長野工業高等専門学校紀要 ・第1
9号(1
988) 83好気性分解を利用した汚泥処理について
上 條 直 秀 *
Disposal of Sewage Solids by Aerobic Decomposition Naohide KAMIJO
In theprevalingdisposalplants,theliquiddisposal ofsewageisoperated before thesewagesoliddisposal,whichisgenerallymadebyanaerobicdecomposition.This makesitnecessary to havefurthertreatmentby evaporationand incineration of thedigestedsolids.Thisreportisaboutaerobicdecompositionanddigestionofsewage solidsdepositedinthefiltertankthroughwhichthesewageismadeto且ow before theliquiddisposalisoperated.According toconditions,Somedifferencesmay be perceivedintheresultsofourtest,butthestageofthedigestionnaturallyreaches itspeakinaboutfiveweeks.Thentheweigh tofthesewagesolidsisreducedby7%〜
15%.Thefunctionofthe丘Itertank for digestion isalmostrecoveredtobeavai一
lableinabouta month andahalfifitisleftstill.Inaddition,morethan30‑40% ofBODisalSoremovedinthecourseoftheaboveoperation.
1. ま え が き
現在一般 の下水処理場における処理過程は,前処理 ・最初沈殿 ・生物処理 ・最終沈殿であ ち. ここで,生物処理法 として我が国で一番多 く行われている活性汚泥法では,その際発生 す る汚泥が大量であ り,生汚泥を含めた汚泥処理が大変である。汚泥処理のプロセスは,汚 i F t = T 濃縮 ・嫌気性分解による汚泥消化 ・脱水,その後は直接埋めたてるか,あるいは焼却等の 方 法で処分 されている。そ こで,汚泥処理を液部の処理を行 う前にすることに より,汚泥量 を最小限に とどめる。 また,汚泥消化に好気性分解 の利用ができないか,の
2点について考 えた.本報告は,前報の家庭下水の浄化法のフローシー トに示 した中の汚泥消化槽 について の実験結果である. この汚泥消化槽を最初に通す ことに より,下水中の固形物の大部分が抑
・ 留 され ると同時に
,BODの除去 も期待でき,次に続 く液部の処理でも好影響を与 えること がわか った。 ここでは,戸 々の家庭における下水処理を行 う方法を前提 としているが,大規 模処理場においても応用できるのではないか と考えている.
2.試料および実験方法
試料 としては,学寮の残飯 と本校の下水処理場に流入する下水を用いた.家庭下水中に含 まれ る固形物 としては,台所か らのもの と,便所か らの ものが大部分であるか らである. こ
* 土木工学科 助教授
原稿受付 昭和
63年9月
30日
f ① 軽石
1」 ヱ 」 L ③蛭石+下里 気配 憎 l ◎ 軽石 l L u L 讐 戸+下当 湿潤状態
L竺」 L 91 土中聖 込み
図 1 試料と消化槽の状態
の試料を図
1に示 したよ うに
10通 りの場合について消化の状態をみた.いずれの場合 も容辞 に試料を
50g入れる.① の軽石 とあるのはその容器に櫨材 として軽石を使用 した.②の何 も 記入 してない ものは試料 のみを容器に入れた.③ の軽石+下水 とは埴材に軽石を使い,試料
と下水を混合 し
1日放置 した ものである.④〜⑬ も同様であ る.気乾状態 とは, この容器を 実験室内に置いたもの.湿潤状態は試料が乾燥 しないように常時注水 した ものである.土中 埋め込み とは, この容器 に穴をあけ土の中に埋め込み,試料 と土中の徴生物が接触できる状 態 に した もの.⑦,⑧の湿潤 とは, このような状態に置いた試料が乾燥 しないように注水 し た ものである. これ らの試料を
1週間ごとに取 り出 して
110oCで乾燥 し,重量を測定 して消 化 の様子をみた.次にその試料を
600oCで強熟 し,減量を有機物,残量を無機物 とした.更 に上記容器を暗室,高温
(30oC),低温
(5oC),蛍光灯の光を当た ものに も分け て 実験を 行なった.また,試料中に発生す るカビの様子を光学国教鏡 と走査型電子顕微鏡により観察 した.最後に容器を大 き くし,室外の土 の中に埋めて,・ より実際 の条件に近 くして消化の状 態を観察 した.
3.実験結果お よび考察
スター ト時,試料を
110oCで蒸発乾燥 させたものが,試料重量 の
20.68%であった.それ
1週
3週5週
7過 1週 3週 5過 7題図2 試料
の置かれた状
態別にみた,時間経過に ともな う蒸発残留物 (%)好気性分解を利用した汚泥処理について
85が時間の経過に ともなってどのように消化 してい くかを見たものを,図
2に示す.百分率 と したのは,試料を全 く同一の重量にすることが困難であることと,含水率が一定でないため である.
気乾状態に置いた ものは,一般に消化が悪い・その中にあって③の下水を加 えた ものお や や良好 な結果が出た.① と④,② と⑤のように同一条件な らば湿潤状態の方が よいことがわ か る.土中に埋め込んだ ものは前者 と比較 して消化の状態が よい.土中バ クテ リヤの効果が もっとあるものと期待 したが,土 との接解面が少な くそれほどの結果は出なか った. しか し 実用化 した とき,一番現実に近い状腰に置いた⑧即ち,下水を混合 した試料に櫨材を使用 し た ものは
, 5週で
8.50%, 7過では
7.69%まで消化が進み,消化槽に残 る固形物はほんのわ ずかになって しま う.
図
3は
,600oCでの強熱残留物を前図 と同様に百分率で示 した ものである.‑掛 こ無横物 量 とされ る強熱残留物は,スター ト時の試料重量に対 し,
1.27‑0.91%の範囲に一定 して し ま う. この現象は消化を初めてか ら
4‑ 5週間 とみることができる.以上 の結果か ら消化槽 内における汚泥消化期間は,約
1ケ月間ではば完了す るとみることができる.
1週 3遜 5週 7週
図3
試料の強熱残留物の変化
次に設置場所,温度条件に対 してどの ような消化の変化を示すかみた.最適温度
25oCと され る
Mucorracemosusの繁殖が一番盛んであった高温状態
(30oC)に置いた ものが
,3遇 までは一番良好であった.次いで消化状態の良かったものが常温下での暗室である.
写真
1は,屋外の地面に埋め込んだ消化槽の
3日目(Ⅰ)と5週(Ⅱ)のものである.試料 と
として学校の下水処理場に流入す る下水を取 り
,0.088のフルイによっ七水を切 った も の を
使用 した・波材 として軽石 ( 最大径
25mm)を使用 し,減材が完全に隠れ るように,平 均 厚
さ
1.5cmに試料を敷いた・容器は
,33×18×23cmの ものに
¢1.7cmの穴を側壁,底 に計
42ケあけ土 と接触できるように した.
3日目でほ とんど乾燥状態にな り,試料の薄い ところでは波材の表面が少 し出は じめている
・ 5週の槽内は大部分 の淀材が見え,試料の厚か った と
写真 1 人他に拙め込んだ7 円化脚
写真
2光学顕微鏡による試料中の微生物
ころは手で取 る と板状に剥離す る状態 とな る.埋めた上 に ビニールで召ひを し, その まま放
置 したため,槽 内,土共 に乾燥状態 になって しまったが, 図
2で示す よ うに,湿潤状態 にす
れば もっと消化は促進 され るもの と思われ る.
好気性分解を利用した汚泥処理について
87光学新教鏡,歩査型電 子顕微鏡 に よる微生物.
写英 2 は光学顕微鏡 に よるものであ り,写真
3は走査型電子顕微鏡 に よる観察 写 J 共 で あ る
.帆) ,( B)は
MucorraCemosusの胞子の う.胞子 の うは無 色,成熟 と共 に褐 色 とな り
80F L m くらい まで成 長す る
・h) は 1遇 の試料中にあ り,丸 く弾 力に富んでいたのに対 し
,(B)紘
7週 の ものであ り,は りとい うか勢 いが見 られ ない.土壌,食品に繁殖 し,位適温皮は2
0‑25oC
とされ ている.
(C)〜(Ⅰ かまいずれ も菌糸の写茄 である.
(C),a ) ) は透 明で縦 に筋があ り,隔 壁が見あた らないことか ら荘西原だ とい うことが いえる.D) は解体分裂 してい くところか.
( E) (
まGeotrichum ca†7didl川7Link.隔壁が見 られ ふた また状に分岐 してい る.伸びた先 端が順 次解休 され てい く. まだ発
過小 とい うところか.( 1 加
え3過 の⑤ に発/ J iした も の で あ る.色は棚如 色のカ ビで陥憎があ り,胞 T fが外化r f t Jであ るので不r J J d J t僻の 一
椛 PenlciL/ium citri刑/mではないか とJ r E u))Lる.
建 溌 鞄 花 j ' ・ 鮒徴税 の' / JJfについT . (I / ]J
t3)r r . .
IE 好
転 ま 主監 蓮
写真
3走査型電子顕徴掛 こよる試料中の微生物 ( 単位
〃m)船は試料中に群生 した菌糸.高温条件 の消化槽に見 られた ものである. 1万倍に拡大 した ものを見 ると,菌糸の表面はなめ らかだ った り,租かった りしていたが,胞子の うらしき物 は見 られなかった. どの消化槽にも見られたカビである.㈱は消化 された残飯 と,それに繁 殖 して仮板を延ば しているカビ.( 工 ) は常温条件のものに繁殖 したカビで,肉限では白 く見え る.印はその拡大写真.胞子の大 きさは数 ミクロンで,菌糸体 と分生子柄 の混在 した徴密な 菌糸層か ら成 る.菌糸全体に胞子が付着 しているように見える. また,胞子はす りはち状に なっている.任 訓ま菌糸はね じれた ような状態になっているのが特徴で,長 さは
100‑200ミク ロン短いもので も
50ミクロンくらいになる
.任Jはその拡大写真である. この胞子 もす りはち 型を してお り,一粒 の大 きさは 5‑ 6ミクロンである.最後の 2種は種別はっき りさせ るこ とはできなかったが,前者は
PemiciLliumfuniculosum,後者のそれは
Penicilliumcity・ inumではないか と思われ る.
4.あ と が き
現在行われている下水処理過程において,液部の処理 と汚泥処理 とを逆にするとい う提案 である.特に家庭下水を一戸毎に行 う場合は より有効 と思われ る.実際には汚泥消化槽の大 きさ,その数を考慮 しな くてはな らない.槽の数は,汚泥の消化時間が必要であるか ら最低
2槽が必要であ り,それを並列に配置す ることになる. この消化槽に下水が横流 れ に 流 入 し,固形物は滅層上 に巻 き出す よ うに推積 していr (. このような状態で一つの消化槽が汚泥 で満たされると,下水を次の消化槽に導 く.前の消化槽は汚泥消化のため休養させる.液部 の処理をする前にこの汚泥消化槽を通す ことにより,固形物のみでな く
,BODも
35'‑40%除去 され ることも判 り,後の液部の処理 に好影響を与えることがわか った.消化槽に繁殖す る微生物については,同定は困難であったが・ どのような生物が汚泥消化に適 しているか, また,それに培養 して植 え付けをす ることが可能かを試み よ うと思 った か ら で ある.そ し て,大規模処理場においても応用で きないものか も今後の課題である.農山村にまで水質悪 化が広が り,生活排水を放置できないし,公共下水道の使用 まで時間がかか り過 ぎる現在, 身近な ところか ら水を元に戻す必要があると思 う.
最後に本実験にあた り御協力いただいた,卒業生の中村豊文,丸山純一両氏に謝意を表 し ます.
参 考 文 献
1)
日本下水道協会 下水試験方法
2)
宇田川俊一,松田良夫監沢
食 品菌穎‑ソ ドブ ック医歯薬出版
3)高橋甫他共 沢微生物学入門嗣 培風館
4)有馬啓 ・田村学造
生物に よる環境浄化 東京大学出版会
5)井 出哲夫水処理工学 一理論 と応用一 技報堂
6)上保直秀