より良いNMRスペクトルを得るために : 2-D NMR測定の最適化
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(2) は、より高分解能での実験が求められますので、更に2倍以上のデジタル分解能 が必要となります。. 》 積算回数TIMES 2−D測定では、積算1回でガ側のポイント数だけ積算を繰り返すこととなり、 非常に長い時間がかかります。そのため、ある程度濃い濃度のサンプルを用意し て時間の短縮を図ります。ただし、積算の最小数は、位相回しの数によって決ま っており、測定法によっても異なります。当然ながら、感度が不十分な低濃度サ. ンプルでは、更に積算回数をn倍する必要があります。一方、後述のパルス磁場 勾配法では、位相回しをある程度無視できる測定手法2)のため、大幅な時間短 縮が可能となります。. 〉 遅延時間PD NMR現象の緩和は非常に長いので、定常状態に戻るまでFID3)の取り込み後 の待ち時間(PD)を十分に空ける必要があります。故に、 PDは観測核の縦緩和. 時間乃に応じて決定します。当然ながらサンプルや測定方法によっても最適な 時間は異なりますが、長めに取ることで十分な感度を獲得でき、失敗は少なくな ります。90。パルスを用いる通常のパルス系列では、最適感度を得るために繰り. 返しを71より長い間隔4)で行います。これはFIDの取り込み時間(AQまたは AcQTM:acquisition time)も含めていますので、実際はAQ+PDとなります。 2−D測定では時間を最適化して、PDをおよそ1秒∼2秒程度に設定しています。. ◆測定時間を短縮する様々な測定手法 》 プロトン観測異種核二次元シフト相関. NMRはしばしばマシンタイムが運用のネックとなりますが、感度向上と時間 短縮のために様々な手法が開発されています。たとえば、IH−13C相関に代表され. る異種核相関を調べる方法では、近年、HMQCやHMBCなどのプロトン観測で 測定することが主流となっています。これは、低感度の核で観測するよりも大幅 に感度が増大するためであり、実際に13C観測のIH−13C相関実験で一晩かかっ ていた測定が、一時間程度でも観測できるようになります。更に、観測不可能な 希薄なサンプルでも1H観測ならば可能となる場合もあります。従来は、不要な 12Cと結合したプロトン信号(親共鳴)を消去するのに難しさがありましたが、 2通常は位相回しも合わせて使用する。 3 :丘噛ee induction decayo. 4繰り返しの時間効率を考えると、1.3乃が最適なS/N条件となる。. 7.
(3) 次に述べるパルス磁場勾配法によって極めて有効な手法となりました。. 》磁場勾配パルス法 最近、一般化してきた手法として磁場勾配パルス法(PFG:Pulse Field Gradient). を利用した二次元測定があります。磁場勾配パルスを利用する目的は、“コヒー レンス移動経路を選択する”ことでサンプルの信号のみを取り出すことであり、. よりノイズの少ないスペクトルが得られます。従来の測定は、位相回し(Phase cycling)によりコヒーレンス選択をしているので、サイクルに応じて決められた. 積算回数で測定しなければなりません。したがって、最低でも30分∼1時間程 度かかるのが普通でした。また、位相回しでは差スペクトル処理による’1ノイ ズの発生や、先に述べた親共鳴の不要信号が消え残る場合が多々あります。磁場 勾配パルス法では、これらの問題を効率よく解決し、ノイズが大幅に減少します。. AL400では3セットの磁場勾配パルスしかかけることができませんが、COSY、 DQF−cosY、 HMQc、 HMBcの各種方法に適用できます。ただし、分子拡散係 数の早い化合物では、信号の減衰が大きくS/N比の悪いデータになることがあ るため注意が必要です。. ◆きれいな2−Dスペクトルを得るためのデータ処理 2−Dのデータ処理は、実施者によっては大幅に概観が変わってしまうこともあり、. 適当に自動処理で行ってよいものではありません。逆に上手に測定できなかった データも、ある程度は処理によって見栄えが良くなることもあります。 》 ウインドウ関数. 最も重要な処理としてウィンド ウ関数があり、これは言わば人工的. にFIDシグナルの減衰を変える事 に相当します。たとえば、FIDが緩. やかに減衰するように末端部と中 間部を大きくするようなウィンド ウ関数をかければ、減衰時間を長く. するのと同等の効果があるため、結 果的に分解能が向上します。ただし、. 図2 ウィンドウ関数の効果 上図:ウィンドウ関数をかけないFIDとスペクト. 取り込み時間AQは変わりません. ル。下図:IH:zで指数関数のウィンドウ関数をかけ たスペクトル。下図ではノイズ部分の多い末端を減. ので、末尾がゼロにならないことに. 算させることでS加比が向上している. 8.
(4) よるノイズ5)が生じることもあり注意が必要です。一方で、急速に減衰させる. ようなウィンドウ関数をかければ、ノイズ比の多い末端部分が減少するために S∠N比が向上します(図2)。これらのウィンドウ関数は、実際のスペクトルを確 認しながらパラメータを調節し、最適な条件を探していきます。定性的には、 FIDのノイズ部分を減らし、かつ信号を大きくすることがポイントです。. 取り込み時間AQの短い2−Dや多核の場合は、末端がゼロとなるような関数 を使用します。特にAbsolute COSYでは、 FIDの経過とともに交差ピークに由来 する信号が大きくなるため、初期と末端を強く打ち消すようなsine−bell関数等を 使用します。. 》ゼロフィリング ゼロフィリングは、言葉の通りFIDの末端にゼロとなる信号を挿入する方法 で、付属の解析ソフトでは1回につき時間領域のデータ点を2倍にします。この ようにゼロを挿入することによって、データポイントが増加しデジタル分解能が 向上します。ただし、先に述べたように完全に減衰していない状態にゼロフィリ ングを行うとノイズが生じますので、適切なウィンドウ関数を使ってゼロにする か、または線形予測6)という特殊な方法で処理します。高分解能1−Dスペクト. ルでは、AQが数秒と長いのでウィンドウ関数の併用を意識する必要はありませ んが、AQの短い2−Dでは極めて重要となります。 》 ノイズ処理. その他に、装置の不安定性によってシグナルの 縦方向伍軸)に帯状に’1ノイズが生じることがあ りますが、それらを消去するために対称化などの 方法があります。このようなノイズ処理は、取り. トllilllllllllll∴}llllll∵ 一一. E一一一一一一. G一. @, ;『l i. @ す’ F { 4 T’. 扱いに注意しながら利用すれば有力な手段となり ます。. E1 」_. 参考資料. ・エルンスト2次元NMR原理と測定法(吉岡書店) ・有機化学のための高分解能NMRテクニック(講談社) ・化学者のための最新NMR概説(化学同人) ・これならわかるNMR(化学同人). 図3 ’1ノイズ. 5末端が切り捨てられた(truncateされた)状態であり、シグナルの付近に波状の信号 (ripPle, wiggle)が現れる. 6当センターの解析用端末のACD/SpecManagerに付属。. 9.
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