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母子生活支援施設による母子家庭の地域生活支援に 関する一考察

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Academic year: 2021

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第13回 新潟医療福祉学会学術集会

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母子生活支援施設による母子家庭の地域生活支援に 関する一考察

新潟医療福祉大学社会福祉学科・栁田真実,豊田保

【背景】

近年,離婚率や婚外子の増加により,生別の母子世帯が増 加している.厚生労働省の行った 2011(平成 23)年度調査に よると,母子世帯数は 123 万世帯を超えている.若い母親や 小さい子どもを抱えた母子世帯は,不安定な就業・収入によ り,貧困状態に陥りがちであり,生活状況は厳しい現状にあ るといえる.

これに対して,国は様々な母子家庭支援策を展開している が,そのひとつに母子生活支援施設がある.母子生活支援施 設は,母と子が一緒に生活できる唯一の児童福祉施設であり,

入所者の保護と生活支援,退所者への相談等を行っている.

入所者の抱える課題は,夫等からの暴力(ドメスティック・

バイオレンス)被害や母親・子どもの心身の障害など,複雑 多様化してきている傾向にある.しかし,入所者の在所期間 は短期間化しており,母と子が抱える課題を全て解決して退 所しているとは言い切れないのが現実である.

こうしたなかで,母子生活支援施設は歴史的にも多岐に渡 る支援内容とネットワークを有しているため,退所後のアフ ターケアを含め,地域で生活するひとり親世帯を支援する拠 点となるべく機能の充実と現代化を図る必要があると考える.

しかし,母子生活支援施設の役割に関する先行研究は数少な いのが現状である.アフターケアの必要性などについては指 摘されているが,母子生活支援施設による母子家庭に対する 地域生活支援の具体的なあり方に関する研究はほとんど行わ れていないのが現状である.

【方法】

そこで本発表では,今後の母子生活支援施設が行う母子家 庭に対する地域生活支援の必要性に焦点をあて,文献調査と インタビュー調査を行った.文献調査では,母子世帯のおか れている状況と,母子生活支援施設の現状について整理した.

インタビュー調査では,母子生活支援施設が行うことができ る母子家庭の地域生活支援は何か,どのような形で地域社会 との関わりを強化することができるのかを考察することを目 的とした.

インタビュー調査は,母子家庭の地域生活支援を積極的に 行っている,千葉県と東京都にある母子生活支援施設の施設 長及び職員を対象に実施した.インタビュー項目は,①地域 の母子世帯に対する支援内容,②地域住民との関わり,③関 係機関との連携,④アフターケアの取り組み,⑤母子家庭に 対する地域生活支援を行うことの意義などの項目を挙げ,半 構造化インタビューとして実施した.

【結果】

インタビュー結果からは,母子家庭に対する地域生活支援 を行ううえで重要なポイントは,母子生活支援施設について の「地域住民の理解」と「関係機関との連携」であることが 見出された.

インタビュー結果からは,母子生活支援施設や母子世帯に 対する偏見が存在していることが語られたが,施設の機能が 正しく地域住民や利用者に理解されていないと,支援を必要 とする母子世帯が施設の利用を躊躇する可能性が生まれるこ とになる.施設および利用者が地域社会の中の一員であると の理解を得るためには,施設職員による地域活動への参加や,

地域住民をボランティアとして受け入れるなど,地域住民に 対する働きかけを行っていく必要があると指摘できる.

また,地域社会で何の支援も受けずに埋もれている母子世 帯の存在も把握できた.このような個別のニーズを捉えられ るのは,母子生活支援施設よりも学校や福祉事務所などの諸 機関であるといえる.したがって,地域社会で潜在化してい る支援ニーズを抱えた母子を支援につなげるためには,支援 にかかわる関係機関相互の連携は欠かせないものである.

【考察】

母子生活支援施設による母子世帯の地域生活支援について は,2012(平成 24)年に策定された「母子生活支援施設運営 指針」(厚生労働省)においてその内容が明記され,今後の展 開が期待されているところである.この地域生活支援の第一 歩は,母子世帯の地域生活上の支援ニーズを適切に把握する ことである.そして,ニーズの把握に基づいた具体的な支援 の内容については,ニーズに合わせた具体的な,大都市なの か地方小都市なのかなどの地域社会の状況や,母子生活支援 施設の理念や方針により異なるため,一概には普遍化できな いものであるが,積極的な地域生活支援を展開していく必要 性が主張できる.

【結論】

本発表は首都圏の母子生活支援施設の一部を対象とした調 査に基づくものである.母子生活支援施設による母子世帯に 対する地域生活支援が,より有効に機能し利用者に活用され るためには,施設利用・退所者や地域住民,関係機関への調 査に基づいた,母子世帯のニーズの把握と地域社会における 関係機関の相互連携,母子生活支援施設の母子世帯に対する 地域生活支援機能の強化が求められるといえる.そのことを 前提にした母子生活支援施設の運営が,今日,強く求められ ているところである.

P-28

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