2021年 第28巻 第 2 号 49 55 2021, Vol. 28, No. 2, 49 55
短 報
ネガティブな高齢者ステレオタイプに対する思考表出が
ステレオタイプ思考と感情状態に及ぼす影響
1
木田 昌慶
同志社大学心理学研究科竹原 卓真
同志社大学心理学部Effects of expressing the negative aging stereotypical thoughts on stereotypical thoughts and affective states
Masanori Kida ( )
Takuma Takehara ( )
Stereotypical thoughts are directly linked with discrimination and prejudice and hence to be avoid-ed. However, previous studies have failed to establish methods to reduce stereotypical thoughts, nor investigate how they influence affective states. In this report, we used an expressive writing which in-fluences restructuring cognitions as well as affective states and examined how stereotypes about older adults and affective states were influenced by intentional expression or suppression of stereotypical thoughts. Participants were randomly assigned to groups of intentional expression, intentional suppres-sion of stereotypical thoughts, or the control condition. In each group, the participants first performed an expressive writing task concerning the behavior of an older person. The intentional expression group emphasized aging stereotypes, the suppression group was asked to avoid describing stereotypes about older individuals; then participants performed a stereotype rating task in which they reported their impressions of another individual after reading sentences concerning one person. Their own emotional states were reported before and after the expressive writing task and after evaluating the impressions. Results revealed no differences in ratings of aging stereotypes across the three groups of manipulated stereotypical thoughts. However, a reduction in negative affect was found in all conditions. These findings suggest that we could not identify a strategy for reducing negative aging stereotypes but we found a strategy for improving negative affect.
Key words: stereotypes, aging stereotypes, stereotype reduction, expressive writing, negative affect
ステレオタイプ(以下,STと略記)は現代社会に おいて可能な限り低減することが求められているにも かかわらず,自動的な認知処理に起因するSTの制止 は困難である(Devine, 1989)。Devine(1989)によ ると,差別を受けた人が社会的に広く認知されること によって,特定の集団を過度にカテゴリ化してしまう ことに繋がり,却ってSTを助長してしまう可能性が ある。特に,日本では少子高齢化が進行しているた め,高齢者に対するネガティブなSTを低減させるこ とは社会生活を健全に保つうえで必要不可欠な課題で ある。 ST低減に関わる方略として思考抑制や代替思考の 効果が研究されてきたが,いずれも有効な方略とし て確立されていない。ある特定の思考をしないよう 努力する思考抑制は,一時的な効果はあるものの, 抑制しなかった場合より抑制後に抑制対象がより思 考に侵入するリバウンド効果が生起する(Macrae, Bodenhausen, Milne, & Jetten, 1994)。したがって, 思考抑制によるST低減は困難であり,むしろ逆効果 である。一方,代替思考方略では,ある思考抑制対象
Correspondence concerning this article should be sent to: Masa-nori Kida, Graduate School of Psychology, Doshisha University, 1‒3 Tataramiyakodani, Kyotanabe-shi, Kyoto 610‒0394, Japan
一方,従来のST研究とは反対の手法であるSTへ の筆記開示を行うことが,認知的再体制化を促進さ せ,ST対象の否定的な側面を肯定的に捉えうる有 効な方略として機能する可能性がある。筆記開示研 究では,筆記による思考の表出が心身の健康や感情 状態を改善させる効果を有し(Smyth, 1998; Smyth, Nazarian, Oikawa, & Oikawa, 2007),この影響は筆 記開示によって生じた認知的再体制化によって促進さ れる可能性が指摘されている(佐藤,2012; Smyth et al., 2007)。そこで本研究では,筆記開示の知見を応用 し,ST対象への思考を表出させることが,ST対象へ の認知の枠組みを変化させ,STの度合いを低減させ るかどうかを探索的に検討した。 また従来のリバウンド効果研究では,思考抑制後の 行動や判断に関する研究が中心であったため,思考抑 制時や抑制後の感情状態を測定した研究はほとんどな い。Beevers & Meyer(2008)は思考抑制後にネガ ティブ感情を測定しているが,一時点の測定に留まっ ている。上述した筆記開示やFrattaroli(2006)の知 見によると,ネガティブな対象への思考抑制は感情状 態を悪化させ,反対に思考表出は良好にさせる可能性 が考えられる。よってネガティブなSTの思考抑制前 後あるいは表出前後の感情状態の変化を測定すること は,これらの方略が感情状態に与える影響を明らかに する新たな試みであり,感情状態の改善方略を発見す る可能性があるため意義がある。 そこで本研究では,超高齢社会の喫緊の課題であ ると考えられるネガティブな高齢者STに注目し,ST 的思考の抑制,または表出を促すことが,後のST的 思考と感情状態の変化に与える影響を検討した。ST 的思考を抑制させた後に,STの度合いが却って高ま るリバウンド効果が生じ,ST的思考を表出させた後 に,STの度合いが低減すること(以下,逆リバウン ド効果とする)を仮説1とした。またST的思考を抑 制させた後は抑制前と比較して,一時的にポジティブ 感情が上昇し,ネガティブ感情が低下するが,その後 ポジティブ感情は低下し,ネガティブ感情が上昇する ことと,ST的思考を表出させた後は表出前と比較し 参加及びデータ使用への同意を求めたが,偽の実験目 的を伝えていたため,実験終了後,真の実験目的を伝 え,改めて同意を求めた。 手続き 田戸岡・村田(2010)を参考に,2つの無関係な実 験を続けて行うというカバーストーリーのもと,実験 を行った。初めの実験を「筆記開示フェーズ」,続く 実験を「ST評定フェーズ」とした。各フェーズは同 じ実験者が担当したが,資料の書式変更や説明等の強 調によって別の実験として実施した(Figure 1)。 筆記開示フェーズ 参加者に1つ目の実験を行うと 伝え,実験を開始した。参加者には,日常場面におけ るある人物の動作や様子を想像し,記述した内容を調 査する実験であると伝えた。初めに筆記開示フェー ズ開始時の感情測定(ベースライン;以下,BL)を 行った。その後,筆記開示課題を行い,記述用紙を 回収した後,再度参加者に感情測定(測定1;以下, T1)を行った。最後に筆記開示課題質問紙に回答さ せ,本フェーズを終了した。 ST評定フェーズ 参加者に2つ目の実験を行うと Figure 1. 実験手続きの流れ
伝え,実験を継続した。参加者には,認知能力測定 課題を2つ行うと伝えた。1つ目の課題は減算課題で, 可能な限り速く正確に計算するよう教示した。終了 後,用紙を回収し,参加者に2つ目の課題としてST 評定課題の開始を伝えた。終了後,感情測定(測定 2;以下,T2)を行い,本フェーズを終了した。その 後,筆記開示フェーズとST評定フェーズの関連への 気づきを確認するため,関連があったと感じたかを自 由記述で回答させた。 最後に,真の実験目的についてデブリーフィングを 行い,高齢者STに基づく高齢者への偏見を肯定する 実験ではないことを強調し,説明した。 実験課題 筆記開示課題 筆記開示フェーズで実施した本課題 では,田戸岡・村田(2010)にならい,高齢男性のカ ラー写真を渡し,忙しい駅の売店で働き始めて1週間 であるその人物の仕事時の様子を『高齢の男性は』で 始まる文章で5分間記述させた。その際,記述内容要 因として3群を設定した。抑制群には,「高齢者は社 会的技能の欠如,無能,威圧的等のイメージが一般的 に広まっているが,そのイメージに基づく記述をしそ うになっても決して記述しないように」と教示した。 表出群には,「高齢者は社会的技能の欠如,無能,威 圧的等のイメージが一般的に広まっているが,できる 限りそのイメージに基づく記述を行うように」と教示 した。統制群には追加の教示はしなかった。他方,仕 事内容ではなく,高齢男性の仕事時の様子や動作に関 して1文に1つの事柄のみを書き,同じ文を書かない ように指示した。 本課題において,参加者が高齢者STに基づく記述 を抑制,あるいは表出できたかどうかを確認するた め,田戸岡・村田(2010)を参考に記述内容を分析し た。すべての参加者が記述した各文をランダム順に記 載した質問紙を作成し,実験内容を知らない2名の評 定者に各文がどの程度高齢者STに当てはまるかを9 件法(1:全くあてはまらない‒9:非常にあてはまる) で評定させた。評定者間のピアソンの積率相関係数は =.78と高かったため,2名の評定者による得点を参 加者ごとに合算平均し,「記述高齢者ST度」とした。 次に有意水準を5%に設定し2,記述高齢者ST度に ついてLeveneの等分散性の検定を行ったところ,等 分散性は仮定されなかった( <.001)。したがって, Kruskal‒Wallisの検定を実施すると,有意な教示内容 要因の主効果が得られた(χ(2)=47.33, <.001)。ま2 た有意水準をBonferroni調整したMann‒Whitneyの U検定で多重比較を行った結果,表出群は統制群,抑 制群よりも有意に高く(ともに s<.001),統制群は 抑制群よりも有意に高かった( =.012)ため,表出 群,統制群,抑制群の順に有意に記述高齢者ST度が 高かった(Figure 2)。よって本課題における教示は 有効であったと考えられる。 筆記開示課題質問紙 筆記開示フェーズ終了時に課 した本課題では,教示に従い筆記開示課題に取り組ん だかを,「指示通りに記述できた」,「高齢男性を意識 しながら記述できた」,「5分間集中して取り組めた」, 「5分間休まず取り組めた」の質問に「1:まったくそ う思わない‒5:とてもそう思う」の5件法で回答させ た。 減算課題 ST評定フェーズの1つ目の課題である 本課題では,先頭の数字である912から3ずつ引いて いく減算を行わせた。この課題は2つのフェーズが無 関係であることを強調するためのフィラー課題であっ た。 Figure 2. 教示内容ごとの記述高齢者ST度及び評定高齢者ST度の平均値と標準誤差 注.エラーバーは標準誤差を示す。 2 以降のすべての検定で有意水準を5%に設定した。
するため,可能な限り速く回答させ,評定時間を測定 した。評定語は,「のろま」,「忘れっぽい」,「すばや い(逆転項目)」,「ゆっくりした」,「覚えの良い(逆 転項目)」,「おぼつかない」,「あわただしい」の7語 の高齢者ST語に加え,実験目的への気づきを防ぐた め高齢者STとは無関係な「優しい」,「冷たい」,「す るどい」,「楽しい」,「めずらしい」,「厳しい」,「穏や か」の7語の計14語から構成され,ランダム順に提示 した。また,評定語に対する評点を参加者ごとに合算 平均したものを「評定高齢者ST度」とした。 本課題での高齢者ST語の信頼性を検討した。本研 究における7語の高齢者ST語について,Cronbachの α係数を算出したところα=.61と,比較的低い信頼性 であった(Tavakol & Dennick, 2011)。そのため,項 目合計相関が低い2語(「ゆっくりした」・「あわただ しい」)を削除した5項目(α=.73)を統計解析に用 いた。ただし評定に長時間を要した回答は社会的望ま しさ等の影響を受けている可能性があるため,評定語 ごとに回答時間の平均値と標準偏差を算出し,回答時 間が平均値より3 以上遅い回答を除外した。除外 した評定は12個(全体の3.4%)であった。 感情測定 一般感情尺度(小川・門地・菊谷・鈴 木,2000)を用い,2つのフェーズを通して計3度感 情状態を回答させた。この尺度は全体的な感情状態を 測定する尺度であり,肯定的感情(Positive Affect, 以下PA),否定的感情(Negative Affect,以下NA), 安静状態(Calmness,以下CA)の3つの因子から成 り,さらに各8つの下位項目から構成されている。測 定時点の感情状態を,計24個の項目に4件法(0:全 く感じていない‒3:非常に感じている)で回答させ た。 実験計画 評定高齢者ST度の測定は,1要因3水準(筆記開示 課題における教示内容:統制群,抑制群,表出群)の 参加者間計画で,従属変数は評定高齢者ST度であっ れぞれにおいて,筆記開示課題質問紙における4つの 質問の合計得点の平均値と標準偏差を算出した。そし て,その得点が各群において3 以上低かった1名の 参加者は筆記開示課題での実験操作が成功していない と判断し,分析から除外した。加えて,同課題におい て,高齢男性の仕事内容のみ記述した1名の参加者も 同様の理由により除外した。よってST評定課題及び 感情状態測定における分析対象者は計66名(統制群 23名,抑制群21名,表出群22名)となった。 評定高齢者ST度 評定高齢者ST度の等分散性を検証するため,Lev-eneの等分散性の検定を実施した結果,等分散性が仮 定された( =.30)。評定高齢者ST度に対する教示内 容の効果を検証するため,対応のない1要因の分散分 析を行った。その結果,有意な教示内容要因の主効果 は認められなかった((2, 63)=0.28, =.76, η2=.01; Figure 2参照)。 感情測定
PA, NA, CA各々の等分散性を検証するため,Lev-eneの等分散性の検定を実施した結果,等分散性が仮 定された(すべて s>.05)。感情状態を測定したBL, T1, T2の3水準の時期要因と,統制群,抑制群,表出 群の3水準の教示内容要因がPA, NA, CA各々に対し て効果を有するのかどうか,2要因混合計画の分散分 析を行った(Figure 3参照)。なお,多重比較はBon-ferroni法を用いた。 PA得点では時期要因の主効果が有意であった ((2, 126)=25.56, <.001, η2=.29)。 多 重 比 較 の 結 果,BLはT1, T2よりも有意に高く,T2はT1よりも 有意に高かったため,BL, T2, T1の順にPA得点が高 かった。NA得点でも時期要因の主効果が有意であっ た((2, 126)=23.09, <.001, η2=.27)。多重比較の 結果,T1はBL, T2より有意に高く,BLはT2よりも 有意に高かったため,T1, BL, T2の順に有意にNA得 点が高かった。CA得点では時期要因の主効果が有意 であった((2, 126)=13.63, <.001, η2=.18)。多重 3 田戸岡・村田(2010)を,許可を得て使用した。
比較の結果,T1がBL及びT2より有意に低かった。 またPA, NA, CA各得点において教示内容要因の主
効果(順に (2, 63)=2.72, =.07, η2=.08;(2, 63)= .00, =.99, η2=.00; (2, 63)=1.95, =.15, η2=.06) 及び交互作用(順に (4, 126)=.41, =.80, η2=.01; (4, 126)=.92, =.45, η2=.03; (4, 126)=1.40, = .24, η2=.04)は有意でなかった。 考 察 ネガティブな高齢者STへの影響 本研究の第一の目的は思考の表出方法を操作し,高 齢者に対するネガティブなSTを低減させる方略を示 すことであった。評定高齢者ST度について,統制群 と抑制群,及び統制群と表出群に有意な差は認められ ず,リバウンド効果と逆リバウンド効果は示されな かった。よって仮説1は支持されなかった。 リバウンド効果が示されなかった要因は,抑制群と 同様に統制群でもリバウンド効果が生起したため,見 かけ上,評定高齢者ST度に有意差が認められなかっ た可能性が挙げられる。筆記開示課題では思考抑制の 教示は有効であったと考えられるため,抑制群では認 知的負荷が大きくなり抑制対象への表象は活性化され ていたと考えられる。一方,統制群は自由に記述をし ていたため,抑制群と比較し,筆記開示課題中の認 知的負荷は過多ではなかったはずだが,課題の性質 上,対象のネガティブな様子を考えることは避け難 かったと考えられる。ネガティブなSTは社会的にも 忌避すべき観念であるため,自主的に対象のネガティ ブな側面の想起を抑制しようとした結果,抑制群と同 様に対象への表象を活性化させた可能性がある。リバ ウンド効果は認知的負荷の強さに依存せず生じるた め(Wang, Hagger, & Chatzisarantis, 2020),統制群, 抑制群の両方でリバウンド効果が生起した可能性があ る。この検証には,ネガティブな高齢者STの想起が 困難な状況等,認知的負荷を可能な限り小さく抑えた 統制群の設定が必要である。 また逆リバウンド効果が示されなかった要因は,表 出群でネガティブな高齢者ST的記述を促進させた ため,対象への表象が高まり,STの低減に失敗した 可能性が挙げられる。従来の筆記開示研究では対象 への筆記を継続して行うことで,対象への認知的処 理や洞察を促進させる効果が示されている(Frattaro-li, 2006)。さらに筆記対象への認知的再体制化の効果 は馴化が必要条件であるが(佐藤,2012),本研究で のST対象への筆記は一度のみであったため,馴化が 生じず,ST対象への認知の枠組みが変化しなかった 可能性がある。よって筆記開示課題の試行数を増や し,長期的にST対象への思考を表出させ,逆リバウ ンド効果の発生を再度検討する必要がある。 感情状態への影響 本研究の第二の目的は思考の表出方法の操作が感 情状態の変化に与える影響を検討することであった。 PA, NA, CA各得点において時期要因の主効果が有意 だったが,教示内容要因の主効果や交互作用は有意で はなかったため,仮説2は支持されなかった。 しかし高齢者に関する筆記直後,最も高かったNA 得点が,最後の測定時期でいずれの時期よりも低く転 じていた推移から,参加者のネガティブな感情状態 の改善効果が示された。これは筆記開示が感情状態 を良好にする効果を示した研究(Smyth, 1998; Frat-taroli, 2006)と部分的に一致する。よってあるネガ ティブなST対象について記述することは,記述する 内容にかかわらずネガティブな感情状態を改善させる 可能性を示唆した。 記述した内容に差が認められなかった原因は,2つ 考えられる。第一に,ST対象への記述は,記述内容 Figure 3. 一般感情尺度各得点における教示内容及び時期ごとの平均値と標準誤差 注.エラーバーは標準誤差を示す。
第二に,筆記開示課題において高齢者のネガティブ な様子を記述しないよう教示を受けた抑制群は,ポジ ティブな側面を記述した結果,ネガティブな感情状態 が好転した可能性がある。筆記開示研究では筆記対象 のネガティブな側面を表出する場合だけでなく,ポジ ティブな側面に注意を向けることで健康やポジティブ 感情が増進する(King, 2001)。よって抑制群では表 出群や統制群における変化とは異なるメカニズムによ りネガティブな感情状態が改善した可能性がある。 またネガティブな対象への筆記開示を行った従来 の研究では,1回約20分の筆記を3∼5日間実施して, ポジティブな効果を示しており(Smyth, 1998),筆記 から数十分後にネガティブな感情状態の改善がみられ た本研究の結果と異なる。しかし筆記開示研究は,筆 記対象が個人の心的外傷経験やストレスイベントを中 心としており,他者へのSTを対象とした研究は著者 の知る限りない。Smyth et al.(2007)は,ある対象 への筆記は,その対象に関わるストレスフルな思考や 感情を再体験させる認知的・感情的処理を生じさせ, その処理の深さが感情状態や健康の改善に重要である と述べている。これによると心的外傷経験等の個人の 経験は深い処理を要するが,STは他者の行動様式に 依存するため,比較的浅い処理で感情状態にポジティ ブな影響を与えられる可能性がある。よってネガティ ブなSTの表出は短期間であっても,ネガティブな感 情状態の改善に効果的なのかもしれない。 本研究の意義と限界 総じて,高齢者に対するST的思考の表出が,高齢 者に対するネガティブなSTを低下させることはでき なかった。しかし,ネガティブな感情状態を改善させ る方略としての有効性は示唆された。さらにST度と 同時に感情状態を測定する研究はほとんど存在しな かったが,本研究はそれらを同時に測定できたことに 意義があった。 本研究での評定高齢者ST度の測定について,有意 水準を5%,検定力を.80,効果量の程度を大( =.40) と し,G*Power(Faul, Erdfelder, Buchner, & Lang,
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