税効 果会計全面導入 の根底 にあ る論 理
大 沼 宏
第1節 会 計 ビ ッグバ ンの 目玉
平 成10年10月 企 業 会計 審 議 会 に よ り 『 税 効 果 会 計 に係 る 会 計 基 準(以 下,税 効 果 基 準 と省 略)』 が 設 定 さ れ,こ れ まで 連 結 財 務 諸 表 の み に適 用 さ れ て い た 税 効 果 会 計 が,い よ い よ個 別 財 務 諸 表 に も全 面 的 に導 入 す る こ と とな っ た 。 こ の税 効 果 会 計 と は,「 企 業 会 計 上 の 収 益 ま た は 費 用 と課 税 所 得 計 算 上 の 益 金 ま た は 損 金 の 認 識 時 点 の 相 違 等 に よ り,企 業 会 計 上 の 資 産 また は負 債 の 額 と課 税 所 得 計 算 上 の 資 産 ま た は 負 債 の額 に 相 違 が あ る 場 合 に お い て,法 人税 そ の 他 利 益 に 関 連 す る 金 額 を課 税 標 準 とす る税 金(以 下 「 法 人 税 等 」 と い う)の 額 に適 切 に 期 間配 分 す る こ とに よ り,法 人税 等 を控 除 す る前 の 当 期 純 利 益 と法 人 税 等 を 合 理 的 に対 応 させ る こ と を 目的 とす る手 続 きで あ る。」1)とされ る。一 般 的 に, 税 効 果 会 計(taxeffectaccounting)と は,法 人 税 等 と当 期 利 益 と を適 正 に期 間 対 応 させ る2)発 生 主 義 会 計(accrualaccounting)に 則 し た 会 計 処 理 と理 解
され る3)。
1)『 税 効 果 会 計 に 係 る 会 計 基 準 』 「税 効 果 会 計 に 係 る 会 計 基 準 の 設 定 に つ い て 」1.
経 緯 参 照 。
2)齋 藤[1997]は 税 効 果 会 計 に お け る 「対 応 」 関 係 は そ の 他 の 費 用 の 認 識 基 準 で あ る 対 応 概 念 と は 異 な り,「 あ る 計 算 要 素 が,税 引 前 利 益 の 計 算 に 含 ま れ る場 合, そ の 計 算 要 素 が 及 ぼ す 法 人 税 等 の 支 払 額 へ の 影 響 も ま た 同 じ期 間 の 損 益 計 算 に 含 め られ る と い う意 味 で の 『対 応 』 に 他 な ら な い 」 と述 べ て 区 別 す る。
3)こ の 議 論 の 前 提 と し て,税 効 果 会 計 を 適 用 す る 財 務 会 計 と税 務 会 計 との 「差 異 」 と は何 で あ る か,税 効 果 会 計 を 適 用 す る 範 囲 は い か な る も の か,そ して 計 算 方 法 に は どの よ う な もの が あ る か と い う 点 に つ い て の 指 摘 が 必 要 で あ る 。 第 … の 税 効
〔193〕
税 効果会計 を連結財務 諸表のみ な らず個別財務 諸表 につ いて も全面 的に導入 す る 必 要 性 は,西 村[1990]な ど に よ り従 来 強 く主 張 され て きた 。 弥 永 ・足 田
[1998]は 次 の よ う に 述 べ る 。
た と え ば,あ る 取 引 事 象 に対 して そ れ に よ っ て生 じ た損 益 を 財 務 会 計 上 は 当期 に認 識 す る もの の,税 法 上 は そ の 損 益 を次 期 以 降 で 認 識 す る よ う な場 合 を想 定 す る と,そ の 損 益 が税 引 き前 利 益 段 階 で 当期 に認 識 さ れ る 一 方 で,そ の損益 にか かる法人税 は税 引 き後利益段 階で次期以 降 に認識 され ると行 った ね じれ が 生 じる こ と に な る 。 財 務 会 計 と税 法 と で は そ れ ぞ れ主 とす る 目的 が
果 会 計 を 適 用 す る 「差 異 」に は2種 類 あ る 。一 つ は 期 間 差 異(timingdifferences) と い う も の で あ り,い ま 一 つ が 本 文 で 取 り上 げ る 一 時 差 異(temporarydiffer‑
ence)で あ る 。 両 者 は 大 筋 に お い て 一 致 す る の だ が,弥 永 ・足 田[1998]に よ る と,期 間 差 異 は税 引 き前 利 益 と課 税 所 得 と の 差 異 の み を含 む の に 対 し,一 時 差 異 は 税 法 上 と 財 務 会 計 上 の 資 産 ・負 債 金 額 の 差 異 全 て を 含 ん で い る 点 に違 い が あ る 。 我 が 国 の 税 効 果 基 準 は 後 者 で あ る 一 時 差 異 に税 効 果 会 計 を適 用 す る と し て い る 。 第 二 に,税 効 果 会 計 を 適 用 して 期 間 配 分 の 対 象 とす る 一 時 差 異 は ど こ まで を 含 む か に つ い て は2通 り の 方 法 が あ る 。 一 つ が 全 面 的 配 分 法(comprehensive allocationapproach),い ま 一 つ が 部 分 的 配 分 法(partialallocationapproach)
とい う も の で あ る。 前 者 は 一 時 差 異 の 全 て に 対 し て税 効 果 会 計 を 適 用 し な け れ ば な ら な い とす る ア プ ロ ー チ で あ る 。 こ れ に 対 して,後 者 は 無 期 限 に 延 期 さ れ る税 金 支 払 い や 回 収 に 関 わ る 一 時 差 異 に つ い て は 期 間 配 分 の 対 象 とす べ き で は な い と す る ア プ ロ ー チ で あ る。 な お,部 分 的 配 分 法 は 恣 意 性 が あ ま り に 強 い と し て,我 が 国 の 税 効 果 基 準 は 全 面 的 配 分 法 を 採 用 して い る 。 第 三 に,税 効 果 会 計 の 計 算 方 法 と し て は 繰 延 法(deferredmethod),資 産/負 債 法(assetiabilitymethod), 税 引 後 法(netoftaxmethod)の3種 類 が あ る。 繰 延 法 と は,費 用 収 益 対 応 の 原 則 に 則 して,一 時 差 異 が 発 生 し た 期 の 法 人 税 算 の 期 間 対 応 を 主 目 的 と して い る。
こ の た め 計 算 の 起 点 は 損 益 計 算 書 に お か れ,繰 延 税 金 資 産 負 債 算 定 時 に 適 用 され る税 率 は,一 時 差 異 発 生 時 の 税 率 が 適 用 さ れ る。 資 産/負 債 法 と は,財 務 会 計 に 基 づ く資 産 負 債 価 額 と税 務 会 計 に基 づ く資 産 負 債 価 額 の 差 異 を 一 時 差 異 とす る 方 法 で あ る 。 そ こ で 将 来 の 法 人 税 算 の 支 払 額 を 減 らす 効 果 を持 つ もの を繰 延 税 金 資 産 と し て 認 識 し,… 方 で 将 来 の 法 人 税 等 の 支 払 額 を増 額 す る 効 果 を持 つ もの を 繰 延 税 金 負 債 と し て 認 識 す る 。 計 算 の 起 点 は 貸 借 対 照 表 に お か れ,適 用 さ れ る税 率 は 一 時 差 異 が 解 消 さ れ る 時 点 の 税 率 と な る 。 よ っ て 税 率 が 変 わ れ ば,繰 延 税 金 資 産 負 債 価 額 を 再 評 価 す る。 税 引 後 法 は 一 時 差 異 か ら計 算 さ れ る繰 延 税 金 資 産 負 債 を 関 係 す る勘 定 か ら直 接 控 除 す る方 法 で あ る 。 税 効 果 基 準 は 計 算 法 に 資 産 負 債 法 を採 用 す る こ と と し て い る 。 詳細 は 弥 永 ・足 田[1998],RiahレBelkaoui[1998]
を参 照 。 ま た 税 効 果 基 準 が 以 上 の よ う な体 系 に な っ た 根 拠 等 につ い て は 『 税 効 果
会 計 に係 る 会 計 基 準 』 「税 効 果 会 計 に 係 る 会 計 基 準 の 設 定 に つ い て 」 を 参 照 。
税 効果 会計 全面 導入 の根底 にあ る論 理 195 異 な っ て い る た め,両 者 の 損 益 認 識 基 準 の 聞 に ず れ が 生 じて し ま う こ と は必 然 的 で あ る。 そ して,こ の ず れ は近 年 の 企 業 の事 業 活 動 の 多 様 化 及 び財 務 会 計 の 国 際 的調 和 等 を背 景 に 無 視 で きな い 問 題 とな っ て き て い る 。(5頁) こ の 様 に主 張 す る こ とで,税 効 果 会 計 導 入 の 合 理 性 を説 明 す る 。 しか し,こ こで 単 純 な疑 問 が 浮 か ぶ 。 税 効 果 会 計 を 導 入 した か ら とい っ て,当 期 に支 払 う 税 金 キ ャ ッ シ ュ ア ウ トフ ロ ー に は変 化 は な い 。 あ く まで も税 引前 当 期 純 利 益 に 対 して 支 払 うべ き税 額 を表 記 す る こ とが税 効 果 会 計 の 目的 とい え る 。 む しろ こ れ ま で の 税 効 果 会 計 を適 用 しな か っ た と きの 方 が,当 期 に支 払 う法 人 税 等 の キ
ャ ッシ ュ ア ウ トフ ロー を損 益 計 算 書 に お い て ス トレー トに表 示 す る 。
こ れ に対 して,最 近 雑 誌 ・新 聞 等 を賑 わ す の は,キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー を要 とす る企 業 経 営 の 必 要 性 に 関 す る議 論 で あ る。機 関投 資 家 が 企 業 評 価 を行 う場 合 は, 税 引 後 当 期 純 利 益 の 他 に キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー を 中 心 に 分 析 を行 う。 また 最 近 の EVA経 営 や キ ャ ッシ ュ フ ロ ー ベ ー ス の 経 営 とい う論 調 は,会 計 上 の 利 益 とは 別 に現 金 の 流 れ を重 視 して 経 営 を行 うべ し とい う主 張 が 根 底 に あ る4)。 これ は 会 計 的 に い え ば,現 金 主 義 的 とい って もよ か ろ う。 対 照 的 に,税 効 果 会 計 は発 生 主 義 会 計 そ の もの の 論 理 を純 粋 に追 求 した もの で あ る 。 い わ ば発 生 主 義 会 計 と現 金 主 義 会 計(キ ャ ッ シ ュ フ ロー 会 計)の 対 立 の 図 式 が,近 年 の 会 計 ビ ッグ バ ンの 根 底 に伺 え る 。
も ち ろ ん こ と は そ れ ほ ど単 純 な 図 式 で は な い 。 しか し90年 代 後 半 に な っ て相 次 ぐ会 計 制 度 改 革 は,会 計 基 準 の 国 際 的 調 和 化 ば か りが 中 心 に据 え られ が ち で あ る。 税 効 果 会 計 の 強 制 適 用 化 を急 務 の 課 題 と した 企 業 会 計 審 議 会 及 び 日本 公 認 会 計 士 協 会 の ね らい は,単 に 会計 基 準 の 国 際 的 調 和 化 だ け に あ っ た の か 。 本 稿 で は税 効 果 会 計 の理 論 的 根 拠 を発 生 主 義 会 計 と現 金 主 義 会 計(キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 会 計)と い う二 つ の 軸 か ら検 証 す る こ とを 目的 とす る。
まず 我 が 国 の 税 効 果 基 準 と 日本 公 認 会 計 士 協 会 が 発 表 した 『 個 別 財 務 諸 表 に
4)EVA経 営 及 び キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー ベ ー ス の 会 計 に 関 す る 詳 細 は 稲 盛[1998],伊 藤[1999]第9章 を参 照 。ま たEVAに 関 し て は,Stewart[1991]及 び 訳 書[1998]
を 参 照 。
お け る税 効 果 会 計 に 関す る実 務 指 針(以 降 個 別 指 針)』 『 連 結 財 務 諸 表 に お け る 税 効 果 会 計 に 関 す る 実 務 指 針(以 降 連 結 指 針)』 の 根 底 に あ る 会 計 的 論 理 を検 証 す る 。 引 き続 い て,税 効 果 会 計 を 世 界 に 先 駆 け て 導 入 し た ア メ リ カ の FASB財 務 会 計 基 準 書109号(以 降SFAS109)に つ い て も重 ね て そ の 会 計 的 論 理 に つ い て検 討 す る。 こ の検 討 を通 じて キ ャ ッ シュ フ ロ ー会 計 と税 効 果 会 計 の 盲 点 と され が ち な リ ンケ ー ジ を探 り,今 後 の 研 究 課 題 を明 らか に す る。
第2節 我 が 国 の税 効 果 基 準 に み る会 計 思 考
法 人 税 法 に基 づ い て 計 算 され る課 税 所 得 と財 務 会 計 上 の 当期 純 利 益 が 一 致 す る こ とは まれ で あ る ば か りか,ほ と ん どあ り得 な い と一 般 に考 え られ る。 なぜ な ら,財 務 会 計 と課 税 所 得 計 算(税 務 会 計)は そ の 目的 が 異 な る か らで あ る。
収 益 ま た は 費 用(益 金 また は 損 金)の 認 識 時 点,資 産 また は負 債 の 額 にお い て, 財 務 会 計 と税 務 会 計 とで 相 違 の見 られ る ほ うが む しろ普 通 で あ る。
た と え ば減 価 償 却 費 に つ い て い え ば,財 務 会 計 に基 づ く場 合 と税 務 会 計 に基 づ く場 合 とで は,法 人税 法 に償 却 限 度 額 が 設 定 され て い る こ とか ら通 常 相 違 す る 。 財 務 会 計 に 基 づ く固 定 資 産 価 額 と税 務 会 計 に 基 づ く固 定 資 産 価 額 に 相 違 が 生 まれ る の は この た め で あ る。 引 当金 につ い て も,財 務 会 計 は 発 生 主 義 に基 づ く適 正 な期 間損 益 計 算 の 遂 行 と い う 目的 か ら,企 業 会 計 原 則 注 解18の 要 件 に基 づ く限 りそ の設 定 に特 段 の 制 限 は な い 。 一 方 税 務 会 計 で は,引 当 金 繰 入 額 を損 金 と して 処 理 す る に も損 金 経 理 の 要 件 で あ る債 務 確 定 基 準 が 満 た さ れ て い ない とい う こ とか ら,「 別段 の 定 め 」(法 人 税 法52‑54条)に よ っ て 引 当 金 の 設 定 が 容 認 され て い る。 も っ と も,税 務 会 計 上 引 当金 は 返 品 調 整 引 当 金,退 職 給 与 引 当金,貸 倒 引 当 金 の3つ しか 設 定 で きな い こ と に な っ て い る。 しか も こ れ ら引 当金 に つ い て は損 金 算 入 の 限 度 額 が 定 め られ て い る こ とか ら,そ れ を超 え る 額 につ い て 納 税 申告 書 上 損 金 処 理 はで きな い 。 こ の よ う に財 務 会 計 に基 づ く引 当 金 額 と税 務 会 計 に 基 づ く引 当 金 額 に も差 異 が 生 じる 。
以 上 か ら,財 務 会 計 に基 づ く資 産 負 債 の 測 定 額 と税 務 会 計 に基 づ く測 定 額 で
税 効 果会計 全 面導 入 の根底 に ある論 理
ヱ97は差 異 が 生 じる ケ ー ス が 極 め て 多 い こ とが 予 想 さ れ る。 こ の差 異 に は二 種 類 あ り,そ の 一 つ が 一 時 差 異 と い う もの で あ り,い ま 一 つ が 永 久 差 異5)と い う もの で あ る。 税 効 果 会 計 は前 者 で あ る一 時 差 異 を,「 当 該 一 時 差 異 が 解 消 す る と き に税 務 申 告 上 そ の 期 の 課 税 所 得 を減 額 させ る効 果 を持 つ も の(将 来 減 算 一 一時 差 異ldeductibletemporarydifference)」 と 「 増 額 させ る効 果 を持 つ もの(将 来 加 算 一 時 差 異:taxabletemporarydifference)」6)の 二 つ に 分 類 す る 。 こ の 一 時 差 異 に ,回 収 ま た は 支 払 が 行 わ れ る と見 込 ま れ る期 の 実 効 税 率7)を 乗 じて 得 られ た 金 額 が,将 来 減 算 一 時 差 異 につ い て は繰 延 税 金 資 産 と して,将 来 加 算 一 時 差 異 に つ い て は 繰 延 税 金 負 債 と して 貸 借 対 照 表 に お い て認 識 す る 。 繰 延 税 金 資 産 負 債 を計 上 す る こ とに よ って,法 人税 等 の 費用 を複 数 期 間 に 渡 り期 間 配 分 す る の で あ る。
税 効 果 基 準 に よ る と,将 来 減 算 一 時 差 異 は 将 来 の課 税 所 得 を 減 額 させ る効 果 を持 つ もの を包 括 的 に 含 め る た め,繰 越 欠 損 金 や 繰 越 税 額 控 除 も一 時 差 異 と し て い る(第 二 の 一 の4)。 しか し一 時 差 異 が 課 税 所 得 を 減 算(加 算)す る か ど うか とい うの は極 め て 主 観 的 な 問 題 で あ り,経 営 者 に よ る相 当程 度 の 見 積 も り や 判 断 を 必 要 とす る 。 も っ と も発 生 主 義 に 基 づ く限 り,経 営 者 に よ る何 らか の 判 断 や 裁 量 を必 要 とす るの は,な に も税 効 果 会 計 に と ど ま らな い 。
だ が,繰 延 税 金 資 産 及 び負 債 を計 上 す る 場 合,通 常 の 資 産 負 債 を計 上 す る の と は少 々異 な る側 面 が あ る。 とい う の も,一 時 差 異 を繰 延 税 金 資 産 負 債 と して 認 識 す る に は,経 営 者 の か な り厳 密 な確 率 論 的 な判 断 が 必 要 と され るか らで あ る 。 そ こ で 具 体 的 にA企 業 に お け る次 の ケ ー ス を もっ て,一 時 差 異 を繰 延 税 金
5)「 個 別 指 針 」 に よ る と,永 久 差 異 と は 税 務 上 の 損 金 算 入 限 度 額,損 金 不 算 入 の 罰 科 金,受 取 配 当 金 の 益 金 不 算 入 額 の よ う に,税 引 前 当 期 純 利 益 の 計 算 に お い て, 費 用 ま た は 収 益 と し て は 計 上 さ れ る が,課 税 所 得 の 計 算 上 は 永 久 に損 金 また は 益 金 に 算 入 さ れ な い 項 目の こ と を い う(par.14)。
6)『 税 効 果 会 計 に 係 る 会 計 基 準 』 第 二 の … の3参 照 。
7)「 連 結 指 針 」par.20に よ る と 法 定 実 効 税 率 は 以 下 の よ う に 求 め ら れ る。
法 人 税 率 ×(1+住 民 税 率)+事 業 税 率 法 定 実 効 税 率 =
1+事 業 税 率
こ れ に よ る と平 成11年 現 在 の 実 効 税 率 は40.87%に な っ て い る。
資 産 負 債 と して 認 識 す る こ との 困 難 性 を,「個 別 指 針 」の 設 例 を も と に説 明 す る。
(設例)
A社 は 以 下 の 各 資 料 に基 づ き,x1年 とx2年 の 税 金 の期 問 配 分 計 算 を行 う。
(A社 の課 税 所 得 の計 算)
A社 のx1年 及 びx2年 の 法 人 税 等 と して 納 付 す べ き額 の 内 訳 は 次 の 通 りで あ
る 。
x1年 x2年
税引 前 当期 純 利益 500
200加 算:貸 倒 引 当金損 金 算入 限度 額超過 額 1000 500
加算 合計 1000 500
減算:棚 卸 資 産評価 損 認容
一 600固定 資産圧 縮積 立 金繰 入額 200
一減算 小計 200 600
課税所得 1,300
100なお,実 効 税 率 はx1年 は46%,x2年 は40%と す る。
こ の設 例 にお い て 繰 延 税 金 資 産 と繰 延 税 金 負 債 を計 算 して み る 。
まず 貸 倒 引 当 金 で あ る が,個 別 の 債 権 の 回 収 可 能 見 込 み に よ り必 要 と認 め た 額 を計 上 し て い る た め,税 務 上 の 損 金 算 入 限 度 超 過 額8)が そ れ ぞ れx1年 に 1,000,x2年 に500生 じて お り,x2年 末 に お け る税 務 上 の 損 金 算 入 限 度 超 過 額 の 累 計 は1,500と な る。
当 該 損 金 算 入 限度 超 過 額 は,会 計 上 の債 権 計 上 額 が 決 済 され た と き(貸 倒 償 8)貸 倒 引 当金 につ いて損 金算 入 限度額 を も とと した将来 一時 差異 が生 じるの は,法
人税 法一 ヒの貸倒 認 定 の厳 格 さが 原因 にあ る。法 人税 法52条 及び法 人税 法施 行令96 条 に よる と,金 銭 債権 の貸 倒そ の他 これ に類 す る事 情 に よる損失 見 込額 を貸倒 引 当損 と して損 金算 入す るため には,金 銭 債権 を個 別評価 す る もの と一括評 価す る もの とに分 けて,そ れぞれ につ いて か な り厳格 な要 件 を満 たす必 要が あ る。詳 細 は武 田[1999]参 照。特 に平成10年 度法 人税 改正 に よ り,従 来利 用 され て きた法 定繰 入率 が平 成14年 度 を最 後 に利用 で きな くな り,貸 倒 実績 率 に一 本化 され る こ
と も繰入 限 度額 を狭 める要 因 であ る。
税効 果 会計 全面導 入 の根底 にあ る論理199
却 を 実 施 した と き,貸 倒 引 当 金 の 取 崩 しが 行 わ れ た と き等)に,課 税 所 得 の計 算 上 減 算 され る た め,将 来 減 算 一 時 差 異 に 該 当 す る。 した が っ て,こ れ に係 る 繰 延 税 金 資 産 を 計 上 す る。 ま た 実 効 税 率 がx2年 に は46%か ら40%に 引 き下 げ
られ た の で,繰 延税 金 資 産 も これ に あ わせ て 再 評 価 す る 。
仕 訳
(x1年)
(借 方)繰 延 税 金 資 産460/(貸 方)法 人税 等 調 整 額460
① 期 首 繰 延 税 金 資 産0
② 期 末 繰 延 税 金 資 産1,000×46%=460
③ 繰 延 税 金 資 産 増 加 額 ② 一①=460
(x2年)
(借 方)法 人税 等 調 整 額260/(貸 方)繰 延税 金 資 産260
① 期 首 繰 延 税 金 資 産1,000×46%=460
② 期 末 繰 延 税 金 資 産500×40%=200
③ 繰 延 税 金 資 産 減 少 額 ② 一①=‑260
次 に棚 卸 資 産 評 価 損 の 認 容 で あ る。 これ はx1年 に棚 卸 資 産 評 価 損 を 損 金 と して 経 理 した が,申 告 の 際 に は損 金 と して 認 定 さ れ な か っ た もの がx2年 に損 金 と して 認 定 され た とい う こ とで あ る。x2年 に は評 価 損 を 計 上 し た在 庫 品 を す べ て処 分 した た め,xユ 年 に 財 務 会 計 上 で 計 上 した 評 価 損600がx2年 に 課 税 所 得 の 計 算 上 損 金 に 認 容 され る 。 そ の 結 果,x1年 で は 財 務 会 計 上 の 棚 卸 資 産 評 価 額 は 税 務 上 の 簿 価 を 下 回 っ て お り,将 来 減 算 一 時 差 異 が 生 じて い た が, x2年 に 当 該 滞 留 品 をす べ て処 分 した た め,x2年 に お い て,将 来 減 算 一 時 差 異
は解 消 す る。
仕 訳 (x1年)
(借 方)繰 延 税 金 資 産276/(貸 方)法 人税 等 調 整 額276
① 期 首 繰 延 税 金 資 産0
② 期 末 繰 延 税 金 資 産600×46%=276
③ 繰 延 税 金 資 産 増 加 額 ② 一①=276
(x2年)
(借方)法 人 税 等 調 整 額276/(貸 方)繰 延 税 金 資 産
① 期 首 繰 延 税 金 資 産600×46%=276
② 期 末 繰 延 税 金 資 産0×40%=0
③ 繰 延 税 金 資 産 減 少 額 ② 一①=‑276
276
次 に 固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 につ い て で あ る 。x1年 度 に 固 定 資 産 の 取 得 価 額 に つ い て 圧 縮 記 帳 を200行 っ たが,こ れ に つ い てA社 は利 益 処 分 方 式 を選 択 した 。 x2年 度 以 降8年 問 に渡 り毎 期 固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 を25つ つ 取 り崩 し,当 該 取 崩 高 を課 税 所 得 に加 算 す る こ と に な る 。 減 価 償 却 資 産 を利 益 処 分 方 式 に よ り圧 縮 記 帳 した場 合,翌 期 以 降 財 務 会 計 上 の 減 価 償 却 額 が 税 務 上 の 減価 償 却 額 を上 回 る こ と に な る 。 そ の上 回 る 額 に相 当 す る額 につ い て は,残 存 耐 用 期 間 を 通 じ て税 務 上 の 圧 縮 記 帳 額(固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 及 び これ に対 応 す る繰 延 税 金 負 債) の取 崩 しを行 い,同 額 が 課 税 所 得 の計 算 上 益 金 の 額 に 算 入 さ れ る こ と に な る 。 ま た,そ の 後 当該 減 価 償 却 資 産 の 売 却 又 は 除 却 が 行 わ れ た 場 合 に は,会 計 上 の 売 却 益(又 は 売 却 損)が 税 務 上 の 益 金(又 は損 金 〉の 額 を 下 回 る(又 は 上 回 る)
こ とに な り,売 却(除 去)時 にお け る税 務 上 の 圧 縮 記 帳 額 残 高(固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 の 残 高 及 び これ に対 応 す る繰 延 税 金 負 債)が 取 り崩 され,益 金 に算 入 さ れ る こ とに な る。
こ の よ う に,利 益 処 分 方 式 に よ る圧 縮 記 帳 額 は将 来 加 算 一 時 差 異 に該 当 す る
か ら,税 効 果 会 計 の 適 用 に 当 た っ て は,こ れ に係 る繰 延 税 金 負 債 を 計 上 す る こ
税効 果 会計全 面導 入の根 底 にあ る論理 201 と に な る 。
仕 訳
(x1年)
(借方)法 人 税 等 調 整 額92/(貸 方)繰 延 税 金 負 債92
① 期 首 繰 延 税 金 負 債0
② 期 末繰 延 税 金 負 債200×46%=92
③ 繰 延 税 金 負 債 増 加 額 ② 一①=92 (x1年 度 利 益 処 分)
(借方)未 処 分 利 益108/(貸 方)固 定 資 産 圧 縮 積 立 金108 当 期 圧 縮 記 帳 積 立 金200の うち,繰 延 税 金 負 債 計 上 分 を控 除 した 額 が108(=
200‑92)に な る (x2年)
(借方)繰 延 税 金 負 債22/(貸 方)法 人税 等 調 整i額22
① 期 首 繰 延 税 金 負 債200×46%==92
② 期 末繰 延 税 金 負 債(200‑25)×40%ニ70
③ 繰 延 税 金 負 債 減 少 額 ② 一①=‑22
(x2年 度 利 益 処 分) (借方)未 処 分 利 益
(借 方)固 定 資 産 圧 縮 積 立 金
①②③
12/(貸 方)固 定 資 産 圧 縮 積 立 金12 15/(貸 方)未 処 分 利 益15
税 率 変 更 に よ る 固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 へ の加 算 額200×(46‑40)%=12 税 務 上 の 取 崩 額25の 税 効 果 控 除 後 の 金 額25×(100‑40)%=15 固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 の 純 減 額 ② 一①=3
税 務 上 の 取 崩 し25に よ る 固 定 資 産 圧 縮 積 立 金 の 取 崩 高 は15(=25‑10)。 税
務 上 の 取 り崩 し額 か ら控 除 され る10と い う金 額 は税 務 上 の取 崩 額(25×40%)
で 計 算 さ れ る 。
以 上 の 計 算 の 結 果,x2年 にお け る繰 延 税 金 資 産 は 貸 倒 引 当 金 損 金 算 入 限 度 超 過 額 に係 る200,繰 延 税 金 負 債 は圧 縮 記 帳 積 立 金 に係 る70と な る。 と こ ろが, 業 績 の 悪 化 に 伴 い,利 益 予 測 の 大 幅 な修 正 が 必 要 と な っ た と しよ う9)。 具 体 的 に は,当 初 の 見 込 み で はx2年 度 は100の 利 益 が 予 想 され て い た が,x2年 度 末 の見 込 み で逆 に500の 損 失 に変 わ っ た と想 定 す る。
この 場 合 繰 延 税 金 資 産 の 回 収 可 能 性 に つ い て,慎 重 に検 討 す る必 要 が 生 まれ る。 繰 延 税 金 資 産 は将 来 の利 益 か ら税 金 が 控 除 で き る 可 能 性 を税 務 便 益(tax benefit)と 見 な し て,資 産 計 上 す る も の で あ る。 この 場 合 将 来 控 除 可 能 な 利 益 を 計 上 で きる か ど うか が,繰 延 税 金 資 産 計 上 の可 否 の 決 め 手 と な る。 繰 延 税 金 資 産 の 資 産 性 は 回 収 可 能 性 の 可 否 に係 っ て い る とい え る。 具 体 的 に繰 延 税 金 資 産 の 回収 可 能 性 を検 討 す る 場 合,「 個 別 指 針 」 に よ る と,次 の3点 か ら検 証 す る(par.21)。
1.収 益 力 に基 づ く課 税 所 得 の 十 分 性
将 来 減 算 一 時 差 異 に係 る税 効 果 を 認 識 す る場 合,将 来 減 算 一 時 差 異 の 解 消 年 度 及 び そ の 解 消 年 度 を基 準 と して 税 務 上 認 め られ る 欠損 金 の 繰 戻 し及 び 繰 越 しが 可 能 な期 間(以 下 「 繰 戻 ・繰 越 期 間」)に,課 税 所 得 が 発 生 す る 可 能 性 が 高 い と見 込 まれ る こ と
9)平 成11年9月8日 に 日本公 認 会計士 協 会か ら 「 繰 延税 金資 産 の回収 可能性 の 判断 に関す る監 査 上 の取 り扱 い」(公 開 草案)が 公 表 され た。繰 延税 金資 産 につ い て は商法上 の 配 当制 限 の定 めが ない こ とか ら,繰 延 税金 資産 の 回収 可 能性 につ い て の監 査 人の判 断 は きわめ て重 要で あ る とい う事実 認識 が背 景 にあ る。 回収 可 能性 の判 断 の具体 的 な手川 頁と して は,お お よそ次 の4段 階の ステ ップ を踏 む。第1の
ステ ップ は将来減 算/加 算 一 時差異 の将 来解 消見 込み 年度 の予 測 を行 う。第2に
将 来減算 一 時差異 の解 消 見込 額 と将 来加 算一 時差 異 の解消 見込 額 とを,そ れ ぞれ
解消 見 込年 度 ご とに相殺す る。 第3に,第2ス テ ップで も解消 しない将 来減 算一
時差 異 の解消 見 込額 につ いて将 来年 度 の課税 所得 見積 額 と相殺 計算 を行 う。 最後
に以上 の ステ ップで 相殺 しきれ なかっ た将来 減算 一時 差異 に係 る繰 延税 金資 産つ
い て は,そ の 回収 可 能性 は ない もの と判 断 して控 除す る こ ととな る。
税 効果 会計 全面導 入 の根底 に あ る論 理 203 と な っ て い る 。 将 来 減 算 一 時 差 異 と相 殺 で き る課 税 所 得 が 生 じる こ とが, 繰 延 税 金 資 産 認 識 の 必 要 条 件 と な っ て い る。
2.タ ッ ク ス プ ラ ンニ ング の 存 在
将 来 減 算 一 時 差 異 の解 消 年 度 及 び繰 戻 ・繰 越 期 間 又 は繰 越 期 間 に含 み益 の あ る固 定 資 産 又 は有 価 証 券 を売 却 す る 等,課 税 所 得 を発 生 させ る よ うな タ ッ クス プ ラ ンニ ングが 存 在 す る こ と
通 常 の 業 績 か らは 利 益 の計 上 は見 込 め な い が,将 来 減 算 一 時 差 異 の 解 消 年 度 内 に課 税 所 得 を計 上 で き る よ う な取 引 を行 う計 画 が あ る場 合,相 殺 で
きる 課税 所 得 が見 込 め る た め繰 延 税 金 資 産 が 認 識 で き る と な っ て い る。
3.将 来 加 算 一 時 差 異 の 十 分 性
① 将 来 減 算 一 時 差 異 に係 る税 効 果 の認 識
将 来 減 算 一 時 差 異 の 解 消 年 度 及 び繰 戻 ・繰 越 期 間 に将 来加 算 一 時 差 異 の解 消 が 見 込 まれ る こ と
② 税 務 上 の繰 越 欠 損 金 に係 る税 効 果 の 認 識
繰 越 期 間 に税 務 上 の 繰 越 欠 損 金 と相 殺 され る将 来 加 算 一 時 差 異 の 解 消 が 見 込 まれ る こ と
以 上3点 か らい え る こ と は,な ん らか の課 税 所 得 が 将 来 減 算 一 時 差 異 の 解 消 年 度 及 び繰 戻 ・繰 越 期 間 に 計 上 で きな くて は繰 越 税 金 資 産 は 計 上 で きな い とい う こ とで あ る 。 税 務 便 益 の 認 識 に必 要 なの は,将 来 に課 税 所 得 が 計 上 で き るか ど うか の 見 積 も り とそ の 可 能 性 の 高 さで あ る。 こ の 設 例 に お い て はx2年 度 の 利 益 予 測 の修 正 が 必 要 とな り,当 該 年 度 にお け る 将 来 減 算 一 時 差 異 が 解 消 可 能 か ど うか の判 断 が 必 要 に な っ た 。 特 に,貸 倒 引 当 金 超 過 額 計 上 に伴 う将 来 減 算 一 時 差 異 に 関 して 繰 延 税 金 資 産 を認 識 して い る の で あ る か ら ,相 殺 す べ き当 期 純 利 益 がx2年 度 だ け で は な くそ の 後 の 期 間 に お い て も計 上 で き る か が 問 題 と な る 。
上 記 の3点 か らx2年 度 中 に お け る 繰 延 税 金 資 産200の 回収 可 能 性 を検 討 し た結 果,将 来 加lj‑一時 差 異 が200あ る と こ ろ か ら,繰 延 税 金 資 産200の う ち,50%
程 度 を減 額 す る の が 適 当 で あ る と予 想 され た な らば ど う な る か 。 以 下 の よ うな
仕 訳 を行 っ て繰 延 税 金 資 産 の 資 産 計 上 額 を引 き下 げ る こ とに な る。
仕 訳
(借 方)法 人税 等 調 整 額100/(貸 方)繰 延 税 金 資 産
① 期 首 繰 延 税 金 資 産500×40%=200
② 期 末 繰 延 税 金 資 産500×50%×40%=100
③ 繰 延 税 金 資 産 減 少 額 ② 一①=‑100
100
こ の よ う に繰 延 税 金 資 産 の認 識 測 定 及 び 評 価 に は,実 効 税 率 の 予 測 や 一 時 差 異 の 回収 期 間,課 税 所 得 の計 上 可 能 性 な ど実 に多 くの 見 積 要 素 が 介 入 す る 。特 に繰 延 税 金 資 産 の 回収 可 能 性 に は 慎 重 な判 断 と確 実 な利 益 予 測 が 求 め ら れ る 。 税 効 果 会 計 が 発 生 主 義 会 計 の典 型 と さ れ る の は この 点 に あ る。 もっ と も,税 効 果 会 計 の 目的 は繰 延 税 金 資 産 負 債 の 計 上 だ け にあ る の で は な い。 発 生 主 義 会 計 の 主 目 的 は 適 正 な収 益 及 び費 用 の 計 上 に あ る 。 税 効 果 会 計 は あ く まで 当 期 税 引 き前 利 益 に対 す る適 正 な 法 人 税 等 の 計 上 が 主 要 な 目的 で あ る。 こ の 会 計 処 理 の 中 で 法 人 税 等 を期 間 配 分 した結 果 と し て繰 延 税 金 資 産 負 債 は計 上 され る。 ま た 発 生 主 義 会 計 が 優i位 と さ れ る の は,繰 延 税 金 資 産 負 債 の よ う な 発 生 処 理 額 (accrual)の 計 上 が,企 業 の 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 額 及 び 時 期 を 評 価 す る の に 有 用 な 情 報 を提 供 す る と こ ろ に あ る(Rayburn[1986])。 以 上 を踏 ま え る と,次 の よ う に解 釈 され る。
発 生 主 義 会 計 を追 求 した 結 果,法 人税 を期 間 配 分 す る会 計 手 続 で あ る 税 効 果 会 計 が 生 ま れ て き た。 期 間 配 分 す る 結 果 繰 延 税 金 資 産 負 債 が 計 上 さ れ るが,根 底 に あ る の は税 務 便 益 とは 何 か とい う点 で あ る 。 将 来 の税 金 支 払 額 を 減 少 させ
る,す な わ ち税 金 に 関 して の 将 来 キ ャ ッ シ ュ イ ン フ ロ ー を増 額 す る要 素 が 将 来 減 算 一 時 差 異 で あ る。これ に対 し,税 金 に 関 して の 将 来 キ ャ ッ シ ュ ア ウ トフ ロ ー を 増 額 す る要 素 が 将 来 加 算 一 時 差 異 と な る。
一 方 で 税 効 果 会 計 を適 用 す る場 合
,配 当可 能 利 益 の 算 定 に 影 響 を与 え るの で
繰 延 税 金 資 産負 債 の 計 上 に は慎 重 に な る必 要 が あ る。 なぜ な ら,法 人税 等 を調
税 効果 会計 全面 導入 の根底 にあ る論 理 205 整 す る結 果 当期 純 利 益 の 金 額 は,予 測 の 要 素 を か な り踏 ま え て 計 算 さ れ る か ら
で あ る。 こ の計 算 の 裏 付 け と して,繰 延 税 金 資 産 負 債 が 信 頼 性 の あ る 資 産性 ・ 負 債 性 を持 つ か ど うか が 重 要 で あ る 。 以 上 を担 保 す る た め に,当 該 資 産負 債 か
ら将 来 的 に キ ャ ッ シ ュ フ ロー が 得 られ るか ど うか とい う フ ィル ター を設 け た 。 こ れ が 繰 延 税 金 資 産 の 回収 可 能 性 評 価 に 当 た る。 つ ま り税 効 果 会 計 は発 生 主 義 会 計 の 典 型 とは い え,キ ャ ッ シ ュ フ ロー が 将 来 的 に 獲 得 可 能 か 否 か が 基 盤 にあ る。 これ と同 時 に,将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロー の予 測 に 資 す る機 能 を税 効 果 会 計 は 持 つ と一 方 で理 解 され て い る。 税 効 果 会 計 とキ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 会 計 は,時 間 軸
の現 在 と将 来 とい う一 本 の軸 で つ な が っ て い る。
第3節SFAS109号 「法 人税 等 の会 計 」 に見 る会 計思 考
米 国 で は1992年 の2月 にFASBか らSFAS109号 「 法 人 税 等 の 会 計 」 (AccountingforIncomeTaxes)が 公 表 さ れ て お り,こ れ が 現 時 点 で の 税 効 果 会 計 の 会 計 基 準 で あ る。 こ のSFAS109号 公 表 まで 様 々 な 紆 余 曲折 が あ っ た こ と は 有 名 で あ る10)。 しか し こ の基 準 が 現 在 で は世 界 的 に見 て,も っ と も基 本 的 な税 効 果 会 計 の ス タ ン ダー ドで あ る こ とは周 知 の 事 実 で あ る。
SFAS109号 はIAS12号 及 び 我 が 国 の 税 効 果 基 準 が 参 考 と し た よ う に,一 時 差 異 に基 づ く税 効 果 を会 計 処 理 す る 方 法 と して 「資 産 負 債 法 」を 採 用 して い る。
した が って 貸 借 対 照 表 を ベ ー ス に一 時 差 異 を把 握 し,こ れ に 一 時 差 異 解 消 時 点 の 実 効 税 率 を乗 じて 繰 延 税 金 資 産 ま た は 負 債 を計 算 す る とこ ろ は 変 わ らな い 。 基 本 的 に以 下 の 説 明 がSFAS109号 の 性 格 を物 語 っ て い る 。
財 務 諸 表 は,財 務 諸 表 また は 納 税 申告 書(taxreturns)に お い て 認 識 さ れ た 全 て の事 象 の 当期 及 び繰 延 の 税 効 果(taxconsequences)を 反 映 す べ き
10)APB11号 の 後 を 受 け てSFAS96号 「法 人 税 等 の 会 計 」(AccountingforIncome
Taxes)が1987年 に 公 表 さ れ た が,予 想 以 上 に 反 論 が 多 か っ た 。 こ れ に つ い て は ChaneyandJeter[1989]を 参 照 。 こ の 後SFAS100号,103号 と 基 準 書 の 実 効 が 繰 り 延 べ ら れ,最 終 的 にSFAS109号 公 表 に 至 っ た 。 こ の 経 緯 に つ い て はPre‑
vitsandMerino[1998]ch.8を 参 照 。
で あ る とFASBは 結 論 づ け た 。FASBは 資 産 負 債 法 に よ る法 人 税 等 等 の 会 計 処 理 が,FASB概 念 基 準 書No.6「 財 務 諸 表 の構 成 要 素 」 の 定 義 及 び 当該 概 念 基 準 書 の 他 の 部 分 と も もっ と も整 合 す る と考 え る 。(par.63)
SFAS109号 は 税 効 果 会 計 の 目的 を,(1)当 期 に お い て 支 払 可 能 な税 額 と還 付 可 能 な税 額 を認 識 し,(2)財 務 諸 表 な い し納 税 申告 書 に お い て す で に 認 識 さ れ た 事 象 の 将 来 の 税 効 果 額 を 当 期 の 繰 延 税 金 資 産 負 債 と し て 認 識 す る こ と に あ る (par.6),と し て い る。SFAS109号 は税 効 果 会 計 を,過 去 の 税 務 に 関 わ る事 象 と将 来 の税 務 に関 わ る事 象 を包 括 的 に認 識 す る会 計 シ ス テ ム で あ る と規 定 し て い る。 とは い え,納 税 申告 書 に よ って 計 算 され る支 払 税 金 は 当期 及 び 過 年 度 の 事 象 や 将 来 年 度 の 事 象 が 全 て 合 算 さ れ た(aggregated)結 果 で あ る た め, 繰 延 税 金 資 産負 債 を認 識 した か ら とい っ て そ の 全 て が 現 実 の 税 金 支 払 額 に な る か ど うか は い え な い(par.7)。 最 終 的 に は,Petreeetal.[1995]が 指 摘 す る よ う に繰 延 税 金 資 産 負 債 の 認 識 に は か な りの見 積 も り と概 算 な どの主 観 的 判 断
(subjectivity)が 必 要 と な る 。
税 効 果 会 計 を 導 入 す る こ とで,企 業 の 現 金 に影 響 を及 ぼ す 取 引 ま た は 環 境 要 因 な ど に よ る財 務 的 影 響 を 財 務 諸 表 に お い て 認 識 す る こ とが 出 来 る。 この 意 味 か らす る と,税 効 果 会 計 は 「 資 源 及 び 企 業 活 動 に 費 や さ れ た 現 金 が 当該 企 業 に 更 に 多 くの(ま た は少 な い)現 金 と して 回収 さ れ る プ ロ セ ス に 関 連 」(財 務 会 計 概 念 基 準 書(以 降SFAC)No.1,par.44)す る発 生 主 義 会 計 の 典 型 で あ る
とい え る。
税 効 果 会 計 を 適 用 した結 果 認 識 さ れ た 繰 延 税 金 資 産 負 債 は キ ャ ッシ ュ フ ロ ー
と強 い 関 係 を持 つ こ とが 指 摘 され て い る 。 将 来 減 算 一 時 差 異 と繰 越 税 額 控 除 及
び 欠 損 金 は将 来 年 度 の 課 税 所 得 及 び 未 払 税 金 を減 少 させ る 以 上,間 接 的 で あ る
にせ よ,将 来 キ ャ ッ シ ュ イ ン フ ロ ー に 貢 献 す る(par.81)。 繰 越 欠 損 金 が 計 上
で きれ ば,こ れ に よ り将 来 の 税 金 還 付 額 を増 加 させ る。 そ うで あ る以 上,将 来
減 算 一 時 差 異 に基 づ く繰 延 税 金 資 産 は,直 接 的 に将 来 キ ャ ッ シュ イ ンフ ロー に
貢献 す る(par.81)。 また 繰 延 税 金 資 産 はSFACNo.6に あ る資 産 の 定 義 の 「 特
定 の 実 体 が そ の 経 済 的 便 益 を獲 得 す る こ とが で き,そ の 便 益 に 他 の 実 体 が接 近
税 効 果会 計全 面導 入の根 底 にあ る論理 207 す るの を 支 配 す る こ とが で きる」 及 び 「そ の便 益 に対 す る 実 体 の権 利 また は そ の 支 配 を付 与 す る取 引 そ の 他 の事 象 が 既 に発 生 して い る こ と」(SFACNo.6, par.26)を 満 た して い る と して,そ の 資 産 性 を担 保 す る(pars.82‑86)。 繰 延 税 金 資 産 の 資 産 性 は将 来 キ ャ ッシ ュ フ ロ ー を獲 得 で き る か ど うか に あ る の で, 仮 にそ の 実現 の 可 能 性 が 疑 わ しい場 合 は評 価 性 引 当 金(valuationallowance) の 設 定 を求 め る(par.17)11)。MillerandSkinner[1998]が 指 摘 す る よ う に, こ う し た評 価 勘 定 の設 定 につ い て は 経 営 者 の 恣 意 性 が か な り強 い 。 繰 延 税 金 資 産 の 認 識 測 定 及 び 評 価 に は,経 営 者 の 確 率 論 的 な 判 断 が か な り必 要 に な る 。
一 方 ,繰 延 税 金 負 債 を 認 識 す る場 合 も繰 延 税 金 資 産 と同様 に,将 来 キ ャ ッ シ ュ ア ウ トフ ロ ー との 関係 が ポ イ ン トと な る。 繰 延 税 金 負 債 は 将 来 加 算 一 時 差 異 に よっ て,将 来 支 払 税 額 が 増 加 す る とい う負 の税 務 便 益 を 踏 ま え て 認 識 さ れ る 。 繰 延 税 金 負 債 はSFACNo.6に あ る(a)特 定 の 事 象 の 発 生 ま た は 請 求 に従 っ て,あ る特 定 の 期 日 ま た は 確 定 し うる 期 日 に,発 生 の 可 能 性 の 高 い 将 来 の 資 産 の譲 渡 また は使 用 に よ る弁 済 を伴 う よ う な,一 つ 以 上 の 他 の 実 体 に対 す る 現 在 の義 務 また は責 任 を具 体 化 して い る,(b)そ の 義 務 また は責 任 は,将 来 の犠 牲 を 避 け る 自由 裁 量 の 余 地 を ほ とん ど残 さな い か 全 く残 さず に,あ る特 定 の 実 体 に 負 担 を 負 わ せ る,及 び(c)その 実 体 に債 務 を負 わせ る 取 引 そ の他 の 事 象 は既 に生 起 して い る(SFACNo.6par.36)と い う3つ の 条 件 か ら主 に判 断 さ れ る。
(a)は法 的 債 務 に基 づ き,将 来 の キ ャ ッ シュ フ ロ ー が 当 該 実 体 か ら流 出す る か ど うか とい う視 点 に 立 つ 判 断基 準 で あ る か ら 「キ ャ ッ シ ュ ア ウ トフ ロー 基 準 」 と 名 付 け られ よ う。 繰 延 税 金 負 債 は政 府 か ら課 させ る租 税 債 務 に基 づ い て発 生 す る もの で あ り,キ ャ ッシ ュ ア ウ トフ ロー 基 準 は 満 た す と判 断 され る(par.76)。
続 い て(b)法的 債 務 に 基 づ くキ ャ ッシ ュ フ ロー の 流 出 は 避 け られ な い か ど うか と
11)評 価 性 引 当 金 が 設 定 さ れ る の は,繰 延 税 金 資 産 の 一 部 ま た は 全 部 が 実 現 し な い 「可 能 性 が 高 い 」(morelikelythannot)場 合 と さ れ る(par.17)。 こ の 可 能 性 は50%
超 の 確 率(alikelihoodofmorethan50percent)と 一 般 に は 理 解 さ れ て い る が, MillerandSkinner[1998]は こ れ に つ い て の 判 断 は 経 営 者 の 裁 量 に 任 さ れ す ぎ て い る と し て,し っ か り と し た 原 則(formulae)や 明 確 な 実 務 指 針(cleargui‑
dance)の 確 立 を 求 め る 。
い う基 準 で あ る。 こ れ は 「 非 回避 基 準 」 と名 付 け られ よ う。 繰 延 税 金 負 債 の 決 済 を一 時 的 に 繰 り延 べ る あ る い は 延 期 を させ る こ とは可 能 か も しれ な い 。 だが SFAS109号 が 全 面 的 配 分 法 を 採 用 して い る以 上(par.16),非 回 避 基 準 に合 致 して い る と考 え る の が 自然 で あ る(par.78)。(c)に つ い て は 原 因 と な る事 象 が 発 生 して い る か ど うか とい う基 準 で あ り,「 既 発 生 基 準 」 と名 付 け られ る。 将 来 加 算 一 時 差 異 が 過 年 度 の 課 税 所 得 に対 して発 生 した租 税 債 務 に基 づ くもの で あ る以 上,こ の 基 準 も満 た す 。 以 上 か ら将 来 加 算 一 時 差 異 に基 づ く繰 延 税 金 負 債 を認 識 す る こ とが 可 能 と な る。
当 然 の こ とで あ る が 繰 延 税 金 資 産 及 び負 債 が 認 識 され る の は,SFACNo.
6に あ る 資 産 及 び負 債 の 定 義 に合 致 して い る か ら で あ る 。 こ れ を更 に注 意 深 く 検 証 す る と,税 効 果 会 計 を適 用 す る こ と に よっ て 計 上 され る繰 延 税 金 資 産 負 債
は,将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 基 に な るが 故 に 認 識 され る の で あ る。 す な わ ち将 来 キ ャ ッ シュ フ ロ ー概 念 を結 節 点 と し て,予 測 や 見 積 も りとい っ た 不 確 定 な要 素 を盛 り込 む 形 で 税 効 果 会 計 は成 り立 つ 。
第4節 税 効 果 会 計 の 背 後 にあ るキ ャ ッシ ュ フ ロー 会計
以 上 の よ う に,税 効 果 会 計 を 適用 す る こ とに よ っ て計 上 され る繰 延 税 金 資 産 負 債 は,将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 予 測 要 素 とい う点 で キ ャ ッ シ ュ フ ロー 会 計 と 結 び つ く。 こ こで 改 め て 発 生 主 義 会 計 に 批 判 が 集 ま っ た 背 景 と キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー会 計 が 注 目さ れ た 理 由 につ い て 考 え 直 して み た い 。
発 生 主 義 会 計 の優 位 性 を唱 え た も っ と も著 名 な もの と してPatonandLittle‑
ton[1940]が あ ま り に有 名 で あ る。 彼 らは この 中 で発 生 主 義 会 計 に と っ て最
も重 要 な 概 念 と して 「 対 応 概 念 」(matchingconcept),い わ ゆ る 費 用 収 益 対
応 の 原 則 を挙 げ て い る。 収 益 と費 用 と は,大 雑 把 に言 え ば 企 業 が獲 得 した成 果
と そ れ に 関 わ っ て生 じた 犠 牲 分 を損 益 計 算 書 上 に表 した もの で あ る 。 これ らは
現 金 収 支 の み に起 因 す る の で は な く,経 営 者 の 意 思 も反 映 して計 算 され る もの
で あ る 。 そ れ 故,適 正 な収 益 と費 用 を損 益 計 算 書 上 に 計 上 す る た め に は,現 金
税 効果 会計 全面 導 入の根 底 にあ る論理 209 収 支 に係 る情 報 で は不 十 分 で あ り,発 生 主 義 会 計 が 必 要 で あ る と論 じ るの で あ
る 。
しか しそ の 一 方 で対 応 概 念 は きわ め て 抽 象 的 で あ り,結 果 と して計 算 され る 当 期 利 益 は恣 意 的 に操 作 で き る とい う致 命 的 な 問 題 点 を抱 え て い る。 発 生 主 義 会 計 は 繰 延 項 目(deferrals),費 用 配 分 要 素(allocations),評 価 勘 定(valuations) な どの 要 素 に基 づ い て 利 益 計 算 が な され る(Sloan[1996])。 分 析 者 の立 場 に 立 て ば こ う した 主 観 的要 素 に左 右 され る発 生 主 義 会 計 は,分 析 をす る の にあ ま りに 曖 昧 で あ る。 特 に投 資 意 思 決 定 を行 う場 合,企 業 の収 益 性 や 成 長 性 を評 価 す る た め に は 経 営 者 の 主 観 性 な どか らあ る程 度 中 立 的 な指 標 が 必 要 で あ る。 そ こ で キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 情 報 が 求 め られ る よ う に な っ て き た の で あ る 。Bern‑
stein[1993]は,利 益 の 質 を 評 価 す る場 合 営 業 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー(CFO:
cashflowfromoperation)と 当 期 利 益 の 比 率 は 高 け れ ば 高 い ほ ど 質 が 高 い と す る 。
Beaver[1989]は 以 上 を踏 ま え て 次 の よ う に指 摘 す る 。
発 生 主 義 会 計 は キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー デ ー タ を 変 換(transforming)及 び 合 計 す る(aggregating)会 計 処 理 法 で あ る。 … よ り一 般 的 に い え ば,発 生 処 理 額(accrual)は 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ーへ の 経 営 者 の 期 待 を 反 映 して い る の で あ り,現 在 及 び過 去 の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 情 報 よ り も包 括 的 に種 々 の 経 済 事 象 を反 映 して い る。(p.7)
発 生 主 義 会 計 は確 か に 欠 点 が 多 い 。 しか し経 営 者 の将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ーへ の 予 測 要 素 を反 映 す る と い う きわ め て 有 効 な シ ス テ ム で もあ る12)。 税 効 果 会 計 が 導 入 され た 理 由 も こ こ に あ る 。 税 効 果 会 計 を適 用 して 計 算 さ れ る 繰 延 税 金 資 産 負 債 は,先 述 した 様 々 な予 測 要 素 及 び そ の 回収 可 能性 を踏 まえ る こ と で経 営 者 の 将 来 予 測 も包 含 す る。 分 析 を行 う 際 に,税 効 果 会 計 に代 表 され る発 生 主 義 に よ る 会 計 情 報 とキ ャ ッシ ュ フ ロー 情 報 とあ わせ て活 用 す る こ とで そ の 効 果 を十 分 に発 揮 す る と期 待 さ れ る 。 こ の よ うな 点 か ら,税 効 果 会 計 が 会 計 ビ ッグ 12)Sloan[1996]は 当 期 利 益 が 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 予 測 に 有 用 か ど う か 検 証 す
る。 そ して 発 生 主 義 会 計 デ ー タ を株 価 は 反 映 し て い る か ど うか も検 証 す る 。
バ ンの 一 環 と して 導 入 さ れ た の だ と考 え られ る。
第5節 今 後 の 課 題
発 生 主 義 会 計 は 将 来 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 予 測 要 素 を盛 り込 ん で い る と ころ に 有 効 性 が あ る訳 だ が,こ れ は あ くま で規 範 的 な命 題 で あ る。 言 い換 えれ ば税 効 果 会 計 を適 用 した 結 果 認 識 され る繰 延 税 金 資 産 負 債 が 本 当 に将 来 の キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー 予 測 に役 立 つ か ど うか は,検 証 しな い 限 り,そ の 正 当 性 は証 明 さ れ な い 。 今 後 の 課 題 と して,投 資 家 は繰 延 税 金 資 産 及 び 負 債 が 将 来 の 税 金 に 関 す る キ ャ
ッ シ ュ フ ロ ー 予 測 に 有 用 か ど うか を 明 らか に す る 必 要 が あ る。Cheung,etal.
[1997]も 繰 延 税 金 資 産 負 債 は 将 来 の 税 金 支 払 額 の 予 測 に役 立 つ か ど うか を検 証 し た13)。
ま た繰 延 税 金 資 産 及 び 負 債 が株 価 に ど の よ う に反 映 され て い る か も検 証 す る 意 味 は あ ろ う。ChaneyandJeter[1994]は 繰 延 税 金 負 債 と株 価 の 関係 性 を 検 証 した。 検 証 結 果 と して は負 の 関 係 が 観 察 され た 。 市 場 の 反 応 と して,繰 延 税 金 負 債 は企 業 価 値 に マ イ ナ ス の 影 響 を及 ぼ す と見 られ た よ うで あ る 。 米 国 の 市 場 で は繰 延 税 金 負 債 は そ の 他 の負 債 と 同 じ よ う に認 識 され て い る。
以 上 の 知 見 が,果 た して 日本 企 業 及 び 日本 市 場 につ い て も適 合 す る か とい う 点 に つ い て は今 後 の 課 題 と し た い。
13)Cheung,etal.[1997]に つ い て 米 国 で の 結 果 と して は,繰 延 税 金 資 産 及 び 負 債
は将 来 の 税 金 支 払 額 の 予 測 に か な り有 用 で あ る と 結 論 し て い る 。
税効 果 会計全 面導 入 の根底 に あ る論 理 211
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