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学位名 博士(法学)

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Academic year: 2021

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国際連合における拒否権の意義と限界 : 成立から スエズ危機までの拒否権行使に関する批判的検討

著者 瀬岡 直

学位名 博士(法学)

学位授与機関 同志社大学

学位授与年月日 2013‑09‑19 学位授与番号 34310乙第303号

URL http://doi.org/10.14988/di.2017.0000016138

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博 士 学 位 論 文 要 約

論 文 題 目:国際連合における拒否権の意義と限界

―成立からスエズ危機までの拒否権行使に関する批判的検討―

氏 名:瀬岡 直 要 約:

本論文の目的は、従来の国際法学が必ずしも子細に検討してこなかった拒否権の制約に結びつ く国際連合の実行とくに各国の発言に焦点を当てることによって、常任理事国が拒否権の行使又 は行使の威嚇を控えるべき客観的な基準に可能な限り接近することである。

第1章では、拒否権の成立過程たるダンバートン・オークス会議、ヤルタ会談、及びサンフラ ンシスコ会議の関連議論を検討して、実質事項に関する常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇 に対する制約に結びつく手掛かりとなる各国の発言を浮き彫りにした。その結果、常任理事国の 拒否権の行使又は行使の威嚇の問題は、拒否権の制約事由、すなわち、常任理事国は基本的に自 国の重大な利益が脅かされる場合に拒否権を行使すること、常任理事国は中小国間の紛争に対し て特別な責任を負うこと、常任理事国は共通の利益のために稀にしか拒否権を行使しない旨の声 明を行ったこと、拒否権制度に対して近い将来何らかの改正が加えられることなどの前提条件と いわば表裏一体であることが明らかとなった。したがって、常任理事国の拒否権行使又は行使の 威嚇の問題は、本来、これらの拒否権の制約事由と切り離して議論することはできないし、また 議論されるべきでもない。これこそが、常任理事国が拒否権の行使又は行使の威嚇を控えるべき 客観的な基準を模索する本研究の出発点であることを強調した。

第2章では、実質事項に関する常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇を制約しようとする国 連発足後初期の動きを取り上げた。国連発足からスエズ危機までのおよそ10年間に、ソ連は多 くの国連加盟国の批判にもかかわらず、加盟申請に関する問題及び国際の平和に関する問題につ いて80回以上も拒否権を行使した。こうしたソ連の頻繁な拒否権行使に注目すれば、サンフラ ンシスコ会議において示された拒否権の制約事由は無制約になったと評価せざるを得ないのか も知れない。しかし、国連発足後初期の動きを子細に考察するならば、従来の学説が国連憲章第 27条3項の文言解釈に基づき拒否権行使又は行使の威嚇を一律に黙認してきた実質事項につ いても、多くの国連加盟国は、拒否権行使を控えるべき常任理事国の重大な利益が絡まない場合 を、拒否権行使もやむを得ない常任理事国の重大な利益が絡む場合から切り離そうと努めていた ことが確認できる。具体的には、まず、国連発足当初の加盟問題をめぐる審議において、大半の 国連加盟国は、実質事項の中で加盟申請をめぐる問題が国際の平和及び安全の維持に関する問題 と比べて常任理事国の重大な利益が直接絡んでいないため、加盟問題に関して常任理事国は拒否 権行使又は行使の威嚇を控えるべきであると主張していた。さらに、初期の総会審議において総 会決議267号を支持した英米仏中の四常任理事国及びほとんどの中小国は、国際の平和及び安 全の維持の分野それ自体においても常任理事国は自国の国益を守るためにやむを得ない場合に のみ拒否権を行使すべきだとする基本的な立場を表明していた。なかでも米国や一部の中小国は、

国連憲章第6章における中小国間の紛争の平和的解決に関する問題については、常任理事国の重 大な利益が直接脅かされていないため拒否権の行使又は行使の威嚇を控えるよう主張していた。

第3章では、1950年に国連総会が採択した「平和のための結集」決議を検討した。その結 果、「平和のための結集」決議の起草過程において、国連加盟国なかでも多数の中小国は、サン フランシスコ会議において示された拒否権の制約事由を考慮して、国際の平和及び安全の維持に

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関わるソ連の頻繁な拒否権行使又は行使の威嚇を強く批判していたことが明らかにされた。こう した認識が広まったからこそ、多数の国連加盟国は朝鮮戦争を契機に「平和のための結集」決議 を採択して、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為が存在する状況において安全保障理事 会が常任理事国の全会一致の欠如のために主要な責任を果たせない場合には、総会が国際の平和 及び安全を維持するために必要な措置を勧告する権限を明確に認めるに至ったのである。

もっとも、ソ連を中心とする東側諸国は、実質事項とりわけ国際の平和及び安全の維持に関す る常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇に対する制約を推し進めるこれらの国連発足以後の 動きに反発し続けた。そして、国連発足直後から多くの紛争において少数派に属していたこのソ 連の反発に着目すれば、常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇を制約しようと努めるこうした 国連発足以後の動きは、本研究における先例的な意味合いが相対的に小さいと評価せざるを得な い可能性もないわけではない。しかし、ここで留意すべきは、常任理事国が少数派に追い込まれ る状況は決してソ連に特有であると言い切れるものではなく、紛争の内容如何によってはいずれ の常任理事国にも多かれ少なかれ当てはまると認識されていたことである。そして、実際に、1 956年に勃発したスエズ危機においてソ連は、米国やアジア・アフリカ諸国と共に多数派を形 成して英仏及びイスラエルの武力行使を批判する安保理決議案を提出したのみならず、こうした 決議案に対する英仏両国の拒否権行使を強く批判して「平和のための結集」決議に賛同する主張 を展開した。つまり、スエズ危機においてはソ連を含む東側諸国でさえも安全保障理事会におけ る常任理事国の全会一致原則を絶対視する先の立場を覆すような対応を取ることになったので ある。

こうした問題意識の下に、第4章では、スエズ危機における英仏両国の拒否権行使に対する国 連加盟国の対応を取り上げた。そして、各国の発言内容を子細に検討することによって、多くの 国連加盟国は、英仏の拒否権行使がこの2国のいわば死活的利益を守るためのやむを得ない手段 としてではなく、大国間の武力衝突へ転化する可能性の高い19世紀的介入政策の単なる隠れ蓑 として認識したこと、その結果、安全保障理事会においてほとんどの加盟国は、英仏両国が国際 の平和及び安全を維持する常任理事国としての特別な責任を果たさなかったと認識したことが 明らかにされた。そして、これらの諸点を勘案すれば、スエズ危機は、東西ブロックの壁を越え るほとんどの国連加盟国が、「常任理事国の特別な責任に違背する拒否権の行使が国連憲章の下 で合法でないとまでは主張し得ないとしても、少なくとも国際の平和及び安全の維持という国連 憲章の最大の目的から大きく外れるものであった」と理解する至った先例ではないかと問題提起 をした。

もっとも、たとえ常任理事国の拒否権行使が国連憲章の趣旨・目的から大きく外れるものであ るとしても、国連加盟国とりわけ常任理事国がこのような場合に国連集団安全保障体制がどこま で機能すべきであると考えていたのかは、別途、検討しなければならない問題である。この点を 十分考慮したうえで、第4章では「平和のための結集」決議に基づき開催された第1回緊急特別 総会の審議を分析した。その結果、多くの国連加盟国は英仏及びイスラエルに対する軍事制裁を 発動してスエズ危機を解決しようとするよりはむしろ、同意・中立・公平の原則に基づく国連緊 急軍を派遣して地域紛争の拡大を防止することに努めた。そして、国連緊急軍の目的たる紛争の 封じ込めが国連加盟国の共通利益、ひいては国際連合の最大の目的たる国際の平和及び安全の維 持に合致することを踏まえるならば、スエズ危機は次のような国連加盟国の認識を醸成する先例 となる可能性があることを指摘した。すなわち、常任理事国は、少なくとも直接の紛争当事国た る中小国が国連平和維持活動に同意する場合、国際の平和及び安全の維持の実現に関して特別な 責任を果たすために平和維持活動を容認又は黙認すべきである、という認識である。

以上、本論文は、多くの国際法学者が拒否権制度を論ずる際に前提としてきた国連憲章第27 条3項の文言解釈を重視する立場とは異なる視点に基づき、拒否権の成立からスエズ危機までの 国連実行を考察することによって、常任理事国の拒否権の行使又は行使の威嚇に対する制約に結

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びつく手掛かりを浮き彫りにしようと試みた。終章では、今後、常任理事国の拒否権行使又は行 使の威嚇に対する制約の可能性をどのように検討していくべきかについて論じている。今後の課 題として次の2点を指摘した。

第1は、国連平和維持活動に関わる常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇をめぐる国連実行 である。この実行を検討する理由は、スエズ危機終結以降に派遣されたおよそ60の国連平和維 持活動が安全保障理事会によって樹立されている実行の積み重ねは、常任理事国が平和維持活動 に関連する安保理決議案に対して拒否権の行使を抑制してきた事実を示すものだからである。

第2は、重大な人権侵害に関わる常任理事国の拒否権行使又は行使の威嚇に関する国連実行で ある。この実行に焦点を当てる理由は、近年、常任理事国が自国の重大利益が危機に瀕していな い事態において、深刻な人権侵害に対処する安保理決議案に対し拒否権行使又は行使の威嚇を控 えることを提案する動きが高まっているからである。

こうした問題意識に基づき、今後は、スエズ危機終結以降の国連実行、なかでも国連平和維持 活動と重大な人権侵害に関わる実行を丹念に検討することによって、常任理事国の拒否権行使又 は行使の威嚇に対する制約に結びつく手掛かりを模索し続けていくことにしたい。そして、拒否 権の成立過程、冷戦期の実行、及び冷戦終焉後の実行の網羅的な検討から、常任理事国が国際の 平和及び安全の維持に関して拒否権行使又は行使の威嚇を控え特別な責任を果たすべき状況を 導き出すことこそ本研究の最終的な目標である。

参照

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