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放射温度計による銅基板温度の測定

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Academic year: 2021

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放射温度計による銅基板温度の測定

電気・電子工学科 江藤昭弘

1.はじめに

 銅線に絶縁物を被覆するために、ヘリカル型熱 陰極を用いた直流放電装置を製作し、実験を行っ てきた。基板である銅線の加熱には、熱陰極から の輻射熱を利用している。膜質の向上と成膜速度 を検討する上で基板温度の測定は重要である。基 板温度の測定においては主に熱電対が利用されて いるが、熱電対が輻射熱の影響を受け正確な温度 測定が困難となること、非接触温度測定が実用的 であることから、放射温度計を用いた銅基板温度 の測定方法を提案し、実験を行った。今回の実験

輻射熱

においては、基板温度と放射率との関係ならびに図1.熱電対を用いたヘリカル型 基板温度測定値の温度補正の方法について報告す   熱陰極による基板温度測定

る。

2.放射率と放射温度計

 一般に温度を有する物体からは、温度に依存す る波長の電磁波が放射されている。これは温度放

射または熱放射と呼ばれている。1000K以下

の温度を測定する場合には、熱放射の波長は赤外 線領域となる。放射体には理想的な放射体である 完全放射体(物体のなかで最も多くの放射エネル ギーを放出する物体、黒体とも言われている)と 一般の物体が属する不完全放射体とがあり、この 両者の同一温度における熱放射エネルギーの大き さの比率は放射率(1)と定義される。一般の物体 からの放射エネルギーは完全放射体のそれと比べ

ると常に小さいために、放射率は1以下となる。

放射温度計は、赤外線の特定の波長領域での熱放 射エネルギーの強度を焦電素子により熱化し、電 圧に変えて温度を測定する装置である。本実験で 用いた放射温度計の仕様を表1に示す・

 測定方式:

  広帯域放射温度計  (低温用放射温度計)

2.検出素子:

  焦電素子 3.測定波長:

  8〜13μm  測定温度範囲:

  −50℃〜1000℃

 再現性:

  1℃以内 6.分解能:

  1℃

 距離係数:

  50

表1.放射温度計の仕様

一10一

(2)

3.銅基板の放射率の測定

 図2は銅基板の温度と放射率の関係を調 べるための測定装置の概略図である。矩形

状に折り曲げた幅3mm、厚さ0.5mm

のリボン状銅線に、交流電流を流してジュ ール加熱する。その時の銅基板温度を熱電 対ならびに放射温度計を用いて測定し、両 者のデータを比較することにより放射率を 求めた。金属板温度を放射温度計で測定す る場合金属の放射率が低いため、周囲から の測定波長域の放射強度(2)の方が大きく、

正しい測定が不可能となる。このためここ では銅基板からの放射エネルギーを得やす

くする目的で、銅基板上の幅3mm、長さ 8mmの範囲に炭素系の塗料を塗り、ここ からの放射強度を検出することにした。ま た、塗料を塗った箇所より12mm離れた 位置に熱電対を取り付け、真空容器の覗き 窓には放射温度計の測定波長8〜13μm の放射光を透過出来るフッ化バリウムガラ ス(B。F2)を取り付け、その上部の銅基板

から100mmの位置に放射温度計を設置 した。容器内を10−6Torrまで排気後、

銅線に流す加熱電流値をパラメータとして、

その温度を熱電対ならびに放射温度計によ り測定した。図3に熱電対ならびに放射温 度計により測定された銅基板の温度を示す。

放射温度計による測定では、その放射率ε の設定を変化させた。この図から熱電対と 放射温度計による測定値が一致している放 射率ならびに熱電対の基板温度をそれぞれ 求めることにより、基板温度と放射率の関 係を求めることが出来る。図3より、基板 温度の上昇とともに銅基板の放射率εが低 下していることがわかる。この結果を図4

に示す。基板温度の上昇とともに、放射率 は1から0.6まで低下することが判る。

1000

鷲認

xe ;1。

 100

排気

図2.実験装置概略図

     電流(A)

.図3.熱電対および放射温度計   による銅基板温度の測定

9[1

嚇え

嚢。5

1:1

91

  300400 500600 700800 9001000      銅基板温度(K)

図4 銅基板温度と放射率の関係

(3)

これらの結果を利用すると、放射温度計の放射率を固定して測定された基板温 度に補正を施すことができ、加熱時の基板温度を非接触で測定することが可能

となる。

4.ヘリカル型熱陰極における銅基板温度の測定

 成膜実験に用いるヘリカル型熱陰極の中心軸上に沿って銅基板を取り付け、

熱陰極の輻射熱によって加熱される銅基板温度の測定を行った。図5に測定装 置の概略図を示す。熱陰極の中心位置真下の基板上に幅3mm、長さ8mmの 範囲に炭素系の塗料を塗り、熱陰極に流す直流電流値をパラメータとして、銅 基板の温度を放射温度計を用いて測定した。このときの放射温度計の放射率ε は1に固定し、加熱時間は20分間としその間の温度変化を測定した。図6に 温度補正を行う前の銅基板温度の測定結果を示す。

       goo

       800     放射温度計の放射率ε=1

       700   ①675K       8

      韻5°°

      壕400

      謬3・  加熱時間2。分

       200      ①:DC50(A)16.9(V)

       ②:DC40(A)12.1(V)

       100      ③:DC30(A)7.6(V)

      ↓       10  15 20 25 30 35 40

      6気      測定時間(分)

図5.ヘリカル型熱陰極を用いた銅基板  図6.ヘリカル型熱陰極における放射温度計   温度測定装置の概略図      による銅基板温度測定(温度補正前)

5.基板温度の補正

 図7は、ε=:1に設定された放射 温度計により測定された基板温度と 熱電対による測定値との関係であり、

図2のデータを用いた。この関係を 利用すると、図6の測定値に補正を 施すことが出来る。例えば、図7の 横軸上に示された温度はそれぞれ補 正前の放射温度計による測定値であ り、縦軸上に示される温度は補正後 の温度である。

xc iooo

橿8。。−

1…

  0    200   400   600   800  1000

  放射温度計での銅基板温度の測定値(k)

 図7.銅基板温度測定値の補正

一12一

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6.まとめ

 銅の放射率は0.1と非常に小さい。このために放射エネルギー強度が小さ く、放射温度計では正確な温度を測定することが出来ない。そこで放射率が大 きい炭素系塗料を薄く塗り、加熱された銅基板と表面の塗料とが熱平衡状態と なることにより、塗料の表面温度を放射温度計で測定することで基板の温度を 知ることが出来る。

 ヘリカル型熱陰極からの輻射熱により加熱された銅基板温度を測定するた めに、放射温度計と熱電対を用いて基板温度の補正関係と放射率を求め、これ を利用して放射温度計により測定された温度に補正を施すことにより、非接触 での基板温度測定が可能とした。

7.今後の課題

 今回の基板温度の測定はヘリカル型熱陰極中心におけるものであったが、今 後はヘリカル型熱陰極の軸方向での温度分布測定を行う。

8.参考文献

(1) (社)計量管理協会編:計測技術シリーズ5「温度の測定」,コロナ社

   129〜130,1988年

(2)棚澤一郎,西尾茂文,河村 洋,笠木伸英,吉田豊明:「伝熱研究にお

  ける温度測定法」,養賢堂,135〜137,1985年

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参照

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