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第81回九州地域部会

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Academic year: 2021

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地域部会報告 112 資料および個人を対象にした調査データの分析等を行なった。われわれが得た主な知見は次のとおりで ある。(1) 若年雇用の劣化は,特に日本と韓国において男性の未婚化をすすめた。 (2) 教育費の負担 は,日本と韓国の出生力を抑制している。(3) 仕事と子育ての両立の難しさが未婚化・少子化を引き 起こしていることを支持する結果はえられなかった。(4) 価値観については,個人が結婚生活よりも 自身のスペック競争(最終学歴,職業的地位)に重きを置く価値観を内面化しており,それが出生率を 引き下げている可能性がある。

第 81 回九州地域部会

(2019年9月1日/佐賀県佐賀市) 第81回九州地域部会は,2019年9月1日(日)14時00分から16時00分まで,西九州大学健康福祉学部 井上俊孝特命教授のお世話により西九州大学健康支援センターで開催された。報告者を含め合計7名の 参加があり,活発な議論が行われた。プログラムと要旨報告は以下の通りである。 草野洋介(西九州大学健康栄養学部)

プログラム

1.草野洋介(西九州大学)長崎県の健康寿命延伸のために 2.久野一恵(西九州大学)超高齢化社会への挑戦~フレイル予防のための栄養教育を実施してみまし た 3.蔡国喜 (長崎県環境保健研究センター) 高齢化と日和見感染のリスク(長崎県におけるレジオネラ 症の発生状況から) 4.佐藤龍三郎(中央大学)少子化社会のセクシュアリティ

報告要旨

第1報告:草野洋介(西九州大学)長崎県の健康寿命延伸のために  “What to do to extend healthy life expectancy in Nagasaki Prefecture?”

 Yosuke KUSANO (Department of Health and Nutrition Sciences, Faculty of Health and Nutrition Sciences, Nishikyushu University)

わが国の健康寿命は2010年(平成22年)に初めて具体的な推計値を公表し男性が70.42歳,女性が 73.62歳であった。これは国民生活基礎調査の「あなたは現在健康上の問題で日常生活に影響がありま すか」という質問項目に基づいて算定され,同年の平均寿命と男性9.22年女性12.77年の差がある。 では健康寿命に影響する要因は何なのだろうか。 健康寿命の定義は健康日本21(第二次)では「日常生活に制限のない期間の平均」とされている,こ の「日常生活に影響」とは狭義の日常生活動作(ADL)だけでなく社会生活を営む機能への影響を意 味している。したがって健康寿命と最も関係する要因は介護保険において「要介護・要支援になった原 因」長年1位を保ってきた脳血管疾患と考えられてきたが,近年認知症が1位となった。また4位の関 節疾患と5位の骨折・転倒を合わせロコモティブ・シンドロームとしてとらえるなら認知症を上回り1 位となる。しかも健康寿命の低下とより関係しているといえる「要支援」の原因は関節疾患と骨折・転 倒を合わると全体の三分の一を占める。 以上より健康寿命の延伸には,認知症,ロコモティブシンドローム,脳血管疾患の対策が重要と考え られる。 長崎県の健康寿命は2010年が男性45位,女性39位 2013年男性29位,女性40位,2016年男性30位,女 性28位であった。長崎県健康長寿日本一プロジェクトチームの解析では低順位である長崎県の健康寿命 を阻害する要因として循環器疾患による入院患者ワースト1位,収縮期血圧ワースト一位,野菜摂取量

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人 口 学 研 究(第56号)2020.9 113 男性ワースト5位,女性ワースト8位,歩行数男性ワースト13位,特定健診受診率ワースト6位などが あげられ,健康寿命の延伸の取り組みとして「毎年一回健診受けて,毎日ニコニコ9000歩,毎日三回野 菜を食べて,よーしみんなで健康長寿!」という「ながさき3MYチャレンジ」を掲げて県民運動が行 われている。それに加えて悪性新生物,動脈硬化性疾患,COPD(慢性閉塞性肺疾患)という健康寿命 を阻害する最大の要因である喫煙対策,他県と比べて決して高くないといえないとはいえ,高血圧の予 防対策としてとの減塩を忘れてはならない。また健康寿命は,平均寿命とは異なり,「あなたは現在健 康上の問題で日常生活に影響がありますか」という質問項目から「主観的健康観」が関連している。そ のために健康リテラシーに基づいて行った活動が自分の健康を向上させているという実感が求められ, そのためには「何が健康寿命につながるか」を啓蒙する広報がなにより重要である。 したがって健康寿命の延伸には,積極的な広報活動,歩行数増加や運動習慣者の増加によるロコモティ ブシンドロームの予防,特定健診受診による健康状態の確認と病院受診,減塩や野菜摂取(カリウム摂 取)による高血圧の予防,脳血管疾患予防のためのメタボリックシンドローム受診,他人との交流や社 会参加などによる認知症の予防などが必要であると考えられる。 平均寿命が長年47都道府県最下位である青森県は全県あげての平均寿命延伸に向けての運動が繰り広 げられてきたが延伸はみられているが最下位にとどまっている。しかしながら健康寿命は男性が 47→44→34位,女性が31→19→20位と着実に向上しており,しっかりとしたヘルスプロモーションを行 うことで健康寿命延伸につながることが示唆されている。 第2報告:久野一恵(西九州大学)超高齢化社会への挑戦~フレイル予防のための栄養教育を実施して みました

 “Preventing frailty through nutrition education: a challenge for a super-aging society”

 Kazue KUNO Tomohiro OGATA, Rika IMAI (Department of Health and Nutrition Sciences, Faculty of Health and Nutrition Sciences, Nishikyushu University)

【目的】高齢者のフレイル予防の栄養教室を実施し,その効果の判定を通じて,高齢者のための栄養 教室について考える。 【方法】永原学園主催のエルダーカレッジ2年生(高齢者対象の生涯学習講座)の参加者を対象に週 1回全14回の栄養教室を実施した(2019年4月から7月)。栄養教室では,フレイル予防を念頭において, 栄養の大切さを基本に,体重が減少しないようにしっかり食べること必要であることを,さまざまな形 を通じて説明した。一方的な講義にはせず,ゲームやクイズを取り入れた楽しいものとなるように工夫 した。14回の教室の開始時と終了時に,栄養に関する知識(質問紙),食品摂取の多様性スコア(質問紙), 筋肉量(指輪っかテスト)を調べた。栄養に関する知識としては,教室の中で取り上げた24項目につい て「正しい」「正しくない」「わからない」の3段階で回答を求め,正解数を数えた。食品摂取の多様性 スコアは,10種類の食品について「ほぼ毎日食べる」と答えた食品の数とした。指輪っかテストは「囲 めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」の3段階で尋ね「囲めない」を「リスクなし」とした。毎 回の教室終了時に「今日の教室で感じたこと」を自由記述で記載を求めた。量的データは,JMP(SAS 社)を用いWilcoxonの符号付順位検定あるいはPeasonのカイ二乗検定を行った。質的データは,KHコー ダを用いて計量テキスト分析を行った。本研究は,西九州大学倫理委員会の承認を得て実施した。(承 認番号H30-31) 【結果】エルダーカレッジ2年生22名のうち17名から研究協力の同意が得られた。そのうち身体計測 が実施できた12名を解析対象とした。対象者は,男5人女7人,65~69歳3人,70~74歳5人,75~79 歳1人,80~84歳2人,85~89歳1人であった。栄養に関する知識の正解数(24点満点)は,開始時21.5 点(中央値,以下同じ),終了時21点 (p=0.651),食品摂取の多様性得点(10点満点)は,開始時6点, 終了時6点(p=0.669)と栄養教室前後で改善は見られなかった。指輪っかテストによる筋肉量測定結 果は,開始時「リスクなし」6名,終了時「リスクなし」5名と有意に減少した(p=0.003)。共起ネッ トワーク分析では,「ゲーム」は「楽しい」という関係が観察された。 【考察】高齢者を対象に14回の栄養教室を実施したが,栄養に関する知識の増加,食行動の改善を観

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地域部会報告 114 察することができず,指輪っかテストによる筋肉量は減少した。しかし,詳細に分析すると成果の出て いる項目もあり,高齢者にふさわしい栄養教室には,独自の工夫が必要であることが明らかになった。 第3報告:蔡国喜 (長崎県環境保健研究センター) 高齢化と日和見感染のリスク(長崎県におけるレジ オネラ症の発生状況から)

 “Opportunistic infections and the aging population (Legionellosis epidemic in Nagasaki prefecture)” Guoxi CAI (Nagasaki Prefectural Institute of Environment and Public Health) 【目的】レジオネラ症はレジオネラ属菌が原因で起こる感染症で,その病型には,劇症の「肺炎型」 と一過性の「ポンティアック熱型」がある。レジオネラ属菌は,水や土壌などの自然環境中いたるとこ ろに存在するが,レジオネラ症の集団感染は,通常,循環風呂や冷却塔などの人口環境におけるレジオ ネラ汚染水と関連することが知られている。1999年4月の感染症法の改正によってレジオネラ症は全数 把握疾患となり,四類感染症として全ての医師等に管轄の保健所への届出が義務づけられている(感染 症法第12条)。2006年には報告内容の変更が行われ,患者属性等がより詳細となった。近年,高齢化の 進む日本では日和見感染である本疾患の今後の動向が注目されている。本まとめでは,長崎県の2006年 から2017年までのレジオネラ発生届出を集計し,その記述統計情報をまとめて報告する。 【材料と方法】感染症発生動向調査事業(NESID)は,国内の感染症に関する情報の収集及び公表, 発生状況及び動向の把握を,医師・獣医師の届出に基づいて行うものである。現在,1999(平成11)年 4月に施行された感染症法に基づいて実施されている。長崎県環境保健研究センターは地方感染症情報 センターとして,県内10地区の保健所から届けられた感染症発生届出を確認した上でNESIDシステム に登録する作業を行う。今回我々は同事業により収集された2006年から2017年までのレジオネラ症発生 届の情報を用いて整理・集計・分析した。 【結果と考察】2006年1月~2017年12月に97例が診断され,平均年罹患率は0.58/10万人で,同期間日 本全国平均の0.82/10万人より少し下回っていた。その一方で,97件届出の内2件が死亡例で病死率は2.1% であり,全国同期間の病死率1.9%より上回ることが分かった。レジオネラ症発生の季節変動について, 全国データでは7月を中心に増加し,翌3~5月にかけて減少する傾向に対して,長崎県では7月と11 月に二つのピークが認められた。夏季で空調用冷却塔等の稼働が増加すると共に生活環境水の温度も高 めになることが考えられる要因の一つであるが,11月における報告数増加の原因となるリスクファクタ の究明にはさらなる疫学調査が必要である。長崎県のレジオネラ症患者(以下長崎患者)を性別に分け てみると,男性84名(86.6%),女性13名(13.4%)であった。全国のレジオネラ症患者(以下全国患者) もほぼ同じ傾向で男性が約8割を占めており,長崎県と全国とのデータ間に有意差は認められなかった (P=0.191,全国データ男性:81.4%,女性18.6%)。長崎患者の平均年齢は報告時点で69.3歳(標準偏差 SD=13.4歳)であり,全国患者平均の67.8歳(男性66.3歳,女性74.6歳)と同じ傾向で(P=0.275),各年 代の割合は高年齢層に偏っていた。長崎患者の女性の平均年齢(78.1歳,SD=13.14歳,以下同様)は男 性(67.9, 13.0)より高いことが明らかになった(P=0.01)。推定された感染地域について,外国旅行の 期間内で感染されたと思われるケースは3件あった。3名のうち,中華人民共和国2名(男性1名,80 代無職;女性1名,60代民宿業)。もう1名は男性で,10月17-19日の間にアラブアラブ首長国連邦ドバ イ滞在中に噴水を見物していた経験があると臨床医からの聞き取り調査で分かった。2016年10月から 2017年にかけて,多数の外国人観光客がドバイでレジオネラ症に感染したと報告されたことから,本ケー スとの関連性に関する探索が必要と考えられる。加えて,今後諸外国と人的な交流が多くなることが予 測される日本では,レジオネラ症など旅行感染症のコントロール対策を講じるとともに,積極的に諸外 国の感染症情報の入手や情報交換を実施することが望ましい。 第4報告:佐藤龍三郎(中央大学)少子化社会のセクシュアリティ  “Changing sexual behavior and low fertility in Japan”

Ryuzaburo SATO (Chuo University Institute of Economic Research) 近年,日本の少子化の要因研究においてセクシュアリティの視点の重要性が認識されるようになった

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人 口 学 研 究(第56号)2020.9 115 が,まだ研究事例は少なく,研究枠組みも定まっていない。本報告では,セクシュアリティ視点の中で も性行動に焦点を当て,既存資料・文献を基に,①セクシュアリティの概念と計測方法,②日本の性行 動調査とそこから示唆される性行動の変化,③性行動の変化と少子化の関連の3点について検討する。 既存の複数の調査から,21世紀初頭以後,性交開始年齢の(従来の低年齢化から一転して)高年齢化, 未婚者の性交経験割合低下,セックスレス・カップルの割合上昇などの変化が見られており,総じて日 本人の「セックス離れ」傾向がうかがえる。しかしセクシュアリティと出生力の関係は複雑であり,単 純に性交頻度の低下が出生率低下をもたらしているとは言い切れない。別の要因(文化的土壌や社会経 済環境条件)が,性行動と配偶・出生行動の双方に影響を与えている可能性もある。また「性の多様化」 をより包括的な現象と捉え,実は少子化・未婚化もその表れの一つとして理解すべきこととも考えられ る。

参照

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