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皮膚炎を持つ医療従事者が頻回の手指消毒の機会に曝された場合, 刺激性接触皮膚炎の発症は必発である. また, アルコール手指消毒剤を傷害皮膚に使用した場合, ぴりぴりした刺激感が出現するため, コンプライアンスの低下をまねく場合もある. 一方, 皮膚炎など病変がある皮膚では, 健常皮膚と比べ黄色ブドウ

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東北大学病院皮膚科 〈原 著〉

MPC ポリマー配合ゲル状速乾性擦式アルコール手指消毒剤使用による

皮膚機能変化の検討

菊地 克子

EŠect of Alcohol-based Hand Rubs with a Formulation Containing MPC Polymer on the Function of the Stratum Corneum of the Skin

Katsuko KIKUCHI

Department of Dermatology, Tohoku University Hospital (2008 年 9 月 5 日 受付・2008 年 11 月 13 日 受理) 要 旨 医療従事者においては,手洗いやアルコールの擦り込みによる手指消毒などにより,しばしば手 指皮膚の乾燥や手湿疹が起こる.手湿疹の多くは刺激性皮膚炎である.病変を持つ皮膚には健常皮 膚と比べて有意に常在細菌数が多いため,効果的な殺菌作用を示すのみならず皮膚傷害性が少ない 消毒剤を使用することが院内感染防御の上でも重要である.生体膜構成脂質と類似の構造を持つ 2メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を構成単位としたポリマー(MPC ポリ マー)は保湿性があり皮膚刺激を減弱することが知られている.健常ボランティア 36 人を対象に, MPC ポリマーを配合したアルコール手指消毒剤の手指皮膚に対する影響を計測機器による角層機 能評価により調べた.MPC ポリマー配合製剤と MPC ポリマーを配合しない対照品をそれぞれ 2 週間ずつ使用するクロスオーバー試験を行ったところ,手背皮膚の角層水分量は,対照品で低下が 認められたのに対し,MPC ポリマー配合製剤では増加傾向がみられ,同時に経表皮水分喪失量が 低下し,バリア機能向上が示唆された.さらに,MPC ポリマー配合製剤では,使用時の刺激感・ 痛みが対照品に比べ少なかった.これらの結果から,MPC ポリマー配合アルコール手指消毒剤は より皮膚刺激性・傷害性が少なく医療従事者にとってより好ましい製剤であることが示された. Key words速乾性擦式アルコール手指消毒剤,MPC ポリマー,刺激性皮膚炎 は じ め に 医療従事者は,感染防御の観点から,患者への処置ご とに手袋の着用ないしは手指の消毒が求められる.手指 の消毒には,石けんなど界面活性剤の洗浄剤を用いた流 水による手洗いと速乾性アルコール手指消毒剤の擦り込 みの 2 つの方法があるが,2002 年米国の Centers for Disease Control and Prevention (CDC)の医療感染管理 実務諮問委員会 (Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee (HICPAC)ならびに関連学会によ る「医療機関における手指衛生のためのガイドライン」 では,効果的で皮膚刺激性が少ない手指消毒の方法とし て,手指が目に見えて体液などで汚れている場合は,洗 浄剤と流水を用いて手を洗い,目に見える汚れがない場 合,速乾性アルコール手指消毒剤で手指消毒を行うとい う方法を提唱している1).エタノールなどアルコール は,角層水分量の低下をきたすが,界面活性剤で生じる 紅斑やバリア傷害を発症させる危険は少ない2,3)ことや 実際の使用試験においてもアルコール手指消毒剤の擦り 込みによる方法は,石けんを用いた手洗いに比べ皮膚傷 害が少ないとの報告がある4).しかしながら,アルコー ルは皮膚の乾燥を起こすため,皮表に亀裂などの傷害を きたした場合は,他の刺激物質の暴露により刺激性皮膚 炎が起こり得る.とくに皮膚機能の低下,すなわち角層 水分保持能とバリア機能の低下が認められるアトピー性

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皮膚炎を持つ医療従事者が頻回の手指消毒の機会に曝さ れた場合,刺激性接触皮膚炎の発症は必発である.ま た,アルコール手指消毒剤を傷害皮膚に使用した場合, ぴりぴりした刺激感が出現するため,コンプライアンス の低下をまねく場合もある. 一方,皮膚炎など病変がある皮膚では,健常皮膚と比 べ黄色ブドウ球菌など皮膚の常在細菌数が多いとの報 告5)がある.したがって医療従事者の手湿疹予防は院内 感染防御の面からも必須であり,擦り込み式アルコール 手指消毒剤も皮膚刺激性や皮膚傷害性の少ないものが望 まれる. MPC ポリマー配合製剤(マイクロシールドピュアラ ビングジョンソン・エンド・ジョンソン株)は,リン 脂質類似構造 2メタクリロイルオキシエチルホスホリ ル コ リ ン ( 2 methacryloyloxyethyl phosphorylcholine; MPC)のポリマー(MPC ポリマー,リピジュア日油 株)を含有するゲル状速乾性擦式アルコール手指消毒剤 である.MPC ポリマーは,生体親和性が高く,皮膚へ 外用した場合,高い保水性を保ち,界面活性剤ラウリル 硫酸ナトリウムによる皮膚刺激症状を抑制することが認 められている6,7).また,MPC ポリマー配合によるアル コールの殺菌作用減弱は認められないとされている(ジ ョンソン・エンド・ジョンソン株会社資料).今回,私 たちは,MPC ポリマーを配合したゲル状速乾性擦式ア ルコール手指消毒剤を,MPC ポリマーを配合しない対 照品とクロスオーバー試験を実施し,2 つのアルコール 消毒剤の皮膚傷害性について,皮膚角層機能を客観的に 評価する計測機器を用いて比較したので報告する. 対象者と方法 試験期間 2008 年 4 月 16 日から 5 月 16 日の期間に施行した. 対象者 対象者は,速乾性擦式アルコール手指消毒剤を日常的 に使用していない健常ボランティア成人男女 36 名(男 性 8 名,女性 28 名,20 歳~46 歳,平均年齢 30 歳) で,アトピー性皮膚炎など本試験に影響を与える皮膚疾 患はなく,試験開始前に両手に皮膚症状を認めず,エタ ノール,MPC ポリマー,その他製剤に含まれる添加物 に対するアレルギーが知られていないものとした. 被験者には試験開始前に試験の十分な説明を行い同意 取得後に試験を施行した.なお,本試験は東北大学医学 部の倫理委員会の承認を得ておりヘルシンキ宣言に則り 施行した. 試験品 MPC ポリマーを含有するゲル状速乾性擦式アルコー ル手指消毒剤(日局エタノール 83 vol)と対照として MPC ポリマーを配合しないゲル状速乾性擦式アルコー ル手指消毒剤(エタノール 78.89 vol以下,対照品) を用いた. 試験方法 対象者 36 名を無作為に 2 群(A 群 18 名,B 群 18 名) に分けた.A 群は,試験開始日から 2 週目まで対照品 を用い,2 週目から 4 週目までは MPC ポリマー配合製 剤を 使用 し た. B 群は ,試 験開 始日 から 2 週 目ま で MPC ポリマー配合製剤を用い,2 週目から 4 週目まで は対照品を使用した(オープン,クロスオーバー試験). MPC ポリマー配合製剤あるいは対照品を用いて,午 前 5 回,午後 5 回手指の消毒を行った.皮膚症状評価 日は,午前中の製剤使用はなく来院し,午後のみ 5 回 製剤を使用した手指消毒を行った.1 回の使用量として 製剤が乾くまで 15 秒以上要する十分量(目安として手 掌にとったときに直径 2.5~3 cm の円になる量)を手に とり,指先の消毒を行った後,手掌をすりあわせ,その 後両手手背,指間,親指,手首の順に薬剤を擦り込むと いう「手指消毒の手順を示す写真」を見せながら使用方 法について説明し,手順を示す写真は各対象者に配布し た.対象者でハンドクリームを日常的に使用しているも のは,試験開始 1 週間前から中止し,試験期間中はハ ンドクリームの使用を禁止した.また,皮膚計測の 2 時間前から手袋着用による皮膚の密閉を防ぎ,1 時間前 から測定部皮膚を水で濡らさぬように指導した. 機器計測による皮膚角層機能評価 0 週(試験開始前),1 週,2 週,3 週,4 週時に,対象 者の左手背皮膚において機器による皮膚角層機能指標 を測定した.手掌側は精神的発汗により正確な計測が 不能となる可能性があるため手背を計測部位とした. 測定は,室温 21±1°C,相対湿度 50±3に保った恒 温恒湿測定室内で手背皮膚を露出させ,15 分の馴化 時間の後に施行した.角層水分量指標である高周波伝 導度を Skicon200EX (アイ・ビイ・エス株)で 5 回測 定し平均値を算出した.皮膚バリア機能指標である経 表皮水分喪失量(transepidermal water loss; TEWL)を DermaLab(Cortex technology, Denmark)で 1 回測定 した. 使用感アンケート 対象者に,MPC ポリマー配合製剤と対照品を使用し たときにそれぞれ表に示す使用感アンケートを記載し てもらった. 統計 MPC ポリマー配合製剤使用前後あるいは,対照品使 用の前後の高周波伝導度値と TEWL 値について,対応 のある t 検定を用いてそれぞれ検討し,p<0.05 を有意 とした.

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表 使用感アンケート 設 問 評点 評点 評点 評点 評点 ◯ 伸び・なじみはいかがでしたか 大変良い 良い まあまあ 普通 あまり良くない ◯ しっとり感・手指への優しさ感はいかが でしたか 大変良い 良い まあまあ 普通 あまり良くない ◯ 乾燥後,べたつきは気になりますか さらさらする べたつき感はない 少し気になる 気になる 非常に気になる ◯ ヨレ(異物)の発生はいかがでしたか 出ない 出るが気にならない 少し出る 出る 非常に出る ◯ 皮膚への刺激感・痛みは感じましたか ない あるが気にならない 少しある ある 非常にある ◯ 皮膚の乾燥はいかかでしょうか しっとりしている 乾燥はない 少し乾燥する 乾燥する 非常に乾燥する ◯ 全体的な使用感はいかがでしたか 大変良い 良い まあまあ 普通 あまり良くない 図 高周波伝導度の変化と経表皮水分喪失量 TEWL の変化(A 群 n=18, B 群 n=18) 表 アルコール消毒剤の使用回数 対象者 期 間 試験品 平均使用回数 (回/日) 測定日 測定日以外 A 群 ~週 対照品 . . ~週 MPC ポリマー配合製剤 . . B 群 ~週 MPC ポリマー配合製剤 . . ~週 対照品 . . 結 果 消毒剤使用回数 対象者は,測定日は 1 日 5 回,測定日以外は 1 日 10 回ほぼ指示通りの回数手指の消毒を行い,MPC ポリ マー配合製剤,対照品を使用したときで差はなかった (表). 皮膚角層機能評価 角層水分量の指標である高周波伝導度値は,対照品か ら MPC ポリマー配合製剤に移行した A 群で,対照品 使用前後(0 週から 2 週)および MPC ポリマー配合製剤 使用前後(2 週から 4 週)において有意な変化を認めなか ったが,MPC ポリマー配合製剤から対照品に移行した B 群においては,MPC ポリマー配合製剤使用前後(0 週 から 2 週)では高周波伝導度値の有意な変化がなかった ものの対照品使用後(4 週)は使用前(2 週)に比べ有意に 低下した(図a).皮膚バリア機能の指標である TEWL は,対照品から MPC ポリマー配合製剤に移行した A 群で,対照品使用後(2 週)に有意に増加し,MPC ポリ マー配合製剤使用後(4 週)に有意に低下した.MPC ポ リマー配合製剤から対照品に移行した B 群において は,それぞれの製剤の使用前後での TEWL 値の有意な 変化は認められなかった(図b). さ ら に A 群 と B 群 の 測 定 値 を 合 わ せ , MPC ポ リ マー配合製剤使用前後および対照品使用前後の高周波伝 導度値と TEWL 値の変化について解析した.高周波伝 導度値は,対照品を使用後に使用前と比べ有意に低下し たのに対し,MPC ポリマー配合製剤では,使用後に統 計学的有意差はないものの高周波伝導度値が増加傾向で あった(図a).TEWL 値は,対照品では有意な変化が なかったが,MPC ポリマー配合製剤では使用前と比べ て使用後に有意に低下した(図b). 使用感アンケート 対照品使用時と MPC ポリマー配合製剤使用時の使用 感アンケート結果を示す(図a, b).評点が大きい(5)

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図 対象者全体の高周波伝導度の変化と経表皮水分喪 失量 TEWL の変化(n=36) 図 使用感アンケート結果(n=36).対照品,MPC ポリマー配合製剤 ほど好ましい評価であることを意味する.MPC ポリ マー配合製剤は,対照品と比べ使用時の刺激感・痛みが 少なく,のび・なじみがよく,皮膚の乾燥感が少なくし っとり感が高かった.全体的な使用感のよさも MPC ポ リマー配合製剤が優った. 考 察 日常的に速乾性擦式アルコール手指消毒剤を使用しな い健常人ボランティアを対象に,MPC ポリマーを配合 した速乾性擦式アルコール手指消毒剤と MPC ポリマー を配合しない消毒剤使用による皮膚傷害性・皮膚刺激性 について,機器計測を用いて皮膚角層機能の評価を行い 比較検討した.医療従事者以外を対象者としたのは,医 療従事者は日常業務で速乾性擦式アルコール手指消毒剤 を使用し,しかも日により使用回数も増減するため,4 週の試験期間中 2 種類の試験製剤を定められた回数で 使用することが困難であったこと,ならびに流水と洗浄 剤による手洗いや手袋着用など他要因による皮膚への影 響が避けられないためである. 皮膚の最表層に位置する角層は,表皮角化細胞が分化 してできた角層細胞と角層細胞間脂質からなる厚さ 20 mm ほどの構造物である.角層細胞間脂質はセラミド, 遊離脂肪酸,コレステロールなどからなる.皮膚バリア 機能は角層細胞間脂質が主に担うが,角層細胞を包む角

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化外膜という蛋白質の強固な構造物が細胞間脂質と結合 することで緊密な構造を保つ.炎症刺激などがなく,角 化細胞が十分に成熟してできた角層は,良好な皮膚バリ ア機能を有し,そのような角層には十分な天然保湿因子 が存在するので角層水分保持能もよく角層水分量が保た れている. 「手荒れ」は,いわゆる「かぶれ」といわれる接触皮 膚炎のなかでも,一次刺激性接触皮膚炎(刺激性皮膚炎 ともいう)であることが多い.これは刺激物質が閾値を 超えて皮膚に作用すると,誰でも起こるもので,一方, アレルギー性接触皮膚炎は,感作された個体にアレルゲ ンが作用したときに発症する.いずれにおいても角層の 機能は低下する. 高周波伝導度や TEWL を測定することによる皮膚機 能評価は,発汗のない室温湿度を制御した環境で,さら に皮膚の密閉や外用剤の塗布などの角層への影響を排除 した条件で行う必要があるが,皮膚傷害性を評価するの に,鱗屑や紅斑などの臨床症状を肉眼的に観察するより も客観的で鋭敏な方法である.皮膚の表面に高周波電流 を流したときの抵抗の逆数が高周波伝導度であるが,皮 表すなわち角層の含有水分量が多いほど電流が多く流れ るので,高周波伝導度値が高いほど角層水分量が高いこ とを示す8).皮膚バリア機能は,体内から体外への水分 の喪失を防ぎ,体外から体内への物質の透過を防ぐ機能 のことである.経表皮水分喪失 TEWL は,体内から角 層を通してわずかに蒸発する水分のこと9)であり,これ を測定して皮膚バリア機能の代表とすることが一般化し ている.TEWL が少ないことは皮膚バリア機能がよい ことを意味する.医療従事者の「手荒れ」は手掌側や指 間に乾燥などの症状が好発するが,手掌側は精神的発汗 が容易に起こり正確な皮膚機能評価ができないため本試 験では手背皮膚を計測部位とした. 健常人を対象にアルコールおよび界面活性剤による皮 膚刺激性を調べた報告によれば,パッチによる密封貼付 (24 時間を 2 回連続)やより実際に近い方法である wash test を 1 日 2 回 7 日間施行したところ,いずれの方法 でも 0.5ラウリル硫酸ナトリウムでは角層水分量の低 下ならびに紅斑とバリア傷害惹起がみられたのに対し, 80エタノールでは角層水分量の低下のみ認められ, 紅斑やバリア傷害はみられなかったという3).これらの 結果が示すようにアルコールの皮膚擦り込みによる手指 消毒は,石けんによる手洗いよりも皮膚刺激性・皮膚傷 害性が少ないが,すでに傷害されている皮膚では使用時 の痛みを引き起こす. 今回の健常ボランティア対象者での皮膚角層機能評価 結果,MPC ポリマーを配合しない対照品では,角層水 分量指標である高周波伝導度値が低下したがバリア機能 傷害を表す TEWL 値の上昇はみられなかった.これら の結果から,MPC ポリマーが配合されていない通常の 速乾性擦式アルコール手指消毒剤を用いた場合,1 日 10 回 4 週間程度の手指の消毒は,健常人にバリア機能 低下を生じるほどの皮膚傷害を起こすことは少ないと考 えられる.これは過去の報告に合致するものであった. それに対し,MPC ポリマー配合製剤は高周波伝導度 値が低下せず,統計学的有意差はないものの増加傾向を 示し,TEWL 値は有意に低下し皮膚バリア機能の向上 が示唆された.このことは,使用感アンケートにおいて も MPC ポリマー配合製剤は対照品に比べ,皮膚の乾燥 感が少なくしっとり感が高かった結果と相応するもので あった.使用感アンケートで,使用時の刺激感・痛みが MPC ポリマーを配合していない対照品に比べ少ないと いう結果であった.現在症例数は少ないが,日頃から手 荒れに悩む NICU 看護師においても,MPC ポリマー配 合製剤は対照品に比べ使用時の痛みが少ないというアン ケート結果を得ている(未発表).MPC ポリマーは,生 体適合性に優れ,皮膚に外用で投与した場合,保湿性を 向 上 さ せ , 皮 膚 刺 激 を 減 弱 す る こ と が 知 ら れ て い る6,7).本試験においても,MPC ポリマーが,エタノー ルによる皮膚の乾燥を防止し,使用時の刺激感を軽減し たと考えられる. 医療従事者は,石けんなどの界面活性剤を使用した流 水での手洗いならびにアルコール手指消毒剤の擦り込み の両者による手指の消毒を行う.アルコール手指消毒剤 による皮膚傷害は少ないものの界面活性剤による皮膚傷 害発症の危険は大きい.とくに NICU や手術室勤務看 護師のように手指の消毒をより頻回に行う場合やアト ピー性皮膚炎など皮膚角層機能低下を持つ個体において は,すでに皮膚の乾燥や亀裂を生じている可能性があ り,アルコール手指消毒剤使用時の刺激感や痛みが強 く,さらにアルコールにより角層の乾燥を増悪させ,刺 激物質が亀裂部から容易に透過し刺激性皮膚炎の発症の 可能性があると思われた.このような手指皮膚の乾燥や 「荒れ」に悩む医療従事者にとって,MPC ポリマー配 合ゲル状速乾性擦式アルコール手指消毒剤は,皮膚刺激 感・痛みが少なく使用できるためコンプライアンス向上 が期待でき,さらに手指皮膚の角層水分量増加やバリア 機能の向上が期待でき,皮膚にとっても院内感染防御の 面からもより好ましい速乾性擦式アルコール手指消毒剤 であると考えられた. 謝 辞本稿を御高閲いただきました田上八朗東北大学名誉教 授と皮膚機能計測を行ってくれた技術補佐員,吉田祐子さんに 感謝いたします. 利益相反あり.ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社か らの研究費により本研究を行った.

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文 献

1) Boyce JM, Pittet D: Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. Recommendations of the Healthcare Infection Control Practices Advisory Com-mittee and the HIPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force. Am J Infect Control 2002; 30: S1 46.

2) Kampf G, LoŒer H: Prevention of irritant contact der-matitis among health care workers by using evidence-based hand hygiene practices: a review. Ind Health 2007; 45: 64552.

3) LoŒer H, Kampf G, Schmermund D, Maibach HI: How irritant is alcohol? Br J Dermatol 2007; 157: 7481. 4) Boyce JM, Kelliher S, Vallande N: Skin irritation and

dryness associated with two hand-hygiene regimens: soap-and-water hand washing versus hand antisepsis with an alcoholic hand gel. Infect Control Hosp Epidemiol 2000; 21: 4428.

5) Larson EL, Hughes CA, Pyrek JD, Sparks SM, Cagatay EU, Bartkus JM: Changes in bacterial ‰ora associated with skin damage on hands of health care personnel. Am J Infect Control 1998; 26: 51321.

6) 土田 衛,島田邦男Lipidure-PMB の開発と化粧品へ の応用.Fragrance Journal 2000; 12: 11821.

7) 三谷元宏,山本宣之「LIPIDURE(リピジュア)」の 肌に対する効果.加工技術 2005; 40: 34751.

8) Tagami H, Ohi M, Iwatsuki K: Evaluation of the skin surface hydration in vivo by electrical measurement. J Invest Dermatol 1980; 75: 5007.

9) Nilsson GE: Measurement of water exchange through skin. Med Biol Eng Comput 1977; 15: 20918.

〔連絡先〒9808574 仙台市青葉区星陵町 11 東北大学病院皮膚科 菊地克子

E-mail: katsukon@mail.tains.tohoku.ac.jp〕

EŠect of Alcohol-based Hand Rubs with a Formulation Containing MPC Polymer on the Function of the Stratum Corneum of the Skin

Katsuko KIKUCHI

Department of Dermatology, Tohoku University Hospital

Abstract

Irritant contact dermatitis is often found on the hands of health care workers. Alcohol-based hand rubs, which are used to prevent the transmission of nosocomial pathogens, may cause dry skin and burning sensation on previously irritated skin. Patients with eczema on the hands have higher rates of skin colonization by organisms such asStaphylocuccus aureus and multiple antibiotic-resistant strains. Therefore, a hygiene technique which does not cause skin damage to the hands is important to prevent the transmission of nosocomial pathogens. An MPC (2methacryloyloxyethyl phos-phorylcholine) polymer has been found to maintain higher hydration of the stratum corneum of the skin and to attenuate SLS-induced skin irritation on the skin. The present study investigated whether the usage of alcohol-based hand rubs with or without MPC polymer for 2 weeks might cause irritation of the skin using biophysical skin measurements. High frequency conductance measurements disclosed that a formulation without MPC polymer decreased skin hydration, whereas a formulation with MPC polymer tended to increase the skin hydration of healthy volun-teers (n=36). Moreover, the formulation with MPC polymer was found to decrease transepidermal water loss, a parameter of the barrier function of the skin, and to cause less burning sensation com-pared to the formulation without MPC polymer. In conclusion, an alcohol-based disinfectant with MPC polymer may be useful for health care workers with skin damage of the hands due to frequent wet work, occlusion by gloves, and aggressive use of detergents and disinfectants.

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