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論文の内容の要旨
氏名:平 井 重 徳
博士の専攻分野の名称:博士(歯学)
論文題名:In vivo micro CTを用いたBMAL1遺伝子ノックアウトマウスの下顎頭形態変化の経時的 観察
Brain and muscle Arnt-like protein-1 (以下BMAL1,別名:Mop3,Arnt3) は全身の細胞に分布 するタンパク質であるが,これをコードするBMAL1遺伝子は,哺乳類の恒常的な概日リズムを制御 する時計遺伝子のグループの1つであることが知られている。
このBMAL1遺伝子をノックアウトしたマウスでは,老化現象が非常に早い時期から出現し,糖代 謝異常や脂肪細胞の分化促進などに影響が生じることが明らかになっている。BMAL1 ノックアウト マウス (以下ノックアウトマウス) を使用した研究は,老化現象やメタボリックシンドロームの解明 に有効であるとされ,近年盛んに行なわれている。また,ノックアウトマウスでは,アキレス腱をは じめ,肋軟骨,椎間板,膝関節周囲靭帯などに異所性骨形成が認められる。しかし,ノックアウトマ ウスの下顎頭の経時的形態変化や下顎頭周囲の石灰化の有無についての報告はない。
ヒトをはじめとする哺乳動物の概日リズムの主時計は,視床下部視交叉上核 (SCN) にあり,時計 遺伝子の転写・翻訳と産物は,negative feedbackによって制御されている。SCNにある主時計が,
身体のほとんど全ての細胞にある末梢時計を同調することにより,統一のとれた時計機構が形成され る。この主時計による末梢時計の同調には,自律神経系がその主な働きをしている。近年,体内時計
のnon-clock functionが注目され,時計機構と高血圧・高脂血症・糖尿病等の生活習慣病,骨粗鬆症,
発癌,寿命等との関わりが報告されている。とくに変形性関節症の病因の一つとして恒常的な概日リ ズムとの関係が重要であると報告もされている。
本研究では,恒常的な概日リズムの変化による下顎頭の経時的形態変化と下顎頭周囲の石灰化の有 無を明らかにするため,micro-CT (リガク,東京) でノックアウトマウスの撮影をおこない,経時的観 察を行った。
Micro-CTによる下顎頭の経時的形態変化と下顎頭周囲の石灰化の経時的画像評価には,C57/BL系
統のマウス12匹を使用した。内訳は,6匹のノックアウトマウスと6匹の野生型マウスである。本マ ウスは,もっとも知られた標準的な近交系マウスであり,各種ミュータントマウスや遺伝子改変マウ ス系統の遺伝背景として広く利用されている。
マウスには全て通常食を与え,生下時より生後 25 週まで飼育し,経時的に体重の計測を行った。
Micro-CT撮影は,6週,10週,15週,20週,25週に行った。撮影時にはイソフルラン吸入麻酔を
施し,micro-CT撮影中はマスクをマウスの頭部に固定して,麻酔状態を維持した。25週目の撮影前
に,全個体を炭酸ガスにて安楽死させた。
下顎頭の形態変化は,ノックアウトマウスでは生後6週で12部位中0部位,15週で2部位に発現 し,25週では12部位中8部位で確認された。一方,野生型マウスでは,下顎頭の形態変化は20週ま で認められず,25週でも12部位中2部位であった。下顎頭の形態変化の発現率は,20週と25週に おいて有意差を認めた ( p < 0.05)。
下顎頭周囲の石灰化は,ノックアウトマウスは,20週以降では12部位中2部位で確認された。一 方,野生型マウスでは,この石灰化は25週でも認められなかった。石灰化については,有意差は認め られなかった ( p > 0.05)。
体重変化については,野生型マウスは週齢の増加とともに体重が増加していくことに対し,ノック アウトマウスでは,6週目と比較し25週目で減少傾向を示した。なお,野生型マウスの体重変化につ いて,その増加は,6週と25週の比較においては,有意差を認め ( p < 0.05) ,ノックアウトマウス おける体重減少には,有意差が認められなかった。
下顎頭幅径の変化は,野生型では下顎頭の幅径に変化はみられなかったが,一方,ノックアウトマ
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ウスでは増加が認められた。ノックアウトマウスの下顎頭幅径の変化は,6週と25週を比較し,有意 な増加を認めた ( p < 0.05)。
恒常的な概日リズムの変化による下顎頭の形態変化の経時的進行と石灰化の有無を明らかにするた め,ノックアウトマウスのmicro-CT撮影をおこない,BMAL1をノックアウトしたマウスでは,概日 リズムが下顎頭形態変化に影響を与えることが示唆された。