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政 治 的 態 度 に 関 す る研 究 の 展 望
一― 態度構 造論 か らのアプ ローチ(1)一一
Review of Studies on Political Attitudes : Approach from the Attitude Organizational Research ( I )
原
田
唯
司
Tadashi lHARADA
(平
成元年
10月H日受理 )
Abstract
The purpOse of this aFtiCle was to get some clues for political attitude research in terms of reviewing the previous studies on social and relating attitudes based on the attitude orgnizational approach. The research domains under consideration were as follows : Early studies to measure social attitude structure using factor analytical method by Thurstone(1934)i Carison(1934), and Ferguson (1939), The two― factor model of social attitudes proposed by Eysenck(1947), and The studies of conservatism and
liberalism conducted by Wilson&Patterson(1968)and Kerlinger(1972). These studies concerning the structure and measurement of social and pOlitical attitudes were exa―
mined from various standpOints which lllight contribute‐ to facilitate p01itical attitu―
de study. It was concluded that careful consideration to the following issues was important to investigate p01itical attitudes more effectively:(1)Fundamental dimensions of political attitudes,(2)OrthogOnality of p01itical attitude compOnents, (3)Interre―
lationship between attitude and personality, (4)Usability of a catchphrase― type scale for measuring political attitudes, and (5)A period of political attitude formation.
1.政
治 的 態 度 研 究 の 系 譜
政治的態度 とは ,個 人が政治に関わる様々な事象に対 して持つ信念や感情
,評価が総合 され た ものであると考え られる。政治に関わる事象の中には
,政治的イデオロギーの内容を反映す る用語・シンボルとして表現 される事象や ,政 治体制の維持あるいは変革志向の間の相違を象徴 す る概念の形で表わ される事象の レベルか ら ,そ れ自体は本質的には政治的ではないに しろ
,例えばときの国勢選挙の争点 となることによってにわかに政治的な色彩を帯びる可能性を持 っ
た一般的な社会的事象の レベ レまで多様な事象が含まれている。それ らの事象は政治的意味が
付与 され る程度 に伴 って共通の刺激空間内に分布 していると考え られる。 この刺激空間内にお
ける各事象の布置の性質に関 しては ,そ れぞれの事象をある一定の観点か ら特徴づける基本的
次元が存在することを仮定できる。その最 も著名な次元は 保守主義一 自由主義
"の次元であ
ろう(Kerlinger,1984)。 その場合
,個々の政治に関わる事象は
,保守主義一 自由主義
"という次元で説明される意味内容の相違の程度 に応 じてそれぞれが配列 されていると考え られる。
別の有効な次元か らながめたときには ,個 々の政治的事象はその次元固有の基準の もとにあ ら ためて配列 されるであろう。例えば
,国家主義一非国家主義
"(Thurstone,1934)という視 点か らながめたときには ,刺 激事象の布置は 保守主義― 自由主義
"の場合とは質的に異なっ た形で再構成 されると考え られる。
このような政治的態度に関す る刺激空間の存在を仮定するな らば
,その中に含まれる個々の 事象に対す る評価や感情を測定す ることによって
,個人の政治的態度の特徴を明 らかにするこ とができるであろう。すなわち
,仮に 保守主義― 自由主義
"という観点か ら配列 された個々 の刺激事象に対す る態度の測定を行なうとすれば ,個 人の政治的態度をその次元上で総合的に 記述す ることが可能 になる。その場合
,刺激 となる社会的事象は政治的保守性の色彩の濃淡に よって特徴づけ られるので ,そ れ ら個々の事象に対す る賛否や好悪 といった評価的反応を総合 す るな らば ,個 人の政治的態度を政治的保守性の観点か ら把握できると考え られる。保守的な 政治的態度を強 く持つ者は
,保守的な色彩の強い概念や事象に対 して肯定的な反応を行ない
,逆 に反保守的な方向の性質を帯びた項 目には否定的に応答す るであろう。項 目の反応パ ター ン
は個人の政治的態度の保守性の程度の相違を反映す る形で出現 し ,個 人の内部に存在すると仮 定 され る政治的態度は
,それ ら具体的で特殊な個々の質問項 目への反応傾向を規定す ることに なる。そのような反応傾向を集積 した結果
,個人は政治的保守主義 という次元上で保守性が最 大である者か ら最小の者 まで配列 され ることになる。
政治的態度に関す る研究 はこれまであまり活発に行なわれて こなか ったといえるであろう。
少な くとも類似概念である社会的態度の場合 ほど組織的
,体系的な検討は進め られてはいない。
その理由としては
,投票行動のよ うな
,現実の政治状況に直接 インパ ク トを与える可能性があ る政治的行動を分析す る方にむ しろ重点的な関心が置かれていて ,内 的な反応準備状態である 態度その ものにはあまり注意が向けられなか ったことが挙げ られるであろう
6態度 と行動の非 一貫性を説明す る代表的な例で もあるように
,政治的態度がそのまま直接的に政治的行動に反 映す るわけではないことが広 く知 られていることも
,研究の重点が客観的に測定可能な政治的 行動の方に向けられがちであることの一つの原因になっている。 しか しなが ら ,そ れにも増 し て
,政治的態度の概念の内容 とその範囲についての幅広い合意が得 られていないことが
,政治 的態度に関す る心理学的研究が盛んであるとはいえない根本的な原因を生みだ しているように 思われる。
これまでの研究では
,政治的態度 は政治意識 (political consciousness)で あるとか社会政
治的イデオロギー (socio―
poHtical ideology),政治的志向
(pontica1 0rientation),政治社会的意見 (sociopolitical opinlon)の ように様々な用語によって表現 されて きた。同 じ
政治的態度 という用語を用いたに して も
,実際には政党支持を測定す ることで代用 している場
合 も見受け られ る。 これ らの用語はいずれ も広 い意味で政治のあり方その もの
,もしくは政治
的事象に対す る個人の態度を表現 した ものと考え られるが ,用 語の不統一 はその必然的な帰結
として実際に測定 されるものの不一致をもた らす。ある場合には選挙など政治参加に対す る態
度を中心 としていた り
,別の場合には党派性を峻別す るような政治問題に対す る賛否の程度か
ら政治に対する態度を測定 しよ うとしているというように
,同一の用語を使用 していなが らも
測定内容や観点が本質的に相違 している例をい くつか観察す ることもで きる。 もちろん同一の
K/
政治的態度に関す る研究の展望 281
概念の測度 として作成 された尺度の個々の項 目の内容は開発者の独 自性に応 じて微妙に異なる 場合が生ずることは避けられない。 しか しなが ら
,問題は個々の項 目の中味ではな く
,尺度全 体 として政治的態度のどの側面 に焦点を当てているのかの一致が見 られないところにある。 こ のように政治的態度の概念 ,用 法
,測度に少なか らず混乱が認め られることが
,この領域の研 究の進展を妨げる基本的な要因 とな っているといえるであろう。
こうした制約 と問題点 は認め られるものの
,政治的態度に関す る研究 は従来の心理学研究 に おいて決 して皆無であ った というわけではない。政治的態度をその重要な構成部分 とす る社会 的態度の構造に関す る研究に視野を広げてみ ると
,1980年代初頭に既に数多 くの研究がなされ ていることがわかる。測定尺度の中に政治領域に関わる項 目が重要な要素として位置づけ られ ている事実を考慮す る限 りは
,Adorno et als.(1950)の権威主義的パーソナ リティ "に 関
す る研究や
,Eysenck(1954)などの社会的態度の因子構造についての検討 も
,政治的態度に関 す る研究であるとい うこともで きる。 このように
,政治的態度を直接扱 った研究の数 こそ少な いものの
,それに内容的に密接に関連 した社会的態度に関す る研究はむ しろある時点において は頻繁に行なわれているといってよい。
ところで
,政治的態度 に関す る心理学的研究 は ,そ のアプローチの方法 という観点 と
,研究 のね らいという観点 とを組み合わせた場合 ,い くつかの立場があることを指摘で きるであろ う。
第
1は,政治的態度の構造を明 らかに しようとするものであり
,態度の構成次元や要素を確認 した り
,有効な政治的態度の測度の作成をめざそ うとする研究が含まれる。 この点で関連が深 いのは
,Thurstone(1934)以来社会心理学の重要な課題 として位置づけられている社会的態度 の構造論的な検討である。第
2は,政治的態度の相違に寄与す る要因を明 らかに しようとす る 研究であ り
,政治的社会化理論に基づいて
,態度形成に関わ る外的要因の影響を調べようとす る立場が該当する。 この立場は
,政治的態度の構造その ものよりも政治的態度の形成に際 して 社会化要因の圧力が どの程度力を発揮 しているのかを分析 しようとしている点に特色がみ られ る。 これまでのところ
,研究の背景にある理論的立場の相違を反映 してか
,双方の立場 による 研究の成果を結びつけようとす る試みは数少ないのが現状である。 また第
3の立場 としては
,政治的態度を規定す る要因を
,個人の内面的な属性
,すなわちパーソナ リティ特性や認知機能 に求めて
,政治的態度の相違を これ らの要因 との関わ りか ら説明 しようとす る研究がある。 こ れ らの研究は
,態度構造論アプローチに基づいて政治的態度の構造を明 らかに し
,得られた政 治的態度の構造を もとに個人の政治的態度の相違を記述 し
,さらにその上で個々人の政治的態 度の相違を規定す る要因を調べようとす るものであ り ,い わば第 1と 第
2の立場を統合 しよう
とするアプローチであるともいえる。
本稿では
,これ らのアプローチの うちで
,第1の 態度構造論に基づいた研究の展望を行 うこ とを目的 とす る。態度構造論アプローチは
,政治的態度 とは何であ り
,どのような構造を持つ か
,また ,ど のように して測定可能であるかに関する知見を提供す ることを通 して
,政治的態 度研究の基礎的な資料を提供す るという役割があると考え られるか らである。その場合
,研究 の状況か らいって
,主たる力点 は社会的態度の構造論的アプローチについての展望に置かれる ことになるであろう。
2.態
度 構 造 論 の 課 題 と方 法
態度構造論 とい う用語を使用す る際には ,あ る特定の態度を構成する成分およびそれ ら成分
間の関係を問題 とす る 態度内構造
'(intra―attitude organization)論 と
,複数の態度間の相 互関係を問題 とする 態度間構造
"(inter―attitude organization)論 とを区別 してお くことが 必要であろう。 この分類は飽戸
(1965)による・態度成分論
"と態度構造論 "の 区別 に対応
す る。
態度内構造 "論 は
,例えば
Kretch&Crutchfield(1948)の態度の定義に示 されるように
,態度をア
0プリオ リに認知
,感情
,行動傾性 というような成分に分け ,そ れ らの間の一致・ 不 一致の程度 と態度成分の変化の可能性について検討 しようとする立場をさす。ある対象に対す る肯定的な態度は
,認知面でのプラスの評価や好意的感情
,さらにその対象に接近 しようとす る傾向を合わせ持ち
,全体 として これ らの成分間に肯定的な方向での均衡が保たれている状態 を表わ している。成分間の方向が一致せず
,さらにそれがある許容量を越えた場合には
,態度 の体系は不安定な ものとなり ,い ずれかの成分の方向を変化 させることで再び均衡を回復 しよ うとする圧力が働 くことになる。 この立場の研究は態度の成分を仮定す る点で もちろん態度構 造論の中に含め られるのであるが
,主たる力点はそのように して規定された態度成分間の均衡 やその変化の過程の様相を実験的に追求 しようとす るところにある。それに対 して 態度間構 造 論 は
,態度の構成要素を初めか ら仮定するのではな く
,様々な態度の要素を効率的に弁別 す る次元を経験的に析出 し ,そ れ らの次元か らなる空間に個々の態度要素を位置づけ ,そ うし た要素間の距離関係を明 らかに しようとす る。態度測定の手続 きを通 して得 られたデータを
,そこに表現 された変動を最 も効率よ く説明で きるような仮定 された数学的モデルを援用 して態 度次元空間内に位置づけることが課題 となる。ある対象に対す る態度 はい くつの ,そ れぞれ ど んな名称の次元を仮定す るときに最 もよ く説明されるのかを知 ることが研究の主たる目的であ り ,そ の意味で 態度間構造 "論 は
,態度内構造 '論 に比べてより直接的に態度の 構造 "
を問題 としているといえよう。
前述のように
,本稿では政治的態度を政治に関わる事象に対す る個々の態度の総体 と考える。
より具体的には
,政治的態度の測定尺度 に含まれる個々の項 目に対する反応か ら政治的態度を 説明 し得 る次元あるいは軸を見いだ し
,得られた次元空間内に特徴づけられた個々の項 目に対 す る反応の合計を用いて個人の政治的態度が記述 されると考える。
態度内構造 "論 に依拠 し
た政治的態度の構造的把握の考え方が存在 しないわけではないが 一一例 えば池内
(1960)は,内容の充実 ,内 容の確実性
,構造化
,安定性
,可塑性 という認知的側面 と
,関与
,反応性
,強度 とい う動機的側面か らなる
8次元のモデルを提出 している 一一
,これ らは政治的態度を明 ら かにす る一つの有効なアプローチではあるに して も
,実証の可能性に一定の困難性が認め られ るように思われる。また ,ア ・ プ リオ リな形で政治的態度の成分を設定することの妥当性に疑 間の余地がないわけではない。 もちろん
,政治的態度の構造を考える場合にこれ ら
2種類のア プローチのいずれかのみが有効であるというわけではない し ,い たず らにその相違を強調す る よりも
,相互に補完的な役割を持つ と考えた方がより実際的であろう。ただ
,政治的態度 とい うこれまで明確な定義がな く
,測定方法 も確定 しているわけではない概念を考慮す る場合には
,現象をあるがままに観察・ 記述 し ,そ の上で説明可能な次元なり構造を析出す るという 態度 間構造 "論 のめざす方向がより有効ではないかと思われる。そこで本稿においては
,態度構造 論 という用語を 態度間構造 "論 の意味で用いることとし
,この範疇に含まれる政治的態度に 関す る研究の展望を行な うことにす る。
政治的態度の態度構造論アプローチにとって取 り分け重要であるのは
,現象を記述 し
,説明
トイヽ
政治的態度に関す る研究の展望
するのに最 も有効な次元や軸の析出を行な う際の妥当な方法 とは何かという問題である。その 方法を考慮するに当たっては
,Spearmanを始めとす る知能構造の研究が因子分析法の展開 とと もに発展 してきたという事情を見逃す ことはで きない。すなわち
,知能構造の因子分析的研究 の進展に触発された形で
,社会的
,政治的
,宗教的 といった態度の構造の検討が進め られ るよ うにな ったと判断 してよい。態度構造論に基づ く種 々の態度測定は
,因子分析法 という強力な 武器を得て急速に推進 されるようになった という経緯を認めることがで きる。
因子分析の手順を用 いた態度構造の検討 は ,い ろいろな態度対象に対 して多数の被験者によ る賛否や好意的一非好意的 といった反応を求め ,そ れ らの間の相関係数を算出することか ら始 め られる。そ して得 られた変数間の相関行列を もとに して
,それ らの相関関係を最 もよ く説明 す る潜在的な因子を抽出 し
,各変数におけるデータの変動を簡潔に表現す る少数の次元を見い だす ことを企図する。 このような手続 きを通 して
,所与の態度構造を効率的に説明す る軸が求 め られることになる。その場合
,得られた因子構造 は
,調査の対象 となった被験者集団が保持
している態度の因子構造を表わすとともに,態度の測定のために使用された尺度項目自体の因 子構造を示すことになる。この双方の性質は,同一の尺度を用いたとしても対象とする被験者 集団が異なれば違った因子構造が示唆される可能性があることを意味するとともに,同
じ名称 の態度尺度のも│とで もそれを構成する個々の項目の内容が異なるならば,示唆された因子構造 が相違する場合があることを意味 している。 したがって,態度構造論アプローチによる社会的 態度や政治的態度の研究を検討する際には,まず第1に
どんな測度が使用され,誰を対象とし て研究が遂行されたのかを注意深 く見てお く必要があろう。 もし選択された尺度項目の構成が 恣意的に行なわれていたり,確たる理論的基礎づけを欠いているとすれば,抽
出される因子に はそうした欠陥が反映されることになる。いうまでもなく,因子分析の結果は最初に取 り入れ た変数の範囲を越えることはできないのである。次に因子の解釈と命名という問題 も態度構造論研究を検討する上で見逃せない点となる。抽 出された因子の解釈を行ないそれ らに適切な名称を与えるという作業は,因子分析法を利用 し た態度構造研究のいわば中核として位置づけることができる。心理学にとって有用な情報 とな り得るのは,因子分析の結果算出された因子負荷量や因子得点,共通性の推定値といった数学 的な指標ではなく,被験者×項目のデータセットの変動を説明する潜在的な比較的少数の因子 であり
,そ
してそれらに適切な命名を行なうことによってその存在が示唆される,測定対象と なった概念の内部構造なり要素である。そのとき抽出された因子の解釈と命名を行なう際の絶 対的な基準というものがあるわけではなく,計算の結果示された因子負荷量などの指標を手が かりとして分析者が行なう洞察や想像,あ
るいはセンスに任される部分が大きい。それゆえに, 因子の命名は慎重になされる必要があるが, ときにある研究者による 解釈"が
一人歩きしてしまう危険性をはらんでいることに注意 しなければならない。
因子分析法にはそれ以外にも抽出する因子数をいかなる基準で定めるのかや因子軸の回転の 問題などがあるが,いずれにしても態度構造論においては,因子分析法の使用はあくまで も所 与の態度構造を理解するための補助的な手段であり
,そ
れ固有の問題点や限界を十分理解 した 上で適切な形で援用することが求められるであろう。3.初期 の研 究
態度の概念がMcDougaHが
1908年
に提起 した本能理論に対する批判の高まりの中で,人
FEl行動の決定 に関与する内的な心理過程を表わす重要な概念 として とくにアメ リカにおいて注 目さ れ るようになったことはよ く知 られている。態度 という概念を用いることが
,極端な本能論や 環境論にみ られるような運命論的な人間行動の被決定性の拘束か ら免れる道を
1開き
,単独の個 人の内的傾性か ら広 く社会や文化 といった集合現象の理解にまで適用可能な弾力性を持つ こと が明 らかになるにつれ ,ア メ リカ社会心理学の勃興の時期 とも重なってほぼ 1920年 代には重要 な研究領域 として定着す る素地がで きあが っていた。それとともに知能構造の研究で有効な分 析法であ ることが証明された因子分析法の発展や
,態度測定のための様々な技法が開発された ことも
,態度の研究が社会心理学の中心的課題 として位置づけられることを促進 させたといえ る。 こうした動向の中で
,社会的態度の構造 に注 目し ,そ の基本的因子の抽出を最初に試みた のがThurstone(1934)で あった。彼が同時に等現間隔法 (method of equal appearing inter―
vals)と
呼ばれる態度測定技法の開発者であり
,知能の多因子説の主唱者で もあったことは決 して偶然ではない。
Thurstone(1934)は
,社会的問題に対す る人々の態度に共通因子 として急進主義が見いだせ るかどうかについて検討 した。そのために
,大学生 380名 を対象 として等現間 ‐
隔法によって作 成 された 戦争
"・ 愛国心
" 0教会
"・
神 " ・
禁酒"・
進化論
"・
共産主義
"など H種 の態度尺度に知能検査を加えて回答を求め
,合計 12個 の変数間の相関係数を算出 し
,R技法によって 急進主義―保守主義
"とい う因子 と 国家主義―非国家主義 "因 子の
2つの因
子を見いだ した。急進主義‐ 因子に負荷量が高か ったのは
,進化論 "や 共産主義
"などに対 す る賛成の態度であ り
,教会 "や 禁酒
"などに対す る肯定的評価はその反対の極に位置 し ていた。一方
,国家主義因子には 愛国主義
"と戦争
"を一つの極 とし 共産主義 "を 他方
の極 とす るような各態度間の関係が認め られた。
同 じ年 にCarison(1934)は
,シカゴ大学の
4年生 215名 を対象 として
,禁酒 " ・ 神
"・
平和主義"・ 共産主義 " ・ 産児制限 "に 知能
"を加えたサース トン尺度に対する回答 を求めて因子分析を行ならた。その結果
,第1因子には知能 と
,共産主義・ 平和主義・産児制 限に対す る肯定的態度が高い負荷量を示 し
,神に対す る肯定的態度 は負の負荷量を示 した こと か ら
,知能 "因 子 と命名された。また
,第2因子には共産主義 に対する肯定的態度が正の
,禁酒および神に対する肯定的態度が負のそれぞれ高い負荷量を示 した ことか ら
,一般的な 急 進主義―保守主義 "因 子 と解釈 された。第
3因子 に関 しては ,神 に対す る肯定的態度 と産児制 限に対す る肯定的態度がそれぞれ正 と負の負荷量を示 したことか ら
,宗教 "因 子 と命名され
た。
'同 じよ うに して Ferguson(1939)も
,戦争"・
神"・ 犯罪人の処遇"・ 死刑"・
進
化論"・
産児制限 " ・ 法律 " ・
共産主義
"に対する態度尺度を
A, B2種類用意 し ,そ
れぞれに対する評定を求めて因子分析を行 った。その結果
,意味ある因子 として
2つの因子を 抽 出 し
,第1因子を 急進主義一保守主義 "因 子
,第2因子を 国家主義 "因 子 と命名 した。
さらに
,Fig.1に示 したように
,もとの因子負荷量をプロッ トした後 に軸を 45度 回転す ると
,産児制限"・ 進化論
"と神 1を 正負の両極 とす るような直線上に回転後の第
1因子の軸 が きれいに位置 し ,同 様に回転後の第
2因子の軸上 に 戦争
"など 国家主義
"の特徴を表現 する態度尺度が並ぶ ことを確かめた。その後
Ferguso■ (1940)では 宗教主義 "因 子 と 人道
主義
"因子を見いだ し
,また
Ferguson(1942)の研究では ,そ れ らに 国家主義 "因 子を加え
て
,合計
3つの因子か ら社会的態度の構造をとらえようとした。
Ⅱ
¨
政治的態度に関する研究の展望 285
Fig. l The orthogonal attitude attes (FergusOn, i939)
これらはいずれも態度尺度を構成する方法として等現1間隔法が用いられていたり,被調査者 が大学生であることなど,同二の方法論的基礎のもとに実施された研究である。 したがって
,
見いだされた因子の名称にはそれほどの隔たりがあるわけではない。ただ,ThurstoneやCar―
lson,Fergusolの
間で―は,使用された態度尺度は必ず しも同一ではないことが,同1様な手続き による分析法を用いたにしてもそれぞれニュアンスの異なった1因子が抽1出される原因となって いたことは考えられる。初期│の社会的態度の構造論的研究で用いられた態度尺度には,ほぼ共通 して 戦争
"・
愛 国心"・
神"
・進化論" ・ 共産主義
"・
犯罪人の処遇"
・ 進化論"0
産児制限"などが含まれている。当時のアメリカ社会における社会的態度の測定のためには
,そ
れらの領 域からなる質問項目が必要不可欠であっただろうことは推測可能ではあるものの,今日からみ ると果 してそれらの態度尺度を用いることで十分であったかどうかについては若干の疑念を持 たざるを得ない。Fllえば,少なくとも経済的な問題や異民族に対する態度などは:人々の社会 的態度を構成する重要な要素であろうことは想像に難 くない。事実,後に述べるように,Ey一 senck(1947)な
どでは, 私有財産の廃止"や
有色人種は自人よりも劣等である"旨
の項目 が含まれているのである。その点からすれば,あ
くまでも今日の視点に立 ってという条件付き の上であるが,初期の研究では態度測定のために選択された項目の内1容が十分に意を尽 くして いるとはいいきれないところがある。それとともに 禁酒"に対する態度が取り上げられている点について も‐考を要するように
思われる。 この態度尺度が含め られた社会的背景には
,おそ らくは禁酒法の施行が重大な社会 問題 として当時のアメ リカ社会で多 くの論議を呼んでいた ことと無関係ではあるまい。 しか し なが ら
,禁酒の是非の問題 は優れて特殊アメ リカ的事情によって きたるものと考えた方が 自然 であ り
,したが って
,この種の問題が社会問題 として認識 されていない国の人々の社会的態度 の構造を調べようとす る場合には
,この項 目を加えることには慎重であ って しかるべ きであろ う。 この ことは
,態度尺度が開発 された国や時点における社会的
,文化的背景をつねに考慮す べ き必要があることを示唆 している。
以上のように
,Thurstoneを始め とす る初期の社会的態度の構造論的研究には
,研究の開拓 者であることに随伴す る特有の不足点をい くつか挙げることができるが ,そ れ らを差 し引いた として も彼 らの研究 は十分に態度構造論の発展に貢献するところが多か ったといえる。いうま で もな くそれは
,社会的態度が測定可能であることを示 し
,しか も一連の統計的な手続 きに基 づいて
,少数の主要次元によって社会的態度の構造を概括的に記述す ることを可能 に したとこ ろにある。
4 EySenckの
研 究
Eysenck(1947)は
,知能やパーソナ リテ ィと同様
,社会的態度に も基本的な因子が存在す る のではないかと考えて
,社会心理学者や社会学者
,統計的分析家などによる先行研究を検討 し て社会的態度の測定に有効な項 目を収集 し
,綿密にそれ らを検討 した上で 40個 の質問項 目を作 成 した。それ らは
,例えば 有色人種は自人よりも劣等である"・ 今の法律は金持ちに有利 である
' 0日曜日の礼拝は流行遅れである
'0現代の愛国主義は平和に敵対す る力となる
" 0 最終的には私有財産が禁止 されて完全な社会主義が到来す る
"といった社会的
,政治的
,宗教的
,経済的問題に関す る意見項 目の形でまとめ られていた。そ して彼 は
,年齢や性別
,学歴などが異質にな らないように配慮 しつつ
,政党支持の相違による社会的態度の構造を明 らか にす るために
,保守党・ 自由党・ 労働党を支持す る中産階級出身者各 250名 を対象 として
,こ れ ら 40項 目の意見に対す る賛否をたずねるための調査を行 った。得 られた項 目の回答間の相関 行列を因子分析 した結果
2つの因子が見いだされ
,第1因子は
,私有財産の廃止"・ 日曜 日の礼拝は時代遅れ"・ 愛国心 は平和の敵
"などの項 目に正の負荷量を持ち
,一方
,国有 化は非能率"・ 宗教教育は望ま しい"・ 産児制限は非合法
"などの項 目には負の負荷量を 示 したことか ら
,急進主義一保守主義 (RadicalismttConservatism)"因 子
(R因子
)と命名 された。第
2因子には
,宗教教育を必修 とす ること ' ・ 死刑の廃止
"・
犯罪者の救済
"などの項 目に正の負荷量を示 し
,戦争は人間の生得的な性質"・ 有色人種 は劣等"・ 日 本人 は生来的に残酷 "な どの項 目には負の負荷量を持 った ことか ら ,Jamesの 用法を借 りて 柔和な心丁堅固な心
(Tender―皿 inded―
Tough―minded)"因子
(T因子
)と名付 けられた。柔 和な心 とは
,環境を解釈す る際に倫理
,道徳
,超自我 に由来す る価値を優先 させ る傾向であ り
,堅固な心 とは
,環境を経験的
,現実的に理解 しようとす る傾向をさしている。そ して
,R,T両因子に高い負荷量を持つ項 目をそれぞれ 14項 目ずつ選び出 して R尺 度および T尺 度を構成 し
,政党支持 グループごとにその得点を比較 したところ
,R得点に関 しては
,労働党支持者― 自由
党支持者一保守党支持者の順に得点が上昇す ることを見いだ し
,労働党支持者の方がより急進
的な社会的態度を持 っていることを明 らかに した。
T得点に関 しては
,各政党支持 グループ間
に有意な差 はみ られなか った ものの
,得点 は労働党支持者一 自由党支持者一保守党支持者の
I贋政治 的態度 に関す る研究 の展望
TENDER二
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Fig. 2.I Comparison‐ Of lmiddle‐clalss and working‐
ciass‐ gFOupsFith regaFd tO IRadicalism andl TendeFi―
mindedness(Eysenck,1950)で高く,保守党支持者の方がより堅固な心を持つ傾向があることが示された。
また
,Eyse■
ok(1950)は,先の十データに共産党支持者および労働者階級に属する各政党支持者の,データを加えて,同じように政党支持グル‐プごとのR,T各尺度得点を求めた。そして
R;T各次元を座標軸とする2.次元空間に各政党支持グループをプロットしたところ ― Ey一 seick(1947)において
R得
点とT得
点1間 │の1相1関は‑0.12であり,有意ではないことが確かめられてい.る 下―,Fig。 2に示したように,各政党支持グループ
│は
社会的態度空1間1内│でそれぞれ異なった場所に位置づけられることが明らかにされ―た。保守党支持者と共産党支持者は
R次
元に おいて対極的な位置にあり,自
由党支持者と労働党支持者tま
それらの中間的な位置にある。ま′た,T次元‐にお│いては
,自
由党支持者と労働党支持者とが類似した位置にあり,と
くに共産党 支持者とは対照的なところに位置している。また,同じ政党を支持する者であっても所属階級 の相1違によってR,T両尺度得点は異なっていて,同‐政党の支持者のうち中産階級に属する 者の方がすべて急進主義得点が高い傾向がある。T次
元に関しては所属階級の相違がいっそう 鮮明であり,自
由党支持者以外の政党支持グル‐プは堅国な心の方向に偏っている。以上の結 果から,Dysen.ckは各政党支持グルニプを識眉1す
るには,従来がら用いられてきたような=急
進一保守
"の
次元のみでは不十分であり,そ
うした純イデオロギー的な次元だけではな く,Eysenck(1947)の
研究で第2因子として見いだされた 柔和な心丁堅固な心"因
子のようなパ ーソナ リティに関連 した因子を想定することが有効であると結論づけた。Eysenck(1954)に
よ れば,T因子はあるパーソナ リティ変数のセットが社会的態度の領域に投影されたものであり,
したがってその次元を単独で用いるのではな く 急進一保守"の
次元と組み合わされたときに 意味を持ち,そ
のように考えることによって,社会主義者と共産主義者とを分けるのは急進主 義次元上の位置のみならず,むしろ後者の方が硬い心の持ち主であることの相違に帰着すると される。なお,Eysenck(1950)ではファシス トと呼ばれるグループに属する人がきわめて少数 であったので分析には加えられていないが,T次元を考慮 して社会的態度の構造を考えた場合 には,彼らは保守主義者とイデオロギーレベルではそれほど違いがなく, 柔和な心T堅固な 心'次
元でより堅固な心の方に偏った位置をとるものと想定 している。もっともこうした結論 に対 しては批判もあり,Rokeach&Hanley(1956)に よれば,R,T両
次元を45° 回転させる ことによって,Ferguson(1940,1941)や Kirkpatrick(1940)が見いだした 宗教主義"
人道主義
"次
元に対応させることが可能であり,またその方が各政党支持者の社会的態度の 相違をうまく特徴づけられると述べている。Eysenck(1956)は それに対 して,R次元が実際の 政党支持の相違を最もよく反映する次元であるこ`とを考慮するならば,RとTの 2因子を用い る方が心理学的に意味があると回答 している6
このように,Eysenckの社会的態度のとらえ方の特徴は, 急進主義―
fR守
主義"の
ようなThurstone(1934)ら
によってそれまでに見いだされてきたイデオロギー関連の レベルに加えて,
パーソナリティ特性のセットを組み入れた方が社会的態度をよりよく記述することが可能であ ることを示 したところにある。各政党支持グループはそれぞれ異なった社会的態度を持 ってい るという前提が,実際のR,T両尺度の得点の相違によって確認されたわけである。R,Tという社会的態度の測度が現実の支持政党を異にするグループ間の社会的態度の相違を識別する ことを実証 したことは, この測度が高い妥当性を有 していることを示す間接的な証拠となった。
Eysenckの 社会的態度の考え方でもう一つ注目されるのは,社会的態度の階層的構造という 考え方である。
Eysenck(1954)に
よれば,態度は意見やイデオロギーとともにある種の階層的 なシステムの中に配列されていて,Fig.3に示 したように抽象性の程度が次第に高まっていく4つの異なるレベルからなる構造の一部分を担 うものと仮定されている。
最下層は 特定意見の レベル"と命名され,他の意見群とは何 も関係せず, もし同一の質問 が異なった状況のもとで発せ られるならば回答は異なるであろうという意味で,再現性のない 一過性の意見の レベルである。このレベルだけでは個人のパーソナ リティやイデオロギーの内 容は解明されない。次の 習慣意見の レベル
"は
様々な状況でほぼ一貫 した様式で表明される 意見のレベルであり,任意の変化を受けないで個人の心理学的な性質を構成する意見であり, 安定 しているという意味で信頼性を持つ。また,第
3の レベルがいわゆる 態度 レベル"で
あり,個人があ
̲る
問題に対 してかなり安定性のある意見を持ち,同じ問題に対 して併存するいく つかの意見の累積からその問題に対する個人の態度が明らかになる。個々の意見は独立 してい るのではなく互いに関連 しあい,習
慣意見の全体的なセットとなることによって態度が構成さ れることになる。さらに,個々の論点に対する態度が互いに関連 しあって最 も上位の レベルで ある イデオロギーレベル"を構成する。例えば,保守主義という イデオロギー"は
, 自民 族中心主義的傾向や子どもに対する厳格なしつけを支持する態度,宗教を好意的にとらえる態政治的
1態度に関する研究の展望 289
Ideology level
Attitude level
labit腱
1
opinlon level Specific
oplnion o
level
Fig,3 Diagram i I lustrating relation between opinion, attitude, and ideology (Eysenck, 1954)
度,愛国主義といった互いに関連深 く結びついていると想定される態度群の最上位にある概念 として考えられることになる。
Eysenckの 考えによれば,態度尺度で測定可能であるのは尺度項目に表現された個別的で具 体的内容を持ったそれぞれの意見に対する反応であり
,そ
れらの間の相関をもとにしていくつ かの互いに関連性を持つ態度が間接的に推定され, さらにそれぞれの態度が結合 してより二般 性の高いイデオロギーが構成されることが想定されている。Fig。 3に 図式化されたような個別 的行動から一般的行動に至るまでのレベルで態度構造をとらえようとする考え方は, , 個別的 反応(誤
差因子)"― 習慣的反応(特
殊因子)"― 特性(群
因子)"― 類型(一
般因子)"という同じような 4つ のレベルを想定する彼のパーソナ リティ構造の考え方と明らかに軌を 一にしている。 Eysenckの 社会的態度に関する議論め出発点が,知能やパーソナ リティの構造 論において明らかにされたパラダイムを社会的態度の構造についても当てはめようとすること から始まっている(Eysenck&Wilson,1978)こ とを考えるならば,双方の構造を考えるための 基本的枠組が類似 しているのはある意味で当然のことであるかも知れない。
このように
Eysenckは
,社会的態度をとらえる際にパーソナ リティ特性を組み入れることに よって,い
わば間口を広げた形の態度構造論を提出している。この立場は,態度を階層構造的 にとらえようとする考え方とともに,彼の理論の最 もユニークなところであるといえよう。確 かにそれまでのThurstone(1934)に
代表されるようなよリイデオロギー的な社会的態度構造の とらえ方に比べて,類似 した政治的信念の持ち主間のよく知 られたパーソナ リティの相違 (例 えば保守主義者とファシス ト)を
説明する上では,彼が見いだしたR,T両因子はより心理学 的に有意味であるように思われる。 しかしながら,パーソナ リティ特性を社会的態度の不可分の構成要素 とす る点には
,以下のような意味で若千の問題点を感 じざるを得ない。彼が
R,T両次元を用いることが有効であるとした根拠の一つは
,イギ リスを始めとす る西欧先進国にお ける政党支持の各 グループ間の相違をうま く説明で きる点 にあ った (Eysenck,1953)。 それが 事実であ ったに して も
,かりに
Eysenckが急進―保守
"のようなイデオロギー次元のみな ら ず
,柔和な心
T堅固な心
"とい うパーソナ リティ特性にも政党支持を説明す る要因 としての 役割を求めているとす るな らば ,そ こに過度の単純化 という危険性が侵入 して くることになる と考え られる。政党支持や投票行動の決定因には
,政党 との一体感
,政治問題に対する関心 ,
候補者に感 じる魅力
,仲間集団の規範への同調
,投票 についての市民的義務感などが複雑に絡 み合 っている。 したが って
,パーソナ リティ特性が こうした要因のあり方その ものに影響を与 えているとは考え られたとして も
,これ らを飛び越えた形でより直接に政党支持や投票行動 と 結合 していると見な してよい ものかどうか。 ファシス トであるとか共産主義者であ ることがパ ーソナ リティの相違に還元されるという考えを押 し進めてい くな らば ,そ こに待ちかまえてい るのは′ とヽ 理主義的決定論 という悪 しき陥穿で しかないであろう。
社会的態度の基本次元その ものが
,歴史的・ 文化的文脈の中では じめて把え られ る社会的存在 としての媒介変数であ
"り,カルチャー・ フ リーとして存在するとみな しうるものではない
"(田中・松山
,1965,p260)限 りは
,社会的態度の内容それ自体にパーソナ リティの要素を含めて考えることには十分慎重 であってよいと思われる。
5.
自由主義 (急 進 主義
)一保守露 の測剛
,これまでみて きたように
,社会的態度の構造論アプローチにおいてはそれぞれ名称が微妙 に 異なるい くつかの主要次元が見いだされているが ,多 くの研究では 急進主義
=保守主義
"もしくは 自由主義―保守主義
"と命名される次元が共通 して得 られている。そ こで
,こうした 基本次元を測定す る尺度の構成をめざした研究があいついで行なわれ るようになった。例えば
,Comrey&Newllleyer(1965)は
,成人男女 212名 を対象 として 120個 か らなる政治的
,社会的意見 に対する賛否を求め
,福祉国家的態度 " 。
厳罰的態度 " ・
国家主義"・
宗教的態度
"・ 人種的寛容の態度
"とい う
5つの因子を見いだ している。また
,Wright&Hicks(1966)は
,1964年の大統領選挙の争点 となった政策を参照 して 23項 目か らなる 自由主義―保守主義 "
尺度を作成 し
,民主党・共和党それぞれの支持者間で項 目に対す る賛否の平均値が異なること を示 している。 Ador■ o et sls。 (1950)の 権威主義的パーソナ リティ "に 関する研究の中で
も 政治経済的保守主義
(PEC)尺度
"と命名され る尺度が構成 されていた。
Hicks&Wright(1970)は ,そ れ までに作成 された
5つの尺度の妥当性を検討 し
,自由主義一保守主義 "が
経済的"・ 政治的"・ 宗教的"・ 審美的
"とい う
4つの次元か ら成 り立 っていると結論 した。
ところで ,そ れまでの 自由主義一保守主義
"尺度 は
,ほとんどが文章形式の質問項 目によ って構成 されて きた。例えば先の
Adorno et als.(1950)の政治経済的保守主義尺度で は
,芸術家 と学者は
,ビジネスマ ンと経営者 と同 じくらいに社会にとって価値がある
'というよ
うな項 目が使用 されている。 このような文章形式の項 目の要素を考えてみると
,測定 しようと
す る態度の直接的な対象 となる主題語あるいは中核的内容を表現 した語句 と ,あ る一定の方向
性を持 った述語文
,さらに場合によっては
,程度
,頻度
,可能性などの量を表わす用語か ら構
成 されているのが一般的である。上述の項 目の例でいえば
,芸術家 と学者
"という主題語 に
政治的態度に関す る研究の展望
対 して
,社会 にとって価値がある
"という述語文 ,そ してその価値が ビジネスマ ンと経営者 と 同 じくらいの
"という程度であることが組み合わされて表現 されている。応答者 はこうし た文章を読んだ後 に自らの賛否の程度を評定するのであるが ,そ の過程で これ ら文章項 目の要 素のいずれによって も影響を受けることになる。人によって文章の読み方や強調点の置 きどこ ろが異な り ,そ れによって文章項 目の意味内容が応答者にとって相違することも十分に起 こり 得 る。例えば
,先の項 目に 反対 "で ある者の申には
,比較 した上で 価値がない
"と考える 者による 反対
"という反応 と
,記述内容よりも ず っと価値がある
1と思 うことによる 反 対
"とが混在 しているか も知れないのである。一度 反対
"という反応カテゴ リーを選択 した な らば ,そ の回答の選択を決意 させた心理的背景の相違は無視 されて
,評定値 は全 く同等 とし て扱われて しまう。先の項 目は自由主義的な方向を表現す る項 目として
PEC尺度を構成 して いるが
,こうした文章形式の測定尺度 には
,非常に強い自由主義的な態度を持つ者が保守主義 方向の態度を持つ者 と同一の反応カテゴ リ‐を選択するという奇妙な事態が生 じて しまう可能 性がつきまとっている。
このような問題 は文章表現を工夫す ることである程度除去で きるか も知れない。 しか しなが ら
,Peabody(1966)が指摘 したよ うに
,文章形式の質問項 目に評価的方向が明示 されている以 上
,応答者の評定が同意反応バ イアス (agreement respOnse bias)の 影響を強 く受 けた結果
,文章項 目が唱道す る方向に引きず られて しまう危険性を考慮 してお く必要性があろう。同意反 応バ イアスとは
,文章 に表現 された内容や意味 とは関係な く文章の説得方向に同意す る傾向を さし
,全項 目が一つの方向にそろっているものや
,長文か ら成 り立 っているよ うな態度尺度 に おいて とくに顕著に出現 しやすい。 Ador■ o et als.(1950)が 作成 した 1フ ァシズム尺度
(F尺度
)"に対す る批判の最たるものは
, F尺度が同意反応バイアスを免れることがで きないと いう点にあった ことはつ とに知 られている (Peabody,1966)。 反応セ ッ トの要因は態度測定 と は本来無関係であ り ,そ れが
,評定結果に混入す る原因が文章 という項 目の表現形式にあると考 え られるか らには
,肯定方向の文章 と否定方向の文章 とをカウンタ■バランス化 したり
,評定 方式を段階評定ではな く強
tll選択方式にす るなどの努力がなされたとして も
,応答者が保持す る真の態度 と文章形式の態度尺度への実際の評定 との間に不一致が生ず る可能性を捨て去 るこ とはで きないであろう。
文章形式の項 目にまつわる以上のような問題を解決す るべ く提案されたのが
,Wilson&Pa―tterso■(1968)に
よる 保守主義尺度
(C尺度
)"であ った。彼 らは
,態度測定の夕‐ゲ ッ ト は項 目に表現 された主題語に限るべ きであるとして
,文章形式の項 目に含まれ る評価的方向を 表わす部分を除外 し
,代わ りに論争点 とな り得 ることが らを表現する簡単なラベルか らなるい わゆるキャッチフレーズ形式の態度尺度を考案 した。
Wilson&Pattersonの C尺度項 目は ,例
えば
,死刑 " ・ 進化論"・ 学校の制服 " ・ 白人の優越性
"といった単語あるいは熟語 が 50個 配列 された もので ,そ れ らを好んだ り信 じている程度を はい
", ?",いいえ "
の
3段階で評定 させ る形式の尺度である。彼 らは
C尺度を構成するに当たって ,ア
,プリオ リ に以下のような理想的な保守主義者の性質を表わす態度 クラスターを想定 した。
(a)宗
教的教条主義
(b)右
翼的な政治的志向
(c)厳
密なルールと罰の主張
(d)自