組織文化のダイナミクスと変革
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(2) 132. (444). 横浜国際社会科学研究. 逆機能を招くことになる.. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). といった状況を生み出しているのである.. まずは,強い文化によって生み出された,忠. このように,組織文化はときに逆機能性を招. 考様式の均質化による弊害である.思考様式の. いてしまうものであるが,そもそもどのような. 均質化は,環境の変化への対応の幅を大きく限. ものとして構成されているのだろうか?文化は. 定してしまう.環境の変化が過去の経験や既存. 漠然と捉えられることが多く,どういうものな. の戦略で対応できるものであれば良いが,思考. のか説明されることが意外に少ない.文化が再 び(悪い意味ではあるが)脚光を浴びてきてい. の幅を超えたもの,新たな対応策を必要とする ものであった場合,均質化された思考様式では 十分に対処できない恐れがある.. るので,組織文化論の権威でもあるScheinの文 化モデルをあらためて見ていくことにしよう.. 次に,組織目的達成のための秩序化,さらに. 3.. は組織を存続させることを機能としていた文化 が,その存続の対象を組織文化そのものにして. Schein. Scheinの文化モデル. (1992)の組織文化論は,複雑な文化. しまうことがある.これは,文化の自己保存機 能である.組織文化のなかで組織生活を送る組. 概念を独自のフレームワークで解明している.. 織構成員たちは,その意味世界(文化)を過度. 「組織の文 いてなされた文化の定義について, 化を表しているが,それらはどれも文化の本質. に正当化するようになり,組織の価値に適した 解釈や行動にとらわれてしまうことが多くな. Scheinは,これまでの多くの組織文化研究にお. ではない」とし,文化を「ある特定のグループ. る.従って,意図的あるいは無意識的に,その. が外部への適応や内部統合の問題に対処する際. 組織文化の存続が図られるようになり,環境の. に学習した,グループ自身によって,創られ,. 変化に対処していくことができなくなってしま. 発見され,または,発展させられた基本的仮定. う.強い文化,すなわち、過度に文化的統合さ. のパターンーそれはよく機能して有効と認め. れた組織は硬直化を招き,環境の変化に対して,. られ,従って,新しいメンバーに,そうした問. 適応的な組織行動を困難にしてしまうことがあ. 題に関しての知覚,思考,感覚の正しい方法と. るのだ.. して教え込まれる」ものであると定義する.そ. 以上の2つの文化的逆機能性は,. 1980年代後. 半から1990年代前半にかけて,環境への不適応. して,その基本的仮定は,組織のメンバーによ. を招くものとして論じられた.そして,近年,. って共有され,無意識のうちに繰り返し機能し, 組織が自らとその環境を当然のこととみなされ. 企業が不祥事を起こし,倫理的行動や対応が求. た方法で規定してしまうものである.それ故,. められるようになったとき,ここに再び,文化. 文化の表層レベルにある「人工物」や「価値」. 的逆機能性がその大きな阻害要因として立ちは. とは区別されなければならないとし,それらの. だかっていることに気付かされる.例えば,社. 概念上の混乱を避けるために次のようなモデル. 会一般で非常識と思われていることが,企業の. (図1)を提示している.. なかで幅を利かせていることは決して少なくな. 第1のレベルは,人工物(artifacts)である.. い.組織のために辻複合わせを行ったり,不具 合や失敗を組織ぐるみで隠してしまう場合(文. 物理的空間や技術的成果,組織で使われる言葉,. 化の自己保存機能),自分で考えることなくそ. 可視的な状況や行動パターンである.それは創. れまでにやり方を踏襲したり,上司の言いなり. り出された物理的.社会的環境である.しかし,. に仕事をするといった場合(思考様式の均質 化),これらが社会的倫理からの逸脱を招き,. そのような可視的な人工物は,それが何を意味. また,いつまでも同じ過ちを繰り返させている. のなのか,その原理を理解することは困難なも. メンバーの服装,そして,メンバーの行動など,. し,またどんな深いパターンを反映しているも.
(3) 組織文化のダイナミクスと変革(四本). (445). 133. [吾]. 可視的な組織構造およびプロセス (解読困難). 信奉された 価値. 戦略,目標,哲学 (信奉された正当性). 基本的 根元的仮定. 無意識で当然のことと受け取られている 信念,知覚,思考,そして感情 (価値と行動の究極的な源泉). 出所). E. Ⅲ. Schein(1992), p.17. 図1. Scheinの文化モデル. のである.それを理解可能なものとするには,. 式は想像のつかないものとなる.言い換えるな. 文化の構成員の行動を導く,日常の行動原理を. らば,基本的仮定とは,その文化の構成員のあ. 提供する中心的な価値を明らかにすることが求. らゆる様式を規定してしまうような最も根源的. められる.. なものである.. 第2のレベルは,信奉された価値(espoused. Scbeinのこの文化モデルが最初に提示された のは,. 20年ほど前のことになるが,. values)である.その価値はリーダーあるいは 組織やグループの創始者にその起源を発するも. 1つの概念 的フレームワークとして,今なお強い影響力を. のである.組織の置かれている環境に対して,. もつものだ.しかし,複雑な文化という現象を. その対処の仕方として提示されるリーダーの価 値は,彼自身が事実に基づいた信念,もしくは. 過度に単純化している点は否めない.. 原理としてみなしたものであるが,組織の各成. ち,第4の新たなレベルを加え,文化のダイナ. 員にとっては,リーダーと同じ程度の確信を持. ミズムをプロセスモデルとして提示している.. つことができるものではない.それが各成員の 確信を獲得できるのは,それがうまく機能した. これを少し詳しく見ていこう.. このScheinの文化モデルをベースにしながら. 4.. とき,組織に成功をもたらしたときである.そ こで初めて,組織の各成員に共有的に確信を持. Hatchは,. Hatch. Hatchの文化ダイナミクスモデル (1993)はScheinの文化モデルに2っ. つことが可能となる.価値ば,その組織のリー. の修正を施している.まず,第4のレベルとし. ダーの規範的・道徳的機能として,ある重要な. て,シンボルという要素を加えている.一般に,. 状況に対処する際に有効なものとみなされ,組. 組織文化論者の間では,シンボルは包括的に人. 織構成員たちによって絶えず意識され,信奉さ. 工物のレベルに含まれるものとして考えられて. れるものとなる.. いる.特に,機能主義的なパースペクティヴに とって,全てのシンボルは人工物だと捉えられ. 第3のレベルは,基本的仮定(basic assumptions)である.先の信奉された価値が, 繰り返し機能するならば,それは人々にとって. る.実際に,. Ⅲatchも人工物の物質的な形態が. 当然のこととしてみなされるようになる.それ. スタティックな限りにおいては,シンボルと人 工物が区別不可能であることを認めている.だ. 故,その文化的単位のなかで,基本的仮定はヴ. が,彼女がシンボルと人工物を区別するのは,. ァリエーションを持ちえず,その文化的構成員 は,別の仮定に基礎を置いた行動様式・思考様. 文化をダイナミックなプロセスとして捉えよう としているためであり,そこでは人工物が組織.
(4) 134. (446). 横浜国際社会科学研究. 出所). M.. ∫.Hatch, 図2. 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). 1993, p.660. 文化ダイナミクスモデル. の構成員によって,どのように生産・再生産さ れるかということに焦点を当てられている.. 次に, Ⅲatchは,各文化レベル(仮定,価値, 人工物,シンボル)を中心的なものとして扱う. ルである.彼女によれば,この循環性には出発 点を特定する必要はなく,また,右回りにも左 回りにも動くことができる.そして,この図の 右回りする際の上部半分をプロアクティヴモー ド,下部半分をプロスペクティヴモードと呼ん. のではなく,各レベルを結びつける関係性に焦 点を当てている.これにより, Scheinの文化モ. でいる.逆に,左回りする際の上部半分をレト. デルをよりダイナミックな概念として捉え直す. ロアクティヴモードと呼び,下部半分をレトロ. ことが可能になるというわけだ.. スペクティヴモードと呼んでいる2).. Scheinの文化. モデルは,人工物と価値が,文化の中核として 据えられる基本的価値について,何を表してい るのかを示そうとしている.一方で,. Hatchが. 1)表象化(manifestation)プロセス まずは,仮定と価値の関係性を表す表象化プ. 試みていることは,仮定,価値,人工物,シン. ロセスである.. ボルをリンクさせるプロセスによって,文化が. が組織構成員の知覚,認知,感情において表現. どのように構成されているのかを明らかにしよ. を可能にすることと定義している.. うとしている.そして,何よりも特筆すべきは, シンボルを人工物と仮定の間に位置づけること によって,文化を循環的なサイクルモデルとし て示していることである.. Scheinは,. 3つの文. Hatchは表象化を,文化的仮定. プロアクティヴな表象化(仮定-価値)にお いては,行為や経験を組織化することを可能に する価値や期待が生成される. Scheinに従えば, 文化の中核となるのは基本的仮定であるが,組. 化レベルのエレベーターモデルで示し,それぞ. 織の構成員たちが真実であると仮定するもの. れの機能に着目していたが,文化論の解釈主義. が,彼らの価値となるものを形成する.それ故. 的なパースペクティヴ,あるいはシンボリズム. に,彼らの知覚や思考は,組織という社会的世. の立場からすれば,人工物,シンボル,仮定の 関係性こそが最も重要なことであった.. 界を反映したものになる.そして,それは単に. 図2はHatchが示した文化ダイナミクスモデ. 経験されたものとしての期待ではなく, あるべきもの」としての組織の期待となる.. 「そう.
(5) 組織文化のダイナミクスと変革(四本). (447). 135. 一方のレトロアクティヴな表象化(価値一仮 定)モードは,価値が既存の仮定を維持・強化. 化として価値の再確認を可能にしてくれる.し. するもの,あるいはときに修正するものとなる.. 工物が現れることがある.. かし,ときに文化的価値の文脈にそぐわない人. 前者においては,価値と仮定は整合的であり,. Hatchはこれを前衛 的な芸術作品で説明している.新奇な芸術作品. 文化の再確認と仮定の強化となる.つまり,組. は,従来の価値観からすれば受け入れがたいも. 織の構成員たちが期待したことに対する基本的. のであることが多い.だが,やがて,そうした 目新しいものを受け入れる方法が芸術の世界で. 仮定の再確認なのである.後者の修正は,多く の場合,新たな価値が導入された場合に起こる. もっとも,その新たな価値がすぐさま仮定へと. 確立されると,それは新たな価値観とともに十. なるわけではない.それは繰り返し機能し,有. はレトロアクティヴな価値の再編成が行われて. 効であると認められ,当然のことであるとみな. いると言えよう.もちろん,そのためには,レ. されなければならない.そこで初めて,それは. トロアクティヴな表象化を含めた一連のリンク. 基本的仮定の一部として文化的な中核になる.. が作用していることは言うまでもない.こうし. 分に鑑賞に値するものとなる.つまり,ここで. たことは,企業においても,ラディカルなイノ 2)具現化(rea‖zation)プロセス. ベーションが導入されたり,それまでは考えつ. Hatchは,価値と人工物の関係性を表すプロ セスを具現化と呼んでいる.そして,具現化を, 期待や価値を社会的あるいは物理的な現実へと 変容させることにより,また,人工物の生産を 通して既存の価値を維持・修正することによ り,価値をリアルなものにするプロセスと定義 している.. かなかったような戦略が立てられたりして,従 来の価値が覆されたときに起こりえるものだ. 3)象徴化(symbolization)プロセスと解釈 ) (interpretation 象徴化は人工物とシンボルの関係性を表すプ ロセスである.だが,先述の通り,組織文化論. プロアクティヴな具現化(価値一人工物)は,. の支配的パースペクティヴである機能主義にお. 表象化プロセスによって表される期待や価値に 対して,実体を与える活動を通して起こるもの. いては,全てのシンボルは人工物と捉えるため, この象徴化プロセスを生み出すものとしての人. である.ここで重要なことは,. 工物とシンボルを峻別することはできない.そ. Hatcbが具現化. を特定する際に,人工物そのものよりもそれを. れでは,解釈主義的なパースペクティヴ,ある. 生み出す活動に注目している点にある.それ故 に,例えば,オブジェを作ったり,社内の何ら. いは組織シンボリズムにとってはどうか? れを考察する前に, Hatchの言わんとしている. か行事へ参加することであったり,あるいはジ. ことを見ていこう.. Hatcbは,プロスペクティヴな象徴化(人工. ョークを言い合ったり,インフォーマルな話し 合いを行ったりすることがまさに具現化のプロ. 物-シンボル)とは,所与の人工物に対して,. セスとして据えられる.. 追加的な文化のプロセス化を通し,組織構成員. レトロアクティヴな具現化(人工物一価値). にシンボリックな形態として認識されることで. は「物事はいかにあるべきか」に関する価値や. あると述べている.そしてまた,人工物が文化. 期待に対して,人工物がどう関与したのかを示. 的な意味をもったオブジェ,イベント,あるい. すものとなる.人工物と価値が整合的関係を持. は言説として理解されるならば,その人工物は. つものであれば,価値は再確認され維持される. シンボルへと変容されているだろうとも述べて. ことになる.例えば,組織にまつわる神話や物 語は,まさにこうしたレトロアクティヴな具現. いる.シンボルを新たな文化レベルと据え,こ の象徴化プロセスと解釈プロセスにおいて,人. そ.
(6) 136. (448). 横浜国際社会科学研究 第10巻第3. ・. 4号(2005年12月). 工物と仮定をリンクさせようとしたⅢatchの功. くても,他の構成員にとってはシンボルとして. 績は大きく評価したいところである.しかし,. 解釈されている人工物に遭遇したり,あるいは. 彼女のプロスペクティヴな象徴化には,人が不. 従来とは異なるシンボル性を帯びた人工物を目. 在であるi人のいないところで文化的変容は起. にしたとき,解釈を通じて,自らの意味体系に. こらない.それ故に,. Hatcbは「追加的な文化. 新たな意味が付与されることもあるだろう(プ. のプロセス化」という嘩味なものを持ち出さぎ. ロスペクティヴな解釈).ちなみに,シンボル は物理的シンボルであったり,行動的シンボル. るを得ない状況に陥っているように思われる. さらには「文化的な意味をもった」人工物とシ ンボルを持ち出しているが,なぜ,文化的な意 味を持ち得るのかが説明されなければならな. であったり,言語的シンボルであったりと様々 な形態で表れる. このように,. Hatchの文化ダイナミクスモデ. には語ることのできないプロセスなのである.. ルは,象徴化プロセスと解釈プロセスにおいて 補完を必要とするものであったが,ややもすれ. さすがにレトロスペクティヴな象徴化(シンボ. ば,過度に単純化され,スタティックな印象の. Hatch自身,解釈と ル一人工物)においては, 区別することが困難であることを白状してい. 強かったScheinの文化モデルを,不断のダイ. る.依って,ここでは,. あると言えよう.だが,これは言い換えると,. い.すなわち,それはいずれも人の解釈を抜き. Hatchの議論から離れ. て,象徴化と解釈を論じることにしよう. まず,シンボルとは何かを定義しなければな らない.. ナミックなプロセスとして再定式化するもので 組織文化とは大変に複雑なものであり,本質的. な変草が容易ではiiいことは明らかだろう.. Morganら(1983)によれば,シンボ. 5.文化変革. ルとはそれ自体が本来もっている意味(文字通 りの意味)以上の多くのものを意味し,意識的. 先に述べたような,いわゆる不祥事体質の企. あるいは無意識的な連想が,完全な意味を読み. 業は,早急な変革が求められている.もちろん,. 取るために必要とされる記号のことである.そ. そのことはこうした企業に限ったことではな. れは,その記号が本来意味することと厳格な類. い.急激なグローバル化が進み,また,あらゆ. 似性をもつ必要はなく,より広範な全体の一部. ることが市場で決定されるような現代の風潮に. として解釈されることによって,他の暗示や意. よって,それまでの企業のあり方を根底から問. 味のパターンが呼び起こされ,寄せ集められる. い直す必要に迫られることが少なくない.今か ら10年ほど前,まだ企業文化論が盛んに論じら. ものである(Cassirer,. 1923; Bartbes,. 1957).. そこで,人工物(意味が付与されていない限 りにおいては,単なる記号にすぎない)は,解. れていた頃,強い文化論の優越性が,文化の逆 機能性によるエクセレントカンパニーの凋落を. 釈を通して意味付与され,シンボルとなる.こ. 目の当たりにし,Killmann. こでの意味付与とは,組織の構成員が潜在的な. Hesket. シンボル的人工物を前にしたときに,既存の意 味体系(これはScheinのいう基本的仮定とほ. 単に言えば,環境変化への適応の意識を文化的. ぼ同義である)を解釈のフレームワークとして. 柔軟な行動をとることを可能とする企業文化で. 参照し,意味あるものと同定されたとき(レト. あれば,環境変化の予測力や認識力を高め,そ. ロスペクティヴな解釈)にその人工物はシンボ. れに基づく適応的な戦略の策定,実行を可能と. ルとなる.これが象徴化のプロセスであり,こ. し,また,環境適応的に組織の文化変革を容易. のように解釈なくして象徴化はあり得ない. 他方,ある組織構成員にとっては馴染みがな. に行うことができるとするものであった.しか. (1985)やKotter=. (1992)は適応的な文化を提唱した.簡. 価値の中心におき,実際の環境変化に対して,. し,この議論が絵空事的なものであることは明.
(7) 組織文化のダイナミクスと変革(四本). らかである.文化を本質的に変革しようとする ならば,. scheinが文化の中核と据える基本的仮 定を変えなければならない.仮定が中核として. (449). 137. って,変革の道標となるような新たな人工物を 創出していかなければならないだろう. そして,ここにも変革の大きな障害となる問. 捉えられるのは,それが一朝一夕に形成された. 題がある.それは,マネジメントサイドの権力. ものでなく,繰り返し機能し,それが当然のこ ととして思い込まれているものである.変革レ. ヘの執着である.大きな変革が求められるとき, ときにそれが社会的な倫理から逸脱し,社会的. ベルの変更を加えることがどれだけ困難なこと. な責任を問われ,そして,企業の従来の体質. か容易に想像がつこう.この仮定は組織構成員. (文化)を変えなければならないと求められた. の意味体系を構成するものであり,解釈のベー. とき,自らを犠牲にしてまで,変革の旗印とな. スとなっている.彼らはこうした意味体系によ. 不祥事 れる経営者がどれだけいるだろうか? 続きの企業がいつまでも変われないこと,企業. って社会的に構成された現実を生きているので. 文化の刷新を唱えながらも社会的に信用されな. ある.. また,仮定は環境の認識に大きな影響を及ぼ す.環境とは,その実,客体として外部に存在. いこと,これらは既存の権力構造から抜け出せ ないことに原因の一端があるように思われる.. するものでなく,他ならぬ,意味付与を行って. すなわち,経営者は大きな文化変革の舵取りも. いる組織そのものが作り出したものなのであ. できるが,そこに何らかの誤魔化しもできると. る.それ故に「問わなければならないのはむし ろ,組織の行動それ自体,すなわち,個々の出. いうことだ.むろん,こうした誤魔化しには, 企業の内部にいる構成員たちが最も敏感であろ. 来事や現象のどれに注目し,どれを無視したか,. う.上っ面だけの変革の掛け声は,価値として. そのなかのどの側面を取り上げ,どの側面を捨. 信奉されることもなければ,当然,基本的仮定. てたのか,そして,なぜそうしたか--それに. として文化に根付くこともないだろう.. よって,組織にとって行動可能な状況,すなわ ち環境が出来上がる」. (田中,2003)ということ. ところで,経営者は新たな価値の注入者とし てだけではなく,文化のシンボルであることに. になるのである.今,まさに変革が急務となっ. も留意しておく必要がある.これまでは,主に. ている企業にとっては,この一節がもつ意味は 大きいものだろう.まさに,無視された現象,. Hatcbのダイナミクスモデルの上半分の部分で 行われえることを考察してきたが,組織の構成. 切り捨てられた側面が今日の危機を招いている. 員たちにとって,経営者が文化的な人工物(シ. のではないだろうか.. ンボル)になることの方が,本質的な意味での 変革には重要である.なぜなら,組織の構成員. このように,言わば,これまでのツケが変革 を迫るような状況(環境)を生み出したことを. たちにとって,組織という社会的な場に張り巡. 認識したならば,次の舵取りをしなければなら. らされた意味体系の綱(Geertz,. Selznick ないのは,やはり経営者なのである. (1957)が経営者の主要な役割を価値注入と述. べているように,そしてまた,. Schein. (1992). がリーダーの最も重要な仕事は文化を創ること. 1973)こそが, 彼らのリアリティを構成しているのであって, 変革されたものをリアリティとするのは解釈の プロセスを適して行われるからである (Berger-Luckmann,. であると述べているように,経営者は,それま. 1966).つまり,解釈主義 的なパースペクティヴに立てば,変革を体現し. での信奉された価値を刷新するような価値を注. ようとする経営者は,組織構成員たちにとって,. 入し,レトロアクティヴな表象化によって基本. 最初の段階では単なる人工物に過ぎず,その経. 的な仮定に働きかけていかなければならないだ. 営者が投げかけている意味を解釈することによ. ろう.さらには,プロアクティヴな具現化によ. って,文化的なシンボルとなるようにプロセス.
(8) 138. (450). 横浜国際社会科学研究. 第10巻第3.. 4号(2005年12月). 化されるのである.つまり,ここでは経営者の. 合させることで,さらなるインプリケーション. 変革の舵取り(リーダーシップ)よりも,文化. を得ることになるだろう.それは,今後の研究. 的シンボルとしての経営者が,いかに解釈され. 課題とすることにしたい.. るかが重要となる.もちろん,この解釈に対し て,経営者が意図的に働きかけることは可能で 注. あって,それをシンボリック・マネジメントと. 呼ぶ3).シンボリック・マネジメントは,さら に儀礼や儀式,言語といったシンボルを介し, 解釈のプロセスを経て,組織構成員たちに新た な意味付けを促すこともできる.新たな意味体 系が構成員たちに浸透し,共有されることで, 組織の文化は再生産されることになる.この再 生産された文化こそが変革後の文化として表れ るのは言うまでもないだろう. 6.結. び. 最近の憂うべき大企業の不祥事,しかも,同 じ企業,同じ企業グループの会社が繰返し問題 を起こしている.こうした問題を生む本質的な 原因は,その企業の文化にある.そこで本稿で は,まず,正しく機能しない文化,すなわち,. Peters=Waterman 1)中心的なものとしては, (1982) Deal-Kennedy (1982).これらの著作 は世界的なべストセラーとなり,まさに企業文 化論の先駆けとなった. ,. 2)これらの各モードの名称に相応しい日本語を 充てるのは難しいが,直訳的に表現するならば, プロアクティヴ(順行的),プロスペクティヴ (予見的),レトロアクティヴ(遡及的),レト ロスペクティヴ(回顧的)モードとなるだろう. 3)解釈主義的文化論は,機能主義的なシンボリ ック・マネジメントに批判的なものが多い.な ぜなら,解釈主義的パースペクティヴにおいて は,シンボリックな世界こそが組織の構成員た ちにとってのリアリティであって,それをマネ ジメントすることは,構成員たちのメンタル的 統制,つまりは更なる組織の抑圧性問題へと繋 がる可能性が高いからである.解釈主義による 機能主義批判は,四本(2000)を参照のこと. また,シンボリックマネジメントを論じたもの としては, Deal=Kennedy (1982) AIvesson= Berg (1992),坂下(2002,2003)がある. (1986)は,文化の変革を3つのタイ 4) Gagliardi プに分けている.表層的変革,インクリメンタ ,. 文化の逆機能性を明らかにした.多くの問題を 起こした企業は,文化の変革を迫られている. しかし,変革のためには,まず,文化がどのよ うに構成されているのかが明らかにされねばな らない.. ル(漸進的)な餐革,革命的な変革である.ち ちろん,本稿で取り上げている変革は革命的な 変草ということになる.. そこで,. Hatchの文化ダイナミクスモデルを 使って,それを説明した.これは文化論の権威 参考文献. であるScbeinの文化モデルを再定式化しよう とする数少ないモデルである.また,今日的な 意義で言えば,組織論・組織文化論において, 機能主義と解釈主義的な立場が対立するなか, 双方を1つのモデルに取り込む可能性を含んで いる.最後に,文化変革に関して論じたが,具 体的な変草の方法を論じているわけではない. なぜなら,文化がその企業ごとに異なるもので あるように,変革も唯一絶対の方法はあり得な いからである4).従って,ここでは,文化ダイ ナミクスモデルを援用する形で変革のプロセス を考察した.むろん,これを具体的な事象と照. Alvesson,. M.. Culture. P. 0.. and. Berg. (1992), Corporate. Organizational. Ove7Wiew,. and Walter. Symbolism:. (1957), Mythologies, 訳『神話作用』現代新潮社,. Bartbes,. An. de Gruyter. Seuil. R.. (篠沢秀夫. 1967) Berger, P. and T. Luckmann (1966), The Social Chandler. Construction (山口敏郎訳 of Reality, 『日常世界の構成』新曜社, 1977) G. Burrell, (1979), Sociological and G. Morgan Paradigms. and Heinemann.. organizational. Analysis,. (鎌田伸一・金井一腰・ 野中郁次郎訳『組織理論のパラダイム:機能主 義の分析枠組』千倉書房, 1986) London:. Cassirer,. E・, Die. Philospphie. Der. Symbolischen.
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省庁再編 n管理改革 一次︶によって内閣宣房の再編成がおこなわれるなど︑