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服部民夫・張達重編著『日韓政治社会の比較分析』

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Academic year: 2021

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服部民夫・張達重編著『日韓政治社会の比較分析』

著者

渡辺 雄一

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

48

8

ページ

89-89

発行年

2007-08

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00007335

(2)

わた なべ ゆう いち 渡 辺 雄 一 1990年代にともに金融危機と経済不況を経験した 日本と韓国は,経済発展の過程や産業構造,産業政 策などの類似性から,政治経済学を中心にこれまで も多くの比較研究がなされてきた。近年では,日本 の小泉政権と韓国の盧武鉉政権の登場により,同時 期に起こった両国のポピュリズム的な変革型政治現 象について,比較の視点で語られることがある。本 書は,そうした時代背景のなかで,日韓の政治社会 の変動に対して政治体制や政治環境をはじめ,地方 分権や市民社会,雇用構造といった多角的な視点か ら比較分析を試みようとするところに特徴がある。 全3部,合計10章から構成される本書の概略は以 下のとおりである。第1部は,政治理念とリーダー シップについて扱っている。韓国では1987年の民主 化以降,大統領の政治的リーダーシップが政治社会 的空間において重要な役割を担ってきた。その土台 は,大統領の権限を規定する政治制度やそれが行使 される政治状況よりも,国民投票制によって選出さ れるがゆえに世論を組織化し,国民大衆に対する直 接的な説明責任を極大化できる個人的能力にある (第1章)。それに対して,日本の政治的リーダー シップは首相個人の権力行使能力や戦略よりは,と もに分権的な与党と政府の主要アクターとの相互依 存関係からなる「執政ネットワーク」に依存する(第 2章)。現在韓国で展開する政治理念の変化につい て分析を行った第3章では,従来の支配的保守主義 に対抗する新たな自由主義理念の模索と階級的進歩 主義の矮小化という三極構造へ政治フレームが再編 している現状を捉え,そうした動きの背景に民主化 運動の流れを汲んで生成した市民社会と政治社会と の相互作用を見出している。 第2部のテーマは,政党・地方自治・市民団体で ある。第4章では,市民社会から表出し,民主化運 動の課題のひとつとして始動した韓国の地方分権推 進をめぐる政治力学が検討される。韓国同様に中央 集権的ながらも,中央と地方の権限や機能,責任の 範囲が重複する日本の地方自治の融合的性格につい て考察した第5章に続き,第6章では長く日本の政 権政党として安定的な統治力を示してきた自民党の 組織的特徴を,凝集性,規律,調整力の観点から分 析している。一方で,韓国の政治社会における公的 と私的な信頼構造の乖離を考察したユニークな研究 もある(第7章)。そして第8章では,金融危機後 の韓国に相次いで誕生した左派政権下で新たに展開 される国家−社会−市場関係を,政府−市民団体− 企業間の関係から明らかにしている。そこでは,グ ローバル化と国民参与型の民主主義の台頭が同時進 行した点に着目し,公平さと福祉を模索する新たな 韓国的国家像が描かれている。 最後の第3部では,本書の流れからはやや異色な 金融政策と労働市場の日韓比較が行われている。金 融政治の日韓比較を行った第9章では,両国の工業 化過程で示された金融市場や銀行経営への政府介入 の違いが,金融危機後の政策対応の明確な違いに大 きな影響を与えたことが説明される。第10章では, 韓国における金融危機後の急速な失業率低下とバブ ル崩壊後の日本での漸増に対し,両国の労働市場構 造の形成パターン(内部か外部か)や就職口を斡旋 する人間関係ネットワークの違いといった仮説を提 示し検討を行っている。 本書は,日韓両国の研究者がそれぞれ自国の状況 を中心に論を展開している傾向が強いため,タイト ルにあるような「比較分析」が本書のなかでどの程 度有意義に行われたのか疑問が残る。また,各章で 扱われる具体的なテーマは自己完結的に収束してい る印象が拭えないため,章間あるいは全体を貫徹し 共有される問題意識がみえにくい。それでも,本書 は日韓政治社会の現状を理解し,読者自身が日韓比 較の視角を考えるうえでの良き材料を提供している。 (アジア経済研究所地域研究センター)

服部民夫・張達重編

『日韓政治社会の比較分析』

(日韓共同研究叢書1

8)

慶應義塾大学出版会 2006年 vi+321ページ 89 『アジア経済』XLVIII−8(2007.8)

参照

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