埼玉大学紀要 教育学部,57(2):37‑46 (2008)
箸の持ち方 と食生活 との関連
〜小学校低学年 における調査 より〜
河村美穂 *・高橋 愛**
キー ワー ド :箸 の持 ち方、小 学校低 学年、食教育、給食
1.研究 目的
子 どもたちの食生活の乱れが社会問題 となっ て久 しい。食育基本法の制定により学校教育に おいても食青が推進 されるようになった。その なかには、スローガンを掲げて正 しい食生活 を 教 える精神至上主義的な栄養教育 もみ られる。
一方、食文化 を見直 し、伝承することの重要 性 も認識 されるようになって きた。特 にこれま であま り注 目されることの少なかった箸の持ち 方 という生活技能の低下にあ らためて注 目があ つ まるようになって きた。
そ もそ も、食生活における箸の研究は、二つ の側面か ら論 じられて きたといってよい。一つ は、箸 という食具の特殊性 とこの食具を使 って 食べ る日本食の特徴が強調 されるものである。
東アジアの一部で使用 される箸は、それぞれの 食文化 によって用途は大 きく違ってお り、食の 形態 と密接 に結びついていることは周知の通 り である。なかで も、スプー ンなど他の食具 と併 用するのではな く、箸のみで調理か ら食事 まで をす ませ て しま う 日本独 特 の箸 文化 (一色 1998)は、その特殊性 に注 目され論 じられて き た。
書埼玉大学教育学部家政教育講座 H 所沢市立北小学校
さらにもう一つの側面 としては、箸の持ち方、
使い方の技能に関するものである。箸 はひとり でに持てるようになるものではな く、一定の訓 練 によっていわゆる正 しい技能をみにつけるこ とがで きるものである。 また、箸 を持つ技能が 身についていることがその人の生い立ちや家庭 環境 を特徴付けるもの として語 られることも多 く、箸 を正 しく持つ技能 の習得 に関す る研 究 (向井 ら 1978.1981.1983、坂 田1990、立屋 敷 ら 2005a,b,C)が行われてきた。
これまでの箸の持ち方に関する研究では、以 上のような食文化や食生活 との関連か ら、 日常 生活における箸の持ち方の実態 を調査するもの が多い。実態調査 は質問紙によるもの、観察調 査 によるものがある。質問紙調査 としては、1936 年に保育者 に子 どもの基本的生活習慣の習得状 況を尋ねる中で習得の実態を把握 したものがあ り (山下 1936)この当時は、 3歳6ケ月〜 4 歳において75%の子 どもが正 しい持ち方になる
という結果が示 されている。
一方、観察調査 を自然な場面で行 う方法 とし ては、16ミリ映写機 を用いて撮影 したデータを 分析 した研究 (山下 1941)を端緒 として、現 在 まで断続的に行われて きている。 また、実際 に被験者に箸 を使 って作業 をさせて作業量 を測 定する方法 も行われてきた。
これ らの先行調査はおお よそ10年に一度の割
合で実施 されている。先述 したように箸の持ち 方に関する最初の調査 (山下1936)では、小学 校 に入学する児童の約7割が箸 を正 しく持つ こ
とがで きていたことがわかっているが、その後、
徐 々に箸 を正 しく持つ割合が低 くな り、1984年 の調査お よび1997年の調査では、小学校1年生 の児童のうち8‑10%のみが正 しい持ち方であ ると示 されている (矢田月 ら 1999)。
そこで、本研究はこれまで断続的に行われて きた箸の持ち方調査 を、小学1年生に対 してあ らためて実施 し、現在の状況を過去の調査 と比 較 してあ きらかにする。 さらに同時に行 う食生 活 に関す る聞 き取 り調査 との関連 を考察 し、小 学校低学年の時期か ら必要 とされる食教育の方 向性 を示すことを目的 とする。
2.研 究方法
本研究は、箸の持ち方調査 と、食生活に関す る聞 き取 り調査 を同一の対象児童にそれぞれ実 施する。それぞれの調査 について、以下にその 方法を示す。
A 箸の持ち方調査 (1)対象
対象学校 :所沢市内の公立A小学校 対象児童 :第1学年3クラスの男子41名、
女子54名、計95名である。
(2)観察調査の方法
日常生活での食行動の状況を観察するため に、学校給食時ので きるだけ自然な場面 を設 定 し、デジタルカメラを用いて撮影する方法 を採用 した。具体的な方法は、向井 らの調査 方法を参考にした上で観察調査の1週間前に 予備観察を行って決定 した。 この予備観察は、
観察調査 に対 して児童が慣れるという効果 も ね らったものである。観察調査の方法を以下 に示す。
①手のひら側が写るように撮影する。
②撮影は、対象児童の左横 (左手で箸 を使 う
児童の場合は右横)に位置 して真横か ら撮 影する。
③1班4‑ 5人に、調査者 を1人配置 し、 3 クラス95名の撮影 を同一給食時間内で撮影 を行った。
④調査者が対象児童 と会話 しなが ら1人につ き5‑ 6枚撮影 し、児童の気 になった行動 なども併せて記録 した。
観察調査 については、個人情報保護の観点 か ら児童の手のひらにシールを貼 り、座席表 とあわせて食生活調査 と対応で きるように配 慮 した。 また、給食前に実施 した聞 き取 り調 査時 と同 じ児童 を担当するように調査者 を配 置 して、児童が 自然な食事場面で撮影で きる
ようにした。
(3)観察調査日と食事内容
観察調査 日 :2007年2月27日 (火) 給食の食事内容 :五 目 ごは ん、子 もち し
しゃものこうみあげ、 き りたんば汁、 くさわかめ とツナのいため煮、牛乳
B 食生活に関する聞き取 り調査 (1)対象
箸の持ち方調査 と同様である。
(2)調査方法
対象児童 に対 して1対1での聞き取 り調査 を行 った。 1人につ き約5‑ 6分である。調 査者が、食生活に関する質問内容について会 話 をしなが ら聞 き取 り、記録するという方法 を用いた。会話の中であ きらかになった対象 児童の生活に関する情報 を記録 し分析の際の 参考 とした。 なお、対象児童が1年生である ことか ら、聞 き取 りの質問内容は厳選 して、
以下の通 り設定 した。
《質問内容≫
①一緒に住んでいる人は誰ですか ?
②昨 日の夜 ごはんを思い出 して ください。
(1)誰 と食べたかな ? (2)何 を食べたかな ?
‑ 38‑
(3) ごほんの時注意 されること
「上の箸 と下の箸の問に位置」「下の箸の下に位
置」 という3つのグループに分類が可能 となっ た。 (表1参照)
次にどのようにして箸 を動か しているのかに ついて一人につ き5‑ 6枚撮影 した写真 をすべ て参考 にして検討 した。そこで箸 を動か して使 う状態にするには親指が重要であると考えた。
箸は親指 を支点 として中指 ・人差 し指を動かす ことによって機能を果たす ものであ り、酒井の 研究か らも、親指が出す ぎて しまっているもの はまだ幼児期の発達段階にあることがわかって いる。つ ま り、親指の使い方によって箸 を使 う 技能が どの程度習熟 しているのかを見 ることが で きると考えた。 ここでは、データを見る限 り 親指が立っているか、いないか、つ まり支点 と して機能 しているか どうかで分類 した。 さらに、
それぞれの分類 にあるものを一色 (一色 1996) や酒井 (酒井 1996)の分類 を参考 に して、そ の他の人差指 ・薬指 ・小指の様子や、箸 を持つ 位置などか ら特徴 によってさらに細かい分類 を 試みた。
2)結果と考察〜小学校低学年における箸の持ち 方の実態
表1に、以上の分析のプロセスによって得 ら れた結果を示 した。
中指に注 目した ところ、表1に示 したように 中指が上の箸の上 に位置するもの30人、上の箸 と下の箸の間に位置するもの29人、下の箸の下 に位置するものは31人 とほぼ同数ずつであった。
中指が正 しい位置 にない児童が61名 と全体 の 2/3であ り、当初正 しい持ち方をした ものが極 めて少 ない という印象 を持ったことの裏づけと なった。中指の位置や使い方を正す ことがで き れば、正 しい持ち方に近づ くと考えられる。
中指が正 しい位置にない ものの うち、上の箸 の上に位置するものは、箸がクロス して しまう 傾向が見 られる。 これは 「はさむ」行為 をする 時、中指によって上の箸 を持ち上げてはさむの ではな く、中指が上の箸の上にある状態で無理 や りはさもうとしていることによるものである
と考えられる。逆 に中指が2本の箸 に完全 にお おいかぶ さって しまい、二本の箸が一本 として 機能 しているものも見 られた。
もう一つの中指が正 しい位置にない分類の、
中指が下の箸の下に位置するものでは、箸がク ロスする形はほとんど見 られず、人差指 と親指 で箸 を握って しまった り、人差指で上の箸 をお さえて しまうことにより、 1本の箸 として使 っ ているものが多かった。
さ らに、中指 の位置 に関す るそれぞれの グ ループを親指に注 目して分類 した。 ここで親指 が 「立っている」 とは、親指 を使 えていない、
本来の支点 としての機能を果た していない とい うことである。つ まり、親指の第一関節で上の 箸 を支えているのではな く、上下の箸 を親指 と 人差指の股で挟み込んでいるものである。見た 目には上の箸 よ り親指が出す ぎて しまっている ということになる。
中指 と同様、親指 も正 しく使えているものは 少ないが、中指が正 しい位置にある29人のうち の25人 は、親指が立 っていない正 しい状態 に あった。他の二つのグループでは、親指が立っ ていない者が、上の箸の上に位置するグループ の30人 中15人、 また下 の箸 の下 に位置す るグ ループの31人中17人である。 これ らの比較か ら 中指が正 しい位置にあるグループの者は親指が 正 しい状態にある割合が高 くなっていると言え る。つ まり、中指が箸 と箸の問に入 ると、必然 的に親指 も正 しく使 えると考えられ、箸 を正 し く持つには中指の位置が鍵であるということが わかる。
ただ し、 これ ら25名には、箸 を持つ位置が下 す ざるもの、人差指が機能を果た していないも の、薬指や小指が使 えていないもの、親指が外 を向いて しまっているものなども含 まれている。
データで判断する限 り比較的正 しい持ち方がで きていたものは16名であった。 これは、見た目 や機能性が実用 に足 りるという規準で抽出 した ものである。矢田月 らの1997年調査では (矢田 月 ら1999)小学校1年生の10%が伝統的な持ち
‑ 40‑
表 1 箸の持ち方調査の分 析結果
中指 親指 例 人数 特徴 例
人数 特徴
上の
箸 、・I・、(/繁1、、:、;、〜:/〜2鍼::、塞 き.….、紫 .、、、や.つ.5.も/;.滞、′.、琴≡…㌔.:さ:、、 3 箸が クロス して しまっているものo 3 ず、上の箸の上 に添 え られ親指 と中指で完全 に握 って しいるO箸が一本化 しているoまっている〇人差才旨は使 われて
∫′;I//ミ船 だ、、.琴惣努 髪八7、秘*ヾ夕㌧J/Sv/‑〜t/‑重や//.妻//A∫、菜、:、汚符で.//i 3 とて もゆる く撮 っている0 人 釈.、フ〜潔労///㌔ ・亀.:/グ"‑:磯済添..響浴象 6/〜/ 人差指 と中指、薬指 と小指が の
上に 差
指で箸 を握 っていないo 2本ずつペ アになっているo 荏
置 ・つ、、、W砂浴′nt;/1 ・ 6 中指 を正せ ば、正 しい持 ち方
感::‑i‑"Skis
‑桝 黙‑添 1 人差指が機能 を果た していな 30 …雄 .塞 繁㌧k.きま≡/〜
I/涙 三′要義
・、、…譲与主:〜{//≡;3妻 ど/IV鮎、・苛等‑整 準琴 になるo いL:
S 8 箸が クロス してお り人差指が伸 びている0 7クロス していないo、 1名は名が 上の 糸・二、㌔二‥、逢:.、、㌔三、、/、/、/:二/:義:ンミ/:/ニ≡:/、芯ご鼓弓?1/㌔、‑ 4 親指が少 し出す ぎて しま
箸下のと って
箸の野 ≡;;/;:・/、二::発、主き要.三、、、、…;終;素′:≧ いるo
/義.:Jf蔓
/、、.、つ 、、豪謹厳 汲…琵琶 16 正 しい持 ち方○ 2 薬指 と小指が使 えていないo に
位置 29正し tIJ・、三÷/無=・、字.V漣.〜:凝…麦、.ミ…㌔÷〝.′.:、…、/、㌔:
≦、搬 送
三、㌔、′衰/:/、、… 誉 4
箸の下 を持 ちす ぎるo /済きW′ /き冶 2 親指が外 を向いて しまっているo
、ぢ 1 人差指が機能 を果た していないo
下 の 箸の下に
位 I:/、立 ‑≡//、、 5 人差
指が独立 して違 う方向を向 め‑‑n Nj/、′. 6 人差指が深 く入 り、親指 と2 き、親指が他の3本の指と同じ方 本で箸 を撮 って しまっている○
さ
、…:、、、詔三三〜/、妻ふ::〜、r///:1//幣落琴′茅 向を向いているO親指と人差指が‑/;≧≦/:∴ r//1///
努ま そのなかで、比較的その程度
三、、
、//:怒季夏、
㌔:/弾 ま:、、、
・
慕、‥、1㌔蓬三、、≡㌧数 ;: 3 ほぼ直角e箸が一本化 しているO が軽い ものが2名である○
小指 と薬指が使 えていない○
/ill滋怒 羨㌘,p‑‑か 、繋発.‑磯/‑/I9 指がまとまって同 じ方向を向い人ているO中指を正せば、正しく美差指が独立し、中指 .薬指 .小 1 独特中指の位置が正 しいだけで、
な持 ち方○
置 31/?;八キミ::;/Zii./㌔:;≡.//、//'A/棄 蔓崇、+、;;:!/;〜、蔓
方であるという結果 よりも、本調査結果は抽出 規準が緩やかであったと考えられる。
中指が上の箸 と下の箸の間に位置 しているも の以外の61名はどれ も 「はさむ」機能を果た し ていない と考えられるが、実際には、子 どもた ちは無理や り箸 を開いた り閉 じた りして、 どう にか して食べ ようとしている様子が うかがえた。
また、上手に使 うための基本 としては、箸 を 軽 く持つ こと、指に力 を入れないことがあげ ら れるが、観察調査か らは、全体の傾向 として力 を入れて箸 を持っている様子がみ られた。対象 児童の多 くが箸 を持つ技能については発達途上 にあると考えられる。
B 食生活に関する聞 き取 り調査 1)分析方法
多 くの質問項 目については単純集計 を行った。
なお、食事の内容 を問う質問については、その 回答か ら判断 し 「栄養バ ラ ンスの よい献立 に なっている食事」「カレーや井 ものなどの単品の 食事 (バ ランスはよくない)」「偏 った不十分 な 食事」「食べていない、忘れたもの」の 4つに分 類 した。
以下に分析結果を示す。
2)児童の食生活の実態
食生活 に関する聞 き取 り調査の結果は紙幅の 都合 によ り、特徴的な部分だけを示す こととす
る。
①一緒 に住んでいる人
両親 と兄弟 という家族構成の家庭が68人で ほとん どを占めた。祖父母が同居 している家 庭は17人であったが、 このうち一緒に食事 を
していると判断で きた者は少なかった.
②夜 ごほん (夕食)について
夕食については、今問題視 されている孤食 は見 られなかったが、家族が揃 うのは難 しい ようであった.食事利 く食事のマナーや食べ 方について注意 をされているかについては、
注意 されることを具体的にあげることので き なかった8人 も含めると、48人が 「されない」
と答えてお り、全体の半数 を占めた。子 ども 自身が食事中に注意 をされないと答 えている ということは、実態 に多少のずれがあったと して も自覚 をしていないということである。
さらに食事中に注意 されるものの多 くが、
父親が不在が多い ということの影響か、母親 か らの注意であった。 また、食事中にテ レビ がっているかについては、「ついている」 と
「たまについている」 を合わせ ると7割にの ぼった。
③朝 ごはん (朝食) について
朝食については、欠食は1名であ り、 これ までの調査 に くらべて低い割合 を示 した。た だ し、その内容 に問題がある結果 となった。
表2に示 したように、朝 ごはんの食事内容 と しては、パ ンだけであった り、ケーキやたい 焼 きなど甘いおやつのようなものが食卓にの ぼっていた り、ごほん とパ ンと言 うように主 食 を2つ答えた児童 も多 く、結果 として偏っ た不充分な食事が7割にのぼった。朝食は夕 食 に くらべて軽視 されていることが明 らか と なった。
④夜 ごはん (夕食)に食べたいもの
児童の食の時好 をあ きらかにするために食 べたい ものをたずねた ところ、「ハ ンバーグ」
のように主菜 を単品で回答する児童が大多数 を占め、ごほん、みそ汁、サ ラダ とともに
「献立」 として回答 した子は3人のみであっ た。対象児童は、献立の認識がほとんどない と言える。
表2 夕食、朝食 (食べたもの を思 い出 して回答)内 容の分類
(人)
夕食 朝
食 献立になっている食事 46
18 単品の食事
15 2 不十分な
食事 19 71
忘れた、食べていない 15
G)食具について
料理を写真で見せて用いる食具 をたずねた ところ、ほとんどの児童は和食は箸、カレー ライスはスプー ン、スパゲ ッティはフォーク と正 しく認識 していた。一番好 きな食具は81 人が箸、箸 を上手に使 えるかについては、「は い」 と 「たぶん使 える」 を合わせ ると78人で あ り、対象児童は日常的な食具 として箸 を認
表3 箸 の持 ち方調査分類 にお けるR群・1Ⅳ群 児童の
中指 親指 R群
W群 上 の箸 の上 に
位置 立 ってい る立 っ 4
ていない 3
上の箸 と下の
箸の間に位置 立 っている
1 立 っていない 16 下
の箸の下 に
位置 立
っている
2
立 っていない 1
スプー ン 5 識 していることがわかった。 し
か し、箸の持 ち方調査では、正 しい持ち方がで
きていたの は16人であ り、実際に箸 を持つ技
能 と認識の 間には大 きなズ レがあ
ることがわかった。
(2)箸の持ち方 と食
生活 との関連 箸の持ち方調査、食生活に関する
聞 き取 り調 査のそれぞれの調査の結果を受けて
、 2つの調 査の関連 をみた。方法は箸の持 ち方
調査で正 し い持ち方 とした16人 (以下R群) と
、機能的に も見た 目にも明 らかにおか しな持ち
方 をした11 人 と箸 を使用せずにスプー ンのみ
を使用 して食 事 を していた5人 を合 わせ た16
人の グループ (以下W群) を設定 し、聞き取 り調
査の全ての 項 目について比較 を行 った。R群
とW群それぞ れの箸の持 ち方の分類表における
分布 は表3の 通 りである。比較の結果、ほとん
どの項 目にお いては違いが見 られなかったが、
夕食 について 顕著な違いが認め られた。結果を表
4に示す。
R群の児童は料理の品揃 えの数が豊富であ り、
表4 箸の持 ち方R群児童16名 とW群児童16名の 夕食の内容
(栄養のバ ランスが よい と判断 した ものを網掛 けで示 した)R 群
W 群
1 覚 えてない
忘 れた (作 って くれた もの)
2 ご飯、ウインナー、牛乳 おかゆ (卵)
3 白十三飯∴事魚∴韓子ネ十ブ十かつ準 美〉÷;嬢 きゃ 左葉譲.華 を 雫 軒 凍 卑字音 縫とんかつ萎箪 寮生 ※華 を 貰笑::/I
4l★ こ祭繁 カ レーライス
、
5 o∝.、、‑i 華董単 葉/≡ ドライカレー 6 ≡1< I/禁 、ヽこ‑、、> ん 覚 えていない 7 スパゲツ
ィ、みそ汁、グラタン お肉
8 ヽlll やきそば、麦茶
9 審 孝牽 ・三三栄華本業学 者樵 .朱 も号肇釆準チ
拳奉幣 {=…;3;〜 10I/…貸主き;‑萎 冬草I/‑i/ ㌔i カツ井
ll享 蓋 藩惹き守 繋衰嘉譲葉言ささきん≡妻蒲葉 菜 …≡:<…≡ …}/≒
主食 ・主菜 ・副菜 ・汁物 といったバ ランスのよ い食事 (網掛 け部分) をとっている。単品を回 答 した児童はいなかった。つ まり、献立 として 成 り立つ食事 をしていたのである。
一方、W群の児童は単品の食事 を回答 した も のが多い。同 じ料理である 「カレー」や 「井 も の」 とい う回答であって も、R群の児童 はサ ラ ダやみそ汁 を共 に回答 しているが、W群の児童 は単品のみで回答 している。
以上の結果か ら、W群の児童は一度の食事で 口にする品数が少な く、食べる経験が少ないと いうことが考えられる。食べる経験が少ないと い うことは、多様な食材や料理、味を知 らない ことにつながる。 また、「おい しい
」
「楽 しい」といった食に関わるプラスの経験が少ないこと も予想 される。
W群の児童は聞 き取 り調査の記録か らも、食 に対する興味・関心が低い と考えられ、「食の楽 しみ」 を充分に体験 していない ということが推 察 された。 さらに、夕食に食べたい ものの調査 結果では、R群W群いずれの児童 も献立 として 回答 しなかったとい う先述の結果 と併せて考え るな らば、R群の児童は食べた ものをよく記憶 していること、つ まり食べ ることに対する興味・
関心が高い と言 うことがで きる。それに対 して W群の児童は、実際に食べたものをすべて回答 していない可能性があることを考慮 しても、食 べた ものを記憶 していないということであ り、
R群の児童に比べて食べ ることに対す る興味 ・ 関心が低いと考えられる。
(3)箸の持ち方 と食べることから考 える食教 育の方向性
本研究では、現在の小学校1年生児童 を対象 として、箸の持ち方 という生活技能が どの程度 習得 されているか、 また、箸の持ち方の状態が 食生活の実態 と関連があるのかについて検討 を 加 えた。箸の持ち方に関 しては、予想以上に正
しく持つ ことのできない実態が明 らかになった。
また、不十分な朝食 をは じめ とする食生活の実
態が明 らかにな り、食に関する問題状況が広範 に及ぶことも示 された。
本研究で明 らかになったように、 どのような 食事 を取っているか ということと箸の持ち方は、
密接 に関連 している。 このことは、様 々な料理 が食卓に並ぶことによって箸 を使 う機会を多 く
もち、箸の持ち方 も上達するというよいサイク ルが回るということを示す もの と考えられる。
その際、単に様 々な料理が並ぶことだけではな く、その質つ まり食事の内容が重要であると考 えられる。 このように食卓に様 々な料理が並ぶ ということは、その家庭の食に関する関心が高 い とい うことであ り、食卓が箸の持 ち方 を教 え る場 とな り、 コミュニケーションを図る場 とな るということである。
本来、食卓に並ぶ様々な料理は健康 に生 きて い くための ものであ り、家族や仲間とコミュニ ケーションを取 るための ものである。 さらに、
食事 を通 して 「おい しいね
」
「楽 しいね」と感 じることが、食への興味を育み関心を高め、食文 化 を継承する営み‑ とつながることを再認識 し たい。
以上のことか ら、箸 を正 しく持つことがで き ない児童は 「箸 を正 しく持つ ことがで きない」
ことを問題 として扱 うことよりも、食べ るとい う営みを豊かにしてい くことが必要であると考 えられる。
すなわち、本研究で分類 したW群の児童は、
箸 を正 しく持つ ように指導することが問題の解 決にはならないのである。箸の持ち方 も含めた 食全体の営みをとらえ直 してい くことが必要 と なる。調査結果にもあるように、食の営みの中 心は家庭であ り、学校教育における食教育 も家 庭 との連携 を図る必要があることが理解で きる。
家庭 を視野に入れた食全体の営みを捉 え直す実 践 に関 しては別稿で提案する。
最後に、本研究の調査 を快 くお きひうけ くだ さった所沢市立A小学校の1年生児童の皆様 と 先生方に御礼 を申し上げます。
‑ 44‑
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(2008年3月31日提 出) (2008年4月25日受理)
A Research of the relationship between using chopsticks and the eating of foods in daily life
Miho KAWAMURA and Ai TAKAHASHI
Keywords: Use of chopsticks, The lower grades students in elementary school, Food education, School lunch
Recently there has been discussion about problems concerning children and foods they eat.
This has been especially true for learning how to use chopsticks.
Using chopsticks is not only about technique and discipline, but about culture. The aim of this study is to examine the relationship between using chopsticks and the eating of foods in daily life.
Authors examined how 95' students used chopsticks while eating school lunch using digital cameras, and then compared the results with the preresearch. Interviews about the eating of foods in daily life for all 95 students were used.
The results were as followed
1) Only 16 students used chopsticks correctly. (Under 20%)
2) The main point in correct use of chopsticks is the position of the second finger and use of the thumb.
3) Breakfast was insufficient for most students.
4) Students using chopsticks correctly have a better balanced dinner than students using chopsticks incorrectly.
It is so important to teach not only using the techniques for chopsticks, but correct eating habits. Though these are essentially learned at home, they must be taught in school because of present family conditions.
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