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各種添加剤を添加した高炉スラグ高含有セメントの水和物組成

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Academic year: 2021

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要旨:Ca(NO2)2、ジエタノールイソプロパノールアミンや両者を併用した添加剤を添加した高炉スラ グ高含有セメントの水和物(HVBFSC)とその組成について無添加の場合と比較して検討した。硬化した HVBFSC の水和物は、いずれの添加剤を添加しても変化せず、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)および 水酸化カルシウム、AFt と少量の AFm とハイドロタルサイト(HT)であった。SEM-EDS の点分析によ り Mg/Si と Al/Si の関係から HT の Mg/Al を求め、Al を補正し Al/Ca を求めた。Si/Ca と HT を補 正した Al/Ca との関係から求めた C-S-H の Ca/Si は、添加剤の有無や種類に関係なく約 1.3 程度であっ た。添加剤を添加すると高炉スラグの反応が促進され、C-S-H の Al/Si が無添加より 0.02∼0.05 大きな 値を示し、Ca/(Si+Al)は無添加に比べてわずかに小さい値を示した。

各種添加剤を添加した高炉スラグ高含有セメントの水和物組成

坂井悦郎

*1

 梅津真見子

*1

 二戸信和

*2

 端健二郎

*3 *1 東京工業大学 物質理工学院材料系(〒152-8552 東京都目黒区大岡山 2-12-1) *2 株式会社デイ・シイ 技術センター(〒210-0854 神奈川県川崎市川崎区浅野町 1-17) *3 国立研究法人物質・材料研究機構(〒305-0003 茨城県つくば市桜 3-13) キーワード:高炉スラグ高含有セメント、添加剤、水和物、組成、ケイ酸カルシウム水和物、ハイドロタ ルサイト、SEM-EDS

1. はじめに

 セメント産業が 2050 年に CO2排出量を現状の 80 % まで削減するためには、カーボンキャプチャーなどの 新技術開発やクリンカーファクターを低下させるこ とが重要とされている1)。高炉スラグ高含有セメント (HVBFSC)は、セメントのクリンカーファクターを低 下させる有用な手段である。HVBFSC の水和に関して は、既に筆者らは、養生温度、セメント量、無水セッコ ウあるいは石灰石微粉末の影響などを詳細に検討して いる2, 3)。主要な水和生成物はケイ酸カルシウム水和物 (C-S-H)、水酸化カルシウム(CH)およびエトリンガイ ト(AFt)であること、収縮特性などの観点から AFt の 生成が重要であることを指摘している3)。また、亜硝酸 カルシウム(Ca(NO2)2)を添加すると、HVBFSC の初期 強度発現性が改善され、これは HVBFSC 中の OPC や 高炉スラグの水和促進によることを報告している4)。さ らに、HVBFSC の水和反応や圧縮強さに及ぼすジエタ ノールイソプロパノールアミン(DEIPA)の影響や亜硝 酸カルシウムとの併用効果についても検討している5) Ca(NO2)2添加に比べて、DEIPA との併用では高炉ス ラグの反応促進による初期の強度増進とエーライトの 長期の反応率の増加による長期強度増進も期待される としている。また、これら添加剤の作用機構としては、 Ca(NO2)2に関しては、亜硝酸イオンにより結晶性水和 物を生成し高炉スラグ粒子の周囲に生成するゲル状水和 物が減少し、高炉スラグの反応が容易になると推察して いる4)。また、反応モデルを用いた解析から、Ca(NO 2)2 や DEIPA いずれの添加剤を用いても、また、両者を併 用しても高炉スラグの周囲に緻密な反応膜が生成し難い ため反応が促進されるとしている5)   し か し、 添 加 剤 の 影 響 も 含 め HVBFSC の 水 和 物 の組成などは、十分検討されていない。本研究では、 HVBFSC の水和物やカルシウムシリケート系水和物 (C-S-H)の組成などに及ぼす添加剤の影響について SEM-EDS の組成分析により検討した。また、C-S-H における Al の存在個所については NMR スペクトル分 析により推察した。

2. 実験方法

2. 1 使用材料と試料の調整  前報5)と同じ物理的性質と化学組成の高炉スラグ微粉 末(BFS)、無水セッコウ(Anhydrite)および普通ポルト ランドセメント(OPC)を用い、高炉スラグ高含有セメン ト(HVBFSC)の混合比は BFS、OPC および Anhydrite を 65:30:5(質量)とした。なお、BFS の物理化学的 性質を Table 1 に示した。添加剤の Ca(NO2)2 につい ては亜硝酸カルシウム 1 水和物(試薬 1 級)を使用し、 添加量は無水物換算で HVBFSC に対して 1.0mass%と し、DEIPA については純分換算で 0.01mass%とした。 また、Ca(NO2)2と DEIPA の両者を併用する場合は DEIPA の添加量は 0.02mass%、Ca(NO2)2を 1.0mass% 添加した。水粉体比は 0.4 とし、養生温度は 20 ℃とし た。材齢は 28 日とし、多量のアセトンを用いて水和を 停止し、アスピレータで減圧し、0.04MPa で 48 時間

(2)

3. 結果と考察

3. 1 カルシウムアミネート系水和物  Fig. 1 に HVBFSC に各種添加剤を添加した材齢 28 日のカルシウムアルミネート系水和物の XRD パターン を示した。添加剤の有無や種類に関係なく、カルシウム アルミネート系水和物は、いずれの系でも AFt が主に 同定され、少量の AFm、ハイドロタルサイト(HT)が わずかに同定された。その他に、ストラトリンガイトと 空気中の CO2の影響を受けたと推定されるヘミカーボ ネート(Hc)のごくわずかなピークが現れた。 3. 2 カルシウムシリケート系水和物  水和した HVBFSC の IR スペクトルを Fig. 2 に示した。 無添加やいずれの添加剤を添加しても、960∼980cm−1 に C-S-H の明瞭な吸収を示し、空気中の CO2の影響 は C-S-H についてはほとんどないものと思われる。  2. 2 の方法により調整した試料を用いて、未水和物と 水和物を判別し、水和物組成の分析を SEM-EDS によ り行った。SEM の反射電子像で輝度や形状から未水和 乾燥させた。 2. 2 水和物の分析  水和生成物と反応生成物は XRD により同定した。微 細組織の組成分析として SEM-EDS を用いた水和物の 多点分析を行った。水和停止した試料にエポキシ樹脂 を含浸し、観察面を鏡面研磨した。その後、D-dry で 24 時間以上乾燥し、SEM 観察および SEM-EDS によ る測定を行った。1 試料につき 10 以上の視野を観察し、 1 視野あたり約 20 点を分析し、合計 200 点以上につい て未反応粒子を避けて分析した。  水和物の赤外線吸収スペクトルをフーリエ変換赤外線 吸収スペクトル法(FT-IR)により求めた。測定は全反射 法によった。また、水和物の NMR スペクトルを27 Al-MAS Single pulse 法(Frequency 208MHz、Al-MAS speed 20kHz、Pulse width 0.6μs、Relaxation delay 2s)に よ り測定し、27Al-MAS のスペクトル解析を行い、架橋や 吸着している AlO4について検討した。

Table 1 Properties of BFS

Chemical composition(mass%) Density

(g/cm3 (cmFineness2/g)

SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO Na2O K2O

33.4 14.9 0.4 42.8 6.1 0.3 0.3 2.91 4390

Fig. 1  XRD patters of calcium aluminate hydrates in hydrated HVBFSC with various admixtures (a) No add. 6 8 10 12 14 2θ(deg.[CuKα]) HT HC AFt AFm C2ASH8 (b) Ca(NO22 1.0% add. 6 8 10 12 14 2θ(deg.[CuKα]) HT HC AFt AFm C2ASH8 (c) DEIPA 0.01 % add. 6 8 10 12 14 2θ(deg.[CuKα]) HT HC AFt AFm C2ASH8 (d) DEIPA 0.02 % +Ca(NO2)2 1.0% add. 6 8 10 12 14 2θ(deg.[CuKα]) HT HC AFt AFm C2ASH8

Fig. 2  IR spectra of hydrated HVBFSC with various admixtures (a) No add. 88 90 92 94 96 98 100 1200 1100 1000 900 800 700 Tran sm iss ion (%) Wave number (cm-1) (b) Ca(NO22 1.0% add. 93 94 95 96 97 99 98 100 1200 1100 1000 900 800 700 Tran sm iss ion (%) Wave number (cm-1) (c) DEIPA 0.01 % add. 90 91 92 93 94 95 96 99 98 97 100 1200 1100 1000 900 800 700 Tran sm iss ion (%) Wave number (cm-1) (d) DEIPA 0.02 % +Ca(NO2)2 1.0% add. 96 98 90 92 94 96 98 100 1200 1100 1000 900 800 700 Tran sm iss ion (%) Wave number (cm-1)

(3)

軸の分母である Si を含む水和物は C-S-H の 1 つの Si 原子に対する HT の Mg や Al の割合を表してい る。測定点が X 軸に切片をもつ直線上に分布するのは、 HT の Mg/Al 比が一定であることを意味する。例えば Fig. 3 の(a)無添加では Mg/Al=1.33 であり、(b)の場 合の 0.01 % DEIPA 添加では、Mg/Al は 1.82 となる。 無添加では Al の測定値のうち HT として存在する Al はこの傾きと Mg 量の積{(a)の場合は(1/1.33)×Mg 量} となると考えられる。  Table 2 に、同様の方法により求めた添加剤を変化さ せた場合の HVBFSC 硬化体の Mg/Al の値を用いて、 Al の補正を上記の方法に準じて行った。添加剤を添加 した場合、いずれも測定した Mg/Al は無添加より大き な値を示した。これは添加剤の添加により前報5)に示し たが Table 3 のように BFS の反応率が増加するためと 粒子(セメントやスラグ)と水和物を判別し、水和物の み EDS により点分析をした。SEM-EDS の分析より、 Al/Ca と Si/Ca(モル比)の関係のグラフを求め C-S-H の組成を求めるが、より正確な C-S-H の組成を明らか にするために、Al/Ca において Al の補正を行った。測 定された Al の測定値から、HT(Mg6Al(CO2 3)・(OH)16・ 4H2O)として存在する Al を差し引いた値を用いる必要 がある。次のような方法により HT の Al を補正した6)  Fig. 3 に SEM-EDS の点分析した各種添加剤を添加 した際の HVBFS 硬化体の水和物の Al/Si と Mg/Si の 関係を示した。Al/Si と Mg/Si のグラフで、ほぼ直線 上に分布している測定点より Mg/Al を求めた。Fig. 1 に示した XRD の結果より Mg と Al を含む水和物は HT のみであった。直線上から大きく外れている点は HT 以外の水和物や C-S-H との共存として除いた。両 Table 2  Chemical composition of HT measured by

SEM-EDS

Samples Mg/Al

No add. 1.33

1 % Ca(NO2)2 add. 1.76

0.01 % DEIPA add. 1.82

1 % Ca(NO2)2 add.+0.02 % DEIPA 1.65

Table 3 Reaction rate of BFS in HVBFSC

Samples 7d 28d

No add. 16.3 25.7

1 % Ca(NO2)2 add. 22.0 26.3

0.01 % DEIPA add. 20.1 28.2

1 % Ca(NO2)2 add.+0.02 % DEIPA 20.1 27.9

(mass%) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 M g/ S i Al/Si

(d) DEIPA 0.02 %+Ca(NO2)2 1.0% add.

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 M g/ S i Al/Si (b) Ca(NO2)2 1.0% add. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 M g/ S i Al/Si (a) No add. 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 M g/ S i Al/Si (c) DEIPA 0.01 % add.

(4)

は様々な C-S-H と異なる割合で混じりあっており、混 じりあっている C-S-H の増加により Si/Ca は増加する 方向に分布する6)  傾向線の引き方に確立された方法はないが、宮原らの 方法6, 7)に準じた。AFm 相は Si/Ca=0、Al/Ca=0.5 付近、 AFt相はSi/Ca=0、Al/Ca=0.33付近にプロットされる。 CH や AFt から測定点にそって傾向線を引き交点の周 辺から高 Si/Ca 比の測定点が単一の C-S-H の組成を表 すと考えられる6, 7)。ここでは Fig. 4(a)∼(d)の実線で 囲んだ 130、105、115 および 112 個の測定値を C-S-H の組成として平均値を求めた。  Table 4 は SEM-EDS の測定点を用いて、上記の方 法により求めた C-S-H の組成に及ぼす添加剤の影響 である。前報で同様の方法により材齢は約 600 日で はあるが、普通ポルトランドセメント(OPC)硬化体の C-S-H を報告した8)。OPC 硬化体の場合は、Ca/Si は 1.51、Al/Si は 0.10 であった。これに対して HVBFSC では、OPC に比べて Ca/Si が小さく、Al/Si が大きい。 無添加の HVBFSC 硬化体の C-S-H の Ca/Si 比は前報 と同様の値で 1.3 程度を示した9)。Table 4 に示すように、 各種の添加剤を添加したいずれの場合も 1.3 程度であ り、C-S-H の Ca/Si は添加剤が添加された場合にもほ 推察される。Table 1 に BFS の化学組成を示したよう に、HVBFSC の混合成分の中で Mg を水和物に供給す るのは、ガラス質である BFS であると考えられる。なお、 Al も BFS から水和物に供給される。特に添加剤を用 いた場合は、材齢 7 日より BFS の反応率は増加してい るので、水和物中により多くの Mg と Al が供給される と推察される。  本研究では、Al の測定値からこの HT として存在す る Al を差し引いた値を用いて、Si/Ca と Al/Ca の関 係のグラフを作成し、C-S-H の組成を検討した。Fig. 4 に無添加と各種添加剤を添加した際の Si/Ca と HT の Al を補正した Al と Ca の比の関係を示した。これら

Fig. 4  Chemical composition of hydrated HVBFSC with various admixtures measured by SEM-EDS (a) No add. 0 0.2 0.4 0.6 0 0.5 1 1.5 (A l-A l i n H T) /Ca Si/Ca AFm Ca(OH)2 AFt (c) DEIPA 0.01 % add. 0 0.2 0.4 0.6 0 0.5 1 1.5 (A l-A l i n H T) /Ca Si/Ca AFm Ca(OH)2 AFt (b) Ca(NO2)2 1.0% add. 0 0.2 0.4 0.6 0 0.5 1 1.5 (A l-A l i n H T) /Ca Si/Ca AFm Ca(OH)2 AFt

(d) DEIPA 0.02 %+Ca(NO2)2 1.0% add.

0 0.2 0.4 0.6 0 0.5 1 1.5 (A l-A l i n H T) /Ca Si/Ca AFm Ca(OH)2 AFt

Table 4  Chemical composition of C-S-H in hydrated HVBFSC with various admixtures

Samples Ca/Si Al/Si Ca/(Si+Al)

No add. 1.28 0.14 1.13

1 % Ca(NO2)2 add. 1.32 0.19 1.11

0.01 % DEIPA add. 1.28 0.17 1.09 1 % Ca(NO2)2 add.+

(5)

ルミネート系水和物のスペクトルが現れ、化学シフト 13ppm が AFt、10ppm が AFm-HT で、5ppm が 6 配 位で C-S-H 表面に析出する Third aluminate hydrate (TAH)である6, 10)。化学シフト 70ppm 付近のスペク トルは、C-S-H 中の AlO4による架橋に基づく。いず れのピークも添加剤に関係なく表れている。しかし、 70ppm 付近のスペクトルの面積は無添加に比べて、い ずれの添加剤を添加した場合にもピーク面積は大きく、 架橋している AlO4 が添加剤を使用した場合に増加して いると推察される。また、添加剤を使用した場合 TAH のピークも無添加に比べて、大きい傾向を示している。 以上より、HVBFSC 中の AlO4は OPC と比べて、カ ルシウムアルミネート系水和物の他に、C-S-H への架 橋に関与する AlO4と吸着している AlO4で、添加剤の 影響により、無添加より増加していると推察される。な お、添加剤により Al/Si は増加しているが、C-S-H の Ca/Si が添加剤により変化していないので、架橋に比べ て吸着している AlO4が増えている可能性も高いが、さ らに詳細な定量的な検討が必要である。

4. まとめ

 無添加、Ca(NO2)2 1mass%添加、DEIPA 0.01 %添 加、Ca(NO2)2 1 %と DEIPA 0.02 %を併用して添加し た HVBFSC の水和生成物やその組成について、XRD、 SEM-EDS 分析、固体 NMR により検討を行った。本 研究の範囲で得られた結果は以下の通りである。 1) 硬化した HVBFSC の水和物は、いずれの添加剤を もちいても変化せず、C-S-H および CH、AFt と 少量の AFm と HT であった。 2) HT の組成を SEM-EDS の点分析より、Mg/Si と Al/Si の関係から Mg/Al を求め、HT の Al を補 正した Al/Ca を用いた。 3) HT の Al を SEM-EDS により補正し、SEM-EDS の点分析により Al/Ca と Si/Ca の関係を求めた。 C-S-H の Ca/Si 比は添加剤の種類に関係なく約 1.3 程度であった。 4) 添加剤を添加すると BFS の反応が促進されるので、 C-S-H の Al/Si が無添加より 0.02∼0.05 大きな 値を示した。同様に無添加に比べて Ca/(Si+Al)は わずかに小さい値を示している。

謝辞:

 本研究は日本スラグセメント・コンクリート技術研究 会の活動の一環として実施したもので、また、本研究の 一部は鐵鋼スラグ協会の援助によった。関係各位に感謝 致します。

参考文献:

1) M. Schneider:The cement on the way a low - carbon future, Cement & Concrete Res., Vol. 124, 105792(2019) とんど同等の値を示した。  これに対して添加剤を添加した場合、C-S-H 中の Al/Si が無添加より 0.02∼0.05 大きな値を示した。い ずれも BFS の反応率が無添加より大きいため、より多 くの Al が水和物に供給されたことによると思われる4) 添加剤により水和物中の Al は増加しているが、AlO4 は水和物の異なる場所に存在する。この点については次 節で検討を加えた。  BFS の化学組成を Table 1 に示したが、既に述べた ように HVBFSC 硬化体の水和物に、Si と Al が BFS から供給されるので、OPC 硬化体の Ca/Si より小さな 値を示す。なお、BFS からは Ca も供給されるので、 添加剤により BFS の反応率が大きくなっても、Ca/Si はあまり大きくは変わらないと推察される。これは添 加剤によりほとんど同様の傾向を示す。Table 3 に示し たが添加剤により材齢 7 日から BFS の反応率は増加 し C-S-H に供給される Al が増加しているので、無添 加に比べて Ca/(Si+Al)はわずかに小さい値を示してい る。しかし、材齢 28 日の CH 量は、無添加で 5.2mass%、 1 % Ca(NO2)2添 加 で 5.1mass%、0.01 % DEIPA 添 加 で 5.0mass%、1 % Ca(NO2)2 と 0.02 % DEIPA の 併用添加では 5.2 %で、ほぼ同等な CH 量が残存して いる。Ca の供給は無添加と添加剤の添加された場合は、 ほぼ等しく C-S-H の Ca/Si は添加剤により BFS が反 応促進されてもほぼ同等である。なお、Ca(NO2)2の添 加量が 2∼3mass%と大きい場合には、C-S-H の Ca/Si が OPC と同等になることを既に報告している9) 3. 3 水和した HVBFSC の27 Al-MAS-NMRスペクトル  Fig. 5 に水和した試料粉末の27Al-MAS-NMR スペク トルを示した。化学シフトが 0∼20ppm にカルシムア Fig. 5  27Al-MAS-NMR spectra of hydrated HVBFSC

with various admixtures

-40 -20 0 20 40 60 80

Chemical shift (ppm)

No add. 1% Ca(NO2)2add. 1% Ca(NO2)2 + 0.02% DEIPA add. 0.01% DEIPA add. TAH (Adsorption of Al) AFm-HT AFt Bridging Al in C-S-H Al in C-S-H layer

(6)

7) K. L. Scrivener:Backscattered electron imaging of cementitious microstructures:understanding and quantification, Cement & Concrete Res., Vol. 26, pp. 935-945(2004) 8) 坂井悦郎ほか:高エーライトセメントーフライアッ シュー石灰石微粉末の水和、セメント・コンクリー ト論文集、Vol. 73、pp. 26-31(2019) 9) 篠部寛ほか:高炉スラグ高含有セメントの水和 組織、セメント・コンクリート論文集、Vol. 71、 pp. 68-73(2017)

10) M. Daugaard et al.:Characterization of white Portland cement hydration and the C-S-H struc-ture in the presence of sodium aluminate by 27Al and 29Si MAS NMR spectroscopy, Cement & Con-crete Res., Vol. 34, pp. 857-868(2004)

2) 坂井悦郎ほか:初期水和性状を考慮した高炉スラグ 高含有セメントの材料設計、セメント・コンクリー ト論文集、No. 65、pp. 20-26(2011) 3) 坂井悦郎ほか:高炉スラグ高含有セメントの水和に 及ぼす養生温度の影響、セメント・コンクリート論 文集、Vol. 70、pp. 119-126(2016) 4) 坂井悦郎ほか:亜硝酸カルシウムを添加した高炉ス ラグ高含有セメントの水和、セメント・コンクリー ト論文集、Vol. 71、pp. 62-67(2017) 5) 坂井悦郎ほか:高炉スラグ高含有セメントの水和 に及ぼす亜硝酸カルシウムとアルカノールアミン の影響、セメント・コンクリート論文集、Vol. 73、 pp. 52-58(2019) 6) 宮原茂禎:アルカリ刺激剤を使用したスラグコンク リートの特性と水和物の組成、東京工業大学博士論 文(2018)

Etsuo SAKAI

*1

, Mamiko UMETSU

*1

, Nobukazu NITO

*2

and Kenjiro HASHI

*3

ABSTRACT:

This paper discusses the compositions of hydrated high volume blast furnace slag

cement (HVBFSC) containing 60 % blast furnace slag (BFS), 5 % anhydrate and 30 % ordinary

Portland cement (OPC) with various admixtures by using XRD and SEM-EDS method. Ca(NO

2

2

,

diethanol-isopropanolamine and their mixtures are used as admixtures. Regardless the kind of

admixtures, C-S-H, AFt, calcium hydroxide and a small amount of AFm and hydrotalcite (HT)

are formed, Mg/Al of HT was obtained from the relation between Mg/Si and Al/Si was measured

by SEM-EDS, Al was corrected and Al/Ca was obtained. Ca/Si is determined by relation between

Si/Ca corrected Al/Ca in C-S-H. Ca/Si of C-S-H is not changed and Al/Si of C-S-H in hydrated

HVBFS is increased by addition of admixtures. Because BFS is accelerated by these admixtures.

KEY WORDS:

High volume blast furnace slag cement, Admixtures, Hydrates, Composition, Calcium

silicate hydarete, Hydarotalsite, SEM-EDS

COMPOSITIONS OF HYDRATES IN HIGH VOLUME BLAST

FURNACE SLAG CEMENT WITH VARIOUS ADMIXTURES

*1 TOKYO INSTITUTE OF TECHNOLOGY, Graduate School of Materials and Chemical Technology(2-12-1, Ookayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8552, Japan)

*2 DC CO., Ltd., Technical Center(1-17, Asano-cho, Kawasaki-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa 210-0854, Japan)

*3 NATIONAL INSTITUE FOR MATERIALS SCIENCE(1-2-1, Sengen, Tsukuba-shi, Ibaraki 305-0047)

Fig. 1  XRD patters of calcium aluminate hydrates in hydrated HVBFSC with various admixtures
Table 3 Reaction rate of BFS in HVBFSC
Fig. 4  Chemical composition of hydrated HVBFSC with various admixtures measured by SEM-EDS

参照

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