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遺伝的アルゴリズムによる2次元構造物の最適設計 藪

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(1)

遺伝的アルゴリズムによる2次元構造物の最適設計

忠司・武田稔也*

OptimizatiOnDeSignofTwo‑dimenSiOnalStructures UsingGeneticAl雪Orithm

TadashiSoandToshiyaTAKEDA (1998年11月30日受理)

Varioustypesofoptimizationmethods,whichareusuallymodelvolumeminimization methods,havebeenproposedinthefieldofstructuraldesign. Amongthese, theGenetic Algorithm(GA)isexpectedtobeoneofthemosthopefulones.AuthorsappliedGAtotwo typesofmodels, two‑dimensional trussesandplanestressmodels,usingafiniteelement methodasananalysismethod,andexaminedthebasiccharacteristicsandthevalidityofthis method.Designparametersarethecross‑sectionalareafortheformer,andthethicknessfor thelatter.Astheresultsofanalyses,nearlyoptimumsolutionswerefoundtobeobtained steadilyandfairlysmoothly.

1 .緒

にするような最適化(最小化)問題に対して現在ま

でにさまざまな手法が提案されてきている。本研究 で用いるGAはそのような手法の一つであり,生物 進化の特徴を計算機上で実現したアルゴリズムであ

るといえる。

GAによる最適化の手順をおおまかに述べると以 下の通りである。

1)設計変数を2進数でモデル化した「染色体」を 設計変数の数だけつなぎあわせたものを「遺伝子」

という。GAでは乱数を利用して最適解の候補と なる幾つかの遺伝子をまず発生させる。

2)それぞれの遺伝子の環境への適応度を調べる。

3)適応度の大きさに応じて遺伝子の「淘汰」や「再 生産」を繰り返して解の改良を図るとともに,生 物進化と同様に「交叉」や「突然変異」という遺 伝子操作を行なって解の多様化を図る。

これまで最適構造設計に関して数多くの研究が行 われ,おびただしい数の最適化アルゴリズムが開発 されてきた。これらの中で重要な位置を占めるのは 数理計画法であろうが, この手法では

・最小化しようとする目的関数の微分値を計算する 必要がある

・多峰性の問題では真の最適解に達成できない 等の欠点を有するものが多かった。

最近注目されている遺伝的アルゴリズム')

(GeneticAlgorithm,以下GAで表す)は数理計画 法のような確定的な手法ではなくて確率的な手法で ある。この手法では最適化の過程でそれほど複雑な 計算を必要とせず, また制約条件と目的関数のみを 用いて最適解を探索できるなど極めて魅力的な手法 である, といえる。本研究では, この遺伝的アルゴ リズムを体積最小化問題に適用し, その有効性を考 察する。

GAはこのようにこれまでの最適化手法とは考え 方が大きく異なっており, その特徴を取りまとめる

と以下の通りである。

1)解の探索は上述のように2進数にコード化した 遺伝子を用いて行う。

2)一点探索ではなく多点探索である。

3)解の評価には目的関数値のみを用い,その微分 値などは用いない。

2.遺伝的アルゴリズムの概要

ある制約条件のもとで与えられた目的関数を最小

*北陸先端科学技術大学院大学

(2)

遺伝的アルゴリズムによる2次元構造物の最適設計

4)確定的ではなく,確率的な方法である。

このような特徴からも明らかなように,GAは与 えられた問題が数理的に明碓に記述できない場合で も解くことができ, また多数の点での同時探索法で あることから,多峰性の強い問題に対しても大局的 最適解かそれに近い解候補を見出すことができ

る2)。

次節ではGAにおける主要なパラメータである 再生産,交叉,突然変異の代表的な手法を紹介する。

ゴリズムは次の通りである。まず,交叉の対象とな る2つの親遺伝子をランダムに選出する。そして図

2のように親1,親2のビット列上で交叉点 をランダムに一箇所選び,交叉点以降の親のビット 列をそっくりそのまま交換して子1,子2を生成す

る。これを定められた交叉率Pcだけ繰り返す。

2. 3 突然変異

突然変異とは次世代に移りゆく過程で生じる偶発 的な遺伝子の組み替えである。GAでは全ての遺伝 子配列の中から突然変異点をランダムに抽出し, の突然変異点の値を反転(O→1, 1→O)させる。

これを定められた突然変異率Pmだけ繰り返す。こ れにより交叉だけでは生成できない子を生成して,

個体群の多様性を維持する働きをする。突然変異の 例は図3の通りである。

2. 1 再生産

再生産では,各遺伝子を次世代に移す過程で,残 すべきかどうかを決定する作業を行う。このための 一般的な手法の一つであるルーレット選択法につい て説明すると, まず各遺伝子の適応度fiが全体の中 で相対的にどれくらいの割合(fi/Zfi)を占めるかを 計算し, その割合に応じて図1のようなルーレット

を作る。

次に矢に見立てた乱数を遺伝子の集団の数だけ発 生させ,矢の当たった個体を次世代に生き残らせる。

この方法ではルーレットの占有面積の広いもの,

つまりfi/Zfiの値の大きいものほど生き残る確率 が高く,小さいものはこの段階で淘汰される。

3.GAによる最適構造設計

本研究では解析手法として有限要素法を,最適化 手法としてGAを用い,それらを組み合わせて2次 元トラスと平面応力モデルの最適化(体積最小化)

を行なう。

癬灘

11墓1010

図3

‑11義1010

突然変異 2. 2

遺伝子の集団の中から任意に2つの親遺伝子を複 数組選択し,それを交配させることによって親とは 異なった遺伝子を生成するのが交叉である。交叉法 には一点交叉,多点交叉,一様交叉などがある3)が,

ここでは本研究で用いた一点交叉について説明す る。

一点交叉は最も単純な交叉規則であり, そのアル

︑ソ

図1 再牛産のためのルーレットホイール

親1 : 1100 0001 子1 : 1100

1010 子2: 1011 図2 一点交叉

1010

親2: 1011 0001

図4 3部材トラスにおけるコード化

個体i f;/Zfi

1 0. 13

2 0. 27

3 0. 08

4 0. 18

5 0. 34

要素番号 1 2 3

5 7 10

断面積の2進化 0101 0111 1010

010101111010

(3)

GAを適用するに際しては表現型(表に現れたモ デルの特質)を遺伝子型(遺伝子の構造)に変換す る過程が重要である。本研究の場合,平面モデルの 表現型はモデルの板厚分布, トラスモデルでは断面 積の分布を意味する。表現型から遺伝子型に写像す ることをコード化,逆に遺伝子型から表現型に逆写 像することをデコード化4)といい,図4の3部材ト

ラスを例にとって, コード化の方法を説明すると次 のようである。

図4のように各要素の断面積を要素番号の順に並 べ, それを2進数で表してつなぎあわせたものがこ のトラス構造の遺伝子となる。お互いに遺伝子構造 が(したがって断面積分布が)異なるこのような遺 伝子が人ロサイズの数だけあり, それらが1つの世 代の遺伝子集合を構成する。デコード化の場合はこ の逆で,遺伝子型を各設計変数に対応する2進数に 分離し, そのそれぞれを10進数に戻して表現型であ

る各要素の断面積(板厚)を求める。

このような遺伝子を有する各解候補モデルに対し て有限要素解析を行い,例えば応力制約条件の場合,

応力の制約値Obと解析で得られた個体jの第i評 価点の応力oii(i=1,…,n),および最小化の対象で あるモデル体積vを用いて次のような適応関数の 値を個体毎に計算する。ここで,nは応力評価点の数 であるとする。

"=I/j+Z{H(蛾−0も)×(蛾一晩)×P}

j=1

また,H(のi−a)はステップ関数であり H(蛾一晩)=0(蛾≦暁)

=1(蛾>晩)

とする。

Pはペナルテイパラメータであるが, この値を大 きくしすぎると許容領域と非許容領域の境界付近の 重要な解候補を排除する可能性があり, また小さく

し過ぎると制約条件を破った解が選ばれる可能性が ある。適当なペナルティパラメータとGAパラメー タを選び,有限要素解析とGAとを繰り返せば,最 終的に制約条件を満たし,かつ体積最小の解が得ら れることになる。

︑/

︑/

図5 9部材トラス

表1 最適化後の断面積と応力値(9部材トラス)

重W=1000N,ヤング率100GPaとしてまずこの モデルに対して解析を行い,得られた最大応力値200 MPaを最適化における応力の制約値とした。可変 量は断面積とし,その範囲を1, 2,…, 15mm2の 15段階に設定した。GAにおける各パラメータを以 下に示す。

個体数 N=60

世代数 G=50

交叉率 Pc=0.3 突然変異率 Pm=0.01 ペナルティパラメータP=100.

表1にGAにより最適化されたモデルの断面積 と応力値を示す。この表からわかる通り,余剰部材 である要素番号8を除いて各トラス要素の応力は制 約値にほぼ一致しており,最適な断面積分布が得ら れていることがわかる。要素3と要素7では応力値 が若干制約値を破っているが, これは断面積として 整数値を使用しているためであり,断面積を1mm2 増やすことによる体積増加よりも,制約条件を破る ことによるペナルティ量の方が小さい結果, このよ うな最終解に落ち着いたものと思われる。

4. 2次元トラスモデルの最適化

GAの最適化手法としての有効性について考察す るために, まず図5の9部材トラスモデルを用いて モデル体積vの最小化を試みた。初期形状(基準モ デル)は,断面積一定(10mm2)のモデルであり,荷

5.平面応力モデルの最適化

図6に示すような高さ一様な片持ちばりの板厚分 布最適化問題を考える。荷重の逆対称性を利用して 要素番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9

断面積( 2) 5 10 7 5 5 5 7 1 5

応力(HPa) 2伽 200 202 200 200 2伽 202 0 2伽

(4)

遺伝的アルゴリズムによる2次元構造物の最適設計

図6 片持ちばりモデル

はりの上半部(斜線部)のみを解析モデルに選び,

これに有限要素法による応力・変形解析とGA操作 を繰り返すことによって,モデル体積を最小化する。

以下に3ケースの解析例を示すが,設計変数はいず れの場合も要素の板厚である。

図7 最終時の板厚分布(5.1のモデル)

︵EE︶

5. 1 板厚分布の高さ方向最適化

解析モデルを高さ方向5層,長手方向10層の要素 に分割し, まず高さ方向にのみ板厚を変化させる場 合を考える。 2進数に変換する必要から,板厚は1 mmから15mmまでの15段階の整数値とする。な お,材料定数はヤング率206GPa,ポアソン比0.3と

し,荷重条件はW=49Nとする。

制約条件は本項では変位制約条件とする。GAに よる最適化を実施するに先だって, まず板厚が一様 (5mm)な基準モデルに対して上記と同じ条件で 有限要素解析を行い,得られた荷重点の変位6=

0.109(mm)を制約値眺として採用することとし た。

用いたGAパラメータは以下の通りである。

個体数 N=60

世代数 G=50

交叉率 Pc=0.3 突然変異率 Pm=0.01 ペナルティパラメータP=500,000 最適化の結果得られた板厚の分布を図7に示す。

このモデルに対する最適断面形状はT字形(全体で はI形)になるであろうが,図のモデルでは第2層の 厚みが十分小さくなっていない。これは,はりの長 さに対して高さが比較的高いため,せん断力の影響 が無視できなかったためと考えられる。そこで, デル内にせん断応力が作用しないように,端面に曲 げモーメント荷重を加えて同様な最適化を実施した ところ,最適形状としてT字形が得られることがわ

睡辱

図8 最終時の板厚分布(5.2のモデル)

かつた。これにより,図7の解がせん断力の影響を 受けていることが確認できた。

5. 2 板厚分布の長手方向最適化

要素分割数や材料定数,境界条件,制約条件の与 え方等は5. 1と同一とし,ここでは長手方向の板厚 分布の最適化を行う。GAパラメータの変更点は世 代数Gを100に,ペナルティパラメータPを106に増 加させたことである。

最適化の結果得られた板厚分布を図8に示す。板 厚を整数値に限定していることもあり, 固定端から 先端に向かって板厚力訂滑らかに減少しているとはい えないが,先端にいくほど板厚が小さくなる傾向は よく表現できている。最終解の体積は基準モデルの

(5)

086420︵EE︶睡辱

950

蝉900

固定部

鐘850

800

1卜 外表面

I+』750

700 中立面

先端部

650

図10最終時の板厚分布(5.3のモデル)

600

20 40

0 加代

60

突然変異率を0.005と小さくした場合には,第50世

代における解の多様性がほとんどなく,問題によ っては局所解に陥る可能性力ざあることがわかっ た。

4)個体数の変化は収束性にほとんど影響しなかっ た。 しかしながら,更に大規模な問題を扱った場 合には重要なパラメータになるものと考えられ

る。

図9 交叉率による収束性の変化

86%であり, 14%の軽量化を図ることができた。

このモデルに対しては各GAパラメータを変化 させ,解の収束性がどのように変化するかを調べた。

図9は縦軸にモデル体積,横軸に世代数をとって,

交叉率が解の収束性に及ぼす影響を示したものであ る。この図からわかるように,交叉率が大きすぎて も小さすぎても最適解への収束が得られておらず,

GAにおいて交叉率の設定が極めて重要であること が確認された。最適解が得られたのは交叉率Pc=

0.3の場合であった。この原因としては,交叉率が小 さいと解の多様化が図れないからであり, また大き くし過ぎると, ある程度世代が進んだときに,せっ かく得られた適応度の高い遺伝子を壊してしまう可 能性が高くなるためである, と考えられる。

他のパラメータの影響については図を示していな いが,得られた知見を取りまとめると以下の通りで ある。

1)ペナルティパラメータの値を大きくすると,解 の収束速度は遅くなり,最適解に収束しづらくな る。 しかしながら, この値を小さくし過ぎると,

制約を破る解が最適解になる可能性があり, した がってこのパラメータについても適当な値の設定 が重要である。

2)突然変異率を0.005から0.015まで変化させた 力笥, その範囲では収束性への影響はほとんど認め

られなかった。

3) しかしながら,世代ごとの解の分布を見ると,

5. 3 高さ・長手両方向に板厚を変化させる場合 ここでは,はりモデルの全ての要素の板厚を独立 に変化させて,モデル体積の最小化を行う。ただし,

問題の規模を減らすために,要素分割数は高さ,長 さ方向とも5分割とする。用いたGAパラメータは 以下の通りである。

個体数 N=60

世代数 G=100

交叉率 Pc=0.3

突然変異率 Pm=0.01 ペナルテイパラメータP=300.

GAによって最適化を行った結果,板厚分布は図 10のようになった。固定部の要素の板厚がまだ完全 には最適化されていないが, それでも外表面の板厚 が卓越しており, それが固定部から先端部に行くに した力§って徐々に小さくなるという傾向はよく表現 されている。荷重点変位を同一にした場合の体積は 基準モデルの約40%であった。

I

■00 l・P

0

0

交叉率CccCPPPP 一一一一一一一一 0000 ●●●● 2345

一一

嘘 聯、

●馬

一らぺく.……….●I■■■■■■■■■■■■■■■■ D 1

(6)

遺伝的アルゴリズムによる2次元構造物の最適設計

6.結 を短縮する等の手法も検討したいと考えている。

2次元トラスと平面応力モデルの最適設計を行 参考文献 い,最適構造設計におけるGAの有効性を確認し た。その結果比較的少ない繰り返し数で,応力やた わみを制約値以下に抑えつつ,体積を大幅に減らせ ることがわかった。今後より実際的な問題への適用 力§考えられるが,本研究で用いたアルゴリズムは基 本的なものであり,種々の改良が必要であろう。特 に大規模な問題を解く場合には解析時間の大幅な増 加が予想されるため,最適化アルゴリズムを改良す るとともに,並列処理を行うことによって解析時間

1)例えば嘉数他訳,遺伝的アルゴリズムハンドブ ック,森北出版, 1994.

2)尾田, 日本機械学会講習会「新しい最適化手法 とその応用」教材No.930‑59,57,1993.

3)例えば坂和・田中,遺伝的アルゴリズム,朝倉 書店, 1995,25.

4)古田・杉本,遺伝的アルゴリズムの構造工学へ の応用,森北出版, 1997,3.

参照

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