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Academic year: 2021

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厚生労働科学研究費補助金(エイズ対策政策研究事業)

(総合)分担研究報告書

拠点病院集中型から地域連携を重視したHIV診療体制の構築を目標にした研究

研究分担課題 患者が地域の保険薬局を選んだ時に対応できるシステム作りに関する研究

研究代表者 猪狩 英俊 千葉大学医学部附属病院 感染制御部長 准教授 研究分担者 鈴木 貴明 千葉大学医学部附属病院薬剤部 副薬剤部長 研究協力者 築地 茉莉子 千葉大学医学部附属病院薬剤部 薬剤師

菅谷 修平 千葉大学医学部附属病院薬剤部 薬剤師

研究要旨

処方箋に基づき薬剤を調剤・交付する役割のある保険薬局において、地域連携を図る際の課題を明白と するとともに、実践可能なモデルや方法を提案する。

A.研究目的

強力な抗ウイルス療法(ART:Anti Retro virus T herapy)により、HIV/AIDS は長期生存が可能な疾患 となった。この結果、HIV感染症患者の高齢化が確実 に進み、HIV感染症患者に求められる医療も多様化 してきた。現段階ではHIV 拠点病院集中型の診療を 行っているため、抗HIV薬の調剤はHIV診療拠点病院 周辺の保険薬局を中心に行われている。しかし、HI

V感染症患者の課題に対応するために、HIV 拠点病

院と地域の医療機関との連携を重視した診療体制 を構築することが必要になってきており、今後地域 連携が推進された場合、患者が地域の保険薬局での 調剤を希望することも想定される。このような場合 にすべての保険薬局がスムーズに抗HIV薬の調剤に 対応できる必要がある。

本研究では保険薬局の抗HIV薬管理やHIV感染症患 者への対応における課題を調査し、解決に向けて実 践可能なモデルを提案する。

B.研究方法

1.自立支援医療(更生医療)指定薬局調査

千葉県内の自立支援医療(更生医療)指定薬局数、

所在地を千葉県、千葉市、船橋市、柏市の協力を得 て調査した。また現在、抗HIV薬を調剤している保険 薬局に対し、薬剤の在庫管理状況、服薬指導の実際、

病院との連携体制について実地調査を行った。なお、

本調査は千葉大学大学院医学研究院倫理審査委員会 の承認を受けて(受付番号3282)行った。

2.服薬指導時の問題点・留意点の調査

「1.自立支援医療(更生医療)指定薬局調査」にて把 握した千葉県内の自立支援医療(更生医療)指定薬 局、ならびに現在抗HIV薬を調剤している千葉県内外 の保険薬局212施設に対し、薬剤の在庫管理状況、服 薬指導の実際、病院との連携体制などについて質問

紙による調査を行った。なお、本調査は千葉大学大 学院医学研究院倫理審査委員会の承認を受けて(受 付番号3282)実施した。

3.抗HIV薬調剤時における服薬指導重要項目の作成 千葉県HIV拠点病院10施設のHIV担当薬剤師を対象 に、抗HIV薬に関する服薬指導で特に重要な10項目と その優先順位を調査した。全体の結果から優先順位 の中央値が高い項目を抽出し、また千葉県HIV拠点病 院会議 薬剤師部会にてその他必要・不要な項目につ いて議論し、最終的な服薬指導重要項目を作成した

4.抗HIV薬の在庫情報管理システムの構築と評価 抗HIV薬の在庫情報管理システムの構築と評価複 数施設の抗HIV薬の在庫情報をクラウド上で簡便に 管理することを目標に、対象薬を抗HIV薬ならびにC 型肝炎治療薬、対象施設を千葉大学病院の近隣5薬局 とし、クラウド在庫管理ソフト「ZAICO」(https://w ww.zaico.co.jp/)を用いた在庫管理システムを試験 的に運用した。

図1. 薬局間での在庫管理のイメージ

対象薬剤の在庫数更新方法は、以下の3つから施設 ごとに選択した。

① 手動でシステムに数字を入力する方法

② 薬剤ごとのバーコードをスマートフォンで読み

(2)

- 50 - 込み、在庫数を入力後システムと同期させる方 法

③ 薬局の在庫CSVファイルを用いてシステムにイ ンポート可能なファイルに変換し、対象薬の在 庫情報を一括で更新する方法

なお、本在庫管理システムを通じて他の薬局の在 庫状況を確認した場合は、その薬剤名、目的などを 調査した。

C.研究結果

1.自立支援医療(更生医療)指定薬局調査

千葉県内の自立支援医療(更生医療)指定薬局は 全薬局の約4割であった。またその立地は、人口密度 や自立支援医療免疫機能障害患者の居住地ならびに HIV診療拠点病院の近隣にほぼ相当する配置であり、

地域による偏りが認められた。

2.服薬指導時の問題点・留意点の調査

千葉県内外の自立支援医療(更生医療)指定薬局 に対する実地ならびにアンケート調査の結果、質問 紙による調査から保険薬局薬剤師は、抗HIV薬の服薬 指導においてプライバシーへの配慮など特有の課題 を含みつつも患者のアドヒアランス向上のために多 くのことを確認し、患者に伝えていることが明らか となった。一方、抗HIV薬の服薬指導の実績を積んで いる薬局でも、困っていることが多いことが明らか となった。特に抗HIV薬の服薬指導時には他疾患治療 薬と比較し、「何を伝えればよいかわからない」「何 を聴取すればよいかわからない」といった項目が服 薬指導時に問題となる傾向があった。また高額医薬 品の欠品・返却は、系列薬局のみならず近隣薬局や 卸などと対応しているが、「在庫」ならびに「在庫情 報」の共有はしていても系列薬局に限局されている ことが明らかとなった。

3.抗HIV薬調剤時における服薬指導重要項目の作成 千葉県HIV拠点病院10施設のHIV担当薬剤師が挙げ た服薬指導の優先順位が高かった項目は、「抗HIV薬 変更の有無を確認すること」、「服薬状況を確認する こと」、「体調の変化・副作用を確認すること」であ った。なお、事前に服薬指導項目として挙げていな かった「ライフスタイルの変化」の確認について、

会議当日の議論でライフスタイルについては急に変 化することもあるため、定期的に確認すべきとの意 見が出された。これらをもとに千葉県HIV拠点病院薬 剤師部会での討議により、保険薬局における抗HIV薬 交付時の服薬指導重要項目を作成した(図2)。

図2. 院外薬局における服薬指導で特に重要な項目

なお、主な確認項目ならびに指導項目に対する具体 的な服薬指導内容は、以下のとおりとした。

<抗HIV薬変更の有無>変更があった場合は用法用 量、生じやすい主な副作用(消化器症状、頭痛、めま い等)の説明を行う

<服薬状況・残薬状況>

・正しい用法用量で服薬できているか確認する

・飲み忘れの頻度を確認する

・残薬の錠数を聴取する

<体調の変化・副作用>

具体的な症状と発現時期を聴取する

<臨床検査値>

患者が検査値情報を持参している場合は、治療成 績や全身状態についての情報を共有する

<薬物相互作用>

禁忌に相当する併用薬はないか、金属イオン含有 する薬剤・サプリメントの併用はないかなどを確認 する

<服薬の継続について(飲み忘れがある場合)>

・服薬率と治療成功率の図を用いて継続の重要性を 説明する

・飲み忘れた場合は気づいたときに1回分を内服し、

次からスケジュール通り内服する。

・飲み忘れないための工夫として、携帯電話 などのアラーム機能や手帳やカレンダーへの 記録、アプリ等の活用を推奨する

<治療目標の共有>

・患者自身がCD4数、HIV-RNA量の値を把握し ているか確認する

・HIV-RNAが検出されていないか確認する

4.抗HIV薬の在庫情報管理システムの構築と評価 現在在庫管理システムトライアルを実施中である が、現在まで特に大きなシステムエラーは生じてい

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- 51 - ない。今後運用終了時にシステムの妥当性や課題を 調査予定である。

D.考察 E.結論

1.自立支援医療(更生医療)指定薬局調査

自立支援医療の指定を受け抗HIV薬の調剤に対応 できる薬局は人口密度に準じて千葉県下の広範囲に 立地するため、地域の保険薬局での薬剤受け取りを 希望する患者の要望におおむね応えることができる と考えられた。拠点病院の立地と同様、患者宅の近 くに薬局がない地域が見受けられることが、今後の 課題であると考えられた。

2.服薬指導時の問題点・留意点の調査

本調査より保険薬局においてプライバシーへの配 慮など特有の課題を含みつつも患者のアドヒアラン ス向上のために多くのことを確認しながら患者に伝 えている一方、抗HIV薬の服薬指導の実績を積んでい る薬局でも、困っていることが多いことが明らかと なったことから、HIV薬の調剤・服薬指導においては HIV診療拠点病院と保険薬局の連携の良い関係が図 られることが望ましいと考えられた。服薬指導に関 しては抗HIV薬に関する服薬指導で特に重要な項目 について、千葉県HIV拠点病院会議 薬剤師部会で協 議を加えながら服薬指導項目を作成できたので、地 域の薬剤師会とも協力しその利用を広めることが有 用であると考えられた。

また系列薬局をもたない個人や小規模経営薬局 においては、高額医薬品である抗HIV薬の在庫管理 に課題が残ると考えられた。よって今後は、系列薬 局をもたない個人や小規模経営薬局においても抗H IV薬の在庫管理への負担が軽減できるよう、抗HIV 薬を含む高額医薬品について在庫情報の共有がで きる在庫情報共有ツールとしてのクラウド在庫管 理システムの有用性の検証が必要と考えられた。

3.抗HIV薬調剤時における服薬指導重要項目の作成 服薬指導時の重点項目が明らかとなったことで、

経験の少ない保険薬局薬剤師であってもスムーズに 抗HIV薬の服薬指導が行えることが期待される。今後 作成した服薬指導重要項目は、実際に臨床で運用さ れながら、適宜評価されていくことが望ましいと考 える。

4.抗HIV薬の在庫情報管理システムの構築と評価 薬局ごとに異なる在庫の更新方法を選択している

がそれぞれ問題なく行えていることから、在庫更新 方法の汎用性は高く、限定された30品目程度であれ ば日常業務の中で手動での在庫数更新が可能である ことが示唆された。

G.研究発表 1. 論文発表

日本エイズ学会誌に投稿予定 2. 学会発表

築地茉莉子 他、自立支援医療(更生医療)指定 薬局の抗HIV薬処方応需状況に関する調査、第33回 日本エイズ学会学術集会・総会

H.知的財産権の出願・登録状況(予定を含む。)

1. 特許取得 なし

2. 実用新案登録 なし

3.その他 なし

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