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人の前で話をするということ (巻頭エッセイ)

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Academic year: 2021

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全文

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人の前で話をするということ (巻頭エッセイ)

著者

小島 麗逸

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

265

ページ

1-1

発行年

2017-10

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00049681

(2)

2017年の夏期公開講座案内をみると、11コース あり、対象地域もアジア・中近東・アフリカ・ラ 米に及び、さらに特定個別テーマで地域を横断す るコースも設営され、各コースとも数人が登場す るという豪華版で、講座の充実ぶりに驚く。1979 年公開講座開設の必要性を言い出した者としてう れしく思う。 公開講座開設以前、ジェトロ支部が置かれてい た主要都市でアジ研職員の出張講演がたまに開催 されていた。取り上げるテーマはジェトロ出張所 と広報部との打ち合わせで決めていた。中国に関 する講演会が比較的多く、北は札幌から南は那覇 まで何回か地方巡業をしたことがある。毎回困っ たのは、来てくださる聴講者の関心がどこにある かを測りかねたことである。当方は情報や調査研 究内容の供給者であるが、聴講者はその需要者で ある。つまり需要予測ができなかったことだ。そ こで当日、宿を出てタクシーを拾い、「1万円分 走ってください。最後は県庁か市役所の前で降ろ して」と頼み、車中で当該市の景気の話を聞く。 とくに盛り場の賑わいの話は役に立った。当然、 中国に関する質問も数多くした。県庁か市役所か ら市民用の基礎統計が掲載されている小冊子をも らい、いっきに頭の中に叩き込んだ。これをやる と、演壇に立っても足がふるえないようになった。 聴講者の要望が少しわかるからだ。 話の組み立ては初代所長の東畑先生のお話が役 立った。先生は座談会や講演の名手と言われてい プロフィール こじま れいいつ/ 長野県飯田市出身。1960年以後アジア経済研究所で中国経済研究に従事。1987年以後大東文化大学教授。2003年理事、学部長を経て退職。 他に北京大学旧経済学部客員教授、早稲田大学政経学部非常勤講師などを歴任。現在、山梨県山村で農業に従事。 たが、ある時、どうしたらうまくいくかと伺った ら、「タネを1つだけにすることだ。15分の場合も 60分の場合の講演でも同じだよ」と言われた。言 いたいことを2つ以上入れると散漫になるという ことらしい。これを取り入れるにはかなり時間が かかった。知っていることを何でも話そうとする からである。今日の話が聴講者に浸みわたり始め たと思えるようになったのは聴講者に居眠り者が いなくなり、当方の話に相槌を打つ人が出始めて からである。 経済社会現象はある一定時間を経ながら段階を 追って変化して行く。ある事象は数年の期間のこ ともあるが、20~30年の期間で新しい段階に入る 事象もある。何がこの変化をもたらすかをとらえ る歴史感覚が必要であるように思う。東畑先生が 言われた講話のなかを貫く1つのものとは、この 歴史感覚かもしれない。 発展途上国研究は前世紀に比すと驚くほど拡が り、情報の量や調査研究の成果の供給は無限とい えるほど増加した。1980年代までは、アジ研はあ る意味で独占的供給者であったように思う。途上 国に関する情報や調査研究の成果の供給と需要と の関係は、前世紀とは逆転し、需要者側が供給者 を選ぶ時代に入っている。公開講座の担当者は来 聴者が1コマごとに支払う聴講料と聴講に来るた めに支払う時間コスト分を提供する必要がある。 これができない登板者には入山料的なものを支払 わせるのも一方法かも知れない。 アジ研ワールド・トレンド 2017 11

エッセイ

巻頭

人の前で

話をするということ

小島麗逸

1

アジ研ワールド・トレンド No.265(2017. 11)

参照

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