図書館はどうみられてきたか・7 : 図書館員出身作家のメンタリティ 女性作家が描く女性図書館員像
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(2) 文学 。文化編 (2006年 3月. 「想像 以上 に体力 を使 う仕事 でびっ くり ! 館 内 はゆ った りしてい ますが,働 いてい る方 はテキパ キ動 いて. 仁、 会館図書室. ). 訪 れれば誰 で も一 日フランス気分 P」. 「 日本近代文学館. ブ ンガ クに触 れて,楽 しめて,勉. るんですね」「小 さい ときには,母 に連 れ られてア メ. 強 で きる !」 「 (財 )国 際文化会館図書室 作家 も利用. リカの大学 の図書館 によく行 ったそ うなのですが,そ. す る会員制 の専 門図書館」 (他 にブ ックカフェが 2箇. の記憶 はあんまりな くて,だ か ら,日 本 に帰 って きて. してい る。 所 )な どが紹グ トさオ 「本好 きのためのハロー ワー ク」 (p.203)の ペー ジ. か ら,母 とよ く出掛けた近所 の図書館が,最 初の思 い 出」「図書館 って流れる空気 もゆ った りしてい る し ,. では,「 図書館員 になる」「書店員 になる」「本屋 さん. ヒられない。私 にとっ 本 に夢中になっていて も誰にもロ. になる」「古本屋 さんになる」 として,そ れぞれにつ. て,温 かみの あ る,落 ち着 く場所 です」 と述 べ て い. い て,参 考 になる文献や,ホ ームペー ジの ア ドレス. る。. (こ. れは図書館員に関 してのみ)が 掲載 されてい る。. 「本 に囲 まれてはた ら く人たち」 (pp.200-201)で. 「図書館員になる」 とい う部分 では,「 ここで図書館. は,「 本 を愛 して図書館 司書 に『都立 日比谷図書館』. 職員の求人情報 を探そう」 として「有資格者 の正規職. 米 長純子 さんの場 合」,「 子 どもた ちに本 を届 けた い. 員 と臨時職員 を中心 に紹介」 には,「 日本図書館協会. 『(財 )東 京子 ども図書館』清水千秋 さんの場合」 とい. ホームペー ジ」 のア ドレスと,「 日本図書館協会発行. う,ふ た りの女性 に対す るインタビュー をまとめた も. の月刊誌 『図書館雑誌』「こ くばん」欄」 をあげ,「 司. のが掲載 されてい る. の他 に,書 店関係者 としてふ. 書資格 の必要の ない求人や派遣 ,業 務委託 ,短 期 アル. た りの男性 に対す るインタビュー も,あ わせて掲載 さ. バ イ トまで網羅」 では,「 われわれの館」「WEB版 図. れてい る)。. 書館就職相談室」「 リクルー トス タッフィング」 のア. (こ. 米長 さんは「『小 さい ときか ら本が大好 き』『図書館. ドレスを紹介 してい る。 さらに,森 智彦 『司書 ・司書. にも通 ってい ましたよ。家の近 くまで分館が出張 して. 教諭 になるには』 ペ リカ ン社3,常 世 田良 『浦安図書. きて くれるんですが,そ れだけ じゃ間に合わな くて別. 館 にで きる こと』勁草書房4,の 2冊 につい て,表 紙. の図書館 にも行 き来 した りして』 」 い た とい う。その. と,内 容 の簡単 な要約が掲載 されてい る。 ここでは. 後,図 書館情報大学 に進 み,東 京都 の図書館司書 に採. 司書資格取得 につ い て「司書 の 資格 を取得 して も」. ,. 現在 の 日比谷図書館 に勤務 してい る。「『より多 くの方. 「司書職 に就 きたい場合 は,公 務員試験や国家公務員 試験 などをパス しな くてはな りません。残念なが ら司. に本 の面 白さに触 れていただきたい,だ か らこそ気軽. 書職 の採用 は少な く,競 争率 も非常 に高 いのが現状 で. に声 をかけてもらえるような環境づ くりが必 要 なのか. す」 と説明 されてい る。 さらに「臨時や派遣 ,業 務委. もしれませんね』 」 と述べ ている。 清水 さんは「『小 さい頃,公 共図書館が近 くになか. 託 であれば採用枠 もぐっと広が ります。 しか も,司 書. ったので,代 わ りに町内会館 の 図書室 を利用 して』 」. い う条件 の図書館 もた くさんあ ります」 として,上 記. いて,そ こにいた年配の女性 と接点があ ったとい う。. のサ イ トをチ ェックすることをすすめている。. 用 され,都 立の定時制高校,都 立中央図書館 を経 て. ,. の資格 はあ ったほ うが有利 に しろ,“ な くて も可"と. 大学時代 の教育実習先 では「『図書室 は,い つ も鍵が. この部分 は現実 の「司書」資格扱 われ方や,職 員配. かかっていて,ま るで倉庫のよう。先生 の許可がない と入れ ませ んで した』 」 とい う。そ うした状況 を変 え. 置 の実情 などについて,一 定 の事実 に基づいた情報 を 提供 してい るが,占 めてい るスペー スの分量 は,1ペ. たい と思 い,司 書資格 を大学卒業後 に取得 した。大学. ー ジの 5分 の 2程 度 であ り,特 集全体が 7ペ ー ジある. 図書館 に勤務 した後 ,「 東京子 ども図書館」 の職員募. ので,そ の 5パ ーセ ン ト程度に過 ぎない。 このページ. 集 に応募 して採用 された。「人か らは よ く『図書館員. の残 りの部分 は,「 書店員 になる」「本屋 さん をひ ら. って楽そ うでいいね』 と言 われるそ う。で も実際 は. く」「古本屋 さん をひ ら く」 とい う タイ トルの もと. カウンター業務 はもちろん,本 選 びや展示物 の制作な. に,そ れぞれの職種 に関連 した書籍が 2冊 ずつ紹介 さ. ど,仕 事 はいつ も山のようにある」「『子 どもたちと本. れてい る。. ,. の楽 しさを共有で きること。それが充実感に繋が つて い る』 」 と述べ ている。 「こん なところではた らきたい. !. こ うした企画が掲載 されること自体 ,「 図書館 では たらく」 ことについて,読 者 の間 に一定 の関心が存在. 気持 ちのいい 図. すると,編 集部が考えていることを物語 っている。そ. 書館 ・ブ ックカフェガイ ド」 (p.202)で は,「 国際子. して,一 日図書館員 を体験す るのは女性 ,図 書館 に勤. 建物 もステキな児童書専 門図書館」「 日. 務 しインタビューの対象 として選 ばれてい るの もふた. ども図書館.
(3) 佐藤. 毅彦 :図 書館 は どうみ られて きたか 。7. 67. りの女性 であ ることは,図 書館 が女性 にとつての 「は. 掲載 されたエ ッセイにみ られる,文 芸関係者 の図書館. たらきたい」職場 のひとつである とイメー ジされてい. 観 をとりあげて きた。文芸作品やその紹介記事 を数多 く掲載 してい る雑誌 『ダ・ヴインチ』 に「図書館 では. ることを示 してい るとい えよう。 一 日図書館員体験 の写真撮影 が行 なわれた のは. た らく」 ことが特集 で と りあげ られ,特 に女性が働 く. 「国際子 ども図書館」 で あ り,職 員 の代表 としてイ ン. 場 としての「図書館」 力滞召介 されてい ることは,女 性. タビュー を受けてい る女性 の職場 は,賭『立 日比谷 図 書館」「 (財 )東 京子 ども図書館」 で,い ずれ も専門的. 読者 の意識の中で図書館 や図書館員が,文 芸関係 の周 辺 に存在 してい ると編集部が考 えてい るとい う見方 も. な色彩 の強い図書館 である。東京都内に限 って も,数. で きよう。現実 に,図 書館員 か ら文芸書の著者 になっ. としては,23区 の 区立 図書館 が 200館 あ ま り,多 摩. てい るケース も男女 を問わず存在する。. ,. 地区 に も,市 立図書館 は分館 を含 め る と 150館 あ ま. よ く知 られているところでは,国 立国会図書館勤務. り,存 在 してい る。住民 が 「誰 で も」「無料 で」利用 で きる,身 近な存在 の図書館 は,撮 影 の場所 としては. 経験 のあ る阿刀田高 ,八 王子市 の職員 として図書館 や 福祉関係 の仕事 を担当 していた篠田節子 ,な どのケー. 選択 されず,そ うした図書館 の職員 はインタビュー に. スがあ る。今年 (2005年 ),『 れんげ野原 の まんなか. と りあげられてい ない。 これには,撮 影 の便宜 の問題. で』 (東 京創元社)を 刊行 した,森 谷明子 も横浜市 図 書館 に勤務 していた経験 がある。今回は,女 性作家 の. や,区 ・市立 図書館 には,勤 務経験 の豊富な,専 門職 の規職員が少ないなどの事情 も影響 してい ると考 えら れるが,そ れ とともに,読 者が考 える図書館 や図書館 員 についての好感 の もてるイメージと,区 ・市立図書. 篠 田,森 谷両氏 をとりあげ,そ の作品 に,主 要なキャ ラクタとして女性図書館員 を登場 させてい るケースに ついて,そ の描 かれ方 を分析する ことで,図 書館員出. 館 の実態 とが,必 ず しも一致 してい るとは限 らない と. 身作家の図書館 に対す るみかたの一端 を明 らかにした. い う事実が存在 してい る,と い えるのではないか。. い と考 えた。. 「こん なところではた らきたい. !. 気持 ちのいい図. 書館」 のペー ジ (p.202)で 紹介 されて い る. (「. 国際. 2。. 「観覧車」 (『 秋 の花火』収録). 子 ども図書館」「 日仏会館 図書室」「 日本近代文学館」 「 (財 )国 際文化会館 図書室」)の は,い ず れ も「専 門 図書館」 であ り,利 用者 は限定 される。限定 され,知 的に洗練 された利用者がや って くる図書館 のイメー ジ こそが,こ の雑誌 の読者が「はたらきたい」 と考 えて いる図書館 なのだと,編 集部が考 えてい るように思わ れ る。現実 には区・市 立 図書館 には,分 館 だ け で な く,中 央図書館 であ って も,現 在 は多様 な人々が利用 者 として訪 れてお り, トラブルが発生 してい るケース もある'。 一方では,実 際 に,正 規 の職員 として,公 立の図書. 篠田節子と「観覧車」について 篠 田節子 は,1955年 東京都 生 まれ。東京学芸大学 卒 業後 ,八 王子 市 役所 に勤 務。『絹 の 変容』 に よ り 「第 3回 小説す ばる新人賞」 を受賞 した後 ,作 家活動 2-1。. に専念。『ゴサイ ンタン 神 の座』 で「第 10回 山本周 五郎 賞」,『 女 たちのジハ ー ド』 で「第 H7回 直木賞」 を受賞 し,現 在 まで,長 編 ・短編あわせて小説 を数十 い 点 ,エ ッセイ ◆紀行 など数点 を刊行 して きてい る 。 作家 に対するイ ンタビューの ビデオソフ トシリーズ の中では,小 さい頃の思 い出 として,夏 休 みに,泳 い. 図書館 では,募 集その ものがご くまれに しか存在 しな. で帰 って きたあ と「図書館へ行 って,本 を借 りて くる わけです。 プールに行 って,帰 って きて,昼 寝 しなが. い とい う状況 である。 もちろん,こ の特集 で も,そ の 事実関係 について解説 されてはるが,記 事 の分量 とし. ら,ね っころがって,本 を読 むとい うのが,小 学校 の 頃の楽 しみで した」 と述べ てい る。 また,児 童文学 の. ては特集記事全体 のご く一部 (全 体 のペー ジ数 の 5パ. 作品 として,『 失 われた世界』 や 『沈黙 の世界』『海底 二 万 マ イ ル』『コ ンテ イキ号 漂 流記』 を紹 介 し,最. 館へ就職す るのは,か な り困難 になってい るし,専 門. ーセン ト程度)に す ぎない。先 に示 したようにきび し ところに,こ の特集 の特徴 のひ とつ があ らわれて い. 近 ,書 店の児童書 コーナーにあるのは,ほ とんど参考 書 か,ガ ヽさい子 むけの絵本 で,小 学校四 ・五年生が読. る。. む よ うな活字 の 文学 は少 な い が,「 夏休 み,な か な. い現実 の部分 には,か る くふれる程度 で済 ませてい る. か,本 屋 さんにはあ りませんけ ど,図 書館 にはあ りま 「図書館 は どうみ られて きたか」 とい う,こ の一 連 の論考 で,一 昨年 ,昨 年 と,雑 誌 『図書館 の学校』 に. Jと す。せ ひ,ご 一読 ください」 まとめてい る。. 篠 田節子 は,作 家専業 として活動す る以前 に,八 王.
(4) 甲南 女子大学研 究紀 要第 42号. 文学 ・文化編 (2006年 3月. ). 子市役所 に勤務 した経験があ り,図 書館 に配属 されて. 三 日寝 込 ん だ 。 そ して一 年 の 全 力 疾 走 の 結 果 は 完 敗 だ. いた期間があ る。 とあるエ ッセ イには 「ある ドラマで. つた」 と述 べ られ て い る よ うに ,裁 判所 の 調査 官 を志. きれい なお嬢 さんが,図 書館員 と称 してカウ ンター に. 望 してい たが,果 たせ ず に終 わってい る。「失意 の ま. 座 っていたそうだが,あ れはウソである。 ニ ッ トのス. ま役所 に入ったが,士 気 は上が らず,英 語その他 の資. ー ツ姿 でにっこ りしてい るのは,た いていアルバ イ ト. 格 に挑戦 して も,中 途 で挫折。結婚 した後 は子宮内膜. で,本 物 の図書館員 は, トレーナーにズボン,そ の上. 症 を抱 え込み,挙 げ句 に不妊 とい う,あ まり冴えない. によれよれのエ プロンをかけ,本 を運んでい るか,騒. 6と ぃ 二十代 を送ることになる」 ぅ経過 をたどったこと. ぐ子供 を怒鳴 っているか,黙 々と新聞 を綴 じるか して. が語 られてい る。. い る。つ ま り,肉 体労働者 で ある」「私 も図書館勤務. その後 ,「 市役所 に入つて,最 初 に配属 された職場. を始めてか ら体型が変 わった。そ うならぬ者 は,た い. は,福 祉事務所だ った」「配属先 は庶務係 で,入 った. てい,頸 腕症候群や膝関節症 を起 こ して異動 させ られ. ばか りの私の仕事 は,文 書 の受け付けや伝票整理 ,統. 3と. 述べ られてい る。 また,最 近の雑誌 に掲載. 計記録 の集計 などだったのだが,い つかはケースワー. された,宮 部みゆ きとの対談で「物静かで本が好 きな. カー に,と い う夢があ った」「金 をもらうための仕事. てい く」. 人な んか,図 書館員 になるわけな いって。 もろ,あ. は,た いていつ まらない ものだ。 自分の生活 を支えら. れ,対 人関係 の仕事 なの。力仕事あ りの接客業。 だか. れる くらいの給料 をもらえる仕事 は,さ らにつ まらな. ら ドラマで図書館員が清楚なスー ッ姿 で出て くるのを. い」「社会環境が変 わった とき,有 能,無 能,人 格 の. 見 ると,ば かやっちゃいかんよ,エ プロンに決 まって. 良 し悪 しの評価基準 など,い とも簡単 に変 わって しま. るだろう。段 ボール担 ぐわけだか ら。 って突 っ込 み入. ぅ」. 4と. れた くなる」. 発言 している。図書館職員について. ,. 7と. 感 じていた。. こうした,市 役所 での勤務体験が,後 に小説執筆 に. 外部 か らの表面的な見方 を否定 し,実 体験 に基づいた. 生か されることになった点 については,い くつかのイ. 図書館職員の業務 について紹介 してい るとい えよう。. ンタビューで言及 してい る。. もっとも,図 書館 をふ くめて,八 王子市役所へ の就 職 は,必 ず しも本人が当初か ら意図 していたものでは. たとえば,「『役所 か らすると困 った職員だ ったと思 うんですね (笑 )。 ただペーパーテス トに強 い だ けで. なか った。学生時代 のこととして,「『あなたも十二時. 役所 に入った人間で,仕 事 に関 してはほとんどやる気. 間で英文 タイプが打 てる』 そんなキャッチ コピー に引. がない。か といって,無 断欠勤 とか,横 領みたいな悪. かれて,銀 座にある教室 に通ったのは,二 十歳の春 の. い こ とは しな いの で,ク ビ にはで きな い』 」「『本 人. ことだった」「八王子 の奥 にある我が家 か ら銀座 まで. も,役 所内でキャリアを積 んで出世 して とい う気が最. は,バ スと電車 を乗 り継 ぎ片道二時間半 かかる。それ. 初か らない』 」「朝 日カルチャーセ ンターの小説実践講. なら, と著荷谷 にあるわが大学 の寮 に泊 り込む ことに. 座」 を「『文章 を書けるようになれば』 」「『多少な りと. した」「落第続 きで進級で きない まま,銀 座通 い も. も役 に立つ ことがで きるかな ぐらいの気持ちで受けた 紳 ら,た またまそれで芽が出たんです』 」 と語 っている。 また「うつ うつ とした 日々に巡 り会 ったのが小説講. ,. 寮暮 らしも思 いの他長 くなった。教室以外 の時間はや るこ ともないので,人 事 院 の アルバ イ トを始 め た」 「午前中いつぱい アルバ イ トを して タイプの教室へ それが終わると図書館 を経 て寮へ戻 る」「規則正 しい. 座 の先生 の一言 『この 人,い けるん じゃない』。そ の. 生活 は春休 みいっぱい続 いた」その間「友達 と会 った り, デー トを した記憶 はない」「春 とは思 えない寒 さ. か し,そ の役所勤 め も作家 としての財産になった。福. ,. 5と. だった。何 よ り孤独だ った」. い う生活 を送っていた. ことが 回顧 されてい る。. 時 か ら,『 作家 になる』 とい う “ 野心"を 抱 い た。 し 祉事務所 ,教 育委員会 ,図 書館 ,保 健 セ ンターなど市 民 と係 わ りの深 い部分 での経験 は,『 世 の 中の 人の も のの見方のようなものが身 についた。作家志望 の人は. 同 じ時期 につい て 「大学三年 か ら四年 の夏 にかけ て,私 は厳 しい一年 を送 った。裁判所 の調査官 にな り. 役所 に勤 めなさい,と ア ドバ イス したい ほ ど』 」 "と 述 べ てい る。. た くて,そ のための受験勉強 に明け暮 れた」「大学 の. 「ペーパーテス トに強 いだけ」「たまたまそれで芽が. カリキュラムの関係や当時の就職状況か らして逆風が. 出た」 など,か な り謙遜が含 まれた表現 になってい る. 吹 いてい るような状態 で試験 に臨 んだことは確 かだ」. が,不 本意な思 いで勤 めた市役所 ではあ ったが,そ こ. 「真夏,冷 房 の ない会場 で行 なわれた採用試験 は四時 間 に及び,終 わって戻 って きた後 ,熱 を出 して,二. ,. では多様 な体験 をし,そ れが作家活動 にも役 に立 って い ること,ま た,苦 しい状況 の 中で も文章修行 を継続.
(5) 佐藤. 毅彦 三図書館 は どうみ られ て きたか 。7. す る こ とで ,小 説家 となって い った こ とが述 べ られて い る。 篠 田節子 は作 品 の 中で 図書館 を利用す る人物 をひん. 69. 館』 とい うのが,彼 女 の勤 め先 だ。名前 の横 に肩書 き がついていた。『資料第一係長』 と」「生年月 日を確認 す る。昭和 三十六年生 まれ。三十五歳 だ」 (p.31)と. ぱん に登 場 させ て い る。 この作者 の 図書館利用者 に対. ここでプロフィールが明 らかにされる。. す る考 え方 な どが 表 されて い るこれ らの作 品 につい て は,別 の機会 にあ らため て論 じる こ とと した い Ю 多. 「『私 ,自 分のこと,一 言 も高校生だなんて,言 って ないけ ど……』抑揚 のない口調 で佐知子 とい う図書館. 数 の作 品 の 中で ,図 書館 に勤 めて い る女性 が主 要 なキ. の係長 は言 い訳 をするともな く言 った」 (p.31)制 服. ャラクタとなってい るものに,「 観覧車」 (『 秋 の花火』. は 自分 の ものだ とい うが 「一 日でおばさん とは判別 の. 収録)H)が ある。. つかない,か すみ草 の ドライフラワーのような,枯 れ. )。. 2-2。. 女性図書館員 の外見的特徴. てなお可憐 で痛 々 しい ような容姿 をセーラー服 に包ん だ,そ の あ ざとさが許 しが た い」 (p.32)と 「梅沢」. この小説 は,「 梅沢」 とい う男性 の視点 ですすめ ら れてい くがい,後 に図書館 に勤務す る 30代 の女性 であ. には感 じられた ことになっている。. ることが判明す る人物 について,最 初 は, どうい う背 景 をもってい るかは明 らかにされないでス トー リーが. 2-3.女 性図書館員 の性格 ・行動分析. は じまる。「紺 のスポー ツバ ッグを持 ったセ ー ラー服. この 女性 は「『私 ,人 に嫌 わ れ る 性 格 な の』 」 (p. 『 ったの つ 「 にな 41)と 自分 を きめ け 私 が 図書館 員. の少女 が立 っている」「ひど く痩せてい て背丈 も梅沢. は,民 間企業の面接 で軒並 み断 られたか らなの。 まじ. の胸 くらい しか な い。重 たげなバ ッグが 痛 々 しい」. めそ うだけど,暗 い感 じがするって言 われて。 図書館. (p.15)「 セ ー ラー服 の 白癬が二本 ,闇 の 中で燐光 を 放 っているように鮮 やかだ。紺の スカー ト丈 はそれほ. 員な ら公務員だか ら,試 験 でなれるの。面接 なんか形 式的 な ものだか ら,ま わ りの人を暗 い,い やな気持 ち. ど短 くないが,足 首 はルーズ ソックスだ」 (p.16)と. にさせ る私 のような人間だって落 とされることはない. い う描写 になってい る。 この女性 につい ては「梅沢」 の 目か ら見た違和感 も表明され「ルーズソックスの下. わ』 」 (p.43)「『学 生の頃はね,試 験前 になる と急 に 友達が増 えるの。私 のノー トをコピーするために。 で. に,肌 色 のス トッキ ングをはいてい るのだ。い くら寒. も,試 験 の打ち上げ コンパ には誰 も誘 って くれなかっ. い とはいって も,ル ーズ ソ ックス にはナ マ足 が原則. た』 」 (p.44)と 語 っている。. だ。 ファッシ ョンルールに厳格 な この年代 の少女 に し. また,職 場 での人 間関係 につい て「『司書 の女 の子. ては妙 だ」 (p.18)「 支柱 につい たライ トが少女の横. が,庶 務担 当の男性 と結婚す る』 」 ことになったが. 顔 を一瞬,照 らした。ず いぶ ん大人びた印象がある。. その人は「『新卒 で図書館 に入つて きて,私 のセ クシ. 化粧気 のない皮膚 は荒 れて,粉 が吹 い た よ うな状態. ョンに配属 された子だったの。気立 てが良 くて,頭 が 良 くて,い い子 だった。私は面倒 を見たつ もり。資料. だ。病気なのか, といぶか りなが ら,視 線 を手元 に落 とす と,そ の手 も顔 と同様 に荒れて, しか も筋ばって い る」 (p.20)と. ,感 じてい る。. ,. の取 り扱 いか ら始 まって,予 算書 の見方 まで。勉強 し て もらって,優 秀な司書 に育 って欲 しか ったか ら,研. そ して,女 性 が もっていたポケ ッ トベ ルの表示 に 『 「 H市 図書館 ・星が丘分館 備 品 276号 』 シ ール に. 修 も,出 張 も,彼 女 をで きるか ぎり充 てた。 カリフォ ルニアの図書館 の視察の話 も,私 に来 たのを,若 い人. はそ う表示 してあ った」 (pp.28-29)と あ り,女 性 の. にチヤ ンス を与 えたほうがいいか ら,と 彼女 に譲 つた. 財布 に「金 とカー ド類があ った」 ことについて,「 妙. の。彼女が予算残高 を間違えて,一 桁違 う数字 を提出. な感 じが した。プリクラのシールやファンシー ショッ. して しまったときにも,か ばったわ。で も,彼 女が結. プの割引券 といった,少 女 の もっていそうなものはな. 婚す るとい うことを,正 式な届け を出されるまで知 ら なか ったの は,私 一 人 だった』 」 とい う事 件 が あ っ. い。代 わ りに銀行 のキャッシュカー ド,図 書館 の貸出 身分証明書 であって,学 生証ではない」 (p.30)こ と. た。「『結婚 はプライベー トな ことだか ら,プ ライベー 」 との理 トで もつ き合える人 だけを呼 びたいんです』. に気 がつ く。その身分証明書 の写真 は「耳 の下 くらい. 由だつたが,「『顔 を立てるためにだけ,結 婚式 に呼 ば. でカッ トされた髪 ,化 粧気 もな く,印 象 の薄い,は か. れるなんて私だ って耐 えられない。問題 は私 が,私 生. なげな顔。 しか し『青木佐知子』 とい う名前 のその人. 活 で は 関 わ りあ い た くな い 人 間 だ つた つて こ とな. は,“ 少女"で はなか った。『H市 立 図書館 星が丘分. の』 」 (pp.49-50)と 感 じて,そ の結婚式 の 日,六 月. 券 ,病 院の診察券 と,写 真入の身分証明書 があった。.
(6) 甲南 女 f^大 学研究紀 要第 42け. 70. 初めの 日曜に,夏 物 と冬物 の入れ替えを してい ると ,. 文学. 文化編 (2006年 3月. ). 「何故,彼 女は『売春』にこだわったのか ?」 「私 は 彼女の売春を『嗜癖』 として捉えている。彼女 は摂食 ,. セー ラー服がでて きて,そ のかっこうの まま,夜 十一 時過 ぎ,コ ンビニヘ 行 き,声 をか け て きた男性 と 「『その晩,初 めてホテルに入 ったんだけど,こ んなに. 障害の気があったようだし,お そらく『嗜癖』 にハマ. 優 しくして くれるのか と思 って……』 」 (p.51)「『一. 4と な反復行為に耽溺 しやすいのだ」 ,自 らの「買い物 依存症」体験をも考慮 にいれつつ検証 している。. 時 だけで もいいの。何 もか も嘘なのよ,で もそ うしな くてはい られない』 」 (p.52)と 感 じた ことが語 られ てい る。 この部分 は,篠 田節子 自身が ,「 ただペーパー テス │で. トに強 いだけで役所 に入った人間」. リやすい タイプと思われる。嗜癖の人は強迫神経症的. この事件 をモチーフにした小説 もい くつか発表され ているが,た とえば,桐 野夏生の長編小説 『グロテス ク』では,女 性 の設定を「父親の勤 めてい た G建 設. あるとインタビ. 株式会社」に勤務 してお り,そ の会社は「業界最大手. ューに答えた り,学 生時代 の一時期 ,人 事院で 「午前. で,FG家 族主義』 とい う言葉が生まれるほど社員の. 中いっぱいアルバ イ トを してタイプの教室へ ,そ れが. 結束が固い」。そ こで「女子総合職 の先駆け」 として. 終 わる と図書館 を経 て寮へ 戻 る」「規則正 しい生活 は. 「総合研究所調査室」の「副室長」をしていた,「 才 巨食. 春休 みいっぱい続 いた」その間「友達 と会 った り,デ. 症」の受診歴があ る (pp.265-266)女 性'と して い る。. ー トを した記憶 はな い」「春 とは思 えな い寒 さだ っ 2と ぃ た。何 より孤独だ った」 ぅ生活 を送っていたこと. と,完 全に一致するものではない に しろ,あ る程度共 通す る方向性 を見出す ことがで きる。. 6で. 篠 田節子 の「観覧車」. も,30代 の安定 した正規. の職業 についてい る女性が,売 春 を行なっていたとい う点で,こ の事件 を意識 したと思われる設定になって い る。実際の事件 の被害者 となった女性 は,公 的性格. 2-4。. 職業 としての 図書館員 と「東電 OL事 件」へ の. の強 い企業である「電力会社」 に勤務 してい るとい う. 意識. 境 遇 で あ っ た が,「 観 覧車」 で は 女 性 を「公 務 員」. 小説 自体が長編 ではな く│,内 容的 に女性 の職業 が. で,勤 務先 は「図書館」 に設定 して い る。篠 田節子. クローズア ップ されるようなス トー リー にはなってい. は,自 身が八王 子市役所 で「福祉事務所 ,教 育委員. ない とい うこともあ り,女 性が図書館員である ことや. 会,図 書館 ,保 健 セ ンターなど市民 と係 わ りの深 い」 ". そ の仕事 の専 門性 につい ての言及 はあ ま りみ られ な. さまざまな部署 を体験 した ことをイ ンタビューで答 え. い。「梅沢」 との会話 の 中に「『図書館 の係長 さんだ も. てい るが,こ の事件 をモチーフに した倉1作 を考 えた際. んな。公務員だか ら給料 いい よね』『世間で言 われて. に,登 場人物 の女性が勤務する職場 として,「 市役所」. い るほ どで は……』 」 (p.40)と い う場 面 が あ る こ. の一部署 である「図書館」 を選択 してい るとい うこと. と,「『カリフォルニ アの図書館 の視察の話 も,私 に来. になる。. たのを,若 い人にチャンスを与 えたほうがいいか ら. ,. と彼女 に譲 ったの』 」 (pp.49-50)と いつた記述 が 目. 3。. 『れんげ野原 の まんなかで』. 立 つ くらいである。 正規 の職 についてい る 30代 の女性が売春行為 に及 ぶ, とい う点 で,こ の小説 の枠組 みは,い わゆる「東. 3-1.森 谷明子 と『れんげ野原のまんなかで』につい て. OL事 件」 を想起 させるもの となっている。 この事. 『れんげ野原 の まんなかで』1は ,2005年 2月 に刊行. 件 については多数 の出版物が刊行 されているが,た と. された。 自著 について,作 者 の森谷明子 は「『アメ リ. えば,佐 野真 一は「『東電 OL殺 人事件』が起 きた と. カの ミステリ作家 アーロン・エルキ ンズの美術館学芸. き,世 間は 『発情』 といってもいいほどの過剰な反応 を示 した。昼 は美 人エ リー トoL,夜 は売春婦。マ ス. 3と 員 シリーズ2に 触発 されました』 」 述べ てい る。 この 『れんげ野原 の まんなかで』 につい ては「ささやかで. コ ミは」「昼 と夜 の二つ の顔 の落差 に照準 をあてた ス こと トー リーづ くりに狂奔 していった」 指摘 している。. ヽ 「 ミステ リとしての面 白さと同時 に,女 性 ″ 亡 理 の細や. 電. はあ るけれ ども不可解 な出来 事 が次 々 に発生 す る」. として発表 して きてい る,中 村 うさぎは,「 東電 OL」. 4と かな描写 も読み応え十分の秀作 だ」 紹介 され,ま た 月刊 の書評誌 『本 の雑誌』 で も,「 加納朋子 と宮部 み. について「『社会的 自己実現』 と『女 としての 自己実. ゆ きを足 して 2で 割 って,作 者オリジナルのマフラー. 現』 の 間で引 き裂かれたキ ャリアウーマ ンの悲劇」. で くるんだような作品で, ミステ リ的にはちょっと甘. また, 自らもさまざまな状況 を体験 し, それを著作. 3.
(7) 佐藤. 毅彦 :図 書館 は どうみ られて きたか ・7. い部分 はあ るものの,図 書館好 き,本 好 きには嬉 しく. る。財政厳 しい図書館 に似 つかわ しく,あ る学校 で廃. なるような連作 ミステリ」 "と 評 されてい る。図書館関. 棄処分 に したものを貰 い受けて きたものだ。発行 か ら. 係 の広報誌 で も,こ の作品 を「図書館 をよりよくして い きたい とい う司書 の思 いが根底 にある」「来館 され. 年数 のたった新聞や雑誌 など,図 書館 にとつては大事 な,だ が場 所 を取 る資料 の 保 管 に使 って い る」 (p.. る利用者 の方が満足 して過 ご していただけるよう,本. 33)「 秋葉図書館 にはブ ックデ イテ クシ ヨンは ない」. の整理 はもちろん,本 にまつ わる相談 ,来 館者 の皆様. 「玄関 ドアについてい る機械 はただの入館者数 の計測. の個人情報 の管理 など」「一 人で も多 くの利用者 が 求める本 に出会えるべ く,迷 い,奔 走 し,学 んでゆ く ° 図書館司書」 の本 として,紹 介 して い るケ ースがあ. 器 だ。無断持ち出 し禁止 のためのデ イテクシ ョンを設 置 したいのは山々だが,そ のシステムは秋葉図書館 一. ,. る。 作者 で ある,森 谷 明子 につい ては,自 身 で も「『大. 年分 の図書購入費 より高額 な費用 がかかる」 (p。 132) 「図書館 には宿命 的 につ いて 回 る ものが い くつ かあ る。その一つが埃 だ」「弱 い気管支 を持 つ者 に,店 ざ 架部分 のみ)に 囲 まれた空 間. 学 を卒業 してか ら十五年以上 も図書館 に勤 めてお りま 刀 した』 」 と述べ てい るが,著 書 の紹介記事 に掲載 され. は,よ い環境 とは とて もい えない」 (p.192)な どの. てい る略歴 では「1961年 ,神 奈川県 生 まれ。横 浜市. 描写 は,外 部 か ら見てい るだけでは,分 か りに くい部. 立図書館勤務 を経 て,紫 式部 を探偵役 に した 『千年 の. 分 で,実 際 に図書館で勤務 した経験が,小 説 に生か さ. 異本源氏物語』 (東 京創元社 ,2003)mで 第 13回 鮎. 黙. (開. れてい る部分 である。 図書館 の 開館時間 と,職 員 の勤務体制 につい ては 「市職員 の標準 の勤務 は午後五 時 で終 わるが,平 日は. 川哲也章受賞」 "と されてい る。. 3-2。. ら しの書物六万冊. 図書館 の情景描写. 冒頭 で紹介 される図書館 の状況 は,次 の ようなもの. 午後七時 まで開館 してい る図書館 では,以 降の時間 も 交代 で残業す る」 (p.15)「 午前 九時。秋葉図書館 の. 時 間内 で六 回 目の あ くび をかみ ころ した」「な に し. 開館時刻 である」 (p.55)日 となってお り,職 員 の勤務 体制 と図書館 の開館時間は一致 してい ないこ とについ. ろ,暇 なのだ」「ここは色気 も洒落気 も無用 の場所 だ. て,ふ れ られてい る。. であ る。「文子 はカウ ンターか ら体 を離 して,こ の一. か ら。 ここは図書館 である」 (p.7)そ の利用者 が 少. 開館 については,「 公共機関 は休 むわけにはい かな. ない理由の一つ として,図 書館 の立地 について「どう. いの だ」「市 の条例 で定 め られて い る開館時間 は,遵. して文化 の殿堂 たる図書館 が ススキばか りがおい しげ. 守 されなければな らない」 (p.143)と されてお り. る斜面 の ど真 ん中にあ るのか」「なんだって,こ んな. 二 月末 の 日曜,大 雪 のため交通機関 にも影響が出るが. 人気 もない ところに図書館 な ど,建 てたのだ ?」 「人 口密度 の低 い北部地区 にも公立図書館 は必須」 (p.8). 「不可抗力 によ りやむな く閉館す る場合 も,中 の 図書 館員 の裁量 では決 め られない。所属長 の決済がい る。. ではあ るが,分 館計画が,日 本経済のバ ブル崩壊 によ. 最終決断者 の秋庭市長 の決断」 (p.146)を 待 ってい. り,自 動車 メーカーの撤退な どがあ り,新 年度財政 は. る。. ,. 一気 に三十パーセ ン ト削減 され「緊急時 にどこを切 り. 市 内 か らの来館者 の足 として「市長 が 音頭 を執 った. 詰 めるか」 となって,「 北部分館 の用地買収費 は計画. 市 内循環福祉 バ ス」 が 「市役所 を起点 に,公 民館 ,保. 半 ばに して,雲 散霧消 ,ゼ ロになって しまった」「図. 健所 そ の他 の公共機 関 つ ご う八箇所 を回 り,料 金 は一. 書館 ?. (p.9)と な. 律百円」 で「定員十二名の小型マ イクロバス」 が巡回 す るようになった。「シルバー シー トを利用す るよう. った。 しか し,土 地 の 寄付 を,「 秋葉 の だ ん な」 (p.. な方 々には好評」 で「その停留所 の一つ に秋葉図書館. 9)と い われる古 くか らの地主が 申 し入れ「図書館増 設 を公約 に して きた現市長 として も計画棚上げは望む. が入 って い る」。2ケ 月 で効 果 が あ らわれ,「 利 用者 数」 が 「二十パーセ ン トアップ」 (pp.60-61)し てい. ところではな く」「忽然 と,文 化 の殿堂秋庭市立秋葉. るとい う部分な どは,実 際 に最近の地方の 自治体 で も. 図書館 は現れたのだ」 (p.10)と い う。 こ うした図書. よくみ られるケースであ る。. 財政 ピンチだとい うのに,そ んなのん きなも. のに大事 な税金 を使 っている場合 か. !」. 館 の立地決定 に至 る内部事情 については,外 部 か らは. また,隣 の市 の図書館 か ら貸出依頼 をうける場面が. 知 ることので きない,図 書館 の実体験 がある程度反映. あ り「『おた くの図書館 なら,誰 も借 り手が い ない か. されてい るとい えよう。. ら,絶 対書架 にあるはず』 」 と言 われ る。 この状況 に. 図書館 の施設 としては「中庭 にプレハ ブの倉庫があ. ついては「図書館 は 自館 の書架 にない資料 を利用者 に.
(8) 文学 。文化編 (2006年 3月. ). 求 め られた場合,協 定 を結 んでいる他都市 の図書館 に. お り,「 図書館 の 自由」や 「利用者 のプライバ シーに. 助 けを求 める」 と説明 され「『本 を持 っている』 こと. 対す る配慮」 について,原 則的な知識 をもってお り. よりも『本 を貸 してい る』 ことこそが末端図書館 の レ. それに基づいて行動 しようとしてい る。. ゾ ンデー トルである以上 ,秋 葉図書館 が周辺図書館 か らこぞって頼 られてい る現状 には,か な りなさけない. 「資料 の問 い合 わせ と称 して無体 な電話 をかけて き た利用者へ の応対 に,苦 労 してい る」部分 では「図書. ものがある」 (p.12)と 指摘 されてい る。 この本 は. 館員 は,お 客様 の要求 には最大限の敬意 を払 うべ きで. ビジネス書 で「経済誌 の書評欄な どで じわ じわ と評価. ある」 と考 えて対応 してはい るが, アルバ イ トの対応. が高 まって きて い る翻訳物」 で あ るが,「『いい本 で. が 気 にな り「検索 の初手か ら不手際 をさらけだ して. す』秋葉図書館 の最古参 の女性司書, 日野 のツルの一. は,お 客様 に大変な不信感 を抱かせて しまう」 (pp.56. 声 で所蔵 を決定」 した ものの,「 六 ヶ月間棚 の肥や し. -57)と 思 って,そ ちらに対応 しようとす る と,他 の. に しかな ってい なか った」「この手 の書物 は 目端 の き. 男性利用者で,図 書館学の担当教員 を退官 した人物が. く他市」「の ビジ ネスマ ンに横取 りされる」 (pp.12-. 直接利用者 にア ドバ イス して しまうとい うス トー リー. 13)電 話 をか けて きた図書館 員 は「『ああ,よ か っ. になってい る。. た,や つぱ りおた くな らあ りま したか』 」 (p.14)と 所蔵 してい ない資料 について,図 書館相互 の間で融通. 「図書館員 は書棚 を熟知 してい る。書架か ら消 えれ ば― ―一つ ま り,誰 かが借 りて い け ば す ぐに わか ― る」 (p.51)と い う部分では,職 員 の資料利用状況 に. しあ っている, とい うことも,実 態 をふ まえて,ス ト. 対す る感度 の鋭 さが示 されて い る。 この点 につい て. ー リー に取 り入れ られてい る。. は,別 の ところで も,「 図書館 の商売物 は一 に も二 に. ,. 感想 をもらしてい る。 この例 のように,あ る図書館 で. ,. も本である。であるか ら図書館員 は常 に,本 の状態 を 3-3。. 図書館 の職員. この小説 には,図 書館が描 かれてい る他の作品 と く. 良好 に保 つべ く気 を配 る」 (p.200)と い う表現が と してい る。 らオ. らべ て も,多 様 な雇用形態 の様 々な資格 をもった職員. 利用者 との コ ミュニ ケー シ ョンについ ては,「 図書. が登場 してい る ところが,特 徴 の ひ とつ となって い. 館員 はカウンター にい るべ きである。余裕のある図書. る。それぞれの発言や行動 をもとに,そ の特性 を考察. 館 ならば,フ ロア係 よろ しくお困 りのお客様がい ない. する。. か どうか,常 に館内を巡回すべ し, とい う理想論 はあ. ○ (今 居 )文 子. る。 だがそれはあ くまで も理想だ」 (p.68)と. ス トー リー全体は,読 者が もっとも感情移入 しやす い と思われる,20代 の女性職員「 (今 居 )文 子」 の視 点 で語 りすすめ られてい く。. ,理 想. と現実 に可能な対応 を分けて考 えている。 一方,図 書館 にやってきた,あ る人物が,昔 読 んだ 小説について「書 いた人 も題名 も覚 えてい ない」 けれ. 「この図書館 に配属 されて七 ヶ月,先 輩 の司書 二人. ど,そ のヒロ インの様子 を描写 した部分の一部 を聞い. か ら,新 人教育 とい う名の もとに,ど れだけの本 を読 まされ,ど れだけの人の話 を聴講 に行 か された こ と. て「書棚へ駆け出 し,す ぐに一冊 の本 を持 って」 や っ て くる場面がある。そ して「『す ごいわ,あ た しが何. か。社会人 とな り,晴 れて一人暮 らしを始めた文子 の. 十年 も見つ けられなか ったのに。あ りが とうござい ま. 狭 いアパー トには読 まねばならぬ本が山積みだ。大学. す。 』 これ こ そ 図 書 館 員 の 至 福 の 瞬 間 で あ る」 (p.. 時代 とは比較 にな らな い読書量 を要 求 され て い る」. 229)と 感 じてお り,利 用者 の質問 に対 して誠 実 に取. (p.14)と あ り,彼 女 は「アルバ イ トの大学生」 とは. り組 もうとする意欲 と,一 定 の実践力 を所持 してい る. 「三歳の年 の差 しかない」 (pp。 142-143),ま だ経験 の. ことがわかる。. 浅 い女性図書館員であるが,一 方で「文子 は彼 の上司. また,巡 回バスによって,高 齢 の利用者 も図書館 を. で ある」 (p.143)と あるように一定 の責任 の所在 を. 利用 しやす くなったことについては「図書館利用者 の. 自覚 してい る。. 平均年齢 とともに,滞 在時間 も増加 してい るような気. 図書館 の登録者一覧 と思われる紙片が図書館 に持 ち. がす る。 まあ,い い。 どの 方 も大切 なお客様 だ」 (p.. 込 まれ た場面 で は「『図書館 で 仕事 す る者 に とって. 65)と 感 じてい る。. は,お 客様 の個人情報 をみだ りに他人の 目に触れ させ. ○ 日野. るなんて,ま ず,理 屈 じゃな しに本能の レベ ルでス ト. 年齢的 には,作 者 に近 い存在 だ と思われるのが,女. ッパーがかかるものなんです』 」 (p.lH)と 発言 して. 性職員 の 日野である。「 日野 は当県 の名 を冠す る国立.
(9) 佐藤. 毅彦 三図書館 は ど うみ られ て きたか 07. 73. 大学 の 出身」「理学部 卒 ,司 書課程修 了 とい う経歴」. 言 えば,秋 庭市民八万人の代理 として,本 を受け入れ. で「理数系 の司書 とい うの も珍 しくはない」 が「県内. てい くの。秋庭市民 か ら預か ったお金 を使 ってね。 だ. 中の図書館か らここぞ とい う時 に頼 りにされてい るの. か らたった一冊 の本 について も,な ぜ この本 を買 った. はその専 門知識 のせいだけではない。語学力 で ある」. のか,ま たは買 わなかったのか,い つ何時説明 を求め. (p.58)と い う人物 である。. られるか分 か らない。そ してその時 にはあなたは合理. 日野 は,新 聞の所蔵状況 につい て「『十五年以上前. 的な説明をして,図 書館 の判断 を納得 して もらわな く. ならうちにはないわよ。開館以来の新聞 しか保存 して. てはならない』 」 (p.119)と. ないか ら。地方紙 レベ ルの記事 だ と,縮 nll版 やオ ンラ. 語 っている場面 もある。 ここでは,書 店 とい う出版物. イ ンの デー タベースで も無理だ もの』 」「『本館 へ行 き. の流通機構 と,図 書館 での資料選択 の もつ意味合 いの. なさい』 」「『本紙 が四十年分保存 してあ るか ら』 」 (p.. 違 い,さ らに図書館員がその判断について市民 に対 し. 206)と 発言す るなど,こ の図書館 の資料所蔵 の状況. て説明責任 を負 っているとい うことが,後 輩へ のア ド. や,よ りくわ しく調べ るために必要な情報源について. バ イスの中に具体的 に語 られてい る。. も,即 答 で きる知識 と経験 を備えてい る。 小説全体 を通 じて,図 書館 での資料選択 につい て は,こ の人物 の発言機会が もっとも多 い。ある ビジネ ス書 について,「『いい本 です』秋葉図書館 の最古参 の 女性司書 ,日 野 の ッルの一声 で所蔵 を決定」 (p.12) したとい うエ ピソー ドもある。後輩 の女性職員 である. ,後 輩 の文子 に向かって. こうしてみると,選 書 に関 しては,や や利用者 の要 求 にこたえることに消極的な考 え方であ るともとれる が,先 に示 したように 『南方熊楠全集』な ど,多 くの 利用が見込 めない高額資料 の購入 には,具 体的 に理由 をあげて反対 してお り,福 祉 バスの運行で利用者が増. 文子 は「『 日野 さんてね,本 を推 薦す る時 に,あ っ さ. 力日した ことについて「『とにか く結構 な ことよ,使 っ て もらって こその図書館 ですか らね』 」「『図書館 に. り とこ う言 うんで す。『い い本 で す』 って。そ う し. わざわざエ ネルギー使 って来 ようなんてい うのはよほ. て,『 日野 さんがそ う言 うか らには,そ れは本 当によ. ど限 られた人間です よ。決定的 に立地条件 が悪 いんだ. くで きた本 な ん で す よ。 ジ ャ ンル を問 わ ず』 」 (p.. か ら,少 しで も人 を引 き寄せ る こ とはや らな くて. 221)と 考 えてい る。資料選定 の際 に,自 信 をもって. は』 」 (p.61)と も述べ てお り,図 書館 が利用 され る. 推薦 してい るのは,そ れが可能なだけの知識や経験 を. ことの重要性 を指摘 している。. ,. 有 してい るとい うことになるが,一 方で,そ の根拠が. 他 に,日 野 は,「 ケー ブルにか らまったまま コンセ. 具体的に語 られず,「 いい本 です」 とだ け言 われてい. ン トを握 りしめてい る子 どもを見 て,悲 鳴 をあげた。. るのは,や や分か りに くい部分である。 一方 ,男 性職員 の「能勢 と日野 は採用試験以来 の同. 子 どもではな く,端 末機 の心配 をして」 (p.18)と い う場面や,恩 師が専門誌 に連載 してい る『巷 の図書館. 期生だ」 (p.64)と い うことで,能 勢が購入 を求 めた. 探訪記』 に掲載 されるために「『良心的 かつ真摯 な図. 四万 円 の 『南方熊楠全 集』,に つい て,日 野が 「『却 下』 」「『そ こまでの本格的な資料 は秋葉 レベ ルで持 つ. 書館 であ ることのアピール にレファレンス コーナー を. ことはない』 」「『原資料 よ り先 に』 」「『皆 さんの関心 を. 本気 なのかはわか らないが,や や極端 な性格に描かれ. 広げさせ る資料 か ら充実 させ てい くべ き』 」 (p.106). てい る場面 も存在す る。. と,こ ちらの方では,や や具体的に選択 の判断の根拠. ○能勢. が示 されてい る。 また,図 書館 での資料選択 について,秋 葉市 に書店 は六軒あるが 「『 どこも似 た り寄 った り,文 庫本 と雑 誌 だけでスペースの大半 は占め られてい るようなお店. 充実 させ よ う』 」 (p.64)と 提案す るなど,ど こ まで. 日野 と同期 に就職 した男性職員で,既 婚者であ る。 語 り手 の文子が淡 い好意 を感 じてい ることをほのめか してい る場面 もあるn。 能勢 の「一 人娘 は」「重症 の小児喘息 と診 断 され」. ばか り。話題 の新刊書 も,一 週間たったら返品されて. 「特 に夜 中 は発作が起 きやす く」 (p.50)そ れに対応. しま う』 」「『図書館 は,違 う。本 を手放 さない。売れ. してい るため,昼 間のあ る時間帯 ,カ ウンターの は じ. ようが売 れまいが,わ た したちはそんなことを基準 に. に「パ ーテ イシ ョンで遮断 した個室 を作 り」,作 業 中. 選 ばない。選ぶ基準 はただ一つ,う ちの図書館 にふ さ わ しい出来か どうか,そ れだけ。だか ら結果的 に,こ. と称 して熟睡 してい る。館長や利用者 はそちらに近寄. こには書店 よ りず っと高価 な本が,ず っと豊富 にそろ. れ られない午後 の一時間ほどのこの 『作業』 を黙認 し. っている』 」 (p.118)「『あなたは代理 なの。具体的に. てい る」 もっとも,「 この時間彼 はすべ ての電話 を取. らず,職 員 は「特殊 な事情があるか らと,睡 魔 か ら逃.
(10) 文学 。文化編 (2006年 3月. 74. ). り,対 処す る」「やたらに寝覚め」がよく「熟睡 して いても」次の瞬間には「は きはきとした答えを電話 に. 」 (p.105)と ,推 薦 し,文 子 が 『選集』 はす でに 得』. 返」 (pp.10-H)す とい う。病気の家族への対処 とい う理由ではあるが,こ うした職員が カウンターに存在. で収録 されてい ることを主張 し,文 子 に「能勢 ときた ら自分 の主義 ・趣味 に買 い たが るのだ」 (p.106)と. してい るとい う場面 は,職 員の イメージと して,好 ま. 評 されてい る。 また,「 なみ い る世 の批評家たちを批 評 す るこ とこそが 図書館 員 の つ とめだ と うそ ぶ く」. しい もの とはい えないだろう。 図書館 の施設 について「図書館 には宿命的 について 気 卜ヽ 回 るものが い くつかある。その一 つ が埃 だ」「弓. 図書館 に入ってい ると言 うと,書 簡,未 発表 の手記 ま. (p.221)と 描写 されている部分 もある。 登録者 の リス トとみ られる紙片が持 ち込 まれた際に. (開 架部分 の. は,能 勢 は「『お客 さんの個別 の読書傾向 なんて,図. み)に 囲 まれた空 間 は,よ い環境 とは とて もい えな い」 (p.192)と ある。 さらに「『児童室 を埃 を払 いや. 書館 としての事故が起 きない限 り,お れたちは知る必. す い低書架 に したの も,予 算超過 してまで床 を全面 コ. てお り,利 用者 のプライバ シーに対す る配慮 について. ルク張 りに』 」 (p.193)し たの も能勢が主張 したか ら で「『あれ は絶対 ,お 嬢 ちゃんの ことが頭 にあつたせ. の見識 をもってい る。. い』 」 だ と日野が発言 してい るの も,娘 の ことだけで の患者全体 のことを考慮 した, とい うこと な く,喘 `自 、. 課後 だけ開いてい る,本 が詰め こまれた部屋があ った. ではあって も,や や公私混同気味 の ところがある。 『図 一方 ,子 どもに対応 してい る場面 で,能 勢 は 「. かない し,ラ ベ ル もばらばらで どうい う法則 で並んで. 書館 には本 しかない。で も本だけはある。お前 ら,こ の 中にどれだけの広 い世界が詰 まってい るか,知 って. の百科事典 しかな くて役 に立たない し』 」 と発 言 して. 管支 を持 つ者 に,店 ざらしの書物六万冊. いるか ?. 知 らないだろう ?. 」 (p.120)と 発言 し 要 もない し,知 るべ きで もない』. ある利用者が学校図書館 について,「『そういや,放 かなあ……で もてんで魅力がなか った。古 ぼけた本 し い るのかわか らない し,何 か調べ ようにも十何年 も前 い るのに対 して「『かえ りみ られない図書館 の典型 だ. としろ よ。 こん な もの と片付 ける前 に,ま ず,試 せ. な』能 勢 が 笑 う」 (p.211)と い って い る場 面 が あ り,や は り図書館 にとって,利 用 されることの重要性. 」 (p. よ。試 して くれ よ。書物 の旅 を してみ て くれ よ』. は理解 してい ると思われる。. 49)と ,図 書館 の存在 をアピール してい る。 また,図. ○館長. だったらまず,知 ろう. 書館 の特徴 については「『図書館 は開館 か ら閉館 まで ず っといつづ けをして も感謝 こそ され文句一つ言 われ. 務屋 さん」「図書館 とい う別世界に突然放 り込 まれた. ない,稀 有 な場所だか らな。お まけに暇つぶ しの種に. このお じさんは, しか し大 の読書好 きであ り,図 書館. はことかかない』 」 (p.65)「 ここは図書館 だ。誰 もが. に所蔵すべ き図書 を決定す る選定会議 の間は館長がカ. 入れ る。誰が来 て も,そ して どんなに長居 をして も不 審が られない」 (p。 92)と ,利 用のためのハー ドルの. ウ ンター番 を代 わって くれてい る」「いかなる本 を買. 低 さについて発言 してお り,図 書館 について,深 い理 解 を背景 にもってい ることをうかがわせ る。. 議論 してい る職員 とい うものは,い つ にもまして異星 人のように,一 種畏 れを抱 くべ き生 き物 の ように見 え. さらに能勢 は「『図書館 はお人好 しな ところで,書. るらしい」 (p.106)と 文子 の視点 か ら描写 されてお. 」 (p. かれた住所氏名を疑 ってはかか りませんか らね』. り,図 書館 の専門的な知識 とは直接 かかわ りのない行. !. 「館長 は昨年学務課 か ら異動 して きた。典型的な事. うべ きか買わざるべ きか,喧 々幕 々,つ ばを飛 ば して. タのない 日だつたら,新 聞が喜んで一面に書 きたてる. 政職 の立場 ではあって も,図 書館 の専門職 である司書 の職員には一 日置 いてお り,そ の専門的 な領域 につい. で しよう』」 (p.136)と 対外的な図書館 のみ られかた. てはあか らさまに介入 しようとはせず,か な り好意的. について も,一 定 の配慮 を考 えてい る。そ して,能 勢. な存在 として描 かれている。 この小説 自体 に,根 っか. は「『この師走 のいそが しい時 に,教 育委員会 のお偉. らの悪人,読 者が嫌悪す るようなキャラクタの人物 は. 方が議会答弁 に必要 だか らとか言 って,ま たぞろ要領 を得 ない報告書 を ご注文 だ』」 (p.82)と いつた仕事. ほとんど登場 しないのではあるが。 ○工藤. もこな している。 『南方熊楠全集』 の購入提案 につい ては,最 終的 に. 」 (p。 15)と よんで お 能勢 が「『事務 の工 藤 さん』 り,「 事務 を担 当 して い る工 藤」 (p.21)と い われて. は日野 に却下 されて しまうが,「『これは絶対必要。持 ってな きゃ図書館 と して恥ずか しい。 ほ ら,お 買 い. いる人物。ただ し,登 場 シーンが少ないので,詳 しい. 129)「『市 立図書館か ら個 人情報漏洩. めぼ しい ネ. キャラクタについてはわか らない。.
(11) 佐藤. 毅彦 :図 書館 は ど うみ られて きたか 07. はっとした。いつ も『掃除のおばさん』 として しか意. ○正規職員以外 この小説 の特徴 として,市 の正規職員以外 にも,多 様 な形態の図書館 で働 い て い る人たちが 登場 して い. 識 して vヽ なか った」 (p。 128)と い うこの 人物 が,図 書館 の資料 を不正に持 ち出 していたのである。「『あた. る。外か ら見てい る限 りでは,そ の違 いがわか りに く. しの時給 は七百円です よ。いつ だって生活するだけで. い と思われる部分 についても,図 書館勤務経験 のある. 精 一杯』 」 (p.132)と い うこの人物 は,一 冊 三万円の. 作家 の視点 か ら, くわ しい描写がなされているとい え. 美術書 を数十冊 ,他 人名義 のカー ドを使 って不正 に持. よう。. ち出 してい る。「『あた しには貸 して くれないんです よ. ・ 「文子 のほかにカウンター要員 は,そ の 日で三 日目. ね。あた しは秋庭の人間 じゃないか ら。あた しは隣町. になるアルバ イ トの大 学 生 だ け」 で,そ の大学生が. か ら自転車 で通 つて ますか らね』 」 (p.132)と い うこ. 「キ ャ リアの差 な ど知 らぬ 男性 利 用 者」 に,当 日の. とで,図 書館 に届 い た,文 化 セ ンター と図書館 の共催. 『官報』 について尋 ね られ 「コンピュー タの書名検索. で開催 される,講 演会申込 みの葉書 を使 って,他 人名. 画面に向かい,単 語 を入力 しようとする」 のを見 て. 義 のカー ドを作成 し,借 出 してい る"。 「『あ の本 をあ. 利用者 か らの電話 に対応 して い た,女 性職員 の文子. た しの もの,い つ もいつ もうちであた しを待 っていて. は,「 単純 な疑間を投 げかければ即座 に機械 が何 で も. くれるものにす る』 」 (p.132)た めに,返 却す る必 要. 答 えて くれ ると思 うのが大変な錯覚であるとい うこと. の ない,不 正な手段 で持 ち出 した とい うことになる。. を,素 人の彼女 は知 らない」 (p.56)と 感 じて,あ わ. 非正規職員 とはいえ,図 書館 に勤めてい る女性 が図. ててそちらに対応 しようとするが,他 の利用者 の男性. 書館資料 を不正 に持 ち出す とい うのは,か な り衝撃的. した人物)が 「イ ンター. な ことであ る。 ただ,派 遣職員 による,こ れ と類似 し. ネッ ト上のサイ トで最新 の官報 はご覧 になれます よ。. た現実 の事件 も存在 してい る"。 非 正規職員の待遇が. こち らの 図書館 の方 が見せ て くだ さるで しょう」 (p.. よくないこ とや,モ チベー シ ョンを維持 しに くい業務. 57)と 発言 してい る場面がある。 カウンターにもアル. を担 当せ ざるをえない状況 も,図 書館 の職種 として実. バ イ トの職員が配置 されてい る状況があ り,ま た,カ. 在 してい ることを,実 体験 をふ まえて小説に登場 させ. ウ ンター に座 っている職員 の知識や経験 にも多様 なも. てい るとい えよう。. ,. (図 書館学 の担当教員 を退 官. のがある ことは,外 部 か ら見 てい るだけでは分 か りに くい点 で もある。そ うしたカウンターヘ の,多 様 な職 員配置 の実態 とそ こか ら引 き起 こされる問題状況が. ,. 3-4.図 書館 とス トー リー 「第一話. 霜降―一花薄,光 る。 」 では,図 書館閉館. ここではやや滑稽 に描 かれてい る。 ・ 「二 月末 の」「 日曜 ,文 子 はただ一人の職員 として秋. 後 も子 どもが居残 ろ う として,「 図書館内が機械警備 に切 り替 わった瞬間,赤 外線 セ ンサ ー にひっかか つ. 葉図書館 を守 っている」「図書館 にい るのは文子 とア. た」 (p.29)と い うことで,子 どもが 図書館 内 に残 っ てい るのがわかって しまう。 この ような行動 は,カ ニ グズバー グ『クローデ ィアの秘密』°に触発 されたもの. ルバ イ トの大学生一名 だけ」 (p.142)「 午前中は もう 一 人アルバ イ トの女 の子 が出勤 して きてい た」「文子 の 判 断 で 早 退 させ た」 (p.143)と あ り,日 曜 日に は,ロ ーテー ションにあたる限 られた正規職員 しか出. であることが,紹 介 される (pp.40-41)。. 勤せず,ア ルバ イ トの配置 で利用者へ の対応が行 なわ. 行 で利用者が増加す るが,隠 官内 をそぞろ歩 い て い る. れてい る,現 代 の図書館事情が反映 されている。. のはご老人 ばか り」 (p.61)と いつた時間帯 も出現す. ・ 「カウンター番 をして くれてい るバ イ トのおばさん」. る。そのなかで,「 深雪 さん」 とい う女性 は「六十歳. (p.31)と い う女性 も登場するが,こ れ以上の記載が. は超 えているだろ うか」 とい う人 だが,「『昔 は文学少. ないので,こ の人物 の詳細 はわか らない。 ・ 「館 の清掃 を受 け持 ってい る業者 の お ば さん」 (p.. 女 だったんです よ。学校図書室 の図書係 をしていて. 22)と して登 場 し. こでは名前 は明示 されて い な. す』 」 (pp.62-63)と 発言 してい る。 この女性 が来館. 霜 降一一花 薄,光 る。 」)の 後 半 で,能 勢 の 発 言 に「『掃 除 の 小 野 寺 さ. した日に,あ る本 に絵本 の表紙 をコピー したものが挟 まれていた り,洋 書が分類番号 とは違 った順番 に並べ. ん』 」 (p.46)と 呼 ばれてい る人物 が い る。 この女性. られていた り, とい う事件が起 こる。. (こ. い),そ の ス トー リー. が,別 のス トー リー. (「. (「. 第一話. 第三話. 立春――雛支度」)で. は,よ り重要なキャラクタとして登場す る。「文子 は. 「第二話 冬至一― 銀杏黄葉」 では,福 祉 バスの運. ,. 将来 は司書 にな りた くて,少 しはその勉強 もしたんで. 「第三話. 立春一―雛支度」 では,「 図書館 のカー ド. 番号 に,住 所氏名電話番号。 さらに書名 まで書 き込 ま.
(12) 甲南 女 子大学研 究紀 要 第 42号. 文学 。文化編 (2006年 3月. ). れた紙 が」 (p。 109)コ ンビニエ ンスス トアの コピー 機 に置 き忘れられていた,と い う発端か らス トー リー. 科 目で あ り,「 総 合 的 な学 習 の 時 間」 は小 学校 3年 か. が展開する。利用登録について「図書館 では慣例 とし. の総 合学習」 とい う言 い方 には,違 和感 が あ るH。. ら高等 学校 で 開設 され て い る。 したが って ,「 生 活科. て,郵 政公社 を通 して届 いた郵便物 を本 人の IDと し. また ,公 共図書館 と,学 校 図書館 との貸 出方式 の違. て認 めて きてい る」 (p.117)ま た身分 を証明で きる. い が ,現 実 の 状 況 と合 ってい な い 場 面 が あ る。「裏表. 書類 をその時 にもってい ない場合で も,「 当 日一 回限. 紙 を開け る と,黄 色 いブ ックポケ ッ トが見 えた。 ス タ. りとい うことで貸出 を認め」 (pp.117-118)る ことも. ンプで 日付 が い くつ も押 してあ る。今 は空の ブ ックポ. ある, と説明 される。それを悪用 して他人名義 のカー ドを作成 して本 を借 り,返 却 しない, とい う事件 を引. ケ ッ トに,本 来 な ら本 の題 名 を明記 したブ ックカー ド が一 枚 入 って い たはず なのだ。誰 で もこの本 を借 りた. き起 こ したのは,図 書館 の非正規職員であ った。. い者 は 自分 の 貸 出券 を出す。 図書室 はその 券 と本 か ら. 「第四話. 二 月尽一一 名残 の雪」 では,大 雪が降 っ. た 日で も「公共機 関 は休 むわけ には い か な いの だ」. 抜 い たブ ックカ ー ドを一 緒 に して ,『 貸 出 中 の 本』 の フ ァイルに保管 し,ブ ックポ ケ ッ トには返 却期 限 を押. 「市 の条例 で定 め られてい る開館時間 は,遵 守 されな. して本 を渡す。 貸 し手 には誰が どの本 を借 りたか明瞭. ければならない」 (p.143)と い うことだったが,「 最. な形 で記録 が 残 り,借 り手 も,本 を開け ば返 却期 限 が. 終 決 断者 の 秋庭 市 長 の 決 断」 (p.146)で 閉館 とな. 一 目瞭然。そ して重要 なの は,第 三 者 には,本 を借 り. り,そ の 日は,文 子 は,近 所 の秋葉家 に泊めて もら. た人 間が 誰 か ,た とえ貸 出中 の本 を偶 然入手 して も決. い,怪 談 めいた話 を聞か される。. して 特 定 で き な い こ とだ」 (p.212)と あ る。 こ れ. 」 では,図 書館 の 清明―― れんげ,咲 く。 書架に秋庭図書館 の蔵書 ではない,古 い本が発見 され. は,1980年 代 まで ,日 本 の 公 共 図書館 で も多 くみ ら れた「ブラウ ン式」2の 貸 出方式 であ る。 しか し,こ の. る。「糸綴 じはゆるみ放題 ,天 地 は醤油 につ けたか と. 「一 九 六 〇 年 初 版」 の 『床 下 の 小 人 た ち』 と い う本. 「第五話. 思 うほ どに赤茶け,小 口には何かの しみがたれた跡. ,. お まけに角 は擦 り切 れてクロース装丁 の赤 い色 はすっ か り褪色 しきってい る よ うな一 冊 の 吉本」 (p.201). は ,「 秋 葉 図書 館 の 蔵 書 で は な」 く,「 学 校 図 書 館 の 本」 (p.202)だ とい うス トー リー なので あ る。 現実 には,学 校 図書館 で は,小 中学校 で は,専 任 の. であ ったが,そ れは「四十年 もの昔 ,ま だ翻訳児童書. 職 員 が配 置 され て い な い こ と もあ って ,ブ ラ ウ ン式. の出版が格段 に少なかった頃,燦 然 と現 れた児童文学. は,ほ とん ど採 用 され なか った と思 われ る。代本版 ・. /_N集. の一冊」「児童書 を置 く図書館 であれば必ずや所. ブ ックカー ド・個 人 カー ド・両者 を使 う 2票 式 ,な ど. 蔵 してい るとい うほ どの定番 ,古 典扱 い」「現代 っ子 たちには人気 がない」 (p.201)と される『床下 の小. の 方式 が使 われて きて い た。 したが って ,過 去 にお い. 人たち』 であ った。「秋葉図書館 の蔵書 ではない」 (p. 202)が ,日 野が 「『学校図書室 の本 ね』」 (p.202)と. は もちろん ,返 却 され たあ とで も「特定 で きる」 ケ ー. いったように,す でに廃校 になった中学校 の本 であっ. 4。 も, こ う した傾 向 は残 ってい る. ては,本 を借 りた人間が 誰 なのか ,資 料 が貸 出中の 間 ス が 多 か っ た3。 近 年 ,コ ン ピュ ー タが 導 入 され て. た。 こうした,図 書館 の 中での,あ るいは図書館 をとり. 4。. 女性 図書館 員へ の まな ざ し. まくさまざまな状況 の中で,事 件が起 こ り,そ れを. ,. 男性職員の能勢 を中心 とした図書館員が, さまざまに. 図書館 に勤務 経験 の あ る女性作家 が描 く,女 性 図書 館 員 の キ ャラ クタは ,自 らの体験 をふ まえて書 き込 ま. 考 え,謎 が解かれてゆ く。. れて い る とい え よ う。篠 田節子 は,市 役所 に就職 した. 3-5.現 実 の状況 との対比. の は必 ず しも本意で はな く,図 書館 以 外 の部署 も体験. 図書館 に一番近 い小学校 の三年生が,図 書館 にや つ て くることについ て,館 長が 「『秋 になると,い ろん. して い る。「青春 時代 か ら三十 代前 半 にか けて の ほぼ 十 五 年 間 を振 り返 る と,ま さに甘 くて安直 で ,真 剣 で. な小学校か ら施設見学 の依頼が来 るか らねえ。 カリキ. 野 心 に あ ふ れ た 時 間 を送 っ て い た」「二 十 代 後 半 の. ュ ラムで決 まってい るんだろ うが』 」 と発 言 し,そ れ. 冬 ,流 産 して数 日入院 し,職 場 に戻 ってみ た ら,仕 事. を うけ て「『生 活科 の総合学習 ってや つ ですね』 」 (p。. が な くな ってい た」「突然 の 入院 に よつて仕 事 に穴 を. 19)と い う会話 をしてい る場面がある。現行 の学習指. 開け,事 務量 を大幅 に減 らされて ,職 場 にい つて もや. 2年 に開講 される. る こ とはな くな った。早 い話 が ,給 料 は もらえるが暇. 導要領 では,「 生活科」 は小学校. 1・.
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