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ドローン空撮画像による大規模圃場のリモートセンシング

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Academic year: 2021

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146 ●●●(2名まで)著者名,著者名(3名以上)著者名ほか●●● 日本農薬学会誌 45(2), 146日本農薬学会誌‒149 (2020)

ドローン空撮画像による大規模圃場のリモートセンシング

#

杉 浦   綾*

農研機構 農業情報研究センター (2020年6月16日受理)

Remote sensing for large-scale field information using drone imagery

Ryo Sugiura

Research Center for Agricultural Information Technology, NARO, Tsukuba, Ibaraki 3050856, Japan

Keywords: drone, image processing, crop monitoring, disease detection.

は じ め に 北海道十勝地域は経営体一戸当たりの平均耕地面積が 40 haを超える日本最大の畑作地帯であり,今後も規模拡大 することが予想されている.現状ですでに,人の目で圃場状 態を正確に把握し記憶できる規模を超えており,きめ細かい 圃場観察・栽培管理が困難な状況である.一方で,作物生育 や圃場状態の継時変化を将来にわたり客観的な情報として蓄 積し,それを分析することで圃場管理に活用したいという要 望がある.そのため,簡便に作物生育や圃場状態を観測・記 録できる手法が求められている.本研究では,空撮画像によ り圃場作物の状態を迅速に収集できるものを目指し,そのプ ラットフォームとして小型無人飛行機(ドローン)を採用し た. ドローン空撮は,ワンフライトで数ha規模の面積を撮影 できるため,屋外圃場における作物生育の観測手法として 近年注目されている.高度100 m程度かそれ以下での撮影が 一般的であり,数cmから1 cm以下という超高分解能で画像 データが得られる.衛星画像や航空機画像のようなこれまで の農業リモートセンシング手法と比較して,より直接的に作 物の状態を捉えられることが大きな特徴である.また,柔軟 なタイミングで高頻度に圃場観測でき,時間・空間的に高分 解能でのデータ収集ができるため,日々変化する作物生長を 捉えるには最適な方法といえる. これまで,圃場環境で作物の生育状態を非破壊非接触で観 測する技術は衛星画像を中心とした農業リモートセンシング 分野で発展してきた.複数バンドの画像データからいくつか の植生指数が考案され,生長量把握や収量・成分推定,収穫 適期予測などに応用されている.これまで衛星画像を対象に 開発されてきた画像解析技術がドローンからの画像にも適用 でき,同様の植生指数が簡単に得られるようになった.この ように,従来のリモートセンシング技術がそのまま利用でき る一方,近年発展している画像認識や画像理解といった技術 を取り入れることで,より直接的に生育状態を捉えることが できる.ドローンの高解像度画像からは,作物の物理的サイ ズを直接計測することが可能であり,1)また,いくつかのの 作物で特定の病害を自動検出できることもわかっている.2) 本報告では,大規模圃場を対象に,ドローン空撮画像の特 徴を活かした農業応用の研究事例を紹介する.

1.

 作物の生長計測 1.1. マルチスペクトル画像の利用 作物の生育状態を画像から推定する方法として,NDVI DOI: 10.1584/jpestics.W20-22 #45回大会シンポジウムを取りまとめた解説 *〒305‒0856 城県つくば市観音台2‒1‒9 E-mail: [email protected] © 日本農薬学会

ミニレビュー

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Vol. 45,No. 2,146‒149 (2020) ●●●タイトル●●● 147

(Normalized Difference Vegetation Index)に代表される植 生指標がいくつか考案されている.衛星リモートセンシン グで広く使われているものであり,可視と近赤外画像から 算出できる.一般に可視(RGB)画像と近赤外画像を同時 に撮影できるカメラは,マルチスペクトルカメラと呼ばれ, NDVIを得るためには必須のデバイスとされている.この 10年で,小型で低価格の製品が登場したため,ドローンか らもマルチスペクトル画像が得られるようになり,衛星リ モートセンシングと同様の生育推定が可能となった.マルチ スペクトルカメラは,葉の色を評価することに適したもの で,最近では,撮影と同時に太陽光量を計測し,その影響を 補正できるカメラも市販されている.晴天でも曇天でも葉の 色を絶対評価できるため,屋外撮影を基本とするドローン空 撮に適したものといえる.ただし,画像解像度が低いものが 多く,精細な画像を必要とする場合は,市販のデジタルカメ ラのような高解像度RGBカメラが有利である.マルチスペ クトルカメラは被写体の色を測定するものであり,RGBカ メラは作物の物理的サイズを測るものとして使い分けるのが 望ましい. マルチスペクトル画像を使うと,例えば,図1のように圃 場内のNDVIのばらつきをマップとして表し,生育の良し悪 しを把握できる.ただし,NDVIは圃場内の生育のばらつき を相対的に表すものであることが多く,大まかに生育の良否 を相対把握するにとどまる.例えば,NDVIから絶対量とし て,葉身窒素含有量を推定する,あるいは適切な追肥量を算 出する,収量を推定するといったことは,依然難しい問題で あり,作物の品種間差や年次間差などの影響があるため今後 の実験データの積み重ねが必要である. 1.2.3次元情報の利用 前節では,マルチスペクトル画像で生育状態を捉える技術 について述べた.生育状態の良し悪しが,葉の色,特に近赤 外線領域の変化に現れるという植物の性質を利用したもので あるが,一方で,作物体の大きさも重要な生育指標の一つと 図1. マルチスペクトル画像から得たNDVIマップ.色の濃淡で生育の良否を表現. 図2. 面積4 haの3次元再構成結果. ミニレビュー 147

(3)

148 杉浦 綾 日本農薬学会誌 なりうる.画像中の作物部分と土壌部分をRGBデータで分 離すれば,植生量の指標である葉の被覆率が求められる.3) また,3次元再構成技術により,画像から作物体の立体情報 を復元すれば,草高や地上部バイオマス量を推定できる.ド ローンによる圃場撮影は,一定高度でカメラを真下に向け, 水平移動しながら1秒から数秒間隔で連続的にシャッターリ リースする方法で行われる.結果的に複数枚の静止画で圃場 全体をカバーする.そのため画像間には互いに重なり合う部 分があり,その領域の画像データでステレオビジョンを構成

できる.これは,SfM(Structure from Motion)と呼ばれる

技術であり,被写体の立体形状を画像データから復元できる ものである. 図2は空撮画像から復元した4 ha圃場の立体形状である. 作物の生長量の指標の一つに草高があるが,従来の手作業 での計測は非常に手間のかかる作業である.3次元再構成技 術により画像から高さ方向の情報が得られることから,圃 場に立ち入ることなく草高を瞬時に計測できる.図3は試験 プロットに区切られた大豆圃場で,プロットごとの平均草高 を計測したものである.また,生育に影響を与える要因のひ とつである圃場の微細な地形図が得られる.圃場内の水の流 れは地形の影響を受けるため,水はけの良否や湿害発生の予 測などに有用な情報である.さらに,定期的に撮影し,画像 からこのような情報を得れば,生長量を時系列的に観測でき る.大規模な圃場において作物の生長変化を捉えようとした 場合,地上での測定では労力がかかり現実的に難しいが,ド ローン空撮であれば,時間空間的に高分解能の情報として容 易に得ることができる. このような,物理的な形状や大きさに関する情報は,これ までのリモートセンシングでは直接得られなかったものであ り,ドローン画像の最も大きな特徴であると言える.

2.

 病害の自動検出 高分解能を特徴とするドローン画像からバレイショ疫病 の検出を行った.葉面の一部が褐色に変化し,やがて褐色部 分が葉全体に広がると同時に葉自体が萎凋するという症状 を検出する画像処理方法を開発した.一眼レフカメラから のRGB画像をHSVに変換し,主にHの値で葉色の変化を捉 えた.撮影は,数百品種・系統を植えたバレイショ疫病抵抗 性検定圃場で行い,疫病が発生する7月中旬から1ヵ月間, 週2‒3回のペースで画像を得た.図4は画像処理により自動 検出したバレイショ疫病発生の様子であり,発生初期の時点 でのものである. バレイショ疫病は比較的症状が顕著であり,画像による 検出対象としても比較的扱いやすい.一方,ウィルス病は症 状が微妙であることが多く,通常の画像処理での検出が難し い.そのため,図5のような畳み込みニューラルネットワー クをベースに感染株である確率と正常株である確率を出力す る識別器を構成し,数千枚の画像データで学習させ,識別の 可能性を検証中である. 図3. 大豆栽培試験圃場の空撮画像(左)と3次元情報による草高の計測(右). 図4. バレイショ疫病の自動検出の様子.

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Vol. 45,No. 2,146‒149 (2020) ●●●タイトル●●● 149 ま と め ドローン空撮画像の農業応用事例として,作物の生長計測 や病害検出などを紹介したが,画像から生育状態を推定する 方法の開発には,画像データに合わせて,推定項目の実測値 であるグランドトゥルースを用意する必要がある.今後,多 様な生育情報の推定方法が開発され,空撮画像の応用はさら に拡大することが期待できるが,その開発過程では,画像と グランドトゥルースのデータセットを える作業がつきまと う.また,例えば画像による病害検出に関しては,病害の種 類によっては,地上での目視評価,特に熟練の目と同等の検 出精度を得るのは難しい場合が多く万能なものは望めない. より正確な検出方法を得るには,大量の学習データが必要で あり,いかに効率よく高品質なデータを収集できるかが と なる.農研機構では,栽培試験や育種選抜で,様々な作物を 対象に生育観測をしており,それに合わせてドローン空撮を 実施している.画像に生育調査データを付随させ,学習デー タとして将来まで有効活用できるよう,一元的に収集・管理 する取り組みを開始した. 引 用 文 献

1) R. Sugiura, et al.: ASABE Paper No. 152152494, 2015.

2) R. Sugiura, S. Tsuda, S. Tamiya, A. Itoh, K. Nishiwaki, N. Murakami, Y. Shibuya, M. Hirafuji and S. Nuske: Biosyst. Eng. 148, 1‒10 (2016). 3)杉浦 綾:日本ロボット学会誌35, 369‒371 (2017). 略 歴 杉浦 綾(すぎうら りょう) 生年月日:1977年5月28日 最終学歴:北海道大学大学院農学研究科博士後期課程,博士 (農学) 研究テーマまたは主な職歴:農業リモートセンシングおよび 画像認識技術の農業応用に関する研究に従事.2006年4月農 研機構九州沖縄農業研究センター研究員,2011年4月農研機 構北海道農業研究センター主任研究員,2014年8月米国カー ネギーメロン大学客員研究員,2015年12月JSTさきがけ研究 員,2019年2月農研機構農業情報研究センター上級研究員, 2020年4月同画像認識チーム長,2020年4月筑波大学生命環 境系教授 趣味:サーフィン 図5. 病害検出のための畳み込みニューラルネットワーク. ミニレビュー 149

参照

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