破壊を伴う衝撃吸収軽量セル構造材の開発
著者 山崎 光悦
雑誌名 平成16(2004)年度 科学研究費補助金 基盤研究(B) 研究成果報告書
巻 2002‑2004
ページ 73p.
発行年 2005‑03‑01
URL http://doi.org/10.24517/00034768
第2章
第 2 章 ハ ニ カ ム 構 造 の 形 状 と 特 徴
ハニカム構造とは,主に六角柱もしくは六角形の形状をコア材として,それらが互いに隙間な く組合さっている集合体であり,上下に剛性の高い板を貼り合わせたサンドウィッチパネルとす ることにより高剛性。高強度,そして軽量性を得られる理想的な構造体である.この構造体は,
衝撃負荷を受けた場合に衝撃エネルギを吸収する緩衝材としても着目され,自動車などの機械構 造物の外側部材断面構造などに用いることにより,内部に及ぼす衝突の影響を軽減させることが できる.
他にもいろいろな工業製品を調べると,六角形でなくても多角形(例:八角形)などで,貫通 孔を有し,その空隙率(=孔隙率,多孔度.)がある程度以上確保できるものをハニカムと呼んで いる.ここで,空隙率とは,多孔質の物質(岩石・土・スポンジなど)の全容積に対する,その 中に含まれる隙間容積の割合のことをいう.
ハニカムの歴史は古く,約2000年前に中国でペーパーハニカムがつくられたと言われている.
構造材料として採用されたのは約60年前であり,アメリカの軍用機に使用したという歴史をもつ.
本研究ではハニカムの動的圧漬特性について取り扱ったが,静的,準静的な特性についてはこ れまでにも様々な研究が行われている.ハニカム構造についての形状や特徴,圧漬理論を以下に 整理して述べる。
2.1ハニカムの形状
ハニカムの形状と製作工程について簡単に示すと,ハニカムは主に六角形セルが規則的に配列 された蜂の巣形状で,図2.1に示すようなサンドウィッチのようにパネルにより挟まれた構造で 利用されることが多い.サンドウィッチパネルは上下のパネルが曲げ荷重を受け持ち,ハニカム
コアは剛性を引き出すための中間材の役割を果たす。
六角形ハニカムの主な製作方法としては,図2.2に示すように箔,シート材料に接着剤を交互 に帯状塗布し,重積,熱圧してブロックを作り,これらを必要な高さに切断した後,重積した方 向に展開することで六角形セルが形成される.また図2.3に示すように,予め用意した波形ロー ラなどで波形のシートを作製し,重積,接着して六角形セルを形成する製作方法もある.
図2.4に本研究で用いたアルミハニカムの各種基本パラメータを示す.同図に示すように展開 方向Wは接着剤による接合で材質は不連続となっている.一方,L方向はシート材料からの曲げ であり,材質が連続であるためW方向とL方向とでは異なる特性をもつ.
2.2ハニカムの特性
ハニカムの特性は材料定数による影響が大きい。しかしセルサイズ,箔厚,密度なども機械的 強度に大きく影響し,材料が同一の場合は密度によりその特性が決まる.
表2.1にアルミハニカムの材質の違いによる特徴を示す.A5052はアルミハニカムで最も一般 的である.最近では,特殊な耐蝕処理をしたものが多く使われ出している.A5056,A2024はA5052
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露
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図 2 . 1 ハ ニ カ ム サ ン ド ウ イ ッ チ パ ネ ル
よりも若干機械的強度が優れているが,高価であるために一般向きではなく,主に航空機に用い られる.他にもアラミド(Aramid)ハニカムや,FRPハニカム,クラフト紙による紙ハニカム,
ケブラー炭素繊維等の複合材料によるハニカム,ステンレス,ニッケルなどによるプレージング ハニカム,セラミックスハニカム,インコネルなどの耐熱合金ハニカムがあるが,非常に高価な ものやほとんど試作でしか作られていない特殊用途向けのものもある。
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ロール箔よりセル壁となるシートを切 断する.
シート表面に接着剤を線状に塗布.接 着点が交互になるように2種類を用 意.
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第2章
展 開
ndedPanel
図2.2ハニカム製作工程(1)
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る シ ー ト を 波 形 ロ ー ラ に よって加工して切断する.
…
波形シートを重積,接着し,波 形ブロックを作製
ロ
切 断
図2.3ハニカム製作工程
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C
、/ CorrugatedSheetCorrugatedBlocl
L方向
Z、:箔厚
2T:箔着面箔厚 S:セルサイズ H:セル高さ
図24ハニカムパラメータの代表
表2.1各種アルミハニカムの特徴(E:優良G:良好F:比較的良好)
A3003 A5052 A5056 A2024
最高使用温度(℃) 177 177 177 216
耐炎性 E E E E
耐衝撃性 G G G G
比強度 F G E E
耐湿性 G G G F
耐疲労性 G G G G
コスト 安い 標 準 や や 高 い 高い
第2章
第 3 章 延 性 材 料 の 貫 通 破 壊 に 関 す る 検 討
3 . 1 貫 通 実 験 装 置 と 実 験 方 法
実 験 モ デ ル を 図 3 . 1 に 示 す . 引 張 圧 縮 機 を 用 い て 円 形 固 定 台 に ア ル ミ ニ ウ ム 板 を 固 定 し , 先 端 が 円 錐 形 状 の 貫 通 体 を 介 し 静 的 な 荷 重 を か け て 貫 通 さ せ , こ の と き の 変 位 一 荷 重 曲 線 を 求 め る . 衝 撃 吸 収 構 造 材 の 開 発 の た め に は 貫 通 体 に 大 き な 初 速 を 与 え て 吸 収 エ ネ ル ギ を 求 め る 必 要 が あ る が , 本 研 究 で は そ の 基 礎 的 な デ ー タ 計 測 の 目 的 で 準 静 的 に 実 験 を 行 う た め , 貫 通 体 の 速 度 は 1 0 m m / m i n と し た . 以 下 に 実 験 装 置 の 詳 細 を 述 べ る .
板
、
図3.1実験モデル
( 1 ) 引 張 圧 縮 試 験 機
実 験 に 用 い た 引 張 圧 縮 試 験 機 ( ( 株 ) 島 津 製 作 所 A G S ・ 1 0 0 D ) を 図 3 . 2 に 示 す . 負 荷 の 方 法 は , A C サ ー ボ モ ー タ に よ る 高 精 度 低 速 ひ ず み 方 法 で , 荷 重 の 検 出 に は ロ ー ド セ ル を 用 い る . 引 張 と 圧 縮 の 切 り 替 え が 可 能 で , 付 属 の ア ナ ロ グ 記 録 計 ( X T ・ P 形 ) で 荷 重 一 変 位 曲 線 ま た は 荷 重 一 時 間 曲 線 を 求 め る こ と で き る . 本 研 究 で は 荷 重 一 変 位 曲 線 を 求 め る た め に , 圧 縮 荷 重 を 加 え て 貫 通 体 を 貫 通 さ せ た .
(2)ロードセル
貫 通 に 必 要 な 荷 重 に 応 じ て 2 種 類 の ロ ー ド セ ル ( ( 株 ) 共 和 電 業 LU‑20KA,(株)島津製作所SBL・1kN)を用いた.
第3章
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錘駒
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AGS‑100D)
(3) 貫 通 体
図 3 . 3 に 示 す 貫 通 体 に は , ア ル ミ ニ ウ ム よ り 十 分 に 剛 性 の あ る 鋼 を 用 い , 先 端 部 に は 貫 通 に よ る 磨 耗 な ど が 起 こ ら な い よ う に 焼 入 れ を 施 し て あ る . 先 端 角 度 8 = 3 0 . , 6 0 ・ , 9 0 。 の 3 種 類 を 用 い た . 鋼 の 基 本 特 性 を 表 3 . 1 に 示 す
e
一一
貫 通 体 図3.3
表3.l鋼の主な機械的性質
(4)固定台
固 定 台 を 図 3 . 4 に 示 す 。 固 定 台 は ア ル ミ ニ ウ ム 板 を 円 形 に 完 全 固 定 で き る よ う に , ア ル ミ ニ ウ ム 板 の 上 下 を ゴ ム 板 で 挟 み , 8 本 の ボ ル ト で 固 定 す
る。円形にアルミニウム板を固定する固定台の直径'7mm,'15mm, ' 2 0 m m の 3 種 類 を 用 意 し た 。 固 定 台 の 直 径 d は , 目 標 と す る ア ル ミ ハ ニ カ ム セ ル の セ ル サ イ ズ に 近 い も の と し , 材 料 に は ジ ュ ラ ル ミ ン を 用 い た .
611101
の6.1キリ
8‐
固 定 台 図3.4
試 験 片 デ ー タ
3.2
本 実 験 に 用 い た 試 験 片 は 縦 6 0 m m , 横 6 0 m m の 正 方 形 平 板 で あ り , z廷0.05mm,0.1mm,0.2mm,0.3mmの4種類を準備した.試験片〈
を 図 3 . 5 に 示 す . ま た , ア ル ミ ニ ウ ム 3 0 0 3 材 の 基 本 特 性 を 表 3 . 2 に う
板 厚 試 験 片 の 一 例 3 材 の 基 本 特 性 を 表 3 . 2 に 示 す 縦 弾 性 係 数 200GPa
せん断弾性係数 35GPa
ポアソン比 0.3
密度 7380kg/m3 比熱 540J/k9.℃
第 3 章
図3.5アルミニウム試験片(Z=02mm)
表 3 . 2 ア ル ミ ニ ウ ム 3 0 0 3 の 主 な 機 械 的 特 性 値 ( 9 9 % 純 ア ル ミ )
縦 弾 性 係 数 69GPa せ ん 断 弾 性 係 数 25GPa
ポ ア ソ ン 比 0.33
密 度 2705kg/m3 比 熱 900J/k9・℃
体 積 膨 張 係 数 68.1×10−6 /℃
線 膨 張 係 数 24×10‑6/℃
降 伏 応 力 100MPa
ひ ず み 硬 化 率 280MPa
3 . 3 貫 通 実 験 結 果 と 考 察
貫 通 実 験 で 求 め ら れ た 荷 重 一 変 位 曲 線 を 図 3 . 6 に 示 す 。 最 初 の き 裂 が 発 生 す る ま で ( ① ) を き 裂 発 生 部 分 と し , 最 初 の き 裂 が 発 生 し て か ら 貫 通 体 先 端 部 分 が 完 全 に 貫 通 す る ま で ( ② ) を き 裂 進 展 部 分 と し て 区 別 し た . き 裂 発 生 荷 重 は , 実 験 に よ り き 裂 が 発 生 す る と 推 定 さ れ る 変 位 に 至 っ た 時 の 荷 重 を 計 測 す る . ま た , き 裂 発 生 エ ネ ル ギ , 貫 通 エ ネ ル ギ は 荷 重 一 変 位 曲 線 の
面 積 を 算 出 す る 。
き裂発生荷重と固定台直径による比較を図3.7(a),固定台直径'=15の 先端角度による比較を図3.7(b)に示す。固定台直径による差は′7,8=90。
を 除 け ば ほ と ん ど 見 ら れ な い . 板 厚 に よ る 比 較 を す る と , 板 厚 が 厚 い ほ ど 荷 重 も 大 き く な る こ と が わ か る 。 ま た , 先 端 角 度 が 大 き い ほ ど き 裂 発 生 荷 重 も 大 き く な っ て い る .
8 = 6 0 ・ の と き の き 裂 発 生 エ ネ ル ギ , き 裂 進 展 エ ネ ル ギ と 固 定 台 直 径
との関係を図3.8(a),図3.9(a)に示し,'=15mmにおける先端角度との
関係を図3.8(b),図3.9(b)にそれぞれ示す。き裂発生荷重と同様に各エネ ル ギ は 固 定 台 直 径 に よ る 差 は な く , 板 厚 が 厚 い ほ ど 大 き く な る こ と が わ か る . し か し , 先 端 角 度 に よ る 比 較 を し て み る と , き 裂 発 生 エ ネ ル ギ は 先 端 角 度 が 大 き い ほ ど 大 き く な っ て い る が , き 裂 進 展 エ ネ ル ギ は 先 端 角 度 が 大 き い ほ ど 小 さ く な っ て い る . き 裂 進 展 エ ネ ル ギ と 先 端 角 度 の 関 係 が , き 裂 発 生 エ ネ ル ギ の 関 係 と 逆 転 し て い る 理 由 は , 貫 通 体 先 端 角 度 が 鋭 角 に な る に つ れ て 先 端 円 錐 部 分 が 長 く な り 摩 擦 力 に よ る エ ネ ル ギ 消 費 が 大 き く な る た め で あ る と 考 え ら れ る
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貫通実験から得られた代表的な荷重・変位曲線 図3.6
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第 3 章
140 120 100 80 60 40 20
0
含︶柵揮矧鍜感抽
00.10.20.30。400.10.20。30d400.10.2
板厚(立皿) 板厚(mm) 板厚(mm)
0.3 0.4
(a)e=909 0 。 ( b ) 8 = 6 0 。 ( c ) e。 図3.7(a)き裂発生荷重と固定台直径の関係
=30。
140
1
1201 00000864
全︶細揮胡纈醗伽
20
0
0 0 . 1 0 . 2 0 . 3 0 . 4
板厚(mm)
図3.7(b)き裂発生荷重と先端角度の関係
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域E ■ジノ? I
120
︵z︶許ミ舟H趨獺融抽 100 80
60
40
20
0 匹 吊一
0 0.1 0.2 0.3 0.4
板厚(mm)
き裂発生エネルギと固定台直径の関係(8=60。)
図3.8(a)
180
︵皇︶斗会将H胡期融仙 160 140 120 100 80 60 402 00
n 兆 一
0 0.1 0.2 0.3 0。4
板 厚 (mm)
き裂発生エネルギと先端角度の関係(.15mm) 図3。8(b)
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内
八
毒霊訓
ニ ア
/ / 、 型 / /
向 に 無 数 に 発 生 す る . 板 厚 が 厚 く , 先 端 角 度 が 大 き い 場 合 に は , そ の 中 の 3 , 4 個 の き 裂 が 成 長 し , 貫 通 後 の 形 状 は 三 角 形 や 四 角 形 と な る . 逆 に 板 厚 が 薄 く , 先 端 角 度 が 小 さ い 場 合 に は , 大 き く 成 長 す る き 裂 は な く , 貫 通 後 は 多 角 形 や 円 形 に 見 え る よ う な 形 状 と な る .
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蟻氏峰
図3.10 き裂発生時の様子('=15mm,8=90。, Z=0.2mm)
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図3.11 貫 通 後 の 様 子 1 ('15mm,9=90。, Z=0.2mm)
第3章
ゲ
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図3.12貫通後の様子2('15mm,8=60。,Z=0.2mm)
一
図3.13貫通後の様子3('7mm,8=30。,ZZO.05mm)
蕊
第4章
が形成された.これに対し,実験では4個のき裂が進展して四角形のき裂形状となった.全体と
してのエネルギ吸収量は0.0405Jで実験値の約86.2%の値となり,TypeBO.3及びTypeBO.2の場
合よりも近い値を示している.
なお,図4.18に貫通体先端角度60.においてアルミニウム板の厚さを変えた場合のエネルギ吸 収量の比較を示す.
t=0s
t=10×10・4R
t=2.0×10.4S
図4.16(a)TypeBO.1貫通挙動(右図は拡大図を示す)