• 検索結果がありません。

雑誌名 明治学院大学社会学・社会福祉学研究 = The Meiji

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "雑誌名 明治学院大学社会学・社会福祉学研究 = The Meiji"

Copied!
27
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

現状と課題―

著者 八木原 律子

雑誌名 明治学院大学社会学・社会福祉学研究 = The Meiji

Gakuin sociology and social welfare review

巻 142

ページ 145‑170

発行年 2014‑03‑31

その他のタイトル A Study on Social Skills Training Practice in Offenders Rehabilitation Facilities: Current Situation and Problems

URL http://hdl.handle.net/10723/1903

(2)

更生保護施設における SST 実践に関する調査研究

──現状と課題──

八木原 律 子 

はじめに

更生保護の源流は,明治21年(1888年),静岡県の実業家,金原明善が設立 した「静岡県出獄人保護会社」まで遡る。更生保護施設は,矯正施設や保護観 察中の人で,身寄りがなく,自立更生が困難な人たちに対して,一定期間,食 や住を提供し,就職活動を支援して円滑な社会復帰を支援するための施設であ る。法務大臣の許可が得られれば,更生保護法人や社会福祉法人でも設立可能 で,現在,全国104 ヶ所で運営されている(1)

更生保護施設では,入所者の自立更生にむけたプログラムとして,繰り返す 酒害や薬害についての心理教育や社会生活に役立つ婦人保護会による料理教室 などのプログラムが実施されている。1995年7月に東京の財団法人更新会(2)

において社会生活技能訓練(Social Skills Training, 以下 SST と記す)が開始 されたのを契機に,全国の更生保護施設に SST を活用した入所者の自立更生 プログラムが実施され始め,法務省保護局や更生保護協会による更生保護施設 職員向けの SST 研修が開始されてきた。更生保護施設で行う SST の目的は,

会話や行動上の改善を図ることで社会生活が円滑にできるように学習していく ことにある。入所者の中には,学習できる適切な時期に,事故や事件に巻き込 まれてその機会を逃してきた人も多く,初めての場面でも相手と良い関係が築

(3)

けるように行動リハーサルが実施されている。これまで施設で実施されている 心理教育や料理教室などのプログラムでは,外部講師がボランティアとして指 導に当たっている例が殆どであるが,SST は外部講師のほかに施設職員自ら もグループリーダーとなって入所者の指導に当たっているのが特徴で,職員の 熱意で広まってきたといえる。

現在も継続して実施されているものの,全国104 ヶ所の更生保護施設におけ る SST プログラムの実施状況は,十分に把握されていないのが実情である。

本調査は全国104 ヶ所の更生保護施設における SST 実施状況を把握し,調 査から明らかになった SST の効果や課題を分析することで,全国の更生保護 施設に SST を通したプログラム改革のための基礎資料として提供できると考 えた。本調査を行うに当たり,事前に法務省保護局にも情報提供させていただ き,調査項目についてアドバイスを得たところである。

1 調査の概要

(1) 調査の目的

全国104 ヶ所の更生保護施設における SST の実施状況を把握し,入所者や 職員から提案された具体的な課題内容を分析することで,入所者に必要な対人 行動改善に,SST を用いたプログラム内容を検討するための基礎資料として 関係機関や施設に提供することにある。同時に,運営管理上の課題解決に向け た取り組みを紹介することと,解決に向けた提案ができればと考えている。

(2) 調査の対象

全国104 ヶ所の更生保護施設の職員を対象に実施し,回答者は施設長や SST を実施している職員に依頼した。また,回答は無記名とした。

(4)

(3) 調査の方法

調査の依頼,調査票の送付,回収とも郵送により実施した。

1)2012年1月末,全国104 ヶ所に郵送にて,アンケート調査を始める旨の 協力依頼文書を発送した。

2)2012年2月末,同104 ヶ所にアンケート調査用紙を送り,回答の締め切 りは2012年3月20日までとして協力依頼文書を発送した。

なお,調査協力者への倫理的配慮として,調査の目的,個人情報の保護,結 果の活用,データの作成・分析のための説明を文書で実施し,了承していただ くと共に,特定の施設や調査に応じていただいた個人や更生保護施設が想定さ れないように配慮した。

(4) 調査項目

調査項目は,主に3つの柱からなる項目とした。

1)更生保護施設属性 ①設立年月日,②被保護者の属性・定員,③職員数・

職種,④指定更生保護施設か否か,⑤社会福祉分野の職員配置の状況,

⑥社会福祉分野の職員の職種,⑦在職期間,⑧業務内容等,主に更生保 護施設の体制や運営上の項目とした。

2)SST の実施状況について ① SST の周知状況,②現在の実施状況,③ 実施者状況,④これまでの実施状況,⑤中断理由・再開の検討など,⑥ 対象者から出される課題内容(自由回答)・実施上の困難さ・職員から 見た対象者に効果的と思われる点・対象者の感想,⑦ SST を継続して いくための工夫や改善点(自由回答)等,SST 実施上の項目とした。

3)実施していく上での疑問・不安・困っている点(自由回答)等について,

直接指導を希望される場合や見学訪問の承諾可能な施設,筆者によるラ イブスーパービジョンを希望される施設等には,住所と担当者名の記入

(5)

を求めた。

(5) 回収数・率

回収された調査票の内訳は表1の通りであった。また,1999年指定更生保護 施設(3)に認定された57 ヶ所のうち50 ヶ所からの回答を得た。

表1 回答率         (送付数104 ヶ所)

回 収 率 75% 78 ヶ所 含む指定更生保護施設50 ヶ所 非回収率 25% 26 ヶ所 含む指定更生保護施設7ヶ所

(6) 調査の経過報告

2012年4月,アンケート調査の御礼と簡単な集計を葉書で報告した。

2 調査の結果と分析

(1) 調査結果

1−(4)−1)2)の調査項目から結果をみていくと,以下のとおりであった。

1)更生保護施設属性

回答を得た78 ヶ所の内訳は,昭和期に設立された31 ヶ所(39%),明治期 28 ヶ所(31%),大正期15 ヶ所(19%),平成期2ヶ所,無記名2ヶ所の順となっ ている。男性収容施設が66 ヶ所,混合施設7ヶ所,女性収容施設が5ヶ所であっ た。また,収容定員は20 ~ 29名の施設が40 ヶ所と最も多かった。職員数は更 生保護事業で定められていて,施設長,補導主任,補導員,調理員等で構成さ れている。その他,非常勤を配置し,業務の分担を行っているところが殆どで あった。指定更生保護施設ではないが,すでに社会福祉の専門職を配置してい

(6)

る施設は6ヶ所だった。専門職等の資格の内訳は図1のように,多岐に渡って いる。その他の内訳では,成年後見人や民生委員の経験者,臨床心理士や看護 師等の職種から広がりをみることができる。また,専門職員の勤務年数が4年 未満という数値が最も多かった要因は,1999年に指定更生保護施設の実施に伴 うことと関係しているといえる。

2)SST 実施状況

SST の周知状況は回答数78 ヶ所の全ての更生保護施設で知っているという 結果であった。図2のように,実施時期から今日まで継続して SST が実施さ れているのは回答数78 ヶ所中32 ヶ所である。SST 実施者は施設職員のみで実 施しているところが最も多く,次に外部講師と一緒に実施という順であった。

図3は,現在 SST を実施していない46 ヶ所の内訳である。全く実施していな いと回答した施設は28 ヶ所,過去は実施していた施設9ヵ所,再開予定であ

25

20

15

10

5

0 件数

社会福祉士 精神保健福祉士介護福祉士 ケアマネジャージョブコーチホームヘルパー社会福祉主事その他 22

13 13

4 1

8

16 15

図1 社会福祉専門職等の資格の内訳

(7)

るとする施設9ヶ所で,この数値から期間に関係なくこれまでに実施されてい たと推測できる施設は50 ヶ所になる。

次に,SST を中断した理由と再開のための条件を自由記述で回答を得た内 容を表2(本稿末に資料として掲載)にまとめ,再開していくための条件とさ れる項目を矢印で示した。自由回答は,更生保護施設で使用されている入所者 の呼び方を活用し,実際が理解できるように,あえて統一せずに記載している。

中断の理由には,①職員の業務が多忙である,② SST を担当していた職員 の退職,③職員の SST を学ぶ時間が少なくて SST を実施できるスキルの習得 が不十分と回答を寄せている。また,入所者との関係では,①在所期間が短い ので効果があるのかがわからない,②就労を第一と考える施設の目的から,働 くことが最優先なので求職中や就労中の入所者は参加できない,③施設の行事 は任意参加で拘束力が無いため集まりが悪いなど,入所者のニーズを優先させ れば参加者が減るし,参加を促進しすぎると強制力が働くし……,というジレ ンマが読み取れた。運営面では外部講師に謝金が支払えないと嘆く施設も複数 あった。

実施中32 実施中32 /104ヶ所78ヶ所78ヶ所

/104ヶ所 更生保護18 更生保護18

更生保護10 更生保護10 指定更生保護 22指定更生保護 22

指定更生保護 指定更生保護28 28

実施せず46 実施せず46

46ヶ所 46ヶ所 更生保護2 更生保護2

更生保護3 更生保護3

更生保護13 更生保護13

指定更生保護 15指定更生保護 15

指定更生保護 指定更生保護6 6 再開予定である 再開予定である9

9

過去に実施していた ことがある

過去に実施していた ことがある

99 指定更生保護 指定更生保護7 7

実施したことがない 実施したことがない28

28

図3 現在 SST を実施していない施設の内訳 図2 SST の実施状況

(8)

こうした中断を再開に移行させるための条件として,①入所者が矯正施設か ら更生保護施設に移行する場合に SST 実施の説明を行い,矯正施設の職員か ら更生保護施設の職員の双方の間に連携の工夫が必要ではないかというネット ワーク構築を見据えた意見もあった。入所者の自立更生に向けた取り組みの必 要性は感じるものの,②業務多忙や研修にいく時間が取れないなど,職場の勤 務体制の整備を必要とされている施設もあった。従って,③外部講師の協力を 希望される施設も多く見られた。そして④強制力があれば参加者が増えるのだ けど……といった回答もあった。

SST が更生保護施設に導入されてから10年近くになるが,有効であるといっ たエビデンスが紹介されていないという指摘もあり,各更生保護施設間の情報 交換の場が待たれている。また,SST を活用する場合には活用する局面を限 定して行えば有効ではないかという意見もみられた。

一方,短期の入所で月に1~2回程度の SST 実施では効果が期待できない,

と SST プログラム実施に対して消極的な考えを持つ職員もいた。

表3(本稿末)は,SST で取り上げられた課題の内容をまとめたものである。

ここでは目的に沿って取り上げられた内容を(1)職業生活に関連する事柄,

(2)社会生活で必要な会話,(3)社会生活全般の領域に分けて示したもので ある。表4(本稿末)は,SST プログラムに参加しての効果を自由に回答さ れた内容をまとめたものである。表4は SST の効果について自由に記載され た内容となっている。(1)SST 実施の職員の視点や施設長の視点で,(2)

入所者の声や感想文から抽出されている。任意の参加とはいえ,参加そのもの は入所者の自主性である。多少の偏りはあるものの総じて評価は高いものと なっている。施設職員の熱意が効を奏しているといえる。

表5(本稿末)は,SST 実施上での課題をあげ,今後の SST 実施に向けた 工夫や改善点をまとめたものである。人事や運営に関する改善点では法務省保 護局への要請が目立つ。多忙を極める職員体制では十分な活動が困難であると

(9)

して,職員体制の充実と外部講師を依頼する場合の補助金等の加算が申請され ている。また,入所者の参加を促す方法として本省からの積極的な働きかけを 期待されている。更生保護施設によって SST の進行を工夫されていることが 明らかである。例えば,SST の有効性を当事者に伝える方法を模索されてい る様子や職員の SST 研修を受講させたいと勤務体制の工夫が行われたり,入 所者に振り回されている様子などから苦労されていることを伺い知ることがで きる。SST プログラムでは集団と個人 SST を組み合わせて入所者に向き合う ことや職員と入所者による共同で進行できるように課題設定に工夫を凝らした いという意見が目立った。また建設的な意見として SST を実施されている更 生保護施設間の交流会や研修を希望するなど,更生保護施設独自の SST プロ グラムの開発に向けた取り組み等の提案も見られた。

3)聞き取り

聞き取りや訪問の承諾をいただいた施設への訪問については,共同研究とし て別誌(4)に報告予定である。

(2) 調査の分析

本調査で75% の回収率を得て,SST 実施についての関心の高さを窺い知る ことができる。同時にそれは入所者への支援に苦慮されていることでもある。

2006年の更生保護施設のあり方を考える有識者会議の報告(5)にもあるように,

入所者の自立更生に向けた支援には,国民の理解が必要であり,官民協働で地 域資源の活用を推進するとしている。多様な職種の職員が採用されているとい うことからも入所者の抱えるニーズが多岐にわたっていて,多様な社会福祉 サービスを必要としていることが理解できる。こうした入所者のニーズに応え るために,SST が取り入れられてきた背景には SST が過去に遡って内省する のではなく,今,ここから,できるところからという未来志向型の希望をもつ

(10)

ことを目標に掲げていることと関係している。つまり反省の上に立ちながら常 に前向きに歩み出そうというメッセージが込められているように思う。従って 表2,表3,表4,表5にみられるように,入所者の自立更生に向けた取り組 みの改善に期待が寄せられているといえる。

SST 実施施設の調査では,1990年に6ヶ所,2000年に15 ヶ所,2004年に 40 ヶ所と増加の傾向が報告されている(6)。本調査では,現在実施中の32 ヶ所と,

今は中断しているが機会があれば実施を予定されている9ヶ所,準備中である 9ヶ所を合計すると今日までの間に少なくとも50 ヶ所は期間の長短を別とし て,実施していたことになる。未回答の26 ヶ所では SST の実施については不 明である。この SST 実施を支えている源は更生保護施設職員の手弁当による 活動の賜物といえる。しかも外部講師を招いて実施されている施設の場合は会 場の管理運営等に人員を配置する必要があり,夜間や土・日の休日出勤といっ た過重勤務もあったことだろう。

入所者の在所期間が3~4ヶ月,長くて6ヶ月という短期間に自立更生に向 けた指導を行い,地域に送り出す職員は「すぐには役立たないかもしれないが,

生活していく中で『あの時,あそこで,やったことがある』と思い出して,あ きらめないで乗り切ってくれれば……」と見守ることが多く,入所者に SST 参加を呼びかけられるように職員同士が SST の理解を深め,研鑽を積めるよ うな運営管理システムの構築を願っている。この点について,岡田は更生保護 施設内の生活指導に,SST が導入されることや個別指導から集団指導へと指 導の幅を広げることなどを評価しているものの,入所者に SST 参加を強制す ることになりはしないか,職員への負担を増長させるのではないか,と心配さ れている(7)

入所者の改善は SST 単独の効果ではなく,これまで更生保護施設で実施さ れているさまざまなプログラムや職員による生活指導などが複合的に相乗効果 を生み出しているものである。SST を初めて体験する入所者の中には尻込み

(11)

する場合も少なくないが,職員の介入により効果がみえてきた入所者もいる。

また,入所者が退所する時に記載する感想文や SST 実施後の感想からも入所 者自身が,これからの社会生活を送るのに前向きであることが読み取れる。こ うした効果が施設職員の SST 実践へ意欲をもたらし,研鑽の時間を得たいと する意見がある一方で,岡田が懸念するように過重業務となり,個別指導の時 間がもてないことや短期間の入所期間で効果が得られるものかといった疑問の 声もあった。

3 調査の分析からの考察

当初掲げた更生保護施設における SST プログラム内容開発についても実に 多くの提供を得ることができた。そこで以下の2点についてまとめてみた。

(1) 運営管理上

与える指導から入所者自身が今後の生活を考え,工夫し,他の参加者と課題 を共有しながら学習する SST は,より主体的に課題を持ち寄る入所者の方が,

生活の知恵を取得することができると職員の評価がある。その評価があること で,職員もまた効果的な技術を得てもらうために SST グループの進行や内容 に磨きがかかり,正のスパイラルが生まれ,効果は大きいといえる。共に SST 実施に向けて取り組みつつも時間の制約や勤務交代の工面を工夫し,過 重労働を余儀なくされていてもやり続けている職員の努力が評価されているこ とでもある。

一方,SST に関心を持つ職員とそうでない職員とに二分されていることも 理解できた。SST を実施していた職員が退職すると SST プログラムが中断さ れ,継続したプログラムになりにくいという課題が見られた。そうした施設で は外部講師を呼んで実施されているところもあるが,SST のプログラムを定

(12)

着させていくことが目的にあるのではなく,入所者の自立更生に向けた取り組 みに活用される技法の一つと把握されているからこそ,継続していくことがで きたのだと理解する。確かに SST 実施には知識や技術は必要だが,基本は人 として入所者と対等に向き合うことが問われていることだといえる。補助金を 得て SST 実施の研修に参加したり,外部講師を呼ぶための費用に充てること ができるということも理解できる。同時に,どんなに環境が整えられていても 職員の業務は減るわけではない。「入所者の社会生活に役立つからという信念 がなければ続かない」というメッセージに入所者への深い思いが込められてい るように伺えた。補助金の額はわからないが,年間の実績報告で SST の実施 回数,実施内容,外部講師の有無,参加人数,取り上げた報告書等をもとに補 助金の支給は必要であると認識している。報告された事例を基に SST 報告集 を作成し,全国の更生保護施設に配布されることを期待したい。なぜなら,今 回のアンケート調査では,他更生保護施設がどのような実施状況なのか知りた いという意見が多く見られたからである。

(2) SST プログラム

入所者の育ってきた社会的経験の多岐多様さや年齢,学歴,職歴などの違い から取り上げる課題に困難さを感じている職員も多く,再犯防止と自立更生に 向けた取り組みに SST が効果をもたらす(8)と紹介されているが,SST に参 加する効果を入所者に十分に伝えきれないジレンマを抱えている施設も見受け られた。また,実施する職員によって SST の目的の伝え方や進行の仕方に独 自性があって,入所者に混乱を招くのではないかと危惧されている職員もいる。

SST を通して地域の更生保護施設間で,意見交換や事例を通した取り組み紹 介などの機会を望まれている。更には,共同研究で更生保護施設の目的をもと に,入所者の背景やこれからの地域生活を考慮した生活上のスキル獲得のため のプログラムを検討したいという建設的な意見もあった。

(13)

「仕事探し」と一言でくくれない今日,社会生活にブランクがある入所者に は,これまでの生活習慣とは違ったスキル,例えば,住み込みが難しく自分で アパートを探して住まいを用意しなければならないことや予約してから就職面 接を受けること,ハローワークでは仕事の検索をコンピューターで行うことな ど,これまでの生活には見られない新しいスキルが要求されていることも多く,

求職以前に学習しておかなければならないことも多く発生する。知らないこと を尋ねる場合など,コミュニケーションスキルの獲得も必修となる。これまで の生活で学ぶ時期を逸した入所者にとっては,更生保護施設での生活で再学習 するチャンスとなっていることを思えば,「仕事探し」は,「仕事を探す前の準 備」「就職面接」「仕事開始当初」「仕事を継続するには」の4項目に分けて SST で取り上げることが必要になるだろう。また,退所を前にしては「基本 的な生活の自己管理」「使える社会資源と使い方」「アパート生活のルール」「コ ミュニケーション」などといった項目も用意しておきたい。表3を見て,入所 者の自立更生に向けた幅広い支援をされていることを改めて確認したところで ある。

しかしながら,課題は入所者が提出してくれるのを原則とするが,入所者の 自立更生に向けて結論を急ぐあまり,入所者の存在が置き去りになり,職員だ けで課題を設定してしまう危険性も持ち合わせている。一緒に考え取り組むた めに,入所者の声を傾聴し「肩肘を張らない気楽さで実施したい」という施設 の回答は印象的だった。

おわりに

調査を終えて,改めて表5にみられるように,「継続することが大事!職員 の努力とやる気!」と回答を寄せた施設のように,過重労働になっても入所者 の自立更生に向けた支援活動が実施されていることに敬服している。SST 実

(14)

施では職員の態度変容が入所者を改善させ,入所者の変化が更なる職員の効果 的な指導を向上させていく循環型の構造が生まれていて,双方に相乗効果を生 み出す力を作り出している。

2006年から矯正施設でも本格的に SST が導入され,筆者も SST の実践に参 加している。矯正施設では SST プログラムに参加できるのは一部で,しかも 出所日が未定な入所者も多く参加されている。「ここで体験したことを社会に 出てから思い出して,実践してください」と伝えるが,本当に役立っているの か追跡調査がないので効果測定は難しい。2012年度からこの追跡調査が実施さ れていると伺っているが,報告されるまでには時間を要する膨大な調査になろ うと推測できる。更生保護施設で実施される SST と違って,筆者が参加して いる更生保護施設でも「矯正施設で SST を経験してきました」という入所者 も増えていてこれからが楽しみである。

今回の更生保護施設におけるアンケート調査を実施したのは,調査の結果か ら更生保護施設独自の SST プログラムが用意できるのではないかと期待し,

アンケートに協力いただいた施設へ提供したいと思ったことと,多くの運営管 理面での苦労を知るにつけ,改善点はないだろうかと無謀にも考えたことにあ る。そこで誤解を恐れずに,いくつかの提言をしてみたい。

(1) 更生保護施設入所希望者への導入面接と処遇計画書について

矯正施設から更生保護施設に入所を希望される方の場合は,環境調整と受け 入れ面接を通して受け入れ更生保護施設が決定され,そこに係る専門家や更生 保護施設職員等と共に今後の支援計画が検討される(9)。この計画書に SST 実 施について触れ,「今後の生活での希望は何か,どんな生活や対人スキルを獲 得したいか」などのチェック項目を含めておけば入所者の SST プログラムに 参加する動機や学びが具体化されていくのではないだろうか。今回のアンケー ト調査で,入所者の参加を促すことに苦慮されている施設が多く見られた。矯

(15)

正施設と更生保護施設が「縦割り支援」から「つなぐ支援」に発展できれば,

SST を通した社会生活上のスキル獲得目標が明確となって実効性の高い SST が展開可能となろう。そのつなぎの部分を支援計画書の中に導入されることを 期待したい。

(2) 補助金について

SST 実施に伴う工夫や改善点に複数の更生保護施設から補助金の要求が記 載されていた。施設職員の過重労働の改善に職員の増員や外部講師の確保と,

SST を実施できる職員の人材育成に必要とされている。補助金の分配も当然 ではあるが,3−(1)で触れたように,実績報告をもとに事例集を作成し,

各更生保護施設が必要としている情報提供に配布したらどうだろうか。そのた めに補助金の一部を本省でキープするということもあり得ると考える。

(3) 外部講師や外部機関との連携の強化について

多忙な職員の業務を緩和させる意味でも,また,入所者が社会を理解する上 でも外部からの視点は必要であろう。BBS や更生保護婦人会,協力雇用主と の連携はこれまでも形成されてきているが,更に地域に暮らす一般住民と共に 活動の機会を持てるようになれば,社会のルールやマナーなどが自然に学べる ことになる。外部講師は,第三者的な意見を生活指導に反映させる手立てを提 供できるのではないだろうか(10)

表2に SST を中断せざるを得なくなった施設が他機関との連携で,入所者 がその機関に通所して学びを得ているという記載があった。地域にあるどの施 設も機能の限界をもっている。更生保護施設においても同じで,入所者に必要 な学習プログラムをすべて用意することは困難である。例えば断酒会やアラノ ンなどのピアグループに更生保護施設の入所者も参加しているように,SST も地域で実施されている支援機関に参加できるような働きかけをおこなう仕組

(16)

みが必要といえる。こうした試みが社会参加を果たした入所者に地域の機関を 使いやすいと感じさせたり,困ったときの相談場所となっていくための道筋が 作られていく。孤立せずにお互いが社会資源となって地域ネットワーク構築に 貢献できると思われる。

(4) SST プログラムの見直しと開発について

「SST は効果があるの?」という疑問をよく聞く。SST で取り上げる課題が

「前向きに」「チャレンジしてみようかなあ~」と思える内容であるためには,

入所者の声や地域で SST を実施している支援機関のプログラムに参加されて いる人の声を聴くことである。

2013年度から日本更生保護協会は3年間のモデル事業を予定し,全国を8ブ ロックに分けて地域の保護司の方々に SST の理解を広めることに取り組んで いる。SST の理論や専門技術に捉われない保護司さんの経験と知恵に期待が 集まっている。

SST は万能ではない。それ故に,経験豊富な職員や地域の関係者が持って いる知恵を出し合って入所者に働きかけることが必要で,職員がモデルとなっ ていく。SST プログラムの内容は表3に記載しているが,こうした内容を持 ち寄り更生保護施設の職員と外部講師,地域の支援機関で膝を突き合わせれば 内容の濃いプログラムができると信じている。3−(2)でも述べたようにチー ムを作って良いプログラム開発を微力ながら手伝いたいと考える。

随分と言いたい放題に書いてしまった。矯正施設や更生保護施設で SST 実 践に係る一人として,決定打があるわけではないが,地域の中で SST を活用 している支援機関との連携ができれば,一つの施設で抱え込みもなくなるし何 より地域にある資源を知ることで,生活空間が広がるのではないだろうか。今 回のアンケート調査を集約する中で,更生保護施設での SST 実施に向けた工

(17)

夫や取り組みに地域支援機関を含むプロジェクトチームを立ち上げて改善が進 められることを願っている。

謝辞

お忙しい中,アンケート調査に回答を寄せてくださった施設の皆様には誌面を借りて感 謝を申し上げます。表2,表3,表4,表5の自由回答は,多くの更生保護施設の方から 情報を知りたいという声がありましたので,できるだけ忠実に掲載しています。参考にし ていただければ幸いです。

(1)  「矯正施設対処者等の福祉的支援について2010年11月改訂版」社会福祉法人南高愛 隣会,2010年,p4,p36。

(2)  「大正15年宮城長五郎氏と藤井恵照氏によって起訴猶予者等を対象に東京都芝区に 創設。昭和20年西早稲田に本部を統合。平成8年更生保護法人認可。定員成人男子20名。

在会者処遇の充実を図る方策として「社会生活技能訓練(SST)」や「ひまわり会(在 会者集会)」が実施されている。SST は平成7年7月の第1回スターと以来,今日まで 実施されている。全国更生保護施設要覧より引用」更生保護法人日本更生保護協会,

2004年,p30。

(3)  「指定更生保護施設は高齢又は障害により特に自立が困難な矯正施設出所者等を保 護する施設で指定を受けた更生保護施設。全国で57 ヶ所が指定を受け,社会福祉の専 門職が配置されている。」注(1)前掲書 p70。

(4)  久保美紀との共同研究で,明治学院大学社会学部付属研究所『研究所年報』44号に 掲載予定。

(5)  2006年7月,「更生保護の在り方を考える有識者会議」の最終報告書「更生保護制 度改革の提言─安心 ・ 安心の国づくり,地域づくりを目指して─」では,①国民や地 域社会の理解の拡大化,②実効性の高い官民協働へ,③保護観察プログラムの充実が 挙げられている。pp6−13。

(6)  岡田行雄「第7章更生保護施設の処遇施設化について」刑事立法研究会編『更生保 護制度改革のゆくえ班竿をした人の社会復帰のために』現代人文社,2009年,pp137−

159。

(7)  注(6)同掲書。

(8)  更生保護法人日本更生保護協会『生活する力をつける更生保護施設に於ける SST マ

(18)

ニュアル』,2006年。

(9)  法務省保護局編 更生保護法人全国更生保護法人連盟『更生保護施設に於ける基本 処遇』pp15−45。

(10)  八木原律子「矯正・保護領域における SST 実践」日本司法福祉学会編『司法福祉学 研究12』,生活書院,2012年,pp149−163。

(19)

<資料>

表2 中断理由及び再開させるための条件(中断理由を・再開させるための条件を→で示す)

・ グループワークで入所者にアサーティブネス・トレーニングを実施しているため。個人 SST を実施する時がある。

 → グループワークで SST を実施するには,入所前(刑務所入所中から)からの動機付け が大切であると思う。

 → グループ員(参加者)への状況と実施期間も細かに計画し,職員体制も整備する必要 もある。

・ 個別処遇を主体に行っているため,労力に比して効果があまり期待できない。

・ 被保護者を集めるのが大変である。

・ 自由参加なので集まりが悪い(仕事優先・休養優先)。

・ 実施の時間帯の設定が難しい。

・ 定期的な実施が難しい。

・ 職員が個々のケースに対応しているため,夜間や休日などに実施するには職員の負担が 大きい。

 → 10年以上,有効的だという報告が出されていない。

・ 被保護者の就労等で時間が取れないことや人数が集まらないので,個人的に模擬面接に 切り替えている。

 → 日曜日に被保護者との折り合いが取れれば実施できる。

・ 担当していた職員が年度途中で急逝したため。

 → 職員が確保できれば再開したい。

・ 開催を呼びかけるが参加者がいない。

・ 経験年数が浅く,展開に自信がない。

 → 職員の技量の向上,自信の確保。

 → 入所者が参加しやすい日程の調整と雰囲気作り。

 → リーダーとコリーダー体制が取れる(職員の勤務日の調整)。

・ 在会期間が3~6ヶ月と短いことで SST を有効に実施できなかった。

・ 代替行事としてレクレーションやエ手紙教室を始めるようになった。

・ 被保護者への実効性があまり感じられなかったため。

 → 就労支援としての採用面接とか,薬害 ・ 酒害教育のある場面とかの局面を限定して実 施すればそれなりに有効かもしれないと考えている。

・ SST を実施していた職員2名が(定年)退職した。……複数ヶ所からの回答有り  → 現職員が SST を実施できるスキルの取得。

 → 施設の諸事情で業務が多忙である。落ち着いたら定期的に SST を実施したい。

 → 職員の中から選定して再開したい。

 → 賞金に研修を受講させるようにしている。一定のスキルを習得できれば再開したい。

・ あまり意味がなく,本園独自の処遇方針でマニュアルを作って実施している。

・ 短期間で退所する人が多く,やっても効果がない。

 → 長期在院の人を対象に実行された方が良い。

・ よくわからない。

 → 外部講師の協力が必要。

(20)

・ 就労率が高く,殆どの者が働いており,実施する時間が取れない。自由参加としており,

土 ・ 日は外出して不在。

 → 保護観察が実施している各種プログラムのように強制力があれば実施可能。

 → 入所者との折り合いがつけば実施可能。

・ 同法人内の他事業所に OT が配属となり,そちらで専門的な SST が実施されているた め,協力依頼をおこない,そこで実施してもらっている。必要に応じて,精神病院等で 実施されている外来者向けの SST にも参加している。

 → SST は専門的な技術が必要なため,他機関との連携を図り,そこの技術を活用させて もらいたいと考えている。そこのアドバイスを元に,指導上に活かしていく事は考え ている。

・ 必要性を感じなかった。入寮者には就労確保を主体に補導していた。

・ 時間が取れない。SST を指導する者がいない(研修を受けたが難しい)。

・ 講師に対する手当てが出せない。

 → 日曜日に部外講師による指導であれば可能。月に1~2回程度。

・ 職員の業務多忙。施設利用者の就労,休息の優先。

 → 外部講師の協力。職員の業務体勢の見直し。施設利用者との折り合い。

・ SST の指導職員の体験不足から望ましい結果が出ないばかりか,処遇改善集会になって しまうことから実施を取りやめた。

 → 職員に習熟させる機会と,若手の人材が得られたら可能。

(21)

表3 SST で取り上げた課題の内容一覧

(1)職業生活に関 連する事項

・ 履歴書の書き方・仕事探しの工夫や心構え(働くとは?自立するとは?就職準備 希望動機など)

・ 面接経験者の体験談を聴く 

・ 求職面接の依頼のための電話による問合せ(敬語・声のトーンや速さ)

・ 面接予約のための電話で確認すること(面接日時 ・ 場所 ・ 面接者の名前

・ 持参する物など)

・ 模擬面接(面接時の受け答え・ブランクの説明・仕事をやめた理由・面 接室への入り方・態度など)

・ 就職面接で住所が○○方となっているが,どういう関係かと聞かれたと きの答え方 

・ 自己 PR の仕方

・ 前にどんな仕事をしていたかと聞かれたときの対処法 

・ 前科前歴を尋ねられた際における答弁要領など

・ 電話の掛け方(体調不良時の欠勤や遅刻などの連絡) 職業生活

・ ほう れん そう(報告・連絡・相談)の仕方

・ 仕事上,ミスをした時の謝り方 

・ 職場で上司に厳しく注意を受けた際の対処法

・ 挨拶の仕方(初めての職場に出勤した時・自己紹介・言葉づかい・わか らないことを聞くなど)

・ 仕事上,行き詰ったりした場合の協力をお願いする場合 

・ お礼の伝え方

・ 休憩中のコミュニケーション(世間話の輪の中に入る方法など)

・ 門限による勤務時間の制約

・ 仕事を継続するためのスキル(休日の過ごし方など)

(22)

(2)

コミュニケー ション

あいさつ ・ 言葉遣い

・ 入所時のあいさつ(敬語に注意したあいさつ・視線や姿勢など) 

・ 人前で話をする

・ 初対面の人やアパートの隣人との会話(会釈を含めた大げさにならない 会話)

・ 不愉快な質問をされたときの対処 断る ・ 頼む ・ 依頼する ・ あやまる

・(お酒・借金の申し込み・昔の仲間)からの誘いなどを,相手を傷つけ ないで断る方法 

・ 怒りの静め方 家族など身近な人たち

・ 久しぶりに会う家族,子供との接し方 

・ 家族との関係を作り直す 

・ 不快な質問をされた時の対処の仕方 その他

・ つらいことやショックを受けている人にどう接するか

・ 同室(寮内)での人間関係(協調心,相手の立場を尊重)

・ 感情のコントロール(怒り・感謝の気持ちを伝える・謝る ・ ほめる・物 を借りるときの頼み方など)

・ 今後の生活について職員への相談の仕方 

・ 意見や考えの違う人と旨く折り合いをつけるスキル

(3)社会生活

・ 対人関係の改善(相談できる人を作る)

・ 社会資源の利用(退所後の生活相談の仕方や場所の把握・各種カードの 利用など)

・ 不快な事柄(隣人の騒音・遅い時間の会話など)に注意をする時の方法

・ 生活習慣の点検(規則的な生活の見直し・あいさつ・自己管理=健康,

金銭)など

・ ルール=ゴミの出し方などアパート生活上の規約を理解する

・ アパート契約(保証人がいない場合の不動産屋への相談方法など)での スキル

・ お金を貯める工夫 

・ 休日の過ごし方

(4)その他

・「更生保護施設における SST マニュアル」を基本に,時々の問題(集団 生活)を取り上げ,工夫をしながら実施している

・ 一般住所と違う名称への対処の仕方

・ 当園では,担当する職員の個々の職務の範疇として,園生の特徴を勘案 して其々が内容を設定し実施している

・ 施設入所時に職員が SST について説明し,20程のチェック項目用紙に

○をつけてもらう

・ ビデオ指導

・ 寮生からの要望で適宜プログラムを変更することもある

(23)

表4 SST の効果

(1)

職員の視点

・ 就職活動に意欲が出てきた。

・ 参加に積極的な者,課題に主体的に取り組む者は再犯率が低くなる傾向 にある。

・ 過去の生活を振り返り,施設内での生活改善や自立後の適切な生活を構 築する者も多い。

・ 両親の顔を知らずに育った参加者が「親身な指導を受けるのは初めて で,自分のことを案じている人がいるということに感謝」という感想を もらった。

・ 多少なりとも問題意識を持ったことで,行動に変化が見られるように なった。

・ 職員に話せないことが SST の場で表現できている。

・ 面接時の会話など,具体的な気付きが多くなった。

・ 自己中心的で協調性に乏しかった者が,他者配慮の姿勢が芽生え,協調 性が高まってきた。

・ 当番制に対する協力度が増した。笑顔で話せるようになった。

・ SST で挨拶の重要さを説いたところ,翌日から急に挨拶ができるように なった。

・ 集団生活で配慮していることをテーマに行ったところ,他者の視点が理 解でき,寮生活に活かせるようになった。

・ 声が大きくなった。

・ 感謝の気持ちが言えるようになった。

・ 積極的に学び,参加するようになった。

・ 集中して話が聞けるようになった。

(2)

入所者の視点

「訓練したことがどこかで役立っていると思います。」

「コミュニケーションの大切さと難しさがわかりました。」

「素直な気持ちになれる時間となった。」

「普段話をしない人とも話ができる機会となった。」

「時間や回数を増やしてほしい。」

「再就職の参考になった。」

「面接のやり方など参考になった。」

「社会勉強になりました。」

「いい経験になりました。」

「最後の方はあまり出席できなかったが,SST を通して改めて考えなおし たこと,中身の濃い時間となった。実践で活用できる自分は幸せ者だ。仕 事上での人間関係や私生活で,今までの学びを思い出して,一つ一つ時間 をかけてゆっくりと実践していきたい。」

「実際の求職活動に役立った。」

「職場や社会のルールを守り,人前で話せるようになった。」

「施設内での利用者間のコミュニケーションづくりに役立った。」

「挨拶・お礼を言う・相手をほめることができるようになった。」

(24)

「就職面接で聞かれたことに返答ができた。明確なあいさつができるよう になった。」

「家族との関係が改善に向かった。日頃の言動の大切さがわかった。」

「問題解決法や感情のコントロールは役立つ。」

「他者の考えや感じ方を理解し,自分の抱える問題の解決策に選択肢が広 がり,これまでの自分の考えの誤りに気付くことができた。」

「相手役を行う事で,他者からどう見られているかがわかった。」

「人間関係や社会生活上で,自分の長所短所が確認でき,改善の糸口が見 つかった。」

「刺激を受け元気が出た。」

「自己効力感が強まった。」

(25)

表5 SST 実施における課題とその工夫や改善について

・ 宿直業務など様々な業務を抱える施設職員は毎週実施することも極めて困難である。

・ 在会の人数が多く,職員の人員等の関係で月1回 SST 実施という現状では,計画的に対 象者を追う事は不可能。

・ 実施日が日曜日という問題もある。開催の時間が取れない。定期的な実施が難しい。

・ 大部分の入所者が働いているので,実施時間帯が夜間となる。

・ 時間帯の設定が難しい。

・ 職員の高齢化のため実施が困難。

・ 更生保護施設では SST は必要であるが,外部講師を招くにも時間や謝金が用意できない ので,普及は難しい。

・ 職員の時間調整に苦労している。

 → 個人 SST にシフトしている。

 → 職員の意識と技術改革が必須と考える。職員全員が SST への関心を高め,レベルアッ プしていく必要がある。

 → SST 導入の必要性,有効性への認識が必要。また,基礎的な知識の習得が必要。

 → 外部講師を招く機会を増やす。

 → 勤務体制の確保。

 → 法務省保護局の積極的な働きかけが必要。継続させること。

 → 更生保護施設職員の給料の引き上げでよりよい人材を確保する。

 → 本省からの委託費の増額を希望。SST プログラム等を実施する施設への資金援助と講 師人材確保への協力。

 → 更生保護職員への SST の啓発,職員の共通理解と協力体制が不可欠。

 → SST を実施している施設との研究会,情報交換の必要性。

 → 本省や更生保護協会の方針が明確となり,SST 実施を義務付けとする。

・ リーダーの経験不足から望ましい SST とならない。施設職員が独自に行うだけの習熟度

・ SST 指導者が身近にいないので,職員のみで SST を実施している。が低い。

・ リーダー,コリーダーの役割としての能力向上が難しい。

・ 外部講師が課題を提案し,集団を動かしていくのはかなり困難である。SST 講師に丸投 げするのは効果的でない。日常の処遇と遊離してしまう弊害がある。

・ 矯正施設の OB が殆どで,SST の理念と処遇が真逆であるため,意識の切り替えが難し い。SST の理念と矯正施設の処遇が全く逆であるため,SST の時間と日常の指導が異な り,入所者にも混乱を与える。

 → その日の流れで課題設定だけでなく,必要とするスキルを集めたカリキュラムを作れ ないだろうか。

 → 困難な問題の軽減のために,外部講師と連絡をとり,会の様子や日頃の日常やコミュ ニケーションの問題点について報告し,意見交換や提案をし合っている。効果的な SST を実施するには更生保護施設職員の協力が不可欠。

 → SST 研修を受ける時間の確保。

 → 矯正・更生保護施設の連携が効果的に行われるとよい。

(26)

 → 他機関との連携を図る(相互活用の機会・会議・ボランティア参加)

 → 職員の努力!職員のやる気!「社会生活スキルが向上する」と信じて,そこを出発点 とする。始めたら継続する。

・ 入所者はスキルの高い者から低い者まで,その高低差が非常に大きいので,内容として まとめあげるためにリーダーとして苦労する。概してスキルが低い者は SST に対して消 極的であり,無理やり参加させてもその場の雰囲気を崩すので,そのものの取り扱いに 苦労する。

・ 積極的に参加しようとしない。

・ 参加して欲しい人が参加しない。参加者を募ることが困難。

・ SST の必要な者が多いが,本人が必要性を感じない場合や,必要と感じているからこそ 参加を嫌がる傾向が見られる。

・ 逃げるように参加を拒否する者も少なからずいる。

・ 寮生は数ヶ月で自立していくため,プログラム化して実施することは不可能。

・ 対象者にやる気を起こさせられるかが課題

・ ロールプレイは『やったことが無いし難しそう』との理由で参加したがらない寮生に対 してどう説明するか。

・ 在会日数が少ないので効果があるのかどうか疑問。

・ 参加の意図を正しく理解せず,義理的に参加するので身が入らない者がいる。

 → 職員の失敗体験を伝えることで,完璧な人間はいないので,練習や訓練の必要性を説く。

 → 入所時に SST に出席することの必要性を説明する。参加者のニーズを踏まえ,具体的 なテーマ設定を話し合いから始める。リーダーとの打ち合わせが必要。外部講師や職 員同士の協力体制が必要。

 → 毎回,ポスターで SST 参加を呼び掛ける。

 → 規模は少人数(4人程度)とし,傍観者を作らない。目的別のグループ構成とする。

 → 練習テーマの設定の工夫。身近なテーマを採用する。

 → 内容を体系的,段階的に進めるために計画性を持たせる。

 → 入所時に「SST は自分を変える手段として効果がある」と説明し,継続参加で改善で きることを説明する。

 → SST で取り上げる内容は,参加者の生活に役立つことを周知させる方法に取り組む。

 → 入寮中は仕事や病気以外の人は全員参加することと約束している。

 → モチベーションをあげるために個別で面接を実施している。

 → 以前は全寮生を対象としていたが,今年度からは「入寮して間もない未就労者」で,

内容も「就労関係」に絞っている。

 → 施設の規則にも明記し,未就労者を半強制的に参加としたことにより,担当者として は実施しやすくなった。

 → 施設の行事として全員の参加を奨励している。

・ テーマが同じなので長期在会者にとっては似通った内容となり,興味が半減してしま

・ 少年のため,恥ずかしがったり格好を気にしたりして,わざとふざけてしまう。う。

・ ロールプレイを嫌う。

・ 促さない限り自分から発言しようとしない。自発的な課題の提出が難しい。返答がない。

・ 参加者の能力にあった SST を実施し,満足して終えるような流れを作るのが難しい。

(27)

・ 問題意識の低さ。効果を示す前に入所者が退所となる。

・ 練習者の緊張をほぐすのが難しい。

・ 寮生同士の発言に反発して怒りをあらわにした場合の対処が難しい。

・ 会内で事件が発生し,参加者がイライラした気分を抱えたままで参加,進行を中断して イライラ感を共有して終了したが,SST の進め方が難しい。

・ 能力の高い人と低い人の混在グループの進め方。

・ SST の課題が決まっている時,課題を変えて欲しいと申し出た場合の対応に苦慮する。

・ 他の参加者の発言場面なのに,自分の話を始めて止まらない人への対応は?

・ 無理やり参加させられたとの理由で「パス」ばかり出し,集団力動の妨げになった。

 → 参加者の素直な感想を大切にするよう心がけている。

 → 否定的な感想の参加者には傾聴を心がけ,職員も変わろうとすることを怠らないこと。

 → 雰囲気を乱す人もいるが,全体がそれに流されないように講師や職員が本人の理解能 力に応じて説明を行っている。

 → 効果を挙げるためにはできるだけ継続的に出席させる必要があるので対応策を検討し ている。

 → 継続的なテーマや課題(断酒 ・ 断薬,就労支援など)の充実と,タイムリーな SST を 実施できる職員のスキルアップ。

 → 課題の定め方が大切。本人の希望のテーマであれば更生の意味も強まると考えられる。

 → 専門機関と連携を図り指導をいただきながら施設のスキルアップが必要。

 → 必要に応じて個別 SST の導入(集団と個別の使い分け)。

 → 一方的な教育指導から参加者中心へと転換し,指導者の役割を補足的な立場とするよ うな工夫が必要。

 → レクレーションの要素を取り入れ,肩肘張らない雰囲気づくりを心がけている。

 → 取り上げる内容が参加者の生活に直結する問題であるため,周知方法を考えたい。

 → 入所者のニーズに即したテーマを選ぶ。

 → トークンエコノミー。楽しみながら参加してもらうよう心がけている。

 → 課題設定では,ある程度のパターンの中から選択させている。

 → SST に気楽に取り組めるようにすること。

 → 格式ばらずに談話を交えながらリラックスムードで進めたい。

 → どのようなことに困っているのかという入所者のニーズを拾い上げ,どのように解決 していくかを丁寧に考えること。

 → 被保護者の必要性に応じ,随時,SST の実施をしていく。

 → 参加者を飽きさせない手法が必要。

その他

 → 毎年提出する実績報告書に,SST 実施中の更生保護施設はエビデンスに基づく事例を 同時に提出して,それらを基に事例集を作成し,104 ヶ所の更生保護施設に配布する ことで SST 実施の啓発をお願いしたい。

 → 更生保護施設独自の SST カリキュラムの必要性とその共同研究。

 → 更生保護施設独自の SST の確立。

参照

関連したドキュメント

社会学と現象学の遭遇 ︵4︶  樋口直人 ﹁批判的移民理論のために│前国家的共生論の試み﹂ ︵第八四回日本社会学会大会

お互ひに考へねばならぬことである。更に日支関係将来のことについて百

(5)  Council of Europe, Model Provisions for a Bilateral Social Security Agreement and Explanatory.

そこで,本論ではこのような地域生活支援の方法・技術としての「地域を基 盤としたソーシャルワーク(CBSW: Community-based Social Work,以下

を作っている」(p.48)という項目を重要視している。それでは教師にとって

ておく。まず,文字のかすれ,崩し字 など読み取りが難しい部分もあったが

 浴風園は大正12年の関東大震災で自活することができなくなった高齢者の援

いきなり各科の入局説明会を聞いて選択する方式であった。精神科の入局説明