Title
シロスジオサゾウムシの飼育
Author(s)
榊原, 充隆; 高橋, 敬一; 添盛, 浩
Citation
沖縄農業, 34(2): 14-17
Issue Date
2000-06
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1443
Rights
沖縄農業研究会
シロスジオサゾウムシの飼育
榊原充隆*(沖縄県農業試験場)・高橋敬一(国際農林水産業研究センター)・
添盛浩(沖縄県防除所)MitsutakaSakakibara,KeiichilakahashiandHiroshiSoemori:RearingoftheAsiaticpalm
weevil,RhabdbscehJs肋題tjじりZZjBHcller
緒言 シロスジオサゾウムシ助abdDsceノuMinea比o"jF Hellerはフィリピン諸島で記載されたヤシ類の害虫で あるGanks,1906).わが国では1976年に沖縄本島で トシクリヤシモドキから記載されて以来,確認が途絶え ていたが,1990年代前半に沖縄本島や石垣島でサトウキ ビへの加害が認められた.同属のカンショオサゾウムシ Ro6scurusは熱帯・亜熱帯におけるサトウキビの大害 虫であるため,サトウキビを基幹作物とする沖縄県にお ける本種の蔓延が懸念されるGJakamorieta1.,1996). 本種がどの程度,サトウキビ害虫になるかを把握する には,その寄主選好性と個体群増殖率を知ることが不可 欠である.しかし,寄主選好性や個体群増殖率を野外で 評価するには比較的長い年月を要する.そこで,室内試 験においてこれらを簡易に評価するための予備的な飼 産卵基質として,直径55mmの円形ろ紙(Watman社, #1)を半分に切り,半円形にして100枚を重ねて針金で 縛った後,寒天を含んだ蒸留水を浸した腰高シャーレ中 に入れ,煮沸し,冷却後に取り出したものを用いた.煮 沸前のこの溶液中にショ糖やウェッソン塩,サトウキビ 茎片,ニンジン根片,ココナッツ粉末等を入れ,攪桴し, この産卵基質に吸収させた.産卵選択試験には2種類の 産卵基質を同じ高さに並べて,飼育容器中央においた. また,針金のかわりにシュロ縄でろ紙を縛った場合の産 卵刺激活性も調べた.針金ないしシュロ縄は産卵試験時 には取り除いた. 成虫は25±1℃,l6L8Dの日長条件下で,上部に換気 用の5cm四方の網をつけた高さ8.5cm,直径15cmのプラ スチック製円筒形容器で飼育した.供試した成虫が産卵 可能な状態にあるかどうかb適宜サトウキビ茎ないしニ ンジン根を用いて産卵を確認し,その翌々日に飼育容器 内中央に産卵基質を24時間置いた. 2飼育試験 得られた卵はシャーレ上に敷いた,蒸留水で湿らせた ろ紙の上に25±1℃で保管し,孵化を観察した. 幼虫用人工飼料として,市販の昆虫用人工飼料であるインセクタⅢ(日本農産工業社製)3009にバガス(黒
糖抽出後のサトウキビ茎乾燥物)1009及び蒸留水900ml
を加えて,オートクレーブに入れ,121℃で16分間加熱 青試験を行った. 材料と方法 1.産卵試験 飼育個体として,石垣島名蔵の荒廃サトウキビ圃場に おいて設置したサトウキビ茎トラップに1996年1月に 誘引された雌雄成虫を各10頭ずつ供試した. *現在,東北農試地域基盤研究部15 榊原・高橋・添盛:シロスジオサゾウムシの飼育 した後に成型した飼料を作成し,孵化幼虫に供与した. 飼育容器には試験管(18×l80mmhDmDを用い,綿栓をし て乾燥を防いだ.飼育温度は25±1℃とし,日長条件が 幼虫の発育に影響を与えるかどうかを知る目的で, l1L13D,13L8,,16L8Dの3種類の日長条件下で,それ ぞれ35頭,30頭,30頭の孵化幼虫を飼育し,死亡と羽 化・脱出を毎日観察した.羽化・脱出が認められない|固 体の飼育期間は,最低でも260日とした. シロスジオサゾウムシは産卵にいたらないものと推察 された.サトウキビ茎片を入れ,煮出した溶液をしみ込 ませたろ紙に対する産卵数は比較的多く,1雌あたり1 日約0.6卵と,サトウキビをしみ込ませない対照区に対 して,有意差を示したP⑩、01,t-検定)(Hblel).卵は 外側から7~9枚目のろ紙とろ紙との間に,厚さ約5mm 程度を貫通して,産み付けられた.束にしたろ紙の下側 と上側とで,産卵場所の差は認められなかった. 飼育条件下におけるこの産卵数は,同じ場所で採集し た雌成虫にサトウキビ茎を与えた場合の,1雌あたり1 日0.5卵という結果と同等あるいはそれ以上であった (Takahashieta1.,1998).同様に,この値は Nakamorietal.(1996)が沖縄島個体群を用いてサトウ キビ茎で得た,1日あたり0.41卵という数値を上回った. これらの結果は,サトウキビ茎片に水溶性で,121℃ の熱処理でも変質しない産卵刺激物質が存在している ことを強く示唆するものであった.サトウキビ茎は雌雄 成虫を誘引することが報告されておりmakamoriet aL,1996),今後これらの物質が同一かどうかを検討して いく必要があると考えられる.誘引物質の単離・同定が できれば,本種の発生生態の検討がより簡便かつ精確な ョtesforRhabdosceluslmeaticollis. 結果と考察 1.産卵試験 雌雄成虫は供試したろ紙片の下部に潜り込み,明期に はこの下に隠れていた.ろ紙片を除去するとほとんどの 個体が擬死行動をとった.明期には産卵行動は認められ なかった.ウェッソン塩とショ糖だけをしみ込ませたろ 紙に対する産卵数は極めて少なかった.ただし,ショ糖 をウェッソン塩に加えてしみ込ませたろ紙に対しては, 産卵加工痕が1晩で14個と,かなりの頻度で認められ た.ウェッソン塩だけをしみ込ませた区では,産B肋ロエ 痕は認められなかった.従って,ショ糖はシロスジオサ ゾウムシの産卵行動を刺激するものの,ショ糖だけでは TablelChoicetestsbetweentwoelzEinE-slegging-substrates ABCDEFGH Sucrose(9) Wessonssalt(9) Agar(9) Distilledwater(、l) Sugarcanestem(9) Carrotroot(9) Coconutpowder(9) Hempcord(9) 4.0 0.5 6.8 200 50 0580 ・・・0 4062 20 0.8 10 200 080Ⅲ 2013 20 0.8 10 300 Ingredients 1.6 0.4 5.2 150 3.2 0.4 5.2 150 5.2 150 50 10 10 No.ofeggs/days/female。) n.s,(3)b) ns(5) P<0.01(5) P<qO1(8) ns(4) 、.s、(4) ns.(5) 0.0±0.00.3±0.6 0.0±0.00.0±0.0 0.6±0.30.0±0.0 0.1±0.0 0.6±0.2 000 ●■● 000 士十一十一 322 ●●● 000 0.3±0.0 0.0±0.0 0.0±0.0 .)Mean±sn b)Non-significantpitht-testat5%leveLThenumberinparenthesshowsreplicate.
16 沖縄農業第34巻第2号(2000) もの|こなると期待される. シュロ縄でろ紙を縛った場合にも,これより劣るもの の,産卵力認められたP⑩01,t-検定).シュロ縄はヤ シ科のシュロ(、五G」iyCa甲us/Munej)の繊維であ り,本来はヤシ科を加害する本種が,ヤシ科植物の繊維 中に含まれる成分にも産卵を束臘される可能性が示唆 された. ココナッツ粉末をしみ込ませたろ紙に対しても産卵 が認められた.ただし,ココナッツミルクをしみ込ませ た場合には,成虫はこのろ紙の下に潜り込み,全滅した. ニンジンをしみ込ませたろ紙に対しては産卵は認め られなかった. 産卵試験は選択試験として行ったが,供試した産卵基 質の両者とも産卵刺激性力沙ない場合,雌成虫は醐肺リ 激性が優る側に産卵することをせず,翌日以降に産DBを 持ち越すようであった. 2飼育試験 卵は25±1℃では,MO±0.55日(平均±標準偏差)
で孵化した仲盛(1996)は沖縄島産個体群を用いて本種
の25℃でのり醐間を4~5日と報告しているが,石垣島 産個体群を用いた今回の試験では産卵後4日で孵化し た個体は皆無であった.孵化幼虫のその後の発育をFiglに示した.孵化幼虫
の成虫羽化・脱出までの死亡率は11Ll3Dでは49%, l3L8Dでは43%,16L8Dでは27%と,短日になるほど 高い傾向が認められた(几2=6.11;df=2;P⑩.05). 幼虫は蝋上前になると飼料中のサトウキビ繊維を用 いて繭を作った.繭の中の発育過程を調べることを控え たため,蝋上までの日数勧虫期間)や血i額i間,羽化か ら脱出までの期間を正確に求めることは困難であった. ただし,一部の個体の繭を裂いて調べたかぎりでは蝿期 間は10日前後と思われた.死亡した個体と幼虫のまま 581470048260048260 3221 3211 3211 ■■ の一mコローン一℃E」。.◎Z HP ■■ 1060110160210Daysafterhatch
FiglLarvaIperfbmEmeofjMZBaZZmZbrearedwithtjE artificialdiet uppemCamdinllLl3D,middle:IcaMinl3LllD,andbotmm: 1℃alcdinl6L8DBlackal巳alqD1℃sentsdeadindividuals. 発育を停止した個体をのぞいた,羽化・脱出してきた個 体によって求めた,孵化から成虫羽化までの発育期間は l1L13Dでは8L2±23.9日,l3L8Dでは767±138日, l6L8Dでは693±9.5日と,長日ほど短い傾向が認められたが,有意差は得られなかった(p=0353,
Kruskal-Wallis検定). 以上,要するに,今回の飼育条件では短日条件が本種 の幼虫発育を遅延させるとする万可変は得られなかった. ただし,どの日長条件区においても発育が遅延する個体 がかなり認められた.孵化後260日を経過しても羽化.17 榊原・高橋・添盛:シロスジオサゾウムシの飼育 脱出してこない幼虫の割合はl1Ll3Dでは14%,l3L8D では20%,l6L8Dでは30%と,長日になるほど高い傾 向が認められたが,有意差はなかったい観、43;。f=2; P>005).これらの個体は飼料中で,比較的大型の幼虫態 で発育を停止していたが,行動は活発であった. 羽化・脱出した成虫は正常に交尾し,速やかに産9Nし た.従って,本種は沖縄県下の日長条件では顕著な休眠 性を持たず,25℃では,生育の速川固体なら70日程度 で次世代を生産することが可能であると思われた.沖縄 本島個体群を用いて,孵化幼虫にサトウキビ茎を与えて 飼育した試験結果も,人工飼料青とほぼ同様の発育経過 をたどり(榊原,未発表),この推察を支持した.