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有明海湾奥部における 2007 年成層期の貧酸素水塊の形成過程

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Academic year: 2021

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有明海湾奥部における 2007 年成層期の貧酸素水塊の形成過程

矢北孝一:環境建設技術系

1. 研究の目的

有明海湾奥部の沿岸域における環境悪化の要因の一つとして貧酸素水塊の大規模・長期化が指摘されている.

貧酸素水塊の発達・消散には,様々な要因の相互作用があると考えられるが,貧酸素水塊形成時の時空間的な 密度・流動構造が明確化されていないのが現状である.

本研究では,有明海湾奥部における 2007 年成層期の貧酸素水塊の形成過程の把握を目的として,観測デー タの溶存酸素濃度(以下,DO),密度(以下,σt) ,成層強度指数(以下,St)等の時空間変動及び密度場を考慮 した流動解析を実施することで,密度・流動構造の視点から貧酸素水塊の形成過程について検討した.

2. 研究内容

観測地点は 16 地点,観測データは,2007 年 7~9 月間における表・底層付近での水温,塩分濃度,DO,σt の観測間隔 1 時間値を用いた(図-1) .なお貧酸素状態は,DO が 3.0mg/ℓ以下とした.底層の DO 変動は 7 月上 旬~中旬のように短期的な貧酸素状態が確認でき,8 月中旬~下旬の長期的な貧酸素状態は,湾奥全域で約 14 日連続しており,DO が低下傾向を示す時期は,地点間にタイムラグがある.この要因として,短期的には,

潮汐,台風等の影響,長期的には筑後・矢部川等からの淡水流入の影響が示唆される(図-2,図-3,図-4) . 湾奥部のσt の経時変化より,DO が長期的な低下を示す 8 月下旬では,出水時期と比較し,表・底層間での密 度差は小さい(図-5) .一例として示した 8/12,30 日の St 空間分布より,貧酸素状態でない 8/12 の湾奥部,

諫早湾で St が 25~30 を示すが,貧酸素状態となる 8/30 では 10~15 である.また,潮汐フロントの位置を約 10.0 J/m

3

と仮定すると,8/12 では北東方向に沿った形状となる.このことより東部では鉛直混合が強く,西 部域では,それが弱い傾向を示すことが分かる(図-6) .

以上のように,密度・St ・貧酸素水塊の形成には,時空間的な差が確認され,その要因として,流動場の 影響が考えられる.そこで,貧酸素水塊の形成過程を流動場から検討するため,密度を考慮した流動解析を実 施した.流動モデルは POM を基本とし,鉛直方向の不等間隔格子の採用,干潟冠水時の流速値の連続性の考慮 等の改良を行った.初期条件の影響を消すため助走期間として 6/1~30 日を設定した.対象期間は 2007 年 7

~9 月上旬の 72 日間とし,計算条件を設定した(表-1) .計算領域は,有明・八代海間の振幅,潮汐への影響 を考慮した.南西側の境界条件は,国立天文台で開発された NAO99 より,座標原点位置での 1 年間の 1 時間毎 の潮位変動を推算し,主要 4 分潮を与えた.河川流入量は,主要 8 河川の時間流量を計算時間毎に与え,コリ オリ力は考慮し,日射,風向風速の気象等の影響は無視した(図-7) .

大浦潮位変動と計算値の比較より,潮位の増減,周期は実測値に近い傾向を示すが,過小評価が確認できる.

また,地点 H の表・底層付近の M

2

潮の潮流楕円の比較では,表層の流向の再現性は良好であるが,底層では,

時計回りに誤差があり,流速値も過小評価されている.しかし,流速値,流向に大幅な差異が無いため流動モ デルでの計算結果は評価できると判断した(図-8,図-9) .P1 地点でのσt の再現性を検討すると,表層付近 では,河川からの出水に伴う急激な密度低下を再現できていないが,長期的な傾向は一致している.一方,底 層付近では,周期性が再現され 7/1~8/31 までの実測値の低下傾向を再現している(図-10) .

以上より求めた 8/12 の St 空間分布では,河口付近と湾奥西部で混合強度が明瞭に区分され,湾奥西部にお ける DO の低下より先行していることが分かる.(図-11) .DO の経時変化を 8 月中旬~9 月上旬まで 10 日間に 分割することで,貧酸素水塊の発生・最盛・消滅期の 3 期とし,底層付近の流速とσt を地点 D,F,H の実測値 と比較検討した.一例として示した 8/11~8/12 において,σt20 のフロントが諫早湾口付近まで北上し,8/31

~9/9 と明瞭な差となっており,これが安定した成層形成に寄与したことが示唆される. (図-12) . 3. 主要な結論

2007 年成層期における貧酸素水塊の形成過程について,実測値と数値計算より検討した結果,筆者らが既 にウェーブレット解析により明らかにしたと同様,地点間に時空間的なタイムラグがあり,東部と西部での成 層強度の違いを示した.流動解析より,成層強度と底層付近での密度の違いを示し,貧酸素水塊の形成過程の 一端を明らかにした.

88

(2)

計算領域 90km×140km

格子幅 400m×400m

格子点 225×350×14

鉛直層数 13

水温・塩分値 海水:28℃,34psu 淡水:25℃, 5psu 境界波高・周期 主要 4 分潮

計算ステップ 外部: 1 秒 内部:10 秒 干潟判定水深 0.20m 最低水深 0.01m 表-1 有明・八代海計算条件

図-8 大浦での潮位変化

-2 -1 0 1 2

Obseved

Calculation

H(m)

(days)

7/1 7/10 7/20

図-10 P1 地点でのσt の経時変化 DO の空間分布

0 10 20

P1-Surface

Observed Calculation σt

(day)

7/1 7/20 8/1 8/20

16 18 20 22

P1-Bottom

Observed Calculation σt

(day)

7/1 7/20 8/1 8/20

(a)

(b) 大浦 ■

大浦 ■

▲筑後川

▲矢部川

図-1 観測地点 x

y

図-2 底層における DO の経時変化

図-3 筑後・矢部川のハイドログラフ

101 102

103 筑後川

矢部川 Q(m3/sec)

(day)

7/1 7/20 8/10 8/30 9/20

Rain(mm/day)

0 100 200

台風 4 号

台風 5 号 台風 11 号

0

5 Bottom

B3 P1 T14

DO(mg/l)

(day)

7/1 7/20 8/10 8/30 9/20

図-7 計算領域と水深分布

▲筑後川

▲矢部川

▲菊池川

▲白川

▲緑川

▲球磨川 大浦 ■

六角川▲

▲嘉瀬川

図-4 DO の時空間変化

(a) (b)

(c) (d)

(a) (b)

図-9 地点 H での潮流楕円

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4 H-Surface

S-N(m/s)

E-W(m/s)

Observed

Calculation

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4

-0.4 -0.2 0 0.2 0.4 H-Bottom

S-N(m/s)

E-W(m/s)

Observed

Calculation

(J/m

3

)

図-11 St の空間分布

図-12 底層付近での 10 日間平均流とσt の空間分布

(a) (b)

図-5 σt の表・底層の経時変化 DO の空間分布

(a)

(b)

12 16 20

Surface

B3 P1 T14

σt

(day)

7/1 7/20 8/10 8/30 9/20

16 18 20 22

Bottom

σt

(day)

7/1 7/20 8/10 8/30 9/20

図-6 St の空間分布 DO の空間分布

(J/m

3

)

(a)

(b)

(J/m

3

)

89

(3)

・1 実施期間 平成 23 年 2 月~平成 23 年 4 月

・2 業務内容 概要の原案,数値計算,データ処理及び考察を実施

90

参照

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