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の対人関係スキルアップ

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Academic year: 2021

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(1)

の対人関係スキルアップ

子どもの期待に応える力の育成

教 師

吉田道雄

~

対 人 関 係 ス キ ル ア ッ フ 包 ト レ ー ニ ン グ

の進化

筆者は四十年近くにわたって対人関係トレーニング

の開発と実践を進めている。当初は企業組織体が主要

な対象だったが、それを教師や看護師などに拡大して

きた。その流れの中で、二

O

O

二年には本誌に「教師

の対人関係トレーニングの試みと学校組織の活性化」

と題して寄稿している。これは教師を対象にしたもの

としてはいわば開発初期のものである。

その後、二

O

O

三年には教職十年経験者研修が開始 士(学術 熊本大学教授。(財)集団力学研究所長。博 よしだ・みちお

) ρ

九州大学大学院教育学研究科博 士課程単位取得退学。九州大学助手、鹿児島 女子短期大学講師を経て現職。教育・産業・ 看護の領域を中心に、「対人関係トレーニン グ」および「組織の安全」に関する研究と実 践を進める。著書に「人間理解のグループ・ ダイナミックス』(ナカニシヤ出版、二

0 0

一年)、『人生をよりよく生きるノウハウ探 し』(熊本日日新聞社、二

O O

七 年 ) な ど

されることになった。それに伴って、熊本市教育委員

会の研修の一部として、筆者が提案している「対人関

係トレーニング」が導入された。それから六年が経過

するが、本トレーニングは継続的に実施され、研修の

柱として定着しつつある。また、やはり熊本市教育委

員会が開催する「学級経営研修」にも、簡略版ではあ

るが同等の内容で構成されたトレーニングが二

O O

年から導入されている。その結果二

O

O

八年までの受

講者は、前者で約二七

O

名、後者は六

O

O

名に土って

い る

本稿では、前稿から進化した 「教師に対する対人関 。

(2)

係トレーニング」の内容とその効果を、特に「教職十

年経験者研修」に焦点を当てながら紹介したい。

対人関係スキルアップの前提

「対人関係トレーニング」を企画し実践するに当 たって、基本的な前提がある。それは、個々の教師の

「対人関係力」は改善可能であるということである。

筆者は対人関係力の中にリーダーシップが含まれると 考えているが、リーダーシップには対照的な二つのと らえ方がある。それは、「特性論」と「行動論」であ る。前者はリーダーシップの善し悪しは、リーダー個 人の資質で決まると考える。これに対して、後者は リーダー自身の行動に焦点を当てる。その人物が求め られる行動をとっているかどうかが、リーダーとして

の正否を決めるという立場である。

この両者には決定的な違いがある。それを図

1

の 二

つの円錐で確認してみよう。左側の円錐は特性論を象 徴的に表現したものである。基本的に変化することの ないグ特性

d

が底辺から半分以上の領域を占めてお り、その上に小さなグ行動

d

が乗っている。一見し

対人関係力(リーダーシップ)の円錐 図

i

対人関係の世界

│  行動のバリエーション │ 

l 行動|

| 特 性 |

行動論:努力論、改善可能論

「やればできる・・・ J

| 行 動 |

|特性|

特性論:運命論、決定論

「性格だから・・. J

(3)

て、行動が特性に縛られていることがわかる。そのた

め、頂点から一本の矢印しか出ていない。これは、特

性論の場合、行動がきわめて制限されたものになるこ

とを表示しているのである。リーダーは状況や相手が

変わっても、同じパターンの行動しかとれないという

わ け

だ 。

「状況(相手)が違うのだから、これまでと同じ対応

ではうまくいきませんよ」。ごんなアドバイスを受け

ても、「そうかもしれませんが、行動を変えろと言わ

れでも、それは無理なんです。それが私の性格ですか

ら」と答えるしかないのである。

これに対して右の円錐は、逆立ちしている。そし て、特性は下の頂点部分を少しばかり占拠している

が、その上に大きな行動の部分が載っている。この円

錐は、対人関係スキルに個人の特性が影響することは

認めているが、それ以上に、行動の選択幅が大きいこ

とを訴えているのである。対人関係においては、刻々

と変化する状況や相手に対応して自分の行動を変えて

いくことが求められる。それによって望ましい対人関

係が実現すると考えるのである。

したがって、行動論の主張はきわめて単純だ。対人 関係を良好に保つためには、そのときどきに求められ ている行動をとるように努力すればいいのである。こ こで行動論が、特性をまったく無視していない点も指 摘しておきたい。たとえば、授業場面において教師が 児童生徒に「聞こえる声」で話をすることは、必要不 可欠な行動として要求されている。しかし、その教師 も「声の質」を変えることはできない。「もっと低音 で」とか「ハスキ!なほうがいい」などと言われで も、それは無理な注文というものだ。声の質はまさに 個性であり、生まれ持った声をべ

l

スにして授業を進

めていくことしかできないのである。

いずれにしても、基本的な特性は変えることができ

ない。しかし、行動は個々人の努力において、改善・

向上させていくことが可能なのである。

対人関係トレーニングの流れ

対人関係スキルを行動だと考えることによって、そ

れは改善できる対象になる。その結果として、対人関

係を改善するためのトレーニングも存在意義を持って

くるのである。

(4)

[対人関係トレーニング j の流れ(熊本市教職

01

年経験者研修)

Step2(7

29

日:

1

日)

基礎研修 Step3 

学校での実践

Step5 

1 (

2

26

日:

1

日)

フォロー研修 Step6 

学校での実践

Step8 (2

月24 日:Yz日)

スタートアップ研修

行動のふりかえり 調査結果分析 行動目標決定

Step7 

学校での リーダーシッフ。調査

ここで、熊本市教育委員会の「教職十年経験者研

修」で実施している「対人関係トレーニング」の流れ

を紹介しよう(図

2 ) 0

これは二

O

O

八年度のもので具

体的な日付が入っている。集合研修のスタートである

step-

は五月九日で、それから七月二十九日の

S

tep2

、十二月二十六日の

Step5

を経て、翌年

二月二十四日の

Step8

で終了を迎える。新学期が

スタートして一カ月後の五月から学年の終わり近くま

で九カ月以上の期聞をかけて、教師たちは「対人関係

力」の改善・向上に取り組むのである。その詳細は別

の機会に譲ることにして、ここでは各ステップの内容

を簡単に説明しておこう。

step-

対人関係トレーニング全体の流れを紹介するととも

に、グループ・ダイナミックス的な視点から見た対人

関係力の重要性について理解を深める。そして対人関

係力の改善に向けて、自分に対する「児童生徒からの

期待」を知るための調査を行うことを了解する。

この調査では、児童生徒が「先生にもっとしてほし

いこと」「先生にできればやめてほしいこと」の二点

について自由に記述することになっている。

Step1.(5

9

日:Yz日)

オリエンテーション リーダーシップの理論

子どもの期待分析 行動目標決定

グループ・ダイナミックス の理解

コミュニケーション実習

行動のふりかえり 調査結果分析 行動目標決定

Step4 

学校での リーダーシップ調査

 

2

 

(5)

step2

一基礎研修 まずはじめに、対人関係力やリーダーシップに関す る理論的情報を提供する。その後で、子どもたちが書

いた「期待調査」の結果を分析する。

回答は封筒に入れられており、この場ではじめて開 封するため、教師の間に軽い緊張感が漂う。「どんな ことが書かれているのか」が気になる教師も少なくな

いのである。その回答内容を分析し、自分が実践すべ

き行動を設定して基礎研修怯終了する。

step3

…学校での実践

基礎研修で決定した「行動目標」を学校で実践する 期間である。この研修の場合は、二学期全体がそれに

あ た

る 。

step4

一学校での調査

二学期の目標行動の実践度について、児童生徒によ

る評価を行う。回答は匿名で封筒に入れて提出する。

このため、次の研修まで教師自身がその内容を知るこ

とはできない。

step5

一フォロー研修

自らの実践行動について振り返ったあとで、児童生 徒の回答が入った封筒を開ける。その結果を集計しな

がら、教師たちは児童生徒が見た自分の行動につい て、様々な視点から分析していく。そして、最終的に

は改めて学校で実践する行動を目標として設定して、

職場に帰っていくことになる。

step6&7

…学校での実践と調査

基本的には

St ep 3j

s

と同じ内容であるが、

4

te p3

「実践」はフォロー研修で児童生徒からの生

データを分析した上で決定した行動目標を掲げている

ため、質的には

Step3

よりも質の高いものになる

o

step8

一スタートアップ研修

改めて、自分の行動に対する児童生徒のデータを分 析する。目標設定と実践の繰り返しを通して、教師た ちにはある種の達成感が感じられる。事実、データと

しても改善されたものが多い。

ここまではトレーニングとして第三者であるわれわ れがサポートしてきたが、今後は自分たちで対人関係 力の育成を図っていくことになる。そこで、この研修 は「はじまり」なのだという意味合いを込めて、「ス タートアップ研修」と呼んでいる。こうした「研修←

実践←調査」という一連の過程を通して、教師の対人

関係力が改善・向上していくのである。

(6)

児童生徒の期待に応える

対人関係力は「行動」そのものであるという前提を

受け入れれば、次の課題は求められている行動を明ら

かにすることである。

そのためにはどうするか。これに対する回答のひと

つは、すでに妥当性や信頼性が吟味された質問紙など

の尺度を使用することである。しかし、それらは一般

性を重視しているため、個々の教師からはか調査で求

められている行動は自分が置かれた状況には合ってい

ない u

という否定的な反応が出できたりする。そこ

で、われわれは、児童生徒自身から「教師に対する期

待」を聞くことにした。それは、教師が耳を傾けるべ

き「生の声」であり、抽象的な「期待行動」ではない

の で

あ る

すでに見たように、この研修では児童生徒から「先

生にしてほしいこと」と「先生にやめてほしいこと」

について自由記述を求める。こうして集められた行動

リストを整理分析して、実践に移す具体的な行動を決

めるのである。もちろん、自由記述であるだけに、そ の内容は多様で、教師として対応できないものも含ま れ

て い

る 。

したがって、研修でも教師に対して期待のすべてに

応 え

る こ

と は

求 め

な い

。 し

か し

、 そ

の 中

に は

、 「

一 一

一 一

口 わ

れるだろうと思っていたら、やっぱり指摘されてし

まった」「ある程度は実践しているが、十分とは言え

ないと思っていた」「そんなことはまったく気づきも

しなかった」といった項目が入っているのである。こ

うした期待については、教師としても行動化しなけれ

ばならないものとして「納得」することができる。そ

もそも、自分の行動を変える際には、「納得」するこ

とが最も重要なポイントである。その点、既存の尺度

は「こうした行動をとりなさい」と「説得」する側面

が強く、必ずしも「納得的」だとは言えない。このよ

うな理由から、われわれは「子どもの期待」調査をも

とに、教師の対人関係力を改善・向上する「トレーニ

ング」を実践しているのである。

児童生徒の期待の妥当性

ところで、児童生徒からの期待項目はどの程度妥当

性があるのだろうか。

この点を明らかにするために、中学生から出された

(7)

中学生の期待に対する

f

同僚教師による推測 j の正答率 図

3

89% 

2 7

9 8

2 7

f

旦 イ 壬A

担イ壬

C

担任D

100 

(%)

80  40  60 

20 

担任教師に対する期待を、同僚の教師たちに提示し

た。彼らはその内容を見て、どの教師に対する期待で

あるのかを推測したのである。図

3

は、担任教師四人

についての正答率を示している。提示したりストから

は、明らかに個人を特定できるものが除かれている。

いずれも七

O

%

以上の正答率で、生徒が期待する行動

は、同じ立場の教師から見て、高い確率で推測できる

こ と

が わ

か る

したがって、リストアップされた行動は、

担任 B

「 子

ど も

たちが勝手に期待している」のではなく、教師がそれ

を尊重し、改善あるいは向上の努力をする価値を持っ

ているのである。

本稿では、紙帽の関係もあり、「対人関係トレーニ

ング」の効果については十分にお伝えできない。た だ、研修に参加した教師が担任をする児童生徒からの 評価に高まりが見られること、受講後のレポートで参 加者が研修そのものをきわめて肯定的に評価している

こと、さらに所属する学校長からも一定の評価を得て

いることを記しておきたい。

〔 文

献 〕

吉田道雄「教師の対人関係トレーニングの試みと学校組織の活性

化」、『教育と医学』第五十巻三号、二

O

O

年 、

O

|

七六頁

吉田道雄「中学校教師を対象にした対人関係トレーニングの試み」、

「熊本大学教育実践研究』問、二

O

O

年 、 一 ー ー 一 一 頁

*著者のホ

l

ム ペ

l

ジでは、教育を含めた論文や講演録を掲載

し て い る

。 ま た

「 昧 な 話 の 素

」 と 名 付 け た コ ラ ム に

「 リ ー ダーシップ」や「対人関係」を含む様々な話題を取り上げて

いるので、ご参照いただきたい。

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参照

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