1 はじめに 日本は高齢化社会と言われて久しい.一般に,65歳 以上の人口が総人口の7%を超えると高齢化社会と呼ば れる.1950年の国内における65歳以上(以下,高齢者) の人口は総人口に対して5%未満であるが,1970年に高 齢者の人口は7%を超えて高齢化社会に突入している1). その後,1994年には高齢者の人口は総人口に対して 14%を超え,2018年9月の人口推計によると,国内の人 口約1億2600万人に対して,高齢者の人口は約3500万 人を超えており,その割合は28%を超えている1, 2). 高齢化が顕著になっていくことと並行して,少子化お よび20〜30代の働き手が減少しており,1990年頃から 高齢者支援に対する問題が指摘されはじめている3).近 年では,少子高齢化社会における高齢者支援への対策の 一つとして,介護ロボットや生活支援ロボットをはじめ とする介護機器の開発が注目されている.これら介護機 器は,介護者の労働作業のアシストや,被介護者を抱え 上げるだけの出力が要求される.一方で,介護機器は介 護労働者や被介護者に密着して動作することが前提とさ れている場合が多く,その出力が大きすぎることで,介 護労働者や被介護者が負傷する可能性がある.介護機器 等により,介護労働者や被介護者が負傷することを防ぐ ためにも,介護機器の分野における安全性の確保が重要 となるが,介護現場における動作要求仕様を十分に満足 する安全技術は未だ確立されていないのが現状である. ここで,安全技術の確立のためには,介護機器が人体に 与える荷重と人骨の耐荷重の関係を明らかにする必要が ある.しかし,強度評価実験に人骨を使用することは倫 理上および個人情報の観点から,その使用が困難である ことから,人工骨の使用が検討されている. 一方,近年,人体組織の物理特性を模した生態材料を 使用した人工骨の開発が進められている.ここで,人工 骨の再現性や妥当性を確認するためには,人工骨の強度 を実験的に得る必要がある.しかし,人工骨の強度評価 試験は確立されていない.また,様々な強度特性を得る ためには,相当数の人工骨が必要である.強度評価試験 方法の検討や数量の問題を解決するためには,強度試験 や実際の負荷状態を再現できる有限要素解析をはじめと するシミュレーション解析の利用が有効である.シミュ レーション解析は,コンピューター上で試験体に任意の 方向から荷重や強制変位を与えることが可能であり,試 験体の変形や,試験体の破断荷重の推定に有効である4). また,シミュレーション解析は試験片を必要としないこ とから,試験回数の低減を図ることもできる. そこで本研究では,人工骨の曲げ強度評価試験を検討 することを目的に,実験的に得た人工骨の曲げ強度と有 限要素解析によって得た人工骨の強度の比較を行うとと もに,人工骨の曲げ強度評価に対する有限要素解析の有 効性について検討する. 2 作製した人工骨の曲げ試験 1)人工骨の3次元モデル 本研究では,介護労働の主力として期待されている 20歳代後半から50歳代の女性の中から,最も介護労働 従事者の多い40歳代女性の上肢を解析対象とした5). 図1に示す上肢の3次元モデルは,ある40代の日本人女 性の右腕のCT画像から三次元形状に置換されたもので あり5),海綿骨と皮質骨によって構成されている.なお, 当該3次元モデルには,通常海綿骨が有する空隙等は存 在しない.
有限要素解析を利用した人工前腕骨の曲げ強度評価の検討
山 口 篤 志
*
1,岡 部 康 平
*
1,池 田 博 康
*
1 1970年に高齢者の人口は総人口の7%を超えて高齢化社会に突入し,その後,高齢者支援の問題が浮き彫 りとなっている.現在では,それら問題への対策の一つとして,介護ロボットや生活支援ロボットをはじめと する介護機器の開発が注目されている.これら介護機器は,介護者の労働作業のアシストや,被介護者や高齢 者を抱え上げるだけの出力が要求される.一方で,介護機器の分野においては,介護現場における動作要求仕 様を十分に満足する安全技術は未だ確立されていないのが現状である.安全技術の確立のためには,人骨の耐 荷重を明らかにする必要があるが,倫理上および個人情報保護の観点から,人骨の代替として人工骨の利用が 検討されている.人体組織の物理特性を模した生態材料を使用した人工骨の開発は進められているが,その強 度評価試験は確立されていないため,人工骨の再現性や妥当性を確認することができない.そこで本稿では, 人工骨の曲げ強度評価試験を検討することを目的に,実験的に得た人工骨の曲げ強度と有限要素解析によって 得た人工骨の曲げ強度の比較を行い,人工骨の強度評価に対する有限要素解析の有効性を検討するとともに, 有限要素解析を利用して橈骨および尺骨を対象に複数の負荷の向きに対する曲げ強度を示している.その他, 海綿骨が人工骨(または人骨)の曲げ強度に及ぼす影響について検討し,その影響が小さいことを示している. キーワード:人工橈骨,人工尺骨,曲げ強度,有限要素解析,介護機器,高齢化社会原稿受付 2019年1月10日(Received date: January 10, 2019) 原稿受理 2019年5月21日(Accepted date: May 21, 2019)
J-STAGE Advance published date: June 25, 2019
*1労働安全衛生総合研究所機械システム安全研究グループ 連絡先:〒204-0024 東京都清瀬市梅園1-4-6 労働安全衛生総合研究所機械システム安全研究グループ 山口篤志 E-mail: [email protected] doi: 10.2486/josh.JOSH-2019-0002-GE 原著論文
2)人工骨の種類,形状,機械的特性
本研究において使用される人工骨は,米国のPacific
ResearchLaboratoryに属するSawbones社により製造さ
れた.製造された人工骨は,1)で述べた40代の日本人 女性の右腕の橈骨と尺骨(以下,それぞれ人工橈骨,人 工尺骨)を模擬したものである6).一例として,図2に 人工橈骨を示す.この人工橈骨の長さは約210mmであ る.また,人工尺骨の長さは220mmである.次に,両 人工骨を構成している人工皮質骨と人工海綿骨の機械的 特性を表1に示す.人工皮質骨はエポキシ樹脂,人工海 綿骨はポリウレタンであり,これらの機械的特性は,そ れぞれASTM D6387)およびASTMD1621 8)に基づい て得られている. 3)人工骨の曲げ試験 人工骨の強度評価試験の1つとして,曲げ試験を行っ た.本試験は,介護機器を扱う介護者の腕に静的な曲げ 荷重が作用した場合を想定している.図3 (a)に曲げ試 験の外観を示す.荷重点および支持点の曲率半径は,そ れぞれ10 mm,12 mmであり,支点間距離は120mm である.当然のことではあるが,骨は三次元的に複雑な 形状をしており,人工骨の形状も同様である.一般的な 曲げ試験として採用される3点曲げ試験では,荷重負荷 とともに人工骨が回転し,適切な試験が行えない可能性 があることから,図3 (b)に示すように,人工骨の回転 を防止するために荷重点は2点,支持点は4点となって いる.次に,人工橈骨および人工尺骨の荷重方向は,介 護労働者および被介護者の介護機器による「挟まれ」を 想定し,図4で示すような方向としている.すなわち, 親指が上方となる向き(解剖学的正位と呼ばれる向き) を基準として,人工橈骨は-Y方向へ,人工尺骨は+Y方
Fig.1 Image of upper-limb bones of a Japanese woman by CT
(a) Failed artificial radii
(b) Failed artificial ulnae Fig.1 Image of upper-limb bones of a Japanese woman by CT
scanning
Fig.2 Appearance of artificial radius
(a) Situation of bending test
Fig.4 Loading direction for each artificial bone
(a) Failed artificial radii
(b) Failed artificial ulnae Fig.5 Failed artificial bones (b) Picture of the jig for bending test
Fig.3 Bending test for artificial bones Table 1 Mechanical properties of an artificial bone
Artificial bone modulusYoung’s (MPa) Yield strength (MPa) Tensile strength (MPa) Cortical bone 16,000 95 106 Cancellous bone 155 6 8
向へ0.1mm/sで負荷される. 図5に破断した人工骨を示す.曲げ試験は16回行い, そのうち人工橈骨は10回,人工尺骨は6回であった. いずれも人工骨の中央で破断しており,いくつかの人工 骨においては,破断する際に細かい欠片が生じている. 次に,図6に破断した人工橈骨の一例と破断面を示す. 図2に示した破断前の人工橈骨と比べても,特に変形は 見られない.人工尺骨においても同様である.また,破 断面には凹凸がなく,亀裂が入った様子も観察されなか った.人工骨の主の材料がエポキシ樹脂であることから 当然ではあるが,人工骨は脆性的に破壊している. 次に,表2に両人工骨の曲げ試験結果をそれぞれ示す. 人工橈骨の本数が9本および人工尺骨の本数が5本とな っているが,それぞれ1本ずつが試験中に負荷を受ける とともに回転し,その後破損したため,適切な試験が行 えなかったことから結果から除外している.人工橈骨お よび人工尺骨の平均の破断荷重は,それぞれ約472Nお よび約634Nであり,人工尺骨の方が外力に対して構造 的に強いことが分かる.なお,人工橈骨および人工尺骨 の変動係数について計算したところ,両者ともに0.06 であり,ばらつきは同等である.また,平均値に対する ばらつきは±10% 以下であり,結果のばらつきは小さ いと言える. 3 有限要素解析による上肢骨の曲げ強度の推定
有限要素解析(FiniteElementAnalysis;以下,FEA) などのシミュレーション解析は,試験体に対して,任意 の方向から荷重や強制変位を与えることが可能であり, 試験体の変形や破断荷重の推定を行ううえで有効であ る4).そのため,人工骨,ひいては人骨の強度評価試験 の検討において有効なものと考えられる.そこで,FEA を使用して上肢骨の曲げ試験をシミュレートし,曲げ試 験結果における破損荷重と比較することで,FEAによ る人工骨(ひいては人骨)の曲げ強度評価に対する有効 性について検討する. 1)FEモデルおよび境界条件 FEAはABAQUS 6.11を使用して行われる.図7に人 工橈骨および人工尺骨のFEモデルを示す.FEモデルは, 解剖学的正位の状態でCTスキャンによって得られた3 次元情報から構築している.人工橈骨のFEモデル要素 数は786,891個,節点数は164,484個である.一方で人 工尺骨のFEモデルの要素数は511,949個,節点数は 113,266個である.なお,両FEモデルともに,3次元要 素(C34D)を使用している.また,両FEモデルにお けるヤング率およびポアソン比は,それぞれ16,000 MPaおよび0.34としている.両FEモデルにおける真応 力―真ひずみ関係は,図8に示すとおりであり,ASTM D631の試験結果に基づいて作成している.加工硬化特 性は降伏強さと引張強さを直線近似しており,引張強さ 以降は完全塑性挙動としている.FEAでは,人工尺骨 の破断はシミュレートできないことから,破断荷重は破 損部のひずみが発散した時点の荷重としている.図9に
(a) Artificial radius
(b) Artificial ulna
(a) An example of failed artificial radius
Fig.8 True stress-strain relation used in FEA (a) Artificial radius
(b) Artificial ulna
Fig.7 Finite element model of the artificial bones (b) A failure surface
Fig.6 Appearance of failed artificial radius Table 2 Failure load of artificial bones Failure load Artificial radius Artificial ulna
Max (N) 503.5 670.0 MIN (N) 428.0 571.0 Average (N) 471.9 633.6 Number of specimens 9 5 Vol. 12, No. 2, pp. 87 93, (2019)
境界条件を示す.曲げ試験と同様に,親指が上方となる 向きを基準として,人工尺骨の中央に負荷する.なお, 曲げ試験では,人工骨が試験中に回転することを防止す るために人工骨と治具の接触点は,先に述べたように, 負荷部2点,支持部各2点の合計6点であるが,解析を 単純化するために接触点は通常の3点曲げと同様に負荷 部1点,支持部各1点の合計3点とし,各接触点には回 転拘束を設けている. 2)人工骨の強度に及ぼす海綿骨の影響 表1で示したように,人工海綿骨の強度は,人工皮質 骨の強度よりも小さく,人工海綿骨のヤング率および引 張強さは,人工皮質骨に比べて,それぞれ1/100程度, 1/13程度である.したがって,人工海綿骨は人工骨の 強度にほとんど寄与しないと考えられる.そこで,FEA を用いて人工骨の曲げ強度に及ぼす海綿骨の影響を調査 する.図10は橈骨のFE解析のモデルであるが,色の濃 い箇所が海綿骨に相当する部分である.荷重点近傍であ るX方向における橈骨の中央の部分においては,海綿骨 は皮質骨に比べて細いことが確認できる.一方,両端部 近傍においては,皮質骨よりも海綿骨が占める体積のほ うが大きい.図11にFE解析結果として,人工橈骨の破 断時のMises応力の応力分布を示す.図は海綿骨が含ま れるものとして計算した結果であるが,計算される破断 荷重は,海綿骨の有無によらず654Nである.海綿骨の 有無によらず破断荷重は同じであることから,人工海綿 骨は人工骨の曲げ強度に影響しないと考えられる.した がって,FEAを利用して人工橈骨,ひいては橈骨の応 力解析を実施する際には,海綿骨に相当する領域は考慮 しなくてもよいと言える.これは,人工尺骨においても 同様であり,さらには,海綿骨が皮質骨に比べて,その 領域が十分小さいならば,他の部位の人工骨においても 同様の解釈ができると考えられる. 3)橈骨および尺骨の4方向における曲げ強度の評価 人骨はその部位によらず複雑な形状をしており,図1 に示したとおり上肢骨も同様である.そのため,荷重方 向によって橈骨および尺骨の曲げ強度が異なると考えら れる.しかし,様々な方向からの曲げ強度はこれまで明 らかになっておらず,介護労働者や被介護者は介護機器 により様々な方向から力を受けることが想定されること から,複数の方向における橈骨および尺骨の曲げ強度を 明らかにすることは,今後の介護機器の出力を決定する 上で重要と考えられる.そこで,ここでは,FEAを利 用して橈骨と尺骨の4つの負荷の向きに対する曲げ強度 を調査する.4つの負荷の向きは,図12に示すように, それぞれ親指,小指,手の甲,手のひらが上になるよう に橈骨や尺骨を置いたときの負荷の向きである.表3に 人工橈骨と人工尺骨における4つの負荷の向きに対する 破壊荷重の計算値を示す.人工橈骨の最大曲げ強度は 713Nであり,小指側からの負荷の向きである.一方, 人工尺骨の最大曲げ強度は1,010Nであり,手の甲側か らの負荷の向きである.また,両者の曲げ強度の足し合 わせた値を前腕部の強度として考えたとき,その最大曲 げ強度は1,603Nであり,手の甲側から負荷した場合で ある.本解析により,人工橈骨および人工尺骨における 4方向のそれぞれの曲げ強度が示されただけでなく,人 工前腕部としての曲げ強度が示された.また,本解析で 得られたもっとも曲げ強度の大きい方向は,人の橈骨お よび尺骨においても同様と言える. 4)試験結果と解析結果の比較 人工橈骨の-Y方向の曲げ強度は,それぞれ実験結果 では472 N,解析結果では654 Nである.一方,人工尺 骨のY方向の曲げ強度は,それぞれ実験結果では634N, 解析結果では821 Nである.両者の差はそれぞれ約 28%,約23% であり,また両者ともに危険側の評価と なった.この差が生じた原因として以下が考えられる. (1) 接触点の差異:曲げ試験において,試験中の人工 骨の回転を防止するため,人工骨と治具の接触点 は6点となっている.一方,FEAにおける境界条 件として設定されている人工骨と治具の接触点は 3点となっている. (2) 解析における曲げ強度の定義:曲げ強度は,ひず みが収束せずに発散した時点としており,応力− ひずみ線図における破損時のひずみを使用してい ない. X Y Z Fig.9 Boundary conditions
Fig.10 Cancellous bone in radius in FE model
本稿における解析では,簡易な解析の実行を目的とし ているため,境界条件,機械的性質などを含む解析条件 を簡略化している.したがって,試験結果と解析結果の 差は,上記に示す項目が影響しているため生じたものと 考えられる.また,解析結果は実験結果に比べて危険側 の評価となったことから,解析対象物が目標とされる曲 げ強度を有しているか否かの判定は困難であるが,一方 で,誤差は30%未満であることから,おおよその曲げ 強度を推定することが可能であり,曲げ試験を行うため の事前検証として,本稿で提案した簡略化した解析は有 効である.今後の課題として,FEAのみで人工骨また は人骨の曲げ強度を得るために,解析結果と実験結果に 差が生じた原因を特定し,その差を低減させる減らすこ とが挙げられる. 本稿では人工骨の強度評価として,荷重点2点,支持 点4点による曲げ試験を提案しており,これによって試 験中における人工骨ひいては人骨の回転を抑制できるこ とを確認した.また,本稿で検証した簡便なFE解析は, 曲げ試験を行う事前検証として,任意の方向におけるお およその曲げ強度を推定するのに有効であることを示し た.介護労働者や被介護者に対する介護ロボットや生活 支援ロボットをはじめとする介護機器の出力や荷重を決 定するために,本稿で提案するFE解析方法および曲げ 試験方法は有効であると考えられる. X Y Z X Y Z X Z Y X Z Y X Z Y X Z Y X Y Z X Y Z
Fig.12 Boundary conditions on 4-directions in FEA (a) radius loading from thumb side
(b) radius loading from finger side
(c) radius loading from back of hand side
(d) radius loading from palm side
(e) ulna loading from thumb side
(f) ulna loading from little finger side
(g) ulna loading from back of hand side
(h) ulna loading from palm side
Table 3 Calculated bending failure load for 4 loading directions by FEA Calculated bending failure load (N)
Radius Ulna Total value
Loading from thumb side 654 605 1,259
Loading from little finger side 713 821 1,534
Loading from back of hand side 593 1,010 1,603
Loading from palm side 462 558 1,020
4 まとめ 人工骨の強度評価試験を検討することを目的に,実験 的に得た人工骨の曲げ強度と有限要素解析によって得た 人工骨の曲げ強度の比較を行い,人工骨の曲げ強度評価 に対する有限要素解析の有効性を検討するとともに,有 限要素解析を利用して橈骨および尺骨を対象に複数の負 荷の向きに対する曲げ強度を評価した.得られた結果を 以下に示す. (1)親指が上方となる向きを基準として,人工橈骨およ び人工尺骨の曲げ試験を行ったところ,それぞれの 平均の破断荷重は,約472 N,約634Nであり,人 工尺骨の方が外力に対して構造的に強いことが分か った.なお,人工橈骨および人工尺骨の変動係数に ついて計算したところ,両者ともに0.06であり, ばらつきは同等であった.また,平均値に対するば らつきは±10% 以下であり,実験結果のばらつき は小さかった. (2)有限要素解析により,人工海綿骨が人工骨の曲げ強 度に及ぼす影響を調査したところ,計算される破断 荷重は,海綿骨の有無によらず654Nであった.海 綿骨の有無によらず破断荷重は同じであることか ら,人工海綿骨は人工骨の曲げ強度に影響しないと 考えられる.したがって,FEAを利用して,人工 橈骨,ひいては橈骨の応力解析を実施する際に,海 綿骨に相当する領域は考慮しなくてもよい. (3)親指が上方となる向きを基準として,人工橈骨の -Y方向の曲げ強度は,実験結果では472N,解析結 果では654 Nであった.一方,人工尺骨のY方向の 曲げ強度は,それぞれ実験結果では634N,解析結 果では821Nであった.両者の差は25%程度であり, かつ両者ともに危険側の評価となった.本稿におけ る解析では,簡易な解析の実行を目的としており, 境界条件や機械的性質などを含む解析条件を簡略化 している.試験結果と解析結果の差は,解析を簡略 化した影響と考えられる. (4)介護労働者や被介護者に対する介護ロボットや生活 支援ロボットをはじめとする介護機器の出力や荷重 を決定するために,本稿で提案した複雑な形状を有 する人工骨ひいては人骨の曲げ試験方法,およびそ れらの曲げ荷重を推定するための簡便なFE解析は 有効であると考えられる. 謝 辞 本研究は経済産業省「ロボット介護機器開発・導入促 進事業(基準策定・評価事業)」による助成によって行 われた.ここに謝意を表する. 文文文 文 1) 総務省統計局, 統計トピックス No.113 統計からみた我が国 の高齢者 1高齢者の人口, https://www8.cao.go.jp /kourei/ whitepaper/w-2018/zenbun/pdf/1s1s_01.pdf; 2018. 2) 内閣府, 平成30年版高齢社会白書 1高齢化の現状と将来像, https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018 /zenbun/ pdf/1s1s_01.pdf; 2018. 3) 山口篤志,岡部康平,池田博康,人工骨を用いた前腕骨 の曲げ強度特性. ロボティクス・メカトロニクス講演会講 演概要集. 2016:pp. ROMBUNNO.1A2-13b6. 4) 山口篤志,吉田展之,戒田拓洋,API579-1/ASME FFS-1 供用適性評価による模擬腐食配管の残存強度評価. 圧力技 術,Vol.52,No.2,2014:pp.72-80. 5) 岡部康平,山口篤志,池田博康,女性上肢骨折耐性検討 のための曲げ強度解析 . 第35回日本ロボット学会学術講 演会RSJ2017:CDROM. 6) 岡部康平,池田博康,山口篤志,挟圧による危害分析の ための上肢モデル開発. ロボティクス・メカトロニクス講 演会講演概要集 2015:pp.ROMBUNNO.2A1-W02. 7) American Society for Testing and Materials. Standard Test
Method for Tensile Properties of Plastics. ASTM D638-14; 2014.
8) American Society for Testing and Materials. Standard Test Method for Compressive Properties of Rigid Cellular Plastics. ASTM D1621-10; 2010.
Vol. 12, No. 2, pp. 87 93, (2019)
Study on bending strength of artificial antebrachial bones by Finite Element
Analysis
by
Atsushi Yamaguchi*
1, Kohei Okabe*
1and Hiroyasu Ikeda*
1Determining the relationship between the load generated by cooperative robots and the safety of human bone is essential while establishing technologies and standards in the field of cooperative robots. In this study, a three-point bending test to evaluate the strength of artificial bones has been proposed. First, the bending strength of an artificial radius and an artificial ulna is obtained through the bending test. Next, Finite Element Analysis (FEA) is used to estimate the bending strength of artificial bones. The bending strength of the artificial bones in four directions along a central axis is obtained along with the strengths and weaknesses for the load on each artificial bone in each direc-tion. The FEA evaluation shows that the cancellous bones do not contribute to the strength of the other bones. In addition, efficacy of the FEA evaluation method is shown by comparing the strength of an artificial bone obtained through experiments with that determined using FEA. The comparison showed a difference of approximately 25% between the strengths obtained through the different methods, with the analytical result being the assessment of danger side.
Key Words: Artificial bones, Bending strength, Finite element analysis, Care equipment, Aging society