Title
沖縄県における地域介護資源の現状 ∼地域密着型サービ
スを中心に∼
Author(s)
西尾, 敦史
Citation
沖縄大学人文学部紀要 = Journal of the Faculty of
Humanities and Social Sciences(11): 13-29
Issue Date
2009-01-31
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6231
沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009
沖縄県における地域介護資源の現状
∼ 地域密着型サー ビスを中心に ∼
西
尾
敦
史
要 約 介護が必要 になって も、住み慣れた地域社会で尊厳 をもって暮 らし続けていくため に必要な介護資源。 「介護の社会化」 を理念 とした介護保険制度は多様な介護資源 を 作 り出す ことに一定の成果 を上げ、家族のあ り方や社会構造 をも変化 させ るほ どの成 長 を遂げつつある。 沖縄県 においては、制度開始 当初,高齢者 1人あた りの給付費が全国で最 も高い水 準にあった。施設給付費の高さがその主な要因であったが,近年は、居宅サー ビスが 給付費全体 を押 し上げる傾向へ と変化 している。 2006年には、制度の大幅改正に伴 い、新たに地域密着型サー ビスが創設 され、中で も小規模多機能型居宅介護は、在宅生活 を支える地域介護資源 としてそのケア実践に 期待が集 まっている。県 内には、介護保険制度外の宅老所や高齢者住宅 と外部のケア サー ビスを組み合わせた地域介護資源が広が りつつある。 こうした現状を全国的なデータとの比較 によ り把握 し、その特徴 を析出 し、今後の 地域密着型サー ビスを中心 とした地域介護資源の可能性 と課題 を探究 してい くための 基礎的な資料 とした。 キーワー ド :介護保険、地域密着型サービス、宅老所、小規模多機能型居宅介護、高 齢者住宅 は じめに 介護が必要になって も、できる限 り住み慣れた 自宅で、そ して 自宅のある地域で 自分 らしく 尊厳 をもって暮 らし続けたいという思いは多 くの人が願 っていることであ り、数多 くの調査が 繰 り返 し明 らかにする、広 く共有 された価値 といえる。介護保険制度は、 こうした願 いを実現 するために 「個人の尊重」
「尊厳の保持」
「介護の社会化」 を目標 に国民的な議論 を経てつ くら れ、2000年にスター トした社会保険制度である。 介護保険サー ビスの利用は、当初の予想をはるか に上回る勢いで伸び続 け、制度 の存在は、 家庭生活や経済社会 にも大きな影響 を与える存在 に成長 している。財 政的 には、2000年度 に 3.6兆円であった総費用が、2008年度 には7.4兆円と 9年間で約 2倍 に膨れ上がっている。高齢 者の介護に限定 した社会保険制度 とはいえ、すべての国民をカバーす る医療保険の10分の 1か ら5分の 1の規模 に、わずか9年の間に成長 してきたのである。 とりわけ沖縄県 においては、 制度開始 当初か ら,高齢者1人あた りの給付費が全国で最 も高い水準 にあ り、 当初は施設給付 費の高さが、近年は居宅サー ビスが給付費全体 を押 し上げる要因 となっている。 根強い家族扶養意識が介護の外部化 を抑制するのではないか という当初の見方 を裏切 り、急 速に拡大 した保険サー ビス利用は、給付 と負担の関係が明確な社会保険制度である以上、 当然沖縄大学人文学部捉要 第11号 2009 保険料上昇に直結 し,国民の負担が重 くなることを意味する。社会は人びとが必要 とする社会 保障の制度 を作 り出すが、作 られた制度が社会を変えることがある。年金制度の充実が,高齢 者の経済的な自立を可能にし、高齢者単独世帯、夫婦のみ世帯の割合を高める一因になってい るように、介護保険制度は、老後の家族のあ り方、住 まい方を変えつつあ り、また産業として も地域によっては基幹産業をしのぐほどの規模に達 している。 本稿において注 目するのは、2006年の制度改正によ り誕生 した地域密着型サー ビスである。 急速に拡大を続けた費用の抑制のため、介護予防を重視 した改正の中で、地域全体で支える仕 組みとしての地域密着型サービスの創設は、施設 と居宅、いずれかを選択せざるを得ない二者 択一ではない、新たな住まい方 というべき領域を創出させようという意図がこめられている。 とりわけ、新たな小規模多機能型居宅介護 というサービス形態は、 「通い」 (デイサービス)を 中心 として、 「泊まり」 (ショー トステイ)、 「訪問」 (ホ-ムヘルプ) という多機能サービスを 組み合わせて、可能な限 り居宅の生活の継続を支える仕組みである。また、県内には、 こうし た介護保険制度の枠組み以外にも、小規模多機能型の原点といえる宅老所 (小規模有料老人ホー ム)や高齢者住宅の急速な伸展が見 られ、外部の介護保険サービスとの組み合わせによって、 相当数の要介護高齢者の生活が支え られている現状がある。 そ こで本稿では、社会保障制度 と社会 との相互関係の視点か ら、沖縄県における介護保険制 度 とそのサービスの使われ方、制度内外の地域介護資源の特徴を全国的なデータとの比較によっ て概観 しつつ、そ こに映 し出された社会意識や沖縄が置かれた経済的状況 との連関について仮 説的な考察を加えたいと考えている。さらに、基礎的、概括的な現状分析をふまえて、地域密 着型サー ビスが試みつつある新 しいケアの実践知の中か ら、 こうした地域介護資源の開発、あ るいはシステム化に向けての可能性 を探究 していくための課題や視点を見出す ことを目的とし ている。 1 沖縄県における介護保険制度の現状 2008年度は、介護保険制度の開始9年 目にあたる。 3年ごとに改定される事業計画の下で、 介護報酬が見直 しされ、保険者である各市町村において介涛保険料の改定が行われる第3期計 画の3年 目と位置づけられる。2006年の制度改正の実績や評価を踏まえ、2009年度か らの第4 期の計画策定を行 う時期でもある。 ここではまず、沖縄県内の介護保険の各サービスの利用の現状 とその変化を概観する。以下 に参照するデータは厚生労働省が2008年2月分速報値 として公表 している2007年12月分の給付、 2008年1月決定分の介護保険事業報告をもとに作成 したものである。 (1)給付費と保険料の高さ 沖縄県の介護保険サービス給付費 (1号被保険者1人あた り)は、徳島、青森に次いで全国 3位 にあたる。第1期の2002年10月においては、24,986円で全国1位であったが、その後、相 対的に低下 してきている。2002年、施設給付費15,595円の高さが給付費全体を押 し上げる形と なっていたが、 この時点では施設給付費だけを見 ると9,233円で、全国12位 まで低下 し、逆に 全国1位 となった居宅サービス給付費の高さが給付費全体 を押 し上げていることになる。2006 年度の制度改正によって始まった地域密着型サー ビスについては、全国比0.61と、東京、京都 という大都市圏に次いで下か ら3番 目の低い給付費 となっている。
- 1
4-西尾:沖縄県における地域介護資源の現状 表1 1号被保険者 (高齢者) 1人あた り介護給付費 2007年12月分 単位 :円 居宅サービス 施設サービス 地域密着型サービス 計 沖縄県 ll,457 9,233 866 21,555 (2002年10月) 9,391 15,595 24,986 全 国 8,729 7,842 1,424 17,995 対全国比 1.31 1.18 0.61 1.20 (2002年10月) 1.33 1.62 1.50 以前の沖縄県の給付費の高さのもう一つの要因として指摘 されていたのが、要介護認定率の 高さである。 表2 1号被保険者に対する要介護認定事 2002年10月 2008年 2月 沖縄県 0.175 0.177 対全国比 1.25 1.08 要介護認定率 (1号被保険者あた りの要介護認定者の割合)は、全国 と比べてきわめて高い 状態にあったが、現在はその差が狭まってきている。2002年時点での認定率の高さは、主 とし て沖縄県の人口構造、すなわち、高齢化率自体は低いものの長寿県 として知 られてきたように、 高齢者の中の高年齢者の占める割合が高 く、一般 に高年齢になるほど要介護状態になる可能性 が高いことか ら要介護認定率が高 くなっていると解釈されてきた l)。その差が狭まっているこ とは、長寿県としての地位がゆ らいできてお り、要介護認定率の高さが給付費の高さを招いて いるとは必ず しも説明 しえな くなってきていることを示 している。 つぎに、要介護認定を受けた人がどの程度、介護保険サー ビスを利用 しているか、その受給 割合を見てみることにする。 表3 要介策定定着および介護保険サービス受給者数 2002年10月および2007年12月現在 要介護 居宅サービス 施設サービス .地域密着 サービス受給者 認定者 受給者 受給者 受治者 合 計 沖縄県 2007認定者に対する割合年12月 40,868 24,61.1%973 20.8,313%2 2.1,0676% 384,3524.1% 2002年10月 34,391 18,900 9,391
0
28,29ー 認定者に対する割合 55.0% 27.3% 0.0% 82.3% 全 国 20認定者に対する割合07年12月 4,511,609 2,6559,9.6500% 8218.4,53%81 195,14.3%42 3,679,37381.6% 2002年10月 3,293,405 1,841,551 702,9250
2.544,476沖縄大学人文学部だ要 第11号 2009 最新データでは、要介護認定者に対する居宅サービスの利用度、施設サービスの利用度はと もに全国平均よ り
2
ポイン トほど上回っている。施設サービスの利用度の高さについては、介 護保険制度開始以前か らの国費を積極的に投入 した沖縄振興開発計画による基盤整備が、福祉 分野 においては特別養護老人ホームを中心 とした施設整備 を重点 に進め られた結果であ り、 2002年時点では、全国を6ポイン ト上回っていたが、施設整備はすでに目標に達 しているとの 判断か ら、その後一切行われて こなかったため、急速に受給率は低下 してお り、要介護認定者 の2割に過ぎな くなっている。居宅サー ビスの高さについては、また居宅サービスの中でも通 所介護、適所 リハ ビリテーションの通所サー ビスの利用度が非常に高 く、 これ らの通所サービ スの多 くが施設併設のサービスであることか ら、施設整備率の高さの反映と考えられてきた2)。 しか し、施設整備はすでに相対的には高水準ではな くなってきてお り、居宅サービスの受給 割合の全国平均を超える増加割合は異なる要因によって促進されていると解釈する必要がある。 また、 これ らの給付費全体の高さは、介護保険制度が、サー ビス給付の計画に応 じて負担 (保険料) を定める仕組みであるために、おのず と介護保険料の高 さに反映される。第3期 (06年∼08年)の 1号被保険者の保険料、沖縄県内の平均4,875円は、全国平均4,090円に対 し ても高く、県平均では全国第 1位の負担の高さとなって表れている。経済格差による所得水準 の低さがいっそ う平均的な保険料負担を重 くすることになるだけに、事業者指定の権限をもつ 県、保険者である市町村行政の制度運営の舵取 りをいっそう難 しくしている。 (2)居宅サービスの現状 介護保険サービス給付費全体の5割以上を占め、全国 1位 となっている沖縄県の居宅サービ スの現状について見てみたい。 表 4 居宅サ-ビスの支給限度軌 こ対する要介鼓反別利用者 1人あたりの給付額 (利用封合) 単位 :円 要介護度 要支捷 1 要支援 2 要介葦 1 要介謙 2 要介護 3 要介護 4 要介護 5 支給限度額 49,700 104.000 165,800 194,800 267.500 306,000 358,300 沖縄県(割合) 20,4159.04 36.35.3790 6841,02.80 80,4189.65 88,33.9763 82,206.728 56,1035.36 全国計(割合) 16,727 30,046 50,984 64,244 73,217 69,158 60,470 7_7 6.11 1100.2.2 8,8,55 55..99 44..22 -1-1..33 表4
は、要介護度別に定め られた支給限度額 (上限)限度額に対 して、利用者がどのくらい のサ-ビスを利用 しているかという割合を表 している。沖縄県では、要支援、要介護度の低い 段階での利用率が高いことは以前か らも指摘 されてきたが、その傾向は、依然 として続いてい る。要介護1では、全国よ りも10ポイ ン トほど高い利用率 となってお り、要介護度 1, 2での 開きが 目立つ。要介護度が相対的に低い状況で積極的に居宅サービスを利用 している現状が見 える。 つぎに居宅サービスの種別の利用度について見てみることにする。 -16-西尾 :沖縄県 における地域介青紫渡の現状 表5 沖縄県の介護保険受給者 1人あた り給付額 :対全国比 (2007年12月分) 単位 :円 居宅全体 坊間サービス 通所サービス 短期入所 用具 .住宅改修 その他 沖縄県 構成比 110050.,90%05 118,17.16%2 6615,1.6%87 4.4,5%756 4.4,75%28 1132,.03%72 全 国 .構成比 90.022 24,762 34,935 8,884 6,095 l5,346 全国 1高い居宅サービス給付額は、 このデータを見る限 り、訪問サー ビスではな く、短期入 所でもな く (いずれも全国平均 を大幅に下回っている)、適所サー ビス (適所介護、適所 リハ ビリテーション)が全体を押 し上げていることがわかる。全国比1.87で、居宅サー ビス全体に 占める割合が、全国よ りも20ポイ ン ト以上も高 くなっているのは、明 らかな地域的特徴 といえ る。沖縄県で通所サービス利用が高いのはなぜか、施設併設の適所サー ビスの存在がその給付 費を押 し上げてきたという以前までの分析は、すでに当てはまらな くなってきてお り、適所サー ビスだけで居宅サービス全体の6割 を占めているだけに、その要因の検討には重要な意味があ る。 那覇市の第3期介護保険事業計画 には、 この傾向について 「本市の高齢者は、訪問系よ りも 適所系サービスを利用する傾向がみ られ、多 くの人とのふれあいを求め、外 に出ていっている 状況」3) と説明している。高齢者自身のサ-ビス利用意向の高さという側面は否定できないが、 これほどの開きを説明するには不十分であ り、サービス供給面にも目を向ける必要があるだろ う。 そ こで、つぎに通所サービスの中の多 くを占める通所介護 (デイサー ビス)事業者の経営主 体を見てみたい。 表6 経営法人別通所介護事業者数 (介護給付費実態調査月報 ・平成20年4月審査分) 社会福祉法人 医療法人 営利法人 非営利法人(NPO) その他 合 計 全 国 9,052 1,748 8,900 1,240 1,206 2乙146 構成比 40.9% 7_9% 40.2% 5.6% 5.4%
1
00.0% 沖 縄 75 74 176 12 9 346 構成比 21.7% 21.4% 50.9% 3.5% 2.6% 100.0% 施設併設の通所サービスの比率が高いのであれば、経営法人は社会福祉法人の比率が高 くな るはずである。 しか し、実態は全国に比べると医療法人、営利法人の比率が非常に高いことが わかる。それぞれ10ポイン ト以上の開きがある。 とくに営利法人経営の事業所の中で120か所 を占める有限会社経営の比率の高さが特徴 といえる。 このデータを見る限 り、沖縄県の経済状 況として指摘されることの多い、小規模 ビジネスに対する起業意欲の高さが通所介護サービス の給付費を全国1高 くしている要因の一つと想定することができそ うだ。 これは雇用の確保の面か ら見れば、 1か所平均常勤換算で9.4人の職員が雇用されているデー沖縄大学人文学部だ要 第11号 2009 夕 (平成20年介護保険経営実態調査 ・全国平均)か ら概算するな ら、 3千人を超える常勤雇用 が適所介護事業だけで確保されていることを考慮すると、政策的に通所介護サービスの指定を 抑制することは適切ではないと考え られる。むしろ監査等を通 して労働分配が適切に行われて いるか (介護報酬が従事者の賃金に適切に回っているか) というような監視が重要と考えられ る。 一方で、在宅での生活を継続的に支えるためには、医療サービス、訪問サービスが十分に利 用できるか どうかが重要である。 沖縄県のデータを見てみると、診療所数については、人口10万人当た り56.3施設、全国平均 76.3施設の74%であ り、在宅療養支援診療所は47施設で、後期高齢者人口千人当た り0.46。 こ れは全国平均0.82に比べてかな り少な く、全国35位 (2007年 7月) となっている。訪問看護ス テーション数は、51施設 (2005年度) これも,人 口10万人当た り、3.7であり、全国の4.5に対 して、全国38位、往診実施回数 (2005年 9月中)は,650件 と全国最下位 となっている4㌦ 介護保険のデータか ら、訪問看護サービスを見ると、 1号被保険者 (65歳以上高齢者)1人 あた りの給付額が202円で、全国平均333円に対 して 3分の 2、順位では全国41位の低さとなっ ている5).居宅生活を継続的に支えるためには、介護サー ビス、医療サービスの中でも、 とり わけ訪問サービスの充実が欠かす ことができないのであ り、通所サービスとのバ ランスのとれ たサービス誘導策が求め られるだろう。 (2)施設入所ケ7の現状 と待横着 それでは、施設入所によるサービスはどのように変化 してきているのだろうか。 施設給付費は、全国12位の水準まで低下 してきていることはすでに見たとお りである。2002 年10月に15,595円あった給付費が、2007年12月には、9,233円に縮小 しているO この要因には、 全国共通の制度改正がある。施設入所者の負担に関 して、2005年10月に改正された介護保険施 設における居住費と食事費の自己負担化 (いわゆるホテルコス ト導入) と施設へ給付されてい た基本食事サービス費の廃止である。 この改正は、利用者にとっても事業者にとっても大きな イ ンパク トをもつものであった。 このホテルコス トの徴収開始で、利用者にとって どれ くらい の負担増になるのかを特別養護老人ホームの個室に入所する所得段階4で要介護 4のケースの 試算では、食事費と居住費に介護費用の自己負担 1割 を加えた利用額は、合計で13万円程度 と な り低価格の介護付き有料老人ホ-ムとほとんど差がな くなっているとの試算がある6㌦ 施設給付費の全国に比べての相対的低下は、やは りその後の施設設置が行われなかったこと による。2000年以降、介護保険施設が新たに作 られていないことは、施設入所のニーズが解消 しない限 り (例えば、充実 した居宅サービスや地域密着型サービスが提供されている等),介 護 を必要 とする高齢者本人,家族の生活の困難が増 し、制度外の資源に頼 らざるを得ない状況 を想像することができる。 このような相対的な施設サービスの低下は、事実、入所待機者の増加となって現れている。 県内47か所の特別養護老人ホーム (定員3,855人) に申し込み、空きを待つ高齢者は2006年 6 月時点で、05年 1月に比べ100人増の3,400人お り、沖縄県は この中で、要介護 3か ら5に該当 し、独居や介護困難な世帯の高齢者は900人 (申込者の26.5%) と推定 している。 この割合は、利用希望者の実態 に関する全国の健康保険組合連合会の調査 ともほぼ同様の傾 向となっている。 この調査によると、入所 申込者のうち施設スタッフか ら見て入所が必要 と判 断できるケースは3割に過ぎず、約 6割は在宅生活の継続が可能 (うち2割は家族が入所を希 望 している)なケースであるという7)。
- 1
8-西尾 :沖PL県における地域介護資源の現状 待機者の割合は、全国 レベルで も特別養護老人ホームの入所定員39万人と同じくらいの待機 者がいるといわれてお り、沖縄県内の待機者だけが格段に高 くなっているわけではないが、依 然として県内900人の施設入所ニーズへの対応は緊急の課題 といえる。 こうした施設入所ニーズの高さの要因として、2003年度の沖縄県の調査は、社会構造か らく る課題 として、家庭介護力の脆弱さと住宅問題の
2
点をあげている8)。 家族介護力については、 「介護者がいて もその半数は 日中仕事に従事 しているため、 日中の 介護の確保は非常に大きな問題 と考えられる。 また、介護者 自身も生計の確保 と介護の両立が 求められてお り、時間的 ・身体的な面あるいは経済的な面での負担が少な くない」現状か ら、 「世帯構造や就業構造は本県の経済活動水準 と密接に関わってお り、介護の問題だけで解決で きるものではない。」 としている。 また、住宅問題については、 「介護保険サー ビスを利用 しているひ とり暮 らし高齢者では、 介護保険施設への入所を希望 している割合が高 くなっているが、 これは介淳付きの住 まいを志 向 していると考えられる。 また、施設に入所 していても在宅生活を望んでいる利用者は少な く ない。 これ らの高齢者が在宅生活 をお くるためには、住 まいと介護の保障が必要 となる。」 と している。 これ以上、高齢者施設を作 らないという判断 と決定にはそれな りの重みがあると考えるが、 施設入所ニーズを高める構造的な要因が変わ らない限 り、ニーズを抱える本人 ・家族の困難は 深まっていくことは間違いない。対策を行わないことは別のゆがみを生み出す ことにもなる。 こうした状況に加え、療養病床の削減計画が存在する。 2006年に、生活習慣病の予防対策、中長期的な医療費の適正化を柱 とした 「医療制度改革関 連法」が成立、 これを踏まえて沖縄県においても医療費適正化計画な どを含めた 「地域ケア体 制整備構想」が策定された。医療中心モデルか ら、介護中心モデルへの転換を図る一環 として、 医療病床の介護保険施設への転換、介護療養型医療施設の廃止など療養病床の再編が進む こと になる。 県内の療養病床は医療型が3064床、介護型が687床の計3751床あるが、国の計画 に基づき、沖 縄県は、2012年度末までに医療型だけを残 し、介護型は全廃、全体で2456床 まで減 らす計画で あ り、削減する 3割の約1,100床は老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど の介護に転換するという91。 「地域ケア体制整備構想」 には、医療形療養病床 を老人保健施設に病床転換させる計画をす すめ、転換にかかる費用の助成を行 うこととなっている。 しか し、特別養護老人ホームの入所 待機の状態は既述のとお りであ り、老人保健施設は、ず っと住み続けることはできない施設で あり、家族介護資源をあてにできない、 自宅で生活を続けられない高齢者の住処 (受け皿)は ますます他の民間地域資源に流れていかざるをえない。 (3)地域密着型サービスの現状 地域密着型サービスは、2003年 6月に厚生労働省老健局長の私的検討会である高齢者介護研 究会 (座長 :堀田力)の報告書 「2015年の高齢者介護」の中で提言された枠組みである。 「高 齢者の尊厳を支える介護 を具現化する」「可能な限 り住み慣れた環境の中でそれまで と変わ ら ない生活を続けられる」 「在宅で365日 ・24時間の安心を提供する、切れ 目のない在宅サービス の提供」が理念 として示されている。制度化の背景 として, 「自分の住み慣れた土地を離れて 入所するケースが多いため、その人が長年にわたって育んできた人間関係な どが断たれ、高齢 者にとって最 も大切な生活の継続性が絶たれて しまう場合が多い。 (略)他人 と一緒 に起床 ・沖耗大 学 人文 学沸岩要 第 11号 2009 就寝、食事、入浴、 レクリエーション等,施設の決めた日課に沿って集団的に行動 して 日々が 過ぎ、家で暮 らしていたときのように自分 自身で生活のリズムを決めることは難 しい。 このよ うな生活の中で、入所者は、施設の中で自分の役割、存在意義を見失い、 自立への意欲や人生 に対する関心を失っていくのではないかと思われる。また、痴呆性高齢者の中には、 このよう な環境の下では症状が悪化する場合がある」 と施設ケアの問題点を指摘 している10)。そ して小 規模な居住空間、な じみの人間関係、家庭的な雰囲気の中で、住み慣れた地域での生活を継続 させ、一人ひとりの生活のあ り方を支援 していく認知症ケアモデルの普遍化等を目的として、 全国各地域において先駆的に行われていた 「宅老所」等をモデルに、介護保険のサービスとし て小規模多機能型居宅介護が2006年 4月に地域密着型サー ビスの一つの類型 として創設され たのである。 小規模多機能型居宅介護は、従来か らあるサービスを単純に複数組み合わせたものではなく、 「通い」 (デイサービス) に加えて、 「訪問」 (ホームヘルプ)や 「泊まり」 (ショー トステイ) のサー ビスを、提供時間や内容 も含めて個人に合わせて柔軟に組み立てることで、利用者に寄 り添 う個別ケアを実現するためのサー ビスである。 これは、既存の居宅サービス等では在宅生 活の維持が困難であ り、一般的な集団生活には馴染みにくい認知症高齢者が、 リロケーション ・ ダメージと言われるような、な じみの場所や人間関係か ら引きはがされることによる混乱を避 け、必要な時に必要な支援 を24時間いつで も受けられ、在宅生活を持続するための安心を確保 できることを意味する。 地域密着型サービスには、 このほか、夜間対応型訪問介護、認知症対応型適所介護、認知症 対応型共同生活介護 (グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介 護老人福祉施設入所者生活介護を合わせ6種類のサー ビスがある。各保険者 (市町村など)が 第3期介護保険事業計画に基づき、地域密着型サービスの計画を策定 しているが、現状を見る 限 り、計画 どお りには指定が進んでいない。 表 6 被保険者 1人あた りの地域密着型サービス給付費 (2007年12月分) 単位 :円 地域密着型全体 小規模多機能 グループホーム その他 沖縄県 866 272 435 158 対全国比 0.61 2.83 0.38 0.84 地域密着型サービス給付費全体では、沖縄県は全国平均の6割 と低 くなっている (全国45位)。 しか し、新たに制度化された小規模多機能型居宅介護だけを見れば、全国平均よ りもきわめて 高い割合 (2.8倍)で取 り組 まれてお り (福井県についで全国2位)、従来か らあったグループ ホーム (認知症対応型共同生活介護) については、全国平均の4割弱の普及率となっている。 これを沖縄県介護保険事業計画の目標値 と比較 してみると、平成19年度 (第3期 2年目)の 目標値 に対 して、2007年12月分の給付費は,グループホームで84.3%、小規模多機能で35.9% の達成率 となっている。 ここか らは、沖縄県の地域密着型サービスは、グループホームの整備 目標が全国より低 く、小規模多機能の事業展開には積極的な状況が見てとれる11)。グループホー ムの指定が低調なのは、入所施設に比べれば介護報酬が低 く設定されているとはいえ、その費 用を指定市町村が負担 しなければな らず、介護保険財政の増大を懸念する行政の抑制姿勢が反 映されていることが要因と見 られる。
-
20-西尾:沖縄県 における地域介蕉資源の現状 沖縄県の地域密着型サービスの運営法人を全国 と比較 してみると、社会福祉法人の割合がほ ぼ同等で,営利法人の比率がやや低 く、医療法人の比率がいずれ も倍以上 となってお り、医療 法人の取 り組みの積極性が 目立っている。医療法人経営の小規模多機能の内訳では、 1つの医 療法人が5か所の小規模多機能事業所を経営 してお り、老人保健施設を経営 している法人が 2、 グループホームを経営 している医療法人が3法人 となっている。 表7 地域密着型サー ビスの運営法人 種 別 か所致 社会福祉法人 医療法人 営利法人 NPO法人 その他 沖ヰ県 小規模多様性 42 13(31.0%) 15(35.7%) 9(21.4%) 5(ll.9%) 0(0.0%) グループホ-A 55 15(27.3%) 23(41.8%) 17(30.9%) 0(0.0%) 0(0.0%) 全 日小規壌多枕能 1,373 380(27.7%) 201(4.6%) 617(44.9%) 108(7.9%) 67(4.9%) グループホーム 9,327 2,059(21.9%) 1,666(17.9%) 4,960(53.2%) 497(5ー3%) 145(1.7%) 地域密着型サービスの特徴 として、他の居宅サー ビス については都道府県が事業者 を指定す るのに対 して、保険者である市町村がその指定 を行 うことか ら、市町村の計画、 また地域密着 型サー ビスへの位置づけによって漉淡が見 られ ることである。 (表
8)
また、全国的に小規模多機能型居宅介護が進展 しない理由として指摘 されているのが、経営 の困難性である。通所介護の場合の営利法人比率の高さに比べ、営利法人の参入割合が低 いの は、やは り採算面が大きいのではないか と推測 され る。 表 8 市町村別地域密着型サー ビス指定数 施設数 :2008年10月WAMネッ ト登録 市 町 村 高齢者人口 グループ 高齢者人口 小規模 高齢者人口 2007.10.1現在 ホーム敷 千人当たり指数 多機能致 千人当たり指数那
覇 市 53,926 8 1,48 12 2.23 宜 野 湾 市 12,554 4 3.19 3 2,39 石 壇 市 7,610 3 3.94 2 2,63 浦 添 市 14,274 5 3.50 4 2.80 名 護 市 9,707 2 2.06 1 1.03 糸 満 市 8,855 2 2.26 0 0.00 沖 縄 市 19,597 3 1.53 3 1.53 豊 見 城 市 6,924 2 2.89 2 2.89 う る ま 市 19,316 4 2.07 1 0.52 宮 古 島 市 12.178 4 3.28 4 3.28 商 域 市 8,067 3 3.72 1 1.24 町 村 合 計 55,886 15 2.68 9 1.61沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 厚生労働省の介護事業経営実態調査 (平成20年) によると、グループホーム (認知症対応型 共同生活介護)の利用者1人当た り収入が11,846円、支出が10,947円と平均899円の黒字となっ ているのに対 し、小規模多機能型居宅介護では、同じく収入141,670円に対 して支出152,990円 で、平均11,320円の赤字 となっている。 また、同調査によれば、サービス別の人件費比率は、 小規模多機能型居宅介護で72.7%となってお り、介護老人福祉施設 60.8%、介護老人保健施 設 53.6%、認知症対応型共同生活介護 57.8%、特定施設入居者生活介護 48.7%などの入所 系サービス、適所介護 60.7%などをはるかに上回 り、特段の施設 ・設備を要 しない訪問系サー ビスである訪問介護 81.5%、訪問看護 (ステーション)79.4%な どに迫る高い水準 となって いることか らもうかがえる12)0 東京都の調査 によれば、2007年9月の収支において、小規模多機能型の事業所のおよそ 3分 の
2
が赤字 となっている13)。東京では家賃等の高さによって施設 ・設備に経費を要することを 考慮するとこの結果はうなずけるが、経営環境の厳 しさは全国ほぼ共通の介護報酬の設定によ るため、全国的な傾向となっている。 この原因の一つは、従来の居宅サー ビスが出来高制で個々のサービス利用について介護報酬 が支払われるのに対 し、小規模多機能型の場合には、施設と同様包括払い (サービス毎に報酬 が設定されてお らず、どのようなサービスを利用 した場合でも定額で支払われる仕組み)となっ てお り、その水準が低 く設定されていることによることが指摘されている。また、介護報酬水 準が、入所系の特別養護老人ホームやグループホームなどと比較 して、要介護1, 2の単価が 低 く設定されてお り、要介護度の低い利用者 も多 くのサービスを利用する実態にあることも要 因となっている。 このことが制度の理念には理解があっても、事業参入については憤重な態度 となってお り、 こうした厳 しい経営環境の中で小規模多機能型のサービスが広がっていってい ない原因となっている。 しか し、沖縄県 においては、小規模多機能型居宅介護サービスは、非常に積極的に取 り組ま れてお り、小規模多機能先進県 といえる。そのケア実践や経営手法には、学ぶべき実践知があ ることが見込まれ,今後のフイ-ル ドワークの研究の課題 としたい。 また、 この地域密着型サービスの推進 を志向するとき、重要なことは 「日常生活圏域」 とい う視点である。2006年改正の際に示された 「日常生活圏域」 という考え方は介護サービス利用 者が 日常生活圏において必要なサービスを必要に応 じて利用できるような施設やサービス事業 の配置を考える地域包括ケアの発想である。 小規模多機能居宅介護 については、大阪府が国に対 して独 自の提言 をまとめてお り、 「新た な地域ネ ッ トワーク構築の支援、ケアマネジメン トの独立性のより一層の促進、基準等の見直 し (①基本報酬の見直 し、②認知症個別ケア加算の創設、通いサービスの上限数の緩和)、医 療機能付加型の小規模多機能居宅介護の創設」等がその項 目となっている。地域ネッ トワーク については、 「小規模多機能型居宅介護事業所 自らがよ り地域に密着 したネ ッ トワークの拠点 の一つとなる認識を持って、サービスの提供だけではな く、地域における認知症をはじめとす るケアの普及 ・相談等への積極的な取 り組みができる制度の創設 を図 られたい。」 としてい る】4)。地域密着型サー ビスに義務付け られた運営推進会議の活用を含めて、名称にある地域密 着の意味を実際のサービスや運営の中で機能させていくことが課題 となっている。 2 介護保険以外の地域資源 (1)宅老所ないし有料老人ホーム 宅老所は、 「2015年の高齢者介護」報告書に、 「地域密着型の在宅サービスを実践する試みと-
22-西尾 :沖縄県における地域介護資源の現状 して、宅老所 と呼ばれる取組がある。宅老所 には小規模 ・多機能サー ビスを実践 しているもの も多 くあ り、それ らの中には、医療サー ビスな ど地域 の他 のサー ビス資源 を活用 しなが らター ミナルケアまで実践 しているところもある。」 と紹介 されている。 地域密着型サー ビスの生みの親であ り、モデルで もあるが、沖縄県 において も介護保険制度 以前か らの 「通い」か ら出発 した実践がある。 こうした先行的な実践 を行 ってきた宅老所 を中 心 として、沖縄県宅老所連絡会が結成 されているが、連絡会 に加入する宅老所は39か所 と必ず しも多 くない。宅老所 という名称 自体は、法律 に基づ くものではな く、老人福祉法上は有料老 人ホームである。2006年の改正老人福祉法 によ り、食事 ・入浴排滑 ・洗濯掃除 ・健康管理のい ずれかをサービス として提供 している施設は、すべて有料老人ホーム として届け出る ことにな り、従来の 「常時10人以上」 という定員要件は撤廃 されている。 沖縄県社会福祉協議会が2007年に調査 を行 い、発行 した 「おきなわ宅老所ガイ ドブ ック2008」 には、67か所の宅老所が掲載 されている15㌦ これは掲載への同意 を得た ところのみであ り、県 社会福祉協議会の調査によれば、237件の宅老所の存在が確認されている。 また、有料老人ホー ムとしての届出の義務化に伴い、設置基準 に達 しない宅老所の取 り扱いが問題 となっていたが、 少な くとも届け出た121件 について県 は2008年 3月に届出を受理する ことを決定 している。全 体像の正確な把握は難 しいものの、ガイ ドブ ックに掲載 されている数の 3- 4倍程度 の潜在的 な宅老所の存在があ り、そのうちの半数以上は届出を行 っていない、見えない宅老所 といえる。 ここでは、データのあるガイ ドブ ック掲載の67か所の宅老所のデータか ら判断できることを 見ていきたい。 67か所のうち、介護保険の適所介護 を併設 していると思われる宅老所は、62か所 (92,5%) となっている。67か所の宅老所の居住サー ビス部分の定員が合計724人。適所介護併設の62か 所の居住定員の合計は615人 となっている。併設適所介護事業者の定員 を WAM ネ ッ トに登録 された事業者データか ら試算 してみると、そ の合計は1,038人 となって いる。すなわち、現在 の宅老所は、365日24時間切れ 目のない生活 を支 える安心 を確保す るために、居住サー ビス と しての宅老所 (自主事業) と介護保険サー ビス としての適所介護サービス (介護保険事業) を 組み合わせた事業モデルであ り、 このスタイルがかな り広範に展開されていることになる。小 規模多機能のモデル となった宅老所ではあるが、小規模多機能型 に移行するところは全国には 少な く、県内には見 られない。経営的には、通所介護 との組み合わせが最 も安定 していること によると見 られる。 2008年10月現在、適所介護事業者は県 内346事業者であ り、 この うちの どの程度が 自主事業 としての宅老所を運営 しているかは不明であるが、仮 にガイ ドブ ック掲載の4倍の宅老所の存 在を仮定すれば、二千人以上の高齢者が宅老所 に居住 していると見込 まれることになる。 この 中には、特別養護老人ホームに入所 を希望 し、待ち続 けている待機者が相 当数含 まれているこ とは間違いない。 このように沖縄県内では近年、療養病床の削減や介護施設の不足 によって、即応が可能な入 居型の宅老所 (小規模有料老人ホーム)が急増 していると見込 まれるが、以下 にデータのある ガイ ドブ ック掲載の宅老所67か所の開設年をみてみたい (表 9)。 これ を見る限 り、2002年以降、急速 に宅老所 の設置が増加 して いるのが分かる。 と りわ け 2006年は、介護保険法の制度改正が行われ、介護保険施設のホテル コス ト徴収が始 まった こと もあ り、施設入所ニーズの増大 におそ らく呼応するよ うに宅老所 (有料老人ホーム) の事業が 拡大 したものと見ることができる。 このタイプの拡大は、先にふれた居宅サービス給付費の中 での適所介護の比率を高める要因にもなっていると想像 され るが、 この点の分析については、
沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 よ り詳細な分析が必要であろう。 表9 宅老所開設年 開設年 か所数 2000年以前 4 2001年 1 2002年 6 2003年 5 2004年 9 2005年 12 2006年 18 2007年 6 未‡己入 6 宅老所開設年(ガイドブック掲載宅老所) 2011111
0
642808642 1 ;! 12 i 卓 6 6 l 4 ∼ ! ▲「「 + i 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 「おきなわ宅老所ガイ ドブ ック2008」よ り作成 「2015年の高齢者介護」報告書は、 「要介護状態になった時に自宅での生活の継続を困難に するもう一つの要因は、 「住 まい」である。 (略)要は 『365日・24時間の安心』が確保できる ような介護サービス提供体制が用意されていることが重要である。」 としている16)。 こうした365日・24時間の安心の確保できる事業モデルは、 しか し一方で、利用者をその事 業者だけに囲い込んでしまう危快が常に指摘されてきた。実際に有料老人ホーム届け出の義務 化は、 「囲い込み」 を行 う悪質な業者への対策 として行われたものと見 られる。 また、都道府 県 によっては、 こうした囲い込みを抑制する独 自の基準による指導が行われていることも知 ら れている。制度化された小規模多機能型居宅介護 も、ケアプランを内部作成 し、他の事業者の サービスを利用することができないことか ら、同様の危険性をはらんでいるといえる。そこで、 重要な ことは外部あるいは第三者による客観的評価がなされることである。地域密着型サービ スの第三者評価は、年1回義務化されているが、他の介護保険サービスについては、情報提供 にとどまってお り、また制度外 についてはまったく行われていないため、今後、民間による評 価活動に着 目していく必要がある。 (2)高齢者の住まいに関する現状 これまで介護保険制度関連の資源を見てきたが、 自宅での生活を支えるもう一つの重要な要 素は、 「住 まい」である。 「住 まい」 を集団化 し、ケアをパ ッケージで組み込む方式は厚生労働 省が所管する介護保険の施設サー ビスである。 しか し、施設 には、 「住まい」 と考え られるだ けの生活の質(
QOL)
が確保 されて こなかった ことか ら、個室ユニ ッ ト化への誘導が進め ら れている。一方で、介護保険の居宅サー ビスなどの外部のケアサービスを活用する場合は、高 齢者に対する 「住 まい」の制度 も視野に入れてお く必要があるが、 こうした高齢者住宅につい ては、主 として国土交通省管轄の制度 となっている。 現行制度では、高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づ く高齢者向け優良賃貸住宅やシ ルバーハウジング等の高齢者向け住宅などが該当する。 これ らの住宅では、バ リアフリー仕様-
24-西尾 :沖縄県 における地域介毒兼源の現状 や緊急通報装置、LSA (ライ フサポー トア ドバイザー :生活援助員) の配置 といった、 日常 生活上の安心 を得 るための仕組みが備 え られてお り、介護サー ビス については必要 に応 じて外 部の在宅サー ビス を利用す る という形態が一般的である。現在以下 の ものが沖縄県 内にある高 齢者関連の住宅制度である。 表10 高齢者関連の住宅施策 (沖縄県 内) 名 称 箇所数 戸 数 内 容 有料老人ホーム 15 825人 高齢者 を入居 させ、① 食事 の提供②入浴 .排 池 介護保険対象の特定施設 または食事の介護、③ 日常生活上の必要な便宜、 (地域密着型 を含む) のいずれか を提供す る施設 (平成18年 4月か ら 適用) (このほか届出 :124か所) 高齢者 円滑入居賃貸住宅 32 485 高齢である ことを理 由に、入居 を拒 まな い賃貸 住宅。登録情報 はHPや県 .市町村で閲覧可. 高齢者専用賃貸住宅 16 345 高齢者 円滑入居賃貸住宅 の中で、 高齢者 のみ を (高専賃) 対象 とした賃貸住宅○ 登録情報 はHPや県 .市 町村で閲覧可. 高齢者向け俵良賃貸住宅 9 243 高齢者向けの仕様 (バ リアフリーな ど) を備 え、 (高専賃 の内数) 緊急通報サー ビス等が利用可能な賃貸住宅で、 県 の認定 を受 けた住宅○家賃補助等 あ り02005 年12月開始. 適合高齢者専用賃貸住宅 高齢者専用賃貸住宅 と して登録 された住 宅の う ち、厚生労働省が定 め る居住水準等 を満たす も の (適合す るもの) で届 出が 出された ものは、 ①老人福祉法 に規定す る有料老 人ホーム の定義 か ら除外 され,有料老人ホームの届 出が不要 と な る○ ②適合 高齢者専用賃 貸住 宅 と して都道 府県知事へ届 け出る ことによ り、介護保険法 に 規定す る特定施設入居者生活介溝 の対象 となる○ シルバーハ ウジング 4 122 地方公共団体等 による賃貸住宅で、 高齢者 向け の仕様 (バ リア フ リーな ど)の住 宅. 生活援助 負 (lJSA)によ る相談や安 否確認 、 緊急 時対応 「沖縄県高齢者保健福祉計画」(平成18年∼20年)より作成 沖縄県 の住宅 に関す る調査が指摘 して いるよ うに、 沖縄県 の持 ち家率は、2003年時点 で、 52.3%、全国平均の61.2%を下回 り、 さ らに減少傾向にある17)。高齢者世帯では、全国的な趨 勢 と同様 に一人暮 らし、夫婦 のみ世帯が急速 に増加 してお り、多様な住 まい方 を選択で きるよ うな 「高齢者向け住宅」 を積極的 に整備 して い くことが必要 となろ う。特 に 日本の高齢者向け 住宅の普及率は、全高齢者 に対す る比率では、 シルバーハ ウジング、高齢者向け庫 良賃貸住宅、 有料老人ホーム、軽費老人ホ-ム、グループホーム を合わせて も、1.1%に過 ぎな い。介護保 険3施設入居者の人口比率 (3.2%)では、英国やスウェーデ ン (3.0%)な どと比較 して もあ
沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 まり違いがないが、高齢者住宅、ケア付き住宅の比率は、英国、米国のリタイアメン ト・ハウ ジングで5.5%、スウェーデ ンのサー ビスハウスで5.6%、 となっているのに対 してきわめて低 いレベル となっているのである。高齢者住宅政策が不十分であることに加えて、ケアサービス との組み合わせ施策が不十分 ということがいえる。 これ らの高齢者住宅に、必要な介護サー ビスが適切に提供されるようにすることが重要であ り、そのためには、住宅 自体に介護サービス提供機能を付帯させる方法や、小規模多機能型サー ビスを併設 した り、外部の介護サービス と提携する方法な どが考慮され うる。一定の空間に介 護 を必要 とする高齢者が居住することは、外部サービスを効果的 ・効率的に提供することにも つながるはずであ り、沖縄 において広範に展開されている宅老所はまさにこのモデルの一つの 形 といえる。 また、厚生労働省も新たな形の 「ケア付き住宅」の推進への舵を切っている
。2
0
0
7
年3
月医 療法人が高齢者専用賃貸住宅の経営を認める方針を打ち出したのである。医療法が定める医療 法人の本来業務 と付帯業務の付帯業務の中に、 これまでなかった高齢者専用賃貸住宅を含める こととし、その条件 として、①生活指導、(参相談、(参安否確認、④緊急時の対応、⑤関係機関 との連携、⑥その他、保健衛生に関する継続的サービスを上げている18)。 この方針によって医療法人は、高齢者住宅を経営するために別法人を作る必要がなくな り、 高齢者専用賃貸住宅 と小規模多機能型介護や適所介護、訪問介護、訪問介護、さらに訪問診療 な どの組み合わせで24時間、365日の切れ 目のないケアを実現することが可能になったのであ る。 こうした医療法人が設置経営する高齢者専用賃貸住宅はすでに各地に見 られる。 この取 り 組みが高齢者の 「囲い込み」 になるのか、新 しい自宅でない在宅の新 しいスタイルになってい くのかは、今後見守っていく必要があろう。 また、近年、高齢者グループ リビングという暮 らしのスタイルが注 目されるようになった。 「グループ リビング」 とは、高齢者 自身が、高齢化 による身体機能の低下 と一人暮 らしの孤独 や不安 を考慮 し、従来家族がお こなってきた調理や清掃、食事を共にするといった家族の無償 の行為を共同化 ・合理化 して、一つ屋根の下で共同で住 まう居住形態である。グループホーム とは異な り、生活面での自立度の高い高齢者の新 しい住 まい方 といえる。 また、 「グループ リ ビング」 とは住まい方をさし、そのような住まい方を実行 している人達が暮 らす住宅を 「グルー プハウス」 と呼んでいる。都市部では、NPOなどの経営によるグループ リビングが広が りつ つある。 老後の大問題である 「住まい」は、介護保険サービスや一般住宅ほどには政策 として定型化 されているものが少なく、介護サービスとの組み合わせについても試行錯誤の状態が続いてい る。 自宅で暮 らせな くなってか ら施設に入所することは 日常生活 と人間関係の断絶を意味する。 生活 と人生の連続性を保障する高齢者の住 まいの新 しい事業モデルの構築が急がれる。 沖縄における実態についても調査を進めていく必要があるが、メニュー上では、厚生労働省、 国土交通省を含めた制度には一応の形が出揃ってきてお り、また民間非制度 (無認可)の独 自 の取 り組みも受け皿の絶対的不足か ら量的な広が りを見せている。 「住 まい」 と 「ケアサービ ス」 をどのように組み合わせつつ自分 らしい尊厳ある生活を維持させ、あるいは自己実現させ ていくか という選択肢の幅 自体はかな り広がってきているもののその質の確保については依然 として大きな課題が残る。 そ こで、県や市町村は、行政が対象 とする分野別の制度の枠組みの中だけでその供給を考え ていくのか、あるいは高齢者の尊厳ある暮 らしを支える地域資源の創出という視点で開発 ・誘 導 ・コーデ ィネー トを行い、 またその質の確保を図っていくのか、総合的な政策主体 としての- 2
6-西尾:沖縄県における地域介震資源の現状 役割が闘われて くるだろう。 おわ リに 地域介護資源の開発 ・システム化をめぐって 高齢になっても介護が必要になって も自宅で、 自宅のある地域で安心 して暮 らし続けたいと いう願いの実現 を可能 にするための地域介護資源の、沖縄県内の多様な現状 を制度 ・非制度 ・ 住宅制度の側面か ら、一般 に入手可能なデータを活用 しつつ概観 してきた. 介護保険制度は こうした願 いを実現す るために構築 された社会 システムであって、開始以前 には、主 として家族 という私的な領域の中で営まれていた介護を、一挙 に社会化することになっ た出来事でもあった。その後 の急速な利用の拡大、わずか6年での費用抑制への転換、制度変 更のめまぐるしさは、2006年の改正が制度の持続可能性 を意図 したにもかかわ らず、今後の展 開がきわめて不透明であることも予感 させているO また、介護保険制度の利用 に関する沖縄県 の特徴的な頼向は、社会構造の反映で もあ り,沖縄の置かれた経済的な状況 と無縁ではないこ とは、本稿に示 したデータが物語 っている。要介護ニーズの増大 と、受け皿 としての施設サー ビス量 とのギ ャップの拡大は、ある種のアンバ ランスをつ くりだ してお り、それは政策決定者 の意図を超えて、さらに裏切 る形で静かに進行 している。一方で、住 まいと介護の中間的領域 の地域資源が多様な展開を見せてお り、 「2015年の高齢者介護」報告書が 目指 した展望は、施 設か在宅か という二者択一の選択肢 を超 えた豊かな可能性 をも現実化 し始めている。 こうした 事態は、政策推進における、保険制度運営の困難性 と可能性 とを同時に示 している。 注 目していきたいのは、 2006年 に新たに制度化 された小規模多機能型居宅介茸が、沖縄で はとりわけ積極的に着手されていることである。そ して、地域介護資源の可能性は、その制度 化 を促 した先駆的な宅老所 を含む、本人の意向に寄 り添 った切れ 目のないケア実践 を可能にす る条件を、経営面での苦境の中か らどのように創造するかにかかっているものと考え られる。 こうした地域介護資源の開発 ・システム化の可能性 については、多様で豊富な実践を可能に する 「協」セクターの創出、人材確保 と育成、小規模多機能ケアのケアマネジメン ト、 日常生 活圏域の地域マネジメン ト、外部チェックや第三者評価 システムを含む経営モデルの構築、 ま たそれ らを可能にす る条件 として市町村行政の保険者機能に焦点 を置いた、今後の具体的な実 態調査 ・実証研究の中で明 らかにしていきたい。 ※本研究を実施するにあたり、科学研究費 (課題番号20530558)の助成を受けた。ここに記して感謝する。 注 1)田近栄治、油井雄二、「沖縄からみた介護保険の課題」、「健康保険2003.9」健康保険組合連合会、2003 年、P54 2)同上.P55-56 3)都朝市,「第3次なは高齢者プラン<那覇市高齢者保健福祉計画 (平成18年度改定)および介護保険 事業計画 (第3期)>」、那覇市、2006年、P8 4)沖縄県、「沖縄県医療費適正化計画」沖縄県、2008年、P32 5)厚生労働省、「介護保険事業状況報告 (暫定)(平成20年2月分)」、 http://www.mhlw.gojp/topics搬aigo/osirase/jigyo/mO8/0802.hem1 6)りゆうぎん調査、「法改正により厳しい経営環境に直面する県内介護施設事業者」、りゆうぎん総合研
沖縄大学人文学部紀要 第11号 2009 究所、2006年、P23-24 7)健康保険組合連合会、 「介護円滑導入のための在宅サービス普及阻害要因に関する研究事業」、 http://www.kenporen.com/outline/pd仇you8a13_09.pdf.2001年 8)沖縄県介護保険総合実態調査検討委員会、 「平成15年度沖縄県介護保険総実態調査研究報告 調査結果の概要∼介護保険サービス利用者調査,県民調査を中心に∼」沖縄県、2004、P207 9)沖縄県、 「沖縄県地域ケア体制整備構想」、沖縄県、2008年 10)高齢者介護研究会、「2015年の高齢者介護」、厚生労働省、2003年 http://www.mhlw.gojp/topics/kaigorkentou/15kourei/ ll)沖縄県、 「沖縄県高齢者保健福祉計画」 (平成18年∼20年)沖縄県、2006年 12)厚生労働省、 「平成20年介護事業経営実態調査 (平成20年10月1日)」、厚生労働省老健局 http://www.mhlw.gojp/topicsniaigo/zigyo/keiei/20index.h上mI 2008年 13)東京恭福祉保健局高齢社会対策部、 「小規模多機能型居宅介護実態調査報告書」、東京都、2008年 14)大阪府、 「介護保険制度見直 しに向けた提言 ・要望」、大阪府、2007年 15)沖縄県社会福祉協議会、 「おきなわ宅老所ガイ ドブ ック2008」、沖縄県社会福祉協議会、2008年 16)高齢者介護研究会、「2015年の高齢者介護」、厚生労働省、2003年 17)沖縄県、 「沖縄県住生活基本計画 (平成18年度∼27年度)」、2006年 18)浅川澄一、 「高齢者介護を変える 「高専貸 +小規模型介護」登場 !ケア付き住宅の本命」、筒井書房、 2007年、P108-113
-
28-Community care resources for the elderly in Okinawa
: Focusing on community-oriented care services
Atsushi NISHIO
Abstract
The long-term care insurance system established in 2000 supports the inde-pendence of the elderly and aims at establishing a community that guarantees a secure life to all the people and building a society where the elderly can live with dignity. This Japanese original system developed a variety of caring re-sources in communities and became the indispensable system for the elderly requiring long-term care and their families.
Okinawa Prefecture expends the highest level of long-term care Insurance service payments and the premium is the highest in Japan because of the large amount of payments for facility care services. In recent years, expenses for home care services have gradually increased.
In 2006, with the introduction of community·oriented services (new services), small-scale and multifunctional in-home care services were launched. Other non-institutional services such as small-scale care homes for the elderly were variedly developing from 2000.
We analyzed the present state of long-term care insurance in Okinawa pared with national data and sketched the outlines and features of the com-munity care resources in Okinawa in order to investigate the potentiality and the challenge of community-oriented services for the future.
Keyword: Long-term care insurance, community-oriented services, small-scale and multifunctional in-home care services, small-scale care homes, senior housing