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現代住宅建築における環境設計手法に関する研究

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Academic year: 2021

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現代住宅建築における環境設計手法に関する研究

-フィジックス・デザインの可能性について-

0. 序章

0-1. 研究背景

近年、住宅に求められる性能は大きく変化した。変容する 家族形態や多様化するライフスタイルへの対応、省エネ住宅 や CO₂ の削減、サステナブルデザインなど、住宅を巡る要 求のハードルは高く、そして複雑になる一方である。なかで も環境への配慮は、単体の住宅として求められるだけでなく、

建築基準法でいうところの集団規定としても位置付けられ、

「環境に配慮した住宅」が求められる状況にある。

しかし、現時点での環境に配慮した住宅というと、オプシ ョン的な高性能の設備機器が満載されたメカニカルな住宅を 指すことが多い。あるいは、構造や意匠だけが先行し、そこ に設備機器をプロットしていくという設計プロセスが一般的 になってしまっている。しかし、いかに最新で高効率の設備 機器を満載したとしても、その背後にある熱の伝わり方や風 の流れなどに対する設計者と住まい手の理解がない限り、本 質的な環境配慮にはつながらないのではないだろうか。地球 環境への負荷を極力小さくしながら、快適な環境を実現する ためには、設備機器や単体の要素技術を単に付加するのでは なく、全体のデザインやライフスタイルの中に位置づけてい くことで住まい手の応用力を高めていく必要がある。

0-2. 研究目的

空間よりも環境が重視される時代となった現代において、

建築のデザインはより高機能化していくと考えられる。

そこで本研究では、建築における光・熱・空気・音といっ た物理条件(以下:フィジックス)が空間デザインとどのよ うな関係を持っているのか、フィジックスから展開する建築 空間のあり方を明確にすることを第一の目的とする。また現 代の住宅建築において、どのような手法によってフィジック ス制御がなされているかを把握し、各手法の仕様傾向を捉え ることを第二の目的とする。

0-3. 研究方法・構成

第 1 章では、フィジックス・デザインについて定義し、ど のように住空間デザインと関わってきたか、歴史的側面や気 候風土とを交えながら論考を行う。

第 2 章では、フィジックスと空間の関係性について、環境 工学分野の基礎知識や近代建築以降の住宅建築の設計手法を 例に論考を行う。

第 3 章では、環境性能評価手法、建築設備、サステナビリ ティについて、それぞれの視点から住空間との関わりや現代 社会における価値観を考察し、要求される空間へと反映する。

第 4 章では、現代住宅建築の事例をもとにデータシートを 作成し、【環境要素】【構成要素】【フィジックス制御手法】そ れぞれの視点から分析・考察することで、現代のフィジック ス・デザインの傾向を把握する。

1. フィジックス・デザイン

1-1. フィジックス・デザインとは

建築の1研究分野として、ビルディング・フィジックスと 呼ばれる分野がある。「建築物理」と訳されるが、建築におけ る光・熱・空気・音といった物理条件(フィジックス)を考 えていくものである。我々の身体をとりまくフィジックスを 意識して建築のデザインを展開することをフィジックス・デ ザインと定義する

1)

1-2. フィジックスと住宅史

住空間や家族の変遷の背景には、もちろん社会的な要因が あるにせよ、光や熱といったフィジックスも大きな役割を果 たしている。住まいにおけるフィジックスのあり方によって、

ライフスタイルや家族の関係性、ひいては住空間のあり方ま でもが変容してきた。

1-3. フィジックスと気候風土

レイナー・バンハムは『環境としての建築』

2)

において、

気候風土の違いに基づく環境配慮の方向性として、簡潔に

「保存型」と「選択型」とに分類している。前者は、建築の 内部と外部を隔絶した高断熱・高気密の住宅像と重なる。後 者は、外部環境を取捨選択し、コントロールしながら環境調 整を行うスタンスである。

2. フィジックスと住空間デザイン

2-1. 光・熱・空気・音のデザイン

自然とどうのように付き合うか、自然の一部でありながら、

同時にその最大の破壊者でもあり続けてきた人間の永遠の課 題であるといえる。住宅の歴史には、住まいと自然との関係 に意を凝らした建築的工夫が数多くみられる。光・熱・空 気・音それぞれの特性をうまく活用し、環境と共生できる住 空間デザインが現代社会にも求められているのである。

2-2. 空間の構成要素

建築をシェルターとして、外部環境から隔絶した内部環境 を創るための装置と考えると、その構成要素は通常、屋根・

壁・床である。しかし、外部の自然環境は人間にとってなく てはならないものであり、内部と外部を結ぶ機能として窓や 開口も重要な構成要素であると考えることができる。

2-3. 建築的思考と機械的思考

今日、日本に住まう我々にとって、夏を旨とした開放的な 住宅の快適性も、冷暖房を使用する利便性も、どちらも断つ ことのできない重要な要素となっている。これからの住宅デ ザインにおいては、自然環境を最大限活かす建築的思考と先 進の技術や高効率で環境負荷の少ない設備機器を活かす機械 的思考、双方を融合したハイブリッドな考え方として、フィ ジックス・デザインが位置付けられるのではないだろうか。

建設工学専攻(修士課程)

建築設計研究

510070-6 長松 実

指導教員 赤堀 忍

ながまつ みのる

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3. 社会と環境関連の動き

3-1. 建築設備の変遷

設備工学の分野は、常に発展し普及している。とりわけ住 宅向けの小型設備機器の開発や製品化は目覚ましく、省エネ ルギー性、利便性、効率性の面から住生活におけるフィジッ クス制御において積極的な役割を果たしている。

3-2. 環境性能評価手法

「CASBEE」に代表される建物の環境評価という行為が一 般社会の理解と賛同を得た背景には、住まい手の住環境への 意識の高まりと、評価結果がわかりやすい形で可視化され、

開示されていることが大きな要因として挙げられる。

3-3. 住宅のサステナビリティ

持続させることは保存させることではなく、変化・発展さ せることである。サステナブルな住宅においては、人々の個 別性やライフスタイルに呼応し続けられるデザインが必要で あると考える。

4. データシート

4-1. 分析対象

ハウジング・フィジックス・デザイン研究会が選ぶ環境に 対する特徴的な配慮を行っている 74 の住宅事例のうち、一定 の尺度を持った資料価値の高い事例を選定するため、以下の 3 誌より重複する記述が得られた 52 事例を分析対象とする。

『新建築』 『新建築住宅特集』『住宅建築』

4-2. 分析内容

各事例の分析項目は、家族構成、敷地条件、気候分布、構 造、構成要素、環境要素、フィジックス制御手法とする。ま た、各分析項目を以下のように分類・記号化することで、視 覚的にもわかりやすいデータシートの作成を目指す。

≪敷地条件≫

都市型(U)、郊外型(O)、田園型(R)

≪構成要素≫

空間・配置構成、屋根、壁、床、開口部

≪環境要素≫

光(L) -自然採光(Ln) 、間接採光(Li)

熱(H) -断熱・遮熱(Hi) 、蓄熱・集熱(Hs) 、輻射(Hr)

空気(A)-自然換気(An) 、機械換気(Ac)

音(S) -防音(Sp) 、吸音(Sa)

4-3. 分析方法

①選定した事例ごとにデータシートを作成し、住宅作品の 詳細や概要、フィジックス制御原理を図面化したものを記載 する。②空間の構成要素別にフィジックス制御の手法を抽出 する。③作成したデータシートを基に【構成要素】【フィジッ クス制御手法】【環境要素】それぞれの視点から分析・考察す ることで、現代におけるフィジックス・デザイン傾向を把握 する。④以上の分析・考察の結果を基に、2007 年以降の最新 住宅作品から、理想とするフィジックス・デザインがなされ ている住宅モデルとして 3 事例を選出し、環境に配慮した住 宅としてその優位性を提示する。

4-4. 分析結果

分析した 52 事例のうち、空間構成では 9 手法、屋根部では 9 手法、壁部では 10 手法、床部では 5 手法、開口部では 5 手 法のフィジックス制御手法が見つかった。

1 各事例におけるフィジックス制御の手法

作品名

中庭 バッフ風除室) 回遊空間 一室空間 吹抜 縁側、ッキ スキフロ 広葉樹 ピロ トッ 屋上緑化 通気層 深い庇・ ルー 透過素材 ダブ 断熱材 太陽光パネ ハイサイ ダブ ルーバー 通気層 全面開口 断熱材 透過素材(FRP 送風フ 壁面緑化 壁・集熱パネル グレ 熱体、 通気層 防音 床暖房 複層 木製サッシュ ルーバー 障子 オーニン

スカイハウス ○ ○

もうびいでぃっく ○ ○ ○

札幌の家・自邸 ○ ○

軽井沢の家(脇田邸)

太陽熱の家 ○ ○

中野本町の家 ○ ○

目神山の家1「回帰草庵」 ○ ○ ○ ○ ○ ○

サーマルハウスH邸

つくばの家 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

相模原の住宅 ○ ○ ○ ○

住宅No14筑波・黒の家 ○ ○ ○

タンポポハウス ○ ○

箱の家シリーズ1 ○ ○ ○ ○ ○ ○

S‐HOUSE ○ ○ ○ ○ ○ ○

ニラハウス ○ ○

ハウス・ジャパン・中間実証C棟

ウィークエンドハウス

PLANE+HOUSE ○ ○ ○ ○

アルミエコハウス ○ ○ ○ ○ ○ ○

ナチュラルユニット ○ ○ ○

十里木の別荘 ○ ○

ambi-flux ○ ○ ○ ○

J‐House ○ ○

矩形の森 ○ ○ ○

土間の箱階段(板倉の家) ○ ○ ○

高知・本山町の家 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

PARK HOUSE ○ ○ ○ ○ ○

Plastic House

積層の家 ○ ○

アグ・デ・パンケ農園の住宅 ○ ○

スペースブロックハノイモデル

IS ○ ○ ○ ○

ガエハウス

亀山双屋

アシタノイエ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

トラス下の矩形 ○ ○ ○ ○ ○

片瀬の住宅

MESH ○ ○ ○

静戸の家 ○ ○ ○

風と光の家 ○ ○ ○ ○

ハウス&アトリエ・ワン ○ ○

ストーン・ハウス

T House

エムハウス

曽我部邸 ○ ○

Annex ○ ○ ○ ○

板橋のハウス ○ ○ ○

ノラハウス ○ ○ ○ ○ ○ ○

箱の家‐122[神宮前計画] ○ ○

森の中の住宅 ○ ○

S邸

回廊の家 ○ ○

52 15 15 16 30 32 188 23228312161151095418110321056 3119 188374

空間・配置構成 屋根 開口

5. 考察

5-1. 構成要素別の考察(一例)

≪空間・配置構成について≫

マトリクス表で顕著に表れた結果として、「吹抜け」、「一室 空間」の使用率が高いことである。

その要因として、間仕切りのない一室空間は採光の面で、

室内奥まで反射光を届けることが可能であることが考えられ る。また、吹抜け空間は、都市の密集した住宅街においても ハイサイドライトを併用することで、外部からプライバシー を確保しつつ明るい室内空間をつくり出すことができる。

そして、2 つの手法が併用されていることが多いことから、

平面的なつながりだけでなく、立体的なつながりを持つこと で、重力換気が行いやすい空間構成になっていることが読み とれる。 (以下:本論参照)

6. 結論

目に見えないものを扱う可能性を拡げることにより、人の 環境への拡張を施す一つの在り方を示すことができた。定量 的な計測や判断はできないが、数字ではあらわすことができ ない住環境の状況を判断する際の活用が期待される。本研究 が今後少しでも、環境時代の住空間デザインを考える手助け になれば幸いである。

参考文献・註

1)小泉雅生

著 「ハウジング・フィジックス・デザイン・スタディーズ」

INAX

出版

2008 .9

2)レイナー・バンハム

著 「環境としての建築」鹿島出版会

1981.5

3)日本建築学会

編 「地球環境建築のすすめ」 彰国社

2002.8

4)村上周三

著 「ヴァナキュラー建築の居住環境性能」 慶應義塾大学出版会

2008.3

参照

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