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「公共的差止訴訟」 における 救済過程 の構造 とその展開(1)

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(1)

救済過程 の構造 とその展開( 1 )

‑ アメ リカにお け る 「 公共 的 イ ン ジャ ンク シ ョン訴訟」 につ いて ‑

・ 川 嶋 四 郎

目 次

第 1 章 序論

一 問題 の提起 ‑ 第

1

節 は じめに 第 2 節 私見の概略 第

3

節 考察 の視角

2

章 「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」 事件 の典型例

‑ その生成 と展開 ‑ 第

1

節 は じめに 第

2

Brown

事件 第

3

Wyat

t事件

第 4 節 若干 の分析 ( 以上本号) 第

3

章 救済方法の形成過程

第 4 章 救済方法の実現過程

5

章 救済方法の形成および実現 に対す るコン トロール 第

6

章 一般的特質 と 「 公共的 イ ンジャンクション」

7

結論

‑ 「 救済法」 の構造 と日本法への示唆 一 一 一 「

1

章 序論

‑ 問題 の提起

1

節 は じめに

‑ 問題 の所 在 ‑

現代社会 に生起す る種々の新 しい類型の紛争を,で きる限 り多 くの人々が納

〔33

(2)

得 で き るか た ちで公 正 か つ合 理 的 に解 決 し, そ の被 害 者 を適 切 に救 済 す る こ と の で き る最 善 の裁 判 シス テ ムを考 案 す る こ とは, 今 日, わ た く した ち に課 され た大 きな課 題 で あ る

世 界 各 国 の司法 的 な紛 争 解 決 制 度 は, 新 た な紛 争 や課 題 に直面 し, あ る もの は果 敢 に ま た あ る もの は慎 重 に, 模 索 と決 断 とを繰 り返 し つ つ, この課 題 と取 り組 ん で い るの で あ る

(

1 ) 。

この よ うな状 況 は, 程 度 の差 こそ あれ, 我 が国 で もそ の基 調 にお いて異 な る と ころ はな い。 そ れ を最 も端 的 に表 現 す る もの の ひ とつ と して, 学 界 にお け る

「公 共 訴 訟

「現 代 型 訴 訟

「政 策 志 向型 訴 訟

「不 法 行 為 型 訴 訟 」 な どを め ぐる 議 論 ( 2 ) を挙 げ る こ とが で き るで あ ろ う。今 日,この種 の議 論 を通 じて,我 が国 に

( 1 ) たとえば,マウロ ・カペ レッティ編 ( 小島武司‑谷 口安平編訳)『 裁判 ・紛争処理の 比較研究 ‑ アクセス ・トゥ ・ジャステ ィス ・プロジェク ト‑ ( 上) ( 下)』 ( 中央 大学出版部

1982,1985)

などを参照。

(2)

たとえば,裁判所の政策形成機能 に関す るものを も含めて,以下の ものを挙 げるこ とがで きる。小島武司 「 公共訴訟の法理

民事訴訟 の基礎法理

』113

頁 ( 有斐閣

1988

,初出

1977)

,同 「 司法の本質 と課題」小島武司編 『 現代裁判法

』3

頁 ( 三嶺 書房

1987)

,同 「 現代型訴訟の役割 と特質」三 ケ月章 ‑青山善充編 『 民事訴訟法の 争点 〔 新版〕

』28

頁 ( 有斐閣

1988)

など,伊藤真 「 裁判の効力論

『ジュ リス ト』

731

151

(198

1 ) ,同 「 民事訴訟 における人間

基本法学

1

〔 人〕

』205

貢 ( 岩 波書店

1983)

など, 田中成明 「 現代政治 と裁判の役割 ‑ 司法的政策形成をめ ぐって ‑

裁判をめ ぐる法 と政治

』117

頁 ( 有斐閣

1979

,初出

1974)

,同 「 裁 判の特質 と機能

現代法理論

』136

頁 ( 有斐閣

1984)

,同 「 現代 における裁判の機 能 の拡大 ‑ その現況 と正統性 に関す る一考察 ‑

公法研究

』46

90

頁,

(1984)

,同 「 権利の生成 と裁判 の役割 について ‑ 裁判の政策形成機能 の観点か ら

法学論叢 ( 京都大学)

』116

1…6

合併号

37

1頁

(1985)

,同 「 現代 におけ る裁判 の機能

現代 日本法の構図

』166

貢 ( 筑摩書房

1987)

など,棚瀬孝雄 「 裁 判 の政策形成機能 と紛争処理機能

民商法雑誌

』75

1

51

(1976)

,同 「 裁判 をめ ぐるイ ンフルエ ンス活動」

島武宣編 『 法社会学琴座

5

〔 紛争解決 と法

1

』306

頁 ( 岩波書店

1972)

など,兼子‑ ‑竹下守夫 『 裁判法 〔 新版再版〕

』2

頁 ( 有斐閣

1983)

,平井宜雄 「 現代法律学の課題

社会科学への招待 /法律学

』7

頁 (日本評 論社

1979)

,同 『 現代不法行為理論の‑展望

』66

頁 ( 一粒社

1980)

,納谷虞美 「 不 法行為型訴訟 に関す る一考察 ‑ 過失責任をめ ぐる諸問題 ‑

法律論叢 ( 明治大

学)

』52

5

1

(1980)

,同 「 現代型訴訟の特殊問題」中野貞一郎編 『 現代民事 訴訟法入門

』127

貢 ( 法律文化社

1985)

,同 「 民事訴訟 の現代的課題への対応

事訴訟雑誌

』34

163貢 (1988)

,松浦馨 「 民事訴訟 による新幹線公害紛争解決 とそ

の限界

法律時報

』52

1

1号

20貢 (1980)

,新堂幸司 「 民事訴訟 の目的論か らな

(3)

おける裁判制度の果たすべき役割や機能が再検討 され始めてお り,その成果 い かんでは,近 い将来裁判制度 自体の鼎の軽重が問われると言 って も,決 して過 言ではないのである。

しか しなが ら周知のように,現在, とりわけ諸種の裁判例 において,大規模 な公害 ・環境被害か らの救済を求 めて提起 された差止訴訟 ( 以下では 「 公共的 差止訴訟」 と呼ぶ。) は, ほとん ど被害者救済の実効的な成果を上げてはいな い。 これは, たとえば大阪空港訴訟最高裁判決

(3)

や東海道新幹線訴訟名古屋高 裁判決( 4 ) の 「 結果」を見れば,明 らかである。そこには,確かに,単 に訴訟手続

にを学ぶか

(6)(7)

『月刊 ・法学教室

』6

38

貢,

7

49貢 (198

1 ),同 「 現代型訴 訟 とその役割

『基本法学

8

〔 紛争

』305

頁 ( 岩波書店

1983)

,上原敏夫 「 現代型 訴訟」小島武司編著 『 民事訴訟法

100

』27

貢 ( 学陽書房

1984)

,声部信書 「 憲法 言 斥訟 における裁判所 の政策形成機能 ‑ 最高裁判所 と憲法の原理 ‑

憲法訴訟

の現代的展開

』141

頁 ( 有斐閣

198

1 ,初出

1977)

,和 田英夫 「 公共的利益 と公共 的訴訟 (

1)(2

・完)

『法律論叢 ( 明治大学)

』56

2

29

,3

73

(1983)

, 同 「 裁判官の法形成機能 とその限界 ‑ 訴訟制度の機能的考察 の一側面 ‑

法律

論叢 ( 明治大学)

』57

1・2

合併号

(1984)

( 以上 は後 に同 『 行政委員会 と行政訴 訟制度』 ( 弘文堂

1985)

に所収),大林文敏 「アメ リカにおける裁判所の政策形成 機能 について

沖縄法学

』7

1

貢 (1979)

,同 「アメ リカにおける判決 のイ ンパ ク ト研究序説

沖縄法学

』8

1

(1980)

,同 「アメ リカ公法 と司法的政策形成 論

沖縄法学

』1

0号 1頁

(1982)

,同 「 憲法判断のイ ンパ ク ト論」声部信書編 『 講 座 ・憲法訴訟 ( 第

3

巻)

』261

貢 ( 有斐閣

1987)

,武士俣敦 「 司法的政策形成過程 の 分析 ‑ ブラウン ・ケースを対象 と して ‑

『 東京都立大学法学会雑誌

』25

1

319

(1984)

, 同 「 米国 における判決 のイ ンパ ク ト研究 ‑ 理論化への動 き

『法律時報

』58

巻 1号

117

(1986)

,佐藤幸治 「 現代国家 と司法権

現代国

家 と司法権

』3

頁 ( 有斐閣

1988

,初出

1986‑87)

,佐藤幸治 ‑田中成明 「 司法 と裁判」『 現代法の焦点 ‑ 法感覚へのプロローグ‑

』98

頁 ( 有斐閣

1987)

,戸 松秀典 「 司法 の政策形成機能」声部信書編 『 講座 ・憲法訴訟 〔 第

3

』227

頁 ( 有 斐閣

1987)

,大沢秀介 『 現代型訴訟 の日米比較』 ( 弘文堂

1988)

などを参照。 な お,以上 の外 に,証拠法等の分野 に多 くの文献が存在す る。 さらに, アメ リカの公 共言 斥訟 に関す る文献 について は,後述註

13

,註

22

参照。

校正 中に, ディークー ・ライポノ レド ( 吉野正三郎 ‑水野五郎訳)「 判決効 と法形成」

『 立命館法学

』198

248

(1988)

に接 した。

(3)

最高裁昭和

56

(1981

年)

12

16

日大法廷判決 『 民集

』35

10

1.369

頁 〔 差止 請求却下〕 。

(4

) 名古屋高裁昭和

60

(1985

年)

4

12

日判決 『 判例時報

』1150

30

頁 〔 差止請

(4)

固有 の問題 だ けで はな く,様 々な実体法上 の問題 も含 まれて はい るが, しか し なが ら手 続 とい う 「 形式 」 が判決結 果 とい う 「内容」 を規定 して い る とい う面

も,決 して無 くはな いよ うに思 われ る ( 却下判決 で は勿論 だが,棄却判 決 で も その よ うに思 われ るので あ る。)。 この よ うな現状 にあ って, この種 の新 しい紛 争 を解決 す るための よ り適切 な手 続構造 一 訴訟 にお け る 「 救済過 程」 の構造

‑ を探求 し,最 善 の基 本 的手続 を案 出 し提 示 す る ことが,今 日まさに,わ た く した ちに不可避 的 に要請 されて い ると言 え るで あ ろ う

ところで, これ まで我 が国 にお いて, この課題 に取 り組 む業績 が,決 して皆 無 で あ ったわ けで はな い。否,竹下教 授

(5)

や上 村教 授

(6)

等 がか ねて よ り多 くの卓 抜 な論稿 を公 に されて来 たので あ る( 7 ) 。 しか し, その詳 論 は別 の機 会 に譲 らざ るをえ な いが

(8)

, 現在 の と ころ, その趣 旨が十分裁判 例 に反 映 され被 害者救済

求棄却〕。

(5)

たとえば,竹下守夫 「 不作為義務の強制執行」小山昇‑中野貞一郎‑松浦馨‑竹下 守夫編 『 演習民事訴訟法 ( 下)

』405

貢 ( 青林書院新社

1973)

,同 「 生活妨害の差止 と強制執行 ‑ 強制執行法案要綱案第 2 次試案における関連規定の検討 ‑

『 立 教法学

』13

1

(1974)

,同 「 差止請求の強制執行 と将来の損害賠償請求をめ ぐる 諸問題

『 判例時報

』797

30

(1976)

,同 「 生活妨害の差止 と強制執行 ・再論 ‑ 名古屋新幹線訴訟判決を機縁にして ‑

『 判例 タイムズ

』428

27

(198

1 )など

を参照。

(6)

たとえば,上村明広 「 不作為請求権に関する一問題

民商法雑誌 〔 末川先生追悼論

集 ・法 と権利

3』78

巻臨時増刊号

(3)49貢 (1978)

,同 「 不作為請求制度に関する一 考察

実体法 と手続法の交錯 〔 山木戸克己教授還暦記念〕

』36

頁 ( 有斐閣

1978)

, 同 「 差止請求訴訟の訴訟物に関する‑試論

岡山大学法学会雑誌

』28

3・4 合併

335

(1979)

,同 「 非金銭執行 ‑ 引渡 ・明渡執行,代替執行,間接強制 ‑ 」 新堂幸司‑竹下守夫編 『 民事執行法を学ぶ

』262

頁 ( 有斐閣

198

1 ) ,同 「 差止請求 訴訟の機能

『 講座 ・民事訴訟

2

〔 訴えの提起〕

』273

頁 ( 弘文堂

1984)

,同 「 差止 請求訴訟の問題点」三ケ月章‑青山善充編 『 民事訴訟法の争点 〔 新版

』32

頁 ( 有斐 閣

1988)

などを参照。

( 7 ) そのはかにも, これまでに多 くの論稿が公にされているが,日本法の現状 とその検 討は,別の機会に譲 らざるをえない。

(8)

これについては,拙稿

『 公共的差止訴訟』の基本的手続構造 ‑ 『 公共的差止訴訟』

の研究 ・序説

一橋論叢

』98

3

441

,443‑48

(1987)

で簡単に検

討 した。

(5)

が実 り多いものになっているとは到底言えないように思われ る。これは

,

「 公共 的差止訴訟

事件 のは らんでいる実体法上 の問題 に も起因す るものではある が,そこには,手続法の研究者 に技手傍観を許 さないなに ものかが潜んでいる ように も思われてな らない。

もとより 「 公共的差止訴訟」で解決が求 め られている紛争 は,決 して,唯一 訴訟的処理 にのみ馴染 みかつそのよ うな処理 が最適 な もの と言 うわけで もな い。む しろ,訴訟 は最後の手段である

したが って, この種の紛争を処理す る ための最適 な システムを考案 して行 くさいに も,たとえば小島教授のいわゆる

「 正義の総合 システム

」(9)

の中で,裁判外紛争処理 システムの全体を も視野 に入 れて論 じることが不可避 となるであろう

しか し,現在 その余裕を持 ち合わせ ていないわた くLは,以下では差 し当た り

,

「 正義 の総合 システム」の中核 とな

るべ き訴訟手続 に焦点を絞 って,考察を深 めて行 きたいと思 う

第 2 節 私見の概略

わた くLは, かって, この分野 に関す る先駆的な業績 に示唆を得て, 「 救済 法」の展開の下で,一定の広汎かつ抜本的な被害者救済の成果を上 げているア メ リカ法を参照 して,卑見を要約 して述べたことがある

(10)

。 そのさいには,能 力や紙数 などの関係か ら, 日本法の状況, アメ リカ法の状況 そ して私見 につい て,それぞれ十分 に論 じ切 ることがで きなか った。 そ こで,特 にこの中のアメ リカ法の状況 について,本稿で はやや詳 しく論 じ, まず,わた くしの責務の一 端を塞 ぐことに したい。

ところでわた くLは, その拙稿で, 「 公共的差止訴訟」 事件の特殊性 を抽出

(9)

たとえば,小島武司 「 正義の総合 システムを考え る‑ マクロ ・ジャステ ィス試論

民商法雑誌 〔 末川先生追悼論集 ・法 と権利

3』78

巻臨時増刊号

(3)1

(1978)

などを参照。

( 1 0 ) 拙稿 「 前掲論文

(

『公共的差止訴訟』の基本的手続構造

)

( 註

8)」441‑42

,457

‑58

貢,同

『 公共的差止訴訟』における差止判決 の修正 (

2

・完

)

『 民商法雑誌

97

5

653

,663‑67

(1988)

(6)

し,それを最 も適切 に反映 しうる基本的な手続構造

(

「 救済過程」) に関す る管 見の定立 を試みた。 それは,おおむね次 のよ うな ものであ った。

く「 公共的差止訴訟」事件 における最 も基本的でかつ顕著 な 「 救済方法の多様 性 とい う特殊性」 は,今 日に至 るまで ともすれば看過 されがちであ った。 その 特殊性 とは,ある権利侵害( l l ) に対す る具体的 な侵害排除手段 ( 異体的救済方法) が多数存在す るとい うものである

たとえば,不法 占拠事件 などの伝統的な訴 訟事件 とは対照的に,騒音等 の差止請求事件では,一旦被害者 の権利侵害が認 定 されて も, そ こか ら具体的救済方法が論理必然的 に導 き出 され るわけではな い。具体例 を東海道新幹線訴訟事件 に求 めれば,権利侵害排除 のための具体的 救済方法 として は, たとえば,防音壁の設置,列車 の減速運転 やその運行時間 の制限,車体や レール等 の設備 の改善 その他諸種 の騒音 ( 振動) の防止措置が 存在す るのである

ここでは,権利侵害 と具体的救済方法 との関係 が, いわば

1対多対応」の関係 にあると言 うことがで きるのである

したが って,その選 択 あ るいは組合わせをめ ぐって,裁判所や当事者 ( 特 に原告) は,伝統的 な訴 訟手続理論 によれば,腐心 を余儀無 くされ, その負担 に瑞 ぐことになるのであ る。 そ こで,多様 な具体的救済方法 の中か ら,当該事件 にお ける被害者救済 に 最適 な ものを選択 し形成 しうる基本的手続 ‑ 「 救済過程」‑ が,現行法 に用 意 されて いなければな らない。

この 「 救済方法 の多様性 とい う特殊性」を適切 に反映 しうる基本的な手続 は, 異体的救済方法を訴訟 ( 判決手続 および執行手続) の過程 を通 じて徐 々に具体 化 しうる融通無碍 な手続であるべ きである

それゆえ,まず判決手続 について は , 「 公共的差止訴訟」事件 を審理す るため の手続構造 として

「2

段階的裁判手続」 の妥当性が示唆 され る。すなわち, ま

(ll)

ここで言 う 「 権利侵害」 とは,民法

709

条 の 「 権利侵害」 の意義 に関す るいわゆる

大学湯事件 ( 大審院大正

14

(1925

年)

1

1月

28

日判決 『 民

』4

670

頁)で判

示 されたように

,

「 法律上保護 セ ラルルー ノ利益」 ( 同

676

頁) の侵害 という程度 の

意味で用 いている。

(7)

ず第

1

段階 として,迅速 に 「 権利侵害 についての判決」を言 い渡 し,次 に第

2

段階 として,そこで示 された救済方法を形成するための指針に基づ き,裁判所 は,両当事者等の主体的な関与の下で,立法事実類似の 「 社会的な事実」を収 集 ・評価 し,とりわけ被告の協力を も得て,具体的救済方法を形成 し

,

「 救済方 法 についての判決」を言 い渡す という手続が最適なのである。 この

「2

段階的 裁判手続」の理論構成 としては

,

「 公共的差止訴訟」における差止請求権の主張 杏,権利侵害についての確認請求権 と救済方法についての給付請求権 との客観 的併合 ( 民訴法

227

条) と見て, まず,一部判決 ( 民訴法

183

条)で 「 権利侵 害 についての判決」を言 い渡 し,次に残部判決で 「 救済方法 についての判決」

を言 い渡す という構成が妥当である。そのさい,一部判決 の部分が上訴 され上 訴審 に係属中の場合には,訴訟指揮 により残部判決に関す る審理 は停止 される べ きである ( 公害紛争処理法

42

条の

261

項および

42

条の

33

参照)。 なお,

「 公共的差止訴訟」事件では,救済方法が訴訟の過程を通 じて徐々に具体化 され るべ きであるので,申立事項の特定基準 は緩和 され るべ きである

さらに,執行手続 について も,間接強制 ( 民執法

172

条)の活用 により,倭 務者 ( 被告)に自発的に侵害排除手段を講 じさせ,それが効 を奏 しない場合に

は,債権者 は,授権決定手続を弾力的に活用 して,代替執行 ( 民執法

171

条) を申 し立てることができ, さらに,事情が変化 した場合 には,その授権決定手 続をいわば簡易な 「 判決 ( 債務名義)修正手続

(12

)とL して機能 させることによ

り,新 たな事態に俊敏かつ柔軟に対処できる途が開かれるべ きである。 ) 第

3

節 考察の視角

本稿では, このような私見の提言 に大 きな影響 と示唆を与えたアメ リカ法の

い た

い 。

(12)

拙稿 「 前掲論文

(

『 公共的差止訴訟』における差止判決 の修正

)

( 註

lo)」665

頁参

照 。

(8)

アメ リカでは

,1960

年代か ら,大規模 な公的制度 ・組織の改善を求 める新 し いタイプのイ ンジャンクション

(injunction)

訴訟 ( 以下では,これを 「 公共的 イ ンジャンクション訴訟 」 と呼び,その救済方法を 「 公共的イ ンジャンクショ ン」 と呼ぶ。)が出現 し,連邦裁判所の裁判官 ‑ そ して原告 ・被告等 ‑ は, 積極果敢 に大規模 な公的制度 ・組織の改革 と取 り組み,完聖 とは言 えないまで

も,一定の成果を収めて来 た。その舞台 となったのは,たとえば,公立学校に おける人種別学 の解消を求 める訴訟事件,州立の精神病院や刑務所の改善を求 める訴訟事件,環境保護訴訟事件 さらには雇用等 における差別の解消を求める 訴訟事件 などである

本稿 は,それ らに考察の素材を求 めた。 これは,一見 し たところプロクルステス式で牽強附会のように も思われ るが, しか し,それ ら の手続的な枠組みを,その実体的紛争類型か ら一旦離れて虚心坦懐 に眺めた場 合 に, そこか ら貴重 な示唆が得 られ ることが明 らかになる。比較法的な視点か ら,ある外国の制度 に範型を求める場合 には,確かに,我が国の実体的な紛争 類型 との同質性 ・共通性 ・類似性 を基礎 に して外国におけるその紛争解決制度 を参照す ることが,ある意味では最 も説得的であるように思われ る。 しか しな が ら,逆説的に言えば,実体的な紛争類型が異 なるか らこそ,実体法の梗椿か ら逃れて,新 たな視角か ら,共通の目的 ‑ 被害者 の救済 ・被害発生の防止 ‑ を達成す るための最適 な基本的手続構造 を創造す る契機を与えて くれ るように も思われるのである。従来か ら我が国 における 「 公共的差止訴訟」の問題 に取 り組んで来た先達( 1 3 ) は,比較法的には,我が国の民事訴訟法の母法である ドイ ツ法を参考 に して来た。その考察 も確かに不可欠ではあるが,本稿では,まず, これまでほとんど手続法学者の論述 の視野 に入れ られては来なか ったアメ リカ

(13)

竹下 「 前掲諸論文 ( 註

5)

」 ,上村 「 前掲諸文論 ( 註

6)

」 ,沢井裕 『 公害の私法的救 済』 ( 一粒社

1969)

,東孝行 「 公害の差止請求訴訟 ‑ 西 ドイツとの法比較 ‑ 」

『司法研修所論集

』1973

II80

頁などを参照。

その例外 として,小林秀之 『アメ リカ民事訴訟法

「 現代型訴訟の出現 とその影響」

7

1頁

,

「 現代型訴訟を中心 とした救済形成の特異性

」327

頁 ( 弘文堂

1985

, 初出

1983,1985)

を挙げることができる。

(9)

法の現況を検討す ることを目的 とし, したが って, ドイツ法 については,次の 機会に譲 りたい。

以下での考察にさい しては,下記の視角に特 にウエイ トを置いて,論 じて行 きた い。

まず

,

「 救済法

(remediallaw)

」的視角か らのアプローチを行ないたい。上 述のように ( ‑本章第

2

節) ,我が国の 「 公共的差止訴訟」事件 は

,

「 救済方法 の多様性 という特殊性」を有 し,その判決手続および執行手続 は,多種多様な 具体的救済方法か ら最適な ものを選択 し実現す る過程であった。 これ紘,近時 本格的な検討が加え始め られて来た 「 救済法」のプロセスに符合 している

(14)

0

「 救済法」 とは,実休法上の権利 ・利益を侵害 された被害者を救済するために, 異体的な事件において,裁判所がどのような内容の具体的救済方法を被害者に 付与す ることが適切でかつ妥当であるかという問題 を扱 う法領域であ り,実体 法

(substantivelaw)

上の問題 とも,訴訟法

(procedurallaw)

上の問題 と

も区別 され,両者の中間に位置する固有の法領域である。このような 「 救済法」

は,わた くしたちに貴重 な視点を提供 して くれるように思われる。それは,あ る実体法上の生活事実関係が問題 となった訴訟事件を多かれ少なかれ画一的に 加工 して,既存の手続法に当て族める ( 包摂する) という思考方式か ら一旦脱 却 したかたちで,当該事件類型 における具体的救済方法を形成 しうるにふさわ しい基本的な訴訟手続構造 ( 被害者救済過程)を考案 し,いわば 「 開かれた訴 訟法」を創造す るための触媒の作用を果た しうるか らである

次に, このような 「 公共的差止訴訟」に最適な基本的手続構造を模索 して行 く上では,すでに指摘 されているように,判決手続 と執行手続 との有機的な連 動を絶えず考慮 に入れるべ きである。差止請求の内容 ( 異体的救済方法 ‑ 作

(14) Seee.g.D.DoBBS,HANDBOOKONTHELAW OFREMEDIES

1‑3

(West

1973)

,D.

LAYCOCK,MoDERNAMERICANREMEDIES1‑2(Little,BrownandCompany

1 985) ,竹下守夫 「 救済 の方法

『 基本法学

8

〔 紛争

』183

頁 ( 岩波書店

1983).

,

「 救済法」の構造 につ いて は,後 に第

7

章第 1節 で取 り上 げる。

(10)

為 ・不作為 の具体的内容 ‑ )が

,

真 に被害者救済 の実を挙 げうるよ うにす る ため甲 ま,訴訟 による救済 と執行 によるそれ とを一体的にとらえ,執行手続で 何をな しうるか との関連 において,判決手続で何を請求す るかを定めなければ な らない し, また逆 に,判決手続 に期待で きるのは何か との関連で,執行手続 の果すべ き役割を決めなければな らない( 1

5

) 。しか もとりわけ,判決が画餅 に帰 して しまわないように,執行手続 まで通観 しつつ判決手続のあるべ き姿を描 き 出 し,その判決 を実効化す るための執行手続が考案 されなければな らないので ある ( 執行機関のはらんでいる限界か ら判決手続 を規制 して行 くのではな く, 執行機関の期待 されるべ き役割か ら,適切 な判決手続 が創造 され,その判決手 続 に即応す るように執行手続の内容が定め られなければな らない。 )。それによ

り,従来金銭執行 と比較 して, ともすれば軽視 されがちであったように思われ る非金銭執行 ( 特 に作為 ・不作為執行)に関す る議論が深化 されることを も, 同時に期待す るものである

さらに,我が国における 「 公共的差止訴訟」事件 において,被害者救済のた めの貴重 な貢献を している 「 和解」の成立の可能性 を も念頭 において, アメ リ カ法の基本的手続構造 を見て行 くことに したい。確かに,本稿 の主たる課題 は,

「 公共的差止訴訟」 における最適 な判決手続および執行手続の模索ではあるが, しか しなが ら,和解 による紛争解決の現在果 た しているまたは将来果 たすべ き 実際的に有意義 な役割を考えると,考案 され るべ き新 しい基本的手続構造 は, 判決 ( そ して執行)だけではな く, それ と同時 に公正 な和解 による紛争解決を 首尾 よ く醸成 しうるもので もなければな らないだろう

(1

6 ) 。判決 に結実す る訴訟 手続 は,被害者 にとってはあ くまで も救済を獲得す るための‑手続 に過 ぎず, 被害者救済が柔軟 に行 なわれ うるためには,そのニーズに合致 した紛争解決制

(15)

竹下 「 前掲論文

(

「 生活妨害の差止 と強制執行

)

( 註

5)」2

頁。

(16)

この問題 に対す るわた くしの‑試論 として,拙稿

公共訴訟』事件 における公正な

和解内容の確保 と裁判官の役割

アメ リカのクラス ・アクションにおける公正な

和解内容の確保 と裁判官の役割を手がか りとして ‑

『 商学討究 ( 小樽商科大学

) 39

2

81

(1988)

を参照。

(11)

度 の諸種 の選択肢 ( 判決以外 の紛争解決方法) が常 に用意 されて いなければな らないのであ る( 1 7 ) 。

以上 の視角 は, あ くまで訴訟手続 の制度 的な側面 にウエイ トを置 いた もので ある

しか しそれ は,当然 の ことなが ら, 当事者 および利害関係人 の主体的 な 関与 の側面 を没却す るもので は決 してない。 む しろ逆 に,被害者救済 とい う至 上 の目的 を達成 す るためた,当事者 および利害関係人 が判決 内容 の形成 お よび 実現 の局面へ主体的 に関与 しうる 「 場」 をいか に して確保すべ きか とい う問題 意識 か ら,本稿 は,最適 な訴訟手続 の構築 を 目指す ものに外 な らない。

1981

12

16

日,最高裁判所大法廷 は,大阪空港訴訟判決 にお いて, この 種 の 「 公共的差止訴訟」 に対 して, わずかな蘇生 の途 を灰 めか しつつ も

(18)

弔鐘 を打 ち鳴 らした。 しか しそれに もかかわ らず,今 日 「 公共的差止訴訟」 の提起 は跡 を絶 たない

(19)

。 これが意味 してい るもの は,一体何 だ ろうか。本来 , 「公共 的差止訴訟」事件 の対象 となる問題 は, いわゆ る 「 投票箱 と民主政 の過程」 を

(

川 た とえば,井上治典 「 裁判手続の手軽 な利用のために

紛争処理 と正義 〔 竜巻喜助

先生還暦記念

』45

頁 ( 有斐閣

1988)

を参照。

( 1 8 ) 前註

3

『 民集

』1406

頁で,多数意見 は , 「・ ‑‑このよ うな争訟 は,本件空港の設置等 につ き運輸大臣が した前記 のよ うな個々の行政処分 の取消訴訟 によるか, あるい は,争訟手続上 は本件空港の供用行為その ものを全体 として公権力の行使 に当たる 行為 として把握 し,それに対す る不服を内容 とす る抗告訴訟 によるべ きものと解す

るのが相当であって, これを空港の事業主体である上告人 と私人 との間の対等当事 者間の私法関係 として狭義の民事訴訟 の方法 によって審理判断す ることは許 されな いものというべ きである。」とした。これに対 して,たとえば,原田尚彦 「 差止請求 と行政訴訟

『自由と正義

』34

4

45

,50‑51

(1983)

は,行政訴訟 による

「 差止請求」 を認 めることも極 めて困難であるとす る。

なお,校正中に新潟空港訴訟 ( 行政訴訟)最高裁判決 に接 した。 これについては, 差 し当た り

,

毎 日新聞

』1989

年 ( 平成元年)

2

17

日 ( 夕刊

(1)),

読売新聞』

1989

年 ( 平成元年)

2

17

日 ( 夕刊 (

1))

などを参照。

(19)

たとえば,ごく最近で も,北海道電力泊原子力発電所 に対す る民事差止請求訴訟が, 札幌地方裁判所 に提起 された。 『 朝 日新聞

』1988

年 ( 昭和

63

年)

8

31

日 ( 夕刊

(14)),

北海道新聞

』1988

年 ( 昭和

63

年)

8

31

月 (日刊

(1)(3))

( 夕刊 (

1))

参照。また,羽田空港 ( 新 A滑走路)の差止 め ( および損害賠償)を求める民事訴 訟が,東京地方裁判所 に提起 された。『 朝 日新聞

』1988

年 ( 昭和

63

年)

1

1月

25

( 夕刊

(23))

,『 読売新聞

』1988

年 ( 昭和

63

年)

1

1月

25

日 ( 夕刊

(10))

参照。

(12)

通 じ, 立 法 府 ・行 政 府 な どの 「政 治 部 門 」 の活 動 に よ り解 決 され て行 くべ き ち の と も言 え るで あ ろ う

しか し, 立 法 府 ・行 政 府 に よ る この問題 に対 す る取 組 み が決 して十 分 とは言 え な い今 日,ま さに裁 判 所 ,す な わ ち司 法 制 度 に対 して, 市 民 の厚 い期 待 が 向 け られ て い る と も言 え るの で は な い だ ろ うか。 「立 法 府 が そ の責 任 を十 分 に果 た して い な いか らとい って, 裁 判 所 が それ らの利 益 の保 護 に取 り組 まな くて よ い とい う理 由 に はな らな い

(

2 0 ) 」 の で あ る。 また, 行 政 訴 訟 ( 抗 告 訴 訟 ・住 民 訴 訟 )につ いて も一 定 の制 約 が存 在 す るの で ( 行 政 事 件 訴 訟 法

9

条 ,地 方 自治 法

242

条 の

2

参 照 ),民 事 訴 訟 法 の分 野 か らの被 害 者 救 済 へ の ア プ ロー チ に, 依 然 と して大 きな期 待 が寄 せ られ て い る と言 って も, 決 して過 言 で はな いで あ ろ う

(21)

( 2

0

) 伊藤寅 「 紛争管理権再論 ‑ 環境訴訟への受容を目指 して

紛争処理 と正義

〔 竜寄書助先生還暦記念

』203

,206

頁 ( 有斐閣

1988)

なお, これに対 して,たとえば伊達火力発電所事件で札幌地裁昭和

55

(1980

年)

10

14

日判決 は,「 人の社会活動 と環境保全の均衡点をどこに求めるか,環境汚染 ない し破壊をいかに して阻止す るか という環境管理 の問題 は,す ぐれて,民主主義 の機構を通 して決定すべ きものであるといえる。 」と判示 している

判例時報

』988

37

,132

(1980)

(21)

さらに蛇足なが ら,「 差止 め」という用語 自体の もつ問題点 も十分 に認識 してお く必

要がある。当然の ことなが ら,差止請求 の中には,作為 ・不作為請求が含 まれてい

る。一見 したところ,強烈 なイ ンパ ク トを伴な った全面的な不作為 ( たとえば工場

の操業停止 など)を表わすかのように見えるこの用語の背後 には,被害者 の強い決

意 とア ピールとを表現すべ きとい う政治運動論的なニュア、 ンスが横たわ っているよ

うにも思われる。 しか しなが ら,わた くしの印象では, この 「 差止 め」 とい う用語

の もっているそのような 「 異常 な」重 さが,対象 とされた事件類型固有の実体法的

な問題 ( たとえば,差止請求の法的構成 やいわゆる 「 公共性」の問題 など) ともあ

いまって,被告 そ して裁判所を過度 に刺激 し,裁判所の判断を消極的な ものに して

いるようにも思われてな らない。 しか し,そ うは言 って も, この用語 は一般的に普

及 してお り, また現在のところわた くLには,それに代わる適切 な用語の持 ち合わ

せがな

い。

したが って,従来通 りそれを用 いざるをえないが,わた くLは,意識的

に 「 差止 め」を 「 個別異体的な事案の解決 にふさわ しい一定の作為 ・不作為」と言 っ

た程度の法律用語 として用 いることに したい。 しか し, アメ リカにおける 「 公共的

イ ンジャンクション」が, いかに融通無碍 な救済方法であるかを見て行 く過程で,

日本法の 「 差止 め」内容 のあるべ き姿が明 らかになるであろう。

(13)

以下で述べ るアメ リカ法 の ダイナ ミクスは,一見 したところわた くしたちを

弦惑 させ途方 に暮 れさせ るもののよ うに も思われ, ともすればその救済方法の

異体的な内容 ( 実体的側面) にのみ目を奪われがちである。 しか しなが ら, そ

の形成および実現過程 と言 った 「 救済過程」 の側面 には,創造的で有益 な もの

を兄 い出す ことがで きるであろ う

したが って,そのエキスを抽出 し,終章 で

日本法への示唆 に供 したい。

(14)

2

「 公共 的 イ ソジャ ンク シ ョン訴訟」事件 の典型例

‑ その生成 と展開 ‑

1

節 は じめに

‑ 「 公共的イ ンジャンクシ ョン訴訟」事件の具体的事件類型 ‑ アメ リカにおいて,公的 な制度 ・組織 による広汎 な権利侵害か らの救済を主 張 して , その抜本的な改善 を求 める 「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」が,顔 繁 に提起 され,市民 の間でその効用が積極的 に意識 され始 め,研究者 の問で こ

れ らに対 して分析や検討 が加 え られ るよ うにな ったのは,比較的最近 の ことで ある

そのよ うな事件類型 が,我 が国へ紹介 され,研究の対象 とな ってか らま だ 日が浅 いのである( 2 2 ) 。

アメ リカで は, この種 の事件 に関す る裁判例が増加 し, それ らが伝統的 な訴 訟類型 には納 ま り切 らない ものであることが認識 され始 め, それ らが共通 して 有す る特殊性 が抽 出 され るに及んで

,

「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」の基本 的な手続構造 が,次第 に明 らかにされて行 くことになる

(2

3 ) 。

(22

) 我 が国 におけるアメ リカの 「 公共 的 イ ンジャンク ション訴訟」 につ いての紹介 およ び研究 には,次 の ものがあ る。大沢秀介 『 現代 アメ リカ社会 と司法 ‑ 公共訴訟 を め ぐって ‑ 』 ( 慶応通信

1987

,初 出

1980‑1987)

,同 『前掲書

(

『 現代型訴訟 の 日米比較

)

( 註

2)

』,小林秀之 『前掲書 ( 註

13)

』,藤倉嬉一郎 「アメ リカにおけ

る公共訴訟 の‑原型 ‑ 人種別学解消訴訟 にお ける救済 の範 囲 ‑

法協百年論

集第

2

巻 〔 憲法行政法,刑事法

』257

(1983)

,和 田英夫 「前掲論文 ( 「 公共 的利 益 と公共的訴訟

)

( 註

2)

」,井上典之 「 受刑者 の人権 と制度改革訴訟 一 合衆国で の裁判所 による刑務所改革 につ いて ‑

『阪大法学

』139

55

(1986)

,同 「司 法的救済,原告適格 そ して公共訴訟 ‑ 合衆国での職権濫用事件 をめ ぐる議論 の検 討 を中心 に ‑

」141・142

合併号

445

(1987)

,西村裕三 『アメ リカにお けるア フ ァーマテ ィヴ ・アクシ ョンをめ ぐる法的諸 問題』 ( 大阪府立大学経済学部

1987)

, 同 「アフ ァーマテ ィブ ・ア クシ ョンをめ ぐる三判決

判例 タイムズ

』642

59

(1987)

など。

( 2 3 ) 簡単 には,拙稿 「 前掲論文

(

『公共 的差止訴訟』の基本的手続構造

)

( 註

8)

」参照。

後 に第

3

章以下 でよ り詳 しく論述す る。

(15)

このよ うな 「 公共的イ ンジャンクション訴訟」の研究 におけるパイオニア的 な存在である

A.Chayes

教授( 2 4 ) をは じめ, この分野 に関す る多 くの論文 を精 力的に発表 されている

0.Fiss

教授

(25)

およびその他 の論者 たち

(26)

が/ この種の

「 公共的イ ンジャンクション訴訟」 のカテゴ リーに含 まれ るもの と して挙 げる 事件類型 には,次 のような ものがある。論者 によって多少の出入 りはあるもの の,たとえば,公立学校 における白人 と黒人の別学制度の解消を求 める訴訟, 刑務所 の在監者 や精神病院の患者 ( 被収容者) の権利保護 を主張 して公的制 度 ・組織の改善 を求 める訴訟,環境の保護 を求める訴訟,議員定数の再配分を 求める訴訟,公的機関における雇用および昇準 のさいの人種差別の解消を求め る訴訟,公的制度 による住宅供給およびサー ビスの提供が平等 に行 なわれるこ とを求 める訴訟 などがそれである。

なるほど

,

「 公共的イ ンジャンクション訴訟」事件 として問題 とされている事 件類型 は,特 にそこで保護 を求 め られている実体権 に着 目した場合 に,我が国 の 「 公共的差止訴訟」事件のそれ とは,大幅に異 なることが明 らかである。 し か しなが ら, そこで求 め られた救済方法,すなわち 「 公共的イ ンジャンクショ ン」 とその形成過程および実現過程 に着 目 した場合,そこには,我 が国におけ

(24)Seee.a.

A

.Chayes,TheRoleoftheJudgeinPublicLawLitigation,89HARV.

L

REV.1281,1284 (1976) thereinafter cited as A.Chayes,Roleof the Judge

. 〕【 翻訳 と してエイプラム ・シェイズ ( 柿嶋美子訳)「 公共的訴訟 における裁判

官 の役割

」1978‑1『ア メ リカ法』1

頁】 .

(25)Seee.g.0.FISS,THE CIVIL RIGHTS INJUNCT10N 4‑5 (Indiana University Press 1978),0.FISS & D.REND工.EMAN,INJUNCTIONS 2nd ed.528‑830 (Foundation Press1984).

(26) See e.g.SpecialProjec

t

:The RemedialProcess in InstitutionalReform Litigation,78CoLUM.L REV.784,788 (1978)thereinaftercited asSpecial

Project:RemedialProcess.

]

,C.Diver,TheJudgeasPoliticalPowerbroker: SuperintendingStructuralChangeinPublicInstitutions,65VA.L REV.43,44

‑45 (1979) thereinafter cited has c.Diver,PoliticalPowerbroker.),D.

Horowi tz,Decreeing OrganizationalChange:JudicialSupervision ofPublic Institutions,1983DUKEL

.

J.1265,1266 (hereinaftercited asD.Horowitz

,

OrganizationalChange.].

(16)

る 「 公共的差止訴訟」の特質 と類似の ものが見出せ るのである ( 本稿 は,各論 か ら総論への帰納的な論述方法を採用す るので, この点 についての詳論 は後述 本章第

4

節および第

6

章参照)。したが って,アメ リカの裁判所が直面 している 被害者救済 に関す る手続的な諸問題 は,以下 で詳 しく述べ るよ うに,我が国の 裁判所が解決 を迫 られている問題 と酷似 しているのである。

また, アメ リカの 「 公共的 イ ンジャンクション訴訟

事件 として挙 げ られた 事件類型では各事件類型 に固有 の実体的な問題 もあるにせよ, その訴訟手続 を 見 た場合 には,類型問 にい くつかの共通 の特殊性 が存在 していることも確かで ある。それ らを抽出す る作業 は後 の第

6

章 に委ね ることに して,本章 では

,

「 公 共的イ ンジャンクション訴訟」 の手続構造 を詳 しく検討す るための準備的な作 業 として, その事件 の具体的なイメー ジを掴 むために,典型的な事例 をやや詳 しく見て行 くことにす る

ここでは,上述 の事件類型 のすべてについてその典 型的な事例 を挙 げるのではな く,以下 の論述 の上 で不可欠 と思われ る

2

つの事

件類型 に絞 って, その具体例 を見て行 くことに したい。

まず第

1

に,公立学校 にお ける白人 と黒人 との別学制度 の解消を求 める訴訟 事件 を概観す る

これを取 り上 げたのは,すでに我 が国で も藤倉教授

(27)

が詳細 に検討 されているよ うに,これがまさに 「アメ リカにお ける公共訴訟 の‑原型」

であ り

,

「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」を論 じているアメ リカのほとんどす べての論者 が, その論述 の出発点 としている事件類型だか らである

さ らに, 本稿 の関心 の的である手続構造 ( 被害者救済過程)の点 で も,この事件類型が, その他 の 「 公共的 イ ンジャンクション訴訟」 に与 えた影響 が相当大 きい

(28)

か ら

(27)

藤倉 「 前掲論文

(

「アメリカにおける公共訴訟の‑原型

)

( 註

22)」257

頁o

C8)0.FISS,SuPTlanote25at4‑5.

ここでは,次のような指摘がなされている 。 「 損害賠償という救済方法よりも,イン ジャンクションという救済方法に優越性を与えた

Brown

判決のインパクトは,公 立学校における別学制度の解消を求める訴訟事件に制限されることなく,公民権に 関する事件一般に拡大 した。そして,さらにそれを超えて,議員定数不均衡の是正 を求める訴訟,精神病院,刑務所,商取引および環境をめぐる訴訟にまで拡大 した。

F.Johnson

判事がアラバマ州の公立学校における別学を解消 して,その後,人権

参照

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