津軽三味線の叩き課題における打圧データの熟練度比較
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(2) 38. Kosuke NAGI, Yusuke YAGAI and Nobuhiro FURUYAMA. の者とした.Table1に各参加者の経験年数と熟練度カテ. ように叩く必要がある. 取得データ:打圧データは,圧力センサ(DKH 社,PH-. ゴリを示した. 実験計画:実験参加者 3 要因混合計画であった.具体的. 464 ) の セ ン サ 部 を 圧 力 セ ン サ ( TAIWAN ALPHA. には,参加者の熟練度 3 水準(熟練者・中級者・初心者),. ELECTRONIC 社,ALPHA-MF02-N-221-A01)に取り替え,. テンポ 3 水準(90bpm,120bpm,150bpm) ,弦 2 水準(一. サンプリング周波数 1000Hz で計測した.圧力センサは津. の糸,三の糸)を操作し,検討した.. 軽三味線の胴に貼り付け,参加者ごとセンサ部を取り替え た(津軽三味線では撥の当たる部分の胴皮を養生するため. Table 1 各参加者の津軽三味線演奏経験年数と熟練度カ テゴリ Table1 各参加者の津軽三味線演奏経験年数と熟練度カテゴリ 参加者 . 経験年数 年ヶ月 ヶ月 ヶ月 ヶ月 年ヶ月 年ヶ月 年ヶ月 年ヶ月 年ヶ月 年 年 年ヶ月 年. 熟練度カテゴリ 初心者 初心者 初心者 初心者 中級者 中級者 中級者 中級者 熟練者 熟練者 熟練者 熟練者 熟練者. 課題:テンポ 3 水準(90bpm,120bpm,150bpm),弦 2 水準(一の糸,三の糸)について開放弦を叩くこととし, 6 試行をランダム化して行った.弦の条件について教示し た上でメトロノーム音をヘッドホン(Sony 社,MDRCD900ST)から呈示したのち,参加者は自由なタイミング で叩き課題を開始した.参加者が叩き課題を開始してから しばらく後に計測を開始し,25 秒の計測の後に課題を終 了させた.なお,全ての参加者は実験者が用意した津軽三 味線と撥を使用し,試行ごと 440Hz の C をキーとした二 上り(C-G-C)にチューナー(Aria 社,ACT-SP BK)を用 いて調弦を行った.ドラムスローン(Pearl 社,D-1000SN) を使用し,参加者は課題を座位姿勢で行った.. に,撥皮シールと呼ばれる保護シートが使用される.本研 究では撥皮シールの上に圧力センサを取り付け,さらにセ ンサ部を撥皮シールで養生した).本研究で使用した圧力 センサの同一製品間誤差は±20%であった.なお,全 78 試 行(参加者ごと 6 試行,13 名)の内,取得データには 1 試 行(参加者 4,120bpm,一の糸条件)欠損があった. 分析・統計:打圧データから各打の開始点と終了点を検 出し,開始点から終了点までの時間幅を接触時間とした. 打圧データについて,4 次元カットオフ周波数 30Hz のロ ーパスフィルタ(バターワース)を適用し,ピークを検出 した.当該打の一つ前のピークから一つ後のピークの区間 で分節し,打圧データ全体の最頻値を減算してベースライ ンに揃えた後,当該ピークの値で分節区間内のデータを標 準化した.接触の開始点は,当該ピークの一つ前のピーク から当該ピークまでの区間において,当該ピークの 10%値 より小さい値から 10%値以上へと転換した時刻のうち最 も当該ピークに近い時刻とした.接触の終了点は,当該ピ ークから当該ピークの一つ後のピークまでの区間におい て,当該ピークの 10%値以上から 10%値より小さい値へ 転換した時刻のうち,10%を下回った後に 100 サンプル (0.1 秒)連続で当該ピークの 10%値を下回り続ける最初 の時刻とした.接触時間の平均値と標準偏差を従属変数と して,熟練度(3 水準)×テンポ(3 水準)×弦(2 水準) による 3 要因分散分析を行った.なお,欠損(参加者 4, 120bpm,一の糸条件)については 120bpm,一の糸条件に おける初心者の平均値を用いて補完した. 結果. 一の糸条件. テンポと弦の違いよる接触時間について,熟練度ごとの 三の糸条件. 平均値を Figure2 に示した.なお,エラーバーは標準偏差 である. 3要因分散分析 3要因の分散分析を行った結果,熟練度の主効果,弦の 主効果,テンポの主効果が全て有意であった,F(2,10). Figure 1 弦の異なりによる制約条件の差異. =58406.92,p<0.01,F(1,10)=13722.75,p<0.05,F(2, 20)=13172.03,p<0.01.また,二次の交互作用は有意で はなく,F(4,20)=326.52,n.s.,熟練度×テンポの1次の. 一の糸は最も太い弦であり,楽器を構えた際に奏者の頭 部に最も近い位置にあるのに対し,三の糸は最も細い弦で 楽器を構えた際に奏者の頭部から最も遠い位置にある.開 放弦を叩く場合,三の糸の際は対象の弦のみを叩くが,一 の糸の際は隣接する弦を押さえつけ,撥弦で巻き込まない. 交互作用が有意であり,F(4,20)=2884.41,p<0.05,弦 ×テンポの1次の交互作用で有意傾向が見られた,F(2, 20)=1179.16,p<0.10..
(3) 津軽三味線の叩き課題における打圧データの熟練度比較. 1st string 3rd string. 2. いて Holm 法によって多重比較を行った結果,中級者では. Novice. 90bpm と 150bpm でのみ有意であり,初心者では 90bpm と. Intermediate. 150bpm でのみ有意であった.. Expert 1. Figure 3 に熟練度とテンポの交互作用における単純主効 果に関する多重比較の結果から有意差の認められた組み 合わせを実線で,有意差の認められなかった組み合わせを 点線で示した.. 1. 2. bpm. 12 bpm. 1. bpm. Figure 2 熟練度・テンポ・弦の違いによる接触時間の平 均値 2. mean duration of contact msec. 中級者と初心者におけるテンポ要因の単純主効果につ. Novice Intermediate Expert. 2. mean duration of contact msec. mean duration of contact msec. 2. 39. 1st string 1st string. 3rd string. 3rd string. 2. 1. 1. 1. bpm. 12 bpm. 1. bpm. Figure 4 弦×テンポの交互作用における下位検定の結果 1. 弦×テンポの交互作用 弦とテンポの交互作用について下位検定を行ったとこ ろ,弦の単純主効果は,90bpm,120bpm 有意であったが, F(1,10)=7830.60,p<0.05,F(1,10)=7466.45,p<0.05, bpm. 12 bpm. 1. bpm. Figure 3 熟練度×テンポの交互作用における下位検定の 結果. 150bpm では有意差は認められなかった,F(1,10)=784.02, n.s..また,テンポの単純主効果は,1 の糸,3 の糸いずれも 有意であった, F(2,20)=10261.04,p<0.01,F(2,20) =4090.15,p<0.01. テンポの単純主効果について Holm 法によって多重比較. 熟練度×テンポの交互作用. を行った結果,一の糸では 90bpm と 120bpm,90bpm と. 熟練度とテンポの交互作用について下位検定を行った. 150bpm,120bpm と 150bpm 全て有意であり,三の糸では. ところ,熟練度の単純主効果は 90bpm,120bpm,150bpm. 90bpm と 120bpm, 90bpm と 150bpm でのみ有意であった.. で有意であった,F(2,10)=39137.22,p<0.01,F(2,. Figure 4 に弦とテンポの交互作用における単純主効果に. 10)=16459.64,p<0.01,F(2,10)=8578.88,p<0.01.. 関する多重比較の結果から有意差の認められた組み合わ. また,テンポの単純主効果は,中級者,初心者で有意であ. せを実線で,有意差の認められなかった組み合わせを点線. ったが,F(2,20)=3798.17,p<0.05,F(2,20)=14915.80,. で示した.. p<0.01,熟練者では有意差は認められなかった,F(2,20) =226.89,n.s... 考察. 熟練度の単純主効果について Holm 法によって多重比較. 本研究では,津軽三味線の開放弦を叩く課題における接. を行った結果,90bpm では熟練者と初心者でのみ有意であ. 触時間について,熟練度・テンポ・弦の要因を組み合わせ. り,120bpm では熟練者と初心者,熟練者と中級者,中級. 検討し,分析を行った.本節では,熟練度ごとの接触時間. 者と初心者の全て有意であり,150bpm では熟練者と初心. の特徴について整理したのち,津軽三味線演奏の熟達の解. 者,熟練者と中級者,中級者と初心者の全て有意であった.. 明に向けた展望について論ずる.. Copyright © 2021, The Japanese Society for Ecological Psychology.
(4) 40. Kosuke NAGI, Yusuke YAGAI and Nobuhiro FURUYAMA. 初心者の特徴. 一の糸)も見られた.このようにばらつきが大きかった条. 初心者は,熟練度とテンポの交互作用における単純主効. 件では,中級者は接触時間が熟練者と初心者の中間的な長. 果の多重比較の結果,全てのテンポで熟練者より有意に接. さであったというよりむしろ,初心者的な傾向に近い中級. 触時間が長くなっていた(Figure 3)ことから,初心者は. 者と熟練者的な傾向に近い中級者が混在していた可能性. 接触時間が長い傾向にあると言えるだろう.また,Figure. も考えられる.一方で,Figure 2 における 150bpm・一の糸. 2 における初心者の傾向は,弦とテンポの交互作用による. 条件のように,熟練度内のばらつきが小さく,信頼区間レ. 単純主効果を基に整理できると考えられる.. ベルで熟練度間が隔たっているような条件では,中級者の. テンポの単純主効果は,テンポが速くなるほど接触時間. 接触時間は初心者と熟練者の中間的な傾向であったと推. が短くなると捉えることができるだろう(Figure 2,Figure. 察される.特に,熟練度とテンポの交互作用における単純. 4) .テンポが速くなると,叩き動作の各動作フェイズ(振. 主効果の多重比較において,接触時間の長さとしての差は. り上げ,振り下ろし,叩きつけなど)それぞれに対して割. 少ないにも関わらず,150bpm で有意差が認められたのは,. り当てられる時間が制約されることが関係すると予想さ. 速いテンポになるにつれ熟練度内のばらつきが収束し,熟. れる.. 練度間の差が如実に現れた結果と見ることができるかも. 弦の単純主効果は,隣接する弦の抵抗があると接触時間. しれない.また,Figure 2 における 120bpm・三の糸条件の. が長くなると捉えることができるだろう(Figure 2,Figure. ように,中級者内でばらつきが小さく熟練者に近い接触時. 4) .津軽三味線の特性上,一の糸を叩く際には隣接する弦. 間となっていた条件では特に,中級者が熟練者的特徴を有. を押さえつける必要が生じる(Figure 1).隣接する弦の抵. していたと考えられる.これらを踏まえると,一の糸と比. 抗があることで,撥を胴へ接触させることで得られる触覚. べて三の糸においてより早期に熟練者的特徴へ移行し,. フィードバックは変容すると予想される.仮に,津軽三味. 150bpm における熟練者的特徴の獲得には長期的な熟達を. 線叩き動作の調整が撥と胴の接触による触覚フィードバ. 要すると推察される.. ックに強く依存するならば,隣接する弦による触覚フィー ドバックの変容に対処するために接触時間の延長が行わ れていた可能性がある. Figure 2 における初心者の接触時間の傾向はテンポと弦 の単純主効果に従った傾向と見ることができるだろう.テ ンポと弦という制約が接触時間に与える影響に,初心者は 抗うことができていないと考えられるかもしれない. 熟練者の特徴 熟練度とテンポの交互作用の単純主効果の多重比較に おいて,中級者の 90bpm 条件を除いて初心者・中級者よ り接触時間が有意に短くなった(Figure 3) .また,テンポ によって接触時間が有意に変動することはなく(Figure 3), 弦の影響も極めて小さい傾向が伺われた(Figure 2)こと を踏まえると,熟練者は条件に関わらず(或いは制約の影 響を克服して),短い接触時間(およそ 50msec 未満)で叩 き動作を行っていたと考えられるだろう. 加えて,弦とテンポの交互作用における単純主効果の多 重比較において,150bpm・三の糸条件が 120bpm・三の糸 条件や 150bpm・一の糸条件との間で有意差が認められず, 弦とテンポの交互作用における単純主効果は接触時間を 50msec 未満まで縮めるほどの影響はないことが伺われた (Figure 4).このことから,熟練者の 50msec 未満という 接触時間は,テンポや弦の制約条件を操作するだけで達成 できるような特徴ではなく,熟達による何らかの克服があ ってはじめて達成される特徴であると考えられる. 中級者の特徴 中級者は,熟練者と初心者の中間的な傾向を示す(Figure 3)が,一方で条件によって中級者カテゴリ内でばらつき が大きくなる条件(Figure2,90bpm・一の糸,120bpm・. 展望 本研究は,接触時間の傾向が津軽三味線演奏における熟 練度で特徴が分かれることを示した.これは,津軽三味線 演奏では,叩きつけ時の打圧特性が重要な役割を果たして いる可能性を示唆する.接触時間の長短が音響特性に与え る寄与など,パフォーマンスレベルとの関係や身体運動と の対応を特定することで,より立体的に津軽三味線演奏の 熟達を理解できるだろう. 引用文献 小坂 晋・柴田 傑・玉本 英夫・桂 博章・横山 洋之
(5) 三味線演奏における基本動作習得のための特徴表示 システムの提案 人文科学とコンピュータ 1 分野教 育・人文科学
(6) 『情報科学技術フォーラム講演論文 集』),7 電子情報通信学会・情報処理学会
(7) 運営委員 会
(8) YROQR 梛木 功介・谷貝 祐介・古山 宣洋
(9) 津軽三味線叩 き動作における身体の協応と熟達に関する研究 モ ーションキャプチャを用いた熟練度による撥運動軌 跡の比較.日本認知科学会 回大会 Shibata T., Mitobe K., Miura T., Fujiwara K., Saito M., Tamamoto H. (2016) Development of an Uchi Selflearning System for Mutsumi-ryu-style Shamisen Using VR Environment. In: Kubota N., Kiguchi K., Liu H., Obo T. (eds) Intelligent Robotics and Applications. ICIRA 2016. Lecture Notes in Computer Science, vol 9835. Springer, Cham.
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図
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