• 検索結果がありません。

アメリカにおける読むことの指導の基礎理論 : Kenneth Goodman の理論と whole language

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "アメリカにおける読むことの指導の基礎理論 : Kenneth Goodman の理論と whole language"

Copied!
13
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)23. アメリカにおける読むことの指導の基礎理論 -Kenneth Goodmanの理論とwhole language-. 堀江祐爾* (平成7年9月20日受理). 0.はじめに. る。われわれは言語をうまく育んでいこうとしながら, かえってそれを困難にしてしまっている。どんな風にし. アメリカ合衆国の国語教育界においては, 1980年代後. て?全体的(自然な)言語を細かく抽象的なものにく. 半より,くホール・ランゲージ(wholelanguage))1)逮 動が展開され,現在に至っている。. だくことによって,である。小さな児童は単純なかみく. だかれたことがらを学ぶのが一番いいのだ,と考えるの. (ホール・ランゲージ)は,アメリカにおける国語科. は理屈にあっているように思われる。そして,われわれ. 教育,特に読みの指導における「改革」をめざす「民間. は言語を単語,音節,そしてそれぞれの発音という部分. 教育運動」の一つである。アメリカには,日本の教育に. に分ける。不幸なことに,言語のもつ自然な目的一意昧. おける学習指導要領のような,全国レベルで指導内容を. を伝えること-は先送りされ,抽象的で児童の欲求や経. ある程度方向づけるものはなく,地区ごとに指導の方針. 験と関係をもたないものに,言語はなってしまってい. が決められるという伝統がある。したがって,くホール・. 互。4). ランゲージ)が他の指導法にとってかわってしまったわ けではない。しかしながら,従来の指導の問題点のいく. 「全体的(自然な)言語を細かく抽象的なものにくだ. つかを解決する可能性を持った方法として,多くの教師. くことによって」 「学校では,実際は言語の発達を妨げ. がこの指導法を試みているのは確かである。. てきた」と指摘しているように,くホール・ランゲージ) は,従来の読みの指導に対するアンチテーゼとして登場. 人間は誰でも生まれると同時に,とくに母親のもとで,. した。この意味でく新しい)のである。. 自然で豊かな言葉に接しながら自然に言葉を習得してい. 次の一覧は,くホール・ランゲージ)と従来の方法と. く。簡単に言えば, 「全体」とは,実際の場に即した自 然なその「まとまり」である。したがって,言語を要素. を比較したものである。5) 【言語を学ぶのがやさしくな. 的に取り出した取り立て指導や,スキルだけを実際の場. を学ぶのがむずかしくなる時】が従来の指導法の場合を 5S*. から切り離して取り出した,いわゆるスキル学習は,そ. る時】がくホール・ランゲージ)の場合であり, 【言語. の自然な学習に反するものとして,強く拒否している。 「ホール」は「部分」に対する「全体」という意味で,. 言語の学習は「全体から部分-」という方向が鉄則であ る,というのがホール・ランゲージの基本とする立場で. ある。2) くホール・ランゲージ)では,上の引用(引用中の下 線は堀江が添えたものである。以下同様)にあるように, 「言語の学習は『全体から部分へ』という方向が鉄則で ある」という立場にたつ。こうした姿勢自体は,いわゆ る「総和の優位」を唱えるゲシュタルト心理学などがす でに強調しているところであり,くホール・ランゲージ) 独自のものではない。では,なぜくホール・ランゲージ). 【言語を学ぶのが 【言語を学ぶのが やさしくなる時】 むずかしくなる時】 自然である時 ・人工的である時 全体的である時 ・細かくくだかれている時 意味をもつ時 ・意味のない時 興味をひく時 ・退屈で興味をひかない時 関係をもっている時 ・関係をもたない時 それが学習者に属している時 ・それが他の人に属している時 実際のできごとの一部である時 ・コンテキストをもたない時 社会で役立つものである時 ・社会で役に立たない時 日的をもつ時 ・目的をもたない時. ・学習者が選択した時・他人から無理やり与えられた時 ・親しみやすい時・親しみをもてない時 ・学習者がそれを使う力がある時・学習者がそれを使う力をも maS&i. がく新しい)3)読みの指導法として注目を集めているの であろうか。. こうしたアンチテーゼ性,つまり教師に「変革」を迫 る理論であるからこそ,くホール・ランゲージ)は多く. 学校では,実際は言語の発達を妨げてきたように思え *兵庫教育大学第2部(言語系教育講座). の教師の注目を集めたと言えよう。しかし,ただ抽象的.

(2) 24. に「変革」を求めるだけでは,教師たちは実際にどのよ うにすればいのか迷ってしまう。くホール・ランゲージ) 運動においては,後に論じるように, 「改革」の方向が. ある文章を音読する場合, 「熟達していない読み手」は, く文字コード)を単にく話し言葉コード)に置き換える (Goodmanはこの部分をrecordと呼ぶ)だけである。. 提示されただけでなく, 「改革」の方法をもが示された。 くホール・ランゲージ)の示した方向・方法の中で, 最も重要な概念は,先の引用にあった「言語のもつ自然. 一方, 「熟達した読み手」は,く文字コード)をいったん. な目的-意味を伝えること」である。そして,その「意 味」を重視した指導法くホール・ランゲージ)を生み出 したのは,心理言語学者KennethGoodman6である。 本論では, Goodmanの理論とくホール・ランゲージ). た読み手」が音読する際には,音声を発する前にすでに く意味)が介在している。. の関係について,次の2つの観点から考察をおこなう。. く意味)が介在したからこそ起こる読み誤りであること. く意味)に解読(decode)し,そしてく話し言葉コード) への置き換え(encode)をおこなう。つまり, 「熟達し. 「熟達した読み手」がある文章を音読する際に読み誤 りをおかした場合,それは単純な読み誤りではなく, が多いのではないか,ということを, Goodmanは実証. (l)Goodmanの読みに関する研究が,基礎理論として, どのような形でくホール・ランゲージ)を支えている か。 (2)Goodmanの理論によって支えられた`くホール・ラン ゲージ)が,教育の理論としてどのような特性を持っ ていたために, 「改革」の方向と方法を示すものとし て多くの教師に支持されるものとなり得たのか。. しようとした。 1.2 miscue analysisの実験の手願 Goodmanは,こうした仮説を実証するために,次の ような手順9)による実験を試みた。 ①デトロイト郊外の工業地域のある小学校の第1. 2, 3学年の児童100名を対象にした(出席簿の1つおき の番号で抽出。男女は同数)0. 本論では,心理言語学者Kenneth Goodmanの読みの 理論を大きく次の2つに分けて整理し,それぞれについ て,上の(1X2)の観点から分析をおこなう。. (塾その学校で使われていないリーディングの教科書から ・ある文章を選択。その文章に出てくる新出単語のリス トを用意。 ③一人ひとり呼んで,その学年の文章の新出単語リスト. ①miscueanalysis (誤読分析)についての研究 ②読みのプロセスについての研究. を声に出して読ませる。 もし,たくさんの単語が読めない時は,下の学年の文 章の単語リストを与える。 もし,ほとんど,またはまったく誤りなく単語を読め. 1. miscueanalysisについての研究 一読み手は意味を求めて読んでいる-. た場合は,上の学年の文章の単語リストを与える。 こうしたことにより,児童はそれぞれにとって同程度. 1.1 Goodmanの仮説 Goodmanは1965年に,論文"A Linguistics Study of. の難しさの単語リストを持つことになる。 ④それぞれの単語リストに対応した学年の文章を児童に. CuesandMiscuesinReading."を発表した。彼はその 中で, 「ある文章を音読する場合,読み手は音声を発す. 音読させる。ヒントは与えない。. る前にすでに意味を得ている。したがって,音読には意 味の理解が関係しているに違いない」という仮説を掲げ た。. 録していく。. 観察者は,児童の音読の誤りを本文を印刷した紙に記. つまり, ①無作為抽出で選んだ100人の児童に対し, ②. IY. 図1は,彼の仮説を図示したものである。8). 教科書から抜粋した末習の文章と,その文章に出てくる 新出単語のリストを児童に示す。そして, ③新出単語リ ストを読ませることにより,それぞれの児童にとって「熟. 図1. 達した読み手」として,すらすら読める文章がどの学年. 視覚的decode インプット. (文字コード). S. encode話し言葉による アウトプット. (話し言葉コード). レベルのものであるかを決める。 ④児童それぞれに, ③ で決めたレベルの文章を音読させ,音読の誤りを記録し ていく,という手順である。 児童たちは, ③の手順により, 「熟達した読み手」と. 図の点線は「熟達していない読み手」の場合を,実線 は「熟達した読み手」の場合を示している。. してすらすら読めるであろうレベルの文章を読むことに なる。つまり,一人ひとりの児童にとって難易度が同じ.

(3) アメリカにおける読むことの指導の基礎理論. くらいの文章を音読する作業をおこなわせるのである。. 25. headlampsをheadlightsと読み誤っている。この文章 の筆者はイギリス人であるため, headlampsという表現. 1.3実験記錦の例とその考察 図2は,実験の記録の例である10). を用いているが,アメリカではheadlightsという表現 の方が一般的である。したがって, headlightsと読んで. これらの3人の被検者仝貞が, (ア)の部分において. ち,意味は通じる。アメリカの児童である被検者たちは,. <図2 miscue analysisの実験の記録の例> 亀一株下線部を読み直したことを示す。 ⊂二⊃ :阜ま・省かれたところを示すo. 被検者1 It must have been around midnight when I drovehome, andas I approached the gates of the bungalow I switched off th. lights head lam softhecar On. so the beam wouldn 't swing in through the window of the side bedroom and. (<ア)イギリスの作家の文章であるため, lampsが使われて いるが,アメリカの児童である被検者はIightsを用い ることが多いため,自分で言い換えている。 ∼ (イ) inがonに入れ替わっているところには,方言の影響 があるようである。. wake Harry Pope.. 被穣者2 It must have been around mid-. (ウ) asを省いて読んだところ,文の意味が取れなくなり, 3回も読み直している。. night when I drove hom proached the gates of the bungalow I switched off the he. 言霊昌 of the car. so the beam wouldn't swing in through the window of the side bedroom and wake Harry Pope.. 被検者3 It must have been around midnight when I drove home;(i proached the gates of the bungalow I. ・ (エ) andを省いて読んでいるが,意味の把掛二はほとんど 影響しないので,読み直すことなくそのまま音読を続 けている。. s。 the beam w。uldn 't swing@through 害うa. (オ) inを省いて読んでいるが,意味的にも,構文的にも, 'それほど影響がないので,読み直すことなくそのまま にしている。. the window of the side bedroo .-<」二月. (カ) andを省いて読んだため, (キ)の読み誤りが生じた。. switched off the hea. where was wake Harry PopeA. softhecar. (キ)読み間違えているが,それなりに整合性のある表現に 換えて読んでいる。.

(4) 26. 文章の文脈を読み取り,ここにはheadlightsがくると 予測して読んだのである。つまり,これらは単純な誤り ではなく,文脈的な意味を考えての読み誤りということ になる。. 表1の結果をみると,どの学年も単語リストにおいて 読めない単語の割合が,文章において読めない単語の割 合を圧倒的に上回っている。つまり, 「文章においての 方が,単語リストにおいてよりも,読める単語の割合が. 被検者1の児童は, (イ)のswinginをswingonと読 んだGoodmanによると,この誤りには方言の影響が 見られるという。したがって,これもまた単純な読み間 違いではなく,児童がふだん使っている自然な表現に自. 高い」ということを示している。これは,文章の方が文. 分で置き換えて読んだために起こったものである。 被検者2の児童は, (ウ)において, asを飛ばして読 んでしまったため,次の部分の意味がとれなくなり, 3. 文脈によって意味を推測する力が増していくからであ. 度も読み直している。単純に文字を逐次的に音に置き換 えているのであれば,asを飛ばした後も,そのまま字面 だけ追って読めばすむことである。つまり、ここで3度 も読み直したのは,意味を求めて読み返したためである。 被検者3の児童は, (エ)においてandを, (オ)に おいてinを省いて読んでしまっているが,どちらも意 味の把握にそれほど影響を与えないため,そのまま読み 進んでいる。. く表2単語リストでは読めなかった単語を,文章ではどの くらい読めたか。読めた割合ごとの児童の分布). (キ)は非常に興味深い読み間違いである。被検者3 の児童は, (カ)において, andを飛ばして読んでしまっ たbedroomの後のandを省いて読み,次の部分を読も うとしたところ,次の単語がWで始まっており,しか もその後にHarryPopeという人名らしきものがあるこ とに気がつく。そこで,ここにはbedroomを修飾する 内容がくるに違いないと考え, bedroomの後にWで始 まる場所に関する関係副詞whereを置いて読み進んだ。 そして,関係節を完結させるために,もとの文にはない. 脈によって意味を推測できるからである。 また,学年が上がるにしたがって,その数の開きは大 きくなっていく。これも,学年が上がるにしたがって, る。. 1/2未満1/2以上2/3以上3/4以上4/5以上総数(人) 第1学年11% 89% 69% 49% 26% 35 第2学年97% 81% 66% 50% 32 第3学年94% 91% 76% 67% 33 表2によると,単語リストでは読めなかった単語を文 章では4/5以上読めた児童は,第1学年では26%しかい ないが,第2学年では50%,第3学年では′67%もいる。 つまり, 「全体的に,上の学年になる方が,単語リスト で読めなくても文章では読める割合が高い」ということ を示している。 表1および表2の結果は, 「上の学年になるごとに読 む力が高くなっている」ことを示している。したがって, 「音読の際の読み誤りも学年が上がるにつれ少なくな る」はずである。 ところがそうではないことを, Goodmanは次の実験. wasを補った。このようにこの(キ)においては,かな り複雑な予測により,表現を自分で変形し,生成してい る。その予測,変形,生成をもたらしたものは,意味と 文脈である。 こうした実験を積み重ねることにより, Goodmanは,. 結果をもとに証明してみせる。. 児童が単純に文字を音に置き換えているのではなく,意 味を考え,文脈によって先を予測しながら読んでいるこ とを実証したのである。. 第1学年3.1 第2学年14.9 第3学年16.9. I.4実験結果の分析と考察 Goodmanは,こうした実験の結果をさらに数値によっ て分析した11) く表1単語リストと文章における読めない単語の割合) リストでの文章での 平均(個)平均(価). 割合比率. 第1学年9.5 3.4 38% 2.8: 1 第2学年20.1 5.1 25% 3.9: 1 第3学年18.8 3.4 18% 5.5: 1. く表3知っている単語の文章における置換の割合). w微I- f-J二Ttt路二・>'.i言 50.2.074 126.2.118 118.7.142. 表3の「知っている単語」とは,単語リストで読めた 単語のことである。単語リストで読めたにもかかわらず, 文章では違う言葉と置き換えてしまった,つまり読み 誤った部分の回数を調べたものである。この表3からは, 第1学年の児童よりも,第2学年,第3学年の児童の方 が頻繁に置換エラー(読み誤り)をおかすということを 読みとることができる。これは,表1と表2から導き出 された「上の学年になるごとに読む力は高くなっている」 ということと矛盾する。.

(5) アメリカにおける読むことの指導の基礎理論. く表4音読の中の後戻り(読み直し)の割合) 第1学年第2学年第3学年 児童行児童行児童行 あたりあたりあたりあたりあたりあたり [単語に対して] ・訂正のため. 2.40.048 10.ll.090 10.30.087 .09.002.49.004. 1.42.012. 2.49.050 10.60.094 ll.72.099. [フレーズに対して]. フレーズを繰り返して 単語を訂正するため. 解していないからであろう。 「読み直しはそれによっ て児童が自分で訂正したり学んだりしている」のであ る。 4)本研究によって明らかになった,児童の持つ読みの 間岩が非常に多様であるという事実から考えると,ク ラス全体,またはグループに対して一斉におこなう,. .イントネーショ ン訂正のため ・合計. 27. フオニックス14)と呼ばれるショットガンのような指 導は,かなり問題があるように思われる。児童がかか えるどの問題もこの方法の有効性を十分に保障してい. 1.54.031 5.77.052 7.54.061. ないのである。フオニックスのような読みの特別な方. ・言い直しのため. .29.006 1.97.018 1.03.009. 法を使い過ぎることによって問題をかかえるように. イントネーショ ンの訂正のため. .52.011 2.83.026 2.76.023. なっている児童の数の方が,そうした方法が使えなく. こfSiii. 2.35.048 10.57.096 ll.33.093. て問題をかかえている児童より多いであろう。 5)本研究により,児童にとって,文章の中である単語. 表4は,読み誤りを訂正するための後戻り(読み直し). を理解するよりも,その単語一つだけについて理解す. について調べたものである。第1学年の児童よりも,第. ることの方が難しいことが明らかになった。読みの指. 2学年,第3学年の児童の方が頻繁に後戻りをおこなっ. 導において単語を取り立てて指導することをやめ,早. ている。. 語が属すべきところの"文章"に焦点を当てる読みの. ここでもまた,表1と表2から導き出された「上の学 年になるごとに読む力は高くなっている」ということと 矛盾する結果が出ている。. 理論や方法を開発すべきである。. 表1と表2から導き出された「上の学年になるごとに. 1.6 Goodmanのmiscueanalysis研究が求める4つの 改革. 読む力は高くなっている」ということに対して,表3 ・. Goodmanのmiscue analysisの研究の流れをもう一度. 4が示す「上の学年になるごとに読み誤りが増えていく」 という矛盾した結果こそが, Goodmanの仮説の正しさ. 概観してみよう。. を実証している。. Goodmanは「読みの過程には読み手の心理的働きが大. つまり,読みの力が増せば増すほど,音読の誤りが増. きくかかわっている」ことを明らかにしようとした。. えるということは,音読の誤りは単純な読み誤りではな. i. く,文脈に沿って意味を考えながら読んだことによって. 読み手は,音声を発する前に,すでに意味を得ている。. 生じたものであることを示しているのである。これによ り, Goodmanの「読み手は音声を発する前に,すでに. したがって,音読には意味の理解が関係しているのでは ないか。. 意味を得ている。したがって,音読には意味の理解が関. i. 係している」という仮説が実証されたことになる。. miscueanalysis (誤読分析)についての研究 音読の誤りの分析から,読み手の心理的プロセスを明ら. 1.5実験の総合的考察. かにしようとした。. Goodmanは,このような実験の結果を次のように考 察している12) 1)児童に新しい文章を読ませる前に,文脈と関係ない. i. 読み手のおかす誤りは,まったく脈絡のない間違いでは なく,その多くが,意味は多少異なるが,文法的には正. 形で新出単語を指導することは必要でも,望ましいこ. しい言い換えである場合が多い。つまり,読み手が意味 の一貫性を維持しようとして予測をおこなったために起. とでもないことが明らかになった。. こった「有意義」な間違いである。. 2)児童が文章を音読している時に,ほめたり,訂正し. i. たりすることは,言葉の手がかりを用いて自分で訂正. 読み手は一語一語を逐語的に読んでばかりいるのではな. するという観点から見ると,必要でも,望ましいこと. い。読み手はテクストから意味を読みとろうとしている。. でもないことが明らかになった。 3)目の動きについてあれこれ研究すること13)や読み 直しをなくすための方法をさがすことにやっきになっ てしまうのは,本研究で明らかになった次のことを理. (テクストと読み手の相互作用) i. 読み手は意味を求めて読んでいる.

(6) 28. こうしたGoodmanのmiscueanalysisの研究は,読み の心理的過程を明らかにするとともに,読みの教育の方 法論に大きな示唆を与えるものであり,同時に,それは. においてどのようなことがおこなわれるために読み誤り が起きるのか」を,読みのモデルを提示することによっ て明らかにしようとした。. 「変革」を迫るものであったGoodmanの研究が求め た「変革」は,次の4つに整理することができる。. 彼は,読みのプロセスを次のように「選択のプロセス」 と考えている。. a読み誤りは「悪いこと」ではない。むしろ, 「有意義な」 間違いである。学習者の誤りは否定されるべきもので はなく,活かされるべきものである。. 読みは選択のプロセスである。そのプロセスには,知 覚的インプットから読み手の予想に基づいて選ばれた, 言葉に関する手がかりのどれかを活用することが含まれ ている。その情報が処理されることにより,仮説が作ら. i. A 読みへ の読 み手 の 自由 な参加 (学習者 の立場 の 変革 = 変革 1 ). れ,読み進む間に,確認されたり,否定されたり,改め られたりする15). b教師は誤りをただす立場に立つのではなく,誤りの意. そして, 「より端的に言えば,読みは心理言語学的予. 味を求め,必要に応じてく支援)を与える立場に立つ. 測ゲーム(psycholinguistic guessinggame)であるJ6)と, 読み手の中で知覚的インプットによって得られた情報を. べきである。 i. B 支援 者 として の教 師 (教 師 の立 場の変 革 = 変 革 2 ). Cテクスト中の一語一語を逐次識別することに終始させ. もとに,次々に予測がおこなわれるありさまを「ゲーム」 と呼んだ。この「心理言語学的予測ゲーム」という言葉 を用いた考え方は,読むことを情報処理という操作に結 びつけたという新しさがあったためか,多くの研究者に 影響を与えた。. るような読みの指導は,読みの力を育てることにつな がらない。それどころか,逆効果である。 i. C 分断 されて いない, 自己完結 した意 味世界 を構築 で きる作品 . 書 物 を教材 と して使 用すべ きで あ る. 2.2読みのプロセス Goodmanは,読みのプロセスを説明するために,読 み手が次の3つの情報を活用しながら読んでいると構想 した17). (教材 の変革 = 変 革 3 ). d一語一語を逐次読ませるような指導ではなく,文脈を 用いた予測によって意味を得させることを中心とした 指導をおこなうべきである。 i. D文章をもとに予測をおこなうことを重視した指導を 中心に指導過程・方法を考えるべきである。 (指導過程・指導方法の変革-変革4) このようにGoodmanは,読みには読み手の心理活動. 記号的情報(graphic information) '. 記号としての文字とその昔 統語的情報(syntactic information) : 機能語や語尾変化を通しての文構造 意味的情報(semantic information) : 個々の単語および文の意味や,語や文の背後に ある知識 読み手は,こうした3つの情報を活用しながら,次のよ うに文章を読んでし-く,とGoodmanは考えた。 (下の引 用中の「文法的構造(grammaticalstructure)」は「統語 的情報(syntactic information)」の一つである。) I. が深く関わっていることを明らかにした。となると,今 度は,その心理活動がどのような過程を踏んで展開され ているのかを明らかにする必要がある。. 読み手はもっとも有用で必要な記号的手がかり 2.読みのプロセスについての研究 一意味を見つけ出す方策2.1心理音語学的予測ゲーム Goodmanは「読み手は意味を求めて読んでいる」こ とを明らかにしたのであるが,彼はさらに, 「読み手は どのようなプロセスを踏んで文章を読み,そのプロセス. (graphiccues)だけを拾い上げる抽出の技能を身につ ける。読み手は基本的な文法的構造(grammatical structure)を読みとり,次に何に出会うのかを考えるた めの予測の技能を身につける。読み手は,自分の予測の 適合性をチェックするための確認の技能を身につける。 自分の予測が正しくない場合,読み手は訂正の技能を用 い,そして,意味に到達するための記号的(graphic),.

(7) アメリカにおける読むことの指導の基礎理論. 意味的.semantic)手がかりを求めようとする18). 29. ているのである。どれくらい探るのかということは,そ の題材についてどれくらい知っているのかによって決ま. 2.3読みのサイクル Goodmanは,後に示す引用のように,受容的言語プ ロセス(receptivelanguageprocesses),つまり,聞くこ と,読むことのプロセスを,次の4つの段階からなるサ イクルであると考えた。′19). る。読み手がその題材について知っていればいるほど, 読む過程において(文字の)図形的情報を読む必要が少 yvn 【予測(prediction)】 文章を探索しながら,読み手は,次に何が出てくるか をかなり予測する。予測する際には,音声(graphonics). 抽出(sampling). 統語(syntax)意味^semantics)の3つの手がかりを. 予測(predicting). 用いる。音声的手がかりは,記号としての文字とその昔. 試験(testing). を,統語的手がかりは機能語や語形変化などの文構造を,. 確認(confirming). また意味的手がかりからは個々の単語および文の意味 や,語や文の背後にある知識などを得るのである。これ. 意味にたどりつくことを目的とするこうしたサイクル を, Goodmanは次のように論じている。. らの手がかりは,すべて同時に,しかも相互に作用する。 【確認confirming)】 読みが続く間,読み手は,情報を探索することによっ て,自分の予測を検証したり,排除したりする。予測の. 受容的言語プロセス(receptive language processes)は, 音声的または文字的に示されたものをインプットすると. 正しさが検証されたら,さらに文章を読み進めながら,. ころから始まり,そして,意味というアウトプットで終. 探索,予測,そして検証を続ける。読み手がその題材に. わる。しかし,熟達した言葉の使い手は,さらに直接的. ついての知識を持っていない場合は,予測は簡単ではな. な経路をたどり,この到達点へたどりつくために最小限. くなるだろう。予測は迅速におこなわれず,その予測を. の要素だけを用いる。彼はある表現がどのくらい長く続 くか,また,ある表現がどういう結びつきを持っている. 適切な筋道によって検証することができないであろう。. かについての知識に頼りながら, `sampling'をおこなう。 彼は,構造を予測(predictstuructures)し,状況や発. う意味だろう?」 「この意味が全然わからない」などと つぶやく。読み手は,検証することのできる別の予測を. 話されつつある談話から導き出される意味的な文脈. 持って,その文章を読み直さねばならない。. (semanticcontext)と対照しながらそれを点検(test) し,そして,次のプロセスとして,それを確認(confirm) または否定(disconfirm)する。 受容的言語プロセスは, sampling, predicting, testing, confirmingというサイクルをとる20). 読み手はしばしば読みを止めて, 「うん,これはどうい. 【統合.integration) 】 読み手が自分の予測を検証した時,読み手は自分がす でに知っていることとその検証した情報とを繞合するこ とができる。そうした情報を耗合する時,あるレベルの 理解が生じる。もし読み手が探索,予測,検証を効率よ くおこなえなければ,統合はおこなわれないため,理解. 2.4 Goodmanの読みのモデルの影響を受けた読みの過. することができず, 「この文章は理解できない」という. 程の例(その1). ことになってしまう。. Goodmanが示した読みのプロセスモデルは,多くの 教師に影響を与え,その4つの段階はそのまま実際の教. ここでは, Goodmanの4つの段階の後の2つである. 室における指導過程に応用され始めた。ここでその代表. testingとconfirmingが, confirmingとintegrationとに. 的なものを示してみよう。. 変えられている。これは「理解」という読みのプロセス. まずは, Wiseman, D.L. (1992) LearningtoRead with Literature.に示された,くホール・ランゲージ)の上位. の最終目的を前面に押し出すためであろう。つまり,. 概念である「文学を核にした読みの指導」における代表 的な指導過程である21)ここでは, G。。dmanの読みの. confirmingの段階としてひと括りにし, integrationの段 陛では,それまでの3つの段階でおこなったことをまと. プロセスを一部変えて用いている。. めて「理解」に至るということを示したものとなってい. 「意味の検証」の段階であるtestingとconfirmingとを. るのである。 【抽出(sampling)I 文章を読む際に,われわれはすべての文字を判別して いるわけではない。読み手は,そこに書かれているすべ ての情報を吸収しようとするのではなく,あれこれ探っ. このような指導過程によって展開された授業の例を示 そうO中心となる作品は,オールスパーグ(CrisVan Allsburg)の『2匹のいたずらアリ(TwoBadAnts)』 である。題名が示すように, 2匹のアリが主人公であり,.

(8) 30. 彼らが人間の食卓の上の砂糖を食べようとして,さまざ. 講習会などにおいて放映するために作成されたビデオに. まな「冒険」をおこなう物語である。この作品を核にし て,次のような指導が展開された。. 収録された授業の展開例である22). 【1日目の活動】 (Dこの物語について予測をするo ②アリを観察して,記録をとる。 ③観察を報告し合う。 ④語句を理解する。 【2日目の活動】 ①物語本文を読み,文脈によって語句の意味を考え, 予測が合っていたかチェックする。 (む物語本文の場面を理解する。 ③edのついた動詞を理解する。 ④同義語を理解する。 【3日目の活動】 ①この物語本文の中から,接尾辞のついた語を見つけ る。. ②この物語本文のプロット(出来事)を要約する。 ③この物語本文について質問をすることによって,児 童の理解を深める。 【4日目の活動】 (》要約を用いて,この物語の出来事の順を確認する。 ②絵を措かせることによって,この物語を要約する。 ③接尾辞edのついた言葉に下線を引く。 【5日目の活動】 Q)アリについてのさまざまなことがらについて調べ る。 (むアリについての情報を分類する。 (勤指示に従いながら,配布されたものを用いてアリを 'mm, 【6日目の活動】 ①インタビューのための質問を作る。 (むインタビューの答を記録する。. 【第1日目本を導入する(intoroducethebook)】 人物などを予想させ,そこから思い浮かぶ言葉を言わ せていく。教師はそれを黒板に貼った紙(チャート)に 書きとめる。 (∋表紙による作品世界-の導入:基本的知識を共有す る。 ②表紙を見て浮かぶ単語の収集-ブレインスト-ミン グをおこなう。 ③模造紙の上に語嚢を記入:必要があればいつでも参 照できるように。 ④予測- 「これはどんな物語だと思いますか?」 ⑤予測は変更可能-現在進行中の活動(an on-going-activity)である。 【第2日目予測をする(MakePredictions)】 前時の活動で出されたことを参考にさせながら,ス トーリーを予測させる。結末部分は見せずに,前半部分 だけを示す。教師は児童の予測を黒板に貼った紙の上に 整理していく。 ①本の内容の提示と(絵を見ての)予測。 (参予測は変更可能.'他の人の予測をよく聞かせる。 ③児童の自由な予測:すべてを受け入れる。 【第3日目本を読み聞かせる(ReadtheBook)】 教師が本の本文を読み聞かせる。ストーリーと,前時 の児童の予測とを,本に示された「証拠」や「論理」に よって照合する。その活動の中で,あるストーリーを形 づくるには,そうした「証拠」や「論理」といったもの の整合性が重要であることを理解させる。 ①本の文章の提示:黙って教師の読み聞かせを聞き, 予測の当否の確認をする。 (参予測のチェック。. ③自分の思っていることを文章にする。. ③根拠(手がかり)と論理の活用:読むことの基本を 身につける。. ④インタビューの中に出てきた説明的な語句に注目す. ④論理的な思考のヒント:パターンに注目する。. る。 1日目の「①この物語について予測をする」と, 2日目 の「①物語本文を読み,文脈によって語句の意味を考え, 予測が合っていたかチェックする」のように,予測とそ の確認を重視した授業展開となっている。 2.5 Goodmanの読みのモデルの影響を受けた読みの過 程の例(その2) Goodmanの読みのプロセスは,もちろんくホール・ ランゲージ)による読みの指導においても,応用されて いる。次に示すものは,くホール・ランゲージ)の学習会・. 【第4日目物語について話し合う(DiscussStory)I 本の設定を借りて,今度は児童が自分でストーリーを 考える。それを発表させる。 ①開放的活動:ストーリーにとらわれず,自由に話を tM9 ②理解語嚢から使用語嚢- :作品の語嚢を自然な形で 使用する。 ③話し言葉の手本:児童と教師,同級生と言葉のやり とりをおこなう。 【第5日目発展活動としての創作をおこなう (Creative Extensions) 】. 自分で考えたストーリーをもとに,絵を書いたり,紙.

(9) アメリカにおける読むことの指導の基礎理論. を切り抜いてキャラクターをこしらえてお話を作るなど の発展活動をおこなう。 (9自由な創作活動: 「書き換え」による読む学習へ能. 31. b教師は知識を教えるだけでなく,先行知識を活用して 「予測」をおこなう場を設定し,その場においてく支 揺)をおこなうべきである。. 動的に参加させる。. I. B 支援 者 としての教 師. (む他教科の学習内容との関連学習活動:単元学習への. (教 師の立場 の変 革 = 変革 2 ). 展開の可能性。 本を導入する(Introduce theBook)-予測をする(Make. C予測が可能な文章を教材に用いるべきである。. Predictions)一本を読み聞かせる(ReadtheBook) -物. i. 語について話し合う(DiscussStory) -発展活動として. C 分 断 されて い ない, 自己完結 した意 味世界 を構 築 で. の創作をおこなう(CreativeExtensions)という5日間. きる作 品 . 書物 を教材 と して使用 すべ きであ る (教 材 の変革 = 変革 3 ). の授業として展開されている。この5つの段階のうち, 最初の3つの段階は,予測(predicting)と確認 confirming)とを重視した展開であり,くホール・ラ ンゲージ)の提唱者Goodmanの読みのプロセスを応用 したものである。. D 文 章 を も とに 予 測 を お こな う こ と を重 視 し た指 導 を. 2.6 Goodmanの読みのプロセスが求める4つの改革. 中 心 に指 導 過 程 . 方 法 を考 え るべ きで あ る0 (指 導 過 程 . 指 導 方 法 の 変 革 = 変 革 4 ). Goodmanの読みのプロセスの研究の流れをもう一度 概観してみよう。 読み手は意味を求めて読んでいる. 3. Goodmanの理論がくホール・ランゲージ)にもた らしたもの. i. 読みのプロセスについての研究 i. 心理言語学的予測ゲ-ム. 本論では, Goodmanの理論とくホール・ランゲージ) の関係について,次の2つの観点から考察をおこなって きた。. (psycholinguistic guessing game) i. 抽出(sampling),予測(predicting), 試験(testing),確認(confirming). (l)Goodmanの読みに関する研究が,基礎理論として, どのような形でくホール・ランゲージ)を支えている l&JB. i. 文章から意味を引き出すための方 策を身につけさせる必要がある i. 「予測(predicting)」の重視. (2)Goodmanの理論によって支えられたくホール・ラン ゲージ)が,教育の理論としてどのような特性を持っ ていたために, 「改革」の方向と方法を示すものとし て多くの教師に支持されるものとなり得たのか。. i. 読み手の先行知識の活用 こうしたGoodmanの読みのプロセスに関する研究は, 読みの心理的過程を明らかにするとともに,読みの教育 の'方法論に大きな示唆を与えるものである。また,次に. 本論では,心理言語学者Kenneth Goodmanの読みの 理論を大きく次の2つに分けて整理し,それぞれについ て,上の1X2の観点から分析をおこなった。. 示すように,それは先に述べた4つの「変革」を改めて. ①miscueanalysis (誤読分析)についての研究 (塾読みのプロセスについての研究. 迫るものでもあった。. 本論で明らかにしたことを,総合的に整理すると,図 3のようになる。. a読みとは読み手がテクストを再構成することであると いうことを認めるべきである。 I. A 読 みへ の読み手 の 自由な参加 (学 習者 の立場 の変革 = 変革 1 ). Goodmanの読みの研究の2つの柱である「(9miscue analysis (誤読分析)についての研究」と「②読みのプ ロセスについての研究」のいずれもが,次の4つの「改 革」を支えるものであることに注E]すべきであろう。.

(10) 図3. 読みの過程には,読み手の心理的働きが大きくかかわっている. 読み手は,音声を発する前に,すでに意味を得ている。したがって,音読には意味 の理解が関係している。. 読み手は意味を求めて読んでいる. i. 【②読みのプロセスについての研究】. i. 【①miscue analysisについての研究】 音読の誤りの分析から,読み手の心理的プロセスを明らかにしようとした。. i. 心理言語学的予測ゲーム(psycholinguistic guessing game). i. i. 読み手のおかす誤りは,まったく脈絡のない間違いではなく,その多くが,意味 が多少異なるが,文法的には正しい言いかえである場合が多い。つまり,読み手 が意味の一貫性を維持しようとして予測をおこなったために起こったI ̄有意義」 な間違いである。. 抽出(sampling),予測(predicting),試験(testing),確認(confirming) i. 文章から意味を引き出すために必要となる方策に関する力をつける必要がある i. 「予測(prediction)」の重視. i. 読み手は一語一語を逐語的に読んでばかりいるのではない。読み手はテクストか ら意味を読みとろうとしている。 (テクストと読み手の相互作用). a読み誤りは「悪いこと」ではない。 むしろ, 「有意義な」間違いである。 学習者の誤りは否定されるべきもの-→ ではなく,活かされるべきものであ る。. b教師は誤りをただす立場に立つので はなく,誤りの意味を求め,必要に 応じて<支援>を与える立場に立つ べきである。. A. 読 みへ の読 み手 の = 自由 な参 加. i. 読み手の先行知識の活用. 変革 1 学 習者 (読 み手) の立 場 の変革. B支援者としての教師-変革2 教師の立場の変革. Cテクスト中の一語一語を逐次識別す ることに終始させるような読みの指 導は,読みの力を育てることにつな がらず,逆効果である。. C. d一語一語を逐次読ませるような指導 ではなく,意味を得させることとを 中心とした指導をおこなうべきであ る。. D至 ≡ 蓋 蓋… 三 三 買 蓋 壷悪 霊 品 種.指 導 方 法 の 変 革. 分 断 されて い ない, 自 己完 結 した意 味世 界 を= 構 築 で きる作 品 . 書物 を教 材 として使用. 過 程 . 方 法 を考 え る. 変革 3 教材 の 変革. - a読み手がテクストを再構成する. b教師は知識を教えるだけでなく,先 行知識を活用して「予測」をおこな う場を設定し,その場において<支 援>をおこなう。. - C予測が可能な文章を教材に用いる. - d予測とその検証を重視した指導を.

(11) アメリカにおける読むことの指導の基碇理論. A 読 みへの読 み手 の 自由な参加 (学習 者の立場 の 変革 = 変革 1 ). m. う。理論家と推進者とが同一の人物であったことこそが, くホール・ランゲージ)興隆の秘密であるかも知れない。 最後に,本論で述べたことがらは,言語・制度・文化. B 支援 者 と しての教 師. のいずれも異なっているアメリカにおけることがらであ. (教 師の立場 の変 革 = 変革 2 ). るが,本論で指摘したくホール・ランゲージ)が求めた 4つの「改革」は,そのままわが国の国語科教育におい. C 分 断 されて い ない, 自己完結 した意味世界 を構築 で. て求められている「改革」でもあると言っても言い過ぎ. きる作 品 . 書物 を教 材 として使 用すべ きであ る. ではないであろう。. (教材 の変革 = 変 革 3 ) く注). D 文章 を もとに予 測 をお こな うこ とを重視 した指導 を 中心 に指導過 程 . 方法 を考 えるべ きで ある0 (指導 過程 . 指導 方法 の変革 = 変革 4 ). この4つの項目には, 「学習者」 「教師」 「教材」 「指導 過程・方法」と,授業を構成する主な要素が含まれてい る。それらをダイナミックに変えていこうとしたところ に,くホール・ランゲージ)の特色がある。このうち一 つだけであれば,教師ひとりでも変えていくことが可能 であろう。しかしながら,これらの要素すべてを意図的 に変えていくのは容易なことではない。これらを関連し て変えていく方向と方法とを示したところに,くホール・ ランゲージ)の(新しさ)があると言ってもよいであろ う。 アメリカの教師は,フオニックスに代表されるような 児童の生活に直接結びつかない形でのくどいばかりの言 葉の指導や,意味世界をあまり持たない文章の一部を用 いて言葉に関する知識をとりたてて教えること,などの く分断的指導-非全体的指導)に物足りなさを感じてい た23)そこに現れたのが,く全体-ホール)を重視する くホール・ランゲージ)である。 くホール・ランゲージ)においては,く全体)を重視 するというかけ声だけでなく,実際にどのように, 「授 業を変えればいいのか」が指摘された。それが,この4 つの「変革」である。こうした4つの「変革」の方向と. 1)くホール・ランゲージ)の基本的概念や理論については, 拙論「書くことの教育」 (森田信義編著, rアメリカの国 語教育』,渓水枚, 1992年)にまとめた。また,くホール・ ランゲージ)を用いた授業の具体例の分析を, 「アメリ カにおけるくホール・ランゲージ)による国語科指導ビッグ・ブックを用いた指導の指導過程の分析-」 (r国 語教育学研究誌』第14号,大阪教育大学国語教育研究室, 1993年)に掲載した。 2)桑原隆『ホール・ランゲージ』国土社, 1992年, 「は じめに」より。 3)くホール・ランゲージ)が主張している方向は,それ以 前にも提唱されていたく文学を核にした指導 (literature-based instruction))と軌を一にするもので ある。むしろ,く文学を核にした指導)の方が上位概念 であり,くホール・ランゲージ)はその一種ととらえる べきであろう。くホール・ランゲージ)は,このく文学 を核にした指導)を,教室ですぐに実践できるように, 指導過程のモデルやビッグ・ブックのような教材を用意 することによって, -まとまりにパッケージ化したもの である。なお,く文学を核にした指導)については,拙 論「アメリカにおける文学を核にした国語科指導」 (1993年度兵庫教育大学紀要,第14集,第2分冊, 1993) にまとめた。なお,ここで言う「文学」とは, 「自己完 結したひとまとまりの文章」という意味であり, 「文学 作品」だけでなく,いわゆる説明的文章なども含む大き な概念である。 4) Goodman K.S. (1986) What's Whole in Language? :Heinemann. p. 7. 5 ) Goodman K.S. (1986) What's Whole in Whole Language?: Heinemann. p. 8. 6) Kennth Goodmanの主な研究論文をまとめた次の論文集. 方法とを明確に示すことができたからこそ,くホール・. 2巻が編まれているGollasch, F.V. (Ed.) (1982) Lan-. ランゲージ)は多くの教師の支持を得ることができたの. guage and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodan. (Volume I : Process, Theory, ResearcれVolume II : Reading, Language and the Classroom Teacher.) Boston:. ではないだろうか。 そのくホール・ランゲージ)の基礎となる理論をまと め,さらにそれをくホール・ランゲージ)という教育運 動にまで高めていったのが, KennethGoodmanである。 Goodmanは,くホール・ランゲージ)を支える理論を生 み出した研究者であるとともに,くホール・ランゲージ) を広げる運動の推進者としても活躍している。心理言語 学(認知心理学)における読みの研究のパイオニアであっ ただけでなく,その理論を基礎にすえた学習指導の理論, つまりくホール・ランゲージ)に結実させるところまで おこなったところに, Goodmanの非凡さがうかがえよ. Routledge &Kegan Paul.本論においては,本文または注 に,論文名およびこの論文集でのページを示したKennethの妻, Yettaも心理言語学者であり,夫とともに くホール・ランゲージ)運動の推進役を果たしている0 7) In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman, vohime I Boston: Routledge & Kegan Paul. pp.115-132. 8) Goodman K.S. & Niles, 0. (1970) Behind the Eye. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodmun. volume I Boston: Routledge & Kegan Paul. p.110. 9) Goodman, K.S. (1965) A Linguistics Study of Cues and.

(12) 34. Miscues in Reading. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982). Process. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and. Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S.. Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman.. Goodman. volume I Boston: Routledge & Kegan Paul.. pp.115-132.をもとに堀江が手順を整理した。. volume IBoston: Routledge-& Kegan Paul. p.98. 19) Goodman, K.S. (1970) Psycholingustic Universals in the. 10) Goodman, K.S. (1976) Miscue analysis: Theory and Real-. Reading Process. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Lan-. ity in Reading. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language. guage and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S.. and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman. volume /Boston: Routledge & Kegan Paul. p. 107. ll) Goodman, K.S. (1965) A Linguistic Study of Cues and. Goodman, volume I Boston: Routledge & Kegan Paul. pp.63-69. 20) Goodman, K.S. (1970) Psycholingustic Universals in the. Miscues in Reading. (1965) In Gollasch, F.V. (Ed.). Reading Process. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Lan-. (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of. guage and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S.. Kenneth S. Goodman, volume I Boston: Routledge & Kegan. Goodman, volume I Boston: Routledge & Kegan Paul.. Paul. pp.115-120.. pp.63-64.. 12) Goodman, K.S. (1965) A Linguistic Study of Cue and Miscues in Reading. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982J Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman, volume I Boston: Routledge & Kegan Paul. p.120.. 13)眼球運動の研究のことであろう。 14)フオニックス(phonics)とは,入門期の児童に,綴り と発音の関係の規則性を指導するための方法である。例 えば, aiの発音を教える時には, nail, tail, sail, train, chainなどの単語を示して発音させ,綴りと発音の関係 を学ばせる。 ①1回の授業では1文字だけ。 ②順序性の あるステップを踏んだ指導。 ③既習単語のみを使用,な どの特徴を持っているO(テレビ番組「セサミストリート」 の中で単語の学習はこの方法に基づいている。) く単語リストにおけるエラーの中で置換エラーの占める割合) リストのエラーの平均置換を含むエラー (個)平均割合比率 第1学年9.5 4.9 52% 1.9: 1 第2学年20.1 ll.5 57% 1.7 : 1 第3学年18.1 14.3 79% 1.3 : 1 上の表もGoodmanのおこなった実験の紛栗の一部であ る。これによると,第1学年の児童よりも, (読む力の 高いはずの)第2学年,第3学年の児童の方が頻繁に置 秩(読み誤り)エラーをおかすことが読みとれる。これ は,文脈が与えられていないために,フオニックスと呼 ばれる指導によって,これまでに習得した発音の関係の 知識を機械的に当てはめて,なんとか単語リストの単語 を読もうとして失敗したからであると, Goodmanは結 論づけた。こうした結果から, Goodmanは,フオニッ クスを用いた指導の有効性に対して強い疑いを持ってい た。 15) Goodman, K.S. (1967) Reading: A Psycholinguistic Guessing Game. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman. volume /Boston: Routledge & Kegan Paul. p.33. 16) Goodman, K.S. (1967) Reading: A Psycholin卯istic Guessing Game. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S, Goodman. volume IBoston: Routledge & Kegan Paul. pp.33-34 17) Goodman, K.S. (1973) Miscue: Windows on the Reading Process. In Gollasch, F.V. (Ed.) (1982) Language and Literacy: The Selected Writings of Kenneth S. Goodman. volume IBoston: Routledge & Kegan Paul, pp.93-101. 18) Goodman, K.S. (1973) Miscue: Windows on the Reading. 21)具体的な授業の展開例は,拙論「アメリカにおける文学 を核にした国語科指導」 (兵庫教育大学紀要,第14集, 第2分冊, 1993年)において示した。本論の注2を参照。 22)ビデオ"Big Books: Practical Strategies." (1988) ScholasticInc.実際の授業の展開例は「アメリカにおける くホール・ランゲージ)による国語科指導-ビッグ・ ブックを用いた指導の指導過程の分析-」 (r国語教育学 研究誌』第14号,大阪教育大学国語教育研究室, 1993年) に詳述した。 (⊃をつけて示した項目は,その拙論からの 引用である。 23)このことについては,拙論「書くことの教育」 (森田信 義編著『ァメリカの国語教育J,渓水被, 1992年)に詳 述した。 く参考文献) Harris, A.J. and Sipay, E.R. (1985) How Increase Reading Ability.: Longman. Pearson, P.D. and others. (1984) Handbook of Reading Research. : Longman.. 津田塾大学教育学部言語文化研究所読解研究グループ編, 1992年; r学習者中心の英語読解指導』,大修館 垣田直巳監修,松村幹男編集, 『英語のリーディング』, 1984 午,大修館 ※本論は, 1994年10月20日におこなわれた第87回全国大学国 語教育学会(神戸大会)での口頭発表(「アメリカの国語 教育における読むことの指導の基礎理論-Kenneth Goodmanの理論とwholelangauge-)をもとに作成したもので *3tm.

(13) アメリカにおける読むことの指導の基碇理論. 35. A Study on a Fundamental Theory of Reading Instruction in the United States. : Kenneth Goodman's Studies on Reading and Whole Language. Yuji HORIE. During last decade, many American language teachers were deeply influenced by a reading instruction theory. It's named whole language which are produced and spread by Kenneth Goodman who is a scholar of psycohnguistics. This article discuss how Goodman's studies on reading, especially on miscue analysis and a model of reading, support whole language and what kinds of changes they request to language teachers. Four changes are described as folows: the move from basal to literature-based instruction. (2) the trend away from teacher as a basal plan manager toward teacher as a facilitator. (3) the move from emphasis on product ofchildren's reading to emphasis on children's process as independent readers. (4) the trend away from reading word for word to reading with predictions and confirming them..

(14)

参照

関連したドキュメント

(Construction of the strand of in- variants through enlargements (modifications ) of an idealistic filtration, and without using restriction to a hypersurface of maximal contact.) At

L. It is shown that the right-sided, left-sided, and symmetric maximal functions of any measurable function can be integrable only simultaneously. The analogous statement is proved

p≤x a 2 p log p/p k−1 which is proved in Section 4 using Shimura’s split of the Rankin–Selberg L -function into the ordinary Riemann zeta-function and the sym- metric square

In this partly expository article, we use the language of generating functions and Riordan arrays to explore decompositions of Pascal’s triangle and other number triangles and

 

(4S) Package ID Vendor ID and packing list number (K) Transit ID Customer's purchase order number (P) Customer Prod ID Customer Part Number. (1P)

乗次 章子 非常勤講師 社会学部 春学期 English Communication A 11 乗次 章子 非常勤講師 社会学部 春学期 English Communication A 18 乗次 章子