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雑誌名 スポーツ・健康科学教育研究センタ−紀要

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(1)

外出自粛期間中における新入生の身体活動量及び心 理的ストレス反応について

著者 曽我部 晋哉, 山崎 俊輔, 桂 豊, 水澤 克子, 伊東 浩司, 吉本 忠弘, 鵤木 千加子

雑誌名 スポーツ・健康科学教育研究センタ−紀要

巻 23

ページ 29‑37

発行年 2021‑03

URL http://doi.org/10.14990/00003861

(2)

外出自粛期間中における新入生の身体活動量及び心理的ストレス反応について

曽我部 晋 哉 * 山 崎 俊 輔 * 桂     豊 * 水 澤 克 子 * 伊 東 浩 司 * 吉 本 忠 弘 * 鵤 木 千加子 *

Physical Activity and Psychological Stress Responses of Freshmen during a Stay-at-home requests due to COVID-19.

Akitoshi Sogabe, Shunsuke Yamasaki, Yutaka Katsura, Katsuko Mizusawa, Koji Ito, Tadahiro Yoshimoto, Chikako Ikarugi

キーワード:新型コロナウィルス 不活動 クロノタイプ SRS-18

*甲南大学 共通教育センター

Ⅰ.諸言

我が国において、メンタルヘルスの悪化は社会問題 の一つである。令和元年国民生活基礎調査では、日 常生活での悩みやストレスの有無に対して、「ある」

が 47.9%、「ない」が 50.6%であると報告されており、

約半数は何らかの悩みやストレスを感じている(厚生 労働省 2019)。また、過去 1 か月間のこころの状態を 評価した調査では、気分障害・不安障害に相当する 心理的苦痛を感じている者の割合が 10.3%となってお り、約 10 人に 1 人は深刻なこころの問題を抱えてい るといえる(厚生労働省 2019)。また、2020 年の自 殺者数については、新型コロナウィルスの感染拡大に 伴う外出自粛要請などの影響もあり、前年比 750 人増

(3.7%増)の 2 万 919 人であることが報告され、メン タルヘルスの改善は喫緊の課題であると考えられる

(警察庁 online)。

メンタルヘルスの改善には、身体活動が効果的であ ることはこれまでにも数多く報告されている。例えば、

中・高強度の身体活動を実施すると抑うつ状態を改善

することや(Teychenne 2008)、さらにはこれらの運 動を 1 日 10 分程度でも継続することによって効果的 であることも報告されている(Vallance 2011)。その 一方で、2020 年のパンデミックによる緊急事態宣言 に伴う外出自粛要請により、本学の講義は基本的にオ ンラインを利用した講義となり、学生の身体活動量を 確保することが困難な状況となった。大学1年生を対 象とした体育実技と健康リテラシー講義を行う「基礎 体育学演習」も対面では実施できなくなり、唯一身体 活動を伴う本講義も自宅での学習を余儀なくされた。

外出自粛により自宅での PC やスマートフォンを用い た長時間の学習は、抑うつ症状の悪化をもたらす可能 性が高く、うつ病発症リスクが高まることが指摘され ており(Lucas et.al 2011)、大学新入生にとっては 不活動による身体的苦痛のみならず精神面においても 何らかの影響がもたらされるのではないかと考えられ る。

そこで本研究では、兵庫県の外出自粛要請期間中を 含む 2020 年 5 月末~ 6 月中旬までの大学新入生の身

(3)

Ⅱ.方法

1.対象

2020 年度に甲南大学に入学した新入生、並びに 2 年次以降対象講義の履修者 2056 名を対象とした。

2.調査方法

調査方法は、甲南大学オンライン学習支援ポータル サイト「My KONAN」のアンケート機能を利用し実 施した。

(1)身体活動量調査

 対象者の身体活動量調査には、5 月末から 6 月中旬 の平均的な 1 週間の身体活動量を調査するために国際 標準化身体活動量調査(IPAQ-short)の 4 項目、並 びに起床時刻、就床時刻、睡眠時間の 3 項目を追加し た 7 項目の質問を行った。

(2)心理的ストレス反応調査

 対象者の心理的ストレス反応を調査するために、心 理 的 ス ト レ ス 反 応 尺 度(Stress Response Scale-18:

SRS-18)を実施した。SRS-18 は、心理的ストレスの 3 因子「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」そして「無 気力」を構成する 6 つずつの質問からなり計 18 項目 の質問から構成されている。回答は、「全く違う」を 0 点とし「いくらかそうだ」を 1 点、「まあそうだ」

を2点、「その通りだ」を 3 点とする 4 件法である。

各因子の合計得点が高得点であるほど、心理的ストレ スが高いと評価することができる(鈴木ら 1997)。

Ⅲ.結果

1.睡眠状況ならびに身体活動量について 回答者は 1897 名であり回答率 92.2%であった。

(1)睡眠状況

 外出自粛期間中の平均的な 1 週間の就床時刻は、0 時から 2 時までが 53.2% であり、0 時以降では 80.2%

であった(図 1-1-1)。また、平均的な起床時刻は、8 時~ 9 時で 37.2%、9 時以降では 34.6% であり、全体 的に夜型にシフトしていると考えられる(図 1-1-2)。

睡眠時間では、7 ~ 8 時間の 33.9%が最も多く、9 時

23 2 5 46

299 506 505

312

116 35 19 5 26 11 3 27 107

386 703

293 217

77 46 21

3 3 8 41 152 473

643

398

119 34 5 5 13

平均的な睡眠時間

図1-1-1 平均的な就床時刻 図1-1-2 平均的な起床時刻

1-1-3

平均的な睡眠時間 図 1-1-1 平均的な就床時刻

図 1-1-2 平均的な起床時刻

23 2 5 46

299 506 505

312

116 35 19 5 26 11 3 27 107

386 703

293 217

77 46 21

3 3 8 41 152 473

643

398

119 34 5 5 13

平均的な睡眠時間

図1-1-1 平均的な就床時刻 図1-1-2 平均的な起床時刻

1-1-3

平均的な睡眠時間

図 1-1-3 平均的な睡眠時間

23 2 5 46

299 506 505

312

116 35 19 5 26 11 3 27 107

386 703

293 217

77 46 21

3 3 8 41 152 473

643

398

119 34 5 5 13

平均的な睡眠時間

図1-1-1 平均的な就床時刻 図1-1-2 平均的な起床時刻

1-1-3

平均的な睡眠時間

 

(2)身体活動量

①強い身体活動頻度・時間

 外出自粛期間中の平均的な 1 週間における強い身 体活動(重い荷物の運搬や自転車で坂道をのぼる、

ジョギングなど)の実施については、一日も実施し ていない群が 40.9%で最も多い(図 1-2-1)。実施 群では 30 分が 25%、1 時間が 22.3%の 2 つのピー クがみられた(図 1-2-2)。

   

(4)

図 1-2-1 強い身体活動の実施日数

776

314 262 220

107 105 60 53

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

86 133

249

71 27 247

97 112

15 33 39

1-2-1

強い身体活動の実施日数 図

1-2-2

強い身体活動の活動時間

図 1-2-2 強い身体活動の活動時間

776

314 262 220

107 105 60 53

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

86 133

249

71 27 247

97 112

15 33 39

1-2-1

強い身体活動の実施日数 図

1-2-2

強い身体活動の活動時間

②中等度の身体活動頻度・時間

 中等度の身体活動(ゆっくりと行うような有酸素 運動など)の実施日数は、0 日が最も多く 39.9% で あった(図 1-2-3)。また実施群の運動時間は 30 分 が 26.7%で最も多く、30 分以下は 58.6%であった(図 1-2-4)。

757

291 306 223

113 89 43 75

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

162 193 298

44 18 207

36 76 11 23 47

1-2-3

図 1-2-3 中等度の身体活動の実施日数中等度の身体活動の実施日数 図

1-2-4

中等度の身体活動の活動時間 図 1-2-4 中等度の身体活動の活動時間

757

291 306 223

113 89 43 75

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

162 193 298

44 18 207

36 76 11 23 47

1-2-3

中等度の身体活動の実施日数 図

1-2-4

中等度の身体活動の活動時間

③歩行頻度・時間

 歩行(10 分以上続けて歩くこと:日常生活やア ルバイト、散歩など全ての活動を含む)の実施日数 では、3 日が 21.2%と最も多く、2 日が 16.4%であっ た(図 1-2-5)。また、活動時間は 30 分が 24.1%と 最も多く、30 分以下を合計すると 50.8% となった(図 1-2-6)。

図 1-2-5 歩行日数

149 205

311 413

243 234

83 259

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

146 308

411

137 43

259

68 95 9 86

142

1-2-5

歩行日数 図

1-2-6

歩行時間

図 1-2-6 歩行時間

149 205

311 413

243 234

83 259

0⽇ 1⽇ 2⽇ 3⽇ 4⽇ 5⽇ 6⽇ 7⽇

146 308

411

137 43

259

68 95 9 86

142

1-2-5

歩行日数 図

1-2-6

歩行時間

(5)

図 1-2-7 寝ころんだり座位で過ごす時間

20 33

101 114 157

206 165

120 128 109

166

60 125

73 99

177

〜1時間 〜2時間 〜3時間 〜4時間 〜5時間 〜6時間 〜7時間 〜8時間 〜9時間 〜10時間 〜11時間 〜12時間 〜13時間 〜14時間 〜15時間 15時間〜

1-2-7

寝ころんだり座位で過ごす時間

④寝ころんだり座位で過ごす時間

 寝ころんだり座位で過ごす時間では、6 時間の 11.1%及び 15 時間以上の 9.6%が多くなった(図 1-2-7)。また、11 時間も 8.9%と高い割合を示した。

2.心理的ストレス反応について

回答者は 1892 名であり回答率 92.0%であった。各 設問の「その通りだ」を 3 点、「まあそうだ」を 2 点、「い くらかそうだ」を 1 点とし、回答者の合計を算出した。

得られた合計点数を全回答者で除し、それぞれの項目 の平均得点を算出した。

(1)抑うつ・不安

 各設問の平均得点は「悲しい気分だ」0.67、「なん となく心配だ」1.35,「泣きたい気持ちだ」0.46、「気 持ちが沈んでいる」0.87、「何もかも嫌だと思う」0.7、

「なぐさめて欲しい」0.51 であり、「なんとなく心配だ」

が最も高値を示した(図 2-1)。

❾気持ちが沈んでいる

その通りだ 8%

まあそうだ 15%

いくらかそ うだ 34%

全く違う 43%

平均均得得点点::00..8877

その通りだ 4%

まあそうだ 13%

いくらか そうだ

28%

全く違う 55%

❷悲しい気分だ

平均均得得点点::00..6677

その通りだ 15%

まあそ うだ いくらかそうだ 28%

34%

全く違う 23%

❸なんとなく心配だ

平均均得得点点::11..3355

その通りだ 4%

まあそうだ 8%

いくらかそうだ 全く違う 19%

69%

❺泣きたい気持ちだ

平均均得得点点::00..4466

その通りだ 6%

まあそうだ 11%

いくらか そうだ

30%

全く違う 53%

⓬何もかも嫌だと思う

平均均得得点点::00..7700

その通りだ 5%

まあそうだ 9%

いくらか そうだ

19%

全く違う 67%

⓯なぐさめてほしい

平均均得得点点::00..5511

2-1

図 2-1 抑うつ・不安の平均得点抑うつ・不安の平均得点

(6)

(2)不機嫌・怒り

 各設問の平均得点は「怒りっぽくなる」0.6、「怒り を感じる」0.5,「感情を抑えられない」0.39、「悔しい 思いがする」0.39、「不愉快だ」0.49,「イライラする」

0.67 となっており、外出自粛期間中の怒りの因子は全 体的に低値を示した。

(3)無気力

 各設問の平均得点は「いろいろなことに自信がない」

1.22、「よくないことを考える」0.98、「話や行動がま とまらない」0.66、「根気がない」0.94、「一人でいた い気分だ」0.84、「何かに集中できない」1.27 であった。

その通りだ 14%

まあそ うだ 23%

いくらかそうだ 35%

全く違う 28%

⓫いろいろなことに自信がない

平均均得得点点::11..2222

その通 りだ

8%

まあそ うだ 19%

いくらかそうだ 36%

全く違う 37%

⓭良くないことを考える

平均均得得点点::00..9988

⓮話や行動がまとまらない

その通りだ 4%

まあそ うだ 11%

いくらかそうだ 32%

全く違う 53%

平均均得得点点::00..6666

その通 りだ

8%

まあそ うだ 18%

いくらかそうだ 34%

全く違う 40%

⓰根気がない

平均均得得点点::00..9944

⓱一人でいたい気分だ

その通 りだ

8%

まあそうだ 14%

いくらかそうだ 32%

全く違う 46%

平均均得得点点::00..8844

⓲何かに集中できない

その通りだ 14%

まあそ うだ 23%

いくらかそうだ 40%

全く違う 23%

平均均得得点点::11..2277 図2-3 不機嫌・怒りの平均得点

図 2-3 不機嫌・怒りの平均得点 図 2-2 不機嫌・怒りの平均得点

その通りだ 2%

まあそうだ 9%

いくらか そうだ

35%

全く違う 54%

❶怒りっぽくなる

平均均得得点点::00..6600

その通りだ 2%

まあそうだ 8%

いくら かそう 28%

全く違う 62%

❹怒りを感じる

平均均得得点点::00..5500

その通りだ 2%

まあそ うだ

6%

いくら かそう 22%

全く違う 70%

❻感情を抑えられない

平均均得得点点::00..3399

その通りだ 4%

まあそう 10% いくらか

そうだ 全く違う 22%

64%

❼悔しい思いがする

平均均得得点点::00..3399

❽不愉快だ

その通りだ 4%

まあそ うだ

8% いくら かそう 全く違 22%

66%

平均均得得点点::00..4499

その通りだ

5% まあそうだ

10%

いくら かそう 33%

全く違う 52%

❿イライラする

平均均得得点点::00..6677 図2-2 不機嫌・怒りの平均得点

(7)

怒り」「無気力」の各項目の設問の平均得点を合計し、

それぞれの要因を比較した。その結果、「抑うつ・不 安」4.56、「不機嫌・怒り」3.20、「無気力」5.91 となり、

無気力が最も高値を示した(図 2-4)。

Ⅳ.考察

1.生体リズムの夜型傾向

外出自粛期間中の平均的な就床時刻は 0 時以降が 80.2%、起床時刻は 8 時以降が 71.8%となっており明 らかに生体リズムが夜型傾向にあると考えられる。特 に、通学などが不要となり生活リズムが不規則にな ると、いわゆるソーシャル・ジェットラグ(社会的 時差ボケ)となる可能性があり、9 時から始業する授 業では、学校生活への適応が難しくなる(Wittmann 2006)。ソーシャル・ジェットラグが大きくなると、

喫煙率の上昇、BMI の上昇、抑うつ傾向、学習成績 の低下など様々な悪影響との関連性が報告されている

(Roenneberg 2012)。実際に学校現場における不登校 児童の・生徒の 60%が朝起きれない、夜眠れないな どの睡眠障害を抱えている。この小児慢性疲労児の特 徴として、睡眠時間の欠乏の持続により適切な時間 に起床できなくなり、その後 10 時間以上の過眠状態 に陥ることが報告されている(Mike et.al 2004)。本

もある。このような生体リズムの前進に身体活動が 有効であり、午前中の運動の有効性が示されている

(Yamanaka et.al 2014)。つまり、学生生活における 午前中の身体活動量の確保は、生体リズムを朝型へ前 進させるためにも効果的であると考えられる。

2.身体活動量と健康増進の関係

身体活動とは、安静にしている状態よりも多くのエ ネルギーを消費する全ての動作を指し、日常生活に おける家事、通学などの「生活活動」と、体力増進 や意図的に行われるスポーツ等の「運動」が含まれ る(厚生労働省 online)。健康増進には、「中強度の運 動を 1 日合計 30 分かそれ以上、ほぼ毎日行うべき」

(Pate et.al 1995)、「活動強度は中等度だけではなく高 強度もしくはその組み合わせでもよい」(Haskell et.al 2007)のように、ある程度の強度の運動が推奨してい る。しかし、この中等度以上の運動は、自主的に行う には困難であり、実際に、146 ヵ国の学生を対象とし た運動習慣に関する調査では(Guthold et.al. 2020)、

5 人に 4 人が不活動であると報告しており、青年期の 不活動状態に警鐘を鳴らしている。今回のように外出 自粛期間中の身体活動量の調査では、強度の高い運 動をした日数 0 日が 40.9%、中等度の運動を実施した

図 2-4 心理的ストレス要因各項目の平均得点の合計

4.56

3.20

5.91

抑うつ・不安 不機嫌・怒り 無気力

4.56

5.91

3.20

何かに集中できない 色んな事に自信がない 良くないことを考える 根気がない 一人でいたい気分 話や行動がまとまらない イライラする

怒りっぽくなる 怒りを感じる 不愉快だ 感情を抑えられない 悔しい思いがする なんとなく心配だ

気持ちが沈んでいる 何もかも嫌だと思う 悲しい気分だ なぐさめて欲しい 泣きたい気持ちだ

図2-4 ⼼理的ストレス要因各項⽬の平均得点の合計

(8)

日数 0 日が 39.9%と、全く活動していない割合が高く なっている。さらに、本調査では、寝ころんだり座位 で過ごす時間のうち 6 時間が 11.1%と最も多く、次い で 15 時間以上が 9.6%、6 時間以上を全て合計すると 77.1% となっており、このような安静状態が継続する ことは、単に身体活動の不活動状態が多いとは言えな い。安静状態が継続する座位行動(本調査では座位を 含む)は、「座位及び臥位におけるエネルギー消費量 が 1.5METs 以下のすべての覚醒活動」と定義されて おり(SBRN 2012)、中高強度の身体活動量が不足し た状態とは別の概念でとらえなければならないほど、

重要な問題であるとされている(Owen 2010)。本学 の卒業必修単位である基礎体育学演習において、必ず 週に 1 回 90 分の中・高強度の運動を 1 年間継続して 実施できたことで、学生の健康増進にも寄与していた と考えられるが、2020 年度の前期においては対面授 業を提供できずオンデマンドによる講義で対応せざる を得なかった。今後コロナ禍の影響によるニューノー マル時代の到来により、新たな方法を模索する必要が ある。

それでは、実際に中・高強度の運動は、日常生活の うちどの程度の割合なのかというと、これまでの疫学 研究では中・高強度の身体活動は覚醒時の 5%程度に 過ぎず、その多くは低強度の運動(35% ~ 40%)も しくは座位行動(55% ~ 60%)であることが報告さ れている(Dunstan 2012)。つまり、中・高強度の運 動は健康増進、メンタルヘルスの改善に推奨されてい るにも関わらず、日常生活におけるその割合は少な く、低強度や座位行動の割合が高いことが分かって いる。低強度の運動であっても心疾患のリスク軽減

(Cornelissen et.al. 2009)や認知機能の改善にも効果 的(Tamura et.al. 2015)であることも報告されてお り、いかに日常生活の中で軽運動を実施できるかが重 要な課題であることも指摘されている。本調査におけ る歩行調査(日常生活における全ての歩行で 10 分以 上継続するもの)頻度の調査においては、0 日は 7.9%

と低く、3 日が 21.8% であり、最も多い割合であった。

中・高強度の運動実施は、特に外出自粛期間中などは

継続的に実施することは困難であるが、歩行のような 低強度の運動では、比較的容易に実施できる。今後の 身体活動量確保のための教育として、中高強度の身体 活動はもちろん重要であるが、緊急事態宣言のような 不測の事態においても自身の健康を維持増進するため に、低強度の運動も積極的に取り入れるべきであるこ とを啓発する必要がある。

3.身体活動と心理的ストレスの関係

2020 年の新型コロナウィルス感染症による緊急事 態宣言を伴うような社会的脅威を認知すると怒りの感 情が表出し、Canon が報告している fight-flight 反応 である闘争が行動として現れる。社会的脅威が継続 すると「怒り」の次に「不安」が表出し、最終的に

「無気力」状態になることが報告されている(Henry 1986)。SRS-18 の心理的ストレス要因各項目の平均 得点の合計(図 2-4)では、「不機嫌・怒り」(3.20)

よりも「抑うつ・不安」(4.56)が高く、更に「無気 力」(5.91)と最も高くなっている。つまり、継続す る社会的脅威は、学生に対して強いストレスが生じて おり、心理状態に悪影響を及ぼしていたことが考えら れる。このようなストレスに対して、適切なストレス コーピング(対処行動)を行うことによって、メンタ ルヘルスの良好な状態を維持することができる。実 際に、週 2,3 回、20 ~ 30 分の運動習慣がある者は、

運動習慣のない者に比べ抑うつ症状が少ないことや

(Hassmén 2000)、また、うつ病や広場恐怖、パニッ ク障害などの心理的問題が少ないことも報告されてい る(Goodwin 2003)。身体活動量は、COVID-19 対策 のような、外出自粛要請や他人との接触を避けること により、大幅に減少する。特に大学において学生間の 交流が欠如する様な状況は、身体活動量が大幅に欠如 する可能性があり、身体活動量低下を要因とした心理 的問題の増加についても危惧される。

Ⅴ.まとめ

COVID-19 による外出自粛期間により、新入生の 中高強度の身体活動量は、0 日が最も多かったが、歩

(9)

く、クロノタイプが夜型に遅延する傾向もみられた。

また、心理的ストレス反応では、「無気力」のポイン トが最も高くなっており、心理的にも負の影響をもた らしていることが分かった。身体面、心理面での不健 康の改善に身体活動は寄与することが分かっている。

今後、ニューノーマルな時代において、学生に対する 新たな身体活動量の確保の方策を考える必要がある。

参考文献

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pdf (Retrieved on JAN 25, 2020)

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図 1-2-1 強い身体活動の実施日数776314262220107105 60 530⽇1⽇2⽇3⽇4⽇5⽇6⽇ 7⽇ 86 133 249 71 27 247 97 112 15 33 39 図 1-2-1  強い身体活動の実施日数 図 1-2-2 強い身体活動の活動時間 図 1-2-2 強い身体活動の活動時間77631426222010710560530⽇1⽇2⽇3⽇4⽇5⽇6⽇7⽇8613324971272479711215 33 39 図 1-2-1  強い身体活動の実施日数 図 1-2-2 強い
図 1-2-7 寝ころんだり座位で過ごす時間2033101114157206165120128109166 60 125 73 99 177 〜1時間 〜2時間 〜3時間 〜4時間 〜5時間 〜6時間 〜7時間 〜8時間 〜9時間 〜10時間 〜11時間 〜12時間 〜13時間 〜14時間 〜15時間 15時間〜図 1-2-7 寝ころんだり座位で過ごす時間 ④寝ころんだり座位で過ごす時間   寝ころんだり座位で過ごす時間では、6 時間の 11.1%及び 15 時間以上の 9.6%が多くなった(図 1-2-7

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