間ル
を鍔つば
にて 打破 れラ
︒ワ ツト 一声 身を もた へ︒ 苦ウ しむ 所を 定 平が
︒下ウ 緒手 早く 後手 に︒ 桜フシ
が本 へく ゝる 内︒ 采地色
女ウ
は用 意の 短冊 に︒ 返ハル
哥の 落首 とさ ら〳 〵〳 〵︒ 定ウ 平取 て打色 詠メ
︒大詞 道寺 いか んで 読は 横道 の︒ 苗字 にも れぬ 恥はぢ
を学 太郎
︒ハ ヽヽ ヽコ リヤ 若殿 出来 まし た︒ 是を 肴に 奥の 間で
︒御 酒一 献︒ 召上 られ よと 主地ハ
従ル
が︒ 打フシ
連奥 に入 ける
︒ 始地色
終ウ
小か げに 窺うかゝ ふ唐 橋︒ ずウ つと 寄て いま しめ 解︒ 辺ハル
りを 見廻 し︒ 料詞 理人 の作 右衛 門大 義〳 〵︒ そち が働 きを 以て
︒若 殿に
︵十 三オ
︶も 別ツ
条な く︒ 成ル
程︒ あな た様 のお 頼ミ
の通
︒リ
軍蔵 に面 体恰かつ
好かう
似に たる を幸
︒イ
若殿 様を 偽リ
此疵 を請 た故
︒御 立 腹も 納り
︒お 目出 たふ ござ りま す︒ イヤ モ身 が満 足此 上な し︒ ガ見 付ら れて は事 の妨
︒ケ
礼は 緩り と帰 宅の 後︒ 当座 の褒ほう
美ひ 金五 両︒ アヽ 勿体 ない 何の お礼
︒左 様な らば 唐橋 様︒ おさ らば
︒さ地ハ
らル
ばと 引別 れ奥 と口フシ
とへ 立て 行︒ 入地ウ
キン
相の
︒鐘 の響 きも
︒余ハル
所に 聞︒ 物キン
云フ
花の 色ウ 揃へ
︒浮中 ぬ三 国が
︒八フシ カヽ
文リ
字︒ 跡ウ に続 てイ
学大 尽︒ 番ハル
頭と 仲居 が取 巻て
︒入ウ 来 る茶 屋の 大騒
︒キ
イ詞 ヤナ ニ若 殿︒ 三国 殿の 全せん
盛せい
は︒ かう 見た 所が 花も 及は ぬ月 の丸 顔︒ さへ 〴〵 と雪 の肌はだ
より 黄金 の︒ 光り で浮 む千 両箱
︒お 差さし
図ず
︵十 三ウ
︶の 通勝 手5
︒取 寄ま して ござ りま すソ レ又 六︒ 早く 〳〵
︒心地ハ
へル
亭主 か勝 手よ り︒ かゝ へ出 たる 千ウ 両箱
︒座 敷へ どつ さり
︒イ詞 ヤも ふ学 太郎 様の 白 鼠ねづみ
︒忠 義一 疋受 てお りま す︒ アヽ コリ ヤ〳 〵亭 主︒ 其様 にの ぼし て くれ ない やい
︒其 白鼠 も若 旦那 の黒 鼠に はこ まつ た物 だて
︒何 とい ふ︒ 此学 太郎 を黒 鼠と は︒ ムヽ 大遖 とい ふ事 か︒ コリ ヤ 出か した
︒よ く見 立た 大夫 一の 慰ミ
に︒ 見立 尽で 其金 を︒ 手摑 次ミ
第に 取せ い〳 〵︒ こい つは ごう ぎた 〳〵
︒ま つ先 陣に 官
翻刻
﹃会 稽多 賀誉
﹄
一〇 五