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エネルギー立国戦略の目標と現実 -- ラオスの電力産業の場合 (特集 途上国のエネルギー政策)

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エネルギー立国戦略の目標と現実 -- ラオスの電力

産業の場合 (特集 途上国のエネルギー政策)

著者

ケオラ スックニラン

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

195

ページ

19-22

発行年

2011-12

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004096

(2)

●はじめに

  未だ、薪 といった伝統的なバイ オマス燃料が主要なエネルギー源 であるラオスが、エネルギー立国 戦略を打ち出している。豊かな水 源および立地条件を生かし、経済 発展がつづく周辺諸国への電力の 輸出を経済発展につなごうとする 戦略である。ラオスのエネルギー の現状と水力発電開発の進展およ び計画から同戦略の目標と現実を 考察する。

ラオスにおけるエネルギー

事情の概要

  エネルギーは人間の生活、特に 近代的経済活動に欠かせないもの である。二〇〇八年にラオスで消 費された一次エネルギーは〇・〇 四二クァドリリオン BT U と推計 さ れ て い る ︵ U . S . Energ y Informat ion Administrat ion ︶ 。 こ れは石油約一〇〇万トンに相当す る規模である。この推計が正しけ れば、ラオスでは一人が年間一七 六・三キロの石油相当で得られる エネルギーを消費していることに なる。この水準は世界的にみても 低い ︵表 1︶。高所得国では一人 が年間消費するエネルギーは石油 約五トンに相当する。また中所得 国では一トン以上で、低所得国で も平均が三六四キロである。ラオ スでの平均的なエネルギー消費量 は、低所得平均の半分に満たない 水準であることがわかる。一人当 たり GDP とエネルギーが正の相 関をもっているのは多くの研究で 指摘されている。ラオスは国連に 未だ最貧国と指定されているうえ に、国民の多数が自給自足農業で 生計を立てていることを考えれ ば、現実に近い推計であると評価 できよう。   では、ラオスはどのように必要 なエネルギー確保しているのだろ うか。図 1にエネルギー源別の消 費割合が示されている。ラオスで もっとも大きいエネルギー源は薪 である。電気やガスの普及率が低 いラオスでは、おもに調理用の熱 源として薪を利用している家庭が 未だに多い。二〇一〇年では全国 で約九〇〇〇ある村のうち、電気 にアクセスできるのはその約六 七 % で、しかもこれはあくまで村 単位でみた場合の割合である。村 の幹線またはメインの道路まで電 線があれば電気が通っていること とされる。しかし実際は電気への アスセスが一〇〇 % とされる首都 でも、ラオス電力が送電網を整備 するのはメインの道路までの場合 が多い。その場合、住宅までの電 気を引き込むのは、新築のたび住 民が費用を負担して行うことにな 石炭 3% 薪 56% 石油 17% 電力 12% 炭 12% 図1 ラオスにおけるエネルギー源別消費量 (出所)Sithideth(2011)。 表1  世界の所得別一人当たりエネルギー消費量(2008年、kgoe) 高所得国 5111.6 中所得国 1254.5 低所得国 364.0 ラオス 176.4

(出所)世界銀行 世界開発指標より。ラオスはU. S. Energy Information Administrationに基づき、筆者計算。

途上

政策

途上国の

エネルギー

政策

特 集

立国戦略

現実

電力産業

(3)

る。そのため、電圧が安定せず日 常的な電気調理器具の使用に耐え られないことが多く、電気があっ ても比較的多くの電力を必要とす る調理では薪や炭を使うのであ る。エネルギーの約七割がこの薪 と炭でまかなわれている。   次に多いのは、石油である。国 内で油田が発見されていないラオ スでは、石油が金額ベースでもっ とも大きいな輸入品目で、貿易赤 字の最大の要因でもある。ラオス で消費されるエネルギーの約一 七 % が石油であるが、そのほとん どが車、バイク、トラックなどの 輸送機器の燃料として使われる 。 ラオスのエネルギー立国戦略にお いてもっとも重要な電力は一二 % に過ぎない。二万六〇〇〇から二 万八〇〇〇メガワットの水力発電 のポテンシャルがあるとされるラ オスだが、二〇一〇年で整備した ダムの総発電能力はその約一〇分 の一の二五〇〇メガワットであ る。そして最後は、量的にまだ少 ないが、一九九〇年代後半から採 掘と利用が急速に拡大した石炭で ある。石炭の主要利用者はセメン ト、 鉄鋼工場など工業部門である。   今後の経済発展、要素賦存、そ して政策からエネルギー源の構成 の展望は次のように要約できよ う。まず、伝統的なバイオマス燃 料は今後減少していく可能性が高 い。政府は電気へのアクセス率の 上昇を主要な目標に掲げているほ か、都市化により伝統的なバイオ マス燃料の利用が以前より難しく なっている。実際、都市部では電 気とガスコンロの普及も徐々に見 られるようになっている 。また 、 今後消費量がもっとも増加するの は石油である ︵ Sithideth ︿ 2011 ﹀ ︶ 。 二〇二五年までに二〇一〇年の三 倍になると予測している。石炭に ついて特筆すべきことは総工費二 七億ドルのタイ向け石炭火力発電 所であろう。発電能力約一八〇〇 メガワットの同発電所が、予定ど おり二〇一五年に完成すれば、国 内の石炭消費量が飛躍的増加する ことが確実だからである。本稿の メインテーマである電力について 次節で詳しく検討することとす る。

電力産業によるエネルギー

立国の目標と現実

  ラオスでエネルギー産業による 外貨獲得やそれを経済発展の起爆 剤にするという議論がなされる理 由は主に三つある。第一に世界の 主要河川でもあるメコン河流域の 多くが山間部の多いラオスに存在 していることから、水力発電のポ テンシャルが高いことである。こ れに加え、三万弱メガワットとさ れる水力発電のポテンシャルは当 分国内需要を大きく上回る規模で ある。 第二に内陸国であることと、 細長い地理・地形的条件から外国 に送電する距離が比較的に短い 。 たとえばこれまで北部で水力に よって発電しても南部に送電する コストが高いため、北部ではタイ に売電をする一方南部ではタイか ら電気を購入するという一見矛盾 した状態がつづいている。インド シナ半島では越境した電力の生 産、消費が経済効率にもかなうこ とを示唆しているのが現実であ る。第三は成功体験である。一九 六〇年代後半日本の OD Aによっ て建設された水力発電所は、一九 七五年に成立した現体制にとって も、一九九〇年代末まで政府の主 要かつ安定した外貨獲得源であっ た。   ラオスにおけるエネルギー立国 とは、一言でいえば、周辺諸国に 電力を輸出することを通して経済 発展を達成することである。具体 的には、二〇二〇年までに経済発 展により電力需要が増大すると予 想されるタイに七〇〇〇メガワッ ト、そしてベトナムに三〇〇〇∼ 五〇〇〇メガワットの電力を売る 覚書を両国と交わしている。カン ボジアに対しても、より小規模な 電力の輸出が行われている。これ らの約束を履行するには、少なく とも総発電能力が一万メガワット 以上の発電所が必要になる計算で ある。 3,000 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 (100 万ドル) (メガワット) IPP ラオス電力 電力関連税収(右軸) 輸出(右軸) 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 140 120 100 80 60 40 20 0 図2 ラオスにおける所有形態別総発電能力の推移 (出所)ラオス電力年間報告書(2010)。

(4)

  しかしラオスの総発電能力の推 移は、図 2のとおり一九九〇年代 後半までは五〇〇メガワットにも 満たなかった 。二〇〇〇年代に 入って、外国の発電関連企業との 合 弁 事 業 で あ る I P P ︵ Independent P ower Pro ducer ︶ 形態の進展により発電能力が倍増 したものの、二〇〇八年までは一 〇〇〇メガワットにも達していな かった。二〇〇九年、二〇一〇年 には IPP 形態の大型発電事業立 て続けに完成したことにより、発 電能力が一気に二〇〇〇メガワッ ト近く急拡大した。一九九〇年以 降伸びたのは外国との合弁事業で あることは第一の現実問題として ある。発電所を建設する資金と技 術を持ち合わせていないラオスに とって、周辺諸国に電力を供給で きるかどうかは外国頼みの部分が 大きい。現在ラオスで行われてい る発電の IPP 事業のほとんど は、調査・設計から建設、運営に 至るまで外国の企業または企業連 合が請負うのである 。そのため 、 輸出向け発電事業により得られる メリットも大きく低下する。共同 出資で得られる収入が少なくなる ことに加え、建設・運営がほぼ完 全な外部委託状況下では国内産業 に対する後方連関効果もほとんど 生まれない。たとえば、二〇一〇 年稼働し始めた約一〇〇〇メガ ワット級の水力発電所の総工費は 約一三億ドルにのぼり、ラオスの 国家予算を上回る規模である。必 要な建設資金は、世界銀行の債務 保証により、ほぼ全額を国外で調 達されている。また政府は二〇一 一∼二〇一五年までに約二八〇〇 メガワットの発電能力をもつ八つ の水力発電所の完成 を第七次五カ年計画 ︵二〇一一∼二〇一 五年︶の主要目標と して掲げている 。こ れに加え同期間中に 総発電能力五〇〇〇 メガワット分の着工 を目指している 。約 一一三億ドルに上る 建設資金が必要とさ れている 。国内で調 達可能な資金を遥か に 超 え る 規 模 で あ る。また、 タービン、 発電モーターなどは とうてい不可能とは いえ 、セメント 、日 常 的 に 使 用 す る 工 具 、技術者などから 水力発電設備の建設、運営に至る まで国内に十分な物的、人的資源 が不足している。つまり、ラオス の水力発電を中心としたエネル ギー立国戦略の進展には、資金と 技術面で外部の強い関与が必要不 可欠なのが現状である。   図 3に二〇一一年半ばまでの既 存および今後建設される予定の発 電所の分布が示されている。大中 小を含め非常に多くの発電所が北 部、南部の山岳部を中心に建設さ れる予定であることがわかる。ま た数が少ないものの前述のように 非常に大規模な火力︵石炭︶発電 所の建設も予定されている。ここ でいう予定とは建設されることが 確実のものから何もまだ決まって いないものまで様々であることに 注意されたい。   第二の現実は、水力発電そのも のの制約である。これはさらに水 既存(水力) 計画(水力) 計画(火力) 図3 2020年までの電力開発長期計画 (出所)ラオス電力公社資料に基づき筆者作成。

エネルギー立国戦略の目標と現実―ラオスの電力産業の場合

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力発電事業にともなう量的制約と 環境制約の二つに分けられる。量 的制約とは、中国以外ではメコン 川支流のほとんどを擁するラオス だが、水力発電ポテンシャルは最 大でも三万メガワット弱とされて いる。事業化できるものに限定す れば実現可能な規模はさらに小さ くなる。発電能力が二〇一〇年水 準の一〇倍にあたる二万五〇〇〇 メガワットに拡大しても、現在の 単価では輸出で得られる収入は約 一〇億ドル前後にとどまる。これ は人口が六〇〇万人の国にとっ て 、主要な産業となり得る一方 、 ラオスを豊かにできる十分な規模 とは考えにくい。また環境制約と は広範囲の森林を伐採し大規模な 貯水湖を必要とする水力発電の環 境への負荷である。短期的な影響 に加え、中・長期的な環境への影 響を考慮した場合、輸出向け電力 産業のコストとベネフィットを正 確に評価することは難しいのが現 状であろう。   最後は事業リスクである。経済 発展が将来のタイやベトナムの電 力需要を大きく伸ばすのは確実で ある。両国で水力によって必要な 電力を確保することは難しいとは いえ、水力は唯一な発電方法では ない。それどころが、はるかに大 規模な電力を発電できる原子力発 電が現実に先進国で普及してい る。原子炉が数基ある原子力発電 所ならば四∼五〇〇〇メガワット の発電能力になる。ラオスの電力 にとって、主要な顧客であるベト ナムが数基の建設を決定してい る。最大の顧客であるタイも原子 力発電所建設を中断しているに過 ぎない。仮に両国で原子力発電開 発が進展した場合、売電単価など を中心にラオスで発電された電気 の需要に大きく影響する可能性も 予測される。

●おわりに

  ラオスは電力の輸出を経済発展 の起爆剤にしようとしている。ま た、実際のダム建設により、水力 発電能力は二〇〇八∼二〇一〇年 の数年で六倍以上の約二五〇〇メ ガワットに拡大し 、三万弱メガ ワットとされる最大のポテンシャ ルに向けて向上している 。今後 、 開発がほぼ確実である事業を含め れば、輸出型電力産業が名実とも にラオスの主要産業になることは ほぼ間違いない。しかしラオスが 電力の輸出だけで経済発展をする ことは不可能である。電力がラオ ス経済を支える産業に発展させる には同産業の連関効果を最大にす ることが必要不可欠である。たと えば、外部に大きく依存している ダム建設や維持管理を可能な限り 内製化することにより、後方連関 の利益を増大させることである 。 電力を必要としない産業はほとん どない。輸出のみならず、国内で の利用を促進できれば、前方連関 効果も生まれる。一言でいえば電 力産業を他の産業の発展にどう結 びつけるかがエネルギー立国戦略 の成功の鍵である。 ︵ K eola Souknilanh / ア ジ ア 経 済 研究所   在ルンド海外研究員︶ ︽参考文献︾ ① 第七次経済・社会開発五カ年計 画︵ラオス語︶ 。 ② 世 界 銀 行  世 界 開 発 指 標 ︵ http://data.worldbank.org/ data-catalog/world-dev elopment-indicators ︶ 。 ③ ラオス電力公社 ︵ www .edl.com. la/ ︶ ④ Phonepasong Sithideth Energ y P olicy in Lao PDR ︵ eneken. iee j.or .jp/data/3841.pdf ︶ ⑤ Phonekeo D aov o ng Ov erview of E nerg y Subsector Act ivit ies in L ao P DR ︵ http :/ /www .a db . org/Do cuments/Ev ents/ Mekong/Pro ceedings/SEF2-Annex6.3-LaoPDR -Presentat ion. pdf ︶ ⑥ U . S. Energ y Informat ion Administrat ion (http://www . eia.gov).

参照

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