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市民社会における人間と倫理(3) : ヘーゲル『法・権利の哲学』を読む

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Academic year: 2021

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(1)市 民 社 会 に お け る人 間 と倫 理(3) 一 ヘ ー ゲ ル 『法 ・権 利 の哲 学 』 を 読 む 一 福 吉 勝 男. 〈承前〉 「市 民 社 会 に お け る人 間 と倫 理(1)」(名 古 屋 市 立 女 子 短 期大 学 研 究 紀 要 、 第55集 、1995年6月) 「市 民 社 会 に お け る人 間 と倫 理(2)」(名 古 屋 市 立 女 子 短 期大 学 研 究 紀 要 、 第56集 、1996年3月). 前 号 にお い て 、 ヘ ーゲ ル 「法 ・権 利 の 哲 学 』 の第188節 か ら第198節 まで を読 み、論 評 して きた。 本 号 で は、 第199節 か ら読 ん で い く こ とに す る。 [第199節](本. 節 か ら第208節 ま で、 「c資. 産 」 と して ま とめ られ て い る)  . 〈ヘーゲルの叙述〉  .  .  .  .  .  .  .  . ロ.  .  .  .  .  .  . 労 働 と欲 求 の 充 足 が 相 互 依 存 的 で あ る と ころか ら、 主 観 的 利 己 心 は コ.  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . あ らゆ る他 人 の欲 求 を充 足 させ る た め の寄 与 に転 化 す る。 す な わ ち、 各 人 の主 観 的 利 己 心 に よ る 自 らの た め の取 得 、 生 産 、 享 受 は ま さ に他 の人 々 の享 受 の ため の生 産 取 得 に な るの で あ る。  . 万 人 の依 存 関 係 とい う全 面 的 か らみ 合 い の 中 に存 す る この必 然 性 が 今 や、 各 人 に と って 普  .  .  .  .  .  .  .  .  . 遍 的 で 持 続 的 な 「資 産 」(Vermogen,capital)に. 他 な らな い。 各 人 は、 自分 の教 養 と技 能 に. よ って この資 産 に参 与 し、 そ の配 分 に預 か り、 そ うす る こ とに よ って 自分 の生 計 を安 全 にす る可 能 性 を与 え られ て い る。 と同 時 に、 逆 に各 人 の労 働 に よ って媒 介 され た この取 得 が 、 普 遍 的資 産 を維 持 増 大 させ る。. 〈 論 評 〉 本節に. お い て ヘ ー ゲ ル が主 と して確 認 して い るの は、 私 的利 益 の追 求 が 公 益 の. 増 進 に転 ず る こ とに つ い て で あ る。 こ う した私 益=公 益 とい う形 で万 人 が相 合 に依 存 しあ っ て い るの は、 市 民 社 会(の 構 成 員)の. あ り方 の1つ の特 徴 に他 な らな い。. この全 面 的依 存 性(万 人 の)が 各 人 に と って 「普 遍 的 で持 続 的 な 資産 」 に他 な らな い、 と の ヘ ー ゲ ル の確 認 が重 要 で あ る。 この場 合 の 「資産 」 はVermogenで. あ り、 「資 力 」 と も い. わ れ る。 要 す る に、 財 産 と と もに能 力 の意 味 が あ る。 した が って、 こ こで の 「普 遍 的 資 産 」 と は社 会 的意 味 合 いで 考慮 す る と、 翻 訳 者 が 注 記 して い る よ う に、 社会 全 体 の生 産 物 、 生 産 力 、経 済 組 織 の こ とで あ ろ う。 こ う した 社 会 的 資 産 、 組織 に各 人 は 自 らの教 養 、 技 能 に よ って参 与 し、 そ の配 分 に あず か り、 自分 の 生 計 を維 持 す る可 能 性 を与 え られ るの で あ る。 こ こで は、 社 会 と それ を構 成 す る個 々 人 と の基 本 的 な関 係 が 簡 明 に述 べ られ て い る とい え る。.

(2) [第200節]  . 〈 ヘ ー ゲ ル の叙 述 〉  .  .  .  . 特 殊 的 資 産 は 次 の2つ (Grundlage)に.  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 普 遍 的資 産 に参 与 して そ の配 分 に あず か る可 能 性、 す な わ ち個 人 の  .  .  .  . に よ っ て 制 約 さ れ て い る 。1つ. に は彼 の 直 接 的 な 基 礎 財 産. よ って、 も う1つ は彼 の技 能 に よ って で あ る。. この技 能 も また、 資 本 と諸 々 の偶 然 的事 情 に よ っ て制 約 され て い る。 これ ら多 くの偶 然 的 事 情 が各 人 の、 も と も と不 平 等 で あ っ た生 まれ つ き の身体 的精 神 的 な素 質 を 、そ の 発 達 に お い て相 違 させ る。 この相 違 が 社 会 の あ らゆ る場 面 、 段 階 に現 わ れ、 そ の他 の偶 然 的条 件 と あ  .  .  . コ.  .  .  . い ま っ て、 諸個 人 の資 産 、 技 能 の不平 等 を必 然 的 に生 み 出 す の で あ る。 生 来 の人 間 の不 平 等 を市 民 社 会 にお いて廃 止 しな いば か りか、 む しろ技 能 、 資 産 の不 平 等 へ 、 さ らに は知 的 、 道 徳 的 教 養 の不 平 等 へ も高 あ さえ す る。 市 民 社 会 に お いて は、 人 々 の 間 に こ う した様 々 な大 きな不 平 等 を もた らす けれ ど も、 人 々 の生 き、 暮 ら して い くに あ た って の諸 欲 求 とそ れ に 関 わ る諸 運 動 と の体 系 に は、 「理 性 」 (Vernunft)が. 内在 して い る。 この理 性 こそ、 この 体 系 を 諸 区別 を も った1つ の 有 機 的 全 体. に編成 す る。. 〈 論評 〉. 本 節 は、 市 民 社 会 に お け る個 人 の あ り方 と、 市 民 社 会 の 内 的 構成 の 端緒 を理 解. して い く上 で重 要 な と ころ で あ る。 まず、 次 の キ ィー ワ ー ドの意 味 の確 認 が 必 要 で あ る。 第1は 、 「直接 的 な基 礎 財 産 」 につ いて。 「直 接 的 な」 と は、 自分 自身 の労 働 に よ って獲 得 され た の で はな い と い う意 味 で あ る。 した が って 、 この 財 産 は親 か ら受 け継 い だ遺 産 の ごと き もの で あ る。 第2は 、 技 能 が 「資 本 」 と 「諸 偶 然 的 事 情」 に よ って 制 約 され る こ とに つ い て。 技 能 を修 得 す るに は教 育 を受 け る必 要 が あ る。 教育 を受 け る に は、 そ れ相 当 の資 産 ・資 本 が必 要 で あ る。 そ れ ゆえ、 技 能 修 得 は まず 資 本 に よ って制 約 され る し、 ま た そ の個 人 が技 能 修 得 に熱心 か否 か 、 家 庭環 境 や事 情 等 、 偶 然 的 な 個人 的、 家 庭 的、 社 会 的諸 事 情 に よ って 制 約 され る。 も と もと私 が 資産 ・資 本 の あ る家 に生 まれ るか、 そ れ に無 縁 の家 に生 まれ るか も、 私 に と っ て ま さ に偶 然 で あ る。 第3は 、 「諸 偶 然 的 事 情 」 が諸 個 人 の資 産 ・技 能 にお いて 不平 等 を必 然 的 に結 果 す る こ と につ いて 。市 民 社 会 の成 員 はす べ て平 等 に所 有 権 を認 め られて い るが 、 平 等 な の は権 利 だ け で あ って 、現 実 に平 等 か否 か と は無 関係 な ので あ る。 ヘ ー ゲ ル の主 張 にお い て重 要 な の は、 次 の3点 で あ る。 これ ら は、 我 々 が生 き る現 代 社 会 にお い て も基 本 的 に指 摘 しえ る事 柄 で あ る。 第1は 、 市 民 社 会 構 成 員1人. ひ と りの条 件 の 相 違 と、 各 人 に お け る諸 能 力 上 で の発 達 の 違. い との 関連 と い う点 で あ る。 市 民 社 会 を構 成 す る成 員1人 ひ と りの お か れ て い る条 件 、 環 境 は 当然 な が ら様 々 に異 な っ て い る。 そ の結 果、 各 人 の 身体 的精 神 的 素 質 の発 達 に お いて 相 違.

(3) を見 せ、 ま た知 的道 徳 的教 養 の面 で 不 平 等 を引 き起 こす と ヘ ー ゲル は い う。 第2は 、 第1の 各 人 に お け る相 違 や 不 平 等 を市 民社 会 が 廃 止 す るの で はな く、 む しろ拡 大 、 増 進 させ さえ す る とい う点 で あ る。 この こ と は、 「私 が何 を ど れ だ け 占 有 す るか は1つ 的 偶 然 で あ る」(第49節)と. の法. の指 摘 事 項 に 関 わ る。 す な わ ち、 市 民 社 会 に お け る各 人 す べ て. に対 す る平 等 な所 有 権 の承 認 とい わ れ る場 合 の 平 等 は、 権 利 にお いて だ け で あ って、 実 質 的 に は大 きな相 違 、 不 平 等 が法 的、 制 度 的 に保 障 され、 固定 され、 拡 大 され るの で あ る。1) 第3は 、 こ う した市 民 社 会 に も理 性 が 内 在 して い る とす る点 で あ る。 市 民 社 会 に お け る第 1と 第2の 点 だ けの確 認 で終 わ るな ら、 そ の 市民 社 会 と いわ れ る もの は、 もは や人 間 の 社 会 で は な くて、 動 物 の弱 肉強 食 の世 界 に他 な らず、 そ こに は混 乱 と無 秩 序 しか存 在 しな い で あ ろ う。 しか し、 ヘ ー ゲ ル は各 人 に相 違 と不平 等 を生 み 出 し拡 大 させ る市 民 社 会 に も、 自 らを 1つ の 「有 機 的全 体 」 に編 成 す る理 性 の 力 を認め るの で あ る。 この場 合 の 「有機 的全 体」 は、 ヘ ー ゲ ル に お い て積 極 的意 義 を有 す る事 柄 で あ る。 相 違 や不 平 等 とい う消 極 的 ・否 定 的側 面、 あ るい は 内容 を 内 に含 み、 む しろ そ れ を契 機 に して有 機 的全 体=市 民 社 会 を構 成 す る との 考 え で あ る。 問題 は、 この 「有 機 的全 体 」=市 民 社 会 を構 成 す る 「理 性 」 の具 体 的 内容 は何 で あ り、 そ の構 成 の仕 方 、 特 徴 は どの よ うな もの な の か、 そ して直 接 的、 具 体 的 に は、 先 の相 違 や不 平 等 が どの よ うに して積 極 的 な ものへ と転 化 な い しは補 填 、 解 消 され る とす る のか と い う こ と で あ る。 次 節 以 下 で の最 大 の課 題 は、 この点 に集 約 さ れ る と思 う。. [第201節] 〈 ヘ ー ゲ ル の叙 述〉  市民社会. 構 成 員 の諸 欲 求 を充 足 させ るため の多 種 多 様 な手 段 と、 構. 成 員 全 員 が相 互 的 に行 な う生 産 及 び交 換 にお い て、 これ ら諸 手 段 が 限 りな く交錯 し合 う運動 、  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . この両 者 は各 々 に 内在 す る一 般 的 共 通 性 に よ って、 諸 々 の一 般 的集 団 に区 別 され る。 こ う して全 連 関 が、 欲 求 、 手 段 、 労 働 の特 殊 的体 系 に、 ま た欲 求 を充 足 させ る仕 方 ・方 法  .  .  .  .  . の特 殊 的体 系 に、 そ して理 論 的 、 実 践 的教 養 の特 殊 的 体 系 に つ く り上 げ られ る。 諸 個 人 が割  .  . り当 て られ て い る この諸 体 系 が 、 「(社会)階 層 」(Stand,class)2)の. 〈補遺〉. 区別 で あ る。. 普 遍 的資 産 に参 与 して そ の配 分 に あず か る仕 方 ・方 法 は、 諸 個 人 そ れ ぞ れ の特. 殊 性 に ゆ だ ね られ て い る。 しか し、 こ う した 「市 民 社 会 の特 殊 化 」   市 民 社 会 にお け る諸 個 人 の社 会 的資 産 へ の参 与 、 配 分 方 法 で の 区別   に相 違 が あ る の は必 然 的 な こ とで あ る。 国 家 の第1の 土 台 が 家 族 で あ り、 「階 層 」 は第2の 土 台 で あ る。 この 第2の. 土 台 が重要 な. の は、 私 的 人 格 は利 己的 で あ る に もか か わ らず 、 他 人 の こと を顧 み ざ るを え な い とい う必 然 性 を も って い る た めで あ る。 こ こに、 利 己心 が普 遍 者 た る国 家 に結 びつ く根 が あ る。. 〈 論 評 〉   市 民 社 会 にお け る 「特 殊 性 」 の理 解 が 最 も重 要 な点 で あ る。 この 特殊 性 を 指 摘.

(4) した と こ ろに、 ヘ ーゲ ル の偉 大 さ と と も に、 ヘ ー ゲ ル理 論 の 最 大 の弱 点 が あ る とい え るか も しれな い。 特 殊 性 に 関 して考 え な けれ ば な らな い第1の 点 は、 この 特殊 性 ぬ きの個 別 と普 遍 だ け で存 立 して い る事 態 で あ る。 お お よ そ想 定 され るの は、 次 の2つ の事 態 で あ る。 1つ は、 普 遍 を無 視 した り、 ま た普 遍 との絶 対 的対 立 の も とで個 別 だ け が存 立 して い る場 合 。 本 節、 「補 遺 」 に お け る ヘ ーゲ ル の い い方 に従 え ば 、 個 別=個 々 人 、 普 遍=国. 家 と して. 先 の事 態 を考 え れ ば よ い。 個 々人 は 自己 の 利益 の み を追 求 して、 他 人 の こと、 国家 の こ とな ど もち ろん 眼 中 に な い振 る舞 い方 で あ る。 人 間集 団 は、 弱 肉 強食 の無 秩 序 の状 態 に あ る とい え る。 ヘー ゲ ル の い う 「精 神 的動 物 界 」(『精神 の現 象 学 』)と い った と こ ろか 。 も う1つ は、 個 別 と普遍 が直 接 的 一 体性 に あ り、 個 別 が普 遍 に、 個 々人 が共 同体(国 家)に 埋 没 して い る 事 態 で あ る。 この場 合 は、 古 い共 同体 が イ メー ジ さ れ、 そ こで は個 々人 の 自立 が確 立 して い な いの で あ る。 こ う した2つ の事 態 は、 と もに不 正 常 で あ る。 不 正 常 な事 態 を解 消 し、 克 服 して い く措 置 が ヘ ーゲ ル に あ って 「特殊 性 」 で あ る。 個 別 一特 殊 一普 遍 と図 式 化 で き る よ うに、 個 別 と普 遍 との 媒介 項 と して 特 殊、 つ ま り(市 民)社 会 が 位 置 づ け られ る。 国 家 反逆 の テ ロ行 為 や戦 時 な ど の非 常 時 の場 合 は、 この特 殊=(市. 民)社 会 の項 が ほ とん. ど効 力 を有 して い ない。 これ に対 して、 平 時 の場 合 や 、 健 全 な(社 会)の 時 で あれ ば あ る ほ ど、 市 民社 会 が豊 か に光 り輝 い て い る とい え る。 市 民 社 会 が豊 かで 光 り輝 いて い る と い うこ と は、 その構 成 員 が そ うで あ る こ とを意 味 す る。 した が って、 個 人 一国家 関係 だ け に集 約 され な い市 民 社 会(特 殊)の 独 自 の意 味 と役 割 に 注 目 した ヘ ー ゲ ル は、 西洋 思 想 史 上 で 際立 つ思 想 家 で あ る とい え る。 ヘ ーゲ ル の指 摘 す る特 殊 性 に関 して考 え な けれ ば な らな い第2の 点 は、 次 の こ とで あ る。 市 民社 会 の構 成 員 個 々人 が、 それ ぞ れ異 な った様 々 な欲 求 を もち、 また様 々 な手 段 や 方 法 で 欲 求 を充 足 させ る こ と は、 ヘ ーゲ ル の指 摘 ど お りで あ る。 ま た、 個 々人 が異 な っ た理 論 的 、 実 践 的教 養 も身 につ け る こと もそ の と お りで あ る。 こ う して、 ヘ ーゲ ル は諸 個 人 が 社 会 的 資 産 へ の参 与 を配 分 方 法上 で違 いが あ る、 区分 け され る必 然 性 と、 そ こに あ る、 あ る い は その 際 に現 れ る不 平 等 とを 同一 視 して い る点 で 問題 だ と私 は考 え る。 む し ろ、 前 節 まで に お い て、 ヘ ー ゲ ル は市 民社 会 にお け る個 々人(に 関 す る)の 不 平 等 を 指 摘 して お きな が ら、 そ の不 平 等 の原 因 を解 決 す る方 法 を根 本 的 に見 い 出す 方 向 に進 まず に、 各 人 間 の不 平 等 を 各人 間 の相 違、 区 分 けへ 置 き直 して しま っ た と いえ るの で はな いか。 この 点 が、 ヘ ーゲ ル の 考 え の最 大 の弱 点 に行 き着 くか も しれ な い。 した が って 、 各 人 の特 殊 問 題 の 追 求 は、 「階層 」(Stand)問. 題 へ と導 い て い た。. こ の社. 会 階層 は不 平 等 の 問題 で は な く、 階 層 上 の違 い、 区分 け に他 な らな い。 た だ し、 ヘ ーゲ ル も 不 平 等 問題 を ま った く忘 れ たわ けで は な いで あ ろ う。 以 下 の節 で の ポイ ン トは、 社 会 階層 問 題 の展 開 を 通 して、 不 平 等 問 題 が 再 び ど う扱 わ れ、 解 決 され よ う とす るの か とい う こ とで あ.

(5) る。. [第202節]  . 〈 ヘ ー ゲ ル の 叙述 〉(社.  .  . の.  . 会)階 層 は、 概 念 に した が って 、 第1に 実 体 的 な い し直 接 的 階  .  .  .  .  .  . 層 、 第2に 反 省 的 な い し形 式 的 階 層 、 第3に 普 遍 的 階 層 と して 規 定 され る。. 〈 論 評 〉-3つ. の社 会 階 層 につ い て の詳 細 な説 明 は、 次 節 か ら行 な わ れ る。 した が って 、. 階 層 につ いて の立 ち入 った コ メ ン トは こ こで は必 要 な い と思 う。 た だ し、 次 の2つ の 点 につ い て 少 しふ れ て お きた い。 第1は 、 概 念 に した が って の3つ の 階層 へ の 区 別 につ い て 。 第2 は、 階 層 の 意 味 に つ い て。 第1の 概 念 によ る区 別 と は、 こ う い う こ とで あ る。 個 別 と普 遍 との 直 接 的 一 体 性 に あ る の が 「実 体 的 階 層」、 反 省 に よ る この一 体 性 の分 裂 に よ って成 立 す るの が 「反 省 的 階層 」、 分 裂 を 通 じて 普 遍 性 が 回 復 して い るの が 「普 遍 的 階 層 」 で あ る。 こ こ に、 ヘ ー ゲ ル 論 理 の 適 用 を は っ き りとみ て と る こ とが で き る。 第2の ヘ ーゲ ル の い う 「階 層 」 は、 経 済 社 会 と して の 「欲 求 の体 系 」 の 中 の 「特殊 的体 系」 で あ り、 経 済 的 な もの で あ る。 ヘ ーゲ ル の い う階 層 にお いて は、 職 業 選 択 の 自 由が 認 め られ るか ら、 階 層 の 区 別 は職 業 の 区 別 と ほ とん ど同 義 で あ る。 こ う した 意 味 で 、 こ こで の 階 層 は 中 世 の 身分 一 一あ る身 分 か ら他 身 分 へ の 転 移 が 不 可 能 で あ って 、 政 治 的 な 意 味 あ いを 有 して いた   と は異 な る とい え る。 ただ し、 ヘ ーゲ ル の 説 明 す る階 層 も議 会(構 成)と の か らみ で 、 政 治 的 意 義 が 付 与 され る。 これ につ いて は、 後 に検 討 す る こと にす る。. [第203節]  .  .  .  . 〈 ヘ ー ゲ ル の 叙 述 〉   第1の 実 体 的 階 層 は、 自分 が 耕 す 土 地 の 自然 的 産 物 を 己 の資 産 とす る。 土 地 は排 他 的 私 的 所 有 た り うる もの で あ る。  . 労 働 と取 得 とが 、(イ)そ.  . れ ぞ れ別 々 の特 定 の季 節 に結 びつ いて い る、(ロ)収. 益 が 自然 条  .  . 件 に 大 き く左 右 さ れ る 、 こ う し た こ と に 備 え て 、 こ の 階 層 に あ っ て は 将 来 に 備 え て 諸 々 配 慮 さ れ る 。 こ う した 諸 制 約 の た め に 、 こ の 階 層 は 家 族 関 係 と信 頼 に 基 づ く直 接 的 倫 理 の 実 体 的 心 指 し(Gesinnung,disposition)3)を. 保 持 す る。  .  .  .  . 国 家 の 始 ま り と最 初 の 建 設 が 、 婚 姻 制 と農 業 の創 始 に あ る とす る考 え は正 しい。なぜ な ら、 農 業 の 原 理 は土 地 の 形 成 と と もに排 他 的 私 的 所 有 を伴 う もの で あ り、 野 蛮 人 の流 浪 生 活 を、 私 法 に よ る平 穏 な 状 態 と欲 求 充 足 の保 障 され た状 態 とへ 導 くか らで あ る。 そ して これ に と も ロ.  .  .  .  .  . の.  .  .  .  . な って 、 性 愛 が 婚 姻 へ と制 限 され 、 それ に よ って 家 族 に対 す る配 慮 、 家 族 財 の確 保 ・拡 大 が 重 要 視 され る よ う にな るか らで あ る。 欲求充足の保障、確保、持続 など. 農 業 と婚 姻 の制 度 の創 始 に密 にか らむ   の これ ら. の 特 徴 は、 普 遍 性 の 諸 形 式 に他 な らず 、 理 性 的 本 性 が これ らの対 象 にお い て現 わ れ る諸 形 態.

(6) に他 な らな い。 (以 下 、 略). 〈 補 遺 〉   現 代 で は、 農 業 経 営 は工 場 の よ うに反 省 的 方 法 で も行 な わ れ る。 そ れ ゆ え 、 農 業 は第2階 層 の性 格 を も帯 び る。 しか し、 それ で も この 第1階 層 は家 父 長 的 生活 様 式 と、 こ う した生 活 につ き もの の実 体 的心 指 しを持 ち続 け る で あ ろ う。人 間 は こ う した第1階 層 にあ っ て は、 与 え られ授 け られ た もの を直 接 的 な感 情 を も って 取 り上 げ 、 これ を神 に感 謝 し、 神 の この慈 しみ が いつ まで も続 くだ ろ うと い う敬虔 な信 頼 に生 き る。(以 下 、 略) この 階層 に あ っ て は、 自然 が主 役 を演 じる ので あ り、 これ に 比 べ れ ば、 自己 の勤 勉 は従属 的 な もので あ る。 と こ ろが 、 第2階 層 に あ って は、 悟 性(知 性)が 本 質 的 な役 割 を な す の で あ って、 自然 的 産 物 は材 料 とみ な され る にす ぎ な い。. 〈 論 評 〉   第1の 実 体 的 階層 は農 業 生 産 者 で あ り、 この 生 産 者 に関 わ るヘ ー ゲ ル の特 徴指 摘 は お お む ね妥 当 な もの で あ る。 重 要 な点 を再 確 認 して お く。 1つ に は、 農 業 生 産 は季 節 等 の 自然 条 件 に根 本 的 に規 定 され る とい う こ とで あ る。2つ. に. は、 農 業 生 産 の基 礎 に な る土 地 は排 他 的 私 的 所 有 た り う る とい う点 で あ る。 この こ とに つ い て は、 土地 に 関 す る近 代 的 所 有 権 の尊 重 の視 点 に ヘ ー ゲ ル が 立 って い る こ との証 で あ り、 注 目 して お くべ き こ とで あ る。3つ. に は、 き わ め て現 代 的 な 農 業 経 営. 工場 の よ うな. に. も注 目 して い る こ とで あ る。4つ. に は、 〈 農 業 一婚 姻 一家 族 〉 の 図 式 の 中 で の農 業 生 産 者 間. に っ き もの の生 活 様 式 、 倫 理 の あ り方 につ い て の 指 摘 が 重 要 で あ る。 この点 に つ い て、 私 は 少 し詳 し く論 評 して お きた い。 ヘ ー ゲ ル は、 農 業 生 産 者 は 「家 族 関 係 と信 頼 に 基 づ く直 接 的 倫 理 の 実 体 的 心 指 し (Gesinnung)」. を保 持 す る とい う。 農 業 は、 ヘ ー ゲ ル が 指 摘 す る まで もな く、 原 野 を 耕 や し. 厳 しい 自然 条件 に制 約 され て、 家 族 の長(夫. で あ り、 父 親)を 中 心 と した家 族 構 成 員 が一 丸. とな って勤 労 す る こ とを特 徴 と して い る。 したが って 、 家 族(構 成 員)の 生 活 上 で の基 本 的 な 態 度 と して は、1つ. は 自然 へ の 直接 的 な感 情 で あ り、 も う1つ は家族 の長 へ の 直接 的 な感. 情 で あ る。 前 者 は、 人 間 を も含 め た 自然 界 全体 を支 配 す る 神 へ の 感 情 に他 な らな い。 収 穫 前 に は農 作 を 神 に祈 り、 実 り多 い秋 を迎 え れ ば、 これ を神 に感 謝 し、 神 へ の敬虔 な信 頼 感 を強 め る こ と にな る。 後 者 にあ って は、 家族 の長 は妻 や子 供 らの た め に、 家 族 財 の 確 保 ・拡 大 を何 よ り も重 視 し な けれ ばな らな い。 変 わ りや す く厳 しい 自然 条 件 に農 業 生 産 は制 約 され るが ゆ え に な お の こ と、1回 限 りの 実 り多 い収 穫 に満 足 し、 そ れ を消 費 す る こ と に喜 び を見 い 出 して ば か りで は い られ な い ので あ る。 こ こ に は、 自分 の生 命 を か けて も家 族 へ の 生 活上 で の保 障 を確 保 しな けれ ば な らな い厳 しい 姿 が 浮 か び 上 が って くる。 これ が 、 家 族 へ の 直接 的 な無 私 の愛(情).

(7) な の で あ る。 と同 時 に、 家族 員 に よ る家 族 の長 へ の 信頼 も、 自分 た ち の生 命 と財 産 を 懸 命 に な って 維 持 して くれ て い る とい う意 味 で、 絶 対 的 とい え る ほ どの もの で あ る。 した が って、 絶 対 的 信 頼 とい う意 味 で は、 家 族 全 員 の神 に対 す る もの と、 家族 員 の家 族 の 長 に対 す る もの と は同 一 、 パ ラ レル だ とい って よ い。 そ れ ほ どの 強 い 結 び つ きが後 者 に は あ る と いえ る。 同 時 に、 この 強 固 さを裏 返 して いえ ば 、 家 族 の長 の 家 父 長 的 位 置 づ け(態 度) と い うこ と に もな り うるわ けで あ る。 ここで は当 面 、 個 々 人 の独 立 した人 格 の 尊 重 な り、 これ に関 わ った 倫 理 の あ り方 は 問 題 に な らな い。 ヘ ーゲ ルの い う 「家 族 関係 と信 頼 に基 づ く直 接 的 倫理 の 実 体 的 心 指 し」 と は、 以 上 の よ うな こ とを 意 味 して い る と私 は考 え る。. [第204節]  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 〈 ヘ ーゲ ル の 叙 述 〉   第2の 商 工 業 階 層 は、 自然 的 産 物 を 形 成 す る こ とを仕事 と して い る。  .  .  .  . そ して、 この階 層 の生 計 の手 段 は 自己 の 労 働 、 反 省 、 知 性 を 頼 りと し、 ま た本 質 的 に 自 己 の 欲 求 及 び労 働 を他 人 の欲 求 及 び労 働 と媒 介 す る こ とを頼 りと して い る。 この階 層 の仕 事 は、 さ らに次 の よ う に区 分 され る。(イ)個  .  . 々 の欲 求 を か な り具 体 的 な や  .  .  . り方 で、 個 々人 の求 め に応 じて満 た す 労 働 に たず さ わ る手 工 業 階 層 。(ロ)い  .  .  .  . な需 要 に応 じる抽 象 的 な大 量 生 産 労 働 に たず さ わ る工 業 家 階 層 。(ハ)主 換 手 段=貨 幣(全. っ そ う一 般 的.  . と して 普 遍 的 な 交. て の商 品 の抽 象 的 価 値 が 現 実 に存 在 して い る)に よ って 、 諸 手 段 を 相 互 に  .  .  .  . 交 換 す る仕 事 に たず さわ る商 業 階 層 。. 〈 補 遺 〉   商 工 業 階層 に属 す る個 人 は 自 己 を頼 り と して い る。 この 自負 は 自 由 と秩 序 に対 す る感 覚 と結 びつ い て お り、 したが って これ は都 市 で芽 を 出 した。 第1階 層 は 自然 へ の従 属 感 が第1の. もの で あ り、 屈 従 へ の傾 向 が強 い の に対 して 、 第2階. 層 は よ り多 く 自由 へ の 傾 向 を も って い る。. 〈 論 評 〉   第2階 層 に属 す るの は、 ヘ ー ゲ ル に よ る と、 手 工 業 者 、 工 業 関 係 者(資 本 家 だ けで な く工 場 労 働 者 も含 む)、 商 業 従 事 者 で あ る。 彼 らが 生 計 を営 む手 段 上 で の 特 徴 は、 一 人 ひ と り 自か らの 力(「 労 働 、 反 省 、 知 性 」)を 頼 と して い る点 で あ る。 こ こか ら、 彼 らの倫 理 観 にお い て、 次 の こ とが 明 らか に な る。 第1階 層 は、 自然 の 恵 み の も とで の土 地 と一 体 とな って生 き、 そ の 自然 、 土 地 と関 わ る家 族 構 成 員 はそ の長 と一 体 と な って生 き る。 した が って、 自然 に対 す る家族 と、 家 族 の長 に対 す る個 々 の構 成 員 と の関 係 はパ ラ レル で あ り、 と も に後者 の前 者 に対 す る信 頼 感 と と も に従 属 感 が 濃 厚 で あ る。 これ に対 して 、 第2階 層 で は、頼 り にな る のが あ くまで も個 人 で あ り、 個 人 の 力 な の で あ る。 頼 る もの は個 人 、 己 れ しか な い との い い方 に は悲 壮 感 が 伴 な う の は確 か であ る。 しか し、.

(8) 自己 の力 で 何 事 も可 能 との 自負 の 気 持 が 前 面 にで るの は 間 違 い な い。 こ の 自負 が 「自由」 へ の感 覚 と結 びつ くわ けで あ る。 倫 理 問 題 と して は、 この 自由 の 精 神 の発 達 とい う こ とが 最 も 重 要 で あ る。 歴 史 的 にみ て も、 商 工 業 者 た ちが 大 き く成 長 し始 め た 中近 世 期 で の 都 市 の形 成 と、 そ こで の人 々の 意 識 ・価 値 観 の変 化 が 、 先 の こ とを如 実 に物 語 って い る と いえ る。. [第205節]  .  . コ.  . の.  .  .  .  . の. 〈 ヘー ゲ ル の 叙 述 〉   第3の 普 遍 的 階 層 は、 社 会 の普 遍 的利 益 追 求 を 己 れ の仕 事 とす る。 したが って 、 この 階 層 は私 有 の 資 産 に よ って か、 この階 層 の活 動 を要 求 す る国 家 に よ って補 償 され るか して 、 自分 の 欲求 充足 の ため の 直接 の労 働 か ら解 放 され て い な けれ ば な らな い。. 〈 論 評 〉   本 節 で の ヘ ーゲ ル の主 張 は 明瞭 で あ る。 普 遍 的 階 層 に属 す るの は、 具 体 的 に は 第202節. で も確 認 した よ うに、 官 吏 ・公 務 員 と軍 人 で あ る。. 官 吏 ・公務 員 の 中 に は、現 代 風 に いえ ば、 国 家 公 務 員 も地 方 公 務 員 も含 まれ 、 ま た地 方 ・ 国 政 レベ ル の政 治 家 も含 まれ るで あ ろ う。 彼 らは 自分 の 欲 求 を充 足 し、 利 益 追 求 の た め の労 働 が 免 除 され るか わ りに、 余 裕 の あ る私 有 資 産 か 、 ほ とん どの 場 合 、 国 家 に よ って 生 活 が 補 償 され る。 した が って、 彼 らの 唯 一 の仕 事 は 社 会 の普 遍 的 利益 を 追 求 す る こと、 これ しか な い。. こ. こに ズバ リ、 普 遍 的 階層 の身 の処 し方 、 振 る舞 い方 の基 本 、 つ ま り倫 理 のあ り方 が 明 示 され て い る とい え る。 ヘ ー ゲ ル は後 に詳 し く述 べ る はず で あ るが 、 「公 共 の福 祉 」 の た め とか 、 「愛 国 心 」 か らと い った ことが 中 心 に な るは ず で あ る。. [第206節] 〈 ヘ ーゲ ル の叙 述 〉. 個 人 が ど の 階層 に 属 す るか に は、 気 質 、 生 まれ、 境 遇 が影 響 を及 ぼ  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . す。 しか し、 本 質 的 に究 極 の決 定 を下 す の は、 個 々人 の主 観 的意 見 や 特殊 的 自由意 志 で あ る。 市民 社 会 に お い て は、 こ う した主 観 的 意 見 や特 殊 的 自 由意 志 の、 権利 ・功 績 ・名 誉 が認 め ら  .  .  .  . コ.  .  .  .  .  .  .  .  .  . れ て い る。 したが って、 市 民 社 会 で 内 的必 然性 に よ って生 じる もの は、同 時 に自由意 志 に よ っ  .  .  .  .  .  .  .  . て媒 介 さ れて お り、 主 観 的意 識 に と っ て は 己 れ の意 志 の な す業 で あ る とい う姿 を呈 す る。 特 殊 性 の原 理 や 主 観 的 自由 意 志 の原 理 に 関 して、 東 洋 と西 洋 、 古 代 世 界 と現代 世 界 とで は、 そ の政 治 生 活 にお い て違 いが 現 れ る。 社 会 全 体 の諸 階 層 へ の区分 にお いて 、 東 洋 や古 代 世 界 で は主 観 的特 殊 性 の原 理 が 権 利 を得  .  .  .  . て い るわ けで は な い。 例 え ば、 プ ラ トンの 『国 家」4)に お け る叙 述 や 、 イ ン ドの カ ー ス トを み よ。 しか し、 西 洋 の 近 代(ヘ ー ゲ ル の 現 代)で. は、主 観 的 特 殊 性 は客 観 的秩序 と適 合 させ られ、. 同時 に この秩 序 の 法 の中 で維 持 され るか ら、 この特 殊 性 は市 民 社 会 の あ らゆ る生 動 の 原 理 、.

(9) 思 惟 活 動 発 展 の原 理 、 功 績 と名 誉 の原 理 とな る。  .  .  .  .  .  .  . 市 民 社 会 や国 家 に お い て、 理 性 に よ って必 然 的 に存 在 す る もの は、 同時 に 自 由意 志 に よ っ  .  .  .  .  .  . て 媒 介 さ れ て生 じな け れ ば な らな い と い う こと、 こ の こ と の承 認 と権 利 こそ、 自 由 の い っそ う進 ん だ規 定 な の で あ る。. 〈 論 評 〉   個 人 が3つ の階 層 の ど れ に属 す る か を決 す る本 質 的 な要 素 ・要 因 は何 か は重 要 で あ り、 興 味深 い点 で あ る。 ヘ ー ゲ ル は、 そ れ は 「主 観 的 意 見 」 や 「特 殊 的 自 由意 志 」 で あ る と い う。 この意 見 や 自 由意 志 と は、 個 々人 の主 体 的 で 自主 的 な考 え の こ とで あ る。 重 要 な の は、 個 々人 の とい う こ とと能 動 的 に とい う こ とが 主 要 に関 与す る とい う点 であ る。 した が っ て、 ヘ ー ゲ ル が市 民 社 会 で 「内 的必 然 性 」 に よ って生 じる と ころ の もの とい うの は、 い うま で もな く労 働 市 場 に お け る労 働 力 の需 給 関係 を さ す の で あ る が、 この需 給 関係 も 「自 由 意 志 に よ って媒 介 され」 て お り、 個 々人 の 「己 れ の意 志 の な す業 」 を な す とは、 与 え られ た 内 容 に 関 す る 「選 択 の 自由」 で あ る 自 由意 志 に よ って媒 介 さ れ て い る とい う形 で、 個 々人(の. 意. 志)が 能 動 的 に、 本 質 的 に 関与 して い る とい う こ とを表 現 して い るわ け で あ る。 も っ と分 か りや す くい え ば、 あ る個 人 が どの よ うな 階層 に属 し、 い か な る職 業 に従 事 して い るか は、 市 場 に お け る需給 関係 に よ って決 定 され、 そ の決 定 の と ころ に個 々人 の選 択 の 自 由=自 由意 志 が働 い て い る とい う こ とで あ る。 こ う した(市 民)社. 会 に お け る個 人 の あ り方 、 あ る い は(市 民)社 会 と個 人 との 関係 の仕. 方 は、 す ぐれ て 西 洋近 代 の もの で あ って、 決 して古 代 や東 洋 世 界 の もの で は な い。 この 個 人 の特 殊 的意 志 、 自由 意 志 が能 動 的 に機 能 し、 効 力 を有 して い な けれ ば、 市 民 社 会 や 国 家 の何 物 も存 在 しえ な い と され る。 この個 々人 の 自由意 志 こそ、 市 民 社 会 の あ らゆ る生 動 の 原 理 で あ る とヘ ー ゲ ル は い うの で あ る。 こ う した 市 民 社 会 の 中 で の個 人 の あ り方 、 あ るい は市 民 社 会 と個 人 と の 関 係 の仕 方 に、 「自 由」 の い っそ う進 ん だ規 定 が あ る と ヘ ー ゲ ル は確 認 して い る。 ま さ に こ の点 に こ そ 、 市 民 社 会 に お け る個 人 の 倫 理 問題 に 関 す るキ ィー ・ポ イ ン トが あ る と いえ る。. [第207節]  . 〈ヘーゲルの叙述〉 [諸階 層]の1つ.  .  .  . frame   .  .  .  . に局 限 す る こ とに よ って だ け で あ る。 した が って、 こ こ で の 倫 理 的 心 指 し  . (Gesinnung, . の. 個 人 が 現 実 性 を 獲 得 す るの は、 自分 を ひ と え に欲 求 の特 殊 的 な 圏. of  mind, . disposition)は.  .  . 実 直 さ(Rechtschaffenheit)[第150節. 参 照].  . と階 層 上 の 誇 りで あ る。 誇 り と は こ うい うこ とで あ る。 各 個 人 は 自分 自身 の 決 定 に よ り、 自分 の 活 動 、 勤 勉 、 技 能 を 通 じて 市 民 社 会 の成 員 とな り、 成 員 と して 自分 を 普 遍 的 な も の と媒 介 す る こ と に よ って の  .  .  .  . の. み 自 分 の た め に 配 慮 し、 ま た こ う す る こ と に よ っ て 社 会 的 に 承 認 さ れ て い る と い う こ と で あ る。.

(10)  .  . 道徳(Moralitat)が. そ の固 有 の場 を もつ の は、 この 圏 にお い て で あ る。 こ の 圏 に お い て. は、 自分 の行 動 に対 す る反 省 、諸 特 殊 的 欲 求 と福 祉 との 目的 が支 配 的 で あ るか らで あ る。 ま た 、 これ らの欲 求 と福 祉 を充 足 させ る に あ た って偶 然 性 が 働 く とい うの は、 他 人 に対 す る偶 然 的個 別 的 援 助 を も義 務 た ら しめ るか らで あ る。 個 人 は、 最 初 の うち は[特 に若 い と き に は]、1つ. の特 殊 な 階 層 に属 す る決 心 を す る と い  .  .  .  .  . の. り. う考 え方 に反 抗 して、 そ うす る こ とを 自分 の普 遍 的使 命 の制 限 、 たん に外 面 的 な必 然 性 と み な す。 しか し、 こ れ は彼 の考 え が抽 象 的 で あ るた め で あ る。.  . 〈補遺〉.  .  .  . ほ.  .  . 人 間 が ひ とか どの人 物(etwas,somebody)で. な けれ ば な らな い と い う こ と. の意 味 は、人 間 は一 定 の階 層 に属 す べ き だ と い う ことで あ る。 そ の理 由 は、 こ の 「ひ とか ど の人 物 」 とい うの は、 人 間 はそ の さい 何 か 実 体 的 な もの で あ る、 と い うこ と を い お う と して い るか らで あ る。 階層 に属 さな い人 間 は たん な る私 的 人 格 で あ り、現 実 的 普 遍 性(wirkliche. Allgemeinheit). の な か に位 置 を 占 めて い な い。(以 下 、 略). 〈論評〉. 個 人 が 現 実 性 を獲 得 す る、 つ ま り 「ひ とか ど の人 物 」 で あ る と認 め られ 、 社 会. 的 に承 認 され る に は、 一 定 の社 会 階 層 に属 さ な けれ ばな ら な い。 した が って 、 こ こで の 倫 理 の あ り方 の ポイ ン トを なす もの は、 「実 直 さ」 と階層 上 の 「誇 り」 で あ る。 実 直 さ につ い て は、 す で に第150節 で詳 し く述 べ られ て い るの で省 略 す る。 で は 、 階 層 上 の誇 りと は何 か。 そ れ は こ うい う もの で あ る。 他 な らぬ 自分 自身 の意 志 に よ る決 断 に よ って 市 民 社 会 の一 員 に な り(一 定 の階 層 に属 す る)、 自分 自身 の努 力 と技 能 と に よ り市 民 社 会 の 中 で他 の成 員 と関 わ り、 彼 らの た め の働 きを 通 して 自分 自身 に配 慮 す る、 こ う して市 民 社 会 に お いて 自己 の存 在 意義 が認 め られ て い る、 と い う こ とで あ る。 こ こに は、 〈 自力 で〉 とか く 自立 して〉. とい う自信 に満 ち た もの が み られ 、 同 時 に 自. 分 自身 へ の配 慮 が(市 民)社 会 の た め を な して い る との 自 覚 が あ る。 こ う した と こ ろ に 、 「階 層上 の誇 り」 と ヘ ー ゲ ルが よぶ 内 実 が あ る とい え る。 社 会 の た め の活 動 で あ っ て も、 他 者 か らの 強制 に よ る もの で あ れ ば、 強 い誇 りの感 情 は生 じな い。 ま た、 〈 自力 で〉 、<自 立 して〉 とい う こ と が い く ら強 調 され て も、 そ こで な され る事 柄 が たん に 自分 自身 だ け の 欲 求 を充 足 させ 、 自 己 自身 の配 慮 で しか な い場 合、 つ ま り他 者 や社 会 を意 識 しな い もの な ら、 そ こ に は 「誇 り」 な る感 情 は生 じな い で あ ろ う。5) 本 節 に お け る ヘ ー ゲ ル の主 張 で 、 も う1つ 注 目 して お くべ き点 は、 「道 徳 」 が こ こ で そ の 固 有 の場 を もっ と述 べ られて い る こ とで あ る。 「道 徳」 に つ いて は、 第2部. で 詳 し く説 明 さ. れ て い るが、 道 徳 の特 徴 を一 言 で いえ ば、 そ れ は特 殊 的 主 観 の立 場 に お い て成 立 す る もので あ り、 そ の権 利 は 「特 殊 性 の権 利」(第24節 、 注 解)、 「主 観 的意 志 の権 利」(第107節)で た。 したが って 道 徳 は、 「特 殊 性 の原 理 」(第185節)を. あっ. 第1の 原 理 とす る 市 民 社 会 に お い て.

(11) 「そ の 固有 の場 」 を もつ わ けで あ る。 確 か に、 第2部. の 「道 徳 」 と第3部. の 「市 民 社 会 」 に お け る 当 該 ヵ 所 とで は 、 そ れ ぞ れ. 「特 殊 性 の権 利 」、 「特 殊 性 の原 理 」 が 中心 を 占 あ る点 で共 通 して い る。 しか しな が ら注 意 を 要 す る の は、 「道 徳 」 の場 合 はあ く まで も 「主 観 的意 志 の権 利 」 が重 要 視 され 、 他 者 ・社 会 と の関 わ りが 極 めて 希 薄 だ と い う ことで あ る。 これ に対 して 、市 民 社 会 に お け る 「特 殊 性 の 原 理 」 は、 自分 自身 へ の配 慮 が 強 調 され た と して も、 先 の 「階層 上 の誇 り」 の と ころ で も述 べ た よ うに、 そ うす る こと に よ って 「社 会 的 に承 認 され て い る」、 あ る い は市 民 社 会 の た め を な して い る と の 自覚 と密 接 に結 びつ いて い るの で あ る。 したが って 、 「道 徳 」 にお いて 強調 され る個 人 とか主 観 が、 「市 民 社 会 」 に お い て、 社 会 に お け る個 人 、 あ る い は 〈 社 会 一個 人 〉 関 係 と して 新 た に理 解 され 直 す。 こ こに 、道 徳 が 市 民 社 会 にお いて 「そ の固 有 の場 」 を もつ と いわ れ た の で あ る。 こ う した こ とを、 社 会 に お け る倫 理 問 題 の重 要 な事 柄 と して 理 解 して お く必 要 が あ る。 た だ し、 ヘ ー ゲ ル に よ れ ば 市 民 社 会 に お け る倫 理 を考 え た場 合 、 こ こで は まだ 個 人 や 特 殊 性 の 原理 が 強 く、 客 観 的普 遍 性 が成 立 して い な い。 この点 が 今 後 克 服 され 、 実 現 され ね ば な らな い重要 課題 とな るの で あ る。. [第208節] 〈 ヘ ーゲ ルの 叙 述 〉   こ こまで 説 明 され て きた 欲 求 の 体 系 の 原理 は、 知 と意 志 の働 きの特  .  .  .  .  .  . の. 殊 性 で あ る。 したが って、 欲 求 の体 系 は即 か つ 対 自的 に存 在 す る普 遍 性 、 す な わ ち 自 由 の普  .  .  .  .  .  .  .  .  . 遍 性 を たん に抽 象 的 に、 そ れ ゆ え所 有 の権 利 と して 含 ん で い るだ け で あ る。    .    . し か し、 こ の 所 有 の 権 利 は 効 力 を もつ 現 実 性 に 達 し て お り、 「司 法 活 動 」(Rechtspflege,  .  .  .  .  . the administration  of justice)に よ る所 有 の保 護 と して存 在 して い る点 の確 認 が重 要 で あ る。. 〈 論 評 〉   本 節 に お い て確 認 す べ き ポ イ ン トは、 「効 力 を持 つ現 実 性 」 に ま で 至 った と こ ろ の、 つ ま り 「司 法 活 動 に よ る所 有 の保 護 」 の対 象 に な って い る 「所 有 の権 利」 と は、 どの よ うな事 態 を い うの か とい う点 で あ る。 この点 につ い て の ヘ ー ゲ ル の詳 細 な説 明 は、 「B司. 法 活 動 」 と して ま と め られ て い る次. 節 以 下 で行 な わ れ る こ とに な る。 したが って 、 ここで は これ まで の 「A欲. 求 の 体 系 」 の帰. 結 と して問 題 に な った事 柄 との関 係 で、 「所 有 の権 利 」 の現 実 的事 態 あ るい は 「所 有 の権 利 」 が か か え る現 実 的課 題 に つ い て確 認 して お き た い。 「欲 求 の体 系」 の特 徴 は、 本 節 にお いて もヘ ーゲ ル が述 べ る よ うに、 特 殊 性 を 第1の. 原理. に して い る こ とで あ る。 す な わ ち、 個 々人 の特 殊 的 で 具 体 的 な欲 求 とそ の 充 足 を 最 大 の眼 目 に して い る。 しか し、 同 時 に留 意 しな け れ ば な らな い の は、 こ う した個 々 人 の特 殊 的 な欲 求 も、 そ の充 足 の た め の労 働 も相 互 依 存 的 で あ る とい う こ とで あ る。 そ して、 この相 互 依 存 的 とい う さい重 要 な の は、 どれ だ け個 々人 間 に特 殊 性 が 強 調 さ れて.

(12) も、 相 互 に 守 らね ば な ら な い 秩 序 、 ル ー ル が あ る と い う こ と で あ る。 す な わ ち 、 全 て の 個 人 に 彼 の 具 体 的 欲 求 と そ の 充 足 、 こ れ に 関 わ る 労 働 と 所 有 等 は権 利 と して 認 め られ て い る の で あ る。 他 人 の こ の 権 利 を 認 め な い な ら、 自 分 の 権 利 も 他 人 か ら承 認 さ れ な い 。 こ こ に は相 互 に 、 対 等 ・平 等 に 遵 守 す べ き ル ー ル が あ る 。 しか しな が ら 問 題 は 、 権 利 に お い て 対 等 ・平 等 な 個 々 人 の 問 に 、 自 ら の 欲 求 充 足 の 過 程 と そ の 現 実 的 帰 結 に お い て 、 「資 産 、 技 能 の 不 平 等 」 を 、 さ ら に は 「知 的 、 道 徳 的 教 養 の 不 平 等 」(第200節)を. 必 然 的 に生 み 出 す 点 で あ る。. こ う した 不 平 等 と 内 的 に連 関 し て 生 じ る 諸 々 の 権 利 侵 害 に 対 す る様 々 な 法 的 配 慮(政. 人 格 、 生 命 、 資 産 等 に関 す る. 策 的 課 題 と して の も の も含 め て)を. いよいよなさねばな ら. な い 必 要 性 を 、 ヘ ー ゲ ル は 「司 法 活 動 に よ る所 有 の 保 護 」 と して 、 本 節 で あ ら か じめ 概 括 し た と 私 は考 え る。. 注 1)本. 節 の論 評 に お いて も私 は指 摘 したが 、 市 民 社 会 に お け る成 員 各 人 の 平 等 は権 利 だ けで あ っ て 、 現 実 に. は様 々 な差 異 や 不 平 等 が 各 人 に生 起 し、 現 れ る こ とを ヘ ー ゲ ル は確 認 して い るの で あ る。 様 々 な差 異 や 不 平 等 と して ヘ ー ゲル は、 各 人 に お け る技 能 、 資 産 の不 平 等 だ けで な く、 身 体 的 、精 神 的 な 素 質 の 発 達 に お け る 不平 等 、 そ して 知 的 、 道 徳 的 教 養 の 不 平 等 へ の拡 大 まで 確 認 した。 後 節 の叙 述 を視 野 に入 れ て お くな ら、 ヘ ー ゲ ル は先 の差 異 や 不 平 等 か ら、 さ らに 次 の よ う な認 識 に ま で 至 る の で あ る。 「個 々人 の生 計 と福 祉 は1つ の 可 能 性 と して存 在 す る にす ぎな い」(第230節)→ の発 達 に と もな って 「貧 富 の格 差 の拡 大 」 が 生 じ る(第243節)→ 「貧 民 」 や 「 賎 民(Pobel)」. 市 民社会. 市民 社会 が必 然 的 に多数 の失 業者 を. と して うみ だ す(第245節)。. 本 節 で の指 摘 は、 こ う した市 民 社 会 が 必 然 的 にか かえ る根 本 的 課 題 な り欠 陥 に つ い て の 出 発 点(市. 民社. 会 に お け る 「欲 求 の 体 系 」 と 「司 法 活 動」 に 残 存 す る 「偶 然 性 」 の 問 題 に つ い て の端 的 な 指摘 は 、 す で に 第188節 で ヘ ーゲ ル は行 な って い る)を な す 確 認 な ので あ る。 2)ヘ. ー ゲ ル にお け る<Stand>を. 、 わ が 国 の 翻 訳 書 お よび ほ とん どの研 究 書 ・論 文 で は 「身 分 」 と訳 し. て い る。 ど の研 究 書 ・論 文 も、 ヘ ーゲ ル の この<Stand>は. もち ろ ん封 建 的 な身 分(世 襲 的、 固 定 的 な も の). で は な く、 成 員 の 自 由意 志 によ りあ る身 分 か ら他 の 身 分 へ の移 動 が可 能(各 人 に選 択 の 自 由)で. あ る との. ヘ ー ゲ ル 自身 の説 明 を 強調 した うえ で、 「身 分 」と訳 語 を与 え て い る。 しか し、 私 と して は こ う した説 明 や コ メ ン トを 受 け入 れ、 そ れ に納 得 した うえ で も な お 、 「身 分 」 の 訳 語 に は異 和 感 が あ る。 そ こで 、私 は 「(社会)階 層 」 と訳 した。 そ の理 由 は こ うで あ る。 ヘ ー ゲル が 第201節 に お い て、 市 民 社 会 の構 成 員 が す べ て、 「 欲 求 、 手 段 、 労 働 」 の違 い や 、 「欲 求 充 足 の仕 方 ・方 法」 の違 い、 ま た 「 理 論 的、 実 践 的教 養 」 の違 い に よ り諸<Stand>に. 割 り当 て られ る こ と. に つ いて 述 べ て い た。 す な わ ち、 個 々入 が 社 会 の 中 で属 す る基 本 的 な諸 集 団 が<Stand>と れ て い るの で あ る。 した が って、 この<Stand>は た だ し、 ヘ ー ゲ ルが 本 節(第202節)以 る と、 次 の ことが 明 らか に な る。 第1の Stand」. して 述 べ ら. 諸 々 の 「職 業 集 団 」 と して も よ い。. 降 で詳 し く展 開 して い る の を先 取 り して 内 容 を 若 干 吟 味 して み 「実 体 的Stand」. は商工 業 者 で 代 表 さ れ る。 そ して 、 第3の. は農 民 と土 地 所 有 者 で あ る。 第2の. 「 普 遍 的Stand」. 「反 省 的. は官 僚 ・公 務 員 、 兵 士 、 法 律 家 、 芸. 術 家 、 聖 職者 、 医 者 、 学 者 な ど を含 ん で い る。 み られ るよ うに、 第1か しか し、 各<Stand>の. ら第3の<Stand>は 中で も、 例 え ば 第1の. ほ とん ど職 業 に よ って 区分 され て い る と い って よ い 。 もの で は農 民 と土地 所有 者 が 含 まれ 、 第3の<Stand>.

(13) に は官 僚 ・公 務 員 か ら学 者 ま で 、 とい うよ うに多 数 の職 種 の もの が一 括 さ れ、 職 種 ・職 業 集 団 よ り も広 い 社 会 的広 が りを もっ た集 団 や 階 層 が示 さ れ て い る。 以 上 の よ うな理 由 か ら、 私 は<Stand>を. 、 職 業 集 団 を 中心 と して、 しか し各 職 業 集 団 を も包 括 す る. よ り広 い社 会 的 拡 が りの意 味合 い を含 ん だ と ころ の 「(社会)階 層 」 と訳 し、 説 明 す るの が 適 当 で あ る と 考 え て い る ので あ る。 な お、 加 藤 尚 武 ほ か編 『ヘ ー ゲ ル事 典 』(弘 文 堂)で. は、 見 出 し項 目 が 「 身 分 」 お よ び 「職 業 ・身 分 」. で あ る の に対 して、 岩 佐 ・嶋 崎 ・高 田編 『ヘ ー ゲ ル用 語 事 典 』(未 来 社)で. は、 「階 層[身. 分]」 が 項 目 と. して採 用 さ れ、 説 明 さ れ て い る。 T.M.Knoxに. よ る英 訳 で は 、<class>と. 3)<Gesinnung>に. か<social . class>と. 関 して 中央 公 論 社 版 の訳 者 は、 本 節(第203節)ま. さ れ て い る。 で に使 用 さ れ た この語 に次 の よ う. な訳 語 を与 えて い る。 (イ)「 真 実 の良 心 は、 即 自か つ対 自 的 に善 で あ る と ころ の もの を意 志 す る 心 が け(Gesinnung)で. あ. る」(第137節) (ロ)「 真 実 の良 心 は、 次 の部 で は じあ て現 れ る倫 理 的心 が け(Gesinnung)の. 中 に含 ま れ て い る」(第. 137節) (ハ)「 倫 理 的 な も の は主 体 的 な心 が け(Gesinnung)で 体 的 な心 が け(Gesinnung)で. あ る、 だ が、 即 自的 に あ る 権 利 な い し正 の 主. あ る」(第141節). (二)「 家 族 は精 神 の直 接 的実 体 性 と して 、 精 神 の感 ぜ られ る一 体 性 、 す な わ ち 愛 を 己 の 規 定 と して い る。 したが っ て家 族 的心 術(Gesinnung)と み られ る よ うに、 訳 者 は<Gesinnung>に. は、 一 一 一」(第158節) 「 心 が け」 と 「 心 術 」 の二 つ の訳 語 を与 え て い る。 この よ. うな訳 語 を与 え た上 で 、 訳 者 は次 の よ うな 「注 」 をつ け て説 明 して い る。<Gesinnung>と. は、 「一 般 的. に は、 行 動 ま た は思 考 に方 向 と目標 を与 え る限 りで の、 人 間 の根 本 的 な心 が まえ 。 ヘ ー ゲ ル で は、 道 徳 の 立 場 で の良 心 は たん に意 志 活 動 の形 式 的 側 面 で あ る にす ぎず 、 真 実 の良 心 は倫 理 の立 場 で は じめ て 成 立 す る。 それ が 倫 理 的 心 術 で あ って、 「即 自か つ 対 自的 に善 で あ る と ころ の もの を意 志 す る心 が け』(第137節)」 (藤野 ・赤 沢 訳 『ヘ ー ゲ ル. 法 の哲 学 」 「世 界 の名 著 」35、 中央 公 論 社 、387ペ ー ジ)な の で あ る。. 訳 者 に よ る この 「注 」 で は、 『 法 ・権 利 の哲 学 』 第2部. 「道 徳 」 の立 場 に お け る 「良 心 」 が 第3部. 理 」 の立 場 にお いて そ の真 実 の姿 を と る、 と い う こと との 内 的 関連 に お い て〈Gesinnung>が い る。 確 か に、 先 の ヘ ー ゲ ル に よ る<Gesinnung>の. 使 用 例(イ)、(ロ)、(ハ)は. 「倫. 説明 されて. 「良 心 」 とい う内的. 主 体 的 な もの と の関 連 で、 ま さ に主 体 的 な あ る い は主 体 的 に意 志 す る 「心 が け」 と訳 さ れ て い る ので あ る。 これ に対 して 、(二)に. お い て は、 す な わ ち 「良 心 」 が真 実 の姿 を と る と さ れ る 「 倫 理 」 の立 場 の 「家 族 」. に お いて 、 「愛 」 が 家 族 的Gesinnung、. す な わ ち家 族 的 「 心 術 」 と訳 さ れ て い る。. 問題 は、 「心 が け」 と 「 心 術 」 の訳 語 が異 な る意 味 を指 し示 し、 違 った 内 容 を含 ん で い る の か ど うか と い う点 で あ る。 周 知 の よ うに、 「法 ・権 利 の哲 学 』 第2部 に お け る 「倫 理 的Gesinnung」       第3部. 「 道 徳 」 に お け る 「良心 」 と、 第3部. 「倫 理 」. では 「 良 心 」 は使 用 さ れ ず 、代 わ って この 語 が 用 い られ 、. そ して これ が 今 「家 族 的心 術」 等 を含 む 「 倫 理 的心 術 」 と記 さ れ て い る    と で は意 味 内容 は異 な って い る。 と い うよ りも、 後 者 の ほ うが前 者 よ り も内容 的 に深 化 拡 大 して い るの で あ る。 そ れ は、 「道 徳 」 の 場 合 の 「良 心 」 は個 々 人 の主 観 の 「 良 心 」 が 中心 で あ る の に対 して、 「 倫 理 」 の場 合 の 「 倫理 的Gesinnung」 は家 族 、 市 民 社 会 、 国 家 とい う社 会 シス テ ム な り社 会 関係 に お け る、 あ るい は そ れ ら との 関 わ り に お け る 成 員 の<Gesinnung>と け る 「倫 理 的Gesinnung」. い う点 が 濃厚 な の で あ る。 ヘ ー ゲ ル は この 点 の事 情 を考 慮 して 、 「倫 理 」 に お において 「 良 心 」 が 真実 の姿 を と る、 と説 明 した の で あ る。. 社 会 関 係 を い まだ 考 慮 せ ず、 他者 との関 係 を捨 象 した と ころ で の、 個 人 の 「 良 心 」 か ら社 会 関 係 の 中 で の成 員 の<Gesinnnung>へ. 。 あ るい は抽 象 的個 人 か ら具 体 的個 人 へ、 そ の個 人 に お け る 「良 心 」 の あ. り方 の違 い と理 解 す れ ば よ い で あ ろ う。 こ う した違 い が 、 「 道 徳」 の段 階 の 「 良 心 」 か ら 「倫 理 」 の 段 階 の 「 倫 理 的Gesinnung」. へ の 移行 に は あ る と して も、両 者 に は共 通 す る重要 な点 が あ る。 そ れ は、良 心.

(14) で あ れ、 倫 理 的Gesinnungで. あ れ、 ま たそ の担 い手 が 個 人 で あれ 、 成 員 で あ れ、 そ れ ら は結 局 、 一 人 ひ. と りの 内面 的主 体 性 を表 現 す る もの に他 な らな い とい う ことで あ る。 この 内 面 的主 体 性 に裏 打 ち され た も の こ そ 、 「道 徳 」 に お け る <Gesinnung>に. 「個 人 」 の 「良 心 」 で あ り 、 ま た 「倫 理 」 に お け る 社 会 的 成 員 の. 他 な らな い。 だ か らこそ 、 ヘ ー ゲ ル も 「真 実 の良 心 は   倫 理 的Gesinnungの. 含 ま れ て い る」(ロ)、 「倫 理 的 な もの は主 体 的 なGesinnungで る 「愛 」 を 「家 族 的Gesinnung」(二)と. あ る」(ハ)と. 説 明 した ので あ る。(ち な み に 、 ヘ ーゲ ル の 叙 述 で. 続 く 「市 民 社 会 」 と 「国 家 」 に お け る 「倫 理 的Gesinnung」 (Rechtschafenheit,第207節)、. は、 前 者 に あ って は. 後 者 に あ って は 「愛 国 心 」(Patriotismus,第268節)と. した が って、 訳 者 の よ うに(ロ)と(ハ)を. 「心 が け」 と し、(二)を. 中に. の べ 、 ま た、 「家 族 」 にお け 「家 族 」 に 「実 直 さ 」. 説 明 され て いる。. 「 心 術 」 と して 訳 し分 け る 正 当 な. 理 由 が な い よ うに思 われ る。 く り返 しに な るが 、 内 面 的主 体 性 の主 体 的 担 い手 で あ る個 人 が 抽象 的 か具 体 的 か の違 い が あ るに して も、 主 体 で あ る個 人 の内 面 的 主 体 性 の あ り方 に<Gesinnung>は. 共 通 して 関 わ る の で あ る か ら、 「心 が け 」. と 「心 術 」 の2種 類 の訳 語 は必 要 な い と考 え る。 ま して 、 「心 術 」 とい う ほ とん ど 日常 的 に 用 い られ て い な い術 語 は分 か りに くい と思 う。 で は、<Gesinnung>の ル の<Gesinnung>はM.ヴ. 訳 は 「心 が け」 が 最 も妥 当 だ ろ うか 。私 は これ ま で の検 討 を 通 して 、 ヘ ー ゲ ェ ーバ ーの<Ethos>(エ. ヴ ェー バ ー が<Ethos>を. ー トス)に 近 い の で は な い か と 考 え て い る。. 初 めて 本 格 的 に使 用 し出 した の は、 『プロ テ ス タ ンテ ィズ ム の倫 理 と資 本主. 義 の精 神 」(最 初 の発 表 は1904/05年. に論 文 と して)に お いて の よ うで あ る 。 岩 波 文 庫 版 の 訳 者 ・大 塚 久. 雄 氏 は、 そ の 「 解 説 」 にお いて<Ethos>に. つ いて 次 の よ うに説 明 して い る。. 大 塚 氏 は、 「 本 訳 書 で は考 え る と こ ろが あ って こ と さ らに原 語 の ま ま と して お い た」 と し、 そ して 、 ま ず 「エ ー トス」 と 「倫 理 」 とで は用 語 法上 、 意 味 内 容 上 で 深 い 関連 が あ る こ とを指 摘 した上 で 、 両 者 に は 重 要 な違 い が あ る とす る。 この点 を明 らか に す るた めに 、 氏 は 「エ ー トス」 φ具 体 的 な使 用 例 を あ げ、 お お よ そ こ う述 べ て い る ung)、. 一   ヴ ェ ーバ ー は 「エ ー トス」 と もい え る と ころ を しば しば 「心 的 態 度 」(Gesinn. 「倫 理 的 態 度 」(ethische  Verhalten)、. (Menschentum)等. 「生 活 の 仕 方 」(Art  der Lebensfuhrung)、. 「人 間 」. と言 い換 え て い るだ け で な く、 さ らに 「エ ー トス」 に関 連 して 「倫 理 の衣 服 を ま と っ. た一 定 の生 活 形 式 」、 「経 営 者 の魂 を う こか して い る精神 」、 ま た 「 労 働 意 欲 」 な ど と表 現 して い る 。 こ う い う と ころ か ら、 さ しあ た って は、 「倫 理」 が す ぐれ て 規範 を意 味 し、 教 義 と 関 連 させ られ て い る の に対 して 、 「エ ー トス」 は、 そ う した 「倫 理」 が 「 人 々 の うち に や ど り、 彼 らを内 側 か ら一 定 の 方 向 に 押 し う こか して い く と ころ の いわ ば現 実 の 起 動 力 と して と らえ られ て い る」(149ペ ー ジ)。 こ う して 大 塚 氏 は、 「人 々 を 内側 か ら押 し動 か す と こ ろの 起 動力 」 と して 「エ ー トス」 を説 明 し、 そ して 「歴 史 上 あ る特 定 の 『エ ー トス」 の担 い手 たち は、 そ の 環 境 に た い して、 い わ ば 自分 の血 とな り肉 とな って い る 「倫 理 』 の 特 質 に した が って 特 定 の 反 応 あ る い は作 用 の仕 方 を示 す こ とに な る」(149ペ ー ジ)と ヴ ェー バ ー の 考 え を 解 釈 し、 説 明 して い る。 ヴ ェ ー バ ー の、 「人 々を 内 側 か ら一 定 の方 向 に押 し動 かす 機 動 力 」;「 ルの 「 主 体 的 に意 志 す るGesinnung」 トス」 の説 明 <Gesinnung>を. エ ー トス 」 は、 先 に み た ヘ ー ゲ. に ほ とん ど 近 い もの と思 わ れ る。 した が って、 大 塚 氏 に よ る 「エー. 一 一と りわ け 「内 側 か らの 起 動 力 」 と い う説 明. 一を 斜 酌 し て 、 私 は ヘ ー ゲ ル に お け る. 「志」 な い しは 「 心 指 し」 と訳 す る のが 適 当 だ と今 の と ころ考 え て い る。. ち な み に、 金 子 武 蔵 氏 は、 ヘ ー ゲ ル 『 精 神 の現 象 学 』 の翻 訳 の 中 で 、<Gesinnung>を 情)」 と訳 し、 『精 神 の 現 象 学 』 の 内容 にふ れ て次 の よ う な使 用 例 を 提 出 して い る. 「心 構 え(心 「 人倫 的心情 とは、. 義 な る もの を格 守 す る不 動 の 態度 を とる もの」、 「(道徳 的 な)心 構 え とい え ど も、 行 動 に 自 分 を 現 実 化 す る こ と に 向か って い る」(『精 神 の現 象 学 」 下 巻 、 岩 波 書 店 、 「事 項 索 引」34ペ ー ジ)。 ま た高 田純 氏 は、 「 人 倫 的 心根 」 の よ うに<Gesinnung>を 自由. ヘ ーゲ ル実 践 哲 学 の再 構 成. 「 心 根 」 と訳 して い る(高. 田 純 『承 認 と. 』 未 来 社 、258ペ ー ジ)。. 金 子氏や高田氏の 「 心 構 え(心 情)」、 「心 根 」 等 は魅 力 的 な 訳語 で あ る が、 人 々 の信 念 と な り、 彼 らの.

(15) 内 面 か ら突 き動 か す よ うな 状 況 を 説 明 す る に は、 「志 」 や 「心 指 し」 の ほ うが 適 当 な よ うに 私 は考 え る。 4)プ. ラ トン はそ の 『国 家 』 にお いて 、 非 自 由人=奴 隷 と 自由 人=国 家 公 民(ポ. そ の上 で 、 ポ リス にお け る市 民 の正 義(善. リスの 市民)を. 区別 す る。. く、 正 し く生 き る こ と)を 主 題 的 に叙 述 して い る。. プ ラ ト ンが 正 義 の 基 礎 と して 強 調 す るの は、 市 民 各 人 が 「自然 本 来 の 素 質 」 に基 づ い た 分 業 を 行 な い 、 そ して 「自己 本 来 の 〔1つ の]仕 事 」 に専 念 し、 「本 務 へ 専 心 」 す る と い う こ と で あ る 。 そ の 分 業 の 区 分 は、 ポ リスを 構 成 す る次 の3つ の階 層 と さ れ る。 第1の 階 層 は、 ポ リス の政 務 管 理 を 行 な う に適 した少 数 の 人 た ち で 、 「守 護 ・統 治 者 」 層 で あ る。 第2 の 階 層 は、 そ れ よ り多 くの人 で 軍 事 的 防 衛 に従 事 す う 「戦 士 」 で あ って 、 これ は ポ リスを 守 る 補 助 者 層 で あ る。 第3の 階 層 は、 それ 以 外 の大 多 数 の 市 民 で、 「農 夫 ・職 人 ・商 人 」 な ど ポ リス の さ ま ざ ま な 欲 求 を 満 た す 活 動 に従 事 す る層 で あ る。(プ ラ ト ン 『国 家 」、 藤 沢 令 夫訳 、 岩 波 文 庫(上)、134∼302ペ. ー ジ参 照). これ ら3つ の 階 層 は、 先 に指 摘 した よ う に市 民 各 人 の 生 まれ つ きの 素 質 に基 づ いて 決 定 さ れ て い る の で あ るか ら、 階 層 ・分 業 間 で の移 動 はで きな いで あ ろ う。 した が って 、 これ ら階 層 は職 業 選 択 の 自 由 の も と に あ るの で はな く、 「身 分 」 と して の 意 味 あ い の方 が 濃 厚 で あ る。(ヘ ーゲ ル の<Stand>は 分 」 と訳 され て い るが 、 職 業 選 択 の 自由 が 認 め られ て い るの で 、 注2で. 一 般 に 「身. も強 調 した よ うに 、 「(社会)階 層」. の 訳 が 適 当 で あ る。) それ 故 、 この よ うな 内容 をふ まえ た上 で ヘ ー ゲ ル は 「法 ・権 利 の 哲 学 」 にお いて 、 プ ラ トンの 『国 家 』 にお け る考 え を 次 の よ う に指 摘 し、 批 判 した   「プ ラ トンの 「国 家 』 で は、 お 上 が まだ 諸 個 人 に 職 務 を 指 定 して い るか ら、 主 体 的 自由 は まだ 少 し も重 ん じ られ て いな い。 多 くの東 洋 の 国 家 で は、 この 指 定 は生 まれ に よ って 行 なわ れ る。 しか し主 体 的 自 由 は顧 慮 され な くて はな らな いの で あ って 、 この 主 体 的 自 由 に と っ て は 、 諸 個 人 が 自 由 に 選 択 す る と い う こ と が 必 要 な の で あ る 」(Hegel,Grundlinien der Hegel 5)〈. Werke7,S.410.邦訳前掲書. [藤野philosophie ・赤沢訳 ]、492ページ)。 des Rechts,. 論 評 〉 にお いて も述 べ た が 、 本 節 で の ヘ ーゲ ル の叙 述 の ポイ ン トは次 の こ と で あ る。 す な わ ち 、 個. 人 が 「ひ とか ど の人 物 」 で あ る と社 会 的 に承 認 され るの は、 市 民 社 会 の 成 員 とな り、 み ず か らの 「活 動 、 勤 勉 、 技 能 」 に よ り一 定 の職 業 ・労 働 に従 事 す る こと に よ って で あ る。 そ して 各 人 は、 己 の 労 働 が 社 会 に 役 立 って い る=「 普 遍 的 な も の と媒 介 す る」 と い う 「誇 り」 を もつ よ う にな る とヘ ーゲ ル は強 調 した 。 私 が こ こで 〈 注 〉 と して 特 に取 り上 げ た の は、 ヘ ー ゲル が こ う した社 会 的 労 働 へ の参 画 と 連 関 づ け て 「承 認 」 論 を展 開 し、 さ らに は社 会 的 労 働 と関 わ っ て人 間 と して の 「誇 り」 を 強 調 した 点 が 重 要 だ と 考 え たか らに他 な らな い。 ひ とか ど の人 物 と して他 人 か ら認め られ 、 社 会 的 に評 価 さ れ る 、 ま た 人 間 と して 「誇 り」 を い だ く一一 こ う した原 因 は様 々 に考 え られ るで あ ろ うが 、 ヘ ー ゲ ル の よ う に社 会 的 労 働 へ の 参 画 、 一 定 の職 業 集 団 へ の関 与 と の関 わ りで 考 慮 す る のが 最 も基 本 的 で 、 堅 実 な も の と思 わ れ る。 なお 、 高 田純 氏 の 『承 認 と 自 由一. 一 ヘ ー ゲ ル実 践 哲 学 の再 構 成    』(未 来 社)は 、承認 論 を テ ー マ に し. て 初 期 ヘ ー ゲ ルか ら後 期 ヘ ー ゲ ル まで を 整 理 した画 期 的 な研 究 書 で あ る。 こ の書 の 中 で 、 高 田 氏 も 「職 業 倫 理 と承 認 」 と い うタ イ トルで 、 ヘ ーゲ ル の 当該 個 所 の重 要 な 意 義 を強 調 して い る(同 書 、258∼259ペ. ー. ジ参 照)。 (以 下 次 号).

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